説明

炎症性疾患の治療のための新規ペプチド及び方法

本発明は、少なくともアミノ酸配列YDRREYを含んでなる単離ペプチド、又はその誘導体、該ペプチドをコードする核酸、β7インテグリン機能を変調させるための医薬組成物及び方法(炎症性障害の治療の方法が含まれる)、前記ペプチドへ向けられた抗体、及びインテグリンβ7機能性インタラクターの同定の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、新規ペプチド、それをコードする核酸、前記ペプチド又は核酸を含んでなる医薬組成物、炎症障害の治療のための方法が含まれる、β7インテグリン機能を変調させるための方法、前記ペプチドへ向けられた抗体、及びインテグリンβ7機能性インタラクターの同定の方法に関する。
【0002】
背景技術
白血球接着性の正確な制御は、白血球の移動、ホーミング、及び再循環、白血球の炎症部位での局在化、及び抗原提示に有効な免疫応答のホメオスタシスを維持するのにきわめて重要である。インテグリンの小さなサブセット、即ち、α4、β2、及びβ7インテグリンは、白血球の接着と関連機能を主に制御する(1)。
【0003】
インテグリンは、細胞−細胞外マトリックス及び細胞−細胞の相互作用に仲介する膜貫通受容体のスーパーファミリーである。各インテグリンは、非共有的に対合するα及びβサブユニットからなる。現在、8つのβサブユニットと18のαサブユニットが知られている。β7サブユニットは、2種のα鎖と組んで、2種のへテロ二量体分子、即ち、α4β7及びαEβ7を形成する。
【0004】
インテグリン接着性は、インテグリンサブユニット細胞質ドメインに影響を及ぼし、インテグリンコンホメーション、クラスタリング(2)、リガンドへのアフィニティー(3,4)、及び細胞拡散における変化を誘発して、そのすべてが細胞接着の増加に貢献する(6〜8)、細胞内シグナル伝達経路の複雑なアレイにより調節される。
【0005】
β7インテグリンの場合、リガンド誘発性クラスタリングによる受容体アビディティの変化が支配的に関与する機序によって、小さなGTP結合タンパク質が粘膜アドレシン(addressin)MAdCAM−1へのインテグリンα4β7仲介性T細胞接着をヒエラルキー形式で誘発する(9)。β7−インテグリン接着の制御は、2種のβ7インテグリン、α4β7とαEβ7が腸管免疫の形成及び維持に重要な役割を演じて(10,11)、α4β7がI型糖尿病におけるランゲルハンス島(12)や多発性硬化症のような脱髄疾患における中枢神経系(13)への白血球浸潤に貢献するので、きわめて重要である。α4β7がごく慢性的な炎症部位でのその好ましいリガンド、MAdCAM−1を介したリンパ球の高内皮性細静脈(HEV)への付着に仲介するのに対し、αEβ7は、E−カドヘリンとの相互作用によって上皮内白血球の腸上皮への接着に仲介する(17,18)。
【0006】
さらに、「裏返し」の膜貫通シグナル伝達経路は、短い(約47〜66のアミノ酸残基)インテグリンβサブユニット細胞質ドメインが細胞キナーゼの基質として役立ち、細胞活性化時にリン酸化されることを明らかにする(19−22)。ある種のβサブユニット細胞質ドメインは、テーリン、α−アクチニン、パキシリン、及びフィラミンが含まれる細胞骨格要素と直接相互作用して、それらを共有する。そのいくつかは、インテグリン連結キナーゼ(ILK)及びRack1のような細胞内シグナル伝達分子を共有するが、潜在的には、インテグリン特異的な「裏返し」及び「表返し」のシグナル伝達経路の特性を最終的には指示し得る他の細胞内シグナル伝達分子のアレイと排他的な形式で会合する。ヒトWDリピートタンパク質、WAIT−1は、β7−インテグリンα及びβサブユニット(β7、α4、及びαE)の細胞質テールと特異的に相互作用するが、インテグリンβ1、β2、及びαLサブユニットのそれとは相互作用しない(23)。
【0007】
上記の知識にもかかわらず、インテグリンと会合してその活性を調節する分子の性質及び本体はほとんど確認されていない。同様に、インテグリンサブユニット内に存在する調節部位又はモチーフも完全には特性決定されていない。故に、インテグリン活性の調節と、同時に細胞−細胞又は細胞−細胞外マトリックスの相互作用を可能にする正確な機序について理解すべきことはまだたくさんある。
【0008】
白血球の活性及び標的指向の調節において、インテグリン、特にβ7インテグリンが果たす役割と、ある種の炎症性疾患の発症におけるその意義に照らせば、それらの機能が調節され得る正確な機序を解明することにより、その制御と、同時に、関連する炎症障害の改善が可能になるかもしれない。
【0009】
本明細書に参照する公表文献の引用文献詳細は、本記載の末尾に収めてある。
本明細書に使用する略語:β7cyst,インテグリンβ7サブユニット細胞質ドメイン;CARD,細胞接着調節ドメイン;GST,グルタチオンSトランスフェラーゼ;ICAM−1,細胞間接着分子−1;MAdCAM−1,粘膜アドレシン細胞接着分子−1;PMA,4β−ホルボール12−ミリステート13−アセテート;VCAM−1,血管細胞接着分子−1。
【0010】
目的
新規ペプチド、それをコードする核酸、前記ペプチドの誘導体、前記ペプチド、その誘導体、又は核酸を含んでなる医薬組成物、炎症障害の治療のための方法が含まれる、β7インテグリン機能を変調させるための方法、前記ペプチドへ向けられた抗体、及び/又はインテグリンβ7機能性インタラクターと前記ペプチド及びその誘導体の模倣体の同定の方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
少なくとも、上記の任意の1つの有益な選択を社会に提供することが、さらなる、又は代わりの目的である。
発明の記載
本発明に従って、発明者は、β7細胞質ドメイン中に、β7インテグリン、特にインテグリンα4β7のクラスタリング及び接着を制御する機能性モチーフを同定した。驚くべきことに、β7サブユニットの細胞質テールの膜貫通近傍領域の残基735〜740に及ぶこの機能性モチーフは、マウスTK−1及びヒトH9 T細胞のMAdCAM−1、VCAM−1、及びRGD−ポリマーへのα4β7仲介性接着に関連して下記に例示されるように、β7インテグリンのそのリガンドへの接着を阻害するペプチド、YDRREY(β7−8)を提供することを発見した。YDRREYモチーフを担うペプチド、又はそれをコードする核酸は、炎症障害の治療用の新規な抗炎症試薬を提供する可能性がある。
【0012】
故に、本発明の1つの態様において、少なくともアミノ酸配列YDRREYを含んでなる単離ペプチド、又は前記ペプチドの誘導体を提供する。
別の側面において、本発明は、アミノ酸配列RLSVEIYDRREYからなる単離ペプチド、又は前記ペプチドの誘導体を提供する。
【0013】
別の側面において、本発明は、少なくともアミノ酸配列YDRLEYを含んでなるペプチド、又は前記ペプチドの誘導体を提供する。
関連した側面において、本発明は、細胞膜移行(translocating)モチーフが含まれる、上記に記載のペプチド、又はその誘導体を提供する。好ましくは、前記細胞膜移行モチーフは、ペプチドをベースとする。より好ましくは、前記細胞膜移行モチーフは、ペネトラチン又はアルギニンのポリマーである。
【0014】
別の側面において、本発明は、本発明によるペプチド又はその誘導体をコードする単離核酸を提供する。
関連した側面において、本発明は、本発明によるペプチド又はその誘導体をコードする核酸を含んでなる構築体又はベクターを提供する。
【0015】
さらなる側面において、本発明は、少なくとも本発明によるペプチド又はその誘導体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。
【0016】
関連した側面において、本発明は、少なくとも本発明による核酸又は構築体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらなる側面では、インテグリンβ7の機能を被検者において変調させる方法を提供し、該方法は、上記に記載のペプチド又はその誘導体、又はそれを含んでなる組成物の有効量を前記被検者へ投与する工程を少なくとも含んでなる。
【0018】
あるいは、インテグリンβ7の機能を被検者において変調させる方法は、上記に記載の核酸、構築体、又はそれを含んでなる組成物の有効量を前記被検者へ投与する工程を少なくとも含む。
【0019】
さらなる側面において、本発明は、インテグリンβ7の機能を in vitro 系において変調させる方法を提供し、該方法は、本明細書によるペプチド又はその誘導体、核酸、構築体、又は組成物を前記系へ投与する工程を少なくとも含んでなる。
【0020】
本発明のさらなる側面では、インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のための方法を提供し、該方法は、上記に記載のペプチド又はその誘導体、又はそれを含んでなる組成物の治療有効量をその必要な被検者へ投与する工程を少なくとも含んでなる。
【0021】
本発明のさらなる側面では、インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のための方法を提供し、該方法は、上記に記載の核酸、構築体、又は前記核酸又は構築体を含んでなる組成物の治療有効量をその必要な被検者へ投与する工程を少なくとも含んでなる。
【0022】
別の側面において、本発明は、上記に記載のペプチド又はその誘導体、又は核酸又は構築体の、インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療用医薬品の製造における使用を提供する。
【0023】
なおさらに広い側面において、本発明は、潜在的なβ7インテグリン機能性インタラクター(interactor)、又は本発明のペプチドの模倣体の同定のための方法を提供し、該方法は、潜在的な機能性インタラクター又は模倣体を本発明のペプチド又は誘導体と接触させて、結合が生じるかどうかを観察する工程を少なくとも含んでなる。
【0024】
本発明の関連した側面において、本方法は、機能性インタラクター分子又は模倣体が白血球のβ7インテグリンリガンドへの接着のレベルに影響を及ぼすかどうかを決定する工程をさらに含む。好ましくは、該方法は、機能性インタラクター分子又は模倣体が白血球のβ7インテグリンリガンドへの接着のレベルを低下させるか、又は接着を妨害又は防止するかどうかを決定する工程を含む。
【0025】
別の側面において、本発明は、本発明によるペプチド又はその誘導体の、潜在的なβ7インテグリン機能性インタラクター分子、又は前記ペプチド又はその誘導体の模倣体を同定するか又はスクリーニングすることにおける使用を提供する。
【0026】
関連した側面において、本発明は、本発明によるペプチド又はその誘導体の、前記ペプチド又は誘導体の模倣体を設計することにおける使用を提供する。
別の側面において、本発明は、本発明のペプチド又はその誘導体に対して向けられた抗体を提供する。
【0027】
別の側面において、本発明は、インテグリンβ7の機能を変調させること、又はインテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のためのキットを提供し、該キットは、本発明によるペプチド又はその誘導体を少なくとも含んでなる。
【0028】
関連した側面において、本発明は、インテグリンβ7の機能を変調させること、又はインテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のためのキットを提供し、該キットは、本発明による核酸又は構築体を含んでなる。
【0029】
本発明はまた、本出願の明細書において個別的又は集合的に言及又は明示される部分、要素、及び特徴に、2以上の前記部分、要素、又は特徴の任意又はすべての組合せにあると概ね言ってよく、そしてここでは、本発明が関連する技術分野で知られた同等物を有する具体的な完全体(integers)が言及されるが、そのような既知の同等物は、個別に説明されるように、本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0030】
好ましい態様
以下は、一般的な用語で示す、その好ましい態様が含まれる、本発明の記載である。本発明は、本発明の実験証拠とその具体的な例を提供する、下記の「実施例」と題した節に示す開示よりさらに明らかにされる。
【0031】
本発明の発明者は、β7インテグリンサブユニット内に調節モチーフを同定した。このモチーフ、YDRREY(配列番号1)には、β7の細胞質テールの膜貫通近傍領域の残基735〜740が含まれる。どの特別な理論にも束縛されることを望まないものの、本発明者は、このリン酸化可能モチーフが、β7発現白血球のその細胞外マトリックス、内皮及び上皮細胞、樹状細胞、及び適切なリガンドを発現する他の細胞との相互作用を変調させる主要な細胞接着調節ドメイン(CARD)を構成すると提起する。
【0032】
本発明者は、驚くべきことに、このモチーフ、YDRREYを少なくとも含んでなるペプチドが、β7インテグリンのそのリガンド、例えば、MAdCAM−1及びVCAM−1との相互作用を妨害し得ることを見出した。この作用は、種を越えて、即ち、マウス及びヒトで実証された。この意義は、本発明のペプチドが、β7インテグリンの機能を制御することに不可欠である細胞内のタンパク質又は因子と競合して、それによりその細胞接着機能を変調させるということである。
【0033】
上記の知見に基づいて、本発明のペプチド、又はそれを含んでなる医薬組成物を使用して、β7インテグリンの細胞接着機能、特に白血球の互いへの接着、細胞外マトリックス、そして上皮及び内皮細胞への接着を in vitro 系と in vivo の両方で変調させることができる。そのような変調は、β7仲介性の炎症イベントを制御することにおいて、そして特に、β7インテグリン仲介性の炎症障害の治療に応用を有する。
【0034】
同様に、本発明者は、本発明のペプチドをコードする核酸とそのような核酸を含んでなる構築体又はベクターの、β7インテグリンの細胞接着機能を変調させる方法(同様に、β7インテグリン仲介性の炎症障害の治療が含まれる)における使用を考慮する。
【0035】
追加的に、本発明のペプチドは、β7インテグリンへ結合する、及び/又はその機能を調節することができるβ7インテグリン機能性インタラクター分子の同定のためのアッセイに使用してよい。本明細書に使用するように、用語「β7インテグリン機能性インタラクター」は、その最も広い文脈でとらえるべきである。それには、β7インテグリンの細胞接着機能を変調させ得る細胞内シグナル伝達分子のような分子や他の細胞成分と、この機能により仲介される障害の治療に応用があり得る潜在的な治療薬剤も含まれると企図される。
