説明

炊飯器

【課題】制御基板の異常を起因とする他部材の発煙、発火等の延焼を発生させないようにし、制御基板に搭載された発熱素子を効率よく冷却することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】本体1に収容された内鍋2を加熱するための誘導加熱コイル10等に対して通電制御を行う発熱素子17を有する制御基板15と、金属部材で構成され、制御基板15を本体1内部に取り付けるための基板ホルダー12と、金属部材で構成され、制御基板15を保護し、制御基板15周囲に空間を形成するための金属バリアー16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関するものである。特に、制御基板からの発火に対し延焼を防止するとともに、制御基板に搭載された発熱素子を効率よく冷却することができる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、一般に、制御基板には電子部品や発熱素子が搭載され発熱素子を冷却するために、発熱素子を放熱器に接触させ、さらに冷却ファンによって本体に設けた吸気口から外気を吸入し、制御基板を冷却したのち排気口から排気するようにしている。
【0003】
従来の炊飯器において、発熱素子を冷却する放熱器と電子部品を搭載した制御基板は、プラスチック材からなる基板ホルダーに取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4189772号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の炊飯器では、制御基板には電子部品や発熱素子が搭載され発熱素子を冷却するために、発熱素子を放熱器に接触させ、さらに冷却ファンによって本体に設けた吸気口から外気を吸入し、制御基板を冷却したのち排気口から排気するようにしている。しかし、電子部品や発熱素子が異常な状態になった場合には、例えば発熱素子が高温となり、周囲の燃え易い成形部品等から発煙、発火し、延焼して火事になる恐れがあった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、制御基板の異常を起因とする他部材の発煙、発火等の延焼を発生させないようにし、また、制御基板に搭載された発熱素子を効率よく冷却することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、本体に収容された内鍋を加熱するための加熱手段に対して通電制御を行う発熱素子を有する制御基板と、金属部材で構成され、制御基板を本体内部に取り付けるための基板ホルダーと、金属部材で構成され、制御基板を保護し、制御基板周囲に空間を形成するための金属バリアーとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御基板の周囲を金属バリアー、金属部材の基板ホルダーで覆うようにしたので、例えば、発熱素子が異常により発火しても、周囲の成型品への延焼を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】制御基板取り付け部を部分拡大した縦断面図である。
【図3】制御基板取り付け部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】炊飯器内部の吸気風路19の経路を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態に係る炊飯器の縦断面を表す図である。ここで、図1における左側を炊飯器の前側、右側を後側となるものとして説明する。図1において、炊飯器本体1(以下、単に本体という)は、側面部が筒状の外枠8によって構成され、上枠4と底板9との挟持により固定されている。
【0011】
また、本体1内部には筒状の内遮熱板5とその下に設けられたほぼ深皿状のコイル台6とからなる内鍋収納部7が設けられている。内鍋収納部7には、上枠4が有する環状の開口部から着脱自在に内鍋2を収納させることができる。内鍋2は有底筒状に形成され、例えば炊飯を行う際、調理対象である米と水とを内部に収容することができる。
【0012】
内遮熱板5には、外面に密着して加熱手段である胴ヒータ5aが取付けられており、炊飯時および保温時に通電されて発熱する。また、コイル台6の外面(底部およびコーナ部)には主加熱手段である誘導加熱コイル10が巻き付けられて固定されており、通電により交番磁界を発生し、内鍋2を電磁誘導により加熱する。また、コイル台6の中心部には、内鍋2の底部に当接して内鍋2の温度を検知する温度センサ11が設けられている。
