説明

炊飯器

【課題】本発明の目的は、炊飯器を大型化することなく、ワークコイル等の熱の逃げを低減することができるとともに、法規制にも適合した発泡樹脂部材の断熱材を用いる炊飯器を提供すること。
【解決手段】本体ケースと、前記本体ケース上方の蓋体とを有する炊飯器であって、前記本体ケース内には、内ケースと、前記内ケース内に収納される内鍋と、前記内鍋を加熱するためのワークコイルとを有し、前記本体ケースと前記内ケースとの間に、発泡樹脂部材と難燃性樹脂部材とからなる断熱材を、前記難燃性樹脂部材が前記ワークコイル側に位置するように配置する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内ケースの外側に法規制に適合した断熱材を設けてなる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、ワークコイル及び保温ヒータ等の加熱手段を有し、これら加熱手段を制御して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する器具として広く知られている。
【0003】
そして、炊飯器は、炊飯及び保温を適正に行うために、本体ケースと内ケースとの間に断熱材を設け、熱の逃げを低減するものが知られている。断熱材としては、従来グラスウールが広く用いられていた。ところが、グラスウールの断熱材は、保形性がないため、取付け作業に手間を要し、また、材料費も高く、更には、繊維片が飛散し、作業環境が悪化するという弊害を有していた。
【0004】
本出願人は、これらの弊害をなくすために、発泡プラスチック成型体の発泡樹脂部材の断熱材を提案している。この発泡樹脂部材の断熱材は、発泡プラスチック成型体であり、左右方向に2分割1、1’されてなり、図12に示すように、本体ケース2と内ケース3との間の空間4に上下方向に立設する形態で設けられ、ワークコイル5等の加熱手段の熱が外部に逃げるのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この発泡樹脂部材の断熱材1、1’は、保形性を有するため、所定の空間に合わせて成型することができるとともに、取付け作業も容易で、また、材料費が安く、体積の割に軽量で、更には、繊維片が飛散しないため、作業環境がよくなるという利点を有している。
【0006】
ところで、炊飯器等は、電気用品安全法で、電装部品(ワークコイル、保温ヒータ、制御基板等)近傍に保温材または断熱材を設ける場合、難燃性のものを用いるか、或いは保温材または断熱材が難燃性のものではない場合、電装部品より50mm離して設けるように規定されている。そして、一般に保温ヒータは、難燃性のアルミで被覆され、制御基板は、難燃性の保持部材によって保持されるため問題は生じないが、ワークコイルは、裸線の扱いを受けるとともに、加熱時に100℃近くまで温度上昇するため、特に注意を要する電装部品である。
【0007】
上記従来のものは、そのような弊害をなくし、また、ワークコイル5自体の異常な温度上昇を防止するために、図12に示すように、発泡樹脂部材の断熱材1、1’の上下方向を直線状にしてワークコイル5を覆わないようにしている。
【0008】
ところが、発泡樹脂部材の断熱材は、難燃性ではないため、そのまま用いる場合には発泡樹脂部材の断熱材とワークコイルとの間に50mm以上の隙間を設ける必要が生じる。そのため、上記従来のものは、発泡樹脂部材の断熱材を設ける範囲が制限されたり、或いは外ケースを大きくして設けざるを得なくなり、炊飯器が大型化するという問題を有している。
【0009】
また、従来のものは、断熱材1、1’でワークコイル5を覆わないようにしているためワークコイル5、または内ケース或いは内鍋の熱が外部に逃げ易いという問題をも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−219677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、炊飯器を大型化することなく、内ケースまたは内鍋等の熱の逃げを低減することができるとともに、法規制にも適合した発泡樹脂部材の断熱材を用いる炊飯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0013】
請求項1に係る発明では、本体ケースと、前記本体ケース上方の蓋体とを有する炊飯器であって、前記本体ケース内には、内ケースと、前記内ケース内に収納される内鍋と、前記内鍋を加熱するためのワークコイルとを有し、前記本体ケースと前記内ケースとの間に、発泡樹脂部材と難燃性樹脂部材とからなる断熱材を、前記難燃性樹脂部材が前記ワークコイル側に位置するように配置する構成。
