説明

炎症過程の調節に有用なチラコイドを含む組成物

【課題】安定化され、炎症の処置に作用することが可能なチラコイド抽出物の性能を評価する。この抽出物と他の抗炎症剤、すなわちグルココルチコイドまたはNSAIDを含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、炎症の過程、特に、炎症反応に関与する組織破壊的、不釣合いもしくは望ましくない炎症から生じる疾病または障害を引き起こす可能性のあるサイトカインの発現を調節する際の、栄養補給薬品、美容薬品、および医薬品用途へのチラコイド抽出物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症の物理的および生化学的パラメータ、特に炎症過程に関与するサイトカインに対する調節活性を通じて炎症を調節または阻止するためにチラコイドの完全性と安定性を確実化する特定の製剤へのチラコイドを含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、生物医学分野の急性および慢性の疾病および障害との関係についてよく知られている過程である。炎症は細胞および組織の防御と再生に伴う自然の経過であるが、組織破壊的な炎症は細胞および組織に有害な多くの過程に寄与する(または関係する)可能性がある。
【0003】
炎症は病原菌、抗原感作または物理的、化学的もしくは外傷性の傷害に対する生体の反応である(Stvrtinovaら、1995年)。炎症の主目的は血液から損傷部分へと体液、タンパク質、および細胞を運ぶことである。炎症性反応の主な特徴は(i)血管拡張(血流量を増加させるための血管の拡大)、(ii)拡散性成分の組織内進入を可能にする血管透過性の増大、(iii)血管壁を通って傷害部位に入る炎症細胞の走化性もしくは指向性の移動による細胞浸透、(iv)感染した組織の生合成、代謝、および異化のプロファイルの変化、および(v)免疫系の細胞ならびに血漿の酵素系の活性化である。
【0004】
概して、炎症反応は傷害または病原菌によって誘発された損傷を管理および修復するのに極めて効果的である。これらの現象が生じる度合いは、普通、傷害の重症度または感作の程度に比例する。しかしながら、炎症は、それが組織破壊的、不釣合いまたは望ましくない様式に進展すると組織に有害になる可能性があり、疾病および傷害につながる。
【0005】
急性の炎症反応は短期間持続性であり、前述した炎症の特徴のすべてを含む。組織破壊的な様式で進行するとき、急性の炎症は正常組織の消化/破壊、血流の妨害につながって結果的に虚血性損傷に結びつく可能性のある過度の腫張、非驚異的存在(例えばアレルゲン)に対する過敏反応などといった多くの有害な効果を引き起こす可能性がある。
【0006】
慢性の炎症反応は、炎症性作用物質が継続して存在する長期間持続性の炎症として見られる可能性がある。この背景で、慢性の炎症は遅発性過敏の条件下で基本的に観察される。しかしながら、慢性の炎症は喘息、関節炎、または炎症性腸疾患のように、炎症性作用物質が継続的に存在しないときに見られることもあり得、また神経障害や遺伝障害に関係することもあり得る。この場合、1つまたは複数の炎症成分が炎症の病因および永続化に寄与する。
【0007】
炎症の過程は、血漿の酵素系の産物、脂質メディエーター(プロスタグランジンおよびロイコトリエンといったアラキドン酸代謝物質)、炎症細胞から放出される血管作用性メディエーター、特にサイトカインの間の複雑な相互作用によって推進され、調節される。
【0008】
プロスタグランジン(エイコサン必須脂肪酸から誘導される)は炎症反応時に炎症に関連する生化学経路によって生成され、炎症の臨床的兆候特徴を仲介する原因となる。炎症関連プロスタグランジン生成の主な供給源はアラキドン酸である。アラキドン酸は、炎症性代謝物質を生成する2つのシクロオキシゲナーゼ(COX-1またはCOX-2)のうちの1つによって代謝されることが可能である。炎症組織中での炎症性代謝物質の産生の増大はCOX-2の特異的なアップレギュレーションに起因する(Maierら、1990年)。炎症反応の間のCOX-2の発現増大は細菌性エンドトキシンへの曝露および/または炎症性サイトカインの放出によって(一部)誘発されると考えられている(Isakson、1995年、Razら、1989年、O'Sullivanら、1992年)が、他の物質が同様にCOX-2の発現を増大させる可能性もある。
【0009】
対照的に、COX-1はほとんどの組織中で構成的に発現され、血小板凝集、胃の細胞保護、および部分的には、正常な腎機能の調節といった生理学的機能の維持に関与していることが提起されてきた(Prasitら、1995年、Pintoら、1995年、Whittleら、1980年)。
【0010】
シクロオキシゲナーゼ経路を経由した炎症性エイコサン代謝物の生成に加えて、アラキドン酸もやはりリポキシゲナーゼ(LOX)と呼ばれる関連酵素族によって産生される炎症関連代謝物の別の種類の生成のための供給源として作用する。特に、5-LOXはロイコトリエンと称される分子の種類の生合成を完結させる生化学的カスケードの最初の段階を触媒する(Sirois、1985年)。ロイコトリエンは、アナフィラキシーなどの炎症反応の重要なメディエーターとして関連付けられてきており、5-LOXの強力な阻害剤がこの経路のすべての産物の有害な作用を制限するために手法を提供するであろうことを示唆している。15-LOXの活性の上昇は喘息および好酸球増加といった状態に関連付けられてきた。5-、12-、または15-LOXの選択的阻害は決定的な治療上の利点を備えた作用物質を提供する可能性がある。
【0011】
プロスタグランジンとロイコトリエンに加えて、サイトカインもやはり炎症反応で重大な役割を果たす。それらは炎症の進展の開始時に生成され、炎症過程の最終的な転帰ならびにその解消の原因となる。傷害または感作が生じると、炎症細胞(マスト細胞、好塩基球、内皮細胞、マクロファージおよび好中球)からサイトカインが放出される。この過程で多様なサイトカインの放出が活性化され、それには炎症性インターロイキンIL-1、IL-6、IL-8、IL-12および腫瘍壊死因子(TNF-α)が含まれる。過度の炎症に歯止めをかけるために、IL-4、IL-10、IL-13、および形質転換成長因子(TGF-β)などの抗炎症性サイトカインもやはり産生される。炎症の過程には多くのサイトカインが関与するが、いくつかのサイトカインがこの過程で中心的な役割を果たしており、最近、抗炎症産物の可能性のあるターゲットとして検討されている。
【0012】
急性および慢性の炎症は抗炎症活性を有する化合物で頻繁に治療されることが最も多い。アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)はとりわけ頻繁に使用される現在利用可能な薬剤である。当初、旧来のNSAIDの医療効用はCOX-1活性阻害能に起因すると推測された(Mitchellら、1993年、Meadeら、1993年)。今日では、NSAIDはやはり、同様にCOX-2の阻害による抗炎症活性を有することが認識されている。NSAIDに付随する他の生化学的活性には上述したもの以外の炎症メディエーター(すなわちヒスタミン、セロトニン、キニン)の阻害、酸化的リン酸化の阻害、血清アルブミンからの抗炎症ペプチドの移動、または炎症組織中でニューロンの膜を過分極化させるペプチドの移動が含まれる(Foye、1989年)。
【0013】