【0013】
図2は本実施の形態に係る炊飯器の前面内側部分を拡大した図である。本実施の形態の炊飯器においては、制御基板15が、本体1における外枠8と内鍋収納部7との間の前面内側部分に設けられている。この制御基板15は、誘導加熱コイル10への通電を制御するための制御部を搭載している。制御部については例えばスイッチング素子等の発熱素子17等で構成される。また、制御基板15を固定するための基板ホルダー12が内鍋収納部7に近接する位置に設けられている。本実施の形態では、基板ホルダー12は金属部材からなる。
【0014】
さらに、冷却ファン18からの空気が流入する(吸気風路19を形成するために開口している)側を除き、基板ホルダー12とにより制御基板15を覆う(制御基板15を他の部材から隔離する)ように金属バリアー16が取り付けられる。このとき、金属バリアー16は吸気風路19とするための空間を、制御基板15の周囲に空間を形成するようにする。金属バリアー16には、一部(ここでは前面側となる)に吸気風路19を金属バリアー16外に連通させるための開口部となる風穴33が設けられている。
【0015】
また、制御基板15上の発熱素子17が発する熱を効率的に冷却ファン18による空気に吸熱させる熱交換を行うため、放熱器20を所定の間隔で整列された複数の放熱フィン20aを有する放熱器20の一部を制御基板15(発熱素子17)と金属バリアー16とに接触させている。冷却ファン18の回転によって形成される空気の流れを遮らないように、熱伝導のよいアルミニューム合金を材料とする各放熱フィン20aを、空気の流れにほぼ平行するように配設し、放熱フィン20a間を通過させる。この空気の経路が吸気風路19の一部となる。制御基板15、金属ホルダー12、金属バリアー16等を中心とする構成については後述する。
【0016】
底板9の底面前部側には吸気口22が設けられ、吸気口22に臨んで、制御基板15との間に冷却ファン18が設置されている。また、底板9の後部側には排気口23が設けられている。そして、冷却ファン18の回転により、吸気口22から吸い込まれた空気が排気口23から排出されるまでの空気の経路が吸気風路19となる。
【0017】
金属バリアー16(基板ホルダー12)の上部には操作基板取付部13が設けられ、操作基板14が傾斜して取り付けられている。また、操作基板14の上方には、メニュー等の選択ボタン、炊飯ボタン等のスイッチを備える操作パネル21が設けられている。
【0018】
また、本体1の後部側には電源コード、電源プラグを有するコードリール24が縦方向に設置され、底板9には炊飯器を支持するための脚部25(前側脚部25a、後側脚部25b)が前後にそれぞれ2箇所ずつ設けられている。
【0019】
蓋体26は、後端部を炊飯器の上部後側にあるヒンジ27により支持され、上枠4の開口部を開閉自在にする。この蓋体26は、上面を形成する上蓋26aと、上蓋26aの下側に固定された下蓋26bとを有している。蓋体26の前端部は、上枠4の開口部を閉じたときに係止ボタン3により係止される。
【0020】
蓋体26の上部には、内鍋2と連通し、炊飯時に内鍋2に発生したおねばと蒸気を分離し、蒸気を外方へ排出するためのおねばカートリッジ(蒸気通路体)28が着脱可能に装着される。また、蓋体26の下面には蒸気孔を有し、内鍋2の上面開口部を覆う内蓋29が着脱自在に装着されている。
【0021】
おねばカートリッジ28は、上蓋26aに形成された上面を開口した凹部内に着脱可能に取り付けられており、下ケース(蒸気通路本体)28aと上ケース(蒸気通路カバー)28bとからなる。これらが上下一体となって蒸気通路を有する蒸気排出装置を構成する。下ケース28aは、ほぼ漏斗状に形成され、ほぼ中央におねば戻しタンク(タンク部)30が設けられており、その底壁には内鍋2内におねばを戻すための戻し弁(図示せず)を備えた穴部31が設けられている。おねば戻しタンク30にはその垂直壁の後側の壁面に沿って内鍋2内からの蒸気が流入する導入筒32が立設されている。
【0022】
また、上ケース28b上面には蒸気を本体外部に排出する蒸気口34が形成されている。そして、上ケース28bと下ケース28aとで、複数の障壁によって区画されるおねば分離空間が形成されて、導入筒32から導入されたおねばと蒸気とを分離する。蓋体26の下面には炊飯時に発生する蒸気をおねばカートリッジ28に連通する穴部31が設けられている。
【0023】
図3は制御基板15の取り付け部分を表す分解斜視図である。図1〜図3に基づいて制御基板15の取り付け構造と、制御基板15上の発熱素子17と発熱素子17を冷却する放熱器20と冷却ファン18の関係について詳述する。