【0014】
請求項2に係る発明では、請求項1の発明の構成に加え、前記断熱材は、少なくとも前記ワークコイルの一部を覆う構成。
【0015】
請求項3に係る発明では、請求項1、2の発明の構成に加え、前記断熱材と前記ワークコイルとの間に、冷却風が流れる隙間を有する構成。
【0016】
請求項4に係る発明では、請求項1ないし3の発明の構成に加え、前記発泡樹脂部材と前記難燃性樹脂部材とは、重ね合わされて一体化される構成。
【0017】
そしてこれらの構成により、本体ケースと内ケースとの間に形成される隙間に合わせた大きさで、且つ法規制に適合した断熱材を形成することができるようになり、本体ケースを大きくすることなく内ケースまたは内鍋等の良好な断熱が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明は、本体ケースと内ケースとの間に、発泡樹脂部材と難燃性樹脂部材とからなる断熱材を、難燃性樹脂部材がワークコイル側に配置することにより、法規制に適合した状態で断熱材をワークコイルに近づけることができるようになり、その結果、本体ケースを大きくすることなく、内ケースまたは内鍋等の良好な断熱を行うことができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、断熱材で、少なくともワークコイルの一部を覆うことにより、請求項1の発明の効果に加え、内ケースまたは内鍋等の断熱をより向上することができ、断熱効果及び省エネ効果をより向上することができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、断熱材とワークコイルとの間に、冷却風が流れる隙間を設けることにより、請求項1、2の発明の効果に加え、ワークコイルの過熱を防止することができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記発泡樹脂部材と前記難燃性樹脂部材とは、重ね合わされて一体化されることにより、請求項1ないし3の発明の効果に加え、断熱材の組立を容易に行うことができ、生産コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】炊飯器の左右方向中央縦断面図
【図2】炊飯器の前後方向中央縦断面図
【図3】底部材を取り外した状態の底面図
【図4】外ケース及び底部材を取り外した状態を前方側の斜め下方から見た斜視図
【図5】右側の難燃性樹脂部材を内側から外側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図
【図6】右側の発泡樹脂部材を図5と同じ方向から見た斜視図
【図7】右側の難燃性樹脂部材に右側の発泡樹脂部材を嵌合した右側断熱ユニットを図5と同じ方向から見た斜視図
【図8】左側の難燃性樹脂部材を外側から内側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図
【図9】左側の発泡樹脂部材を図8と同じ方向から見た斜視図
【図10】左側の難燃性樹脂部材に左側の発泡樹脂部材を嵌合した左側断熱ユニットを図8と同じ方向から見た斜視図
【図11】左側断熱材ユニットと右側断熱材ユニットの平面図
【図12】従来の炊飯器の左右方向中央縦断面図
【実施例】
【0023】
図1は炊飯器の左右方向中央縦断面図を示し、図2は炊飯器の前後方向中央縦断面図を示し、図3は底部材を取り外した状態の底面図を示し、図4〜図11に発泡樹脂部材と難燃性樹脂部材の斜視図等を示す。なお、炊飯器10のヒンジユニット37側を後方とし、ヒンジユニット37の反対側を前方とし、その前後方向に直交する側を左右方向とする。
【0024】
炊飯器10の全体を図1に示す。炊飯器10は、本体ケース11及び蓋体30等からなる。前記本体ケース11は、炊飯器10の外郭を形成する部分であり、外ケース12、底部材13及び肩部材14を有する。
【0025】
前記外ケース12は、炊飯器10の側部を形成する鋼板または合成樹脂製の筒状の部材であり、前記底部材13は、炊飯器10の底部を形成する合成樹脂製の皿状の部材であり、前記肩部材14は、炊飯器10の肩部を形成する合成樹脂製の略リング状の部材である。そして、外ケース12と底部材13とは、底部材13の外周上端部に外ケース12の下端部を無理嵌めして結合され、外ケース12と肩部材14とは、肩部材14の外周下端部に外ケース12の上端部を無理嵌めして結合されている。
【0026】
前記外ケース12内には内ケース15が設けられる。内ケース15は、プラスチック製で、下部側から底壁部15aと曲壁部15bと側壁部15cと外向きフランジ15dとを一体に成型したものが用いられている。そして、内ケース15は、底部材13に図示しない複数のビスにより固定される。