COX-2および5-、12-、15-LOXによって産生されるアラキドン酸代謝物が炎症反応の仲介において果たす主要な役割が広範囲の研究を促し、COX-2、5-、12-、15-LOXの酵素活性、または同時に複数の活性を特異的に阻害することの可能な化合物(すなわち二重阻害剤)が同定された。COX-2および/または5-LOXを阻害する(しかしCOX-1を阻害しない)ことの可能な化合物は、結果的に生じる大部分の非ステロイド系抗炎症剤に共通した有害な副作用を伴わずに抗炎症作用物質として大きな使用法となるであろう。場合によっては、アラキドン酸の放出を阻害する化合物またはサイトカイン前駆体のアンタゴニストとなる化合物は、それらがステロイド系(SAID)、非ステロイド系(NSAID)、サイトカイン抑制系(CSAID)、あるいは他の抗炎症剤であっても、可能性のある治療用法となるであろう。そのような阻害化合物は、痛み、熱、喘息、アレルギー性鼻炎、リウマチ様関節炎、変形性関節症、痛風、成人呼吸疾病症候群、炎症性腸疾患、内毒素性ショック、虚血誘導型心筋疾患、アテローム性動脈硬化、および脳梗塞によって引き起こされる脳の損傷といった症状の治療に大きな臨床的効用を有するであろう。そのような阻害剤はまた、にきび、日焼け、乾癬、湿疹、および関連する症状の治療のために局所的に使用される可能性もある。
【0014】
抗炎症剤は効果的に炎症を治療するために広範に使用されるが、ステロイド耐性、多量投与、骨粗しょう症、タンパク質と脂質の異化作用、脂質結集の再配分などといった抗炎症剤使用の副作用が医学研究と薬剤開発の主な関心事である。副作用を緩和するための1つの方法は、COX-2を阻害する(しかしCOX-1を阻害しない)NSAIDの開発などの特異的生化学ターゲットを有する抗炎症剤を開発することである。
【0015】
この方策は抗炎症剤の研究開発の観点からすると最新であるが、効果の低い抗炎症剤の効果を高め、可能性として、投与率を下げて副作用の一部を緩和するために投与量を低減する別の選択肢となる方策は増強剤と組み合わせて最新の抗炎症剤を使用することになるであろう。
【0016】
サイトカインは炎症反応の中で重大な役割を果たす。それらは炎症の進展の始まりにおいて生成され、炎症の過程の最終転帰ならびにその解消の原因となる。傷害または感作が生じると、炎症細胞(マスト細胞、好塩基球、内皮細胞、マクロファージおよび好中球)からサイトカインが放出される。この過程で多様なサイトカインの放出が活性化され、それには炎症性インターロイキンであるIL-1、IL-6、IL-8、IL-12および腫瘍壊死因子(TNF-α)が含まれる。過度の炎症に歯止めをかけるために、IL-4、IL-10、IL-13、および形質転換成長因子(TGF-β)といった抗炎症性サイトカインもやはり産生される。
【0017】
炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインはそれらの相対的比率、それらの親和性、およびそれらの相互作用によって炎症の最終転帰を決定する。さらに正確に述べると、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの適切なバランスと相互作用が炎症の過程を調節して、最も効果的な様式で傷害または感作に対処するであろう。炎症の損傷効果を制限もしくは阻止するために、普通、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスを調節する方法に免疫系が良好に授けられる。しかしながら、傷害のある組織がこの適切なサイトカインバランスおよび相互作用を作り出すことができないとき、多くの疾病および障害が発生するであろう(FeghaliとWright、1997年)。したがって、炎症の過程の始まりが単一のサイトカインに起因することはない。例えば、炎症性サイトカインの上昇は、抗炎症性サイトカインレベルの上昇を伴う場合、必ずしも過度の炎症を引き起こすことはないであろう。
【0018】
炎症の過程には多くのサイトカインが含まれるが、いくつかのサイトカインがこの過程で中心的な役割を果たし、最近になって抗炎症産物について可能性のあるターゲットとして調べられている。例えば、炎症性サイトカインであるTNF-αは多くの慢性炎症性疾病で中枢の役割を果たすものとして明確に確立され、モノクローナル抗体、可溶性TNF-α受容体、TNF転換酵素といった治療法、および他の抗TNF-α治療法をターゲットにされてきた(LewisとManning、1999年)。
【0019】
抗炎症性サイトカインであるIL-10もまた、急性炎症反応のダウンレギュレーションを行うために炎症過程の中で重大な役割を果たす。この特性により、IL-10は遺伝子治療を通じて炎症関連疾病を制御する治療手段として活発に研究されてきた(LewisとManning、1999年、Saccaら、1997年)。
【0020】
特許公開WO01/49305号に述べられているように、抗酸化剤特性を有するチラコイド抽出物がサイトカインの調節剤としてのその能力について、および他の抗炎症剤との組合せで試験されてきた。この抽出物はその完全性と安定性を確実化する特定の配合物の形で供給される。用語を単純化するために、「チラコイド」、「チラコイド抽出物」および「抽出物」という用語がこれ以降で使用され、チラコイドを含む特定の配合物すべてを網羅することを意味する。
【0021】
TNF-αとIL-10は、原因薬剤の性質または組織もしくは系の性質にかかわらず、系統的に炎症に関与するサイトカインの好ましい例として選択されてきた。
【0022】
これら2つのサイトカインが、限定はされないが以下の組織に影響を及ぼす炎症性疾病および疾患の発現に関与しているということを示唆する、ますます多くの文献が存在する。
皮膚:乾癬(Reichら、2001年)、皮膚炎(Bergら、1995年)、アトピー性皮膚炎(Leeら、2000年)、
脳:脳炎(Deckertら、2001年)、
胃腸管:炎症性腸疾患(Gascheら、2000年)、クローン病(Narulaら、1998年)、大腸炎(Moriguchiら、1999年)、
目:感染角膜(Yanら、2001年)、
肺:過敏性肺炎(Gudmundssonら、1998年)、慢性肺炎(Jonesら、1996年)、
多臓器:虚血性再灌流傷害(Daemenら、1999年)、
自己免疫疾患:リウマチ様関節炎(Mainiら、1997年、van Roonら、1996年)、および
過敏症:喘息(Thomas、2001年)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】WO01/49305号
【特許文献2】米国特許第6,407,135号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Stvrtinovaら、1995年
【非特許文献2】Maierら、1990年
【非特許文献3】Isakson、1995年
【非特許文献4】Razら、1989年
【非特許文献5】O'Sullivanら、1992年
【非特許文献6】Prasitら、1995年
【非特許文献7】Pintoら、1995年
【非特許文献8】Whittleら、1980年
【非特許文献9】Sirois、1985年
【非特許文献10】Mitchellら、1993年
【非特許文献11】Meadeら、1993年
【非特許文献12】FeghaliとWright、1997年
【非特許文献13】LewisとManning、1999年
【非特許文献14】Saccaら、1997年
【非特許文献15】Reichら、2001年
【非特許文献16】Bergら、1995年
【非特許文献17】Leeら、2000年
【非特許文献18】Deckertら、2001年
【非特許文献19】Gascheら、2000年
【非特許文献20】Narulaら、1998年
【非特許文献21】Moriguchiら、1999年
【非特許文献22】Yanら、2001年
【非特許文献23】Gudmundssonら、1998年
【非特許文献24】Jonesら、1996年
【非特許文献25】Daemenら、1999年
【非特許文献26】Mainiら、1997年
【非特許文献27】van Roonら、1996年
【非特許文献28】Thomas、2001年
【非特許文献29】Crystal、1991年
【非特許文献30】BarnesとLim、1998年
【非特許文献31】Griswoldら、1998年
【非特許文献32】Brinkら、2000年
【非特許文献33】Romeyらの方法(1998年)
【非特許文献34】Sartor、1998年
