説明

炭化水素の接触部分酸化用の触媒及び合成ガスの製造方法

【課題】高活性で長期間の耐久性を有する接触部分酸化用の触媒を提供すること及び長期に亘って安定した接触部分酸化反応を実施することのできる方法を提供すること。
【解決手段】接触部分酸化用の触媒は、アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとバリウム及びランタンの少なくとも一方とを添加して焼成することにより得られた担体と、この担体に担持されたロジウムなどの白金族元素と、を備えている。担体は例えば600℃以上の温度で焼成することにより得られ、この焼成工程においてニッケルアルミネートが生成される。この触媒を断熱反応器に充填し、原料炭化水素に酸素及びスチーム及び水素を添加し(原料炭化水素に水素が含まれている場合は不要である)、反応器に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン及び炭素数2以上の炭化水素を含む天然ガスや随伴ガス等の軽質炭化水素に対し、酸素を添加して部分酸化を行うことにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するときに用いられる触媒、及び合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、石炭等化石燃料の大量消費に起因する地球環境問題や将来の石油資源の枯渇問題が取り上げられていることから、天然ガス等から製造されるクリーンな燃料であるGTL(炭化水素液体燃料)やDME(ジメチルエーテル)が注目されている。GTLやDMEを製造する原料ガスは合成ガスと呼ばれ、一酸化炭素と水素とを含んでいる。
【0003】
これまでの合成ガス製造法としては、実績のあるスチーム改質法(SMR)や無触媒下で酸素を用いる部分酸化法(POX)が主流であったが、これらの製造方法は、大型の合成ガス製造装置が必要となるGTLやDMEプラントに適用する場合には次のような難点がある。例えばSMR法では、大型のSMR装置は多数の反応管を必要とするため、設置面積が大きくなり経済性の面でも不利である。また天然ガスを原料とした場合、POX法はGTL,DME用の原料合成ガスとして必要なH2/CO比の調整が困難である等の欠点がある。
【0004】
また合成ガス製造法の他の手法として、酸素バーナーを用いた酸化反応とスチーム改質反応とを同一反応器内で行うオートサーマルリフォーミング法(ATR法)がある。この方法は、大型化に適していると共にH2/CO比のコントロールが容易であり、最近実績をあげてきているが、天然ガス等のようにC2以上成分が含まれているとバーナー部分に炭素質析出によるトラブルが発生することが知られている。そのためATR装置の前段にスチーム改質反応器を設置し、この反応器にて天然ガス中のC2(炭素数2)以上の成分とメタンの一部とを改質し水素含有ガスを得て、これをATR装置に供給する方法が採用されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしこのような2段改質を行うと、大型商業装置ではスタートアップ、ターンダウン、シャットダウン等における操作が煩雑であり、また設備が大型化するという欠点があった。
これに対し触媒の存在下において、炭化水素原料を高濃度酸素で部分酸化し合成ガスを得る接触部分酸化法(CPO:Catalytic Partial Oxidation)の開発が注目されている。接触部分酸化法はバーナーが無いためC2以上の成分が含まれていてもプレリフォーマーを必要としない点において、オートサーマルリフォーミング法に比較して優れている。更に触媒による反応の速度が極めて速いため、数万〜数百万の高SV条件下でも反応が完結することから反応器が小さくなるという利点がある。
この反応はメタンを例にとれば主として下記の反応が含まれる。
(1) CH4+1/2O2→ 2H2+CO ΔH298 = −36kJ/mol
(2) CH4+2O2→ CO2+2H2O ΔH298 = −879kJ/ mol
(3) CO+H2O→ CO2+H2 ΔH298 = −42kJ/ mol
(4) CH4+H2O→CO+3H2 ΔH298 = +206kJ/ mol
(5) CH4+CO2→2CO+2H2 ΔH298 = +248kJ/ mol
(1)〜(5)の反応は併発あるいは逐次的に進行し、出口ガス組成は平衡に支配されるが、反応全体としては非常に大きな発熱反応である。この反応は(1)と(2)の反応速度が極めて速く、特に(2)の完全酸化の反応熱が大きいため触媒層入り口部でホットスポットが発生する。図4は、反応器の入り口側から出口側に至るまでの位置を横軸にとり、縦軸に触媒層の温度をとったグラフであり、ホットスポットとは、触媒層の入り口にて点線のように局所的に非常に高温になる現象をいう。ホットスポットが発生すると、触媒のシンタリング(収縮)及び炭素質の析出による劣化が起こり、また触媒に炭素質が析出付着すると反応容器内の上流側部位の圧力が下流側部位の圧力に比べて過大になり、容器の耐圧を越えるおそれなどの問題がある。なお図4において実線の山の部分はホットスポットが抑えられた状態を示しており、この場合には触媒のシンタリング及び炭素質の析出による触媒の劣化が少ない。 触媒のシンタリングに関しては、仮にホットスポットが抑えられたとしても、上述のように極めて高い発熱反応により下記に示したように副反応である炭素質の生成が起こり、その結果、触媒活性の低下や反応器の閉塞が起こることが知られている。
(6) CH4→C+2H2
(7) 2CO→C+CO2
(8) CnHm→nC+(m/2)H2
この炭素質の生成による触媒の劣化を抑制する方法としては、原料ガス中にスチームを添加して原料ガス中のスチーム/炭素比を大きくすることにより触媒上での炭素質の生成を抑制する方法がある。しかし高温・高スチーム分圧下では逆に担体のシンタリングが促進され活性表面積の減少による劣化が加速するという問題がある。
そしてまた接触部分酸化プロセスは非常に大きな発熱反応であることから、触媒は極めて高い耐熱性が要求される。以上のことから、接触部分酸化法は、実用化が極めて困難な技術である。
【0006】
一方、(1)式で示される反応だけが選択的に進行すれば発熱が少なくかつ高収率でH2/CO=2.0のGTL用として理想的な合成ガスを製造することができるため、直接的部分酸化反応として(1)式反応を選択的に進行させる手法が最近盛んに研究されている。
特許文献2では、このような直接的部分酸化法(DCPO)が提案されている。ここでは、耐熱性に優れたα-アルミナや安定化ジルコニアからなる担体に、活性種としてRh.MAl2O4等で表されるスピネル構造体(Mは、Co、Al、Li、Ti、Ni、Mn、Cd、Zn、Cu、Mg、Ca、Fe、Mo及びLaから選ばれる物質あるいはこれらの混合物)を担持した触媒が用いられる。そして高SV条件下において炭化水素と酸素とを混合した原料ガスを10ミリ秒以下の接触時間で通過させることによって(1)式で示した反応だけを選択的に行うようにしている。
ところで長時間にわたって(1)式のみの反応を選択的に維持することは極めて困難であり、特許文献2には、触媒の添加物質が列挙されていても、どの添加物質が効果的であるか、あるいはどの添加物質の組み合わせが効果的であるかといった点については触れられていない。
【0007】