【0027】
内ケース15内には内鍋16が収納されるとともに、内ケース15の下面には、内鍋16を加熱するための電磁誘導加熱コイルである底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18からなる内外2組のワークコイルが、内ケース15の底壁部15aと曲壁部15bの各外面に取付けられている。
【0028】
これら底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18の外側には合成樹脂製のコイル支持台22及び4本のフェライトコア22aが設けられており、このコイル支持台22をビスで内ケース15に取り付けることにより、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18は所定位置に位置決め固定される。
【0029】
なお、図示しないが内ケース15の底部には複数のリブが放射状に設けられており、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18を取り付けると、内ケース15との間にリブの高さの隙間が形成され、この隙間に冷却風が流れ、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18の過熱を防止している。しかし、この隙間はなくてもよい。
【0030】
内ケース15の側壁部15cの外面には、保温ヒータ19が取付けられる。この保温ヒータ19はアルミ箔で覆われ、且つその外側には、耐熱性のあるグラスウール製の断熱材20が全周に亘って巻付けられている。この断熱材20は、後述する発泡樹脂部材40及び難燃性樹脂部材50からなる断熱ユニット60とともに保温ヒータ19からの熱が外部に逃げるのを防止する。
【0031】
また、内ケース15の底壁部15aの中央部には、内鍋16の温度を検出する温度センサー21が設けられている。
【0032】
内鍋16は、内ケース15内に出し入れ自在に収納される。この内鍋16は、上記底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18により誘導発熱可能な金属製である。なお、内鍋16として土鍋を採用する場合には、該土鍋の外面の上記底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18に対面する部分に誘導発熱体が貼設または塗布される。
【0033】
炊飯器10内のスペースSには、図2及び図3に示すように、その前方側位置に基板保持部材23に支持される制御基板24と、後方側位置にコードリール25がそれぞれ上下向き姿勢で設置されている。制御基板24には、底部ワークコイル17、側部ワークコイル18、保温ヒータ19等からなる加熱手段を制御するためのマイコン及び電源回路等の電気部品が搭載される。ところで電気部品のなかには発熱するものがあるため、制御基板24の下側には発熱素子等を冷却するための冷却フィン26と、冷却フィン26の熱を放熱するための冷却ファン27が設けられている。
【0034】
また、前記外ケース12の前方側には、ロック機構28が設けられ、このロック機構28を押圧することにより、係止部との係合が解除され、蓋体30が開蓋する。なお、前方側とは図2及び図3において左側になり、後方側とは同図において右側になる。
【0035】
前記蓋体30は、外蓋31と、該外蓋31の下面において内鍋16の開口縁を開閉する内蓋32を有している。外蓋31には、調圧弁33が設けられる蒸気通路34が形成され、過剰な蒸気は排出口35から排出される。また、外蓋31内には、保温用の断熱材36が収納配置される。
【0036】
そして、この蓋体30は、炊飯器10の後方側上部においてヒンジユニット37に枢支されており、ロック機構28が解除されると開蓋されるようになっている。
【0037】
外ケース12と内ケース15との間のスペースSには、発泡樹脂部材40及び難燃性樹脂部材50を重ね合わせて一体化した全体で断熱材を形成してなる断熱ユニット60が設けられる。これら発泡樹脂部材40と難燃性樹脂部材50は、それぞれ左右に2分割された右側発泡樹脂部材40a及び左側発泡樹脂部材40bと、右側難燃性樹脂部材50a及び左側難燃性樹脂部材50bとで形成され、右側発泡樹脂部材40aと右側難燃性樹脂部材50aとは、重ね合わされ一体化されて右側断熱ユニット60aを形成し、左側発泡樹脂部材40bと左側難燃性樹脂部材50bとは、重ね合わされ一体化されて左側断熱ユニット60bを形成している。
【0038】