【非特許文献35】Dionneら、1998年
【非特許文献36】Higginsら、1999年
【非特許文献37】Kmiec、1998年
【非特許文献38】KirsnerとShorter、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
当該技術の状況および、機能する、安定化されたチラコイド抽出物が入手できることにより、本発明者らはIL-10および/またはTNF-αの発現に対抗する抽出物を試験することになった。
【0026】
サイトカインの発現に影響を与える能力に加えて、チラコイド抽出物と他の抗炎症剤の相補性を調査した。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、炎症の過程、特に、炎症反応に関与する組織破壊的、不釣合いもしくは望ましくない炎症から生じる疾病または障害を引き起こす可能性のあるサイトカインの発現を調節する際の、栄養補給薬品、美容薬品、および医薬品用途へのチラコイド抽出物の使用に関する。
【0028】
さらに具体的には、本発明は、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方に対する効果的で長期間持続性の調節剤としてチラコイド抽出物を使用することに関する。
【0029】
さらに正確に述べると、本発明は、TNF-αなどの炎症性サイトカインおよびIL-10などの抗炎症性サイトカイン、ならびにこれら2つのサイトカインの間の相対比率(バランス)を調節するのにチラコイド抽出物を使用することに関する。
【0030】
本発明の別の目的はチラコイドおよび抗炎症剤を含む組成物を提供することである。抗炎症剤の好ましい実施形態はグルココルチコイドまたはNSAIDであり、それらの例はそれぞれブデソニドとメサラミンである。
【0031】
本発明のその他の目的、利点および特徴は、添付の図面類を参照して、例示のためのみに与えられる、以下の非限定的な好ましい実施形態の説明を読むとさらに明らかになるであろう。
【0032】
本開示で引用した文書の内容は参考文献で取り入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】LPSで誘導したときの肺胞マクロファージでのサイトカインの発現(対照に対する相対の%)に対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図2】LPS刺激した肺胞マクロファージのIL-10発現に対するチラコイド抽出物による前処理の効果を示す図である。
【図3】LPS刺激した肺胞マクロファージのIL-10発現に対するチラコイド抽出物による後処理の効果を示す図である。
【図4】LPS刺激した肺胞マクロファージのTNF-アルファ発現に対するチラコイド抽出物による前処理の効果を示す図である。
【図5】LPS刺激した肺胞マクロファージのTNF-アルファ発現に対するチラコイド抽出物による後処理の効果を示す図である。
【図6】アラキドン酸によって誘導した炎症に続くラット耳の浮腫の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図7】TPAによって誘導した炎症に続くマウス耳の浮腫の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図8】TPA誘導したマウス耳の炎症の物理的パラメータ(厚さ)に対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図9】TPA誘導したマウス耳の炎症のミエロペルオキシダーゼ放出に対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図10】UV照射によって誘導した炎症の後のマウス皮膚のTNF-α発現に対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図11】TNBSによって誘導されたラット腸の重量に対するチラコイド抽出物の腹腔内投与の効果を示す図である。
【図12】TNBS誘導した結腸の損傷の低減に対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図13】DSS誘導された腸炎の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の効果を示す図である。
【図14】カラギーナンによって誘導したラット脚の浮腫に対するチラコイド抽出物の腹腔内投与の効果を示す図である。
【図15】LPS刺激した肺胞マクロファージのIL-10発現に対するチラコイド抽出物および/またはブデソニドによる前処理の効果を示す図である。
【図16】LPS刺激した肺胞マクロファージのIL-10発現に対するチラコイド抽出物および/またはブデソニドによる後処理の効果を示す図である。
【図17】マウス耳のTPA誘導した炎症で厚さ(浮腫)の減少に対するチラコイド抽出物によるブデソニドの増強作用を示す図である。
【図18】炎症を生じたラット腸の物理的パラメータ(重量)に対するチラコイド抽出物およびメサラミンの効果を示す図である。
【図19】TNBS誘導した結腸損傷を低減するためにメサラミンの増強作用にチラコイド抽出物を添加する効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
チラコイド抽出物は光合成有機体から得られる活性抽出物であり、炎症の過程を調節する、特に炎症反応を誘発するストレスを受けた組織中の炎症性サイトカインおよび/またはそれらのバランスを調節する能力を有する。特に、チラコイド抽出物は炎症性サイトカインであるTNF-αおよび抗炎症性サイトカインであるIL-10の調節にその能力を示し、その結果、炎症反応によって引き起こされる損傷に対する保護を供給するか、あるいは代わりに(腫瘍または侵入物といった)危険物質またはストレス作用物質に対する生体反応を向上させるために免疫応答を高める。
【0035】
本発明のチラコイド抽出物は特許公開WO01/49305に述べられている。この抽出物は次のステップを含む処理によって得られるものと定義される。すなわち、
a)チラコイドを含む光合成有機体構成要素の懸濁液を供給するステップ、
b)1〜1.3センチポイズの粘度と2よりも高く10よりも低いpHを有する媒質中で構成要素を破壊し、その間に光束を最小限にする明条件下でチラコイドを回収するステップであり、その媒質は次の式で算出される量で加えられ、
(媒質の体積+有機体構成要素の水分含量)/有機体構成要素乾燥重量>10、好ましくは25〜100であり、
それにより、本質的にチラコイドからなる第1の抽出物、細胞破片/膜、および液相が得られ、前記チラコイドは有機体光合成色素をそれらの基底状態で含むステップ、
c)チラコイド、細胞破片/膜、および液相を互いから分離することにより、本質的に単離チラコイド、細胞破片/膜、および液相でそれぞれ構成される第2、第3および第4の抽出物を形成するステップ、および
d)光合成色素をその基底状態に安定化させるために第1、第2および第3の抽出物からいかなる電子ドナーも除去するステップである。
この処理では、pHは好ましくは5と8の間、すなわち6と7.5の間にある。
【0036】
有機体は植物であることが好ましい。
【0037】
ステップa)の懸濁液は植物の構成要素もしくは組織を前記媒質中に機械的に分散させることによって得られる。
【0038】
ステップa)に先立って、光、浸透圧、熱、低温、凍結、乾燥、ホルモン、化学的誘導物質および生物学的誘導物質から選択されるコンディショニングパラメータに植物を曝すステップがある。コンディショニングのステップは約500と600nmの間の波長の光環境であり、かつステップb)が同じ光条件下で実行されることが好ましい。
【0039】
処理の中で、媒質中に糖を加えることによってその粘度は部分的に達成される。ソルビトールがそのような糖であって、媒質中で約0.2〜1.5Mの濃度で使用された。0.2〜1.5Mのソルビトールと同等の粘度を達成するいかなる他の糖も検討される。特に推奨されたソルビトール濃度は0.2〜0.4Mである。