【0024】
本実施の形態では、上述したように、制御基板15が基板ホルダー12に取り付けられている。ここで、制御基板15の裏面(半田面)と基板ホルダー12とが対向している。基板ホルダー12は金属部材であることから、制御基板15に付された半田部分(導電部材)と基板ホルダー12との絶縁を確保することが望ましい。このため、制御基板15を基板ホルダー12に直接取り付けずに、スペーサー等を介して空間を形成する、または樹脂等の絶縁物を介して制御基板15を基板ホルダー12に取り付ける等をしてもよい。例えば、空間を形成した場合には、冷却ファン18からの空気が空間を通過することにより、制御基板15の裏面側も冷却される。また、絶縁物を介して取り付けることにより、制御基板15の裏面に異物が入り込むことなく、また、水分の浸入、結露等の発生等を抑えることができるため、短絡等による発火等を防ぐことができる。このように、制御基板15を金属部材からなる基板ホルダー12に取り付けることで、故障等により制御基板15から発火しても、基板ホルダー12により、炊飯器の他の構成部材への延焼を防止することができる。
【0025】
そして、冷却ファン18が設けられた側(吸気風路19となる側)を除き、制御基板15は基板ホルダー12と金属バリアー16で覆われている。制御基板15を金属製の部材で覆うことにより、故障等によって制御基板15から発火しても炎の拡大を防ぎ、延焼を防止する。
【0026】
また、上述したように、制御基板15には発熱素子17と複数の放熱フィン20aを設けた放熱器20が搭載され、放熱フィン20aの間を通過するように吸気風路19が形成されている。発熱素子17が発した熱が放熱器20に伝わり、放熱フィン20aにより伝熱面積が増大することで、吸気風路19を通過する空気との熱交換に係る熱量を増やすことができる。また、放熱器20の一部と金属バリアー16とが接触しており、放熱器20を介して、発熱素子17が発した熱を金属バリアー16に伝えることで、伝熱面積の増大に金属バリアー16も利用することができる。
【0027】
図4は炊飯器内部における吸気風路19の経路を表す図である。吸気風路19については、冷却ファン18の回転により、底板9の底面前部側に設けられた吸気口22から取り込まれた外気の吸気風路について説明する。吸気口22から取り込まれた外気は、制御基板15が設けられた金属バリアー16と金属ホルダー12とで形成された空間に送られる。送られた外気は、放熱フィン20a間を通過し、発熱素子17等が発した熱を吸熱して金属バリアー16上部の風穴33を通過する。炊飯器内の上部は上枠4等により塞がれているため、風穴33を通過した空気は本体1底部に流れる。そして、本体1底部と底板9との間を、前部側から後部側に通過し、その間、誘導加熱コイル10等を冷却し、底板9の底面後部側に設けられた排気口23から炊飯器の外部に排出される。
【0028】
上記のように構成した炊飯器における炊飯動作について説明する。炊飯を行う場合、まず、所定量の米と水が入れられた内鍋2が内鍋収納部7(本体1内)に収容され、蓋体26が閉じられる。さらに、炊飯器の電源が入れられて、本体1の前面側に設けられた操作パネル21の炊飯キーが押下されると、本体1内に設けられた制御基板15の制御部が炊飯動作処理を行う。
【0029】
制御部の指示により、スイッチング素子である発熱素子17が動作して誘導加熱コイル10へ通電され、内鍋2の底面に渦電流を発生させ、内鍋2を発熱させて炊飯動作を開始する。炊飯動作中、温度センサー11が内鍋2の温度を検知しており、この検知温度に基づいて制御部は誘導加熱コイル10への通電を制御し、予熱、炊飯、むらしの各工程を実行して内鍋2内の米を炊きあげる。
【0030】
一方、炊飯工程が開始されると、冷却ファン18にも通電される。冷却ファン18は、底板9に設けた吸気口22を介して外気を吸い込み、制御基板15側に送り出す。外気は、フィン20aの間を流れて、吸気口22の上側に位置する制御基板15上の発熱素子17等を冷却する。さらに本体1の下部を流動して誘導加熱コイル10等を冷却し、これらの表面温度を下げて、底板9の後部下面に設けられた排気口23から本体1の外部に排出される。
【0031】
上記の炊飯工程で内鍋2内の水等が沸騰する。おねばカートリッジ28は、内鍋2の内圧の上昇により発生するおねばと蒸気とを、内蓋29の穴部31を介して内鍋2内に連通した導入筒32から導入する。おねばと蒸気とはおねば分離空間で分離する。そして、蒸気のみが蒸気口34から蓋体26の外方に排出されて、残ったおねばがおねば戻しタンク30に貯められる。そして、沸騰がおさまり内鍋2の内圧が低下すると、戻し弁を備えた穴部31からおねばが内鍋2内に戻される。