【0036】
さらに、本発明のペプチドは、インテグリンβ7サブユニットの細胞質ドメインに抗して向けられる干渉分子を特異的に同定するアッセイに使用してよい。本明細書に使用するように、「干渉分子」は、本発明のペプチドモチーフが含まれる、インテグリンサブユニットの細胞質ドメインの領域へ結合するように適合した分子である。好ましくは、そのような「干渉分子」は、少なくとも細胞質ドメインの領域の他の分子との相互作用を阻止して、より好ましくは、インテグリンサブユニットの細胞質ドメインの機能を阻止する。「干渉分子」には、限定されないが、抗体と核酸アプタマー(例えば、RNA及びDNAアプタマー)が含まれる。
【0037】
「干渉分子」は、β7インテグリンの活性及び機能を変調させるか又は阻害すること(β7インテグリンのそのリガンド、例えば、MAdCAM−1及びVCAM−1との相互作用を妨害又は防止することにより、β7インテグリンの細胞接着機能を変調させることが含まれる)と、β7インテグリン仲介性の炎症イベントを制御することに、特にβ7インテグリン仲介性の炎症障害の治療に応用を有することに使用を見出し得る。
【0038】
本発明のペプチドは、低分子模倣体が含まれる模倣体を設計するために、又は療法的に有用であり得る、該ペプチドのそのような好適な模倣体のライブラリーをスクリーニングするために使用してもよい。
【0039】
句「白血球の互いへの接着と上皮及び内皮細胞への接着を変調させる」、「β7インテグリンの細胞接着機能を変調させること」、又は「β7インテグリンの機能を調節する」、等は、一般に、機能のダウンレギュレーションを意味するために本明細書に使用する。しかしながら、本発明者は、本発明のペプチド、核酸、又は構築体の使用を介してβ7インテグリンの機能のアップレギュレーションが起こり得る状況;例えば、β7インテグリン機能に対して負の効果を及ぼし得る機能性インタラクターへ該ペプチドが競合的に結合する状況を考慮する。故に、β7インテグリンの機能のアップレギュレーションも、本発明に含まれる。この目的のために、医薬組成物と方法を炎症障害の治療に関連して下記に記載する場合、これはβ7インテグリン機能のダウンレギュレーションを含意するが、それらは、β7インテグリン機能のアップレギュレーションが望まれる治療にも同等に適用可能であり得ると理解されたい。
【0040】
用語「炎症障害」は、異常な、又は他の炎症が関与するあらゆる望まれない生理状態を意味すると解釈されたい。「炎症」は、損傷又は疾患、又は異物粒子、及び有害な刺激に対する組織の特徴的な反応により、発赤、腫脹、発熱、及び疼痛の1以上を生じることを意味すると広く解釈されたい。本発明によれば、そのような炎症障害は、β7インテグリンの作用により仲介されるものであり、限定されないが、多発性硬化症のような脱髄疾患、I型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、関節炎、胃炎、粘膜炎、移植片対宿主病、肝炎、乾癬、グレイブス病、敗血症ショック、出血性ショック、虚血−再灌流損傷、動脈/血管損傷、移植拒絶、及び組織/皮膚治癒を妨げる炎症が含まれる。
【0041】
本明細書に使用するように、用語「治療」は、その最も広い文脈において考慮されたい。この用語は、必ずしも、被検者が完全な回復まで治療されることを含意しない。故に、「治療」には、炎症や他のβ7インテグリン仲介性の(異常又は他の)イベントの変調又は制御、特別な障害の症状又は重症度の改善、又は特別な障害を発症することを防ぐか又はそのリスクを他のやり方で低下させることが広く含まれる。
【0042】
本発明が関連する技術分野の当業者には、本発明の本質と本明細書に報告する結果に顧慮すれば、本発明が多様な異なる動物へ適用可能であることが理解されよう。故に、「被検者」には、注目のあらゆる動物が含まれる。特に、本発明は、哺乳動物、より特別にはヒトへ適用可能である。
【0043】
本発明によるペプチド又はタンパク質は、「単離」又は「精製」されたペプチド又はタンパク質であると理解されたい。「単離」又は「精製」されたペプチド又はタンパク質は、それが本来存在する環境より同定及び分離されたものである。「単離」は、ペプチドが本来存在する環境より精製又は分離された程度を反映するわけではないと理解されたい。本発明に使用のペプチドは、天然の供給源より精製しても、化学合成又は組換え技術によって誘導してもよい。
【0044】
本発明による核酸は、「単離」又は「精製」された核酸であると理解されたい。「単離」又は「精製」された核酸は、それが本来存在する環境より同定及び分離されたものである。「単離」は、核酸が本来存在する環境より精製又は分離された程度を反映するわけではないと理解されたい。本発明による使用の核酸は、天然の供給源より精製しても、化学合成又は組換え技術によって誘導してもよい。
【0045】
ペプチドとその誘導体
特に好ましい態様において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列、YDRREYを含む。該ペプチドは、このモチーフ、YDRREYだけからなってもよいが、モチーフYDRREYが取り込まれているより大きなペプチドも本発明に含まれると理解されたい。例を挙げると、コアモチーフのYDRREYは、ネイティブβ7サブユニットアミノ酸配列より関連位置で取る、追加のアミノ酸、例えば1〜6のアミノ酸によって、そのN末端又はC末端の片方又は両方へ延長してよい。例示のβ7配列情報はGenBankに見出される(受入れ番号NM_000889(ヒト)、NM_013566(マウス)、及びXM_34336(ラット)を参照のこと)。このことに一致して、下記にさらに記載する、アミノ酸RLSVEIYDRREY(配列番号2)を含んでなるペプチドβ7−2は、本発明の一部を形成する。あるいは、コアモチーフは、所望される場合、異種のアミノ酸モチーフ又は配列により延長されても、それへ融合してもよい。この点に関し、本発明のペプチドには、融合ペプチド又はタンパク質が含まれると解釈されたい。
【0046】
本発明による「ペプチド」は、それを細胞透過性にするモチーフと縮合した、それへコンジュゲートした、又は他のやり方でそれを取り込むあらゆるペプチドへ延長されることを理解されたい。このモチーフは、本ペプチドの細胞膜を通過又は貫通する能動又は受動運動を可能にし得る。このモチーフは、本明細書において、細胞膜移行モチーフと呼ぶ場合がある。そのようなモチーフは、好ましくは、ペプチドベースの膜移行モチーフである。しかしながら、本発明が関連する技術分野の当業者は、細胞透過性を有効に提供し得る代わりの性質のモチーフ;例えば、細胞表面受容体へ結合してそれにより内部化されるモチーフ、又は脂質部分を容易に認識されよう。例えば、Chariotトランスフェクション試薬を設計して、生物学的に活性なタンパク質及びペプチドを生きた細胞へ伝達する。
【0047】
本発明によるペプチドベースの膜移行モチーフは、前記ペプチドの少なくともある度合いの所望される機能を保持する一方で、効果的にペプチドを細胞透過性にする。本発明が関連する技術分野の当業者は、本発明に使用の適正なペプチドベースの膜移行モチーフを容易に理解されよう。しかしながら、本発明者は、ペネトラチンとアルギニンのポリマーが(「実施例」の見出し下で下記に詳しく説明するように)特に有用であることを見出した。さらに好適なペプチドベースの膜移行モチーフは、Joliot と Prochiantz による概説:Transduction Peptides: from technology to physiology「トランスダクション・ペプチド:技術から生理学へ」, Nat Cell Biol. 2004; 6(3) 189-96 に記載されている(例えば、Tat RKKRRQRRR(配列番号3)、Buforin II TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK(配列番号4)、Transportan GWTLNSAGYLLGKINKALAALAKKIL(配列番号5)、MAP(モデル両親媒性ペプチド)KLALKLALKALKAALKLA(配列番号6)、K−FGFAAVALLPAVLLALLAP(配列番号7)、Ku70 VPMLK(配列番号8)又はPMLKE(配列番号9)、Prion MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP(配列番号10)、pVEC LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号11)、Pep−1KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号12)、SynB1RGGRLSYSRRRFSTSTGR(配列番号13)、Pep−7 SDLWEMMMVSLACQY(配列番号14)、HN−1 TSPLNIHNGQKL(配列番号15))。
【0048】
本発明のペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、又はその混合物より構成されてよい。
コアのYDRREYアミノ酸配列は、修飾されたペプチドがペプチドYDRREYの少なくともある度合いの所望される機能を保持するならば、コアDRRE配列のアミノ酸の1以上の代わりのアミノ酸での置換によって修飾してよい。本発明の1つの態様において、アミノ酸置換は、保守的である。当業者は、アミノ酸側鎖置換基の類似性が含まれる、異なるアミノ酸の間の相対的な類似性(例えば、それらの大きさ、電荷、親水性、疎水性、等)に基づいて、適正な保守的アミノ酸置換を理解されよう。しかしながら、例を挙げると、DはEに置き換えてよく、RはKに置き換えてよく、EはDに置き換えてよい。別の態様において、アミノ酸置換は、非保守的である。当業者は、そのような非保守的な置換について理解されよう。しかしながら、例を挙げると、RはLで置き換えることができる。
【0049】
本発明の1つの特別な態様において、ペプチド内のR残基の1つ、特に第二のR残基を別のアミノ酸により置換する。本発明者は、YDRREYへ対応するラットのアミノ酸配列がYDREY(配列番号20)であることに注目する。故に、本発明者は、少なくとも第二のR残基は、機能に必須ではないと考慮する。
【0050】
本発明者はまた、DRREコア配列内のアミノ酸の欠失による、本発明のペプチドの短縮を考慮する(但し、そのような短縮ペプチドは、ペプチドYDRREYの少なくともある度合いの所望される機能を保持するべきである)。
【0051】
本発明の「ペプチド」は、望ましい場合は、化学的に修飾してよい。例えば、ペプチドは、アセチル化、グリコシル化、架橋連結、ジスルフィド結合形成、環化、分岐、リン酸化、所望の分子へのコンジュゲーション又は付加(例えば、二重特異性抗体へのコンジュゲーション)、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、脂質又は脂質誘導体の共有付加、ホスファチジルイノシトールの共有付加、脱メチル化、共有架橋連結の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、酸化、peg付加、タンパク分解プロセシング、プレニル化、ラセミ化、L−異性体からD−異性体への変換、硫酸化、又は天然の翻訳後修飾を模倣する他のやり方、等によって修飾してよい。ペプチドは、当該技術分野で知られるように、1以上の非天然に存在するアミノ酸が含まれるように修飾してもよい。ペプチドのアミノ酸は、当該技術分野で知られるように、R基の他の化学基での置換により修飾してもよい。さらに、アミノ酸は、それらを模倣する化学基で置換してよい;例えば、ベンゾイミダゾールはRの既知の模倣体であり、1,4−ベンゾジアゼピンは、G−Dの模倣体である(Curr Protein Pept Sci 2005 Apr; 6(2): 151-169 を参照のこと)。本発明のペプチドは、非ペプチド骨格上のペプチド由来のアミノ酸群の配置によって修飾してもよい。そのような修飾ペプチドを設計するための考慮事項については、Curr Protein Pept Sci 2005 Apr; 6(2): 151-169 (Sillerud and Larson) に論じられている。
【0052】
本発明には、ペプチドの医薬的に許容される塩、並びにペプチドの立体異性体が含まれると解釈されたい。当業者は、そのような塩及び立体異性体について理解されよう。
上記の記載のように(例えば、化学修飾、側鎖の付加、細胞膜移行モチーフの付加/包含、さらなるアミノ酸(異種アミノ酸が含まれる)の付加、非天然に存在するアミノ酸の包含、アミノ酸の置換、アミノ酸R基の置換、塩、異性体、ペプチド模倣体への還元、等により)、又は当該技術分野で知られた他の手段によって修飾された本発明のペプチドは、本明細書においてペプチドの「誘導体」と呼ぶ場合がある。
【0053】
本明細書における単語「ペプチド(単数又は複数)」の使用には、文脈から他のように求められなければ、そのようなペプチドの「誘導体」への言及が含まれると解釈されたい。さらに、「ペプチド」とその「誘導体」には、「プロドラッグ」、即ち、不活性型であり、被検者への投与に続く生物学的な変換により活性型へ変換されるペプチド又は誘導体が含まれると解釈されたい。
【0054】
本発明のペプチドの「誘導体」は、前記ペプチドの少なくともある度合いの所望される機能;即ち、β7インテグリンの機能(本明細書に記載するような)を変調させる、好ましくは機能をダウンレギュレートする、低下させる、又は阻害する能力を保有するものである。故に、「誘導体」に代わる用語は、「機能性誘導体」であってよい。誘導体の機能は、例えば、下記の「実施例」の節で記載するような in vitro 細胞接着アッセイを使用して評価することができる。当業者は、動物での in vivo アッセイが含まれる、代わりのアッセイを容易に評価することができる。
【0055】