他方、(1)〜(5)の平衡で支配される接触部分酸化法反応に関しては、特許文献3において、天然ガス原料にスチームを添加しスチームモル数/炭素モル数を0.20、酸素モル数/炭素モル数が0.58、入り口温度200℃、反応器出口ガス温度1033℃での接触部分酸化反応の例を開示している。このような高酸素比の反応条件下において接触部分酸化触媒として公知の貴金属系やNi系触媒を用いると、(2)の反応が優先するために触媒層入り口部でホットスポットが発生し、その結果シンタリングや炭素質生成による触媒劣化が著しくなる。このため特許文献3では、発熱の少ない低酸素比の接触部分酸化プロセスとATRプロセスとの組み合わせプロセスを提案している。この場合ATRと同様に2段改質となることから設備の大型化、操作の煩雑化という欠点がある。
【0008】
このような背景から、上記した如く将来的なGTLやDMEの需要増大に対処するための大容量の合成ガス製造方法として、1段改質である接触部分酸化法の開発が期待されている。しかしその実現のためには、ホットスポットを生成しないような反応の選択性及び耐久性に優れた触媒及びプロセスの開発が求められている。
【0009】
上記したように接触部分酸化プロセスの商業化が困難な理由として、高酸素比条件下における触媒層入り口部でのホットスポットの発生が挙げられるが、更に接触部分酸化反応に対する高活性触媒として知られるPtやRhは希少金属であり、非常に高価であるという点も上げられる。
そこで非特許文献4では、このホットスポットの発生を抑制し、かつ高価な貴金属の担持量を減らすため(3)〜(5)式で表されるメタン改質活性が高いNiと(1)〜(2)式で示されるメタン酸化活性が高いPtとを組み合わせたPt-Niバイメタル触媒を提案している。Niは部分酸化反応と改質反応のいずれにも高い活性を示すが、NiOは吸熱反応である改質活性を持たないことから、NiOの存在はホットスポットの要因となる。非特許文献4では、酸化され難く、酸化活性と改質活性を併せ持つPtとのバイメタル触媒とすることで、Niの酸化を抑制できると報告している。しかし高価な貴金属をできるだけ有効に利用するための具体的方法が開示されていない。即ち、NiOは、予備還元処理することでNiとなるが、このNiの酸化を抑制するためにはNiに対して相当量のPtを要し、結果としてPtの量の大幅な低減を期待できず、従ってPt-Niバイメタル触媒についても商業化が困難であると考えられる。
【0010】
また接触部分酸化反応は前記した如く極めて高い発熱反応であるため、触媒層は1000℃以上の高温・高スチーム分圧雰囲気に長時間晒される。このため接触部分酸化プロセスを商業化させるためには、ホットスポットの生成を抑制するだけでなく、いかにして触媒のシンタリング及び炭素質の生成を抑制するかが重要な鍵となる。以上のことから、接触部分酸化反応における課題としては、主に下記の事項が挙げられる。
(1)Rh,Pt,Ru等の貴金属量の低減 (2)ホットスポット発生の抑制 (3)高温・高スチーム分圧条件下でのシンタリングの抑制 (4)炭素質析出の抑制 (5)耐熱衝撃性に優れた担体の開発
【非特許文献1】PEC-2000L-07、「天然ガス・重質残油を原料とする液体燃料化技術に関する調査」(2001年3月、(財)石油産業活性化センター)
【特許文献1】WO 02/066403 A1のクレーム2及び第6頁3段〜第7頁7行
【特許文献2】特開2002-97479号公報:段落0031
【非特許文献2】富重圭一,国森公夫,PERROTECH,26, 433 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、高活性でかつ高選択性であり長期間の耐久性を有する接触部分酸化用の触媒を提供することにある。また本発明の他の目的は、この触媒を用いることで、長期に亘って安定した接触部分酸化反応を実施することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、部分酸化とスチーム改質に活性がありかつ比較的安価であるニッケルに先ず着目し、そして接触部分酸化用の触媒として要求される高温、高スチーム下でも安定な担体である、ニッケルとアルミナとを600℃以上の高温で焼成してなるスピネル型構造を多く含むニッケルアルミネートに着目した。しかしニッケルアルミネートだけでは、十分な耐熱性が得られないことから鋭意研究の結果、更にランタン又はバリウムを添加することにより反応中の高温・高スチーム分圧雰囲気下においてもニッケルアルミネートを含む担体のシンタリングが著しく抑制されることを見出した。この熱的に安定なニッケルアルミネートを担体として接触部分酸化反応活性が高い白金族触媒の使用を検討した。このような観点から本発明がなされている。
【0013】
本発明は、メタン及び炭素数2以上の軽質炭化水素を含む原料炭化水素に少なくとも酸素及びスチームを添加して原料炭化水素を接触部分酸化し、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するときに用いられる炭化水素の接触部分酸化用の触媒において、
アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとバリウムとを添加して焼成することにより得られた担体と、
この担体に担持された白金族元素と、を含むことを特徴とする。
他の発明に係る触媒は、アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとランタンとを添加して焼成することにより得られた担体と、この担体に担持された白金族元素と、を含むことを特徴とする。
前記軽質炭化水素は、例えば炭素数が6以下の炭化水素を含む。前記担体は、アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとバリウムとランタンとを添加して焼成するようにしてもよい。
白金族元素としては、例えばロジウム、ルテニウム及び白金の中から選択された元素である。担体を得るときの焼成温度は600℃以上とすることにより、ニッケルアルミネートを含む担体を得るようにしてもよい。本発明では、ニッケルアルミネートとは、ニッケルとアルミニウムの複合酸化物の形態をもち、ニッケル(Ni)及びアルミニウム(Al)原子が酸素原子を介して互いに配位している構造をいう。本発明における触媒調製時の担体には少なくともNiAl2O4で表されるスピネル型構造を多く含むニッケルアルミネートが含まれていることが必要であり、スピネル以外の構造を有する金属アルミネートやヘキサアルミネート等と共存するものでもよい。 また 担体中におけるニッケルの含有割合は、1〜35重量%であることが好ましい。更に担体中におけるバリウム及び/またはランタンの合計含有割合は0.1〜20重量%であることが好ましい。担体中におけるバリウム及び/またはランタンの合計含有割合は0.1〜20重量%であることが好ましい。触媒中における白金族元素の含有割合は0.05〜5.0重量%であることが好ましい。白金族元素は、酸化物、水酸化物または金属等の形態で担体の表面から1mm以内の深さ領域に60%以上存在するように担持されていることが好ましい。
【0014】
また本発明の合成ガスの製造方法は、メタン及び炭素数2以上の軽質炭化水素を含む原料炭化水素に少なくとも酸素及びスチームを添加してなる原料ガスであって、原料炭化水素に水素が含まれていることにより及び/または水素を添加することにより水素が含まれる原料ガスを、反応器内に供給する工程と、
前記反応器内に設けられた本発明の触媒と前記原料ガスとを加熱状態で接触させて、原料炭化水素を接触部分酸化し、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する工程と、
前記合成ガスを前記反応器から取り出す工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明方法において、原料ガス中における酸素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数は例えば0.2〜0.8であり、スチームのモル数/炭化水素中の炭素のモル数は例えば0.2〜0.8である。また原料ガス中における水素のモル数/炭化水素のモル数は例えば0.001〜0.1である。