【0040】
媒質は、すなわち以下の組成を有する。pH7.5を有するトリスまたは酢酸またはアスコルビン酸バッファ(20mM)あるいはソルビトールまたはスクロースまたはフルクトース350mMである。
【0041】
処理の中で、分離のステップはチラコイド、細胞破片と膜、および液相の各々の沈降係数の違いに基づいて実行される。
【0042】
分離のこのステップは、すなわち、上の部分にフィルタを装着したチューブ内で第1の抽出物を遠心分離する工程を含み、フィルタはその上で細胞破片と膜が堆積し、それに対してチラコイドと液相が通過する空隙率を有し、チラコイドはチューブの内部でペレットを形成する。
【0043】
処理の最後で回収する電子ドナーは、普通、水である。
【0044】
水は真空凍結乾燥の下で除去される。
【0045】
場合によっては、水はステップc)の後に両性溶剤もしくは界面活性剤に対して交換処理することによって除去される。両性溶剤はプロピレングリコールであることが好ましい。
【0046】
この処理を実行することによって、精製された機能性の光合成色素をそのチラコイド膜環境の中に含む抽出物が得られる。
【0047】
この抽出物は電子ドナーのない実質的に純粋のチラコイドで構成され、エネルギーの吸収と消費を最大にするため、および酸化的損傷に対して抽出物を保護するためにその光合成クロロフィルおよびカロテノイド色素はそれらの完全かつ基底の状態および比率に安定化される。
【0048】
チラコイド抽出物はサイトカインバランスの調節剤と考えられる。そのようなバランスには、一方ではTNF-αを含む可能性のある炎症性サイトカイン、他方ではIL-10を含む可能性のある抗炎症性サイトカインが関与する。このバランスの調節は、物理的、外傷性または感染性作用物質といった炎症性作用物質によって誘発されるストレスに続く炎症性損傷の他の生物学的、生化学的、および/または生理学的証拠を付随する。
【0049】
チラコイド抽出物は特に、組織破壊的炎症に起因する損傷を、抗炎症性サイトカインを優先しながら炎症性サイトカインを調節することを通じて有意に防止または緩和すると考えられる。
【0050】
チラコイド抽出物は0.00005〜5%の濃度で炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインを調節することを通じて炎症反応を調節することが可能である。概して、局所用配合物は皮膚もしくは粘膜1cm2当たり0.1μgから1mgの抽出物を有するであろう。最大の効果は、1cm2当たり2μlを適用する0.001〜0.1%のチラコイド抽出物で得られ、これは表面1cm2当たり2μgから200μgの抽出物の有効量を供給する。さらに、全身用配合物は、体重1kg当たり0.00005〜500mgの抽出物を有するであろう。最大の効果は0.001〜0.1%のチラコイド抽出物で得られ、それは重量1kg当たり0.05〜5mgの抽出物の有効量を供給する。この抽出物は、承認されている抗炎症治療/製品と同等または上回る程度まで炎症性損傷の症状を阻止または緩和するのに使用される。
【0051】
チラコイド抽出物はさらに他の抗炎症剤と組み合わされることも可能である。組合せ治療に本抽出物を使用する方法は多様な形式(1種類または複数種の相補的抗炎症剤との同時適用、共配合、または順次投与)をとる可能性がある。そのような抗炎症剤には、限定はされないが、ペプチド(例えばブラジキニンアンタゴニスト)、抗粘着分子(例えば抗LFA-1または抗ICAM-1抗体)、自然界(例えば動物(例えば軟骨、ミルク)、植物、微生物、藻類、ミネラル(例えば亜鉛、金))の抗炎症性抽出物、または合成の起源、免疫抑制剤、グルココルチコイド、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤もしくはNSAID、サイトカイン抑制抗炎症剤、抗虚血剤、一酸化窒素阻害剤、低血糖症薬剤、クロモグリケート、抗ヒスタミン剤、アドレナリン薬剤、キサンチン、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、プロテアーゼおよびその他の酵素の阻害剤(例えば特異的COX-2とLOX阻害剤、LOX/COX二重阻害剤、ホスホリパーゼA2阻害剤、NADPHオキシダーゼ阻害剤、アデノシンキナーゼ阻害剤)、敗血症性ショック阻害剤、抗酸化剤(ビタミン類、グルタチオン、...)およびニコチンといった分子が含まれる。化合物の優れた一覧表は抗炎症剤の候補として米国特許第6,407,135号に見出されることが可能である。
【0052】
これら抗炎症剤の投与量は文献で知られている投与量またはそれ未満である。そのような組合せは望ましくない副作用を生じる薬剤の投与量を低減すること、または副作用の重症度を上げることなく薬剤の効果を高めることを目的とする可能性がある。
【0053】
本発明は、これ以降で特定の実施形態および添付の図面を参照して説明されるが、それらの目的は範囲を限定することではなく、本発明を具体的に示すことである。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
炎症の過程およびサイトカインバランスの調節
A.in vitroモデル:肺胞マクロファージにおけるサイトカイン産生に対するチラコイド抽出物の評価
肺胞マクロファージは肺の主要な炎症細胞の一種であり、様々な疾病で重要な役割を果たす(Crystal、1991年)。このマクロファージはサイトカイン産生を通じて炎症反応と免疫応答を調節することによって肺を保護する。しかしながら、これらのサイトカインはまた、肺の多くの炎症性疾病を伴う組織の傷害も引き起こす可能性がある(Crystal、1991年)。
【0055】
グラム陰性細菌の外膜の主要成分である多糖(LPS)は、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF-α)および抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)を含むいくつかのサイトカインの産生を誘導する単細胞/マクロファージの強力な活性化物質である(BarnesとLim、1998年)。
【0056】
炎症性の刺激は核因子κB(NFκB)の転写を活性化し、その結果、多くの炎症性遺伝子の転写およびマクロファージからのTNF-αといった炎症メディエーターの放出が生じる。同じ刺激がIL-10の遅発型の合成を引き起こし、それがこれら炎症系の遺伝子の発現を阻害し、その結果、炎症反応を終了させる(BarnesとLim、1998年)。
【0057】
気道の慢性的炎症疾患である喘息では、IL-10シグナルが低下すると、増大して継続的でかつさらに目立った炎症につながる。
【0058】
実験1:LPSによって誘導された肺胞マクロファージのTNF-αとIL-10発現に対するチラコイド抽出物の使用
プロトコル1:
ラット肺胞マクロファージ(細胞株NR8383)を10ng/mlのLPSの存在下で20時間、チラコイド抽出物(0%、0.0006%、0.003%、および0.006%)で処理した。ラットTNF-αおよびIL-10用のイムノアッセイキット(BioSources、Camarillo、CA)を使用してTNF-αおよびIL-10の含有量を測定した。
【0059】
結果:
本研究で使用したすべてのチラコイド濃度で、TNF-αは対照と比較したときにわずかな増加(15%未満)を示した(図1)。対照と比較するとIL-10は発現に有意の増加を示した。IL-10の発現は0.0006%および0.006%のチラコイド処理でそれぞれ最小値の137%および162%の多さに増加した(図1)。
【0060】
考察と結論:
チラコイド抽出物は、肺胞マクロファージに対するサイトカイン発現およびバランスのその調節能力を明らかに示した。チラコイド抽出物は炎症性サイトカインであるTNF-αの限定的な増加(15%未満)を生じ、それに対してIL-10の発現を対照と比較すると2倍以上刺激した。結局、これらの結果はTNF-αと比べてサイトカインバランスを抗炎症性サイトカイン(IL-10)に向けて変化させることを確認し、炎症調節物質としてのその能力を示した。
