説明

炭化水素を水蒸気改質するための方法及び触媒構造体

【課題】炭化水素を水蒸気改質する既存の方法に関する改良を提供する。
【解決手段】流れが、約0.1秒未満の滞留時間とし、より長い滞留時間における生成物生成に比べて、同じか又はより大きい生成物生成収率又は生成物生成量が得られる速度を有することを含み、もう一つの改良は、実質的に化学量論比である水蒸気対炭素の割合で運転して、担持触媒の活性を維持する点であり、炭化水素の水蒸気改質のための触媒構造として、スピネル担体を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を水蒸気改質するための方法及び触媒構造体である。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の水蒸気改質は、一酸化炭素の水素化(フィッシャー・トロプシュ合成)、メタノール合成及び水素製造用原料を製造するために通常用いられる。水蒸気改質は、水蒸気と炭化水素との混合物を、アルミナ担体とその上に触媒金属とを有する担持触媒に流し、約600℃〜約1000℃の温度で反応させ、少なくとも1種類の生成物を生成させることによって、商業的に行われる。研究は、スピネル担体上触媒金属を用いて行った。滞留時間は、典型的には秒のオーダーであり、水蒸気の炭素に対する割合は約2.5超である。水蒸気の炭素に対する割合が2.5未満であると、触媒活性は、一般的に、コークス生成が原因で、数時間から数日後に劣化するので、担持触媒は、再生させるか又は交換しなければならない。
【0003】
担持触媒の活性劣化速度は、過剰の水蒸気(水蒸気の炭素に対する割合2.5超)を用いることによって低下させた。しかしながら、過剰の水蒸気は、過剰の熱エネルギーを要するので、システム圧力が大きく低下する。水蒸気を少なくすると、炭化水素(1種又は複数種)から生じるコークスが原因となって、触媒活性の劣化が早まる。
【0004】
而して、より高い収率を提供し、且つより少ない水蒸気を用いて触媒の触媒活性を維持する、炭化水素を水蒸気改質する方法に関するニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭化水素を水蒸気改質する既存の方法に関する改良を提供する。前記改良は:流れが、約0.1秒未満の滞留時間を提供し、その結果として、より長い滞留時間における生成物生成に比べて、同じか又はより大きい生成物生成収率又は生成物生成量が得られる速度を有する、ことを含む。本発明のもう一つの改良は、実質的に化学量論比である水蒸気対炭素の割合で運転して、担持触媒の活性を維持する点である。
【0006】
また、本発明は、炭化水素の水蒸気改質のための触媒構造も含む。前記触媒構造は、(a)第一細孔表面領域と、少なくとも約0.1μmの第一細孔サイズとを有する第一多孔質構造;
(b)第二細孔表面領域と、該第一細孔サイズ未満の第二細孔サイズとを有するスピネルである多孔質界面層、該多孔質界面層は、該第一細孔表面領域上に配置されていて、4mm未満の厚さを有する;
(c)該第二細孔表面領域上に配置されたロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、VIb族のカーバイド、及びそれらの組合わせから成る群より選択される水蒸気改質触媒を含む。
【0007】
約0.1秒未満の滞留時間を有する水素の水蒸気改質法を提供することは本発明の目的である。
また、スピネルの多孔質界面層を有する触媒構造を提供することは本発明の目的である。
【0008】
本発明の主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、厳密に特許を請求される。しかしながら、それらの更なる利点と目的と共に、運転の機構及び方法の双方は、同じ参照記号は同じ要素を指している添付の図面に関する以下の説明によって最も良く理解されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】温度に対して転化率及び選択率を示したグラフである。
【図2】時間に対して転化率及び選択率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、水蒸気と炭化水素との混合物を、担体とその上に触媒金属とを有する担持触媒に流す工程を有する炭化水素を水蒸気改質するための方法を含む。前記混合物は、約600℃〜約1000℃の温度で反応させ、少なくとも1種類の生成物を生成させる。本発明の改良は、スピネル担体を用いること、約0.1秒未満の滞留時間を提供する速度で混合物を流すこと、及びより長い滞留時間において得られる生成物生成に比べて、同じか又はより大きい生成物生成が得られることである。
【0011】
また、既に説明した条件下で、触媒活性は、水蒸気の炭素に対する割合が実質的に化学量論比であるとき、劣化する。約0.1秒未満の滞留時間を提供する速度で混合物を流すことによって実現される本発明の別の改良は、水蒸気の炭素に対する割合が実質的に化学量論比であっても、コークス化によって劣化させずに、スピネル担持触媒の活性を6時間を超えて維持することである。水蒸気の炭素含量に対する割合の実質的な化学量論比は、約0.9超、且つ約2.5未満、好ましくは約0.98〜約2である。
【0012】
担持触媒は、非多孔質粒子の粉末、多孔質固体及びそれらの組合わせの形態であっても良い。
