炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を、GAPDH阻害剤を用いて治療する方法
本発明は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GAPDH阻害剤を用いた炎症性障害の治療に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2009年8月26日付けで出願された米国特許仮出願第61/275,199号(該出願の内容全体は参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
セプシスは、臨床的には感染に対する全身炎症反応と特徴付けられるが、外傷又は損傷から生じる場合もある[1〜5]。セプシスは、臨床的には感染に対する全身炎症反応と特徴付けられるが、外傷又は損傷から生じる場合もある[1〜5]。セプシスは、世界的に集中治療室(ICU)における患者の主な死亡原因となっており、満たされていない重大な要求を伴う深刻な医学的問題及び科学的挑戦である。死亡率はセプシスの20%から、重症セプシスの40%、敗血症性ショックの60%超にまで及ぶ[2〜4]。現行の療法はセプシスの症状を標的とし、心臓血管機能及び呼吸機能をサポートすることを対象としているが、調節不全の又は十分にバランスの取れていない先天性炎症反応を伴う炎症性疾患の根本原因に特異的に対処するものではない[1、4、10、12]。対症的な集中治療の大幅な進歩にもかかわらず、セプシス生存率の改善が全面的に欠如していることは、効果的な標的指向性の抗セプシス療法における満たされていない要求を示している。
【0004】
セプシスは、感染又は損傷に対する先天性免疫反応における恒常性バランスの喪失によって引き起こされる[1、2]。先天性免疫反応は主に、環境に対する身体のバリアの完全性を伝えるために免疫系の細胞によって用いられるシグナル伝達分子(サイトカインと総称される)によって開始される。サイトカインは通常、病原体関連分子(PAMP)又はダメージ関連分子(DAMP)に応答して免疫細胞によって産生され、他の免疫細胞を活性化して身体の免疫反応を増大させる。臨床的に関連するサイトカインには、炎症を活性化し、増幅させる炎症誘発性メディエーターと、炎症反応を妨げ、そのバランスを保つ抗炎症性メディエーターという2つの主な分類がある。無制限な炎症誘発性メディエーターカスケードが疾患を引き起こすということが免疫学者の間で有力な意見である[1、2、4〜12]。疾患をもたらす炎症誘発性サイトカインの調節不全の流れは、1つのサイトカインが通常、複数の他のサイトカインの産生をもたらし、免疫反応を増強及び増幅させるため、「サイトカインストーム」[13]又は「炎症カスケード」[14]と称されている。
【0005】
炎症誘発性メディエーターは、早期メディエーターと後期メディエーターという2つの亜群に更に分けることができる[1、2、19、20]。早期メディエーター(腫瘍壊死因子、インターロイキン−1、インターロイキン−6等)は、患者が病院を訪れ、医学的処置を受けるまでの期間内に消散してしまうため、恒常性バランスを回復するのに十分な治療標的ではない[1、10〜12、18、19]。一方で、後期メディエーターは「炎症カスケード」の後期、患者が病気になったと自覚した後に低下するため、治療標的とすることができる。治療効果のために後期メディエーターを標的とすることの有望な例は、高移動度群ボックス1(HMGB1)を伴う[2、10〜12、15〜20]。
【0006】
HMGB1は、多くの炎症性疾患の病因において重要な役割を果たす強力な後期作用サイトカインである。様々な異なる方法によるHMGB1のサイトカイン活性の遮断によって、セプシス、関節リウマチ及び他の炎症性疾患の動物モデルにおける転帰が改善される[15、16]。しかしながら、HMGB1は創傷治癒及び炎症の消散を促進する上でも重要な役割を有しているため、治療標的としてのその価値が潜在的に損なわれる[15、17]。したがって、炎症性疾患における治療標的として、潜在的に多面的効果のより少ない他の後期作用炎症性サイトカインを探し出す必要があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法に関する。
【0008】
本発明は、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法であって、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させることを含み、該複合体の形成が、前記候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であることを意味する、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法にも関する。
【0009】
さらに本発明は、炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療するためのGAPDH阻害剤の使用に関する。
【0010】
本発明は更に、炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する薬物の調製のためのGAPDH阻害剤の使用に関する。
【0011】
本発明の更なる目的は、以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】LPSでチャレンジしたRAW264.7細胞が、GAPDH(すなわち、図面中ではF350と表示される)放出の遅延を示すことを示す図である。
【図2】GAPDH処理(すなわち、図面中ではF350処理)が、RAW264.7細胞からTNF反応を誘発することを示す図である。
【図3】TLR4受容体を欠損したマクロファージが、GAPDH(すなわち、図面中ではF350)に対して有意な反応を開始しないことを示す図である。
【図4】GAPDH(すなわち、図面中ではF350)が、RAW264.7マクロファージ様細胞におけるTLR4受容体を介した炎症性シグナル伝達経路を活性化することを示す図である。
【図5】α−GAPDH #4418ポリクローナル抗体(すなわち、図面中ではα−F350 #4418ポリクローナル抗体)が、ヒト全血アッセイにおいてGAPDH(すなわち、図面中ではF350)を中和することを示す図である。
【図6】精製組み換えGST−GAPDH(すなわち、図面中ではGST−F350)が安定な四量体であることを示す図である。
【図7】精製GST−GAPDHが培養マクロファージから炎症反応を誘発することを示す図である。
【図8】精製GST−GAPDHがヒト全血から炎症性サイトカイン反応を誘発し、GAPDHに対する炎症反応がLPSと相乗作用を示すことを示す図である。
【図9】精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジがマウスにおいて病気を引き起こすことを示す図である。
【図10】GAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持されることを示す図である。
【図11】同様にGAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持され、その大きな断片がプロテイナーゼK処理後でも無傷のままであることを示す図である。
【図12】GAPDH抗体がcapture ELISAにおいて機能することを示す図である。
【図13】抗GAPDH 4418抗体がヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することを示す図である。
【図14】抗GAPDH 4418抗体が、マウスにおける致死性内毒素血症中の生存を改善することを示す図である。
【図15】TLR4 KOマクロファージがGAPDH(すなわち、図面中ではF350)に対して反応を示さないことを示す図である。
【図16】ペプチド4抗血清に由来するIgG(ウサギ4418)が、RAW細胞抽出物に対して高い特異性及び感受性を有することを示す図である。
【図17】ヒトマクロファージからのGAPDH放出の半定量的ウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記で論考したように、本発明は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法に関する。本発明の方法に従うと、被験体が炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を有する場合、治療的に有効な量のGAPDH阻害剤の投与によって病態を治療する。被験体に炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがある(at risk for)場合、予防的に(prophylactically)有効な量のGAPDH阻害剤を被験体に投与するのが好ましい。本明細書中で使用される場合、「治療的に有効な量」は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を治療、軽減又は調節するのに有効な量である。本明細書中で使用される場合、「予防的に有効な量」は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を発症するリスクがある患者において、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を予防するか、又は最低でもその重症度を減少させるのに有効な量である。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態」は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される病態である。
【0015】
好ましい実施形態では、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される病態である。最も好ましくは、炎症性サイトカインによって媒介される病態はセプシス、敗血症又は内毒素性ショックである。
【0016】
好ましい実施形態では、GAPDH阻害剤は、GAPDHに特異的に結合する抗体結合部位を含む作用物質、例えば抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)、抗体のFab断片又はF(ab)2断片である。かかる作用物質は既知の方法によって作製することができ、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号及び同第4,816,397号(参照により援用される))、ヒト化抗体(米国特許第5,693,762号、同第5,585,089号及び同第5,565,332号(参照により援用される))、一本鎖Fv(米国特許第4,946,778号(参照により援用される))、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab複合体(例えば、二量体及び三量体)及びミニボディ等の改変抗原結合分子を含む。非限定的な方法としては、GAPDH(又はその断片)による動物の免疫化、続く血清からの抗GAPDH抗体の単離、若しくは脾細胞と骨髄腫細胞との融合によって作製されたハイブリドーマからの抗GAPDHモノクローナル抗体の産生;又はファージ提示法若しくは他の組み換え方法が挙げられる。好ましくは、モノクローナル抗体は治療を受ける種に合うように選択するか、又は適合させる。例えば、ヒトの治療については、抗GAPDH抗体(又はその抗原結合断片)はヒト抗体又はヒト化抗体である。かかる抗原特異的なヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の様々な方法によって開発することができる。
【0017】
他の実施形態では、GAPDH阻害剤は、米国特許出願公開第2006/0293325号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載のGAPDH阻害剤等の当該技術分野で既知のGAPDH阻害剤であり得る。
【0018】