本発明のペプチドは、天然の供給源より精製しても、好ましくは、化学合成(例えば、Fields GB, Lauer-Fields JL, Liu RQ and Barany G (2002) Principles and Practice of Solid-Phase peptide Synthesis「固相ペプチド合成の原理と実践」; Grant G (2002) Evaluation of the Synthetic Product. Synthetic Peptides, A User's Guide「合成生成物の評価。合成ペプチド、使用者の手引き」Grant GA, Second Edition, 93-219; 220-291, オックスフォード大学出版局、ニューヨークに記載のようなfmoc固相ペプチド合成)、又は遺伝子発現技術(下記に全般的に概説するような)、本発明が関連する技術分野で容易に知られている方法より誘導してもよい。本発明者は、適正なトランスジェニック動物、微生物、又は植物による本発明のペプチドの産生を考慮する。
【0056】
本発明のペプチドが組換え技術により産生され得る程度において、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸と、そのような核酸のクローニング及び発現に役立ち得る構築体又はベクターを提供する。ある種のそのような構築体は、以下に詳述するように、治療目的にも有用であるかもしれない。
【0057】
本発明が関連する技術分野の当業者は、所望のペプチドのアミノ酸配列、そこに含まれる配列情報、遺伝暗号、及びその中で理解される縮重に基づいて、所望の融合ペプチド又はタンパク質が含まれる、本発明のペプチドをコードする核酸を容易に同定することができよう。しかしながら、例を挙げると:(アミノ酸配列RLSVEIYDRREYを有するペプチドの)CGG CTC TCG GTG GAA ATC TAT GAC CGC CGG GAA TACと(アミノ酸配列YDRREYを有するペプチドの)TAT GAC CGC CGG GAA TACは、適正な核酸である。これら2つの核酸を、配列識別名の配列番号16及び配列番号17とそれぞれ呼ぶ場合がある。
【0058】
本発明の態様による核酸構築体は、一般に、異種の核酸配列(即ち、本発明の核酸配列の隣に天然では見出されない核酸配列)を含有する。構築体又はベクターは、RNAでもDNAでもよく、原核性でも真核性でもよく、典型的には、ウイルス又はプラスミドである。好適な構築体は、好ましくは、本発明の核酸を宿主細胞へ送達するように適合して、そのような細胞において複製することが可能であるか又は可能でない。本発明の核酸を含んでなる組換え構築体は、例えば、本発明の核酸配列のクローニング、配列決定、及び発現に使用してよい。さらに、下記に詳述するように、本発明の組換え構築体又はベクターは、治療目的に使用してよい。
【0059】
本発明が関連する技術分野の当業者は、本発明での使用に適した多くの構築体を認識されよう。しかしながら、本発明者は、pUC及びpBluescriptのようなクローニングベクターとpCDM8のような発現ベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)、又はレンチウイルスの使用が特に有用であると考慮し;クローニング及び発現ベクターに関する例示も、「実施例」の見出し下で本明細書に提供する。
【0060】
構築体は、プロモーター、オペレーター、レプレッサー、エンハンサー、終止配列、複製開始点のような調節配列と、当該技術分野で知られている他の適正な調節配列を含有してよい。さらに、それらは、発現されるタンパク質がその宿主細胞より分泌されることを可能にする分泌配列を含有してよい。さらに、発現構築体は、本発明の挿入核酸配列の融合タンパク質又はペプチドとしての発現をもたらす融合配列(異種のアミノ酸モチーフ、例えば、上記に述べたペネトラチンをコードするもののような)を含有してよい。
【0061】
本発明によれば、構築体の宿主細胞への形質転換は、核酸配列を細胞へ挿入し得るどの方法によって達成してもよい。例えば、形質転換技術には、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、及びバイオリスティック(biolistic)衝撃が含まれる。
【0062】
理解されるように、本発明の形質転換された核酸配列は、発現されるその能力が保持されるようなやり方で、染色体外にあり続けても、宿主細胞の染色体内の1以上の部位へ組み込まれてもよい。
【0063】
当該技術分野で知られるどの数の宿主細胞も、本発明の核酸配列をクローニングすることと発現させることに利用してよい。例えば、それらには、限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物;組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;pEE14プラスミド系を使用するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞のような動物細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させたか、又は組換えプラスミド発現ベクター(例、Tiプラスミド)で形質転換させた植物細胞系が含まれる。「実施例」下で下記に詳述する宿主細胞は、特に有用であることがわかっている。
【0064】
本発明による組換えペプチドは、当該技術分野の多様な標準技術を使用するその発現に続いて、形質転換宿主細胞、又は培養基より回収することができる。例えば、界面活性剤による抽出、音波処理、溶解、浸透圧ショック処理、及び封入体精製である。タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、及びクロマトフォーカシングのような技術を使用してさらに精製してよい。
【0065】
上記に述べたように、本発明のペプチドは、融合ペプチド又はタンパク質の形態であってよい;例えば、本発明のペプチドをペプチドベースの膜移行モチーフへ、あるいは、又はさらに、該ペプチドの後続の単離及び精製に役立ち得るモチーフ(例えば、ユビキチン、his−タグ、又はビオチン)へ付けてよい。そのような融合ペプチドを産生するための手段は、本発明が関連する技術分野で容易に知られて、上記に述べたように、化学合成と、融合ペプチドを組換え宿主細胞において発現させる技術が含まれる。本発明者は、Strep−tag(Sigma−Genosys)、ImpactTM系(New England Biolabs)、his−タグ、及びeg pMALTM−p2発現系(New England Biolabs)が本事例において特に有用であると考慮する。さらなる例示は、「実施例」下で下記に提供する。さらに、組換えタンパク質の発現及び精製における使用の融合タグについては、R. C. Stevens.「Design of high-throughput methods of protein production for structural biology(構造生物学のためのタンパク質産生のハイスループット法の設計)」, Structure, 8, R177-R185 (2000) に記載されている。
【0066】
膜移行モチーフは、本発明が関連する技術分野で知られた代わりの手段によって、ペプチドへ融合、コンジュゲートさせても、他のやり方でペプチドに取り込んでも、それへ付けてもよい。例えば、細胞透過する部分が完全なタンパク質、脂肪酸、及び/又は胆汁酸を含む場合、そのような分子は、アミノ酸架橋、又は非ペプチジル連結によって活性ペプチドへ連結させてよい。
【0067】
本発明のペプチド、例えば、YDRREYは、2つのタグへ同時に結合させてよく、ここで1つのタグは、細胞分泌を可能にし(例、シグナルペプチド)、別のタグは、ペプチドを細胞透過性にする。このシナリオにおいて、該ペプチドは、非白血球により産生及び分泌されて、その後で白血球により取り込むことができる。このことは、例えば、炎症組織内の実質細胞又は内皮細胞が該ペプチドを分泌して、浸潤白血球の接着を阻害することが望まれる場合に有利であり得る。
【0068】
組成物と治療の方法
本発明は、炎症障害の治療が含まれる、インテグリンβ7機能の変調に関するので、それは、本発明のペプチド又はその誘導体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤とともに含んでなる医薬組成物も提供する。
【0069】
本発明はまた、本発明のペプチドをコードする核酸、又はそれを含んでなる構築体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤とともに含んでなる医薬組成物を提供する。
【0070】
本明細書に使用するように、句「医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤」には、医薬組成物を調製するのに有用であり、適正な薬剤、例えば、本発明のペプチド、前記ペプチドをコードする核酸、又はそれを含んでなる構築体とともに、該薬剤がその企図される機能を達成することを可能にしながら同時投与してよく、概して安全、無毒であり、生物学的にも他のやり方でも望まれなくはない物質が含まれると企図される。医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤には、ヒト医薬品での使用だけでなく、獣医学上の使用にも適したものが含まれる。医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤の例には、溶液剤、溶媒、分散媒体、遅延剤、エマルジョン、等が含まれる。
【0071】
標準の希釈剤、担体、及び/又は賦形剤に加えて、本発明による医薬組成物は、本発明のペプチド、又は核酸、又は構築体の活性を高めるか、又はそのような薬剤の完全性を保護することに役立つようなやり方で、追加の構成成分とともに製剤化してよい。例えば、本組成物は、タンパク分解的な分解に抗する保護を提供する、バイオアベイラビリティを高める、抗原性を減少させる、又は被検者への投与時に緩やかな放出を可能にする構成成分をさらに含んでよい。例えば、徐放性の担体には、マクロマー、ポリ(エチレングリコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)、又はヒドロゲルが含まれる。
【0072】
さらに、本発明のペプチド、その誘導体、又は核酸又は構築体の細胞透過性は、組成物の製剤化により達成又は促進してよい。
さらに、本発明による医薬組成物は、特別な事例において被検者へ有益になり得る追加の有効成分とともに製剤化してよいと考慮される。本発明が関連する技術分野の当業者は、ここでの本発明の記載に関連する好適な追加の有効成分と、例えば、治療すべき特別な障害の本質について容易に理解されよう。一般的な例としては、抗体、低分子阻害剤、免疫抑制薬、医薬品(例、ステロイド)を使用してよい。
【0073】
1つの態様において、本発明はまた、本発明のペプチド又はそれを含んでなる医薬組成物の治療有効量をその必要な被検者へ投与する工程を少なくとも含んでなる、炎症障害の治療の方法に関する。関連する態様において、本方法は、本発明のペプチドをコードする核酸、又はそれを含んでなる構築体の治療有効量の、その必要な被検者への投与を伴う。
【0074】
本発明のペプチド(とその誘導体)は、投与後に活性剤へ変換されるプロドラッグとして投与及び製剤化してよい。
本明細書に使用するように、「治療有効量」又は「有効量」は、所望の応答を少なくとも一部達成するのに必要な量である。
【0075】
本発明者は、ペプチド、その誘導体、本発明のペプチドをコードする核酸、又はそれを含んでなる構築体、又はこれら薬剤のいずれかの1以上の医薬組成物の、そのような薬剤を被検者の体内の標的部位にある白血球へ送達することが可能なあらゆる手段による投与について考慮し;「標的部位」は、炎症イベントが起こったか、又は起こることが予測される部位、又は前記ペプチドの送達により他のやり方で利益を得る可能性がある部位である。例を挙げると、本発明の化合物は、医薬組成物として以下の経路の1つ:経口、局所、全身(例、経皮、鼻腔内、又は坐剤による)、非経口(例、筋肉内、皮下、又は静脈内注射)により;CNSへの投与により(例、髄腔内又は槽内の注射による);移植により、そして浸透圧ポンプ、経皮パッチ剤、等のようなデバイスを介した注入により投与してよい。さらなる例を下記に提供することができる。当業者は、他の適切な投与経路を確定してよい。
【0076】
そのような投与の形式と、上記に述べた好適な医薬賦形剤、希釈剤、及び/又は担体に従って、本発明の組成物は、溶液剤、経口投与可能な液剤、注射可能な液剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、坐剤、経皮パッチ剤、懸濁液剤、乳剤、持続放出製剤、ゲル剤、エアゾール剤、散剤、及びイムノリポソーム剤のような通例の剤形へ変換することができる。さらに、持続放出製剤を利用してよい。選択される剤形は、使用することが望まれる投与の形式を反映するだろう。特に好ましい剤形には、経口投与可能な錠剤、ゲル剤、丸剤、カプセル剤、半固体剤、散剤、持続放出製剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エアゾール剤、局所投与用の軟膏剤又は溶液剤、及び注射可能な液剤が含まれる。さらに具体的な例を下記に提供する。
【0077】
理解されるように、投与する薬剤又は組成物の用量、投与の期間、及び全般的な投与方式は、被検者の症状の重症度、治療すべき障害の種類、選択する投与の形式、並びに被検者の年齢、性別、及び/又は健康全般といった変数に依存して、被検者の間で異なってよい。
【0078】
細胞培養アッセイ及び動物試験より得られるデータは、ヒトにおける使用の範囲の投与量を製剤化するときに使用することができる。投与量は、利用する剤形と活用する投与の経路に依存して、この範囲内で変動してよい。本発明の方法で使用するどの化合物についても、治療有効量は、はじめに細胞培養アッセイより推定することができる。細胞培養や動物モデルでは、ある用量を製剤化して、細胞培養において決定されるようなIC50(即ち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)が含まれる細胞濃度範囲を達成することができる。そのような情報を使用して、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。的確な製剤、投与の経路、及び投与量は、患者の状態に照らして、個々の医師が選択することができる(例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics「治療薬の薬理学的基礎」中、第1章、1頁、Fingl et al., 1975 を参照のこと)。
【0079】
1)ペプチド及び2)核酸に関連した組成物及び投与形式の具体例をこれから提供する。これらは、例示のためにのみ示す。