前記発泡樹脂部材40は、発泡プラスチック成型品の断熱材で、例えばPS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等のプラスチック原料を所定形状に発泡・成型させたものであり、保形性とある程度の圧縮強度を有している。そして、この発泡樹脂部材40は、図1及び図6に示すように、下面42が側部ワークコイル18を覆う位置まで内ケース15の底部に張り出し、その内面は、内ケース15の外面に沿うような形状とされ、その外面は、外ケース12の内面とほぼ同形状の曲面状態で形成されている。
【0039】
前記右側発泡樹脂部材40aの内側から外側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図を図6に示す。右側発泡樹脂部材40aは、平面視略円弧状で、その円弧面の長さは内ケース15の半円周より短く、上面41と、下面42と、上面41と下面42とを結ぶ側面である外側面43及び内側面44を有する。そして、その上面41及び下面42は水平面とされ、その上面41には、肩部材14に設けた左右の軸受板14a、14aが嵌入するための凹嵌部45が形成されている。
【0040】
前記外側面43は、外ケース12の内面に対向する面で、図9に示すものとほぼ同様な概略円弧状にされている。前記内側面44は、内ケース15の外面に対向する面で、図6に示すように曲面状に形成され、その下端部には、図1及び図6に示すように内方に向って突き出す内方突出部44aが形成されており、側部ワークコイル18を下方側から覆い、内ケース15または内鍋16等の熱が外部に逃げるのを防止している。
【0041】
また、右側発泡樹脂部材40aの上方の両端部には、それぞれの端部から内方に向う2個の突起部46が形成されている。これらそれぞれの突起部46は、後記する難燃性樹脂部材50の突起溝56内に嵌合され、両部材を強固に一体化する機能等を有する。
【0042】
更に、右側発泡樹脂部材40aの外側下面には、複数の窪み47が形成され、その前方側には、上下方向に大きな切込部48が下方から上方に向かって形成される。この大きな切込部48は、コイル支持台22のフェライトコア22aを避けるためのものである。
【0043】
左側発泡樹脂部材40bの外側から内側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図を図9に示す。左側発泡樹脂部材40bは、右側発泡樹脂部材40aと概略同様な形状で、平面視略円弧状で、その円弧面の長さは内ケース15の半円周より短く、上面41と、下面42と、上面41と下面42とを結ぶ側面である外側面43及び内側面44を有する。その上面41及び下面42は水平面とされ、その上面41には、肩部材14に設けた左右の軸受板14a、14aが嵌入するための凹嵌部45が形成されている。
【0044】
前記外側面43は、外ケース12の内面に対向する面で、図9に示すように概略円弧状にされている。前記内側面44は、内ケース15の外面に対向する面で、図6に示すもののように曲面状に形成され、その下端部には、図1に示すように内方に向って突き出す内方突出部44aが形成されており、側部ワークコイル18を下方側から覆い、内ケース15または内鍋16等の熱が外部に逃げるのを防止している。
【0045】
また、左側発泡樹脂部材40bの上方の両端部には、それぞれの端部から内方に向う2個の突起部46が形成されている。これらそれぞれの突起部46は、後記する難燃性樹脂部材50の突起溝56内に嵌合され、両部材を強固に一体化する機能等を有する。
【0046】
更に、左側発泡樹脂部材40bの外側下面には、複数の窪み47が形成され、その前方側には、上下方向に小さな切込部49が下方から上方に向かって形成される。この小さな切込部49は、図示しないリード線を通すためのものである。
【0047】
このように右側発泡樹脂部材40a及び左側発泡樹脂部材40bからなる発泡樹脂部材40は、不必要な部分をなくして必要な部分のみを容易に形成することができるとともに、保形性を有する部材であるため、その取り付けが容易になる。
【0048】
前記難燃性樹脂部材50は、難燃性の樹脂部材で、例えばPP、PET、PC、PA、PPS等のプラスチック原料を所定形状に成型させた透明または不透明なもので、難燃性樹脂部材のケースといえるものである。この難燃性樹脂部材50は、例えば厚さ略2mmで、その上下面と内側(内ケース15側)曲面を有し、外側(外ケース12側)が解放面とされるケース状の部材で、その外側の解放面側から前記発泡樹脂部材40を嵌入し、一体化するものであり、保形性とかなりの圧縮強度を有している。そして、この難燃性樹脂部材50は、発泡樹脂部材40と同様に、図1及び図3に示すように、下面52が側部ワークコイル18を覆う位置まで内ケース15の底部に張り出し、その内側面は内ケース15の外面とほぼ同形状の曲面状態で成型されている。