炎症性サイトカインによって媒介される病態の治療(又は炎症性)サイトカインによって媒介される病態のリスクがある被験体の治療)にGAPDH阻害剤を使用する場合、GAPDH阻害剤が単位投与形態において薬学的に許容可能な担体中に配合された物の調製にGAPDHを使用することができることは本発明の範囲内である。この点において、これらの実施形態に有用な医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物への投与のための過度の実験を行うことなく、所望の投与方法に応じて適切に配合することができる。さらに、組成物の適当な投与量は、過度の実験を行うことなく、標準的な用量反応プロトコルを用いて決定することができる。
【0019】
例えば、経口投与、舌側(lingual)投与、舌下投与、頬側投与及び口腔内(intrabuccal)投与用に設計された医薬組成物は、過度の実験を行うことなく、当該技術分野で既知の手段、例えば不活性希釈剤又は食用担体を用いて作製することができる。組成物をゼラチンカプセル内に封入しても、又は圧縮して錠剤にしてもよい。治療的な経口投与の目的で、本発明の医薬組成物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤、チューインガム等の形態で使用してもよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、結合剤、レシピエント、崩壊剤、滑沢剤、甘味料及び香料を含有していてもよい。結合剤の幾つかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプン又はラクトースが挙げられる。崩壊剤の幾つかの例としては、アルギン酸、コーンスターチ等が挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤の一例はコロイド状二酸化ケイ素である。甘味料の幾つかの例としては、スクロース、サッカリン等が挙げられる。香料の例としては、ペパーミント香料、サリチル酸メチル、オレンジ香料等が挙げられる。これらの様々な組成物を調製するために使用される材料は、薬学的に純粋でかつ使用される量で非毒性であるものとする。
【0020】
本発明に有用な医薬組成物は、非経口的に、例えば静脈注射、筋肉注射、髄腔内注射又は皮下注射によっても投与することができる。非経口投与は、本発明の組成物を溶液又は懸濁液中に組み入れることによって達成することができる。かかる溶液又は懸濁液としては、注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の滅菌希釈剤を挙げることもできる。非経口製剤は、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、及びEDTA等のキレート剤を含んでいてもよい。酢酸緩衝剤(acetates)、クエン酸緩衝剤(citrates)又はリン酸緩衝剤(phosphates)等の緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張化剤(agents for the adjustment of tonicity)を添加してもよい。非経口調製物は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は多人数用バイアルに封入することができる。
【0021】
直腸投与は、医薬組成物を直腸又は大腸に投与することを含む。これは坐薬又は浣腸剤を用いて達成することができる。坐薬製剤は当該技術分野で既知の方法によって容易に作製することができる。例えば、坐薬製剤は、グリセリンを約120℃まで加熱し、組成物をグリセリンに溶解させ、加熱したグリセリンを混合し(その後精製水を添加してもよい)、加熱混合物を坐薬鋳型内に注ぎ入れることによって調製することができる。
【0022】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮吸収を含む。経皮製剤としては、パッチ(既知のニコチンパッチ等)、軟膏剤、クリーム、ジェル、軟膏等が挙げられる。
【0023】
本発明は、経鼻投与に好適な担体中に配合したGAPDH阻害剤を哺乳動物に経鼻投与することも含む。本明細書中で使用される場合、「経鼻投与する」又は「経鼻投与」は、組成物を患者の鼻道又は鼻腔の粘膜に投与することを含む。本明細書中で使用される場合、「組成物の経鼻投与のための医薬組成物」は、例えば鼻腔用スプレー、点鼻薬、懸濁液、ジェル、軟膏、クリーム又は粉末として投与されるように既知の方法によって調製した組成物中に配合された治療的に有効な量のGAPDH阻害剤を含む。組成物の投与は、鼻タンポン又は鼻スポンジを用いて行なってもよい。
【0024】
多くの実施形態について、最大限の抗炎症効果を達成するためには、GAPDH阻害剤が血流中に可能な限り迅速に導入されるように、GAPDH阻害剤を非経口的に、好ましくは静脈内に投与することが所望されると予想される。
【0025】
本発明は、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法にも関する。該方法は、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させる工程を含む。複合体の形成は、候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であり、炎症性サイトカインによって媒介される病態の治療、又は炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがある被験体の治療に使用することができることを意味する。接触は、当該技術分野で既知の標準的な手順を用いて行われる。
【0026】
GAPDHの阻害剤である潜在的な薬剤又は化合物のスクリーニングに関して、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される病態である。
【0027】
好ましい実施形態では、GAPDH阻害剤のスクリーニングの目的で、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される病態である。最も好ましくは、GAPDH阻害剤のスクリーニングの目的で、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、セプシス、敗血症又は内毒素性ショックである。
【0028】
本発明は、以下の実験の詳細からより良く理解される。しかしながら、論考される具体的な方法及び結果が、その後に続く特許請求の範囲においてより十分に記載される本発明の単なる例示に過ぎないことを当業者は容易に理解するであろう。
【実施例】
【0029】
実験の詳細
方法
GAPDHのホモログが研究対象のあらゆる界及び門で同定されているように、GAPDHは高度の進化的保存性を有するため、これを候補炎症性サイトカインとして研究に選択した。ヒトGAPDHホモログと、ヒト疾患を引き起こす溶血性大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhii)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)等を含む幾つかの細菌において見られるGAPDHホモログとの間に相当なアミノ酸配列同一性が存在するため、GAPDHは特に関心が持たれていた。ヒトGAPDHホモログと比較した、選択された種において見られるGAPDHホモログの同一性(%)及び類似性(%)を下記表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
GAPDHタンパク質配列アラインメント
GAPDHタンパク質配列を、国立生物工学情報センター(NCBI)のGAPDHタンパク質配列アラインメントデータベースから入手した。タンパク質配列アラインメントを、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のT−Coffee多重配列アラインメントサーバー[http://www.ebi.ac.uk/Tools/t-coffee/index.html]を用いて行い、GAPDHホモログ間の同一性(%)及び類似性(%)を、これらのアラインメントの結果に基づいて算出した。
【0032】
細胞培養
マウスマクロファージ様RAW264.7細胞を、アメリカンタイプティッシュコレクション(ATTC)から入手した。RAW264.7細胞を、1%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)(BioWhittaker)、及び2mM L−グルタミン、及び100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(全てSigma製)を添加したダルベッコ改変必須培地(DMEM)(Gibco)中で培養した。Raw264.7培養物を5%CO2下、37℃でインキュベートした。細胞周期を遅らせて細胞集団を同調させる目的で、細胞を1%FBS培地中で血清除去した。細胞の血清除去はまた、利用可能な成長因子を制限し、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの活性化につながる経路における細胞内シグナル伝達のレベルを最小限に抑える。興味深いことには、細菌内毒素(LPS)等の免疫チャレンジによってもMAPキナーゼが活性化され、炎症反応が生じ、それにより高レベルのFBSのために、本研究の調査対象の特異的な免疫チャレンジによって誘発されるMAPキナーゼシグナルの検出が妨げられる恐れがある。RAW264.7細胞はおよそ70%コンフルエンスで使用し、全ての処理を無血清Opti−MEM I培地中で行った。
【0033】
野生型のToll様受容体(TLR)2、TLR4又は終末糖化産物受容体(RAGE)欠損マウスから採取した腹腔マクロファージを、10%FBS、及び2mM L−グルタミン、及び100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁し、24ウェルPrimaria組織培養プレート(Falcon)に1×106細胞/ウェルでプレーティングした。培養物を5%CO2下、37℃で24時間維持した。実験の30分前に培養培地を無血清Opti−MEM I培地に交換し、全ての処理を記載の通りに無血清Opti−MEM I培地中で行った。
【0034】
GAPDH産生のためにLPSでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I(Gibco)中で20分間維持した。細胞を100ng/mlのLPS(Sigma)(使用前におよそ30分間超音波処理した)によって、4つの時点(24時間、21時間、18時間及び16時間)からなる時間経過でチャレンジした。次いで、培地サンプルを管に移し、細胞をM細胞溶解試薬(Sigma)で溶解した。BCAタンパク質アッセイ(Pierce)を細胞溶解物に対して行い、その結果を用いて、ウエスタンブロットによって培地中で検出されたGAPDHレベルに寄与する細胞の量について標準化した。サンプルをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離し、ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Biorad)に転写した。膜を5%ミルクで2時間ブロッキングし、PBST中1000倍の希釈率のF350に指向性を有するウサギ抗血清から精製したIgGで2時間プロービングした。結合した抗F350抗体を、2.5%ミルクで2000倍に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgG(Abcam)で1時間検出した。ブロットを増強化学発光(ECL)試薬(Pierce)で展開し、高感度X線フィルム(Kodak)に感光させることによって視覚化した。
【0035】