ペプチド組成物と投与の形式
ペプチドベースの治療薬の技術分野の当業者は、1以上のペプチドを含んでなる本発明の組成物に利用することができる多様な医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤を容易に理解されよう。例を挙げると、特に注射可能な溶液剤に適した液体担体には、水、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、等が含まれ、静脈内、髄腔内、及び槽内の投与では、等張溶液剤が好ましい。希釈剤、担体、及び/又は賦形剤は、ペプチド安定性を高めるために選択してよい。例えば、以下の1以上を使用してよい:緩衝剤(複数)、ブロッキング剤(複数)、溶媒(複数)、塩(複数)、キレート剤(複数)、界面活性剤(複数)、及び保存剤(複数)。ポリペプチド及び抗原のための安定化希釈剤については、
例えば、米国特許第6,579,688号に記載されている。
【0080】
上記に言及したように、本発明のペプチドは、ゆっくりとした放出を可能にするように製剤化してよい。延長化ペプチド放出のための医薬組成物と製造の方法については、例えば、米国特許第6,503,534号及び6,482,435号及び6,187,330号及び6,011,011号に記載されている。さらに、タンパク質の in vivo 半減期を延長させて、その抗原性を低下させるために、タンパク質を可溶性の合成ポリマー、特にポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アミノ酸)、ジビニルエーテルマレイン酸無水物、エチレン−マレイン酸無水物、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタアクリルアミド、及びデキストランへコンジュゲートさせてよい。ポリマー生物活性コンジュゲートの合成の方法は、例えば、米国特許第6,172,202号に記載されている。ペプチドは、米国特許第6,077,523号に記載のように、インプラントを介して送達してもよい。
【0081】
さらに、本発明のペプチドは、適正な膜移行モチーフへの融合又はコンジュゲーションによって膜透過性にし得るが、細胞透過性は、他のやり方で達成しても、組成物の製剤化によりさらに促進してもよい。バイオアベイラビリティを高めるための透過亢進混合物と一緒の治療用ポリペプチドの医薬製剤化については、例えば、米国特許第6,008,187号に記載されている。
【0082】
本発明のペプチド組成物を製剤化する方法は、本発明が関連する当該技術分野の当業者により容易に理解されよう。それでも、Gennaro AR: Remington: The Science and Practice of Pharmacy(レミントン:製剤の科学と実践)、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins, 2000 に手引きを見出すことができる。
【0083】
理解されるように、投与するペプチド(又は、それを含んでなる組成物)の用量、投与の期間、及び一般的な投与方式は、上記に述べたような変数に依存して被検者の間で異なってよい。しかしながら、一般的な例を挙げれば、本発明者は、動物の重量キログラムにつきほぼ30μg〜300mg(mg/Kg)、例えば、0.3〜30mg/Kgを考慮し、0.003〜0.3mg/Kgのような低用量、例えば、約0.03mg/Kgは脳血管内投与のような脳脊髄液を介した投与(例えば、これは、多発性硬化症が含まれる脳炎の治療に適している可能性がある)に適していて、3〜300mg/Kgのような高用量、例えば、約30mg/Kgは、経口、全身(例、経皮)、又は非経口(例、静脈内)投与のような方法による投与に適している。
【0084】
遺伝子治療−投与の組成物及び形式
上記に述べたように、本発明の方法は、本発明のペプチドをコードする核酸及び/又はそれを含んでなる構築体の投与を伴う場合がある。そのような核酸技術の使用は、本明細書において、「遺伝子治療」と呼ばれる場合がある。
【0085】
当該技術分野で利用可能な遺伝子治療のどの方法も、本発明により使用することができる。例示の方法を以下に記載する。遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspiel et al., 1993, Clinical Pharmacy 12: 488-505; Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3: 87-95; Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32: 573-596; Mulligan, 1993, Science 260: 926-932; 及び Morgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191-217; May, 1993, TIBTECH 11(5): 155-215 を参照のこと。
【0086】
適正な構築体又はベクターを産生するときに使用し得る組換えDNA技術の当該技術分野で一般的に知られた方法は、全般的には上記に、そしてより具体的には、例えば、Ausbel et al (監修)、1993, Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学の最新プロトコール)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク;及び Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual(遺伝子の移入及び発現:実験マニュアル)、ストックトン・プレス、ニューヨークに記載される。
【0087】
1つの側面では、本発明のペプチドをコードする核酸配列を発現ベクターに少なくとも含んでなる組成物を好適な宿主へ投与する。本発明のペプチドをコードする核酸配列の発現は、該ペプチド配列のリピートを包含すること、又は該配列が発現されて翻訳機構によりプロセシングされることを可能にするフランキング異種配列を包含することのいずれかによって該配列を拡大することによって最適化してよい。該配列を単一ペプチド及び細胞透過性ペプチドと融合させて、分泌と細胞取込みを可能にしてよい。本発明のペプチドをコードする核酸配列の発現は、当業者に知られたどの誘導可能、構成、又は組織特異的プロモーターによって調節してもよい。具体的な態様において、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、転写の適切なインデューサーの存在又は非存在を制御することによって該核酸の発現が制御可能になるように、コード領域へ機能可能的に連結した誘導可能プロモーターを含む。特別な態様では、本発明のペプチドをコードする核酸分子に、ゲノム中の所望の部位での相同的組換えを促進する領域を隣接させて、それにより前記コード領域の染色体内での発現をもたらす(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Nature 342: 435-438)。
【0088】
核酸の患者への送達は、直接的(この場合、患者は、核酸分子又はそれらを含有する構築体へ直接曝露される)であっても、間接的(この場合、はじめに細胞を核酸分子で in vivo 形質転換してペプチドの分泌可能な細胞透過型を発現させてから、患者へ移植する)であってもよい。これら2つのアプローチは、それぞれ、in vivo 又は ex vivo の遺伝子治療として知られている。
【0089】
具体的な態様では、核酸分子を in vivo で直接投与して、ここでそれらは、コードされる産物を産生するように発現される。このことは、当該技術分野で知られる数多くの方法のいずれによっても達成することができる;例えば、それらは、適正な核酸発現ベクターの一部として構築してよく、例えば、欠損又は弱毒化レトロウイルス又は他のウイルスベクターを使用する感染による(米国特許第4,980,286号を参照のこと)か、又は裸のDNAの直接注射によるか、又は微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,デュポン)の使用、又は脂質又は細胞表面受容体又はトランスフェクション剤でのコーティング、リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセル剤における被包化によるか、又は核に入ることが知られているペプチドへの連結状態でそれらを投与することによるか、又は、受容体仲介性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262: 4429-4432 を参照のこと)(これは、この受容体を特異的に発現する細胞種へ標的指向するために使用し得る)へのリガンド被検体への連結状態でそれを投与すること、等によってそれらが細胞内になるように投与してよい。
【0090】
別の態様では、核酸−リガンド複合体を形成してよく、ここでリガンドは、エンドソームを破壊する融合(fusogenic)ウイルスペプチドを含み、核酸分子がリソソーム分解を回避することを可能にする。
【0091】
なお別の態様では、特異的な受容体へ標的指向させることによって、細胞特異的な取込み及び発現へ核酸分子を in vivo で標的指向させることができる(例えば、1992年4月16日付けのWO92/06180(Wu et al.);1992年12月23日付けのWO92/22635(Wilson et al.);1992年11月26日付けのWO92/20316(Findeis et al.);1993年7月22日付のWO93/14188(Clarke et al.);及び、1993年10月14日付けのWO93/20221(Young)に記載のように)。あるいは、核酸分子は、細胞内へ導入して、相同的組換えによって、発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Nature 342: 435-438)。
【0092】
具体的な態様では、ウイルスベクターを使用して核酸配列を発現させる。本発明が関連する技術分野の当業者は、本明細書に記載の本発明の本質を考慮する様々な好適なウイルスベクターについて評価することができる。しかしながら、例を挙げると、レトロウイルスベクターを使用することができる(Miller et al., 1993, Meth. Enzymol. 217: 581-599 を参照のこと)。そのようなレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパーケージングと宿主細胞DNAへの組込みに必要でないレトロウイルス配列が欠失している。レトロウイルスベクターに関するより多くの詳細は、例えば、Boesen et al., 1994, Biotherapy 6: 291-302 に見出すことができる。レトロウイルスベクターの遺伝子治療における使用を例示する他の参考文献には、例えば:Clowes et al., 1994, J. Clin. Invest. 93: 644-651; Kiem et al., 1994, Blood 83: 1467-1473; Salmons and Gunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4: 129-141; 及び Grossman and Wilson, 1993, Curr. Opin. In Genetics and Devel. 3: 110-114 が含まれる
本発明へ適用可能な遺伝子治療技術での使用に適したウイルスベクターの別の例には、アデノウイルスが含まれる。アデノウイルスには、非分裂細胞に感染することが可能であるという利点がある。Kozarsky and Wilson, 1993, Current Opinion in Genetics and Development 3: 499-503 は、アデノウイルスベースの遺伝子治療の概説を提供する。Bout et al., 1994, Human Gene Therapy 5: 3-10 は、アカゲザルの呼吸上皮へ遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証した。アデノウイルスの遺伝子治療における使用の他の例は、Rosenfeld et al., 1991, Science 252: 431-434; Rosenfeld et al., 1992, Cell 68: 143-155; Mastrangeli et al., 1993, J. Clin. Invest. 91: 225-234; PCT公開公報WO94/12649;及び Wang et al., 1995, Gene Therapy 2: 775-783 に見出すことができる。
【0093】
