説明

炎症の治療のためのオンダンセトロンの使用およびその医薬組成物

本発明は、一般的に、医薬組成物、より具体的には、局所的経路による治療および/または予防用抗-炎症治療を意図した皮膚用組成物の製造における、活性成分としてのオンダンセトロン、その塩および塩基の使用に関する。より具体的には、本発明は、酒さ、炎症性皮膚疾患を局所的に治療するための、オンダンセトロン、その塩および塩基の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、医薬組成物、より具体的には、局所的経路による治療および/または予防用抗-炎症治療を意図した皮膚用組成物の製造における、活性成分としてのオンダンセトロンの使用に関する。より具体的には、本発明は、酒さ、炎症性皮膚疾患を局所的に治療するための、オンダンセトロンの使用を提供する。オンダンセトロンについては、オンダンセトロン、そのイオン性塩、例えば、塩酸塩、またはその非イオン性の塩基形態を意味する。
【背景技術】
【0002】
オンダンセトロン、すなわち(±)-1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル]-4H-カルバゾール-4-オンは、それ自身既知の化合物であり、米国特許第4695578号に記載されている。オンダンセトロンは、一次求心性神経に位置するニューロンの5HT受容体タイプ3の有力且つ選択的なアンタゴニストとして機能する。特に、オンダンセトロンは、これまで、吐き気および嘔吐を誘導する化学療法を防ぐまたは治療する緩和療法において認可されている。加えて、この化合物は、例えば、偏頭痛、頭痛に関連した痛み、および、5HTが内因性メディエーターである痛みの多くの他の形態の緩和における、鎮痛剤として有用である。
【特許文献1】米国特許第4695578号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、局所的な経路による、炎症性皮膚疾患、酒さを治療するための、オンダンセトロンの使用に関するデータは開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
それゆえ、本発明の主題は、炎症治療用の局所的医薬組成物の製造のための、抗-炎症有効量のオンダンセトロンの使用である。加えて、本発明は、オンダンセトロンを含む医薬組成物を局所適用することによる、炎症を治療する新規な方法を提供する。より具体的には、本発明は、酒さ、炎症性皮膚疾患を局所的に治療するための、オンダンセトロンの使用を提供する。
【0005】
酒さは、よく生じるが、たびたび見落とされる、病因が不確かな皮膚疾患であって、顕著に顔の美観を損ない、眼の合併症を引き起こし、重度の精神的苦痛をもたらし得る皮膚疾患である。酒さの進展は眼に見えるものである:しかしながら、典型的な段階としては、(1)大部分は頬が赤らみ、炎症を起こした日焼けのように見える顔面紅潮(その赤らみは、皮膚の血管の拡張によって引き起こされ、血液がより流れやすくなり、皮膚の表面下でプールされる)、(2)紅斑および/または浮腫、毛細血管拡張症、(3)小さくて赤い固体(丘疹)または膿汁で満たされた(発疹)として現れる吹き出物、ならびに(4) 鼻瘤を含む。
【0006】
中心部での顔面紅斑および毛細血管拡張症は、酒さの初期の段階で顕著である。そして、中心部での顔面丘疹を伴う慢性炎症性浸潤に、および、あまり一般的ではないが、吹き出物へと進展する。一時的または慢性的な顔面の浮腫も生じる可能性がある。幾人かの患者は、鼻瘤、鼻の節くれだった瘤として明白な鼻の結合組織および脂腺の粗い肥大化を発症する。
【0007】
圧倒的に現れる酒さの病状は、一時的な、中心部での顔面赤面および紅斑である。痒みは一般的には生じない;しかしながら、多くの患者が、紅斑の出現と関連する刺痛(重篤になりうる)に苦しむ。これらの紅斑の出現は、たびたび、社会的に困惑し、予期せず生じ、または、環境的な、化学的な、食物的な、または感情的な要因に関連付けすることができる。一般的な要因には、太陽への曝露、寒い気候、突然の感情(笑いまたは困惑)、温かい飲料、およびアルコール摂取を含む。
【0008】
本発明に従えば、一日に一回または二回の局所的に投与されたオンダンセトロン(例えば、クリーム、ゲル、またはローション形態中の)が、顔面紅斑に有効である。本発明は、また、局所的なオンダンセトロンが、丘疹性および膿疱性酒さ、ならびに、幾人かの患者においては紅斑および毛細血管拡張症を減じることができることを教示する。
【0009】
結果として、本発明は、酒さ治療用の局所的医薬組成物の製造のための、有効量のオンダンセトロンの使用に関し、そして、顔面紅斑が明らかである段階で酒さを治療するための、および、好ましくは、紅斑、浮腫、毛細血管拡張症および眼の症状からなる群から選択される症状が明らかである段階でしゅさを治療するための、オンダンセトロンの使用に関する。
【0010】
酒さは、慢性で且つ再発性の疾患であり、一般的には長期間の治療が必要である。症状の制御は、オンダンセトロンの長期間の局所的使用によって順調に維持することができる。
【0011】
本発明の他の特徴、態様、主題および利点は、以下に続く記載、ならびに、それを説明することを企図した非制限的である各種の具体的な実施例を読むことで、より明らかとなるであろう。
【0012】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、局所的使用を意図するものである。より具体的には、医薬組成物は皮膚用組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によるこのような組成物は、抗-炎症有効量のオンダンセトロンおよびオンダンセトロンのための医薬的に許容可能な局所用担体を含む、炎症の局所的治療のための組成物である。
【0014】
皮膚用組成物は、より一般的には、局所的経路による、少なくとも血管病変、炎症成分、または、同時に炎症および伝染性成分を有する皮膚疾患または病状の治療を意図する。
【0015】
より具体的には、皮膚疾患または病状は、湿疹、乾癬、酒さ、尋常性座瘡、潰瘍、脂漏性皮膚炎および化学的、物理的または機械的因子またはその他によって誘導される炎症などの任意のタイプの皮膚病を付随する皮膚の炎症に対応する。
【0016】
以下において、「局所経路」とは、皮膚または眼などの、身体の表面(または外部)部分へ直接塗布することによる化合物の投与のための任意の方法を意味すると理解される。
【0017】