【0016】
原料ガス中には、例えば二酸化炭素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数が0.01〜0.6で二酸化炭素ガスが含まれるようにしてもよく、この場合、反応器出口からのガスから回収した二酸化炭素ガスをリサイクルすることが好ましい。また本発明方法は、触媒に対して前処理としての還元処理を行わずに、原料ガスを反応器内に供給し、接触部分酸化反応を開始するようにしてもよい。本発明方法の具体例としては、原料ガスを200℃〜500℃に予備加熱した後に、圧力が常圧〜8MPa、空塔速度が5,000hr−1〜500,000hr−1の条件で反応器内に供給し、断熱反応条件下で触媒と接触させる方法を挙げることができる。なお本発明方法において、触媒は前処理としての還元処理を必要としないが、反応前に例えば400℃以下で白金族を還元して用いることもできる。
【0017】
以上において、本発明でいう「原料炭化水素に少なくとも酸素及びスチームを添加して」とは、酸素及びスチームの他に窒素を添加する場合、例えば空気及びスチームを添加する場合も含まれる。この場合には、「合成ガス」は、一酸化炭素と水素と窒素とを含むガスになり、後工程で一酸化炭素を除去することにより、アンモニアの合成原料ガスとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルミナまたはアルミナの前駆体にニッケルを添加して焼成することでスピネル型を多く含むニッケルアルミネートを担体として得ているが、更にバリウム及びランタンのうちの少なくとも一方を添加しているため、ニッケルアルミネートが高温で収縮し表面積が減少するシンタリング作用が抑えられる。このため触媒調製時の焼成段階におけるシンタリングを抑制できるので、白金族元素を少量でありながら高い分散状態で担持することができ、高い活性を得ることができると共に高価な白金族元素の使用量を低減できる。また接触部分酸化反応時における高温、高スチーム分圧下においても担体であるニッケルアルミネートのシンタリングが抑えられる。接触部分酸化反応においては、スチームを加えることで触媒上における炭素質の生成を抑えることができるが、一般にスチームの存在により担体のシンタリングが加速される。従ってこの発明では、スチームの存在による担体のシンタリングが抑えられることから、反応中における高温、高スチーム分圧下での安定性が実現でき、結果として触媒上における炭素質の生成を抑えることができることになる。
【0019】
またニッケル触媒を用いた接触部分酸化反応では、大きな発熱反応を伴うメタンと酸素との反応が優先し、ニッケル酸化物(NiO)が生成され、NiOは部分酸化活性が強いことから、特に触媒層の入り口において触媒の温度が異常に高くなるホットスポットの現象が起こる。しかし本発明では、ニッケルアルミネートを含む担体に白金族元素を担持させていることから、まず白金族元素によって水素及び一酸化炭素が生成され、触媒表面上で還元雰囲気が形成されるので、ニッケルアルミネートの還元が促進され、また原料ガス中の水素によりニッケルの再酸化が抑えられる。この結果触媒表面は、部分酸化とスチーム改質に活性を有する白金族元素とニッケルとが占めることになるので、安定した接触部分酸化反応が得られ、ホットスポットの発生が抑えられる。このようにホットスポットが抑えられることと、バリウム及び/またはランタンの添加によりシンタリングが抑制されることと、が相俟って、接触部分酸化プロセス中のシンタリング及び炭素質生成による触媒劣化を効果的に抑えることができる。
【0020】
以上のことから、上述の触媒を用いた本発明の合成ガス(一酸化炭素と水素とを含むガス)の製造方法によれば、長期に亘って安定した接触部分酸化反応を実施することができ、例えば天然ガスから、GTLやDMEの原料となる合成ガスを得るにあたって、極めて有効な手法である。そして高温でも安定で高活性な触媒を用いているため、反応器が小型化でき、経済性に優れたプロセスを行うことができる。また触媒の活性が高いので原料ガスを低温で予熱し、反応器に供給できるため、高酸素濃度の原料ガスの自発着火を防ぐことが可能となり、その結果装置の運転上の安全性向上および計装の簡略化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の炭化水素の接触部分酸化用の触媒は、例えば次のようにして製造することができるが、特に例に開示する方法に限定するものでは無い。先ずベーマイト、擬ベーマイトあるいは水酸化アルミニウム等のアルミナ前駆体の粉末又はγ,η,χ−アルミナ等のαアルミナ以外のアルミナの粉末を用意し、これら粉末に例えばランタンあるいはバリウムの塩、例えば硝酸塩の粉末あるいはその水溶液等と更に必要に応じて成型助剤としてのバインダーとを混合し、その混合物に水を添加して水分の調整を行う。次いで、この混合物を押し出し成型機に入れて一定のサイズに押し出し成型を行い、例えば粒径5mmの粒状体群を得、これを加熱乾燥した後、電気炉に入れて例えば600℃で5時間焼成する。なお粒状体群の粒径は特に限定されないが、商業装置のような大型装置に充填する場合には反応器の圧損を小さくするために3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。また押出し成型以外にも打錠成型や転動造粒等の方法でも良く成型法は特に限定されない。
【0022】
そしてこの焼成物であるランタンあるいはバリウムを添加したアルミナ担体を、ニッケル塩水溶液である例えば硝酸ニッケル水溶液の入った容器内に浸漬して、当該水溶液を含浸させ、次いでこの焼成物を乾燥した後、電気炉内にて例えば1100℃で24時間焼成を行う。このような処理を施すことにより、ランタン(La)あるいはバリウム(Ba)が添加されたニッケルアルミネートを含む担体が得られる。
【0023】
また前記焼成物をニッケル塩水溶液に浸漬する代わりにランタンあるいはバリウムを添加したアルミナ担体の吸水率に相当する液量になるように濃度調整したニッケル塩水溶液を前記焼成物に含浸する方法(ポアフィリング法)も好適に用いられる。ニッケルの担持量が多い場合には含浸を繰り返すことにより担持することが出来る。
【0024】
その他の方法として例えば予めニッケル塩とアルミナ前駆体またはアルミナの粉末とランタンあるいはバリウムの塩又は酸化物を成型助剤と一緒に混合し水を加えて成型し焼成する方法でも上記したニッケルアルミネートを含む担体を得ることが出来る。
【0025】
その後、前記ニッケルアルミネートを含む担体を容器内に入れてこの容器を加熱しかつ回転させながら白金族元素の塩、例えば硝酸ロジウム水溶液を担体に噴霧することにより、当該水溶液を担体に含浸させる。続いてこの担体を乾燥した後、電気炉内にて例えば600℃で3時間焼成を行うことにより、前記担体にロジウムなどの白金族元素が担持された本発明の触媒を得る。
【0026】
ランタンあるいはバリウムの塩としては、硝酸バリウムや硝酸ランタンなどの硝酸塩、亜硝酸塩等に限らず、酸化バリウム、酸化ランタンのような酸化物、水酸化バリウム、水酸化ランタン等の水酸化物、炭酸バリウムや炭酸ランタン等の炭酸塩、酢酸バリウムや酢酸ランタン等の有機酸塩等が好適に用いられる。
またニッケル塩としては、既述の硝酸ニッケルの他、水酸化ニッケルや酸化ニッケルなどであってもよいし、あるいはギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケルなどの有機塩であってもよい。焼成物にニッケル塩水溶液を含浸する方法は、例えば容器内に焼成物を入れてこの容器を加熱しかつ回転させながらニッケル塩水溶液を焼成物に噴霧するようにしてもよい。