アデノ関連ウイルス(AAV)も、遺伝子治療における使用が提唱されている(Walsh et al., 1993, Proc. Soc Exp. Biol. Med. 204: 289-300; 米国特許第5,436,146号)。AAVは、本発明における使用に最も好ましいウイルスベクターを提示する。AAVベクターは、腸管上皮細胞と肝細胞の両方においてトランス遺伝子の永続的な(>6ヶ月)発現をもたらし、糖尿病動物モデルにおいて長期の表現型回復をもたらすと報告されている(Xu, RA et al., 2001, Peroral transduction of diffuse cells and hepatocyte insulin leading to euglycemia in diabetic rats(糖尿病ラットにおいて正常血糖をもたらす拡散細胞及び肝細胞インスリンの経口トランスダクション),Mol Ther 3: S180; During, MJ et al., 1998, Peroral gene therapy of lactose intolerance using an adeno-associated virus vector(アデノ関連ウイルスベクターを使用する、ラクトース不耐性の経口遺伝子治療),Nature Med. 4: 1131-1135; During MJ et al., 2000, An oral vaccine against NMDAR1 with efficacy in experimental stroke and epilepsy(実験的な卒中及びてんかんに効力がある、NMDAR1に抗する経口ワクチン),Science 287: 1453-1460)。AAVは、パルボウイルスファミリーの非病原性、ヘルパー依存性のメンバーであり、安定な組込み、低い免疫原性、長期の発現、及び分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染する能力といったいくつかの重要な利点がある。それは、宿主に対して毒性を引き起こすことなく、そして形質導入された細胞へ細胞免疫応答を誘発することなく、概ね最終分化した組織において in vivo で長期のトランス遺伝子発現を指令することが可能である(Ponnazhagan S et al., 2001, Adeno-associated Virus for Cancer Gene Therapy(癌遺伝子治療のためのアデノ関連ウイルス),Cancer Res 61: 6313-6321; Lai CC et al., 2001, Suppression of choroidal neovascularization by adeno-associated virus vector expressing angiostatin(アンジオスタチンを発現するアデノ関連ウイルスベクターによる脈絡膜新血管形成の抑制),Invest Ophthalmol Vis Sci 42(10): 2401-7; Nguyen JT et al., 1998, Adeno-associated virus-mediated delivery of antiangiogenic factors as an antitumor strategy(抗腫瘍戦略としての抗血管新生因子のアデノ関連ウイルス仲介性送達),Cancer Research 58: 5673-7)。
【0094】
本発明の好ましい態様において、遺伝子治療の目的のために核酸を導入し得る細胞は、白血球である。しかしながら、所望される利用可能などの細胞種も使用してよい(特に、その細胞より分泌されるペプチドを発現するように核酸を適合させて、引き続き白血球により拾い上げる場合)。例えば、核酸は、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、及びマクロファージのような血液細胞へ導入してよい。
【0095】
上記に述べたように、本発明のこの側面において使用の核酸及び核酸構築体は、1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤と一緒に適切な組成物へ製剤化してよい。当業者は、このような好適な希釈剤、担体、及び/又は賦形剤を容易に理解されよう。しかしながら、具体的な例を挙げると、特に注射可能溶液剤に適した液体担体には、水、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、等が含まれ、等張溶液剤が好ましい。
【0096】
核酸、構築体、ウイルスは、核酸の in vivo での送達の支援に役立つか又はその完全性を保護するように製剤化してよい。例えば、それらは、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル剤、又は組換え細胞へ、又は適切なウイルスベクターの一部として製剤化してよい。それらは、受容体仲介性エンドサイトーシスによる送達を利用するように製剤化してもよい(例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262: 4429-4432 (1987) を参照のこと)。脂質ポリカチオンDNA(LPD)を利用してよく、ここでは、脂質中での被包化に先立ってDNAを濃縮する(Targeted Genetics Corporation, ワシントン州シアトル、アメリカにより使用されるように)。
【0097】
本発明の遺伝子治療ベースの組成物を投与する方法の具体例には、限定されないが、非経口投与(例、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例、鼻腔内及び口内経路)投与が含まれる。具体的な態様では、本発明の予防又は治療組成物を筋肉内、静脈内、又は皮下に注射する。本組成物は、どの簡便な経路によっても、例えば、注入又は注射により、上皮又は粘膜皮膚の内層(例、口粘膜、直腸及び腸の粘膜、等)を介した吸収により投与してよく、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与してよい。投与は、全身性であっても、局所的であってもよい。静脈内投与を介した全身遺伝子治療は、好ましい投与形式を与える。
【0098】
機能性インタラクター分子及び模倣体の同定の方法
干渉分子(アプタマーのような)が含まれるβ7インテグリン機能性インタラクター分子と本発明のペプチドの模倣体を同定する方法は、一般に、潜在的な機能性インタラクター又は干渉分子を本発明のペプチドと接触させて、結合が生じるかどうかを観察する工程を少なくとも含む。例えば、そのような分子は、本発明のペプチドをマトリックス(例、Sepharoseビーズ)に固定化して、細胞溶解液よりインタラクターをアフィニティー単離するために使用する、「プルダウン」アッセイによって同定することができる。インタラクターは、SDSゲル上で電気泳動させて、候補インタラクターに対するmAbを用いたWesternブロッティングによって同定し得るか、又はインタラクターは、質量分析法によって直接同定する。本発明のペプチドは、カラム上に固定化して、インタラクターをアフィニティー精製するために使用してよい。表面プラスモン共鳴に基づいたBiaCORE技術を使用して、分子相互作用を確定又は特性決定することができる。
【0099】
本ペプチドは、潜在的なインタラクターの分子のライブラリー;例えば、アプタマーライブラリー(Archemix,マサチューセッツ州ケンブリッジのそれのような)、化学模倣体のライブラリー(当該技術分野で知り得るような)、及び合成抗体のライブラリー(例えば、HuCAL(登録商標)抗体ライブラリー(Morphosys AG,Martinsried/Planegg,ドイツ)をスクリーニングするために使用してもよいことを理解されたい。
【0100】
本発明のペプチドへ結合することが確定したならば、候補分子の機能を、例えば、下記の「実施例」に記載のような in vitro 細胞接着アッセイを使用して、評価することができる。インタラクターはまた、過剰発現させるか又は阻害して(例えば、アンチセンス、RNAi、等で)、それらがβ7インテグリンの機能を調節するかどうかを決定することができる。当業者は、動物での in vivo アッセイが含まれる、代わりのアッセイを容易に理解されよう。
【0101】
「干渉分子」は、β7インテグリンの活性及び機能を妨害するか又は阻害する、少なくともいくらかの能力を表示する。好ましくは、それらは、β7インテグリンのそのリガンドとの相互作用を妨害するか又は防止する。
【0102】
抗体
本発明のペプチドは、抗体の産生のための抗原として使用してよい。そのような抗体は、β7インテグリンの機能の実験研究において、又は細胞透過性にされた場合には、予防又は治療上の試薬として、特別な応用を有する可能性がある。本発明のペプチドを認識する抗体に対して産生される抗イディオタイプ抗体は、潜在的なインタラクターを同定するために、又は療法用に使用してよい。
【0103】
用語「抗体」は、可能な限り広い意味で理解すべきであり、例えば、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びそのような抗体の誘導体;例えば、ハイブリッド及び組換え抗体(例えば、ヒト化抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、及び単鎖抗体)と抗体断片(それらが、所望される生物活性を明示する限りにおいて)が含まれると企図される。抗体は、それが細胞透過性になるように、修飾してもよい(「Transbody」)。これは、上記に記載する膜移行モチーフ技術を使用して達成することができる。さらに、Heng and Cao(Med Hypothesis, 2005; 64(6): 1105-8)により記載された方法論を使用してよい。
【0104】
抗体「断片」には、インタクトな抗体の一部、一般には抗体の抗原結合又は可変領域が含まれると企図される。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片が含まれる。本発明が関連する技術分野の当業者は、そのような抗体断片を産生するための方法を認識されよう。しかしながら、一般的な例を挙げると、インタクトな抗体のタンパク分解消化産物を使用しても、組換え核酸技術により断片を直接産生してもよい。
【0105】
「ヒト化」抗体は、本質的には、ヒト供給源に由来するドメインと抗体を産生した可能性がある動物に由来するドメインを含有するハイブリッド又はキメラ抗体である。本事例では、それらは、完全にヒトの抗体であるか、又はマウス/ヒト−ハイブリッド抗体のいずれかである。本発明によるヒト化抗体は、一般に、例えば機能性抗体を生成するのに必要な適切なヒトの抗体ドメイン又は領域へ融合した、本発明のペプチドに対する抗体のマウスCDR(相補性決定領域又は抗原結合部位)を含む。マウス抗体のヒト化は、当該技術分野で知られた技術を使用して、例えばエピトープ導き(epitope-guided)選択によって達成することができる(Wang et al., 2000)。Jones et al (1986) 又は Maynard and Georgiou (2000) の方法は、さらなる例を提供する。
【0106】
抗体のヒト化は、例えば本発明の抗体のヒトにおける免疫原性を低下させることに役立つ場合がある。マウスCDR領域を同種のヒトβシートフレームワークへ移植すること(CDR移植と呼ばれる;Riechmann et al 1988 及び Jones et al 1986 を参照のこと)によって、低下した免疫原性を得ることができる。
【0107】
本発明が関連する技術分野の当業者は、用語「二重特異性抗体」及び「三重特異性抗体」を理解されよう。これらは、軽鎖可変ドメイン(VL)へ短いペプチドリンカー(これは、きわめて短くて同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にしない)によって連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む分子である。これは、1以上の他の鎖の相補性ドメインとの対合を促進して、2以上の機能性抗原結合部位との二量体又は三量体分子の形成を助長する。生じる抗体分子は、単一特異的であっても、多重特異的(二重特異性抗体の場合は、二重特異的)であってもよい。そのような抗体分子は、本発明の抗体の2以上より、本発明が関連する技術分野の標準的な方法論を使用して、例えば、Holliger et al (1993), 及び Tomlinson and Holliger (2000) により記載されるように、創出することができる。
【0108】
本発明による抗体の産生は、当該技術分野の標準的な方法論に従って行ってよい。例えば、ポリクローナル抗体の産生の場合は、Diamond et al (1981) の方法を使用してよい。モノクローナル抗体は、例えば、「Current Protocols in Immunology(免疫学の最新プロトコール)」(1994, ジョン・ウィリー・アンド・サンズによる出版、John E. Coligan, Ada M. Kruisbeek, David H. Margulies, Ethan M. Shevach, Warren Strober による監修)に、Winter and Milstein (1991) により、又は「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(モノクローナル抗体の産生技術と応用)」、マルセルデッカー社、に記載のように製造してよい。
【0109】
抗体又はその誘導体の産生は、当該技術分野で知られて、上記で論じた標準の組換え技術を使用して達成してもよい。抗体をコードする、従って、抗体の組換え産生に適した核酸は、適切なハイブリドーマ由来の核酸を単離して配列決定することによって、又は抗体のアミノ酸配列と遺伝暗号とその縮重に関する知識を考慮することによって同定することができる。本発明の抗体のアミノ酸配列は、標準の方法論を使用して決定してよく;例えば、エドマン分解の技術とHPLC又は質量分析法の解析(Hunkapiller et al, 1983)を使用してよい。
【0110】
本発明者は、組換え技術が、治療応用のために商業スケールで抗体を産生する好ましい手段であると考える。
抗体又はその誘導体は、特に本発明のペプチドの製剤に関連して上記に記載した(特に、「組成物と治療の方法」と「ペプチド組成物と投与の形式」と題した節を参照のこと)のと類似のやり方で、医薬組成物へ製剤化することができる。抗体は、上記の節に記載の原理に従って投与してもよい。抗体の改善された送達方法には、例えば、Grainger により(「Controlled-release and local delivery of therapeutic antibodies(治療用抗体の制御放出と局所送達)」Expert Opin Biol Ther. 2004 Jul; 4(7): 1029-44 中)に記載されるような、制御放出及び局所送達の戦略が含まれる。
【0111】
抗体は、「細胞内抗体(intrabodies)」、又は、例えばプラスミド又はウイルス送達に続いて所望の細胞において抗体を発現するように適合した核酸構築体の形式で被検者へ送達してもよい。その場合である限りにおいて、適正な核酸を受容される医薬組成物へ製剤化して、「組成物と治療の方法」及び「遺伝子治療−組成物と投与の形式」と題した節において上記に記載したように、投与することができる。Stocks(「Intrabodies: production and promise(細胞内抗体:産生と期待)」Drug Disc Today. 2004 Nov 15; 9(22): 960-6.)は、「細胞内抗体」の産生についてのさらなる手引きを提供する。
【0112】
キット
