説明

炊飯器

【課題】内釜からの熱の放散を抑えて高い温度で美味に蒸らし、保温時の加熱も少なく抑
えてごはんの乾燥や変色を少なくし、かつ省エネルギーな炊飯器を実現する。
【解決手段】内ケースと外ケースの間に真空層を形成し、上部開口部と下部開口部を有する、略円筒状の真空容器と、該真空容器を内壁とする本体と、前記真空容器の下部に設けられる底面容器と、前記上部開口部を介して前記真空容器に着脱自在に収納される内釜と、前記底面容器の下面に設けられ、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、該加熱コイルに電力を供給する制御手段と、前記真空容器の上部内側に装着される側面枠体と、該側面枠体にヒータ線を巻回して構成される上部ヒータと、備えた炊飯器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜から逃げる熱量を抑制し、省エネルギー性を向上させるとともに、ご飯の品質劣化を抑制する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器では、炊飯時に、ヒータ加熱や誘導加熱によって内釜を加熱して炊飯を行い、保温時に、温度が低下したら再加熱を行って保温を行うのが一般的である。このような炊飯器においては、炊飯時や保温時に内釜の熱が本体外に逃げるのを抑制するために、内釜を真空容器や真空断熱材で覆うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、鍋と電磁誘導加熱コイルを真空内容器で覆ったIHジャー炊飯器(図1)や、鍋を真空内容器で覆い、その真空内容器の外側に電磁誘導加熱コイルを設けたIHジャー炊飯器(図3)など、外部へ逃げる熱量を少なくして、炊飯時及び保温時における消費電力を効果的に抑制するための構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2の図1には、外側を真空断熱材で覆った鍋を、鍋の収納部である保護枠の外側に設けた加熱コイルで誘導加熱する炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−224494号公報(特に、図1,図3)
【特許文献2】特開2001−78883号公報(特に、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の炊飯器では、鍋のみならず、加熱コイルも真空内容器に覆われている。加熱コイルは、電力が供給されると自らの電気抵抗によってジュール熱を発するため、加熱コイルの絶縁層の破壊を防ぐために冷却風によって冷却する必要がある。しかし、特許文献1の構成を採った場合には、真空容器内の加熱コイルに冷却風を供給できないため、加熱コイルの自己発熱によって、加熱コイルの絶縁層が破壊される虞がある。また、特許文献1の段落0014でも説明されるように、加熱コイルによって真空内容器が誘導加熱されるのを防ぐため、加熱コイルと真空内容器の距離を大きく取る必要があるので、特許文献1の構成を採った場合、炊飯器の小型化を図ることが困難である。
【0007】
また、特許文献2に示す炊飯器は、真空断熱材を通して鍋を誘導加熱するため、鍋を覆う真空断熱材の厚みを厚く設けると、鍋と鍋を誘導加熱する加熱コイルとの間隔が大きくなり、鍋を加熱する効率が悪くなる。
【0008】
本発明は、以上の課題を鑑みなされたものであって、炊飯時の、内釜からの熱漏洩の抑制,加熱コイルの絶縁破壊の防止,高い加熱効率を実現するとともに、保温時の、内釜からの熱漏洩の抑制,省エネ化,ご飯の品質劣化の抑制を実現できる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、内ケースと外ケースの間に真空層を形成し、上部開口部と下部開口部を有する、略円筒状の真空容器と、該真空容器を内壁とする本体と、前記真空容器の下部に設けられる底面容器と、前記上部開口部を介して前記真空容器に着脱自在に収納される内釜と、前記底面容器の下面に設けられ、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、該加熱コイルに電力を供給する制御手段と、を備えた炊飯器によって解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内釜の側面に設けられた真空容器によって内釜の側面からの熱漏洩を抑制できるので、省エネルギーを実現できる。また、内釜の底面に近接して設けられた加熱コイルによって内釜を効率よく加熱できるので、高火力での炊飯を容易に実現でき、美味なご飯に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の炊飯器の断面図である。