また触媒の形状は、円柱状、球形やタブレットに限らず、反応器の圧損を小さくする目的でハニカム状、モノリス状、リング状、ガーゼ状、発泡体等の多孔体構造としてもよい。
ハニカムのようなモノリス構造体を採用する場合、アルミナ前駆体またはアルミナの粉末にランタンあるいはバリウム塩と水を混合したスラリーを、金属やセラミックスのような耐火性無機構造体に塗布し、乾燥、焼成し、その後ニッケル塩溶液に浸漬、乾燥、焼成するようにしてもよく、この方法によってもニッケルアルミネートを含む担体に白金族元素を担持することができる。この場合、ニッケル塩を最初から混合し、焼成の工程を1回で行う方法でもニッケルアルミネートを形成することが出来、本発明の触媒を製造することができる。
【0027】
更に担体に白金族元素を担持する手法としては、白金族元素の水溶液又は溶液を担体にコーティングするかまたはポアフィリング法あるいは担体に選択吸着させるなどの方法を採用してもよい。
【0028】
ところでアルミナは担体として優れた安定性と活性金属の分散性を示すが、通常担体として用いられているγアルミナは、接触部分酸化反応条件下では表面積が数m2/g以下しかないαアルミナに転移する。このように反応中に担体が構造変化して表面積が著しく低下するため、触媒調製時に白金族元素を高分散に担持しておいても反応中に活性金属の粒子が成長することによる活性点の減少が起こり、触媒活性の劣化が起こってしまう。またαアルミナに最初から担持した場合は極めて小さな表面に白金族元素を担持することになるため高分散化することは不可能である。
【0029】
また接触部分酸化反応は極めて高い発熱反応であり、触媒は高温・高スチーム分圧下に晒されることから、ニッケルアルミネートを含んだ担体は予め600℃以上、好ましくは700℃以上の高温で焼成しておくのが好ましい。しかしニッケルアルミネートを含む担体を高温で焼成した場合、ニッケルアルミネートを含んだ担体が焼成時の熱処理によりシンタリング(収縮)してしまい表面積が小さくなって白金族元素の分散が悪くなってしまう。即ち、ランタンやバリウムを添加しないで焼成することによって得られたニッケルアルミネートを含む担体は表面積が小さく、またこのような表面積が小さい担体に担持した白金族元素の分散性は低く、反応活性が低い結果となる。
【0030】
これに対してランタン又はバリウムとニッケルを含有させ、例えば800℃以上の高温で焼成することによって高表面積で熱安定性に優れたニッケルアルミネートを含んだ担体を得ることが出来る。そしてバリウム又はランタンを添加したニッケルアルミネートを含む担体は、触媒調製時における熱処理(焼成工程)において安定であるだけでなく、高温・高スチーム分圧下での過酷な接触部分酸化反応中でもシンタリングを抑制できる。従って接触部分酸化プロセスにおいてスチーム比を高くすることが可能となったことから、炭素の析出反応を抑えることができる。また背景技術の項目で記載した(6)〜(8)式に示す炭素析出反応は、触媒表面上の酸点で起きると考えられるが、塩基性のバリウムやランタンの添加により、強い酸点を適度に調整する効果があると考えられる。従って、スチーム比を高くできることと相俟って、本発明の触媒を用いた接触部分酸化反応では、炭素の析出を効果的に抑えることができるといえる。
また詳しい理由は不明だが、ランタン及びバリウムはニッケルアルミネートを含んだ担体の表面積の低下を抑制するだけでなく、担持された白金族元素の分散性及び反応活性を向上させる効果があると考えられる。従ってニッケルアルミネート担体に少量の白金族元素を高分散に担持することが可能となる。その結果必要な貴金属(白金族元素)の担持量を低減させると同時に高活性な接触部分酸化触媒を得ることが出来る。
【0031】
ここで、担体中のニッケルの担持量が1重量%以下では、アルミナに対し添加されたニッケルの量が少なすぎて安定なスピネル型ニッケルアルミネートを形成することが出来ず、また還元されて生成する金属ニッケルが少ないため効果が得られない。またニッケルの担持量が35重量%以上では過剰なNiOが生成し耐熱性が損なわれる。そしてニッケルとして1〜35重量%の範囲のニッケルアルミネートを含む担体に白金族元素を担持していることによって、原料ガス中に微量に残存し、白金族元素の活性を被毒するサルファー分が触媒層入り口部の担体及び還元されたニッケルに吸着する。この結果触媒層下流の白金族元素の失活を防止することができる利点もある。ニッケルの担持量は、より好ましくは3〜25重量%であり、更により好ましくは5〜25重量%である。
【0032】
ニッケルアルミネートに対するバリウム及びランタンの添加量は、0.1重量%以下では効果が得られず、20重量%以上添加しても効果の向上はそれほど見られない。バリウム及びランタンの添加量は、より好ましくは0.5〜15重量%であり、更により好ましくは1〜15重量%である。
【0033】
本発明ではバリウム及びランタンのうちの一方の成分を添加することに限られず、両方添加しても効果が得られるが、後述の実験結果から分かるようにランタンに比べてバリウムの添加効果の方が大きいことから、バリウムを添加することがより好ましい。また本発明はバリウムあるいはランタンに加えて他の成分が添加されることを排除するものではない。
【0034】
そして本発明のように、ランタン又はバリウムを添加したニッケルアルミネートを含む担体に白金族元素を担持すると、担持された白金族元素やNiが還元され易くなり高温での予備還元処理無しでも原料ガスを200℃〜400℃で供給すれば反応を開始する。
【0035】
Dissanayake等の報告によればニッケルアルミネートは接触部分酸化反応に対して殆ど活性を示さず、NiOは400℃〜700℃でメタンの完全酸化活性は示すが改質活性は殆ど示さないことを報告している。しかし750℃以上では一部のニッケルアルミネートが生成したH2とCOにより還元され金属ニッケルが生成し、(1)〜(5)に示した接触部分酸化反応に高い活性と選択性を示すことを報告している[Dissanayake et Al ,Journal Of Catalysis, 132, 117-127(1991)]
この報告にあるようにニッケルアルミネートは接触部分酸化反応による高温のH2,CO還元雰囲気下では還元されて金属ニッケルを生成し、反応に寄与出来る。その結果白金族元素の使用量を低減できるが、原料ガス中の酸素とスチームによる酸化を抑制する必要があり、水素が原料ガス中に含まれていないと入り口温度500℃以下ではニッケルが再酸化される。
【0036】
本発明では成型した難還元性のニッケルアルミネートを含む担体に、白金族元素を担持しているため次のような作用が得られる。接触部分酸化触媒は断熱型固定床反応器に充填されるが、ニッケルアルミネートを含む担体の外表面に担持された白金族元素は200℃〜500℃の低温でも接触部分酸化反応を開始する活性を有する。このため担体の外表面に存在する易還元性の白金族元素がまず断熱条件下で接触部分酸化反応によって触媒層温度を700℃以上に上昇させる。そしてこの反応により生成したCO及びH2によってニッケルアルミネート等が一部還元されて微細な金属ニッケルとなるが、この金属ニッケルは原料ガス中に含まれる低濃度水素により還元状態を維持することができる。NiOは、背景技術の項目にて記載したように、部分酸化活性が強く、ホットスポットの大きな要因になっていることから、NiOの生成が抑えられることによりホットスポットが抑制され、ニッケルアルミネートへの白金族元素の添加は、安定した改質反応の進行に寄与することとなる。
【0037】