炭化水素としては、酸素化物(oxygenates)、アルカン、アルケン、アルキン、枝分れの異性体、芳香族炭化水素、飽和及び不飽和炭化水素、及び例えばガソリン、灯油、ディーゼル、JP−8のような燃料を含む前記炭化水素の組合わせが挙げられる。
【0013】
実施例1
実験を行って、本発明を実証した。担持触媒は、マグネシア(MgO)不動態化層と酸化ロジウム(Rh)とを有するガンマ・アルミナ(γ−Al)担体のスピネルであった。おおよその組成は、Rhが約15重量%、MgOが約5重量%、及びγ−Alが約80重量%であった。担持触媒は、(1)高表面積γ−Alを500℃で5時間焼成し;(2)硝酸マグネシウム溶液によるインシピエントウェットネス法を用いてMgOでγ−Alを含浸し;MgO改質γ−Al担体を作製し;(3)その改質担体を、110℃で4時間乾燥させ、続いて(4)900℃で2時間、第二焼成し;(5)その改質担体を、硝酸ロジウム溶液を用いるインシピエントウェットネス法によりRhで含浸し;(6)110℃で4時間、最終乾燥させ、(7)500℃で3時間、最終焼成して担持触媒の粉末を得ることによって調製した。
【0014】
マイクロリアクターを、内径4mm及び外径6.35mmを有する石英管から作った。担持触媒の粉末約0.2gを、充填ベッド配列で、マイクロリアクター中に配置した。
反応体は、水蒸気及びメタンであり、水蒸気の炭素に対する割合は約1であり、測定の不確かさの範囲内の化学量論比である。反応体は、650℃〜900℃の温度で反応器中に流した。
【0015】
水蒸気の炭素に対する割合が3の場合の結果は図1に示してあり、温度が上昇すると、転化率は約52%から95%となり、選択率は22%から70%となる。
900℃で、40時間、水蒸気の炭素に対する割合が1の場合の結果は図2に示してある。担持触媒の劣化は観察されなかった。試験後の電子顕微鏡による検査では、コークスの堆積は認められず、BET測定では、表面積の有意な損失は検出されなかった。
【0016】
結語
本発明の好ましい態様を示し、説明して来たが、本発明のより広い面において、本発明から逸脱せずに、多くの変更及び改良を成し得ることは、当業者には明らかである。而して、添付の請求の範囲は、発明の真の精神及び範囲内にあるすべてのそのような変更及び改良に及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気と炭化水素との混合物を、担体とその上に触媒金属とを有する担持触媒に流す工程、及び該混合物を、約600℃〜約1000℃の温度で反応させて少なくとも1種類の生成物を生成させる工程を有する炭化水素を水蒸気改質する方法であって;以下の改良:すなわち
該担体が、スピネル担体であり;及び
該流れが、約0.1秒未満の滞留時間を提供し、且つより長い滞留時間における生成と比較して同じか又はより多い生成が得られる速度を有することを含む前記方法。
【請求項2】
該混合物における水蒸気の炭素に対する割合が2.5未満であり、該改良が、該担持触媒の活性を6時間を超えて維持する請求項1記載の方法。
【請求項3】
該スピネル担体が、該担持触媒の酸性度を制御する請求項1記載の方法。
【請求項4】
実質的に化学量論比である水蒸気の炭素に対する割合を有する水蒸気と炭化水素との混合物を、担体とその上に触媒金属とを有する担持触媒に流す工程、及び該混合物を、約600℃〜約1000℃の温度で反応させて、少なくとも1種類の生成物を生成させ、該担持触媒の触媒活性を劣化させる工程を有する炭化水素を水蒸気改質する方法であって;以下の改良:すなわち
該担体が、スピネル担体であり;及び
該流れが、約0.1秒未満の滞留時間を提供し、且つ該水蒸気の炭素に対する割合を2.5未満にして該担持触媒の活性を維持する速度を有することを含む前記方法。
【請求項5】
該担体が、該担持触媒の酸性度を制御するスピネルである請求項4記載の方法。
【請求項6】
該水蒸気の炭素に対する割合が、約0.9を超え、且つ約2.5未満である請求項4記載の方法。
【請求項7】
該担持触媒が、多孔質担体上にある請求項4記載の方法。
【請求項8】
(a)第一細孔表面領域と、少なくとも約0.1μmの第一細孔サイズとを有する第一多孔質構造;
(b)該第一細孔表面領域上にある緩衝層;
(c)第二細孔表面領域と、該第一細孔サイズ未満の第二細孔サイズとを有するスピネルである多孔質界面層、該多孔質界面層は、該緩衝層の上に配置されていて、4mm未満の厚さを有する;
(d)該第二細孔表面領域の上に配置されたロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、IVb族のカーバイド、及びそれらの組合わせから成る群より選択される水蒸気改質触媒を含む、炭化水素を水蒸気改質するための触媒構造。
【請求項9】
該カーバイドを、炭化タングステン、炭化モリブデン及びそれらの組合せから成る群より選択する請求項8記載の触媒構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235286(P2011−235286A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−148419(P2011−148419)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2001−516845(P2001−516845)の分割
【原出願日】平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願人】(500037481)バッテル・メモリアル・インスティチュート (18)
【Fターム(参考)】