【図2】実施例1の図1のA断面図である。
【図3】実施例1の真空容器の断面図である。
【図4】実施例2の炊飯器の断面図である。
【図5】実施例1の枠体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図3,図5を用いて本発明の実施例1を説明し、図4を用いて本発明の実施例2を説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
まず、図3の断面図を用いて、本実施例の炊飯器で用いられる真空容器6について説明する。ここに示すように、略円筒状の真空容器6は、ともにステンレス製の内ケース6aと外ケース6bの間に真空層6hを形成した中空構造の容器であり、上部開口部6fと、それより直径の小さい下部開口部6gを備える。上部開口部6fは、後述する内釜2を挿入するための開口であり、下部開口部6gは、後述する加熱コイル9に冷却風を供給するための開口である。
【0015】
ここに示すように、内ケース6aと外ケース6bの上端を接合し上端部6dを形成し、下端を接合し下端部6eを形成している。上端部6dは、内釜2から構造的に遠ざけるように外側に向け水平方向に設けられ、下端部6eは、後述する加熱コイル9の設置位置より下方で内側に向けて水平方向に設けられる。また、真空容器6には、上端部6d近傍の逃部6kと、下方内側の段差部6cの二つの段差が設けられている。なお、段差部6cは、図3のように、真空容器6の内径を絞り細くしたものであっても良いし、内側に突出した凸形状にして設けても良い。
【0016】
次に、真空容器6が組み込まれた本実施例の炊飯器を、図1の断面図を用いて説明する。本実施例の炊飯器は、本体1の内壁を構成する真空容器6に内釜2が着脱自在に挿入され、その内釜2が外蓋3と内蓋4からなる蓋によって閉鎖される構造となっている。真空容器6の下部には底面容器7が組み込まれ、底面容器7の下面に設けられた加熱コイル9によって、鉄などの強磁性金属を含む内釜2が誘導加熱される。
【0017】
内釜2は上面開口の全周にフランジ部2aを備えている。このフランジ部2aが後述する内釜載置部8aに載置されることで、内釜2が本体1内部に保持される。このとき、内釜2と真空容器6の間には空気層17が形成される。外蓋3は本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋であって、下面に取り付けられた内蓋4およびパッキン5によって内釜2の上面開口部を封鎖する。底面容器7は、内釜2の誘導加熱に障害とならないように、例えば、PETやPBT等の磁力線が透過する耐熱樹脂で形成される。
【0018】
また、底面容器7の中央には、内釜2の温度を検出する温度センサ16が設けられている。温度センサ16は、底面容器7の中央部に設けられた筒状の保持部7dに保持され、穴7cを介して内釜2に接触する。制御回路14は、加熱コイル9に電力を供給するインバータ回路を備えており、温度センサ16が検出した温度情報や制御プロセスに応じて、加熱コイル9へ供給する電力を制御する。
【0019】
本体1内部には、取り込んだ外気で加熱コイル9や制御回路14などの発熱部品を冷却する冷却ファン15が設けられている。ここで、図1に示すように、温度センサ16は筒状の保持部7dで囲まれ、保持部7dの下部開口は保護部材18によって塞がれている。従って、冷却ファン15からの冷却風が温度センサ16に直接当たることはなく、冷却風が温度センサ16に与える影響が低減される。保護部材18の設置には、加熱コイル9から本体1の外殻への熱移動を抑制する目的もあり、保護部材18を発泡樹脂,ゴム,グラスウール,スポンジの何れかで構成することでその断熱性能を高めている。なお、図示しないが、保護部材18には、保持部7dに侵入した水を外部へ排出するための通路が設けられており、保護部材18を介して排出された水は本体1の底面に設けられた開口を通して外部に排出される。
【0020】
また、真空容器6の逃部6kの内側には、上部ヒータ20を巻回した側面枠体21が装着される。逃部6kは側面枠体21の厚さと略等しい逃げ量の逃部であり、逃部6kを設けることで、真空容器6の内面上部を略平坦にできる。
【0021】