ここで成型したニッケルアルミネートを含む担体に白金族元素を担持させるにあたっては、図1に示すように担体1の表面から浅い領域に白金族元素2が多く存在するように担持することが望ましい。例えば担体1の粒径が3〜5mmであれば、担体1の表面3から1mm以内の深さにおいて、白金族元素2全体の60%以上が存在するように構成することが好ましい。このように白金属元素を担体に担持させる手法としては、既述のように白金族元素の溶液または水溶液を担体にコーティングする方法、または白金族元素を担体に選択吸着させるなどの方法が挙げられる。また他の方法としては、硝酸ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を担体に含浸させた後、担体を乾燥、焼成し、その後硝酸ロジウム水溶液などの白金属元素の金属塩溶液を含浸させ、担体上でアルカリと金属塩とを反応させて白金属元素を担体表面に固定するなどの方法が挙げられる。白金族元素としてロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)特にロジウムが好ましいが、触媒中における白金族元素の含有量が0.05重量%以下では活性が低いため反応器が大きくなり、また5重量%以上では高価格になりまた分散性が悪くなるため経済性に欠ける。触媒中における白金族元素の含有量は、好ましくは0.1〜3重量%、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0038】
図2は本発明の触媒を用いて合成ガスを製造するための装置を概略的に示した図である。4は円筒状の反応器であり、この中に本発明の触媒を充填して触媒層5が形成されている。この装置では、原料である軽質炭化水素に酸素、スチーム、二酸化炭素を添加してなる原料ガスを反応器4の上部の入り口41から供給し、触媒層5を通過させて部分酸化反応を行わせ、反応器4の下方側の出口42から合成ガスが取り出される。
【0039】
NiOの再酸化を防止するためには、原料ガス中において水素が水素対炭化水素モル比(水素/炭化水素)で0.001〜0.1の範囲で含有されることが必要であるが、原料炭化水素を前処理脱硫反応器で処理する場合、水素濃度がこの範囲に入っていれば添加する必要は無く、脱硫後の炭化水素をそのまま供給することが出来る。また原料炭化水素中に水素が含まれていない場合には、水素を添加すればよい。
【0040】
さらに特願2004−298971に開示された如く、脱硫後の原料炭化水素をスチームで低温水蒸気改質し、炭素数2以上の炭化水素をメタンと水素に変換した後で接触部分酸化する方法でも実施できる。
【0041】
原料ガス中における酸素は、少なすぎると原料炭化水素が部分酸化されずに排出されてしまい、逆に多すぎると触媒層のピーク温度が高くなりすぎて、触媒の劣化を促進してしまう。このため酸素の含有量については、酸素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数が0.2〜0.8であることが好ましい。また触媒表面における炭素の析出を抑えるためにスチームを入れることが必要であるが、あまり多すぎると、触媒のシンタリングを促進してしまうため、スチームの含有量については、スチームのモル数/炭化水素中の炭素のモル数は0.2〜0.8であることが好ましい。
また、背景技術の項目の(5)式の反応を進行させて合成ガスの収率を高くするために、原料ガス中には二酸化炭素を含有させることが好ましい。二酸化炭素の含有量については、二酸化炭素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数が好ましくは0.01〜0.6であり、より好ましくは0.1〜0.3である。
【0042】
原料ガスは例えば200℃〜500℃に予備加熱されて反応器4内に供給され、反応器4の入り口41における圧力は例えば常圧〜8MPaである。また空塔速度(GHSV)は、好ましくは例えば5,000hr−1〜500,000hr−1であり、より好ましくは20,000hr−1〜200,000hr−1である。
反応器4内に原料ガスを供給すると、触媒により背景技術の項目の(1)式と(2)式に示した酸化反応が起こり触媒層5の入り口では大きな発熱が生じるので当該部位の温度が上昇する。そして触媒層5の入り口よりも下流側では、既述の(1)〜(5)式が同時に進行し平衡組成に到達するので、触媒層5の温度は原料ガスの組成と反応圧力によって決定される出口ガス組成の平衡温度、例えば1100℃程度の温度に安定する。反応器4の出口42では、1100℃における平衡で決まる組成のガス、即ちほとんど一酸化酸素及び水素からなる合成ガスが得られる。この合成ガス中には二酸化炭素が含まれるが、後段の工程にて合成ガスから二酸化炭素が分離され、この二酸化炭素が原料ガスに加えられて反応器4内に供給され、こうして二酸化炭素が再使用(リサイクル)される。
このように本発明の触媒は低温での活性が高いことから、原料ガスを低温で反応器4内に供給することができ、そのため高酸素濃度の原料ガスによる自発着火を防止することが可能となり、プロセス設計上安全性が高められる。
また本発明では、触媒表面において接触部分酸化反応に寄与する金属ニッケルが反応中に生成するので、高価な白金族元素の添加量を低減でき、安価な接触部分酸化触媒の製造が可能である。
【0043】
本発明に係る接触部分酸化触媒を製造する場合、原料ガス中に塩素分が含まれて、焼成後においても一定濃度で塩素が残留すると。反応器下流において露点以下の温度条件になる配管、機器等で応力腐食割れや減肉腐食が起こる。従って本発明の接触部分酸化触媒を製造する原料には塩素を含まない原料を用いるか、或いは塩素を除去することが好ましい。触媒中に残留する塩素はバリウム及びランタンや白金族元素、ニッケル原料に起因する。その為原料として水酸化物および硝酸塩や有機酸塩を用いることにより塩素を含有しない接触部分酸化触媒を製造することが出来る。また白金族原料として例えば塩化ロジウムや塩化ルテニウム等を使用する場合、担持工程において塩素を除去する方法が採用される。この塩素除去方法については特開昭60−190240に開示されている方法によっても100ppm以下に除去することが出来るが、アルカリ水溶液で洗浄する等の方法によっても可能である。
【0044】
以上において、本発明の触媒を用いて製造する合成ガスは、GTLやDMEの原料として用いられることに限らず、アンモニアガスの合成原料として用いられるガスも含まれる。この場合には、例えば酸素プラントからの純粋な酸素の代わりに空気を用い、空気及びスチームを原料炭化水素に添加して、水素、窒素及び一酸化炭素を含む合成ガスが得られる。この合成ガスは、後工程で一酸化炭素が除去されてアンモニアの合成原料となる。
【実施例】
【0045】
(触媒の調製)
イ.ニッケルアルミネートを含有する触媒の調製
擬ベーマイト粉末(触媒化成工業社製 商品名:Cataloid-AP)2,000g(Al2O3換算で1,500g)に成型助剤であるセランダー(ユケン工業社製)を200g添加し、水分調整しながらニーダーで混練した後、2.5mmΦで押出し成型を行った。この押出し物を更に2mm前後に切断した後、マルメライザーにより球状に成型加工した。 この成型体を加熱乾燥した後、空気中電気炉にて600℃、5時間焼成し、その後この成型体アルミナ1,000gに、硝酸ニッケル6水和物(和光純薬工業社製)568gを溶解した水溶液600ccを室温で含浸した。
その後乾燥させ、しかる後1,100℃にて24時間焼成を行ってNiとして10重量%含有する触媒Aを調製した。触媒Aはコバルトブルーのスピネル型ニッケルアルミネート特有の色をしておりX線回折測定からもスピネル型ニッケルアルミネートの生成が確認された。
【0046】
ロ.ランタンを添加したニッケルアルミネートを含有する触媒の調製
擬ベーマイト粉末2,000gに硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)