局所経路を介する場合、オンダンセトロンに基づく医薬組成物であって、より具体的には、皮膚または粘膜の治療を意図する医薬組成物は、軟膏(ointment)、クリーム、乳液、軟膏(salve)、粉末、含浸パッド、溶液、ジェル、スプレー、ローションまたは懸濁液の形態で、提供することができる。それはまた、制御放出が可能な脂質もしくはポリマーベシクルまたはナノ粒子またはミクロ粒子、またはポリマーパッチおよびヒドロゲルの形態で提供することができる。これらの局所経路による組成物は、更にその上、臨床指示にしたがって、無水形態または水性形態のいずれかで提供することができる。本発明の実施において特に安定性が高い局所的使用のための調製物は、本明細書の実施例において特に示される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様においては、局所的組成物は、ジェル、クリームまたはローションの形態である。
【0019】
点眼経路を介する場合、本発明の組成物は、主にアイウォッシュである。
【0020】
本発明による組成物、好ましくは局所的使用のための組成物は、組成物の総重量に対して、好ましくは0.01重量%と5重量%の間の、より好ましくは0.5重量%の、最も好ましくは0.75重量%の濃度でオンダンセトロンを含む。
【0021】
本発明の特定のおよび好ましい実施態様によれば、オンダンセトロンの総含量は、組成物の総重量の5から10重量%を超えない。好ましくは、医薬組成物は、三ヶ月間にわたって、一日に二回、局所に塗布される。
【0022】
本発明による医薬組成物は、当然に、不活性な添加剤、または医薬的もしくは化粧品的に活性名添加剤でさえも、またはこれらの添加剤の組み合わせを付加的に含み、特には:湿潤剤;脱色剤、例えばヒドロキノン、アゼライン酸、コーヒー酸またはコジック酸;皮膚軟化剤、保湿剤、例えばグリセロール、PEG400、チアモルホリノンおよびその誘導体、または尿素;抗脂漏剤または抗座瘡剤、例えばS-カルボキシメチルシステイン、S-ベンジルシステアミン、それらの塩またはそれらの誘導体、あるいは過酸化ベンゾイル;抗真菌剤、例えばケトコナゾールまたはポリメチレン-4,5-イソチアゾリドン-3;カロテノイド、特にはβ-カロテン;抗乾癬剤、例えばアントラリンおよびその誘導体;そして、最後に、エイコサ-5,8,11,14-テトライノン酸およびエイコサ-5,8,11-トリイノン酸ならびにそれらのエステルおよびアミド;メトロニダゾール、イベルメクチン、および酒さを治療するために使用される他の剤;抗炎症剤、例えばNSAIDSを含む。
【0023】
本発明による組成物は、また、風味改良剤、防腐剤、例えば、パラ-ヒドロキシ安息香酸のエステル、安定化剤、湿潤調整剤、pH調整剤、浸透圧調節剤、乳化剤、UV-AおよびUV-B遮断剤、ならびに、酸化防止剤、例えばα-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエンを含むことができる。
【0024】
当然のことながら、当業者は、本発明に本質的に備わる有利な特性が、想定される添加によって悪影響を受けないまたは実質的に悪影響を受けないように、医薬組成物に加える任意選択の化合物の選択に注意する。
【0025】
本発明による様々な具体的な調製物の例示を意図した幾つかの実施例を、暗黙に限定すること無しに、以下に示す。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
局所的使用のためのジェルの形態で提供される、本発明による具体的な調製実施例の例示を以下に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
(実施例2)
局所的使用のためのクリームの形態で提供される、本発明による具体的な調製実施例の例示を以下に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
(実施例3)
局所的使用のためのローションの形態で提供される、本発明による具体的な調製実施例の例示を以下に示す。
【0031】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症治療用の局所的医薬組成物の製造のための、抗-炎症有効量のオンダンセトロン、その塩または塩基の使用。
【請求項2】
前記医薬組成物に存在するオンダンセトロンの量が、医薬組成物の総重量に対して、約0.01重量%と5重量%の範囲である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炎症治療が皮膚疾患の治療を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記皮膚疾患が皮膚病に付随して生じる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記皮膚病が、湿疹、乾癬、酒さ、尋常性座瘡、潰瘍、脂漏性皮膚炎および化学的、物理的または機械的因子によって誘導される炎症からなる群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記皮膚病が酒さである、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
酒さ治療用の局所的医薬組成物の製造のための、有効量のオンダンセトロンの使用。
【請求項8】
前記酒さを、顔面紅斑が明らかである段階で治療する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記酒さを、紅斑、浮腫、毛細血管拡張症および眼の症状からなる群から選択される症状が明らかである段階で治療する、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
抗-炎症有効量のオンダンセトロンおよびオンダンセトロンのための医薬的に許容可能な局所用担体を含む、炎症の局所的治療用組成物。
【請求項11】
ジェルの形態の請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
クリームの形態の請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ローションの形態の請求項10に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−513907(P2007−513907A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543452(P2006−543452)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013841
【国際公開番号】WO2005/058312
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント・エス・エヌ・セ (117)
【Fターム(参考)】