側面枠体21は、略円筒状の枠体であり、開口部が外側を向いた略コの字状の断面形状を有している。上部ヒータ20は、略コの字状の断面形状の側面枠体21にヒータ線を巻回したものであって、保温時に内釜2上部を加熱し結露を防止するために用いられる。ここでは、上部ヒータ20として、温度制御の不要な自己温度制御タイプのPTCヒータや飽和温度の低いヒータを使用する例を示すが、冷却風を供給しなくても使用が可能なヒータであれば任意のものを用いて良い。
【0022】
このように、真空容器6の逃部6kに側面枠体21を装着したので、上部ヒータ20を所望の深さ位置に簡単確実に取り付けることができる。また、上部ヒータ20が直接加熱する側面枠体21は、略コの字状断面の平面部側の大きな接触面積で内釜2と接するので、内釜2を効率的に加熱することができる。一方、側面枠体21は、略コの字状断面の開口部側の僅かな接触面積で真空容器6と接するため、側面枠体21から真空容器6への伝熱を抑制できることに加え、上部ヒータ20と真空容器6の間に断熱層として機能する空気層を形成したので、上部ヒータ20から真空容器6への伝熱も抑制できる。
【0023】
次に、本体1に真空容器6を固定する構造を説明する。本体1の上面には、真空容器6の上端部6dおよび逃部6kを覆う枠体8が設けられている。枠体8は、凸状の内釜載置部8aを上面の全周に設けるとともに、内釜載置部8aの内周側を下方に伸ばした内側下垂部8bと、真空容器6の外周側で下垂れる外側下垂部8cのそれぞれを全周に設けて構成される。図1では、内側下垂部8bと外側下垂部8cで上端部6dを挟んで真空容器6を固定する例を示すが、真空容器6を接着して固定することとしても良い。枠体8と真空容器6の上端部6dの間には、全周に渡って図示しない断熱部材11が設けられており、真空容器6から枠体8への伝熱を抑制するとともに、真空容器6と枠体8の隙間を封鎖している。なお、本実施例では、内釜載置部8a,内側下垂部8b,外側下垂部8c,断熱部材11を全周に渡って設けた例を示したが、前述した各々の作用を果たす限り、一部でこれらが欠落しても良い。また、図5の拡大断面図に示すように、枠体8の裏面の一部には、制御回路14から上部ヒータ20に電力を供給するコード20aを通す略凹形状の溝8dを設けているため、真空容器6にコードを通す穴を設ける必要がない。
【0024】
なお、真空容器6に逃部6kを設けるに当り、逃部6kの下方に傾斜部6jを設けるとともに、傾斜部6jの下側に断面が略三角形状の固定リング22を設けた。真空容器6の内径を緩やかに変化させる傾斜部6jを設けたことによって、真空容器6の強度を保ちつつ所望の内径を持った逃げ部6kを形成できる。また、全周に渡り傾斜部6jと接触しており下方へ移動することがない固定リング22の上平面に、側面枠体21を載置することで、側面枠体21を所望の高さに固定することができる。
【0025】
また、図1から分かるように、真空容器6の逃部6kは、内側下垂部8bに対応させて真空容器6の内径を大きくしたものであり、これにより、内側下垂部8bと真空容器6の内周面の段差を小さくできる。なお、枠体8は、本体1の一部として構成しても良いし、本体1と別体で構成しても良い。
【0026】
真空容器6の下部には、内釜2の底面を覆う底面容器7が設けられている。底面容器7は、浅い凹状の断面形状をしており、上側には、フランジ状の外周部7aを設け、下面には、真空容器6の下部開口部6gより僅かに大きい外径の円筒状のリブ7bを設けている。底面容器7は、真空容器6の上部開口部6fから挿入され取り付けられる。真空容器6に底面容器7を取り付けると、外周部7aと段差部6cが全周に渡って隙間無く接触するとともに、リブ7bと下端部6eが全周に渡って隙間無く接触することで、真空容器6と底面容器7の間に密閉された空間部12が形成される。また、内釜2と真空容器6の間に密閉された空気層17が形成される。この結果、図1から明らかなように、真空容器6の内ケース6aは、密閉された空気層17と空間部12に接することになり、冷却ファン15からの冷却風が内ケース6aに吹き付けられるのを避けることができる。
【0027】
なお、以上の構成において、真空容器6の上端部6dおよび下端部6eを水平方向に設け、各々を固定する断熱部材11やコイル保持部10の鍔10bと平面で接触させたので、炊飯器の本体1を移動して机や台に置く時に生じる上下方向の衝撃が、上端部6dと下端部6eに与える影響を低減することができる。
【0028】