【0061】
プロトコル2
Sprague-Dawley種のラットの肺胞マクロファージ(細胞株NR8383)を様々な時間(24、48、および72時間)37℃にて、100ng/mlのLPS(Salmonella enteritidis、Sigma Chemicals Co.)の存在下での前処理18時間および後処理18時間の両方についてチラコイド抽出物(0%、0.006%、0.05%)で処理した。細胞を除いた上清でラット用のELISAキット(Pharmingen、San Diego、CA)を使用してIL-10とTNF-αレベルを測定した。
【0062】
結果
結果は、LPSで前処理および後処理されると投与量依存的にチラコイド抽出物がIL-10の放出を刺激することを示した(図2と3)。対照的に、TNF-αの放出はチラコイド抽出物で前処理することによって低下し(図4)、それに対してTNF-αの放出は後処理による影響を受けなかった(図5)。
【0063】
結論
これらのデータは、チラコイド抽出物がサイトカイン調節特性を有し、炎症性サイトカインのバランスをIL-10のような抗炎症性サイトカインの方向に変化させる能力を有することを示唆している。
【0064】
肺胞マクロファージに対して以上で観察された効果は、マクロファージを含む疾病もしくは障害を治療すること、あるいはそのような目的で薬剤を組み立てることにチラコイド抽出物が有用であるという想定につながる。単純な推定によって、体液1リットル(血漿、血液、細胞外水分または合計の体内水分含量で、分布に応じて決まる)当たり約1μgから100mgの抽出物を達成することの可能な投与量が全身的な目的で有効になり得ると考えることさえ可能である。分布容積1リットル当たりミリグラム範囲の投与量が好ましいであろう。
【0065】
B.in vivoのモデル:
皮膚の炎症の物理的および生化学的パラメータに対するチラコイド含有クリームの局所適用の評価
前述したように、急性の炎症は数多くの疾病および障害と結びつく。これらの疾病および障害の中で、皮膚の炎症は炎症性サイトカインの調節のような生化学的パラメータを伴う発赤および浮腫といった生理学的に観察可能な特徴を生じるものである。急性の炎症を評価する認められている手段とサイトカインの調節は比較研究であり、炎症反応の脂質メディエーターであるアラキドン酸またはホルボール12ミリスチン酸13酢酸エステル(Griswoldら、1998年)を伴うような、あるいは紫外(UV)線を伴う(Brinkら、2000年)ような炎症性ストレスを誘導する処置を含む。
【0066】
実験2:炎症の物理的兆候を低減もしくは阻止するチラコイド抽出物の能力を、炎症性ストレス誘導物質としてアラキドン酸を用いてラット耳で調べた。
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C)のガイドラインに適合する施設内で、オスのWistar種ラット(Charles River laboratories)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。ラットは処理前、18時間絶食させた。
【0067】
以下の方式で3つのグループのラットを処理した。
(処理1)クリーム不使用(n=3)
(処理2)中性の下地クリーム(n=3)
(処理3)中性の下地クリーム中にチラコイド抽出物(0.01%)(n=3)
【0068】
すべての処理は、炎症性ストレスの16時間、8時間、および1時間前に投与量2μl/cm2(20μg/cm2)で適用した(前処理)。
【0069】
処理の後、アラキドン酸(Sigma Chemicals Co.)の局所適用によってラットの耳を炎症性ストレスに曝した。アセトン溶液中のアラキドン酸(0.01mg/μL)を30μL使用した。最初の適用(Griswoldら、1998年)の15分後にアラキドン酸を再び適用した。各ラットの右の耳をアラキドン酸で処理し、それに対して左の耳はストレスのない対照として扱った。
【0070】
1時間後、ラットを殺して左耳と右耳の両方の直径6mmの打ち抜き片をサンプリングした。耳打ち抜き片の厚さを電子デジタルキャリパ0.01mm(Traceable)で測定した。
【0071】
結果:
アラキドン酸の適用はラットの耳で炎症効果を引き起こし、それは発赤および浮腫の存在によって明らかになった。
【0072】
浮腫パラメータの結果は、チラコイド抽出物の予防効果によりラット耳の打ち抜き片の厚さが小さくなったことを示している。チラコイド抽出物処理(処理3)の平均の耳打ち抜き片の厚さと比較すると、保護されていない耳の厚さ(処理1)で138.0%の増加、中性の下地クリームの区(処理2)の耳の厚さで89.6%の増加があった(図6)。
【0073】
考察と結論:
チラコイド抽出物は炎症に付随する物理的パラメータに影響を有する。チラコイド抽出物はラット耳の腫張を減少させる。これらの結果は、チラコイド抽出物が炎症に対して保護効果を有することを示唆している。
【0074】
実験3.TPAで誘導される皮膚の炎症の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、マウス(BALB/C)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。動物は処理の前に18時間の絶食期間に置いた。
【0075】
以下の方式で3つのグループのマウスを処理した。
(処理1)クリーム不使用(n=3)
(処理2)中性の下地クリーム(n=3)
(処理3)中性の下地クリーム中にチラコイド抽出物(0.05%)(n=3)
【0076】
すべての処理は、炎症性ストレスの前に投与量2μl/cm2で16時間、8時間、および1時間適用した(前処理)。
【0077】
処理の後、ホルボール12ミリスチン酸13酢酸エステル(TPA)(Sigma Chemicals Co.)の局所適用によってマウスの耳を炎症性ストレスに曝した。アセトン溶液中のTPA(0.2μg/μL)を20μL使用した(Griswoldら、1998年)。各マウスの右の耳をTPAで処理し、それに対して左の耳はストレスのない対照として扱った。
【0078】
1時間後、マウスを殺して左耳および右耳両方で直径6mmの打ち抜き片をサンプリングした。電子デジタルキャリパ0.01mm(Traceable)を使用して耳の打ち抜き片の厚さを測定した。
【0079】
結果:
TPAの適用はマウス耳で炎症効果を引き起こし、それは発赤および浮腫の存在によって明らかになった。
【0080】
浮腫パラメータの結果は、チラコイド抽出物の予防効果によりマウス耳の打ち抜き片の厚さが小さくなったことを示している。チラコイド抽出物処理(処理3)の平均の耳打ち抜き片の厚さと比較すると、中性の下地クリーム処理(処理2)の厚さで8倍の増加があった(図7)。
【0081】
考察と結論:
チラコイド抽出物による前処理は炎症に付随する物理的パラメータに影響を有する。チラコイド抽出物はTPAで誘導されたラット耳の腫張を減少させる。
【0082】
実験4.光が存在しないときにTPAで誘導される皮膚の炎症の物理的および生化学的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、マウス(BALB/C)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。動物は処理の前に18時間の絶食期間に置いた。
【0083】
以下の方式で3つのグループの動物を処理した。
(処理1)クリーム不使用(n=3)
(処理2)中性の下地クリーム(n=3)
(処理3)中性の下地クリーム中にチラコイド抽出物(0.05%)(n=3)
【0084】
すべての処理は炎症性ストレスを加えた後に投与量2μl/cm2で4時間および8時間適用した(後処理)。動物は処理の継続期間中で暗状態に保たれた。