サイトカイン誘発のためにGAPDHでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I中で20分間維持した。細胞を或る濃度範囲の精製組み換えGAPDH(その場で産生された)でチャレンジして、炎症メディエーター産生の濃度依存的反応性を判定した。濃度範囲は、5倍希釈系列での7つのGAPDH濃度(50μg/ml、10μg/ml、2μg/ml、0.4μg/ml、0.08μg/ml、0.016μg/ml、0μg/ml)からなるものであった。細胞を37℃及び5%CO2で4時間インキュベートした(TNF)。処理後、培地を採取して管に移し、M細胞溶解試薬を細胞にアプライした。タンパク質アッセイを細胞溶解物に対して行い、このデータを用いて、TNF放出に寄与する細胞の量について標準化した。培地サンプルを、マウスTNFに指向性を有する酵素結合免疫吸着法(ELISA)に供した(全てのELISA試薬はR+D systemsから入手した)。これらのELISAプレートは、製造業者の推奨に従って準備し、実行した。簡潔に述べると、サンプルをロッカー上、4℃で一晩ELISAプレートにおいてインキュベートした。プレートを、0.05%TWEEN−20を添加したリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)で2000倍に希釈した検出抗体をプレートに2時間アプライした。プレートを再度上記の通りに洗浄し、1%BSAで2000倍に希釈したストレプトアビジン(streptavidin)−HRPをプレートに15分間アプライした。プレートを再度上記の通りに洗浄した後、基質試薬を各々のウェルにアプライすることによって展開した。標準曲線が明らかになった時点で(通常は8分〜10分)、2M H2SO4を添加することによって反応を停止した。
【0036】
シグナル伝達経路活性化のためにGAPDH又はLPSでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I中で20分間維持した。細胞をGAPDH又はLPSのいずれかによって、7つの時点(180分、120分、60分、30分、15分及び0分)を含む時間経過でチャレンジした。GAPDH処理は、Opti−MEM Iで50μg/mlに希釈した精製GAPDHによるものであった。LPS処理は、Opti−MEM Iで20ng/mlに希釈したLPS(使用前におよそ30分間超音波処理した)によるものであった。経時的実験に用いた処理は、時点間の培養温度を維持するために37℃の水浴中でインキュベートし、使用前に5分間超音波処理するものであった。処理が終了した後、プレートを氷上に置き、培地をウェルから吸引し、即座に氷冷細胞溶解バッファー[1%SDS、0.1%NaN3、及びHALTプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤(Pierce)に添加したM細胞溶解試薬]に交換した。細胞にアプライすると、バッファーは瞬間的かつ完全な細胞溶解に起因する高粘性溶液を形成する。溶解物を擦り取り、小ゲージ(26g)針を有する1ml容滅菌注射器を用いてサンプルを管に移した。溶解物をホモジナイズするために、サンプルをおよそ20回注射器に出し入れした。次いで、サンプルを14000回転毎分(rpm)で5分間、微量遠心機で遠沈した後、ホモジナイズしたチャレンジ細胞の溶解物に対しBCAタンパク質アッセイを行った。次いで、これらのタンパク質アッセイによる結果を用いて、40μlの最終容量でSDS−PAGEゲルの各々のウェルにロードしたタンパク質のレベルを標準化した。次いで、ゲルをPVDF膜に転写した後、これを5%ミルクで2時間ブロッキングした。次いで、2.5%ミルクを添加したPBSTで1000倍に希釈した、B細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子阻害剤α(IκBα)又はc−Jun N末端キナーゼ(JNK)の活性化形態のいずれかに指向性を有する特異的抗体(Cell Signaling Technologies)で膜をプロービングし、ロッカー上、4℃で一晩インキュベートした。結合したIκBα抗体を、2.5%ミルク中でのHRP結合抗マウスIgGの2000倍希釈物を用いて検出し、結合したJNK抗体を、2.5%ミルク中でのHRP結合抗ウサギIgGの2000倍希釈物を用いて検出した。この二次抗体とともに膜を2時間インキュベートした。ブロットを、電気化学発光ECL検出試薬を用いて展開し、X線フィルムに感光させることによって視覚化した。
【0037】
ヒト全血アッセイにおけるα−GAPDH #4418抗体の中和活性
ヒト全血を、ロングアイランド血液サービスの匿名提供者から得た。血液を48ウェルプレートに250μl/ウェルで分注した。次いで、アリコートを記載の通りに37℃で4時間処理した。サンプルを室温、5000rpmで5分間遠心分離して血漿を分離した。血漿中のTNFレベルを上記のようにELISAによって決定した。
【0038】
プロテインA/Gセファロース(Pierce)を用いて、α−GAPDH #4418抗血清に由来するIgGを精製した。精製IgGを用いて、GAPDH活性を中和するα−GAPDH #4418の能力について試験した。GAPDH(10ug/ml)単独、GAPDH+非特異的ウサギIgG(100ug/ml)、GAPDH+α−GAPDH #4418(100ug/ml)、α−GAPDH #4418単独、非特異的ウサギIgG単独という6つの条件を試験した。GAPDH+α−GAPDH #4418処理については、混合物を全血にアプライする前に室温で30分間プレインキュベートした。
【0039】
結果及び考察
LPSでチャレンジしたRAW264.7細胞はGAPDH放出の遅延を示す
サイトカインは、感染又は損傷等の免疫学的チャレンジに応答して免疫細胞によって放出されるシグナル伝達分子である。したがって、免疫細胞を細菌内毒素(LPS)チャレンジによって活性化すると、免疫細胞はサイトカイン反応を開始するはずである。したがって、GAPDHがサイトカインとして機能する場合、GAPDHはLPS活性化マクロファージによって時間依存的に誘発されるはずであると推論した。この仮説を検証するために、RAW264.7細胞をLPSでチャレンジし、培養上清中のGAPDHを種々の時点で測定した。図1に示されるように、結果はGAPDHが活性化免疫細胞から時間依存的に放出されることを示す。LPS処理の16時間後では、培養上清が検出可能なGAPDHを示さなかったことを見出した。処理の18時間後にGAPDHが培養上清中に現れ、処理の24時間後までに徐々に増加した。非チャレンジ細胞は、24時間後に培養上清中に微量のGAPDHしか示さなかった。これは、GAPDHがLPS刺激後遅くに先天性免疫細胞から放出されることを示し、GAPDHが免疫チャレンジ中に後期作用サイトカインとして機能することができ、したがって早期サイトカインメディエーターとは対照的に、病的炎症状態において治療標的とすることができることを示唆しているため、重要である。
【0040】
GAPDH処理は、RAW264.7マクロファージ様細胞からサイトカイン反応を誘発する
サイトカインは炎症性疾患を媒介し得る。マクロファージ等の先天性免疫細胞は、炎症誘発性サイトカインに遭遇すると、異物の侵入から身体を防御する準備をすることによって反応する。この反応の重要な一面は、より多くの炎症誘発性サイトカインを放出することによって、より多くの免疫細胞に体内の危険について警告を発することである。したがって、GAPDHが炎症性サイトカインとして作用する場合、マクロファージ様RAW264.7細胞がGAPDH処理に応答して、炎症性疾患の早期サイトカインメディエーターである[1、2、8、9、27]、腫瘍壊死因子(TNF)を産生すると仮定した。TNFは通常、処理のおよそ4時間後に免疫細胞の順化培地において相当量測定される。RAW264.7細胞を、5倍希釈系列(50μg/ml〜0.016μg/ml)の精製組み換えヒトGAPDHで処理し、続いてTNFの産生及び培地への放出をELISAによって測定した。GAPDH処理の4時間後、順化培地を採取し、TNFのレベルをELISAによって分析した。これらの結果を細胞溶解物中の細胞タンパク質の量に対して標準化した。これを図2に示す。GAPDHは実際に、RAW264.7細胞からTNFを濃度依存的に誘導する。50μg/mlのGAPDHで処理した細胞は、細胞タンパク質1mg当たりおよそ2250pgのTNF放出を引き起こした。この反応は10ng/mlのLPSでの処理に相当していた。したがって、本発明者らの仮説と合致して、GAPDHは細胞の炎症誘発性メディエーターの放出を促進することによって先天性免疫反応を誘導し、GAPDHが病的炎症の炎症誘発性サイトカインメディエーターとして機能することができることが示される。
【0041】
GAPDHは、RAW264.7マクロファージ様細胞におけるTLR4受容体を介した炎症性シグナル伝達経路を活性化する
先天性免疫細胞活性化は、炎症反応に至る細胞内シグナル伝達経路を開始する細胞表面受容体に対する微生物産物(PAMP)、内因性危険シグナル伝達分子(DAMP)又は炎症性サイトカイン(TNF、HMGB1、IL−6等)の作用に起因する。様々なサイトカインによって利用される細胞表面受容体が多く存在するが、Toll様受容体(TLR)がPAMP及びDAMPを認識する上で中心的な役割を果たす。TLR及びその下流のシグナル伝達成分は、ホモログが脊椎動物のみならず無脊椎動物においても見られるため、後生動物の進化において高度に保存されている。哺乳動物においては、各々がPAMP類又はDAMP類を認識する能力が異なる、11個ものToll様受容体(TLR1〜TLR10及びIL−1受容体を含む)が存在する[22〜25]。例えば、TLR1、TLR2及びTLR6はアシル化リポタンパク質を認識し、TLR3は二本鎖RNAを認識し、TLR7及びTLR8は一本鎖ウイルスRNAを認識し、TLR9は細菌CpG DNAを認識し、TLR4は主要な細菌内毒素(LPS)受容体である。TLR2及びTLR4は、70キロダルトン熱ショックタンパク質(HSP70)及びHMGB1を含む様々なDAMPの認識にも関与していた[22〜26]。HMGB1のようなシグナル伝達タンパク質は、炎症進行の後期に活性化免疫細胞から分泌されるとサイトカインとしても機能するため、GAPDHが同様に、DAMP又はサイトカインとしてTLR受容体媒介経路を介して炎症シグナル伝達を活性化すると推論した。したがって、GAPDHが、HMGB1シグナル伝達活性にも関与していたTLR2、TLR4又は終末糖化産物受容体(RAGE)が欠損した動物から採取したマクロファージから炎症反応を活性化し得るか否かを試験した。
【0042】
図3に示すように、野生型マクロファージは、50μg/mlのGAPDHでの処理に対して盛んに反応し、細胞タンパク質1mg当たりおよそ6000pgのTNFを放出した。RAGE又はTLR2のいずれかを欠損した細胞も、50μg/mlのGAPDHでの処理に対して盛んに反応し、細胞タンパク質1mg当たりおよそ4500pg及び5000pgのTNFをそれぞれ放出し、野生型対照とは有意に異ならなかった。対照的に、TLR4を欠損したマクロファージはGAPDHに対する有意な反応を開始しなかった。このデータは、TLR4がGAPDHの主要な細胞表面受容体であることを示し、GAPDHが、TLR4シグナル伝達経路を活性化することによってマクロファージから炎症反応を誘発することを示唆している。
【0043】
TLR4が主要な受容体(それを介してGAPDHが炎症反応を誘発する)であることと合致して、GAPDHでのRAW264.7細胞の処理によって、TLR4の下流にあるシグナル伝達経路が活性化されることを見出した。TLR4受容体シグナル伝達経路の活性化は、核因子κB(NF−κB)の活性化につながる。NF−κBは、TLR活性化に応答した炎症メディエーターの産生に必要とされる転写因子である[21]。NF−κBは、免疫細胞の細胞質においてB細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子阻害剤α(IκBα)によって不活性形態で維持される。したがって、IκBα分解(細胞溶解物中のレベルの低下としてウエスタンブロット分析によって容易に検出される)は、NF−κBの活性化に直接対応する。加えて、TLR4受容体の刺激によって、マイトジェンに対して反応を示し、多くの細胞活性を調節するセリン/トレオニン特異的タンパク質キナーゼであるマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼが活性化される。かかるMAPキナーゼの1つは、TLR4シグナル伝達によって強く活性化されるc−Jun N末端キナーゼ(JNK)である[22、24]。したがって、RAW264.7マクロファージ様細胞においてIκBαの分解及びJNKの活性化を引き起こすGAPDH処理の能力を測定した。
【0044】