57gを溶解した水溶液及び既述の成型助剤を添加し、水分調整した後同様に成型加工した。その後乾燥し更に600℃で5時間焼成して担体アルミナを得た。この担体はランタンを含有しており、その含有量は1.2重量%であった。このランタンを含有する成型した担体1,000gに硝酸ニッケル6水和物576gを溶解した水溶液600ccを室温で含浸しその後乾燥した。乾燥後1,100℃にて24時間焼成を行ってNiとして10重量%、ランタンとして1.0重量%含有する触媒Bを調製した。
同様にしてランタンの含有量を変化させ2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、10重量%、15重量%のランタンを含有しNiを10重量%含む触媒C、D、E、F、G、Hを調製した。
【0047】
ハ. バリウムを添加したニッケルアルミネートを含有する触媒の調製
擬ベーマイト粉末2,000gに硝酸バリウム(和光純薬工業社製)35gを溶解した水溶液及び既述の成型助剤を添加し、水分調整した後同様に成型加工した。その後乾燥し更に600℃で5時間焼成して担体アルミナを得た。この担体はバリウムを含有しており、その含有量は1.2重量%であった。このバリウムを含有する担体1,000gに触媒Bと同様に硝酸ニッケル6水和物575gを溶解した水溶液600ccを含浸、乾燥、焼成を行いNiとして10重量%、バリウムとして1.0重量%含有する触媒Iを調製した。同様にしてバリウムの含有量を変化させ、Niが10重量%及びバリウムが2、3、4、5、10、15重量%の触媒J、K、L、M、N、Oを調製した。
なおバリウム含有量が5%以上の触媒M、N、Oの場合、硝酸バリウムの溶解度が低いため、ニーダーで加熱混合しながら複数回に分けて硝酸バリウム水溶液を添加した。
【0048】
ニ. 白金族元素を担持した触媒の調製
Niを10重量%含有する触媒Aをビーカーに入れ、このビーカーを加熱しかつ回転させながら、硝酸ロジウム水溶液(田中貴金属社製)をこのビーカー内に噴霧することにより(Spray法により)触媒Aに含浸させ、この触媒を乾燥した後、800℃で焼成して触媒Rを得た。この触媒Rは0.5重量%のRhを含有していた。
またランタンを3重量%含有し、Niを10重量%含有する触媒Dに同様にして硝酸ロジウム水溶液を含浸し、この触媒を乾燥した後、800℃で焼成して0.5重量%のRhを含有する触媒Sを得た。
【0049】
同様にバリウムを3重量%含有する触媒Kに硝酸ロジウム水溶液を同様にして含浸しこの触媒を乾燥した後、800℃で焼成して0.5重量%のRhを含有する触媒Tを得た。
【0050】
同様にして触媒Kに硝酸ルテニウム水溶液(田中貴金属社製)を含浸させ、その触媒を乾燥した後、窒素気流中800℃で焼成し0.5重量%のRuを含有する触媒Uを得た。
同様にして触媒Kにジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属社製)を含浸させ、その触媒を乾燥、空気中800℃で焼成し0.5重量%のPtを含有する触媒Vを得た。
触媒R、S、T、U、VについてEPMA(Electron Probe Micro Analysis)分析を行った結果、Rh、Ru、Ptはその90%以上が担体表面から0.4mm以内に存在した状態で当該表面を被覆するように担持されていた。
【0051】
擬ベーマイト粉末2,000gに、硝酸セリウム6水和物(和光純薬工業社製)167gを溶解した水溶液及び既述の成型助剤を添加し、水分調整した後触媒Bと同様に球状に成型加工した。その後乾燥し更に空気中600℃で5時間焼成して担体アルミナを得た。このCeを含有する成型担体1,000gに、触媒Bと同様に硝酸ニッケル6水和物593gを溶解した水溶液600ccを含浸させた。次いでこの担体を乾燥させた後、焼成を行い、Niとして10重量%、Ceとして3.0重量%添加されたニッケルアルミネートを含有する触媒Pを調製した。この触媒Pに対し触媒Rと同様にして硝酸ロジウム水溶液を含浸し、乾燥と焼成を行い0.5重量%のRhを担持した触媒Wを得た。
【0052】
擬ベーマイト粉末2,000gに、硝酸バリウム(和光純薬工業社製)68gを溶解した水溶液と、硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)56gを溶解した水溶液と、既述の成型助剤とを添加し、水分調整しながらニーダーで混練りした後、触媒Bと同様に球状に成型加工とその後の焼成を行った。このバリウムとランタンを含有する担体1,000gに触媒Bと同様に、硝酸ニッケル6水和物590gを溶解した水溶液600ccを含浸させた。次いでこの担体を同様に乾燥させた後、焼成を行い、Niとして10重量%、バリウムとして2.0重量%、ランタンとして1.0重量%添加されたニッケルアルミネートを含有する触媒Qを調製した。この触媒Qに触媒Rと同様にして硝酸ロジウム水溶液を含浸し、乾燥と焼成を行い0.5重量%のRhを担持した触媒Xを得た。
バリウムやランタンを添加した白金族元素を担持する前の各触媒の色は、スピネル型ニッケルアルミネート特有の色をしておりX線回折測定の結果、NiAl2O4とその他にNiAl10O16の回折線が確認された。
【0053】
Niを10重量%、バリウムを3重量%含有する触媒Kに対して、触媒Rと同様にして硝酸ロジウム水溶液とジニトロジアンミン白金硝酸溶液を所定濃度に混合した液をスプレーし、この触媒を乾燥した後に800℃で焼成して0.4重量%のRhと0.1重量%のPtとを含有する触媒Yを得た。
【0054】
各触媒の組成を表1〜表2に示す
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】

(触媒の表面積の比較)
ランタン又はバリウムを添加しなかった触媒AのBET比表面積は6.2(m/g)であった。またランタン添加触媒のBET比表面積が最も大きいのは63(m/g)、バリウム添加触媒のBET比表面積が最も大きいのは59(m/g)であった。各触媒のBET比表面積をSとし、ランタンを添加した触媒については、前記63(m2/g)をS0としたときの添加量とS/S0の関係を、またバリウムを添加した触媒については前記59(m2/g)をS0としたときの添加量とS/S0の関係を図3に示した。図3に示す如くニッケルアルミネートを含んだ担体にランタンとバリウムを添加すると1,100℃焼成処理後でも高い表面積を維持することが出来る。即ち、ランタンとバリウムとを添加することにより、触媒調製工程における高温焼成時のシンタリングを抑えられることが理解される。なおCeを添加した触媒PのBET比表面積は11(m/g)であった。
【0058】
(接触部分酸化(CPO)反応試験)
イ.試験の前提条件
内径14mmΦのハステロイ製反応管に触媒を1.4cc充填し接触部分酸化反応を行った。触媒層内温度測定のために外径3mmΦ、内径2mmΦの鞘管を挿入して温度を測定した。なお触媒の層長はほぼ1.0cmであった。反応管は所定温度で均一に加熱された砂流動浴中に設置した。
原料炭化水素は下記の仕様の混合ガスを使用した。
CH4:88.6vol% C2H6:7.2vol%
C3H8:3.0vol% i-C4H10:1.2vol%
上記組成の炭化水素と水素およびスチームの混合ガスに酸素を混合した原料ガスを反応器に供給した。なお原料ガスは自着火を防止するため外径6mmΦ、内径4mmΦのSUS製配管内での高線速度下で混合および予熱してから反応器に供給した。反応器出口ガスは冷却・気液分離した後にガス流量測定及びガスクロマトグラフィーによる組成分析により反応率及び選択率を求めた。各触媒とも反応は10時間行った。
【0059】
ロ.比較例
[比較例1]