【0085】
処理に先立って、ホルボール12ミリスチン酸13酢酸エステル(TPA)(Sigma Chemicals Co.)の局所適用によってマウスの耳を炎症性ストレスに曝した。アセトン溶液中のTPA(0.2μg/μL)を20μL使用した(Griswoldら、1998年)。各マウスの右の耳をTPAで処理し、それに対して左の耳はストレスのない対照として扱った。
【0086】
24時間後、マウスを殺して左耳および右耳両方で直径6mmの打ち抜き片をサンプリングした。電子デジタルキャリパ0.01mm(Traceable)を使用して耳の打ち抜き片の厚さを測定した。組織サンプルは、Romeyらの方法(1998年)を使用して好中球のマーカー酵素であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)について生化学的に評価した。耳組織をホモジナイズし、3サイクルの凍結/解凍に曝し、遠心分離(2500g、4℃、30分間)し、得られた上清をMPOについて分光光度法で分析した。460nmの吸収の変化を測定した。MPO活性は吸収のデルタ(ヒドロペルオキシドの分解)として呈示されている。
【0087】
結果:
浮腫パラメータの結果は、チラコイド抽出物による後処理でマウス耳の打ち抜き片の厚さが小さくなったことを示している。チラコイド抽出物処理(処理3)の平均の耳打ち抜き片の厚さと比較すると、中性の下地クリーム処理(処理2)の厚さで26.5%の増加、および非処理のストレス適用対照(処理1)で52.8%の増加があった(図8)。MPO分析は、チラコイド保護処理(処理3)と比較したときに非処理対照(処理1)でMPO放出に109.7%の増加があったことを明らかにした(図9)。
【0088】
結論
チラコイド抽出物による後処理は炎症に付随する物理的および生化学的パラメータに影響を有する。チラコイド抽出物はTPAで誘導されたマウス耳の腫張を減少させる。さらに、チラコイド抽出物は好中球活性化の指標であるMPO放出を有意に減少させ、炎症反応を低下させるその能力を示した。
【0089】
実験5:炎症性ストレス誘導物質としてUVAとUVBを用いて、マウスの背中の皮膚で炎症の物理的および生化学的兆候を低減もしくは阻止するチラコイド抽出物の能力を調べた
プロトコル:
ヘアレスマウス(5週齢)をCharles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手した。マウスをInstitute for Biological Sciences(IBS)の動物施設に収容し、標準条件下(23±1℃、相対湿度42±6%、12:12時間の明暗サイクル)に保った。光は自動的に毎日午前7時にスイッチオンされ、毎日午後7時にスイッチオフされた。マウスはPurina chow餌料(タンパク質24%、脂肪4%、および繊維質4.5%)および水を適宜給餌された。
【0090】
マウスは無作為に以下のような照射と処理のグループに割り振られた。
グループI:チラコイド抽出物を含む局所的軟膏で前処理されたUV照射動物(n=5)
グループII:UV照射時にチラコイド抽出物を含むクリームの局所適用を受けた動物(後処理)(n=5)
グループIII:チラコイド抽出物のない局所軟膏調製物で処理されたUV照射動物(n=5)
グループIV:対照A:いかなる局所処理もされないUV照射動物(n=5)
グループV:対照B:いかなる局所処理もされない非照射動物(n=5)
【0091】
マウスは2μL/cm2(200μg/cm2)の最終適用で0.1%チラコイド含有クリームの処理を受けた。
【0092】
マウスは蓋を外したプラスティックの檻に入れた。2台のWestinghouse FS40太陽灯(スペクトル放射:280〜400nm、UVB80%およびUVA20%)。光の強度の測定に黒色線紫外線計を使用した。マウス背中表面から60cmでフルエンスは0.48〜0.50mJ/cm2であった。マウスは10分間、200mJUV光/cm2の1回の曝露(急性投与)を受けた。この手法は、光学的にUV光照射条件に影響を与える可能性のある290〜320nm範囲のUV吸収特性の小さな差異(光学密度の差異)を考慮に入れるように選定した。
【0093】
照射処理の後、マウスは上記の条件下に1週間維持した。発赤と乾燥を調べるために外皮の観察と写真撮影を行った。
【0094】
5グループの各々のマウスすべてを殺した。その後、各々のマウスから1cm2の皮膚を取り、液体窒素中に保った。各々のグループの2つの皮膚片を液体窒素中ですり潰し、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤の混合物を含むRIPAバッファ中にその粉末を溶解した。その試料を4℃にて機械的ホモジナイザ中でホモジナイズし、4℃にて5分間、2500rpmで遠心分離した。上清を細胞質ゾルとして使用して様々な外皮マーカーの発現を調べた。
【0095】
総タンパク質35μgを含む試料を電気泳動によるタンパク質分離にかけ、それらのタンパク質をニトロセルロース膜に移した。TNF-αに対する抗体(ウサギポリクローナル抗体、Santa Cruz Biotechnology Inc.)による免疫染色法に従ってウェスタンブロットを分析した。
【0096】
結果:
皮膚炎症の結果は表1に要約する。チラコイド抽出物で前処理または後処理した照射マウスは皮膚の刺激および炎症の症状を示さなかったが、それに対して(中性下地クリームを付けても付けなくても)抽出物を付けなかったマウスは発赤および乾燥皮膚を示した。
【0097】
【表1】

【0098】
照射後、チラコイド抽出物による前処理および後処理の両方で、非処理または中性下地クリーム処理したマウスと比べてTNF-αは少なかった(図10)。炎症性サイトカインであるTNF-αの発現は、チラコイド抽出物で処理したグループ(グループ1と2)で、非ストレス対照Bと同様であったが、チラコイド抽出物で処理しなかった動物(グループ3)の照射皮膚では、チラコイド抽出物による前処理および後処理とそれぞれ比較して150.0%および185.7%増加した。
【0099】
考察と結論:
チラコイド抽出物はUV照射による損傷から動物を保護した。1週間後でさえ、非保護の照射マウスは発赤と皮膚の炎症を示し続けたが、チラコイド抽出物処理したマウスはいずれもこれらの症状を示さなかった。
【0100】
チラコイド抽出物は明らかに、曝露されたマウス皮膚のUV照射によって誘導される炎症に対する保護効果を示した。チラコイド抽出物は照射されたマウス皮膚で炎症性サイトカインであるTNF-αのレベルを非照射のレベルまで下げる。
【0101】
ラット腸の炎症の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
炎症性腸疾患(IBD)は腸に関連する疾病の集合を述べるために使用される用語であり、慢性の炎症および時に小腸または大腸に潰瘍を生じることで特徴付けられる。IBDは、過活性の免疫応答によって遺伝的に決定される。腸のバリヤ機能の欠損および/または免疫の調節不足がこの応答を仲介すると考えられる(Sartor、1998年)。これは炎症と抗炎症の勢いのバランスの重要性を反映しており、疾病の重症度と臨床的に相関する(Dionneら、1998年)。とりわけ、TNF-アルファが刺激され、大規模の上皮細胞の過形成が生じる(Higginsら、1999年)。例えば、クローン病は(特にIBDのケース)増加したTNF-アルファおよびその他の炎症性サイトカインのレベルを伴い(Kmiec、1998年)、サイトカインのバランス欠如につながる。IBDは、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)のような承認された炎症性作用物質によって、TNBS/エタノール浣腸剤または蒸留飲料水中のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の直腸投薬を通じて刺激されることが可能である(KirsnerとShorter、1995年)。