RAW264.7マクロファージ様細胞を、50μg/mlのGAPDH又は20ng/mlのLPSのいずれかによって、180分〜0分の範囲にわたる6つの時点からなる時間経過でチャレンジした。処理が完了した後、培地を吸引し、細胞溶解バッファーを細胞にアプライした。分離用のSDSPAGEゲルの各々のウェルにロードしたタンパク質の量を標準化するために、細胞溶解物に対してタンパク質アッセイを行った。次いで、ゲルをPVDF膜に転写し、GAPDH又はLPSでチャレンジした細胞に由来する溶解物に対してウエスタンブロット分析を行った。図4に示されるように、GAPDH処理によってNF−κB及びJNKのシグナル伝達経路が活性化されることを見出した。LPSでチャレンジしたRAW264.7マクロファージ様細胞では、IκBαの基礎レベルは時間とともに低下して、ゆっくりとベースラインまで戻り、このことからNF−κB経路の一時的活性化が示唆された。RAW264.7細胞をGAPDHでチャレンジすると、IκBαの基礎レベルが劇的に低下し、処理の30分後までにはほとんど検出不能になり、次いでゆっくりとベースラインまで戻った。このほぼ量的なIκBα分解は、GAPDH処理の30分後のNF−κB経路の非常に強力な活性化を示唆している。
【0045】
RAW264.7細胞では、JNK経路の基礎活性は最初のうちは低かった。しかしながら、LPSチャレンジ後にJNK活性化が急速に刺激され、30分後には約2倍にまで増加した。LPS処理の60分後には、JNK活性化は約7倍にまで増加した。興味深いことに、細胞をGAPDHで処理した場合、活性化JNKのレベルははるかに速い速度で増加した。GAPDHチャレンジの30分後には、活性化JNKレベルのおよそ8倍の増加が観察され、60分後にはおよそ15倍の増加にまで上昇した。これらの結果から、GAPDHが、PAMP、DAMP及び炎症誘発性サイトカイン等の炎症分子によって刺激される細胞内シグナル伝達経路を活性化することが示される。これらの発見は、GAPDHが、TLR4シグナル伝達経路を活性化する内因性炎症メディエーターであるという仮説を支持するものである。
【0046】
α−GAPDH #4418ポリクローナル抗体は、ヒト全血アッセイにおいてGAPDHを中和する
先述の通り、GAPDHでチャレンジしたRAW264.7マクロファージ様マウス細胞は、TNF及びIL−6等の炎症誘発性サイトカインメディエーターを放出する。本発明者らは究極的にはヒト炎症性疾患に関心を持っていたため、次にGAPDHがex vivoのヒト全血からも炎症反応を誘発し得るか否かを試験した。また、GAPDHに指向性を有する抗体がヒト全血においてその炎症活性を中和し得るか否かを試験するために、このアッセイシステムを使用した。図5に示されるように、精製組み換えGAPDHは、ヒト全血から強いTNF反応を誘発する。GAPDH処理の4時間後、サンプルを回収し、血漿を遠心分離によって分離した。次いで、血漿TNFレベルをELISAによって測定し、10μg/mlのF350でのチャレンジがおよそ450pg/mlのTNFを生じたことが示された。次に、精製組み換えGAPDHをα−GAPDH #4418抗血清に由来する精製IgGで前処理した。次いで、この混合物を全血にアプライした。α−GAPDH #4418でのGAPDHの前処理によって、GAPDHでチャレンジしたヒト全血から誘発されるTNFレベルがおよそ50%低下した。しかしながら、α−GAPDH #4418抗体はアフィニティー精製されず、ウサギ抗血清に由来する全IgGのごく一部しかGAPDHに指向性を有しなかった。したがって、アフィニティー精製抗体がより強い中和をもたらすと仮定される。GAPDH炎症活性を中和するα−GAPDH #4418抗体の能力は、ヒト炎症性疾患における治療標的としてのGAPDHの有効性を示すため、重要な観察項目である。
【0047】
α−GAPDH #4418抗体単独で処理した血液サンプルは、約60pg/mlのTNFを生じた。α−GAPDH #4418抗体を、Limulus変形細胞溶解物アッセイ(LAL)によってLPS混入について試験すると、タンパク質1mg当たり8pg〜20pgのLPSを含有することが見出された(データは示さない)。このことは、α−GAPDH #4418抗体のみで処理した血液におけるTNF反応に寄与するようである。未刺激の全血が通常は検出可能なTNFを含有しないことに留意されたい(データは示さない)。
【0048】
更なる実験
更なる実験を行った。これらの実験の結果を図6〜図17に示す。注目すべきことに、精製GST−GAPDHがヒト血液から炎症性サイトカイン反応を誘発することが見出され、GAPDHに対する炎症反応はLPSと相乗作用を示した(図8を参照されたい)。加えて、或る特定の臨床スコアリングパラメータ(すなわち、立毛、閉眼、下痢、振戦、活動、相対温度(最大9点/マウス;n=6/群))の評価に基づき、精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジがマウスにおいて病気を引き起こすことが見出された(図9を参照されたい)。GAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持されることも見出された(図10及び図11を参照されたい)。更なる実験において、抗GAPDH 4418抗体がヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することが見出され(図13を参照されたい)、抗GAPDH 4418抗体の投与によってマウスにおける致死性内毒素血症中の生存が改善されることが見出された(図14を参照されたい)。
【0049】
結論
セプシスに対する現行の療法の大半は効果がない。セプシスの発症は非常に急速に起こる可能性があり、患者が気付かない場合もある。生物学的には、「サイトカインカスケード」が始まった矢先に、知覚される障害(すなわち感染、外傷、損傷)に対する身体の免疫系の反応が開始される。患者が病気であると認識する頃には、TNF及びIL−1のような早期炎症誘発性メディエーターが既に経過をたどっており、それらの標的化は効果がなくなっている[1、10〜12、18、19]。しかしながら、HMGB1等の病的炎症の後期メディエーターは、免疫細胞から未だ誘発されていない可能性がある。ただし、HMGB1は創傷治癒及び炎症の消散の促進にも関与するため、困難な状況をもたらす。その機能する能力を低減することは、不適切に標的化された場合に生物に悪影響をもたらす場合がある。したがって、活性範囲がHMGB1ほど多面的ではない可能性がある、GAPDH等の新規の後期炎症メディエーターを同定することが重要である。
【0050】
GAPDHが炎症のメディエーターとして機能し得ることを示した。内毒素で処理した先天性免疫細胞は、サイトカインを放出し、病原体に対する身体の反応を増大させることによって反応する。GAPDHがマウスマクロファージ様RAW264.7細胞において内毒素処理の16時間〜18時間後に放出されることが見出された。炎症性サイトカインは、より多くの炎症性サイトカイン及び他の炎症メディエーターを免疫細胞から誘発する。このことはGAPDHの場合にも当てはまっていた。GAPDH処理をRAW264.7細胞に適用した場合、細胞は、2つの炎症誘発性サイトカインであるTNF及びIL−6を産生することによって反応した。炎症性サイトカインは、細胞内シグナル伝達経路を用いて免疫細胞を誘導し、適切に反応する。IκBα分解及びJNK活性化は、炎症を促進する分子(すなわち、PAMP、DAMP、炎症誘発性サイトカイン)による炎症経路刺激の分子マーカーである。GAPDH処理は、RAW264.7マクロファージ様細胞に由来する溶解物において、IκBαの分解及びJNKの活性化の両方を引き起こし、炎症経路シグナル伝達を刺激し得ることが示される。興味深いことに、マクロファージからサイトカインを誘発するGAPDHの能力は、HMGB1等の他の内因性メディエーターの炎症活性に関与していたパターン認識受容体である、TLR4受容体に依存していた[26]。
【0051】
更なる実験では、精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジが、マウスにおいて病気を引き起こすことが示され、GAPDHが病原性炎症の致死的進行において果たし得る役割が更に支持される。重要なことには、GAPDHに対して生成されたポリクローナル抗体(すなわち、抗GAPDH 4418抗体)は、ヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することが見出され、抗GAPDH 4418抗体の投与は、マウスにおいて致死性内毒素血症の生存を改善することが見出された。このことから、GAPDHが炎症性疾患における臨床転帰を改善する治療標的として有用であること、並びにGAPDH阻害剤がセプシス及び関連病態等の炎症性疾患の治療に潜在的に有用であることが実証される。
【0052】
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【技術分野】
【0001】
本発明は、GAPDH阻害剤を用いた炎症性障害の治療に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2009年8月26日付けで出願された米国特許仮出願第61/275,199号(該出願の内容全体は参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
セプシスは、臨床的には感染に対する全身炎症反応と特徴付けられるが、外傷又は損傷から生じる場合もある[1〜5]。セプシスは、臨床的には感染に対する全身炎症反応と特徴付けられるが、外傷又は損傷から生じる場合もある[1〜5]。セプシスは、世界的に集中治療室(ICU)における患者の主な死亡原因となっており、満たされていない重大な要求を伴う深刻な医学的問題及び科学的挑戦である。死亡率はセプシスの20%から、重症セプシスの40%、敗血症性ショックの60%超にまで及ぶ[2〜4]。現行の療法はセプシスの症状を標的とし、心臓血管機能及び呼吸機能をサポートすることを対象としているが、調節不全の又は十分にバランスの取れていない先天性炎症反応を伴う炎症性疾患の根本原因に特異的に対処するものではない[1、4、10、12]。対症的な集中治療の大幅な進歩にもかかわらず、セプシス生存率の改善が全面的に欠如していることは、効果的な標的指向性の抗セプシス療法における満たされていない要求を示している。
【0004】
セプシスは、感染又は損傷に対する先天性免疫反応における恒常性バランスの喪失によって引き起こされる[1、2]。先天性免疫反応は主に、環境に対する身体のバリアの完全性を伝えるために免疫系の細胞によって用いられるシグナル伝達分子(サイトカインと総称される)によって開始される。サイトカインは通常、病原体関連分子(PAMP)又はダメージ関連分子(DAMP)に応答して免疫細胞によって産生され、他の免疫細胞を活性化して身体の免疫反応を増大させる。臨床的に関連するサイトカインには、炎症を活性化し、増幅させる炎症誘発性メディエーターと、炎症反応を妨げ、そのバランスを保つ抗炎症性メディエーターという2つの主な分類がある。無制限な炎症誘発性メディエーターカスケードが疾患を引き起こすということが免疫学者の間で有力な意見である[1、2、4〜12]。疾患をもたらす炎症誘発性サイトカインの調節不全の流れは、1つのサイトカインが通常、複数の他のサイトカインの産生をもたらし、免疫反応を増強及び増幅させるため、「サイトカインストーム」[13]又は「炎症カスケード」[14]と称されている。
【0005】
炎症誘発性メディエーターは、早期メディエーターと後期メディエーターという2つの亜群に更に分けることができる[1、2、19、20]。早期メディエーター(腫瘍壊死因子、インターロイキン−1、インターロイキン−6等)は、患者が病院を訪れ、医学的処置を受けるまでの期間内に消散してしまうため、恒常性バランスを回復するのに十分な治療標的ではない[1、10〜12、18、19]。一方で、後期メディエーターは「炎症カスケード」の後期、患者が病気になったと自覚した後に低下するため、治療標的とすることができる。治療効果のために後期メディエーターを標的とすることの有望な例は、高移動度群ボックス1(HMGB1)を伴う[2、10〜12、15〜20]。
【0006】