触媒Aを反応管に充填し予備還元処理をせずに窒素気流中0.3MPaにて砂流動浴の温度を270℃に昇温させた。昇温後に酸素:炭化水素中の炭素モル比=0.6:1、スチーム:炭化水素中の炭素モル比=0.6:1、水素:炭化水素モル比=0.02:1の混合ガスを総ガス流量換算でGHSV(空間速度)=170,000hr-1にてCPO反応を開始した。この時の各流量は、次の通りである。
原料炭化水素ガス:97.4(NL/h) 酸素:68.3(NL/h)
H2O:55g/h H2:1.9(NL/h)
試験開始1時間後の触媒層温度分布を測定したところ発熱は全く観測されなかった。また出口ガスの組成から原料ガス中のC1〜C4炭化水素だけでなく酸素および水素も全く反応していないことが確認された。
水素対炭化水素モル比(水素/炭化水素)を0.08まで増量したがCPO反応は開始しなかった。更に砂流動浴温度を300℃まで上げて同じように水素対炭化水素モル比を0.02から0.08まで増量していったがCPO反応は起きなかった。
【0060】
[比較例2]
比較例1において触媒Aを充填後に温度300℃、圧力0.3MPa GHSV=10,000hr−1にて水素:窒素モル比=1:9の混合ガスを流通しながら24時間予備還元処理を行った。還元処理後に比較例1と同様に270℃でCPO反応試験を行った。
反応開始1時間後に触媒層内温度を測定したところ約2〜3℃の発熱が認められた。反応器出口組成を分析した結果、炭化水素は全く反応せず原料中の若干の水素が酸素と反応しているだけであった。また反応器の出口のガス中からはCOおよびCO2は検出されなかった。また比較例1と同様に砂流動浴温度を300℃に変更して水素量を増加していったがCPO反応の開始は観察されなかった。
【0061】
[比較例3]
触媒Dを充填した他は比較例1と同様にして270℃でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比を0.02から0.08まで増量して原料ガスを供給したが、殆ど発熱は観測されずCPO反応は認められなかった。砂流動浴温度を300℃に変更して水素対炭化水素モル比が0.02で再度試験を行った 1時間後に触媒層出口部で約10℃程度の発熱が認められたが、反応器出口からのガス中にはCOおよびCO2は検出されなかった。原料ガス中に含まれる水素(0.8vol%濃度)の一部が酸素との燃焼に消費されただけでCPO反応は起きていなかった。更に水素対炭化水素モル比を0.08まで増量して試験したがCPO反応の開始は認められなかった。
【0062】
[比較例4]
触媒Rを比較例1と同様に反応器に充填し、270℃にてCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比を0.02から0.08まで増量したところ、水素の燃焼による発熱が見られたが、CPO反応は開始しなかった。更に砂流動浴温度を300℃に昇温したところ水素対炭化水素モル比=0.06でCPO反応が開始した。反応開始確認後に、水素対炭化水素モル=0.02に調整し、270℃でCPO反応試験を行った。2時間後の触媒層内最高温度は1,016℃であった。出口ガス分析の結果、酸素転化率は100%であったが、未反応のC2H6、C3H8、i-C4H10が検出された。反応後の触媒の炭素量を測定したところ0.3重量%であり、炭素析出が認められた。
【0063】
[比較例5]
触媒Wを比較例1と同様に反応器に充填し270℃にて原料ガスを供給した。水素対炭化水素モル比を0.02から0.08まで増量させたが、CPO反応は開始しなかった。更に砂流動浴温度を300℃に昇温したところ、水素対炭化水素モル比が0.04でCPO反応が開始した。反応開始を確認後水素対炭化水素モル比=0.02に戻し270℃にてCPO反応を開始した。
2時間後の触媒層内最高温度は1,011℃であった。出口ガス分析の結果、酸素は100%反応していたが未反応のC2以上炭化水素が検出された。10時間反応後の触媒を分析したところ炭素含有率が0.5重量%であった。
【0064】
ハ.実施例
[実施例1]
触媒Sを比較例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。標準条件である水素対炭化水素モル比=0.02の条件でCPO反応が開始した。10時間後の触媒層内最高温度は1,097℃であり、酸素およびC2以上の炭化水素転化率は全て100%であった。反応後の触媒の炭素量を測定したところ0.02重量%であり、炭素質の生成は認められなかった。
【0065】
[実施例2]
触媒Tを実施例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比=0.02の標準条件でCPO反応が開始した。酸素およびC2以上炭化水素は100%反応で消費されており、出口ガス中に検出されなかった。反応開始10時間後の触媒層最高温度は1,053℃であり、反応中の出口ガス組成に変化は無かった。反応後の触媒中の炭素量は0.01重量%であった。
【0066】
[実施例3]
触媒Uを実施例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比=0.02の標準条件でCPO反応は開始した。出口ガス中に未反応酸素およびC2以上炭化水素は検出されず、いずれも100%転化率で反応中の劣化は認められなかった。反応開始10時間後の触媒層内最高温度は1,057℃であった。反応後の触媒の炭素量は0.02重量%であった。
【0067】
[実施例4]
触媒Vを実施例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比=0.02の標準条件でCPO反応が開始した。出口ガス中に未反応酸素およびC2以上炭化水素は検出されず100%転化率が得られた。10時間後の触媒層内最高温度は1,096℃であり、反応中の劣化は認められなかった。反応後の触媒の炭素量は0.03重量%であった。
[実施例5]
触媒Xを実施例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比=0.02の標準条件でCPO反応が開始した。出口ガス中に未反応酸素及びC2以上炭化水素は検出されず100%転化率が得られた。10時間後の触媒層内最高温度は1075℃で反応中の劣化は認められなかった。反応後の触媒の炭素量は0.02重量%であった。
【0068】
[実施例6]
触媒Yを実施例1と同様に反応器に充填し、270℃、0.3MPaの条件下でCPO反応試験を行った。水素対炭化水素モル比=0.02の標準条件でCPO反応が開始した。出口ガス中に未反応酸素及びC2以上炭化水素は検出されず100%転化率が得られた。10時間後の触媒層内最高温度は1063℃であり、反応中の劣化は認められなかった。反応後の触媒の炭素量は0.02重量%であった。
【0069】
以上の実施例1〜6のいずれにおいても、触媒層内最高温度の変化は観察されなかった。触媒層内最高温度部位は、触媒層長のほぼ中間に位置しており、試験中に移動する様子は観察されなかった。また試験後において触媒を観察したところ、炭素質の析出は見られなかった。更に出口のガス組成は触媒層出口温度における平衡組成であった。
【0070】
ニ.試験結果及び考察
酸素の転化率及び炭化水素の転化率などの結果を表3〜表6に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
表3は、CPO反応が開始した比較例4、5の結果である。表4は実施例1、2の結果であり、表5は実施例3、4の結果であり、表6は実施例5、6の結果である。各表の実施例及び比較例において、左欄は試験開始2時間後の結果であり、右欄は試験開始10時間後の結果である。
【0076】