【0049】
前記右側難燃性樹脂部材50aの内側から外側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図を図5に示す。右側難燃性樹脂部材50aは、右側発泡樹脂部材40aと同様に、平面視略円弧状で、その円弧面の長さは内ケース15の半円周より短く、上面51と、下面52と、上面51の内端と下面52の内端とを結ぶ内側面54を有する。その上面51及び下面52は水平面とされ、その上面51には、肩部材14に設けた左右の軸受板14a、14aが嵌入するための凹嵌部55が形成されている。
【0050】
なお、右側難燃性樹脂部材50aには、右側発泡樹脂部材40aの外側面43に相当する面はなく、内部はなにもない内部空間54bとされている。内部空間54bの形状は、図8に示す左側難燃性樹脂部材50bとほぼ同様なものである。右側難燃性樹脂部材50aをこのようなケース形状にすることにより、右側難燃性樹脂部材50aの強度が高まり変形が防止される。
【0051】
また、右側難燃性樹脂部材50aの上方の両端部には、それぞれの端部から内方に向う2個の突起溝56が形成される。これらそれぞれの突起溝56には前記右側発泡樹脂部材40aの突起部46が嵌入され、両部材を強固に一体化する機能等を有する。そして、前方側の突起溝56の前方側面には、基板保持部材23が当接され、後方側の突起溝56の後方側面には、コードリール25が当接し、左側難燃性樹脂部材50bとでコードリール25がガタつかないように支持する(図11参照)。
【0052】
更に、右側難燃性樹脂部材50aの外側下面には、複数の窪み57が形成され、その前方側には、上下方向の大きな切込部58が下方から上方に向かって形成される。この大きな切込部58は、コイル支持台22のフェライトコア22aを避けるためのものである。
【0053】
この右側難燃性樹脂部材50aの内部空間54bの内面形状は、右側発泡樹脂部材40aの外面形状とほぼ同じで、且つその大きさは、右側難燃性樹脂部材50aの内部空間54bの方が同じか若干大きくされており、右側難燃性樹脂部材50aの外側の解放面より右側発泡樹脂部材40aを挿入すると、右側発泡樹脂部材40aの上面41、下面42、内側面44及び2個の突起部46は、右側難燃性樹脂部材50aの上面51、下面52、内側面54及び2個の突起溝56のそれぞれの内面に当接する形態で密に嵌合される。
【0054】
嵌合後は、右側発泡樹脂部材40aは、右側難燃性樹脂部材50aの内部空間54b内にほぼ完全に入り込み、挿入後では固定状態になり、力を入れて右側発泡樹脂部材40aを引き出さない限り右側発泡樹脂部材40aが抜け出ることはない。
【0055】
右側発泡樹脂部材40aが右側難燃性樹脂部材50aの内部空間54b内に入り込み、両部材40a、50aで、断熱ユニット60の右側部分である右側断熱ユニット60aを形成する。その状態の斜視図を図7に示す。このように、両部材40a、50aを一体化することにより、例えば組立時に右側発泡樹脂部材40aが破損することなく、右側断熱ユニット60aを側部ワークコイル18近傍に配置することができる。なお、この右側断熱ユニット60aを配置する際、右側断熱ユニット60aの内面と内ケース15との間に冷却風が流れるための隙間(約3〜4mm)を設け、側部ワークコイル18の過熱を防止している。
【0056】
前記左側難燃性樹脂部材50bの外側から内側に向かって若干後方側の斜め下方から見た斜視図を図8に示す。左側難燃性樹脂部材50bは、左側発泡樹脂部材40bと同様に、平面視略円弧状で、その円弧面の長さは内ケース15の半円周より短く、上面51と、下面52と、上面51の内端と下面52の内端とを結ぶ内側面54を有する。その上面51及び下面52は水平面とされ、その上面51には、肩部材14に設けた左右の軸受板14a、14aが嵌入するための凹嵌部55が形成されている。
【0057】
なお、左側難燃性樹脂部材50bには、左側発泡樹脂部材40bの外側面43に相当する面はなく、内部はなにもない図8に示すような内部空間54bとされている。左側難燃性樹脂部材50bをこのようなケース形状にすることにより、左側難燃性樹脂部材50bの強度が高まり変形が防止される。
【0058】
また、左側難燃性樹脂部材50bの上方の両端部には、それぞれの端部から内方に向う2個の突起溝56が形成される。これらそれぞれの突起溝56には前記左側発泡樹脂部材40bの突起部46が嵌入され、両部材を強固に一体化する機能等を有する。そして、前方側の突起溝56の前方側面には、基板保持部材23が当接され、後方側の突起溝56の後方側面には、コードリール25が当接し、右側難燃性樹脂部材50aとでコードリール25がガタつかないように支持する(図11参照)。