HMGB1は、多くの炎症性疾患の病因において重要な役割を果たす強力な後期作用サイトカインである。様々な異なる方法によるHMGB1のサイトカイン活性の遮断によって、セプシス、関節リウマチ及び他の炎症性疾患の動物モデルにおける転帰が改善される[15、16]。しかしながら、HMGB1は創傷治癒及び炎症の消散を促進する上でも重要な役割を有しているため、治療標的としてのその価値が潜在的に損なわれる[15、17]。したがって、炎症性疾患における治療標的として、潜在的に多面的効果のより少ない他の後期作用炎症性サイトカインを探し出す必要があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法に関する。
【0008】
本発明は、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法であって、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させることを含み、該複合体の形成が、前記候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であることを意味する、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法にも関する。
【0009】
さらに本発明は、炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療するためのGAPDH阻害剤の使用に関する。
【0010】
本発明は更に、炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する薬物の調製のためのGAPDH阻害剤の使用に関する。
【0011】
本発明の更なる目的は、以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】LPSでチャレンジしたRAW264.7細胞が、GAPDH(すなわち、図面中ではF350と表示される)放出の遅延を示すことを示す図である。
【図2】GAPDH処理(すなわち、図面中ではF350処理)が、RAW264.7細胞からTNF反応を誘発することを示す図である。
【図3】TLR4受容体を欠損したマクロファージが、GAPDH(すなわち、図面中ではF350)に対して有意な反応を開始しないことを示す図である。
【図4】GAPDH(すなわち、図面中ではF350)が、RAW264.7マクロファージ様細胞におけるTLR4受容体を介した炎症性シグナル伝達経路を活性化することを示す図である。
【図5】α−GAPDH #4418ポリクローナル抗体(すなわち、図面中ではα−F350 #4418ポリクローナル抗体)が、ヒト全血アッセイにおいてGAPDH(すなわち、図面中ではF350)を中和することを示す図である。
【図6】精製組み換えGST−GAPDH(すなわち、図面中ではGST−F350)が安定な四量体であることを示す図である。
【図7】精製GST−GAPDHが培養マクロファージから炎症反応を誘発することを示す図である。
【図8】精製GST−GAPDHがヒト全血から炎症性サイトカイン反応を誘発し、GAPDHに対する炎症反応がLPSと相乗作用を示すことを示す図である。
【図9】精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジがマウスにおいて病気を引き起こすことを示す図である。
【図10】GAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持されることを示す図である。
【図11】同様にGAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持され、その大きな断片がプロテイナーゼK処理後でも無傷のままであることを示す図である。
【図12】GAPDH抗体がcapture ELISAにおいて機能することを示す図である。
【図13】抗GAPDH 4418抗体がヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することを示す図である。
【図14】抗GAPDH 4418抗体が、マウスにおける致死性内毒素血症中の生存を改善することを示す図である。
【図15】TLR4 KOマクロファージがGAPDH(すなわち、図面中ではF350)に対して反応を示さないことを示す図である。
【図16】ペプチド4抗血清に由来するIgG(ウサギ4418)が、RAW細胞抽出物に対して高い特異性及び感受性を有することを示す図である。
【図17】ヒトマクロファージからのGAPDH放出の半定量的ウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記で論考したように、本発明は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法に関する。本発明の方法に従うと、被験体が炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を有する場合、治療的に有効な量のGAPDH阻害剤の投与によって病態を治療する。被験体に炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがある(at risk for)場合、予防的に(prophylactically)有効な量のGAPDH阻害剤を被験体に投与するのが好ましい。本明細書中で使用される場合、「治療的に有効な量」は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を治療、軽減又は調節するのに有効な量である。本明細書中で使用される場合、「予防的に有効な量」は、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を発症するリスクがある患者において、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を予防するか、又は最低でもその重症度を減少させるのに有効な量である。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態」は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される病態である。
【0015】
好ましい実施形態では、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される病態である。最も好ましくは、炎症性サイトカインによって媒介される病態はセプシス、敗血症又は内毒素性ショックである。
【0016】
好ましい実施形態では、GAPDH阻害剤は、GAPDHに特異的に結合する抗体結合部位を含む作用物質、例えば抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)、抗体のFab断片又はF(ab)2断片である。かかる作用物質は既知の方法によって作製することができ、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号及び同第4,816,397号(参照により援用される))、ヒト化抗体(米国特許第5,693,762号、同第5,585,089号及び同第5,565,332号(参照により援用される))、一本鎖Fv(米国特許第4,946,778号(参照により援用される))、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab複合体(例えば、二量体及び三量体)及びミニボディ等の改変抗原結合分子を含む。非限定的な方法としては、GAPDH(又はその断片)による動物の免疫化、続く血清からの抗GAPDH抗体の単離、若しくは脾細胞と骨髄腫細胞との融合によって作製されたハイブリドーマからの抗GAPDHモノクローナル抗体の産生;又はファージ提示法若しくは他の組み換え方法が挙げられる。好ましくは、モノクローナル抗体は治療を受ける種に合うように選択するか、又は適合させる。例えば、ヒトの治療については、抗GAPDH抗体(又はその抗原結合断片)はヒト抗体又はヒト化抗体である。かかる抗原特異的なヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の様々な方法によって開発することができる。
【0017】
他の実施形態では、GAPDH阻害剤は、米国特許出願公開第2006/0293325号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載のGAPDH阻害剤等の当該技術分野で既知のGAPDH阻害剤であり得る。
【0018】
炎症性サイトカインによって媒介される病態の治療(又は炎症性)サイトカインによって媒介される病態のリスクがある被験体の治療)にGAPDH阻害剤を使用する場合、GAPDH阻害剤が単位投与形態において薬学的に許容可能な担体中に配合された物の調製にGAPDHを使用することができることは本発明の範囲内である。この点において、これらの実施形態に有用な医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物への投与のための過度の実験を行うことなく、所望の投与方法に応じて適切に配合することができる。さらに、組成物の適当な投与量は、過度の実験を行うことなく、標準的な用量反応プロトコルを用いて決定することができる。
【0019】
例えば、経口投与、舌側(lingual)投与、舌下投与、頬側投与及び口腔内(intrabuccal)投与用に設計された医薬組成物は、過度の実験を行うことなく、当該技術分野で既知の手段、例えば不活性希釈剤又は食用担体を用いて作製することができる。組成物をゼラチンカプセル内に封入しても、又は圧縮して錠剤にしてもよい。治療的な経口投与の目的で、本発明の医薬組成物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤、チューインガム等の形態で使用してもよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、結合剤、レシピエント、崩壊剤、滑沢剤、甘味料及び香料を含有していてもよい。結合剤の幾つかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプン又はラクトースが挙げられる。崩壊剤の幾つかの例としては、アルギン酸、コーンスターチ等が挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤の一例はコロイド状二酸化ケイ素である。甘味料の幾つかの例としては、スクロース、サッカリン等が挙げられる。香料の例としては、ペパーミント香料、サリチル酸メチル、オレンジ香料等が挙げられる。これらの様々な組成物を調製するために使用される材料は、薬学的に純粋でかつ使用される量で非毒性であるものとする。
【0020】
本発明に有用な医薬組成物は、非経口的に、例えば静脈注射、筋肉注射、髄腔内注射又は皮下注射によっても投与することができる。非経口投与は、本発明の組成物を溶液又は懸濁液中に組み入れることによって達成することができる。かかる溶液又は懸濁液としては、注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の滅菌希釈剤を挙げることもできる。非経口製剤は、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、及びEDTA等のキレート剤を含んでいてもよい。酢酸緩衝剤(acetates)、クエン酸緩衝剤(citrates)又はリン酸緩衝剤(phosphates)等の緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張化剤(agents for the adjustment of tonicity)を添加してもよい。非経口調製物は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は多人数用バイアルに封入することができる。
【0021】
直腸投与は、医薬組成物を直腸又は大腸に投与することを含む。これは坐薬又は浣腸剤を用いて達成することができる。坐薬製剤は当該技術分野で既知の方法によって容易に作製することができる。例えば、坐薬製剤は、グリセリンを約120℃まで加熱し、組成物をグリセリンに溶解させ、加熱したグリセリンを混合し(その後精製水を添加してもよい)、加熱混合物を坐薬鋳型内に注ぎ入れることによって調製することができる。