次に、図1および図2を用いて、底面容器7の下方に設けられた加熱コイル9について説明する。図2は、図1の矢印A方向から見た真空容器6,加熱コイル9などの平面図である。図1および図2に示されるように、加熱コイル9の下方には、複数のコイル保持部が放射状に設けられている。各コイル保持部10は、フェライト10aと、フェライト10aを覆うように埋設した鍔10bで構成され、加熱コイル9は鍔10bの上面に固定される。また、図1に示すように、真空容器6の下端部6eは、鍔10bの外周部と底面容器7のリブ7bで挟まれており、それらの位置関係が固定される。なお、図1,図2から明らかなように、冷却ファン15からの冷却風は、本体1の底面に沿って流れた後、真空容器6の下部開口部6gを介して加熱コイル9の近傍に供給される。加熱コイル9の下面は、コイル保持部10と接触する部分以外が露出しているため、冷却ファン15からの冷却風によって効率的に冷却されるので、加熱コイル9の過熱を防止でき、絶縁層の熱破壊を防ぐことができる。
【0029】
ここで、内釜2の加熱効率を高めるため、内釜2と加熱コイル9を近接させることが望ましい。本実施例では、内釜2と加熱コイル9の間に中空構造を設けなかったので、両者を近接させることができ、内釜2の加熱効率を容易に高めることができる。また、真空容器6の下端部6eの内径を加熱コイル9の外径より大きくするとともに、加熱コイル9を下部開口部6gの上方に設けることで、真空容器6と加熱コイル9を遠ざけ、ステンレス製の真空容器6が誘導加熱されるのを抑制し、結果的に内釜2の加熱効率の低下を抑制している。
【0030】
以上で説明した本実施例の構成によれば、真空容器6の高い断熱性能によって、内釜2の熱が外部に漏洩するのを効果的に抑制できる。また、内釜2と真空容器6の間に略密閉空間となる空気層17を形成したので、内釜2の熱が外部に漏洩したり内釜2が冷却ファン15によって冷却されたりするのを抑制できる。さらに、真空容器6の内ケース6aと外ケース6bの接合部となる上端部6dには断熱部材11が設けられているので、高温の内ケース6aから低温の外ケース6bへの伝熱を抑制することができる。また、真空容器6は、加熱コイル9による内釜2の誘導加熱を阻害しないような形状となっているため、真空容器6の存在によって、加熱効率が低減することはない。また、真空容器6の下部開口部6gの周囲で、底面容器7と真空容器6の間に空間部を形成し空間部12を設けたことによって、冷却ファン15による加熱コイル9の冷却の促進と、内ケース6aの冷却の抑制を同時に実現することができる。また、内釜2上部と真空容器6の間に上部ヒータ20を巻回した側面枠体21を配置したので、内釜2の上部における断熱性能を更に高めることができ、保温時の内釜2上部の結露を防止することができる。
【0031】
本実施例の炊飯器は以上の構成よりなるもので、次にその動作について説明する。炊飯器による炊飯は、大きく分けて、「浸し」,「加熱」,「蒸らし」,「保温」の四つの工
程から成り立っている。制御回路14は、事前に組み込まれた制御シーケンス、および、温度センサ16で検出された内釜2の温度に基づいて、夫々の工程に応じた加熱制御を行う。以下では、加熱工程と保温工程における動作を中心に説明を行う。
【0032】
まず、使用者は内釜2内に米と適量の水を入れ、本体1内に収納して外蓋3を閉じる。次いで、本体1の操作部(図示無し)で「炊飯」スイッチを操作すると、制御回路14は、所定の浸し工程を経た後、加熱コイル9に電力を供給し加熱を開始する。
【0033】
加熱工程では、制御回路14によって加熱コイル9に電力が供給され、内釜2が誘導加熱され炊飯が進行する。このとき、冷却ファン15を駆動し、発熱部品である制御回路14や加熱コイル9を冷却するが、加熱コイル9に供給する電力が小さい場合には、これらの発熱部品の発熱も小さいため、冷却ファン15を停止することとしても良い。
【0034】
炊飯の進行に伴い、熱源である内釜2の熱が空気層17を介して真空容器6の内ケース6aに伝わり、さらには、外ケース6bにも伝導しようとする。しかし、本実施例の真空容器6を用いると、次の各理由によって、外ケース6bの高温化、すなわち、真空容器6内部からの熱漏洩を効果的に抑制できる。
【0035】
第一の理由として挙げられるのは、内ケース6aと外ケース6bの間に真空層6hが設けられており、真空層6hの断熱性能は非常に高いため、真空層6hを介した内ケース6aから外ケース6bへの熱移動を非常に小さく抑えることができることである。
【0036】
第二の理由として挙げられるのは、水平方向を向いた真空容器6の上端部6dが、枠体8の内側下垂部8bと断熱部材11によって覆われることで、高温の空気層17から隔離されており、空気層17の熱が外ケース6bの上端に直接伝わるのを防いでいることである。