【0102】
実験6.ラット腸のTNBS誘導した炎症の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
プロトコル:
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、Wistar系雄性ラット(Charles River Laboratories、Montreal)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。炎症性ストレス誘導に先立って、ラットは24時間の絶食期間に置いた。
【0103】
ラットの3つのグループを以下の方式で処理した。
(処理1)非処理対照(n=3)
(処理2)ストレス適用対照:腸管内に2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(ストレス薬剤)(n=3)
(処理3)腸管内にストレス薬剤を投薬する24時間および48時間前に1mlの生理食塩水(0.9%)に溶かしたチラコイド抽出物(0.05%)を腹腔内投与(n=3)
【0104】
24時間後、ラットを殺して腸の10cmの切片をサンプリングした。試料重量を測定し、次の尺度で肉眼的な結腸損傷を得点記録した。
0 損傷なし
1 局部的充血、潰瘍なし
2 腸壁肥厚化の充血を伴わない潰瘍形成
3 1部位で炎症を伴った潰瘍形成
4 2つ以上の部位での潰瘍/炎症
5 主要部位の結腸の長さ方向に沿って1cmを超えて延びる損傷
6〜10 結腸の長さ方向に沿って2cmを超えて損傷が延びる場合、追加の1cm毎に得点が1点増される
【0105】
結果
チラコイドで保護された処理と比べると、ストレス適用された腸で腸重量の50.0%の相対的増加が観察された(図11)。さらに、チラコイド抽出物の腹腔内投与で保護されると、TNBSによる結腸の損傷は5.5から2.5(得点チャート参照)に減少した(図12)。
【0106】
結論
チラコイド抽出物の腹腔内投与(2mg/kg)は、ストレス適用された腸の炎症(重量)を減らすこと、および充血と潰瘍形成の巨視的な形跡を削減/除去することによって腸の炎症の物理的パラメータを調節する能力を有する。
【0107】
実験7.ラット腸のDSS誘導した炎症の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
プロトコル:
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、オスのWistar種ラット(Charles River Laboratories、Montreal)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。
【0108】
ラットの4つのグループを以下の方式で処理した。
(処理1)非ストレス適用対照(n=3)
(処理2)ストレス適用対照:5日間、飲料水中にデキストラン硫酸ナトリウム(DSS、ストレス薬剤)(n=3)
(処理3)対照処理:5日間、生理食塩水(0.9%)を毎日腹腔内投与(n=3)
(処理4)5日間、1mlの生理食塩水(0.9%)に溶かしたチラコイド抽出物(0.05%)を毎日腹腔内投与(n=3)
【0109】
5日間の処理後、ラットを殺して腸の10cmの切片をサンプリングし、重量測定した。
【0110】
結果
DSSはラット腸の慢性的炎症を引き起こした。対照(処理3)で、チラコイド抽出物0.05%を含む処理(処理4)に比較して腸重量が21.4%増加した(図13)。
【0111】
結論:
DSSによる5日間の慢性の炎症ストレスの後、チラコイド抽出物(2mg/kg)はラット腸の炎症の物理的徴候を有意に減少させることが可能であった。
【0112】
実験8.ラット脚のカラギーナン誘導した炎症(浮腫)の物理的パラメータに対するチラコイド抽出物の評価
プロトコル:
一晩(18時間)絶食させたオスのSprague-Dawley種のラット(250g)に、0.1%チラコイド抽出物(0.9%生理食塩水1ml中)の腹腔内注入を行い、その1時間後、(0.9%生理食塩水中の1%懸濁液で0.1mlの)カラギーナンを右後肢に足裏注入した。カラギーナン注入と同時に2回目のチラコイド抽出物投与量を投与した(Romeyら、1998年)。
【0113】
カラギーナン注入の直前と5時間後に、ダイヤルキャリパで腹側表面から背側表面へと足の厚さを測定した。カラギーナン注入後に測定した足の厚さ(mm)の増大で浮腫が表され、個々の動物について注入前の値と比較された。
【0114】
結果
チラコイドで保護処理したラットと比べると、非保護のラットは足の浮腫で45.7%の増大を示した(図14)。
【0115】
結論
従来のカラギーナン試験では、チラコイド抽出物(4mg/kg)は足の浮腫の物理的徴候に対して保護した。
【0116】
(実施例2)
抗炎症剤の増強
A.in vitro
実験9.肺胞マクロファージでのブデソニドの増強に対するチラコイド抽出物の評価
プロトコル
Sprague-Dawley系ラットの肺胞マクロファージ(細胞株NR8383)を様々な期間(24、48、および72時間)、37℃にて100ng/mlのLPS(Salmonella enteritidis、Sigma Chemicals Co.)の存在下で、前処理18時間および後処理18時間の両方についてチラコイド抽出物(0%、0.006%、0.05%)および/またはブデソニド(1nM;コルチコイド)で処理した。細胞を除いた上清でラット用のELISAキット(Pharmingen、San Diego、CA)を使用してIL-10レベルを測定した。
【0117】
結果
結果は、LPSへの前処理および後処理を受けると、チラコイド抽出物がブデソニドとの組合せで相乗作用および投与量依存性の様式でIL-10の放出を刺激することを示した(図15と16)。
【0118】
結論
これらのデータは、チラコイド抽出物がサイトカイン調節特性を有し、コルチコイド抗炎症剤の効果を増強することを示唆している。ブデソニドは高いIL-10レベルを長期間維持することに寄与し、それは一層優れた抗炎症効果を提供する。
【0119】
B.in vivo
実験10.マウス耳でのブデソニドの増強に対するチラコイド抽出物の評価
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、マウス(BALB/C)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。動物は処理の前に18時間の絶食期間に置いた。
【0120】
以下の方式で3つのグループのマウスを処理した。
(処理1)クリーム不使用(n=3)
(処理2)中性の下地クリーム(n=3)
(処理3)中性下地クリーム中にブデソニド(0.1%)(n=3)
(処理4)中性下地クリーム中にブデソニド(0.01%)(n=3)
(処理5)中性下地クリーム中にブデソニド(0.01%)+チラコイド抽出物(0.05%)(n=3)
【0121】
すべての処理は炎症性ストレスを加えた後に投与量2μl/cm2で4時間および8時間適用した(後処理)。動物は処理の継続期間中で暗状態に保たれた。
【0122】
処理に先立って、ホルボール12ミリスチン酸13酢酸エステル(TPA)(Sigma Chemicals Co.)の局所適用によってマウスの耳を炎症性ストレスに曝した。アセトン溶液中のTPA(0.2μg/μL)を20μL使用した(Griswoldら、1998年)。各マウスの右の耳をTPAで処理し、それに対して左の耳はストレスのない対照として扱った。
【0123】
24時間後、マウスを殺して左耳および右耳両方で直径6mmの打ち抜き片をサンプリングした。電子デジタルキャリパ0.01mm(Traceable)によって耳の打ち抜き片の厚さを測定した。
【0124】
結果
非処理対照(処理1)と比べると、ブデソニド0.1%(処理3)はマウス耳の打ち抜き片の厚さを58.2%低下させた。ブデソニド0.01%(処理4)は厚さを32.6%低下させた。チラコイド抽出物0.05%がブデソニド0.01%と共に適用されたとき(処理4)、耳の打ち抜き片の厚さの低下は非処理対照(処理1)と比較して51.8%であった。結果は図17に提示されている。