【0059】
更に、左側難燃性樹脂部材50bの外側下面には、複数の窪み57が形成され、その前方側には、上下方向の小さな切込部59が下方から上方に向かって形成される。この小さな切込部59は、図示しないリード線を通すためのものである。
【0060】
この左側難燃性樹脂部材50bの内部空間54bの内面形状は、左側発泡樹脂部材40bの外面形状とほぼ同じで、且つその大きさは、左側難燃性樹脂部材50bの内部空間54bの方が同じか若干大きくされており、左側難燃性樹脂部材50bの外側の解放面より左側発泡樹脂部材40bを挿入すると、左側発泡樹脂部材40bの上面41、下面42、内側面44及び2個の突起部46は、左側難燃性樹脂部材50bの上面51、下面52、内側面54及び2個の突起溝56のそれぞれの内面に当接する形態で密に嵌合される。
【0061】
嵌合後は、左側発泡樹脂部材40bは、左側難燃性樹脂部材50bの内部空間54b内にほぼ完全に入り込み、挿入後では固定状態になり、力を入れて左側発泡樹脂部材40bを引き出さない限り左側発泡樹脂部材40bが抜け出ることはない。
【0062】
左側発泡樹脂部材40bが左側難燃性樹脂部材50bの内部空間54b内に入り込み、両部材40b、50bで、断熱ユニット60の左側部分である左側断熱ユニット60bを形成する。その状態の斜視図を図10に示す。このように、両部材40b、50bを一体化することにより、例えば組立時に左側発泡樹脂部材40bが破損することなく、左側断熱ユニット60bを側部ワークコイル18近傍に配置することができる。なお、この左側断熱ユニット60bを配置する際、右側断熱ユニット60aと同様に左側断熱ユニット60bの内面と内ケース15との間に冷却風が流れるための隙間(約3〜4mm)を設け、側部ワークコイル18の過熱を防止している。
【0063】
このように難燃性樹脂部材50は、発泡樹脂部材40の形状に合わせてその形状を容易に形成することができるため、断熱ユニット60を容易に形成することができる。
【0064】
炊飯器10の組立時、前記右側断熱ユニット60aと前記左側断熱ユニット60bは、炊飯器10の右側の空間と左側の空間のそれぞれに配置される。それぞれのユニット60a、60bは、予めそれぞれの空間に合わせて形成されており、その組立は容易に行われる。
【0065】
組み立てられると、右側断熱ユニット60a及び左側断熱ユニット60bの上面51は、内ケース15の外向きフランジ15dの下面に当接され、その下面52は、底部材13の上端面に当接され、内ケース15と底部材13とで挟持される。即ち、その取り付けにはビス等の固定手段を用いておらず、その分生産コストを低減することができる。
【0066】
そして、図11に示すように、右側断熱ユニット60aと左側断熱ユニット60bの前側の突起溝56の前側面には、基板保持部材23が当接し、その後側の突起溝56の後側面には、コードリール25が当接する。このように、右側断熱ユニット60aと左側断熱ユニット60bがない領域には、基板保持部材23とコードリール25とが配置されることになり、その結果、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18に対する断熱効果が向上する。
【0067】
なお、断熱ユニット60の内方突出部54aで覆うワークコイルは、側部ワークコイル18の一部または全部であってもよい。また、底部ワークコイル17の一部または全部までであってもよいが、底部ワークコイル17まで覆うようになると、冷却風が流れにくくなり過熱の恐れが生じるので好ましくない。
【0068】
いずれにしても、右側断熱ユニット60a及び左側断熱ユニット60bからなる断熱ユニット60は、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18側が難燃性部材であるため、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18に断熱ユニット60を近づけて設けることができるようになり、その結果炊飯器10が大型化することはない。
【0069】
また、断熱ユニット60を底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18に近づけると、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18が過熱する恐れを生じるが、右側断熱ユニット60a及び左側断熱ユニット60bと、内ケース15との間には、上述したように隙間、例えば約3〜4mmの隙間Rが設けられ、冷却ファン27が駆動されると冷却風の一部は、この隙間R内を流れ、底部ワークコイル17及び側部ワークコイル18の過熱を防止する。
【0070】