本発明のペプチド及び核酸は、インテグリンβ7の機能を変調させることに、又はインテグリンβ7仲介性の炎症障害の治療に適したキットにおいて使用してよい。そのようなキットは、少なくとも本発明のペプチド又は核酸を好適な容器に含むものである。この核酸又はペプチドは、被検者への直接投与に適した医薬組成物において製剤化してよい。あるいは、キットは、ペプチド又は核酸をある容器に含み、医薬担体組成物を別の容器に含んでよく;各容器の中身は、投与に先立って一緒に混合される。キットは、特別な応用に必要であり得る場合、さらに別の容器に追加の薬剤及び組成物を含んでもよい。さらに、本発明のキットは、キットの使用とその成分の投与についての説明書も含んでよい。
【0113】
医薬組成物を保存及び/又は投与するのに適したどの容器も、本発明のキットに使用してよい。当業者には、好適な容器が理解されよう。例を挙げると、そのような容器には、バイアルとシリンジが含まれる。容器は、好適には、滅菌して、密封的にシールしてよい。
【0114】
実施例
材料と方法
細胞系と合成ペプチド。マウスの自然発症AKR/Cum Y CD8 LPAM−1/VLA4Tリンパ腫細胞系、TK−1とヒトTリンパ腫細胞系H9は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、メリーランド州ロックヴィルより購入した。それをペニシリン50U/ml、ストレプトマイシン50μg/ml、L−グルタミン200μg/ml、10%(v/v)FCS、及び0.05mM β−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640培地において37℃で培養した。合成ペプチドは、いずれも、Mimotope Pty社(ビットリア、オーストラリア)により特注作製した。β7細胞質ドメインペプチドは、合成の間に、ビオチニル化ペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKKFDRREF(配列番号18))又はビオチニル化R9ポリマー(配列番号19)へN末端で融合させて、それらを細胞透過性にした。
【0115】
インテグリンβ7サブユニット細胞質ドメインをコードするGST−融合タンパク質。完全なβ7細胞質ドメインをコードするpGEX−2Tベクターは、Andrew Lazarovits
博士(Imperial Cancer Research Fund,ロンドン)の厚意により提供された。
【0116】
組換えMAdCAM−1−Fc、VCAM−1−Fc、及びICAM−1−Fcキメラ。バキュロウイルス発現系を使用する、可溶性組換えマウスMAdCAM−1−Fcの昆虫細胞からの産生については、すでに記載されている(24)。可溶性のヒトVCAM−1−Fc及びICAM−1−Fcキメラは、グルタミンシンテターゼ遺伝子増幅系を使用して産生した。ヒトIgG1のFcドメインへ融合したヒトVCAM−1−Fc及びICAM−1−Fcの細胞外部分は、すでに記載のように(25)、CHO K1細胞においてpEE14ベクター(Chris Bebbington 博士、セルテック社、イギリスの厚意により提供された)より発現させた。1μgの組換えMAdCAM−1−Fcを1μlのPower−bindプロテインA微粒子(Seradyn,直径0.979mm)1%懸濁液と100μlにおいて4℃で30分間混合することによって、MAdCAM−1−Fc被覆マイクロスフェアを調製した。
【0117】
ペプチドの内部化及び可視化。無血清RPMI1640培地中の細胞へ20μMのビオチニル化ペプチドを37℃で30分間、又は室温で60分間加えた。PBSで洗浄後、PBS/1% FCSへ細胞を再懸濁させて、スライドガラス上で細胞遠心分離させた。サイトスピン(Cytospin)スメアをPBS中4%パラホルムアルデヒドで、室温で15分間固定し、PBSで2回洗浄して、0.2% Triton X−100を含有するPBSにおいて10分間透過させた。このスライドをストレプタビジン−FITC(シグマ、ミズーリ州)とともにインキュベートすることによってビオチニル化ペプチドを検出して、Leica TCS 4D共焦点レーザー顕微鏡を使用して可視化した。Leica ScanwareTM 4.2AソフトウェアとAdobe Photoshop 5.0を使用して、画像を処理した。
【0118】
細胞接着アッセイ。Lab−Tek 16ウェルスライドガラス(Nunc)又は平底96ウェル最大吸収(maxisorb)プレート(Nunc)を精製したマウスMAdCAM−1−Fc、ヒトVCAM−1−Fc、及びヒトICAM−1−Fc(5〜10μg/mlの70〜100μl)でコートして、4℃で一晩インキュベートした。スライドをPBSで1回洗浄して、室温で2時間、FCSで阻止した。10mM Hepesを含有するHanks平衡化塩溶液(HBSS)でスライドを洗浄した。細胞は、非標識のままであるか、又は蛍光色素のクロロメチルフルオレセイン二酢酸塩(CMFDA;Molecular Probes,オレゴン州)で標識して、2mM Ca++及び2mM Mn++を補充した10mM Hepesを含有するHBSS中の再懸濁によって活性化した。あるいは、細胞は、PMA 50ng/mlで、又はAlF(10mM NaFと40μM AlCl3)とともにインキュベートすることによって活性化した。それらを異なる濃度のペプチドと室温で10分間プレインキュベートし、トリパンブルー排除によって生存能力をチェックしてから、それぞれのコートしたウェルへ10個の細胞を加えて、室温で30分間接着させた。スライドをPBSへ穏やかに2回浸すことによって、16ウェルスライドガラス中の非接着性の非標識細胞を除去して、接着した細胞は、2%(v/v)グルタルアルデヒドを含有するPBSに少なくとも3時間固定した。接着した細胞の数を4つの独立した視野において倒立顕微鏡下に100倍の倍率で計数することによって、接着した細胞の数を決定した。あるいは、96ウェルプレート中の非接着性CMFDA標識化細胞を、70xgで5分間の逆遠心分離によって50mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,2mM MnCl中へ取り出し、続いてピペットで穏やかに洗浄した。VICTOR 1420マルチラベルカウンター(Wallac)を使用して、CMFDA標識化した接着細胞の蛍光を測定した。他に述べなければ、同一2検体のウェルを使用して、同一3検体で実験を繰り返した。
【0119】
受容体クラスタリングの共焦点顕微鏡法分析。ペプチド(50μM)の存在又は非存在下に室温で1時間TK−1細胞をインキュベートして、2mM Ca++及びAlF4を含有するHBSSにおいて細胞を室温で30分間活性化した。MAdCAM−1で被覆したマイクロスフェアとともに細胞を氷上で1時間インキュベートした。0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBSでそれらを洗浄し、PBS中4%(w/v)パラホルムアルデヒドにおいてさらに1時間固定した。次いで、FITC共役抗β7サブユニットM293 mAbで染色し、上記のように洗浄して固定した。細胞をCitifluorグリセロール/PBS溶液と1:1混合し、スライド上に載せて、外部アルゴン−クリプトンレーザー(488nm)を取り付けたLeica TCS4D共焦点レーザー走査顕微鏡を使用して解析した。画像をデジタルで記録して、マイクロソフトPower Pointソフトウェアを使用して、Epsonカラープリンターで印刷した。
【0120】
β7cytをコードする組換えGST融合タンパク質のリン酸化。H9細胞(5x10個)を1mlの溶解緩衝液(10mM Tris(pH7.4),50mM NaCl,50mM NaF,1mMオルトバナジン酸ナトリウム、PMSF 300μg/ml,アプロチニン 20μg/ml,ロイペプチン 10μg/ml,及び1% NP−40)において4℃で溶解し、遠心分離して、上清をGST−Sepharoseでプレ清浄した。グルタチオン−Sepharoseへ結合した、β7サブユニット細胞質ドメインをコードするGST融合タンパク質(50μg)を微量(1:100希釈)のプレ清浄溶解液とともに4℃で2時間インキュベートした。このビーズを溶解緩衝液で3回、そしてキナーゼ緩衝液(10mM Tris(pH7.4),50mM NaCl,5mM MgCl,5mM MnCl,0.1mM NaVO)で3回洗浄して、0.5μCi[32P]γATPを含有する30μlキナーゼ緩衝液において30℃で20分間インキュベートした。この試料を10%アクリルアミドゲル上のSDS−PAGEへ処した。このゲルをクマッシーブルーで染色してGST融合タンパク質を可視化し、55℃で2時間、1M KOHで処理して、セリン及びスレオニン上のアルカリ分解性リン酸部分を除去した。このゲルを乾燥させて、オートラジオグラフィーへ処した。
【0121】
β7cytがリン酸化されたことを確認するために、in vitro キナーゼアッセイへ処したGST−β7cytビーズを洗浄して、10μlの10% SDS中で5分間煮沸した。上清を1mlへ希釈して、10%連鎖球菌タンパク質G及びウサギIg−Sepharoseでプレ清浄した。この試料を分割し、一方の半分はβ7cytに対する50μlのウサギポリクローナル抗血清で、他方の半分は50μlの正常ウサギ血清で免疫沈殿させた。この免疫沈殿物をSDS−PAGEにより分離させて、オートラジオグラフ処理した。
【0122】
β7細胞質ドメインペプチドがキナーゼへ結合するかどうかを試験するアッセイ。TK−1細胞(3x10個)を1mlの溶解緩衝液に溶解させて、4℃で10分間、12,000xgで遠心分離させた。10μlのSepharoseに次いで、10μlのストレプタビジン−Sepharoseで上清をプレ清浄した。細胞質ドメインペプチドについて、不活性のままであるか、又はAlF4で活性化したTK−1細胞の溶解液中のキナーゼと会合するその能力をスクリーニングした。5μlのストレプタビジン−Sepharoseに固定したビオチニル化ペプチドを、1μlの細胞溶解液を含有する1mlの溶解緩衝液とともに4℃で2時間、穏やかに振り混ぜながらインキュベートした。このビーズを氷冷溶解緩衝液で3回、キナーゼ緩衝液で1回洗浄して、30μlのキナーゼ緩衝液と0.5〜1μCiのγATPとともに30℃で20分間インキュベートした。ビーズを5回洗浄して、放射活性をシンチレーションカウンターにおいて測定した。
【0123】
結果
β7細胞質ドメインの膜近傍領域を含有する細胞透過性ペプチドは、α4β7仲介性のT細胞接着を阻害する。全52アミノ酸残基のβ7サブユニットの細胞質ドメイン(β7cyt)を網羅する7種の重複ペプチド(β7−2〜β7−9)(図1A)をそのN末端でペネトラチン(アンテナペディア(Antennapedia)ホメオドメインの第三ヘリックスの16アミノ酸残基断片)(26,27)へ融合した。このペプチド(50μM)をTK−1 T細胞(α4β7β1)とともにインキュベートして、それらがペネトラチンによって細胞透過性になったかどうかを判定した。7つのペプチドは、いずれも1時間後に細胞の細胞質中へ移入されたが、核からは排除された(図1B)。一緒になると細胞質ドメイン全体に及ぶ、ペプチドβ7−2〜β7−5について、「裏返しの」シグナル伝達を阻止するその能力を試験すると(図2A〜G)、固定したα4β7リガンドのMAdCAM−1(図2A〜C)、VCAM−1(図2D,E)、及びRGDの工学処理ポリマー(図2F,G)へのTK−1細胞接着を排除したのは、残基729〜740に及ぶβ7−2ペプチドだけである。MAdCAM−1とVCAM−1への細胞結合は、100μMのペプチドでほぼ完全に阻止されたが、RGDポリマーへの結合では、50%の低下だけであった(図2F,G)。MAdCAM−1(図2C)の場合は、細胞アクチベーターが汎アクチベーターのMn++(図2A,D,F)、プロテインキナーゼC(PKC)アクチベーターのPMA(図2B,E,G)、又はG−タンパク質アクチベーターのAlF4であるかどうかに拘らず、同様のレベルの阻害が達成された。
【0124】
インテグリンβ3サブユニットの先端のC末端(残基742〜762)に由来する細胞接着調節ドメイン(CARD)は、赤白血病及び内皮の細胞の固定化フィブリノゲンへの接着を阻害すると報告されている(28)。予測されるように、ペネトラチンへN末端で融合したβ3 CARDを含有する細胞透過性の対照ペプチド(β3−CARD)(図1A,B)は、Mn++、AlF4、又はPMAで活性化したTK−1細胞のMAdCAM−1とVCAM−1へのβ7仲介性の接着に対して効果がなかった(図3A,B)。このペプチドは、TK−1細胞がβ3インテグリンを発現しないので(図3C)、RDGポリマーへのβ3インテグリン仲介性の細胞結合を阻止しなかった(データ示さず)。むしろ、既報のように(29)、TK−1細胞のRDGポリマーへの結合は、β7インテグリンによって仲介される。
【0125】
リンパ球接着のペプチドβ7−2仲介性の阻止が種特異的ではないことを実証するために、ヒトTリンパ腫細胞系のH9(α4β7β1)を使用して上記の記載と同様の実験を行なった。この細胞系へTK−1細胞系で観察したものと同様の速度でペプチドを移入した(データ示さず)。ペプチドβ7−2は、Mn++(図4A,C)とPMA(図B,D)で活性化したH9細胞の、それぞれMAdCAM−1(図4A,B)とVCAM−1(図4C,D)への接着を阻止したが、ペプチドβ7−3、β7−4、及びβ7−5は、完全に無効であった。H9細胞のVCAM−1への接着のβ7−2ペプチド仲介性の阻害は、細胞接着を阻止するのにより高い濃度のペプチドが必要とされることにより裏付けられるように、TK−1細胞接着の阻止ほど十分に有効ではなかったが、おそらくは、VCAM−1への細胞結合を選好的に仲介するα4β1をH9細胞が発現するからであろう。対照的に、β3 CARDペプチドは、Mn++とPMAで活性化したH9細胞のMAdCAM−1とVCAM−1への接着を阻止することに失敗した(データ示さず)。
【0126】
ペプチドβ7−2による細胞接着の阻害は、β7インテグリン特異的である。
H9細胞は、β2インテグリンαLβ2を発現して、αLβ2リガンド、ICAM−1へ結合する(図4E)。β7細胞質ドメインペプチド(β7−2〜β7−5)のいずれもMn++活性化H9細胞がICAM−1へ結合することを阻害せず、β7−2ペプチドの阻害活性がβ7インテグリンへ限定されることを実証した(図4E)。
【0127】