【0022】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮吸収を含む。経皮製剤としては、パッチ(既知のニコチンパッチ等)、軟膏剤、クリーム、ジェル、軟膏等が挙げられる。
【0023】
本発明は、経鼻投与に好適な担体中に配合したGAPDH阻害剤を哺乳動物に経鼻投与することも含む。本明細書中で使用される場合、「経鼻投与する」又は「経鼻投与」は、組成物を患者の鼻道又は鼻腔の粘膜に投与することを含む。本明細書中で使用される場合、「組成物の経鼻投与のための医薬組成物」は、例えば鼻腔用スプレー、点鼻薬、懸濁液、ジェル、軟膏、クリーム又は粉末として投与されるように既知の方法によって調製した組成物中に配合された治療的に有効な量のGAPDH阻害剤を含む。組成物の投与は、鼻タンポン又は鼻スポンジを用いて行なってもよい。
【0024】
多くの実施形態について、最大限の抗炎症効果を達成するためには、GAPDH阻害剤が血流中に可能な限り迅速に導入されるように、GAPDH阻害剤を非経口的に、好ましくは静脈内に投与することが所望されると予想される。
【0025】
本発明は、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法にも関する。該方法は、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させる工程を含む。複合体の形成は、候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であり、炎症性サイトカインによって媒介される病態の治療、又は炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがある被験体の治療に使用することができることを意味する。接触は、当該技術分野で既知の標準的な手順を用いて行われる。
【0026】
GAPDHの阻害剤である潜在的な薬剤又は化合物のスクリーニングに関して、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される病態である。
【0027】
好ましい実施形態では、GAPDH阻害剤のスクリーニングの目的で、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される病態である。最も好ましくは、GAPDH阻害剤のスクリーニングの目的で、炎症性サイトカインによって媒介される病態は、セプシス、敗血症又は内毒素性ショックである。
【0028】
本発明は、以下の実験の詳細からより良く理解される。しかしながら、論考される具体的な方法及び結果が、その後に続く特許請求の範囲においてより十分に記載される本発明の単なる例示に過ぎないことを当業者は容易に理解するであろう。
【実施例】
【0029】
実験の詳細
方法
GAPDHのホモログが研究対象のあらゆる界及び門で同定されているように、GAPDHは高度の進化的保存性を有するため、これを候補炎症性サイトカインとして研究に選択した。ヒトGAPDHホモログと、ヒト疾患を引き起こす溶血性大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhii)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)等を含む幾つかの細菌において見られるGAPDHホモログとの間に相当なアミノ酸配列同一性が存在するため、GAPDHは特に関心が持たれていた。ヒトGAPDHホモログと比較した、選択された種において見られるGAPDHホモログの同一性(%)及び類似性(%)を下記表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
GAPDHタンパク質配列アラインメント
GAPDHタンパク質配列を、国立生物工学情報センター(NCBI)のGAPDHタンパク質配列アラインメントデータベースから入手した。タンパク質配列アラインメントを、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のT−Coffee多重配列アラインメントサーバー[http://www.ebi.ac.uk/Tools/t-coffee/index.html]を用いて行い、GAPDHホモログ間の同一性(%)及び類似性(%)を、これらのアラインメントの結果に基づいて算出した。
【0032】
細胞培養
マウスマクロファージ様RAW264.7細胞を、アメリカンタイプティッシュコレクション(ATTC)から入手した。RAW264.7細胞を、1%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)(BioWhittaker)、及び2mM L−グルタミン、及び100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(全てSigma製)を添加したダルベッコ改変必須培地(DMEM)(Gibco)中で培養した。Raw264.7培養物を5%CO2下、37℃でインキュベートした。細胞周期を遅らせて細胞集団を同調させる目的で、細胞を1%FBS培地中で血清除去した。細胞の血清除去はまた、利用可能な成長因子を制限し、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの活性化につながる経路における細胞内シグナル伝達のレベルを最小限に抑える。興味深いことには、細菌内毒素(LPS)等の免疫チャレンジによってもMAPキナーゼが活性化され、炎症反応が生じ、それにより高レベルのFBSのために、本研究の調査対象の特異的な免疫チャレンジによって誘発されるMAPキナーゼシグナルの検出が妨げられる恐れがある。RAW264.7細胞はおよそ70%コンフルエンスで使用し、全ての処理を無血清Opti−MEM I培地中で行った。
【0033】
野生型のToll様受容体(TLR)2、TLR4又は終末糖化産物受容体(RAGE)欠損マウスから採取した腹腔マクロファージを、10%FBS、及び2mM L−グルタミン、及び100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁し、24ウェルPrimaria組織培養プレート(Falcon)に1×106細胞/ウェルでプレーティングした。培養物を5%CO2下、37℃で24時間維持した。実験の30分前に培養培地を無血清Opti−MEM I培地に交換し、全ての処理を記載の通りに無血清Opti−MEM I培地中で行った。
【0034】
GAPDH産生のためにLPSでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I(Gibco)中で20分間維持した。細胞を100ng/mlのLPS(Sigma)(使用前におよそ30分間超音波処理した)によって、4つの時点(24時間、21時間、18時間及び16時間)からなる時間経過でチャレンジした。次いで、培地サンプルを管に移し、細胞をM細胞溶解試薬(Sigma)で溶解した。BCAタンパク質アッセイ(Pierce)を細胞溶解物に対して行い、その結果を用いて、ウエスタンブロットによって培地中で検出されたGAPDHレベルに寄与する細胞の量について標準化した。サンプルをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離し、ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Biorad)に転写した。膜を5%ミルクで2時間ブロッキングし、PBST中1000倍の希釈率のF350に指向性を有するウサギ抗血清から精製したIgGで2時間プロービングした。結合した抗F350抗体を、2.5%ミルクで2000倍に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgG(Abcam)で1時間検出した。ブロットを増強化学発光(ECL)試薬(Pierce)で展開し、高感度X線フィルム(Kodak)に感光させることによって視覚化した。
【0035】
サイトカイン誘発のためにGAPDHでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I中で20分間維持した。細胞を或る濃度範囲の精製組み換えGAPDH(その場で産生された)でチャレンジして、炎症メディエーター産生の濃度依存的反応性を判定した。濃度範囲は、5倍希釈系列での7つのGAPDH濃度(50μg/ml、10μg/ml、2μg/ml、0.4μg/ml、0.08μg/ml、0.016μg/ml、0μg/ml)からなるものであった。細胞を37℃及び5%CO2で4時間インキュベートした(TNF)。処理後、培地を採取して管に移し、M細胞溶解試薬を細胞にアプライした。タンパク質アッセイを細胞溶解物に対して行い、このデータを用いて、TNF放出に寄与する細胞の量について標準化した。培地サンプルを、マウスTNFに指向性を有する酵素結合免疫吸着法(ELISA)に供した(全てのELISA試薬はR+D systemsから入手した)。これらのELISAプレートは、製造業者の推奨に従って準備し、実行した。簡潔に述べると、サンプルをロッカー上、4℃で一晩ELISAプレートにおいてインキュベートした。プレートを、0.05%TWEEN−20を添加したリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)で2000倍に希釈した検出抗体をプレートに2時間アプライした。プレートを再度上記の通りに洗浄し、1%BSAで2000倍に希釈したストレプトアビジン(streptavidin)−HRPをプレートに15分間アプライした。プレートを再度上記の通りに洗浄した後、基質試薬を各々のウェルにアプライすることによって展開した。標準曲線が明らかになった時点で(通常は8分〜10分)、2M H2SO4を添加することによって反応を停止した。
【0036】
シグナル伝達経路活性化のためにGAPDH又はLPSでチャレンジしたRAW264.7細胞
およそ70%コンフルエンスのRAW264.7細胞を、処理前に無血清Opti−MEM I中で20分間維持した。細胞をGAPDH又はLPSのいずれかによって、7つの時点(180分、120分、60分、30分、15分及び0分)を含む時間経過でチャレンジした。GAPDH処理は、Opti−MEM Iで50μg/mlに希釈した精製GAPDHによるものであった。LPS処理は、Opti−MEM Iで20ng/mlに希釈したLPS(使用前におよそ30分間超音波処理した)によるものであった。経時的実験に用いた処理は、時点間の培養温度を維持するために37℃の水浴中でインキュベートし、使用前に5分間超音波処理するものであった。処理が終了した後、プレートを氷上に置き、培地をウェルから吸引し、即座に氷冷細胞溶解バッファー[1%SDS、0.1%NaN3、及びHALTプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤(Pierce)に添加したM細胞溶解試薬]に交換した。細胞にアプライすると、バッファーは瞬間的かつ完全な細胞溶解に起因する高粘性溶液を形成する。溶解物を擦り取り、小ゲージ(26g)針を有する1ml容滅菌注射器を用いてサンプルを管に移した。溶解物をホモジナイズするために、サンプルをおよそ20回注射器に出し入れした。次いで、サンプルを14000回転毎分(rpm)で5分間、微量遠心機で遠沈した後、ホモジナイズしたチャレンジ細胞の溶解物に対しBCAタンパク質アッセイを行った。次いで、これらのタンパク質アッセイによる結果を用いて、40μlの最終容量でSDS−PAGEゲルの各々のウェルにロードしたタンパク質のレベルを標準化した。次いで、ゲルをPVDF膜に転写した後、これを5%ミルクで2時間ブロッキングした。次いで、2.5%ミルクを添加したPBSTで1000倍に希釈した、B細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子阻害剤α(IκBα)又はc−Jun N末端キナーゼ(JNK)の活性化形態のいずれかに指向性を有する特異的抗体(Cell Signaling Technologies)で膜をプロービングし、ロッカー上、4℃で一晩インキュベートした。結合したIκBα抗体を、2.5%ミルク中でのHRP結合抗マウスIgGの2000倍希釈物を用いて検出し、結合したJNK抗体を、2.5%ミルク中でのHRP結合抗ウサギIgGの2000倍希釈物を用いて検出した。この二次抗体とともに膜を2時間インキュベートした。ブロットを、電気化学発光ECL検出試薬を用いて展開し、X線フィルムに感光させることによって視覚化した。