【0032】
上記の炊飯工程が終了すると、制御部は保温工程処理を行い、胴ヒータ5a等を発熱させて内鍋2内の米飯を保温する。
【0033】
以上のように、本実施の形態の炊飯器によれば、制御基板15を、金属部材からなる基板ホルダー12に取り付けるようにしたので、例えば発熱素子17の異常等により、制御基板15裏面(半田面)から発火しても、炎等を拡大することなく、延焼を防止することができる。また、このとき、基板ホルダー12が延焼に対するバリアを兼るため部品点数を少なくすることができるため、コストを低減することができる。また、制御基板15の周囲を金属バリアー16で覆うようにしたので、発熱素子17の異常等により、制御基板15等からの発火に対し、基板ホルダー12の場合と同様に延焼を防止することができる。
【0034】
また、発熱素子17からの熱を放熱するための放熱器20の一部と制御基板15の周囲を覆った金属バリアー16とを接触させるようにしたので、発熱素子17からの熱は放熱器20を伝わり、熱伝導がよい金属バリアー16に伝達することで、さらに伝熱面積が広がるため放熱を効率的に行うことができ、冷却効果を良好にすることができる。このため、放熱器20を小型化することができ、炊飯器の小型化に寄与することができる。
【0035】
実施の形態2.
上述の実施の形態では特に示さなかったが、金属バリアー16または基板ホルダー12の少なくとも一方の材料を非磁性材料とするようにしてもよい。例えば非磁性材料を、アルミニューム材、アルミニュームを含む合金等の金属にすることにより、誘導加熱コイル10が発する磁力に係る磁界を遮断することができる、制御基板15に搭載した制御部の電子部品の発熱や誤動作等を防止することができる。
【0036】
また、上記の実施の形態1では、制御基板15上の発熱素子17を冷却する放熱器20を金属バリアー16に接触させるようにしたが、金属性の基板ホルダー12に接触させるようにしてもよい。また、組み立て性を考慮して、基板ホルダー12と金属バリアー16とを別体としたが、一体形成するようにしてもよい。また、図1等の構造の炊飯器以外の他の構造の炊飯器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 本体(炊飯器本体)、2 内鍋、3 係止ボタン、4 上枠、5 内遮熱板、6 コイル台、7 内鍋収容部、8 外枠、9 底板、10 誘導加熱コイル(加熱手段)、11 温度センサー、12 基板ホルダー、13 操作基板取付部、14 操作基板、15 制御基板、16 金属バリアー、17 発熱素子、18 冷却ファン、19 吸気風路、20 放熱器、20a 放熱フィン、21 操作パネル、22 吸気口、23 排気口、24 コードリール、25 脚部、25a 前側脚部、25b 後側脚部、26 蓋体、26a 上蓋、26b 下蓋、27 ヒンジ、28 おねばカートリッジ、28a 下ケース、28b 上ケース、29 内蓋、30 おねば戻しタンク、31 穴部、32 導入筒、33 風穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に収容された内鍋を加熱するための加熱手段に対して通電制御を行う発熱素子を有する制御基板と、
金属部材で構成され、前記制御基板を本体内部に取り付けるための基板ホルダーと、
金属部材で構成され、前記制御基板を保護し、前記制御基板周囲に空間を形成するための金属バリアーと
を備えることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記発熱素子が発する熱を放熱させるための放熱器を備え、
前記放熱器の一部が前記金属バリアーに接触していることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記基板ホルダーまたは前記金属バリアーの少なくとも一方が非磁性材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記非磁性材料は、アルミニュームであることを特徴とする請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
前記金属バリアーは、前記空間の排熱を行うために送り込んだ空気を排出する風穴を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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