細胞透過性ペプチドβ7-2は、α4β7のリガンド誘発性クラスタリングを阻止するが、既存のフォーカルアドヒージョンを壊すことはできない。TK−1細胞のMAdCAM−1の存在下での刺激は、細胞表面でのα4β7のリガンド誘発性クラスタリング(α4β7仲介性の細胞接着の増加への主因と思われるプロセス)をもたらす(8)。ペプチドβ7-2は、AlF4活性化TK−1細胞の表面でのα4β7のMAdCAM−1誘発性再分配を完全に阻止して、このペプチドがフォーカルアドヒージョン複合体の形成を妨げることを示唆した(図5A)。対照的に、非活性ペプチドのβ7−3には効果がなかった。β7−2ペプチドは、MAdCAM−1(図5B,C)とVCAM−1(図5D,E)へすでに接着したMn++及びPMA活性化TK−1(図5B,D)及びH9(図5C,E)細胞を剥離することはできず、それが既存のフォーカルアドヒージョンを壊し得ないことを示唆した。
【0128】
細胞接着には、6つのアミノ酸残基のモチーフが必須である。細胞接着のペプチド阻止の原因となる領域を半定位する(sublocalize)ために、β7−2ペプチドを2つに分けて、細胞透過性ペプチド、β7−7及びβ7−8を得た(図1A,B)。残基735〜740が含まれるペプチドβ7−8は、Mn++、PMA、及びAlF4活性化TK−1細胞のMAdCAM−1、VCAM−1、及びRGDポリマーへの接着を阻止する能力を保持して(図6)、ペプチドβ7−2により明示されるのと同様の用量依存性があった(図2)。対照的に、ペプチドβ7−7(残基729〜735)は、完全に無効であった。β7−8ペプチドは、H9細胞の後者のリガンドへの接着も阻止した(データ示さず)。
【0129】
ペプチドβ7−8の阻害活性には、β7 CARD中のタンデムチロシン残基が不可欠である。YDRREYのチロシン残基735及び740をともにフェニルアラニンで置換した突然変異体ペプチド(β7−9)は、Mn++、PMA、及びAlF4で活性化したTK−1(図7)及びH9細胞(データ示さず)の、MAdCAM−1−Fc(図7A〜C)又はVCAM−1(図7D,E)のいずれへの接着も阻害することができなかった。
【0130】
最近、6アミノ酸以上の長さのL−アルギニン(R)のポリマーがきわめて細胞透過性であることが発見された(30)。9つのアルギニンポリマーのD−異性体型へ融合した、YDRREYペプチドを含有するペプチドβ7−12は、細胞によって速やかに内部化されて(図8A)、Mn++、PMA、及びAlF4活性化TK−1細胞のMAdCAM−1への接着を阻害し(図8B)、β7 CARDの細胞接着阻止効果が担体ペプチドの種類と無関係であることを示した。フランキングチロシン残基735(ペプチドβ7−10)及び740(ペプチドβ7−11)をそれぞれ除去する、ペプチドβ7−12の末端切断は、ペプチドβ7−10及びβ7−11がMn++、PMA、及びAlF4活性化TK−1細胞のMAdCAM−1への接着を阻害することができなかった(図8B)ので、このペプチドの活性を破壊した。従って、活性には両方のフランキングチロシン残基が不可欠であり、YDRREYは、最小のモチーフと定義される。
【0131】
β7 CARDのD−アミノ酸型は、活性を保持する。R9のD−異性体型へ融合したβ7 CARDのD−アミノ酸バージョンは、TK−1細胞によって内部化されて(図8A)、TK−1 T細胞の固定化VCAM−1−Fcへの接着を阻害するのに、L−エナンチオマーと同等に強力であった(図8C)。D−アミノ酸型は、50μMを超える濃度で細胞傷害性であり、100μMで50%の細胞死を引き起こした(データ示さず)。
【0132】
β7 CARDはキナーゼへ結合して、β7 CARD中のチロシン残基は、リン酸化可能である。ペプチドβ7−8は、β7cyt中の3つの潜在的なβ7cytチロシンリン酸化部位(残基735、740、及び746)のうち2つを保有する。in vitro キナーゼアッセイは、リンパ球溶解液に存在するキナーゼによって、β7cytがチロシン上でリン酸化され得ることを明らかにした(図9A)。図9AにおいてGST−β7cyt融合タンパク質とともに生成した顕著なリン酸化バンド(レーンβ7)は、ウサギ抗β7cyt抗体によって特異的に免疫沈殿した(図9B)。ゲニスタインを20μMで含めると、β7cytのリン酸化が完全に阻止されて、リン酸化がチロシン特異的であることを示した(図9C)。β7−4、β7−5、β7−7、β7−8、β7−10、及びβ7−11のペプチドについて、キナーゼと会合する、及び/又はリン酸化されるその能力をそれぞれ試験した。Sepharoseビーズに固定したペプチドを不活性化細胞とAlF4活性化細胞に由来する溶解液とともにインキュベートし、ビーズを洗浄して、会合したキナーゼの存在を検出する in vitro キナーゼアッセイへ処した。ペプチドβ7−8、β7−10、及びβ7−11は、NPLYモチーフ内にチロシン760を含有するペプチドβ7−4と同様に、TK−1細胞溶解液での処理に続いてリン酸化複合体を形成した(図9D)。このように、キナーゼは、β7サブユニットの細胞質ドメインのN及びC末端領域内のYDRREYとQLNWKQDSNPLYKSAITTT配列の両方と相互作用する。リン酸化複合体は、不活性化細胞又はAlF4活性化細胞のいずれの溶解液を使用したかに拘らず形成されて、活性化が必要とされないか、細胞の破壊後にキナーゼが活性化されるかのいずれかであることを示唆した。対照的に、ペプチドβ7−7と潜在的なチロシンリン酸化部位を欠失する先端のC末端対照ペプチドβ−5は、リン酸化複合体を形成しなかった。
【0133】
考察
本明細書の結果は、β7の細胞質テールの膜近傍領域中の6アミノ酸ペプチドモチーフ、735−YDRREY−740が、β7インテグリンのクラスタリング及び接着機能に仲介するのにきわめて重要な役割を果たすことを明らかにする。このモチーフは、β7細胞質ドメイン固有のものであり(図10)、β1及びβ5のサブユニットは、DRREコアを共有するが、2つのフランキングチロシン残基を欠失する。YDRREYモチーフにはある種の対称性があり、ここでは、酸性残基が隣接した2つの塩基性アルギニンのコアがタンデムチロシン残基に含まれる。β7 CARDは、ヒト及びマウスのβcytの間で完全に保存されている(図10)。β2サブユニットは、この二塩基性のコアを欠失して、代わりにDLREモチーフを有する、唯一の典型的なインテグリンβサブユニットである。DLREモチーフは、すべてのインテグリンαサブユニットに共通したGFFKRモチーフへ結合して、LFA−1を低アフィニティー状態へ束縛すると提唱されてきた(31)。興味深いことに、β2サブユニット内でDRREモチーフを創出するために単一のアミノ酸を置換すると、LFA−1の細胞表面でのクラスタリングを誘発して、LFA−1のK562細胞におけるPMA応答性を回復させた(32)。このことは、今回の試験の結果から推察されるように、このモチーフがクラスタリングを介して受容体アビディティを制御することを示唆する。
【0134】
チロシン残基735及び740は、いずれもリン酸化可能であり、タンデムで作用して、α4β7の接着機能に仲介した。
本発明者が注目したデータは、β7中のCARDがβ7インテグリンに固有であることを示し、β7インテグリンの接着機能がβ1、β6、及びβ3インテグリンの類似物と比べて異なる細胞内シグナル伝達経路によって調節される可能性があることを示唆する。このことに一致して、本試験では、細胞透過性YDDREYペプチドもβ3 CARDも、H9細胞のICAM−1へのβ2インテグリン仲介性の接着を阻止することができず、β2、β3、及びβ7インテグリンのそれぞれの接着性は、差別的に調節されることを示した。
【0135】
どの特別な理論にも束縛されることを望まないが、本発明者は、β7cytの細胞透過性の可溶型がα4β7の細胞表面クラスタリングに不可欠である細胞内タンパク質と競合して、それによってα4β7仲介性の細胞接着を排除すると考える。少なくとも21種のタンパク質という大きなアレイが1以上のインテグリンβテールへ結合することが知られている(43)が、β7サブユニットへ結合するとして公表文献に報告されたものは、アクチン結合タンパク質のフィラミン(44)とWD反復タンパク質のWAIT−1(25)だけである。WAIT−1は、β7サブユニットの細胞質テールと特異的に相互作用するが、β1、及びβ2のサブユニットとは相互作用しない(25)。β7cyt中のWAIT−1結合部位、729−RLSVEIYDR−740は、β7cyt中のCARDとは一部しか重ならない。β7cyt中のフィラミン結合部位は、まだ画定されていない。β1及びβ2インテグリンサブユニット細胞質ドメイン中のフィラミン結合領域は、異なるようにみえる。従って、β2サブユニット中のフィラミン結合部位を膜近傍領域(残基724〜747)へ定位した(45)が、β1サブユニットの場合には、3つ以外のすべてのC末端残基が必要とされた(46)。フィラミンは、フォーカルアドヒージョンへ動員されて、インテグリンと細胞骨格の間の機械的な連結を提供して、細胞骨格の動態を調節するシグナル伝達分子のアプタマータンパク質として作用する(43)。β7cyt中のCARDがフィラミンへ結合するならば、このことで、細胞透過性YDRREYペプチドの、α4β7細胞表面クラスタリングを阻害する能力が一部説明されるかもしれない。
【0136】
本発明者は、先端のC末端β7cytペプチドがα4β7仲介性の接着に対する優性ネガティブな影響を明示し得ないことを示したものの、この領域がβ7インテグリン機能を調節するのにある役割を担うことも明らかである。従って、β7cytのC末端からの34アミノ酸残基セグメントの欠失は、38C13 Bリンパ腫細胞のβ7インテグリンリガンドへの接着を排除した(47)。β7cytの異なる領域が細胞種特異的な機能を担うことはあり得る。
【0137】
要約すると、α4β7の細胞表面クラスタリングへ貢献することによって、活性化T細胞の接着に仲介する必須の役割を担う、インテグリンβ7サブユニットの細胞質テール中のCARDを同定した。このCARD YDRREYモチーフは、β7インテグリンの接着機能を「内側から」変調させて、β7インテグリンが貢献するいくつかの主要な炎症性疾患を治療するのに有用な分子であり、またさらなる医薬品を設計するための鋳型を提供する。
【0138】
本明細書において、読者が不要な実験をせずに本発明を実施することを可能にするために、ある種の好ましい態様を参照して本発明を記載してきた。しかしながら、本発明が関連する技術分野の通常の技術者は、その成分及び変数の多くを、本発明の範囲より逸脱することなく、ある程度まで変動又は修飾させてよいことを容易に認められよう。さらに、表題、見出し、等は、本文献への読者の理解を高めるために提供するのであり、本発明の範囲を制限するものとして読んではならない。
【0139】
上記と下記に引用したすべての特許出願、特許、及び公表文献の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書における先行技術への言及は、謝辞でも、どんな形式の示唆でもなく、そしてそのように解釈してはならず、その先行技術は、本発明が関連する営為の分野における通常の一般知識の一部を形成するものである。
【0140】
本明細書と、以下に続く特許請求項を通して、文脈から他のことが求められなければ、単語「含む(comprise)」と「含む(comprises)」及び「含んでなる(comprising)」のような変化形は、述べられる整数又は工程、又は整数又は工程の群の包含を意味するが、あらゆる他の整数又は工程、又は整数又は工程の群の排除を意味するわけではないと理解されたい。
【0141】
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【図面の簡単な説明】
【0142】
本発明の上記や他の側面は、すべてその新規な側面において考慮されるべきであり、付帯の図面に関連して例示としてのみ示される、以下の記載より明らかになろう。ここで:
【図1】図1は、細胞透過性β7cytペプチド配列と、TK−1 T細胞によるその取込みを例示する。(A)本試験において使用するβ7cytの異なる領域を表すペプチド。ペプチドは、ペネトラチン(Pen)又は9つのアミノ酸アルギニンポリマー(r9)のD−異性型のいずれかへ融合させた。上記及び下記の例は、それぞれ、L及びD−エナンチオマーを示す。インテグリンβ3サブユニット由来のCARDを含有するβ3−CARDペプチドを対照として使用した。(B)固定、透過、細胞遠心分離させた細胞スメアをFITC−ストレプタビジンで染色することに続く、共焦点レーザー走査顕微鏡法によって、細胞内のペプチドを検出した。提示する単一細胞の断面図は、細胞集団の70〜80%を表す。パネルは、ペプチド、β7−2(B)、β7−3(C)、β7−4(D)、β7−5(E)、β7−7(F)、β7−8(G)、β7−9(H)、及びβ3−CARD(I)を取り込んだ細胞を例示する。パネルAには、細胞だけがあり、ペプチドはない。β7−3、β7−4、β7−5、β7−7、β7−9、β7−10、β7−11、及びβ3−CARDのペプチド配列(アルギニンのポリマー及びペネトラチンの配列を除く)に、本明細書に付帯する配列リストに従って、配列番号21〜配列番号28の配列識別名を割り当てた。
【図2】図2は、β7cytの膜近傍領域由来の細胞透過性ペプチドが、TK−1細胞のα4β7リガンド、MAdCAM−1、VCAM−1、及びRDGポリマーへの接着を阻害することを例示する。TK−1細胞を増加濃度のペプチドβ7−2〜β7−5の存在下にプレインキュベートし、Mn++(A,D,F)、PMA(B,E,G)、及びAlF4(C)で活性化して、MAdCAM−1−Fc(A〜C)、VCAM−1−Fc(D,E)、及びフィブロネクチン様ポリマー(RDG)(F,G)でコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。
【図3】図3は、インテグリンα4β7仲介性の細胞接着がβ3サブユニットのCARDによって影響を受けないことを例示する。β3サブユニット由来のCARDを含有する細胞透過性ペプチドは、Mn++、PMA、及びAlF4活性化TK−1細胞のMAdCAM−1(A)、VCAM−1(B)、及びフィブロネクチン様ポリマー(RDG)(C)への接着を阻害することに失敗した。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。
【図4】図4は、β7−2ペプチドが種間の細胞接着を阻止して、インテグリン特異的であることを例示する。ヒトH9 T細胞を増加濃度のペプチドβ7−2〜β7−5の存在下にプレインキュベートし、Mn++(A,C)、PMA(B,D)で活性化して、MAdCAM−1−Fc(A,B)及びVCAM−1−Fc(C,D)でコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。(E)細胞接着の阻害は、インテグリン特異的である。H9 T細胞を増加濃度のペプチドβ7−2〜β7−5の存在下にプレインキュベートし、Mn++で活性化して、ICAM−1−Fcでコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。