【0037】
ヒト全血アッセイにおけるα−GAPDH #4418抗体の中和活性
ヒト全血を、ロングアイランド血液サービスの匿名提供者から得た。血液を48ウェルプレートに250μl/ウェルで分注した。次いで、アリコートを記載の通りに37℃で4時間処理した。サンプルを室温、5000rpmで5分間遠心分離して血漿を分離した。血漿中のTNFレベルを上記のようにELISAによって決定した。
【0038】
プロテインA/Gセファロース(Pierce)を用いて、α−GAPDH #4418抗血清に由来するIgGを精製した。精製IgGを用いて、GAPDH活性を中和するα−GAPDH #4418の能力について試験した。GAPDH(10ug/ml)単独、GAPDH+非特異的ウサギIgG(100ug/ml)、GAPDH+α−GAPDH #4418(100ug/ml)、α−GAPDH #4418単独、非特異的ウサギIgG単独という6つの条件を試験した。GAPDH+α−GAPDH #4418処理については、混合物を全血にアプライする前に室温で30分間プレインキュベートした。
【0039】
結果及び考察
LPSでチャレンジしたRAW264.7細胞はGAPDH放出の遅延を示す
サイトカインは、感染又は損傷等の免疫学的チャレンジに応答して免疫細胞によって放出されるシグナル伝達分子である。したがって、免疫細胞を細菌内毒素(LPS)チャレンジによって活性化すると、免疫細胞はサイトカイン反応を開始するはずである。したがって、GAPDHがサイトカインとして機能する場合、GAPDHはLPS活性化マクロファージによって時間依存的に誘発されるはずであると推論した。この仮説を検証するために、RAW264.7細胞をLPSでチャレンジし、培養上清中のGAPDHを種々の時点で測定した。図1に示されるように、結果はGAPDHが活性化免疫細胞から時間依存的に放出されることを示す。LPS処理の16時間後では、培養上清が検出可能なGAPDHを示さなかったことを見出した。処理の18時間後にGAPDHが培養上清中に現れ、処理の24時間後までに徐々に増加した。非チャレンジ細胞は、24時間後に培養上清中に微量のGAPDHしか示さなかった。これは、GAPDHがLPS刺激後遅くに先天性免疫細胞から放出されることを示し、GAPDHが免疫チャレンジ中に後期作用サイトカインとして機能することができ、したがって早期サイトカインメディエーターとは対照的に、病的炎症状態において治療標的とすることができることを示唆しているため、重要である。
【0040】
GAPDH処理は、RAW264.7マクロファージ様細胞からサイトカイン反応を誘発する
サイトカインは炎症性疾患を媒介し得る。マクロファージ等の先天性免疫細胞は、炎症誘発性サイトカインに遭遇すると、異物の侵入から身体を防御する準備をすることによって反応する。この反応の重要な一面は、より多くの炎症誘発性サイトカインを放出することによって、より多くの免疫細胞に体内の危険について警告を発することである。したがって、GAPDHが炎症性サイトカインとして作用する場合、マクロファージ様RAW264.7細胞がGAPDH処理に応答して、炎症性疾患の早期サイトカインメディエーターである[1、2、8、9、27]、腫瘍壊死因子(TNF)を産生すると仮定した。TNFは通常、処理のおよそ4時間後に免疫細胞の順化培地において相当量測定される。RAW264.7細胞を、5倍希釈系列(50μg/ml〜0.016μg/ml)の精製組み換えヒトGAPDHで処理し、続いてTNFの産生及び培地への放出をELISAによって測定した。GAPDH処理の4時間後、順化培地を採取し、TNFのレベルをELISAによって分析した。これらの結果を細胞溶解物中の細胞タンパク質の量に対して標準化した。これを図2に示す。GAPDHは実際に、RAW264.7細胞からTNFを濃度依存的に誘導する。50μg/mlのGAPDHで処理した細胞は、細胞タンパク質1mg当たりおよそ2250pgのTNF放出を引き起こした。この反応は10ng/mlのLPSでの処理に相当していた。したがって、本発明者らの仮説と合致して、GAPDHは細胞の炎症誘発性メディエーターの放出を促進することによって先天性免疫反応を誘導し、GAPDHが病的炎症の炎症誘発性サイトカインメディエーターとして機能することができることが示される。
【0041】
GAPDHは、RAW264.7マクロファージ様細胞におけるTLR4受容体を介した炎症性シグナル伝達経路を活性化する
先天性免疫細胞活性化は、炎症反応に至る細胞内シグナル伝達経路を開始する細胞表面受容体に対する微生物産物(PAMP)、内因性危険シグナル伝達分子(DAMP)又は炎症性サイトカイン(TNF、HMGB1、IL−6等)の作用に起因する。様々なサイトカインによって利用される細胞表面受容体が多く存在するが、Toll様受容体(TLR)がPAMP及びDAMPを認識する上で中心的な役割を果たす。TLR及びその下流のシグナル伝達成分は、ホモログが脊椎動物のみならず無脊椎動物においても見られるため、後生動物の進化において高度に保存されている。哺乳動物においては、各々がPAMP類又はDAMP類を認識する能力が異なる、11個ものToll様受容体(TLR1〜TLR10及びIL−1受容体を含む)が存在する[22〜25]。例えば、TLR1、TLR2及びTLR6はアシル化リポタンパク質を認識し、TLR3は二本鎖RNAを認識し、TLR7及びTLR8は一本鎖ウイルスRNAを認識し、TLR9は細菌CpG DNAを認識し、TLR4は主要な細菌内毒素(LPS)受容体である。TLR2及びTLR4は、70キロダルトン熱ショックタンパク質(HSP70)及びHMGB1を含む様々なDAMPの認識にも関与していた[22〜26]。HMGB1のようなシグナル伝達タンパク質は、炎症進行の後期に活性化免疫細胞から分泌されるとサイトカインとしても機能するため、GAPDHが同様に、DAMP又はサイトカインとしてTLR受容体媒介経路を介して炎症シグナル伝達を活性化すると推論した。したがって、GAPDHが、HMGB1シグナル伝達活性にも関与していたTLR2、TLR4又は終末糖化産物受容体(RAGE)が欠損した動物から採取したマクロファージから炎症反応を活性化し得るか否かを試験した。
【0042】
図3に示すように、野生型マクロファージは、50μg/mlのGAPDHでの処理に対して盛んに反応し、細胞タンパク質1mg当たりおよそ6000pgのTNFを放出した。RAGE又はTLR2のいずれかを欠損した細胞も、50μg/mlのGAPDHでの処理に対して盛んに反応し、細胞タンパク質1mg当たりおよそ4500pg及び5000pgのTNFをそれぞれ放出し、野生型対照とは有意に異ならなかった。対照的に、TLR4を欠損したマクロファージはGAPDHに対する有意な反応を開始しなかった。このデータは、TLR4がGAPDHの主要な細胞表面受容体であることを示し、GAPDHが、TLR4シグナル伝達経路を活性化することによってマクロファージから炎症反応を誘発することを示唆している。
【0043】
TLR4が主要な受容体(それを介してGAPDHが炎症反応を誘発する)であることと合致して、GAPDHでのRAW264.7細胞の処理によって、TLR4の下流にあるシグナル伝達経路が活性化されることを見出した。TLR4受容体シグナル伝達経路の活性化は、核因子κB(NF−κB)の活性化につながる。NF−κBは、TLR活性化に応答した炎症メディエーターの産生に必要とされる転写因子である[21]。NF−κBは、免疫細胞の細胞質においてB細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子阻害剤α(IκBα)によって不活性形態で維持される。したがって、IκBα分解(細胞溶解物中のレベルの低下としてウエスタンブロット分析によって容易に検出される)は、NF−κBの活性化に直接対応する。加えて、TLR4受容体の刺激によって、マイトジェンに対して反応を示し、多くの細胞活性を調節するセリン/トレオニン特異的タンパク質キナーゼであるマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼが活性化される。かかるMAPキナーゼの1つは、TLR4シグナル伝達によって強く活性化されるc−Jun N末端キナーゼ(JNK)である[22、24]。したがって、RAW264.7マクロファージ様細胞においてIκBαの分解及びJNKの活性化を引き起こすGAPDH処理の能力を測定した。
【0044】
RAW264.7マクロファージ様細胞を、50μg/mlのGAPDH又は20ng/mlのLPSのいずれかによって、180分〜0分の範囲にわたる6つの時点からなる時間経過でチャレンジした。処理が完了した後、培地を吸引し、細胞溶解バッファーを細胞にアプライした。分離用のSDSPAGEゲルの各々のウェルにロードしたタンパク質の量を標準化するために、細胞溶解物に対してタンパク質アッセイを行った。次いで、ゲルをPVDF膜に転写し、GAPDH又はLPSでチャレンジした細胞に由来する溶解物に対してウエスタンブロット分析を行った。図4に示されるように、GAPDH処理によってNF−κB及びJNKのシグナル伝達経路が活性化されることを見出した。LPSでチャレンジしたRAW264.7マクロファージ様細胞では、IκBαの基礎レベルは時間とともに低下して、ゆっくりとベースラインまで戻り、このことからNF−κB経路の一時的活性化が示唆された。RAW264.7細胞をGAPDHでチャレンジすると、IκBαの基礎レベルが劇的に低下し、処理の30分後までにはほとんど検出不能になり、次いでゆっくりとベースラインまで戻った。このほぼ量的なIκBα分解は、GAPDH処理の30分後のNF−κB経路の非常に強力な活性化を示唆している。
【0045】
RAW264.7細胞では、JNK経路の基礎活性は最初のうちは低かった。しかしながら、LPSチャレンジ後にJNK活性化が急速に刺激され、30分後には約2倍にまで増加した。LPS処理の60分後には、JNK活性化は約7倍にまで増加した。興味深いことに、細胞をGAPDHで処理した場合、活性化JNKのレベルははるかに速い速度で増加した。GAPDHチャレンジの30分後には、活性化JNKレベルのおよそ8倍の増加が観察され、60分後にはおよそ15倍の増加にまで上昇した。これらの結果から、GAPDHが、PAMP、DAMP及び炎症誘発性サイトカイン等の炎症分子によって刺激される細胞内シグナル伝達経路を活性化することが示される。これらの発見は、GAPDHが、TLR4シグナル伝達経路を活性化する内因性炎症メディエーターであるという仮説を支持するものである。
【0046】
α−GAPDH #4418ポリクローナル抗体は、ヒト全血アッセイにおいてGAPDHを中和する
先述の通り、GAPDHでチャレンジしたRAW264.7マクロファージ様マウス細胞は、TNF及びIL−6等の炎症誘発性サイトカインメディエーターを放出する。本発明者らは究極的にはヒト炎症性疾患に関心を持っていたため、次にGAPDHがex vivoのヒト全血からも炎症反応を誘発し得るか否かを試験した。また、GAPDHに指向性を有する抗体がヒト全血においてその炎症活性を中和し得るか否かを試験するために、このアッセイシステムを使用した。図5に示されるように、精製組み換えGAPDHは、ヒト全血から強いTNF反応を誘発する。GAPDH処理の4時間後、サンプルを回収し、血漿を遠心分離によって分離した。次いで、血漿TNFレベルをELISAによって測定し、10μg/mlのF350でのチャレンジがおよそ450pg/mlのTNFを生じたことが示された。次に、精製組み換えGAPDHをα−GAPDH #4418抗血清に由来する精製IgGで前処理した。次いで、この混合物を全血にアプライした。α−GAPDH #4418でのGAPDHの前処理によって、GAPDHでチャレンジしたヒト全血から誘発されるTNFレベルがおよそ50%低下した。しかしながら、α−GAPDH #4418抗体はアフィニティー精製されず、ウサギ抗血清に由来する全IgGのごく一部しかGAPDHに指向性を有しなかった。したがって、アフィニティー精製抗体がより強い中和をもたらすと仮定される。GAPDH炎症活性を中和するα−GAPDH #4418抗体の能力は、ヒト炎症性疾患における治療標的としてのGAPDHの有効性を示すため、重要な観察項目である。
【0047】