白金族元素を添加しない触媒を用いた比較例1〜3では、CPO反応は起こらなかったが、白金族元素を用いた比較例4、5では、CPO反応が起こっている。しかしながら炭化水素の転化率が低く、特に反応性が高いC2以上炭化水素が未反応のまま反応器出口ガス中に検出されCPO反応活性が低いことを示している。これに対してバリウムあるいはランタンと白金族元素とを含む触媒を用いた実施例1〜6では、酸素及び炭化水素の転化率が100%あるいは平衡組成になっている。バリウムあるいはランタンを添加することにより高温焼成後においてもニッケルアルミネートを含む担体の表面積を大きく維持できるだけでなく活性種である白金族元素の高分散化が出来るためCPO反応に対して高い活性・選択性を維持できる。また高温・高スチーム分圧下の反応中における炭素質の生成を抑制する効果があることがわかる。
【0077】
更に各実施例1〜6において、触媒層内の最高温度は触媒層長のほぼ中間に位置しており、試験期間中に移動あるいは最高温度が上昇する様子が観察されなかった。このことはバリウムあるいはランタンを添加した本発明の触媒の活性はきわめて安定でありホットスポットが発生せず優れたCPO触媒であることを示している。
また実施例1及び2について、反応器の出口から出てきたガスの組成を調べた結果を表7に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
出口ガスの組成はほぼ触媒層の出口温度(940℃から980℃)に相当する平衡組成になっており、CPO反応が十分に行われたことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の触媒において担体中に白金族元素が表面近くに高濃度に存在している状態を示す説明図である。
【図2】本発明の合成ガスの製造方法に用いられる装置を示す概略図である。
【図3】担体中のアルミナに対するバリウムまたはランタンの添加量と担体の比表面積との関係を示す特性図である。
【図4】反応器内のガスの流れ方向における位置と触媒層の温度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0081】
1 担体
2 白金族元素
3 担体の表面
4 反応器
5 触媒層





【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン及び炭素数2以上の軽質炭化水素を含む原料炭化水素に少なくとも酸素及びスチームを添加して原料炭化水素を接触部分酸化し、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するときに用いられる炭化水素の接触部分酸化用の触媒において、
アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとバリウムとを添加して焼成することにより得られた担体と、
この担体に担持された白金族元素と、を含むことを特徴とする炭化水素の接
触部分酸化用の触媒。
【請求項2】
前記担体は、アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとバリウムとランタンとを添加して焼成することにより得られたことを特徴とする請求項1記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項3】
メタン及び炭素数2以上の軽質炭化水素を含む原料炭化水素に少なくとも酸素及びスチームを添加して原料炭化水素を接触部分酸化し、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するときに用いられる炭化水素の接触部分酸化用の触媒において、
アルミナまたはアルミナ前駆体に、ニッケルとランタンとを添加して焼成することにより得られた担体と、
この担体に担持された白金族元素と、を含むことを特徴とする炭化水素の接
触部分酸化用の触媒。
【請求項4】
担体を得るときの焼成温度は600℃以上とすることにより、ニッケルアルミネートを含む担体を得ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項5】
担体中におけるニッケルの含有割合が1〜35重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項6】
担体中におけるバリウム及び/またはランタンの合計含有割合が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項7】
白金族元素は、ロジウム、ルテニウム及び白金の中から選択された元素であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項8】
触媒中における白金族元素の含有割合が0.05〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項9】
白金族元素は、担体の表面から1mm以内の深さ領域に60%以上存在するように担持されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の炭化水素の接触部分酸化用の触媒。
【請求項10】
メタン及び炭素数2以上の軽質炭化水素を含む原料炭化水素に酸素及びスチームを添加してなる原料ガスであって、原料炭化水素に水素が含まれていることにより及び/または水素を添加することにより水素が含まれる原料ガスを、反応器内に供給する工程と、
前記反応器内に設けられた請求項1ないし9のいずれか一つに記載の触媒と前記原料ガスとを加熱状態で接触させて、原料炭化水素を接触部分酸化し、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する工程と、を含むことを特徴とする合成ガスの製造方法。
【請求項11】
原料ガス中における酸素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数が0.2〜0.8であり、スチームのモル数/炭化水素中の炭素のモル数が0.2〜0.8であることを特徴とする請求項10記載の合成ガスの製造方法。
【請求項12】
原料ガス中における水素のモル数/炭化水素のモル数が0.001〜0.1であることを特徴とする請求項10または11記載の合成ガスの製造方法。
【請求項13】
原料ガス中には、二酸化炭素のモル数/炭化水素中の炭素のモル数が0.01〜0.6で二酸化炭素ガスが含まれることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の合成ガスの製造方法。
【請求項14】
反応器出口からのガスから回収した二酸化炭素ガスをリサイクルすることを特徴とする請求項13記載の合成ガスの製造方法。
【請求項15】
触媒に対して前処理としての還元処理を行わずに、原料ガスを反応器内に供給し、接触部分酸化反応を開始することを特徴とする請求項10ないし14のいずれか一つに記載の合成ガスの製造方法。
【請求項16】
原料ガスを200℃〜500℃に予備加熱した後に、圧力が常圧〜8MPa、空塔速度が5,000hr−1〜500,000hr−1の条件で反応器内に供給し、断熱反応条件下で触媒と接触させることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか一つに記載の合成ガスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−69151(P2007−69151A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260633(P2005−260633)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】