【図5】図5は、ペプチドβ7−2がα4β7の細胞表面でのリガンド誘発性クラスタリングを阻止するが、既存のフォーカルアドヒージョンは壊し得ないことを例示する。(A)ペプチドβ7−2は、α4β7のリガンド誘発性クラスタリングを阻止する。TK−1細胞をβ7−2又はβ7−3ペプチドのいずれか一方とともに、又はペプチドなしでプレインキュベートして、AlF4で活性化した。MAdCAM−1−Fcの添加によって、α4β7のリガンド誘発性クラスタリングを誘発して、FITC共役M293mAb(抗β7サブユニット)で細胞を染色することに続く共焦点顕微鏡法によって、30分後のクラスター形成を判定した。各パネルは、高倍率での単一細胞(上の象限)、又は低倍率での細胞の集団(下の象限)のいずれかの断面図(左の象限)及び表面図(右の象限)を示す。 (B〜E)ペプチドβ7−2は、フォーカルアドヒージョンを壊して、細胞を剥離することができない。Mn++とPMAで活性化したTK−1(B,D)及びH9(C,E)細胞を、MAdCAM−1−Fc(B,C)とVCAM−1−Fc(D,E)でコートしたスライドガラスへ付着させてから、ペプチドβ7−2とともに1時間インキュベートした。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。
【図6】図6は、ペプチドβ7−2内に6つのアミノ酸CARDモチーフが存在することを例示する。ペプチドβ7−2を2つへ分割して、ペプチドβ7−7及びβ7−8を得た。TK−1細胞を増加濃度のペプチドβ7−7及びβ7−8の存在下にプレインキュベートし、Mn++(A,D,F)、PMA(B,E,G)、及びAlF4(C)で活性化して、MAdCAM−1−Fc(A〜C)、VCAM−1−Fc(D,E)、及びフィブロネクチン様ポリマー(RDG)(F,G)でコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。
【図7】図7は、β7 CARDの活性にタンデムチロシンが不可欠であることを例示する。TK−1細胞を増加濃度のペプチドβ7−8、及び突然変異体ペプチド、β7−9(ここでは、チロシン735及び740をフェニルアラニンで置換した)の存在下にプレインキュベートした。細胞をMn++(A,D)、PMA(B,E)、及びAlF4(C)で活性化して、MAdCAM−1−Fc(A〜C)とVCAM−1−Fc(D,E)でコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。同様の結果をH9細胞について得た。
【図8】図8は、チロシン735及び740がともにβ7 CARD活性に必須であることを例示する。(A)ビオチニル化R9ペプチドへ融合したβ7CARD(YDRREY)の変異型のTK−1細胞による内部化を示す共焦点イメージ。図1Bに記載するように、30分のインキュベーション後に細胞内ペプチドを検出した(緑色で染色)。パネルは、β7CARDのL−アミノ酸型(ペプチドβ7−12)(A,D)とβ7CARDのD−アミノ酸型(ペプチドβ7−13)(B,E)を内部化した細胞を例示する。パネルCは、ペプチドを含まない細胞を例示する。バー;パネルA〜C,10μm、パネルD及びE,5μm。(B)TK−1細胞を増加濃度のペプチドβ7−12、及び突然変異体ペプチド、β7−10及びβ7−11(ここでは、チロシン735及び740が個別に欠失している)の存在下にプレインキュベートした。明示されるように、細胞をMn++、PMA、及びAlF4で活性化して、MAdCAM−1−Fcでコートしたスライドガラスへ加えた。結合した細胞を計数し、4つの視野からの平均±SDを表した。実験は、同一3検体で実施した。(C)β7CARDのD−アミノ酸類似体は、活性を保持する。ビオチニル化R9ペプチドへ融合したYDRREYのL(β7−12)及びD(β7−13)アミノ酸類似体は、CMFDA標識化マウスTK−1細胞のヒトVCAM−1 Fcへの接着をともに阻害する。データは、同一2検体で実施した2回の独立した実験からの平均±SDを表す。
【図9】図9は、β7CARD中のチロシン735及び740がともにリン酸化可能であることを例示する。(A)β7細胞質ドメインは、強くチロシンリン酸化可能である。(上のパネル)ヒトβ7サブユニットの細胞質ドメインを含有するGST融合タンパク質をSepharoseに固定化して、微量のH9細胞溶解液(1:100希釈)とともに in vitro キナーゼアッセイへ処した。GST−融合タンパク質(矢印で示す)を10%ポリアクリルアミドSDSゲル上で分離させて、これを引き続き1M KOHで処理して、X線フィルムへ露出した。左側の余白に分子量マーカーのkDaでのサイズを示す(下のパネル)。このGST−融合タンパク質は、クマッシーブルーで染色した。(B)SepharoseビーズをSDS中で煮沸させることによって、(A)のリン酸化GST−β7cyt融合タンパク質をそのビーズより除去した。この試料を希釈して、正常なウサギ血清(レーン1)又はポリクローナルウサギ抗β7cyt抗体(レーン2)のいずれかでの免疫沈降へ処した。免疫沈降物を上記のようにSDS−PAGEにより分離させた。(C)β7細胞質ドメインは、チロシン上で特異的にリン酸化される。(上のパネル)Sepharoseに固定化したGST−β7cyt融合タンパク質をゲニスタインの非存在下(レーン1)、又は5(レーン2)、10(レーン3)、及び20(レーン4)μMのゲニスタインの存在下に微量のH9細胞溶解液(1:100希釈)とともに in vitro キナーゼアッセイへ処した。GST−融合タンパク質を10%ポリアクリルアミドSDSゲル上で分離させて、X線フィルムへ露出した。左側の余白に分子量マーカーのkDaでのサイズを示す(下のパネル)。GST−融合タンパク質は、クマッシーブルーで染色した。(D)YDRREYモチーフ中の2つのチロシン残基は、リン酸化可能である。ビオチニル化ペプチド、β7−3、β7−4、β7−7、β7−8、β7−10、及びβ7−11をストレプタビジン−Sepharoseに固定化して、AlF4で活性化した(塗りつぶしたバー)又は不活性なままにした(空白のバー)TK−1細胞の溶解液とともに in vitro キナーゼアッセイへ処した。各実験を同一3検体で行なって、その結果を平均(cpm)±SDで表した。
【図10】図10は、ヒト及びマウスのβ7cytの配列と、他のインテグリンβサブユニットの細胞質ドメインとの比較を例示する。β3及びβ7のCARDの位置と、他のβインテグリンテールと共有されるCARD中の残基を強調する。β7cyt中のチロシンリン酸化部位に下線を施す。いくつかのβインテグリンテールに共通する残基を太字で示す。M,マウス;H,ヒト。ペプチド配列、β7M、β7H、β6、β5、β3、β2、及びβ1に、本明細書に付帯する配列リストに従って、配列番号29〜配列番号35の配列識別名を割り当てた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアミノ酸配列YDRREYを含んでなる単離ペプチド、又は前記ペプチドの誘導体。
【請求項2】
アミノ酸配列RLSVEIYDRREYからなる単離ペプチド、又は前記ペプチドの誘導体。
【請求項3】
ペプチド又は誘導体が細胞膜移行(translocating)モチーフへ融合している、請求項1又は2に記載のペプチド又はその誘導体。
【請求項4】
細胞膜移行モチーフがペプチドをベースとする、請求項3に記載のペプチド又は誘導体。
【請求項5】
細胞膜移行モチーフがペネトラチン又はアルギニンのポリマーである、請求項4に記載のペプチド又は誘導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体をコードする単離核酸。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体をコードする核酸を含んでなる構築体。
【請求項8】
発現構築体である、請求項7に記載の構築体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体を1以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、及び/又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
インテグリンβ7の機能を被検者において変調させる方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体、又は請求項9に記載の組成物の有効量を前記被検者へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項12】
インテグリンβ7の機能を被検者において変調させる方法であって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体、又は請求項10に記載の組成物の有効量を前記被検者へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項13】
インテグリンβ7の機能を in vitro 系において変調させる方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体、又は請求項9に記載の組成物を前記系へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項14】
インテグリンβ7の機能を in vitro 系において変調させる方法であって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体、又は請求項10に記載の組成物を前記系へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項15】
インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のための方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体、又は請求項9に記載の組成物の治療有効量をその必要な被検者へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項16】
インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のための方法であって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体、又は請求項10に記載の組成物の治療有効量をその必要な被検者へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体の、インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療用医薬品の製造における使用。
【請求項18】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体の、インテグリンβ7仲介性炎症障害の治療用医薬品の製造における使用。
【請求項19】
潜在的なβ7インテグリン機能性インタラクター(interactor)分子、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又は誘導体の模倣体の同定のための方法であって、潜在的な機能性インタラクター又は模倣体を請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又は誘導体と接触させて、結合が生じるかどうかを観察する工程を少なくとも含んでなる、前記方法。
【請求項20】
機能性インタラクター分子又は模倣体が白血球のβ7インテグリンリガンドへの接着のレベルに影響を及ぼすかどうかを決定する工程をさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
機能性インタラクター分子又は模倣体が白血球のβ7インテグリンリガンドへの接着を低下させるか又は阻害するかどうかを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体の、潜在的なβ7インテグリン機能性インタラクター分子、又は前記ペプチド又はその誘導体の模倣体を同定するか又はスクリーニングすることにおける使用。
【請求項23】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体の、その模倣体を設計することにおける使用。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体に対する抗体。
【請求項25】
インテグリンβ7の機能を変調させるため、又はインテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のためのキットであって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド又はその誘導体又は請求項9に記載の組成物を少なくとも含んでなる、前記キット。
【請求項26】
インテグリンβ7の機能を変調させるため、又はインテグリンβ7仲介性炎症障害の治療のためのキットであって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸又は構築体又は請求項10に記載の組成物を含んでなる、前記キット。
【請求項27】
少なくともアミノ酸配列YDRLEYを含んでなる単離ペプチド、又は前記ペプチドの誘導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−512111(P2008−512111A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531101(P2007−531101)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000234
【国際公開番号】WO2006/028393
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(504448092)オークランド ユニサービシズ リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
【Fターム(参考)】