α−GAPDH #4418抗体単独で処理した血液サンプルは、約60pg/mlのTNFを生じた。α−GAPDH #4418抗体を、Limulus変形細胞溶解物アッセイ(LAL)によってLPS混入について試験すると、タンパク質1mg当たり8pg〜20pgのLPSを含有することが見出された(データは示さない)。このことは、α−GAPDH #4418抗体のみで処理した血液におけるTNF反応に寄与するようである。未刺激の全血が通常は検出可能なTNFを含有しないことに留意されたい(データは示さない)。
【0048】
更なる実験
更なる実験を行った。これらの実験の結果を図6〜図17に示す。注目すべきことに、精製GST−GAPDHがヒト血液から炎症性サイトカイン反応を誘発することが見出され、GAPDHに対する炎症反応はLPSと相乗作用を示した(図8を参照されたい)。加えて、或る特定の臨床スコアリングパラメータ(すなわち、立毛、閉眼、下痢、振戦、活動、相対温度(最大9点/マウス;n=6/群))の評価に基づき、精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジがマウスにおいて病気を引き起こすことが見出された(図9を参照されたい)。GAPDH炎症活性がタンパク質分解断片によって維持されることも見出された(図10及び図11を参照されたい)。更なる実験において、抗GAPDH 4418抗体がヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することが見出され(図13を参照されたい)、抗GAPDH 4418抗体の投与によってマウスにおける致死性内毒素血症中の生存が改善されることが見出された(図14を参照されたい)。
【0049】
結論
セプシスに対する現行の療法の大半は効果がない。セプシスの発症は非常に急速に起こる可能性があり、患者が気付かない場合もある。生物学的には、「サイトカインカスケード」が始まった矢先に、知覚される障害(すなわち感染、外傷、損傷)に対する身体の免疫系の反応が開始される。患者が病気であると認識する頃には、TNF及びIL−1のような早期炎症誘発性メディエーターが既に経過をたどっており、それらの標的化は効果がなくなっている[1、10〜12、18、19]。しかしながら、HMGB1等の病的炎症の後期メディエーターは、免疫細胞から未だ誘発されていない可能性がある。ただし、HMGB1は創傷治癒及び炎症の消散の促進にも関与するため、困難な状況をもたらす。その機能する能力を低減することは、不適切に標的化された場合に生物に悪影響をもたらす場合がある。したがって、活性範囲がHMGB1ほど多面的ではない可能性がある、GAPDH等の新規の後期炎症メディエーターを同定することが重要である。
【0050】
GAPDHが炎症のメディエーターとして機能し得ることを示した。内毒素で処理した先天性免疫細胞は、サイトカインを放出し、病原体に対する身体の反応を増大させることによって反応する。GAPDHがマウスマクロファージ様RAW264.7細胞において内毒素処理の16時間〜18時間後に放出されることが見出された。炎症性サイトカインは、より多くの炎症性サイトカイン及び他の炎症メディエーターを免疫細胞から誘発する。このことはGAPDHの場合にも当てはまっていた。GAPDH処理をRAW264.7細胞に適用した場合、細胞は、2つの炎症誘発性サイトカインであるTNF及びIL−6を産生することによって反応した。炎症性サイトカインは、細胞内シグナル伝達経路を用いて免疫細胞を誘導し、適切に反応する。IκBα分解及びJNK活性化は、炎症を促進する分子(すなわち、PAMP、DAMP、炎症誘発性サイトカイン)による炎症経路刺激の分子マーカーである。GAPDH処理は、RAW264.7マクロファージ様細胞に由来する溶解物において、IκBαの分解及びJNKの活性化の両方を引き起こし、炎症経路シグナル伝達を刺激し得ることが示される。興味深いことに、マクロファージからサイトカインを誘発するGAPDHの能力は、HMGB1等の他の内因性メディエーターの炎症活性に関与していたパターン認識受容体である、TLR4受容体に依存していた[26]。
【0051】
更なる実験では、精製組み換えGST−GAPDHによるチャレンジが、マウスにおいて病気を引き起こすことが示され、GAPDHが病原性炎症の致死的進行において果たし得る役割が更に支持される。重要なことには、GAPDHに対して生成されたポリクローナル抗体(すなわち、抗GAPDH 4418抗体)は、ヒト全血アッセイにおいて中和作用を有することが見出され、抗GAPDH 4418抗体の投与は、マウスにおいて致死性内毒素血症の生存を改善することが見出された。このことから、GAPDHが炎症性疾患における臨床転帰を改善する治療標的として有用であること、並びにGAPDH阻害剤がセプシス及び関連病態等の炎症性疾患の治療に潜在的に有用であることが実証される。
【0052】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法。
【請求項2】
前記被験体が炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病態を治療的に有効な量の前記GAPDH阻害剤の投与によって治療する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体に炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体に予防的に有効な量の前記GAPDH阻害剤を投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記GAPDH阻害剤が抗体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体がヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記病態がセプシスである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記病態が敗血症である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記病態が内毒素性ショックである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法であって、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させることを含み、該複合体の形成が、前記候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であることを意味する、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法。
【請求項15】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記病態がセプシスである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記病態が敗血症である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記病態が内毒素性ショックである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療するためのGAPDH阻害剤の使用。
【請求項21】
炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する薬物の調製のためのGAPDH阻害剤の使用。
【請求項1】
炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法であって、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する該被験体を治療するのに有効な量のGAPDH阻害剤を該被験体に投与することを含む、炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する方法。
【請求項2】
前記被験体が炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病態を治療的に有効な量の前記GAPDH阻害剤の投与によって治療する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体に炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態のリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体に予防的に有効な量の前記GAPDH阻害剤を投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記GAPDH阻害剤が抗体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体がヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記病態がセプシスである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記病態が敗血症である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記病態が内毒素性ショックである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法であって、候補化合物を、該候補化合物がGAPDHと複合体を形成することを可能にする条件下でGAPDHと接触させることを含み、該複合体の形成が、前記候補化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であることを意味する、化合物が炎症性サイトカインによって媒介される病態を調節する上で潜在的に有効であるか否かを判定する方法。
【請求項15】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染、細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日光皮膚炎、蕁麻疹、疣贅、膨疹、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、ライター症候群並びにホジキン病からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記病態が虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流障害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶反応並びに移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記病態がセプシスである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記病態が敗血症である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記病態が内毒素性ショックである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療するためのGAPDH阻害剤の使用。
【請求項21】
炎症性サイトカインによって媒介される病態のリスクがあるか、又はその病態を有する被験体を治療する薬物の調製のためのGAPDH阻害剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2013−503158(P2013−503158A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526714(P2012−526714)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/002258
【国際公開番号】WO2011/025524
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/002258
【国際公開番号】WO2011/025524
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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