【0037】
第三の理由として挙げられるのは、真空容器6の下端部6eが、真空容器6と底面容器7の間に形成される空間部12によって、高温の空気層17から隔離されており、空気層17の熱が外ケース6bの下端に直接伝わるのを防いでいることである。
【0038】
第四の理由として挙げられるのは、内ケース6a,外ケース6b共に、熱伝導率の悪いステンレス製であり、高温の空気層17に接する内ケース6aの領域から上端部6d,下端部6eへ伝導する熱量が少なく、結果的に、高温の空気層17から外ケース6bへの上端部6d,下端部6eを介した熱伝達を抑制できることである。
【0039】
第五の理由として挙げられるのは、真空容器6の下端部6eが、底面容器7のリブ7bによって高温の空気層17から構造的に遠ざけられ、真空容器6の下部では、第四の理由でも挙げた、ステンレスの熱伝導率の低さがより有効に働くことである。
【0040】
次に、空気層17と空間部12について更に詳細に説明する。
【0041】
まず、空気層17について説明する。図1に示すように、空気層17の上方側では、内釜2のフランジ部2aと枠体8の内釜載置部8aが全周に渡り接触しており、さらに、枠体8と真空容器6の間には全周に渡り断熱部材11が設けられているため、各々の間に空気が漏洩するような隙間は生じない。従って、加熱工程中に高温空気が上方に向けて対流しても、空気層17の上方から高温空気が漏洩することはない。また、例え、一部の高温空気が断熱部材11を抜けて漏洩しても、高温空気は外側下垂部8cの内周側に留まるため、ここから高温空気が漏洩し続けることはない。一方、空気層17の下方側でも、底面容器7の外周部7aと真空容器6の段差部6cは全周に渡り接触しているため、両者の間には空気が漏洩するような隙間はない。従って、空気層17の下方から高温空気が漏洩することはない。また、例え、外周部7aと段差部6cの間の一部に隙間が生じたとしても、空気層17の上方からの空気の漏洩はないため、空気層17内部の空気に動きはなく、当然に下方から冷却風が侵入することもない。
【0042】
次に、空間部12について説明する。図1に示すように、加熱コイル9には下部開口部6gを介して冷却ファン15からの冷却風が供給され、加熱コイル9自身の発熱による絶縁膜の破壊を防止している。加熱コイル9を冷却するための冷却風が真空容器6の内ケース6aに当たり、内ケース6aの低温が低下すると、内ケース6aが空気層17を冷却することになるため、内ケース6aを冷却風から保護する必要がある。そこで、本実施例では、底面容器7に真空容器6の下端部6eに接するリブ7bを設け、内ケース6aを冷却風から保護する構成を採った。なお、リブ7bは冷却風によって冷却されるが、リブ7bの外周側に空間部12が形成されているため、リブ7bが空気層17から奪う熱量を少なく留めることができる。また、例え、リブ7bと下端部6eの間の一部に隙間が生じたとしても、隙間を介して侵入した冷却風は空間部12に留まるため、更に空気層17に侵入することはなく、空気層17が冷却されることはない。なお、空間部12への冷却風の浸入をより完全に防ぐために、複数のコイル保持部10と一体に形成したリング状の平板を用いて、真空容器6の下端部6eの全周を押さえ、リブ7bと下端部6eの間に隙間が生じにくい構造としても良い。
【0043】
以上で説明したように、加熱工程においては、本実施例の構成を用いることで、真空容器6内部からの熱漏洩を抑制し火力を高めると同等の効果を容易に得ることができるとともに、加熱コイル9に十分な冷却風を供給できるので、自身の発熱によって加熱コイル9が破壊される状況を回避することができる。
【0044】
加熱工程が終了し、蒸らし工程や保温工程に入ると、加熱コイル9への供給電力は小さくなり、また、供給時間も短くなるため、加熱コイル9や制御回路14の発熱も小さくなる。これにより、加熱コイル9や制御回路14の冷却の必要性が小さくなるので、蒸らし工程や保温工程では制御回路14は冷却ファン15を停止する。この結果、底面容器7や加熱コイル9の温度を長時間に渡り維持することができ、真空容器6の内ケース6aや内釜2の熱が、底面容器7や加熱コイル9に奪われるのを抑制することができる。
【0045】
また、蒸らし工程や保温工程においても、真空容器6,空気層17,空間部12等の、上述した作用によって、真空容器6の内部は高温に保たれるため、真空容器6等を有しない構成に比べ、加熱コイル9に供給する電力の総量を小さくしても、同等の蒸らし、或いは、保温効果があり容易に省エネルギーを実現することができる。