なお、これを実証するために実験を行った。測定条件は、IH出力は定格電力+5%で、電流値が最大となるように電圧を調整し(95.1V)、白米メニュー、おこげ選択、湯沸かしを行った。その結果、電気用品安全法のワークコイルの上限温度は、150℃であるのに対し、実測値は111.5℃であり、室温30℃換算では118.5℃であり、いずれも法律の範囲内であった。
【0071】
図11に示すように、右側断熱ユニット60aと左側断熱ユニット60bの前側の突起溝56の間は、距離Wだけ離されており、冷却ファン27の冷却風は、この距離Wの間を通り後方へ流れ、その一部は上記したように前記隙間R内を流れる。そして、他の一部の冷却風は、内ケース15の底部に沿って後方へ流れ、底部ワークコイル17等を冷却する。冷却風は、底部材13の前方側に設けられる吸入孔より導入され、後方側に設けられる排出孔より排出される。
【0072】
右側断熱ユニット60aと左側断熱ユニット60bは、予め外ケース12と内ケース15間のスペースの形状に合わせ且つ設置位置の各種部品に衝突しない形状に成型されるが、一度金型を造れば所望の形状のものを簡単に量産できる。また、同一形状のものを量産できるので、1つ当たりの断熱材コストが安価になる。
【0073】
断熱ユニット60は、かなりの圧縮強度を有しているので、この断熱ユニット60を底部材13の上面と内ケース15の外向きフランジ15dの下面との間に上下当接状態で設置すると、誤って炊飯器10を落としたときに、断熱ユニット60が上下方向の衝撃に対して緩衝作用を発揮する。従って、該断熱ユニット60を、本来の保温機能のほかに落下時の緩衝材としても利用できる。
【0074】
また、断熱ユニット60には、通風路となる隙間Rを設けているので、本体ケース11内で発生する熱気を該隙間Rを通してスムーズに外部に放出でき、熱損傷が起き易いワークコイル等が過熱されて故障したり熱変形したりするのを防止できる。
【0075】
本発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…炊飯器 11…本体ケース
12…外ケース 13…底部材
14…肩部材 14a…軸受板
15…内ケース 15a…底壁部
15b…曲壁部 15c…側壁部
15d…外向きフランジ 16…内鍋
17…底部ワークコイル 18…側部ワークコイル
19…保温ヒータ 21…温度センサー
22…コイル支持台 22a…フェライトコア
23…基板保持部材 24…制御基板
25…コードリール 26…冷却フィン
27…冷却ファン 28…ロック機構
30…蓋体 31…外蓋
32…内蓋 33…調圧弁
37…ヒンジユニット 40…発泡樹脂部材
40a…右側発泡樹脂部材 40b…左側発泡樹脂部材
41…上面 42…下面
43…外側面 44…内側面
44a…内方突出部 45…凹嵌部
46…突起部 47…窪み
48…大きな切込部 49…小さな切込部
50…難燃性樹脂部材 50a…右側難燃性樹脂部材
50b…左側難燃性樹脂部材 51…上面
52…下面 54…内側面
54a…内方突出部 54b…内部空間
55…凹嵌部 56…突起溝
57…窪み 58…大きな切込部
59…小さな切込部 60…断熱ユニット
60a…右側断熱ユニット 60b…左側断熱ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、前記本体ケース上方の蓋体とを有する炊飯器であって、
前記本体ケース内には、内ケースと、前記内ケース内に収納される内鍋と、前記内鍋を加熱するためのワークコイルとを有し、
前記本体ケースと前記内ケースとの間に、発泡樹脂部材と難燃性樹脂部材とからなる断熱材を、前記難燃性樹脂部材が前記ワークコイル側に位置するように配置することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記断熱材は、少なくとも前記ワークコイルの一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記断熱材と前記ワークコイルとの間に、冷却風が流れる隙間を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記発泡樹脂部材と前記難燃性樹脂部材とは、重ね合わされて一体化されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−234765(P2011−234765A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106123(P2010−106123)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】