【0125】
結論:
チラコイド抽出物0.05%はブデソニドの効果を増強した。チラコイド抽出物がブデソニド0.01%と共同適用されたとき、組合せの効果は10倍高いブデソニド(0.1%)の投与量と同等であった。
【0126】
実験11.ラット腸でのメサラミンの増強に対するチラコイド抽出物の評価
Canadian Council on Animal Care(C.C.A.C.)のガイドラインに適合する施設内で、オスのWistar種ラット(Charles River Laboratories、Montreal)を個別のケージに入れ、12時間毎の明暗サイクルで20℃、相対湿度55%にて保った。炎症性ストレス誘導に先立って、ラットは24時間の絶食期間に置いた。
【0127】
ラットの4つのグループを以下の方式で処理した。
(処理1)非ストレス適用対照(n=3)
(処理2)腸管内に2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(炎症性作用物質)(n=3)
(処理3)ストレス作用物質の投薬の24時間前および48時間前に直接腸管にメサラミン(5-アミノサリチル酸、NSAID)(57mg/kg)を投薬(n=3)
(処理4)ストレス作用物質の投薬の24時間前および48時間前に直接腸管にチラコイド抽出物(0.05%)(2mg/kg)メサラミン(57mg/kg)を投薬(n=3)
【0128】
24時間後、ラットを殺して腸の10cmの切片をサンプリングした。試料を重量測定し、下記の尺度で巨視的な結腸損傷を得点記録した。
【0129】
上記の結果は、多様なタイプの炎症性疾患のモデルがチラコイド抽出物単独または他の抗炎症剤との組合せに影響されることを示している。
0 損傷なし
1 局部的充血、潰瘍なし
2 腸壁肥厚化の充血を伴わない潰瘍形成
3 一部位で炎症を伴った潰瘍形成
4 2つ以上の部位での潰瘍/炎症
5 主要部位での結腸の長さ方向に沿って1cmを超えて延びる損傷
6〜10 結腸の長さ方向に沿って2cmを超えて損傷が延びている場合、追加の1cm毎に得点が1点増される
【0130】
結果
メサラミンとチラコイド抽出物の組合せ保護と比較したとき、メサラミンで保護された腸で腸重量の19.7%の相対的増加が観察された(図18)。さらに、チラコイド抽出物が腸管内でメサラミンに追加されると、結腸の損傷は4.0から3.0(得点チャート参照)に減少した(図19)。
【0131】
結論
腸管内でチラコイド抽出物を動物の体重1kg当たり2mg追加することは、ストレス適用された腸の炎症(重量)を減少させることおよび充血と潰瘍形成の巨視的徴候を減少させることによってメサラミンの効果を完成させる能力を有する。メサラミンの投与量を減少させるとチラコイド抽出物がメサラミンで誘導される効果を増強することが確認されるはずである。
【0132】
以上の結果は、多様なタイプの炎症性疾患のモデルがチラコイド抽出物単独または他の抗炎症剤との組合せに影響されることを示している。前述の結果の観点からすると、チラコイド抽出物は様々な炎症性刺激物質前駆体または病因成分によって引き起こされる炎症の治療にとって有用である。
【0133】
ここまで好ましい実施形態によって本発明を説明してきたが、添付の特許請求項で規定されるような本発明の精神と性質から逸脱することなくそれを変更することは可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において炎症時に誘導される炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの相対量を調節するための抗炎症性薬剤の作製における、チラコイド抽出物の、抗炎症剤との組み合わせでの使用であって、前記チラコイド抽出物が、そのチラコイド膜環境内に精製された機能性光合成色素を含む、使用。
【請求項2】
前記炎症性サイトカインがTNF-αを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗炎症性サイトカインがインターロイキン-10を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
抗炎症性サイトカインの相対量の方が高い、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記抗炎症剤がグルココルチコイドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記抗炎症剤が非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
抽出物が対象の体重1kg当たり約0.00005〜500mgに達する量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
抽出物が対象の体重1kg当たり約0.05〜5mgに達する量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
薬剤が局所用である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬剤が、対象の皮膚または粘膜の表面1cm2当たり約0.1μgから1mgの抽出物を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記薬剤が、対象の皮膚または粘膜の表面1cm2当たり約1μgから200μgの抽出物を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
対象の炎症の発現を阻止するための組成物であって、有効量の抗炎症剤、および有効量の、チラコイド膜環境内に精製された機能性光合成色素を含むチラコイド抽出物を含む組成物。
【請求項13】
前記抗炎症剤がグルココルチコイドである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗炎症剤が非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
局所用である、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
抽出物の前記有効量が、対象の皮膚または粘膜の表面1cm2当たり約0.1μgから1mgである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
抽出物の前記有効量が、対象の皮膚または粘膜の表面1cm2当たり約1μgから200μgである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
抽出物の前記有効量が、対象の体重1kg当たり約0.00005〜500mgである、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
抽出物の前記有効量が、対象の体重1kg当たり約0.05〜5mgである、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−298810(P2009−298810A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221131(P2009−221131)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【分割の表示】特願2003−510053(P2003−510053)の分割
【原出願日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【出願人】(502237272)ピュアセル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】