【0046】
また、保温工程において、温度センサ16が内釜2の温度低下を検出した場合、加熱コイル9を用いて再加熱を行うが、本実施例の構成では真空容器6等の保温性能が高いため、温度低下までの時間が長くなり、再加熱の回数も少なくすることができる。再加熱によって、ご飯が劣化することが知られているが、本実施例の構成を採ることによって、再加熱の回数を少なくすることができ、ご飯の品質を長時間に渡り良い状態に保つことができる。
【0047】
また、保温工程において、上部ヒータ20に電力が供給され内釜2上部を加熱するので、内釜2上部の結露を防止することができる。
【0048】
以上で説明したように、蒸らし工程や保温工程においては、本実施例の構成を用いることで、真空容器6の内部を少ない消費電力で高温に保つことができ、再加熱の回数も抑制できるので、低消費電力化,ご飯の品質劣化の防止を容易に実現することができる。
【0049】
上記した本実施例によれば、内釜からの熱の放散を少なく抑えて、高温で蒸らして美味なごはんに仕上げるとともに、保温時も無駄な加熱しないで済むので、加熱によるごはんの乾燥や劣化を少なくするとともに、加熱に必要とする電力量を少なく抑えて省エネルギー性も向上させることができる。また、内釜を誘導加熱する加熱コイル9を十分に冷却することができる。さらに、内釜を高い断熱効果で保温しながら内釜を効率よく誘導加熱することができる。
【実施例2】
【0050】
図4を用いて実施例2を説明する。なお、実施例1と同等の構成は説明を省略することとする。
【0051】
まず、実施例1と実施例2の相違点を説明する。実施例1では、枠体8の下方に側面枠体21を設置したが、実施例2では、枠体8の内周側に側面枠体21を設置した。即ち、実施例2では実施例1に比べ、フランジ部2aの外径および枠体8の内径を大きくするとともに、側面枠体21の高さを大きくした。
【0052】
このように、実施例2では、真空容器6と枠体8の接触部を側面枠体21で覆う構成としたので、断熱に劣る接触部からの熱漏洩を防止することができ、炊飯器の断熱性能を更に高めることができる。
【0053】
上記した本実施例によれば、加熱手段で加熱された内釜2の熱は、内釜2を収納する真空の二層構造をした真空容器6によって断熱され、内釜2からの熱の放散を少なく抑えて、高温で蒸らして美味なごはんに仕上げるとともに、保温時も無駄な加熱をする必要もなく、内釜2上部の結露も無く、加熱によるごはんの乾燥や劣化を少なくするとともに、加熱に必要とする電力量を少なく抑えて省エネルギー性も向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 本体
2 内釜
2a フランジ部
3 外蓋
4 内蓋
6 真空容器
6a 内ケース
6b 外ケース
6c 段差部
6f 上部開口部
6g 下部開口部
7 底面容器
7a 外周部
7b リブ
8 枠体
8a 内釜載置部
8b 内側下垂部
8c 外側下垂部
9 加熱コイル
10 コイル保持部
10b 鍔
11 断熱部材
12 空間部
14 制御回路
15 冷却ファン
16 温度センサ
18 保護部材
20 上部ヒータ
21 側面枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内ケースと外ケースの間に真空層を形成し、上部開口部と下部開口部を有する、略円筒
状の真空容器と、
該真空容器を内壁とする本体と、
前記真空容器の下部に設けられる底面容器と、
前記上部開口部を介して前記真空容器に着脱自在に収納される内釜と、
前記底面容器の下面に設けられ、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、
該加熱コイルに電力を供給する制御手段と、
前記真空容器の上部内側に装着される側面枠体と、
該側面枠体にヒータ線を巻回して構成される上部ヒータと、
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
前記本体の上面を構成する枠体は、前記真空容器の上端を覆っており、
前記側面枠体は前記枠体の下方に設けられることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1に記載の炊飯器において、
前記本体の上面を構成する枠体は、前記真空容器の上端を覆っており、
前記側面枠体は前記枠体の内周側に設けられることを特徴とする炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate