説明

炭化水素流の冷却及び/又は液化の方法及び装置

冷媒流(10)を冷却圧力にて供給し、異なる圧力レベルで動作する少なくとも3つの熱交換段階(12、14、16、18)に通す。炭化水素流(20)をこれらの熱交換段階のうち少なくとも2つに通し、冷却された炭化水素流(30)を得る。各熱交換段階(12、14、16、18)において冷媒流(10)の一部分を異なる圧力に膨張、蒸発させ、第1の蒸発圧力の第1蒸発冷媒流(40)と、第1の蒸発圧力より低い蒸発圧力の2以上の他の蒸発冷媒流(50、60、70)とを得る。第1蒸発冷媒流(40)を最大圧力圧縮段階(22)で圧縮して冷却圧力にて冷媒流(10)の少なくとも一部分を得、他の蒸発冷媒流(50、60、70)を2以上の並列低圧圧縮段階(24、26、28)で圧縮して2以上の部分圧縮冷媒流(50a、60a、70a)を得、部分圧縮冷媒流(50a、60a、70a)のすべてを最大圧力圧縮段階(22)に通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素流を冷却するための方法及び装置に関する。別の態様では、本発明は炭化水素流を液化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却及び/又は液化する炭化水素流の一般的な例は天然ガスである。
【0003】
天然ガス流を液化することで、液化天然ガス(LNG)を得る複数の方法が知られている。いくつかの理由により、天然ガス流を液化するのが望ましい。例として、液体は気体状態より占める体積が小さく、高圧で貯蔵する必要がないので、天然ガスを液体として貯蔵及び長距離輸送することが気体状態より容易にできる。
【0004】
圧縮冷媒を用いて天然ガスを液化できる。米国特許第6,962,060号には、第1及び第2冷媒コンプレッサー(その各々が第1及び第2段階を有する)と、第1及び第2コンプレッサーの第2段階からの流出物を結合して圧縮ガスを得る配管手段とを備えた、LNGの多段冷却用のコンプレッサーシステムが記載されている。しかしながら、第1及び第2コンプレッサーの2つの第2段階からの最大圧力の流出物を結合する必要性ゆえに、これら2つの流出物を正確に同じ圧力、流量等にして逆圧とサージを防止しなければならない。このことの欠点は、結合の問題を防ぐために2つの流出物間で許容された可変性が制限されることである。当該技術において知られているように、冷媒コンプレッサーは、例えば1つのコンプレッサー内でサージを一時的に防ぐために、一般に異なる吐出圧力にて動作するが、2つの流出物は高圧なので、コンプレッサーの上流及び/又は下流にて更に厄介な問題を生じさせる乱れを引き起こすことなく、異なる吐出圧力を吸収して下流の流量を維持することが非常に困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、米国特許第6,962,060号は、第1及び第2段階を有する第1及び第2コンプレッサーからなる1つの構成を示すのみである。他の冷却構成のための圧縮システムを提供する柔軟性はもっていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)冷媒流を冷却圧力にて供給する工程、
(b)異なる圧力レベルにて動作する3以上の熱交換工程に冷媒流を通す工程、
(c)工程(b)の熱交換工程のうち少なくとも2つに炭化水素流を通すことで、炭化水素流の温度を漸次下げて冷却された炭化水素流を得る工程、
(d)各熱交換工程にて冷媒流の一部分を異なる圧力に膨張、蒸発させ、第1蒸発圧力の第1蒸発冷媒流と第1蒸発圧力より低い蒸発圧力の2以上の他の蒸発冷媒流とを得る工程、
(e)単一圧縮器ケーシングの最大圧力圧縮段階により第1蒸発冷媒流を冷却圧力に圧縮し、工程(a)の冷却圧力にて冷媒流の少なくとも一部分を得る工程、
(f)2以上の並列低圧圧縮段階により前記他の蒸発冷媒流を圧縮し、2以上の部分圧縮冷媒流を得る工程、及び
(g)部分圧縮冷媒流のすべてを工程(e)の前記最大圧力圧縮段階に通す工程
を少なくとも含む天然ガスなどの炭化水素流の冷却方法を提供する。
【0007】
本発明は、炭化水素流を液化して液化炭化水素流を得る方法を更に提供し、該方法は上記記載の方法に従い又は下記記載の装置を使用して炭化水素流を冷却する段階を含む。
【0008】
本発明は、冷却圧力の冷媒流、
熱交換工程を異なる圧力レベルにて作動させるための減圧手段を備えた3以上の熱交換器、
冷媒流を3以上の熱交換器に通すための冷媒通過手段、
冷却された炭化水素流を得るために熱交換工程の少なくとも2つに炭化水素流を通すための炭化水素通過手段、
第1蒸発圧力の第1蒸発冷媒流、
第1蒸発圧力より低い蒸発圧力の2以上の他の蒸発流、
第1蒸発冷媒流を圧縮して冷却圧力にて冷媒流の少なくとも一部分を得るための、単一圧縮器ケーシング中の最大圧力圧縮段階、
前記他の蒸発冷媒流を圧縮して1以上の部分圧縮冷媒流を得るための2以上の並列低圧圧縮段階、及び
部分圧縮冷媒流のすべてを前記単一圧縮器ケーシング中の最大圧力圧縮段階に通すための通路
を少なくとも含む天然ガスなどの炭化水素流を冷却する装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、限定するものではなく単なる例として添付図面に関して本発明の態様を説明する。
【図1】本発明の1態様による炭化水素冷却方法の第1の構成である。
【図2】本発明の別の態様による炭化水素冷却方法の第2の構成である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明のため、1つの管路とその管路で運ばれる流れとに1つの参照番号を割り当てる。同じ参照番号は同種の構成要素を示す。
【0011】
本発明の態様では、天然ガスなどの炭化水素流を冷却する改善された方法が提供され、その冷媒圧縮器の構成において優れた柔軟性を有する。
【0012】
冷媒圧縮器のうち最大圧力圧縮段階から冷却圧力の冷媒の1つの圧縮器流出物を用いて炭化水素流を冷却する方法を提案する。換言すれば、最大圧力圧縮段階が1つの圧縮器ケーシング内に(場合によっては同じ圧縮器列の1以上の低圧圧縮段階と共に)配置される。
【0013】
この利点の1つは、冷却圧力の異なる圧縮器からの放出圧力流のバランスをとる必要がないことである。このことは、低圧圧縮段階又は工程からの流出物について許容可変性を高めるという更なる利点を有する。したがって、このような流出物の低圧力にてサージを防ぐ必要があるが、圧縮器の広い可変性を得ることができる。
【0014】
本発明の別の利点は、米国特許第6,962,060号に図示されているような従来技術の流れ構成から、本発明(例えば後で説明する添付図1に示された態様)により要求される新たな流れ構成を作り出すのに必要な追加のCAPEX又はOPEXがほとんどないか又はないことである。
【0015】
蒸発させ部分圧縮した流れと圧縮段階との間の相互連結の簡単な再構成により、圧縮器負荷要求に対して熱交換工程で冷媒流により与えられる冷却負荷カーブ全体を一致させる上で優れた柔軟性が達成できる。
【0016】
図1は炭化水素の冷却方法の第1の全体図1であり、一般に天然ガスなどの炭化水素流20の冷却を含む。
【0017】
炭化水素流は冷却される任意の適当なガス流でよいが、通常は天然ガス又は石油の貯蔵所から得られる天然ガス流である。その代わりとして、天然ガス流は、フィッシャー・トロプシュ法などの合成源も含めて別の供給源から得ることもできる。
【0018】
通常、天然ガス流は実質的にメタンから成る。好ましくは、炭化水素供給流は少なくとも50モル%のメタンを含み、さらに好ましくは少なくとも80モル%のメタンを含む。
【0019】
供給源に依存して、天然ガスは、芳香族炭化水素だけでなくエタン、プロパン、ブタン及びペンタンなどのメタンより重い炭化水素についても種々の量にて含有し得る。天然ガスの種類及び場所に依存してその組成が変わる。一般にメタンより重い炭化水素についても、異なる凍結温度又は液化温度を有することによってそれらがメタン液化プラントの一部を塞ぎ得るなどの幾つかの理由により、天然ガスから除去する必要がある。除去されたC2−4炭化水素は天然ガス液の供給源として使用できる。
【0020】
天然ガス流はまた、HO、N、CO、Hg、HSなどの非炭化水素や他の硫黄化合物などを含有し得る。
【0021】
必要なら、天然ガスを含有した炭化水素流を、炭化水素冷却プロセスの一部として又は別々に使用前に前処理してもよい。この前処理は、COやHSなどの非炭化水素の削減及び/若しくは除去、又は予冷、予備加圧などの他の工程を含み得る。これらの工程は当業者には周知であるので、その機構についてここでは更なる説明はしない。
【0022】
好ましくは、本発明で用いる炭化水素流には、その後に炭化水素流を液化するのに必要とされる少なくとも最小限の前処理を施す。天然ガスを液化するためのこのような要件は当該技術において公知である。
【0023】
本発明で用いる冷媒流は、プロパンや窒素などの単一成分から構成してよく、又は窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ペンタンなどからなる群から選択される2以上の成分の混合物から形成された混合冷媒としてもよい。
【0024】
本発明は2以上の冷却段階(各段階は1以上の工程、部分などを有する)を含む多段階冷却方法を含むか、又はその一部でもよい。例えば、各冷却段階は1〜5の熱交換工程を含んでもよい。第1冷却段階は、炭化水素流の温度を0℃未満に、通常は−20℃〜−160℃の範囲、更に通常は−20℃〜−70℃に下げ得る。このような第1冷却段階をしばしば「予冷」段階ともいう。
【0025】
一般に第2冷却段階は第1冷却段階とは分離している。すなわち、第2冷媒流の冷媒は、第1冷却段階の1以上の熱交換工程を通過してもよいが、第2冷却段階は、第2冷媒回路を循環する第2冷媒を用いる1以上の別々の熱交換工程を含む。このような第2冷却段階をしばしば「主冷却」段階ともいう。
【0026】
図面を参照すると、図1は、第1熱交換工程12、第2熱交換工程14、第3熱交換工程16及び第4熱交換工程18からなる4つの熱交換工程を直列に通過する炭化水素流20を示す。各熱交換工程12、14、16、18は、直列、並列又はその組み合わせにて動作する複数熱交換器と共に、1以上の熱交換器を含んでもよい。
【0027】
一般に、各熱交換工程12、14、16、18は、当該技術において公知のケトル型又はプレートアンドフィン型熱交換器などの単一の熱交換器を含む。一連のケトル型又はプレートアンドフィン型熱交換器の構成は当該技術において公知である。
【0028】
一般に、各熱交換工程12、14、16、18は炭化水素流20の温度を次第に下げていき、それらから冷却された炭化水素流30を得る。例えば、図1に示された熱交換工程12、14、16、18では、当該技術において公知の方法にて天然ガスなどの炭化水素流の温度を0℃未満に、通常は−20℃〜−70℃の範囲に下げることができる。
【0029】
上記構成の一例は、炭化水素冷却方法における第1の又は予冷の段階であり、これはLNGプラントなどの炭化水素液化プラントにおける1つの段階とし得る。
【0030】
図1はまた、冷却圧力にてプロパンなどの冷媒流10を供給する第1冷媒回路3を示し、炭化水素流20と共に通過させることにより熱交換工程12、14、16、18を冷却する。
【0031】
4つの熱交換工程12、14、16、18は異なる圧力レベルにて動作し、熱交換工程12、14、16、18の各々において、冷媒流10の一部分を膨張、蒸発させる。通常、この膨張は、膨張器、バルブなどの形の減圧手段(図示せず)に冷媒流を通すことにより行われる。通常、冷媒流の残りの部分は、第4熱交換工程18を通過する最後の残り部分が十分に膨張し蒸発するまで、次の熱交換工程に送られる。各熱交換工程12、14、16、18は異なる圧力にて動作しているので、各熱交換工程12、14、16、18からは異なる蒸発圧力にて蒸発冷媒流が得られる。
【0032】
一般に、第1熱交換工程12では、第1蒸発圧力にて、一般には冷媒流10の冷却圧力に最も近い「最大」圧力にて第1蒸発冷媒流40を得る。この最大蒸発圧力はまた、「高々圧」ともいい、第1蒸発冷媒流40は「高々圧蒸発冷媒流」40ともいう。
【0033】
第2熱交換工程14は最初の冷媒流10の第1の残部10aを受け入れ、第1の残部10aの一部分を膨張、蒸発させて、第1蒸発冷媒流40の第1蒸発圧力より低い圧力にて第2の又は他の冷媒流50を得る。第2蒸発流50は「高圧蒸発冷媒流」ともいう。
【0034】
第2熱交換工程14において膨張又は蒸発していない第1残部10aのうち第2残部10bを第3熱交換工程16に送り、冷媒流10の別の一部分を膨張、蒸発させて、第1蒸発圧力より低い蒸発圧力にて第3の又は他の蒸発冷媒流60を得る。この第3の又は他の蒸発冷媒流60はまた「中圧蒸発冷媒流」ともいう。
【0035】
冷媒流10の第3の残部10cを第4熱交換工程18に送り、この工程にて膨張させ蒸発させ、第1蒸発圧力より低い蒸発圧力にて第4の又は他の蒸発冷媒流70を得る。第4蒸発流70はまた「低圧蒸発冷媒流」70ともいう。
【0036】
熱交換工程12、14、16及び18の方法、設定及び構成や、冷媒流10の多段階膨張及び蒸発については、当該技術において公知であり、その例が米国特許第6,962,060号及び第6,637,238号に示されている。
【0037】
第2、第3及び第4熱交換工程14、16、18の各々における冷媒流10の残部10a、10b及び10cの一部又はすべてを膨張及び蒸発させることにより、炭化水素流20が上記工程を通過する際に炭化水素流20を更に又はより低温に冷却することができる。しかしながら、次に蒸発冷媒流40、50、60及び70の各々を、再圧縮して最初の冷媒流10の冷却圧力に戻さなければならない。
【0038】
図1に示されているように、第1蒸発冷媒流40を最大圧力圧縮段階22により圧縮して、冷却圧力にて冷媒流10の少なくとも一部分を得る。「最大圧力圧縮段階」なる用語は、最大入口圧力を有する圧縮段階を示す。第1蒸発冷媒流が高々圧蒸発冷媒流40である場合、最大圧力圧縮段階を高々圧圧縮段階と称することもできる。
【0039】
図1に示されているように、最大圧力圧縮段階22は、それと共に第3圧縮段階26も含んだ圧縮器列Aの一部である。ここで用いられている「圧縮器列」は、1つの圧縮段階、又は2つ以上の結合した圧縮段階を含んでもよい。一般に、圧縮器列において、より低圧の段階からの圧縮冷媒のすべてが、続けて次のより高い圧縮段階に送られるので、圧縮器列における最高レベルの圧縮段階から1つの流出物が存在する。
【0040】
圧縮器列を形成する2以上の圧縮器、圧縮段階又はそれらの結合の構成については、当該技術において周知である。一般に、圧縮列は、1つのケーシング中に1つの圧縮段階を含むか、又は1つのケーシング中に2、3又は4つの結合圧縮段階を含む。後者の場合、最低圧縮段階からの圧縮冷媒を、通常は1以上の中間入口からの1以上のより高い圧力の原料と組み合わせて、次のより高い各圧縮段階に通す。
【0041】
図1に示される圧縮器列Aは、第3蒸発冷媒流60を圧縮するための第3圧縮段階26を含む。第3圧縮段階26は、最初の冷媒流10の冷却圧力に戻すほど十分には第3蒸発冷媒流60を圧縮せず、「部分圧縮された冷媒流」60aを得る。
【0042】
次に、部分圧縮された冷媒流60aを第3圧縮段階26から最大圧力圧縮段階22に直接送り込む。最大圧力圧縮段階22は、単独で又は例えば圧縮器列Aの他の低圧段階と共に、1つのケーシング内に含まれる。
【0043】
第2の又は高い蒸発冷媒流50を、第2の又は高い圧力圧縮段階24に送る。第4の又は低い蒸発冷媒流70を、第4の又は低圧の圧縮段階28に送り、そこから部分圧縮された冷媒流70aを、第2蒸発冷媒流60と共に第2の又は高圧の圧縮段階24に直接送る。
【0044】
第2及び第4の圧縮段階24、28は、第1の圧縮列Aとは別の第2の圧縮列Bからなる。よって、低圧圧縮段階24、26、28のうち少なくとも2つが、2以上の圧縮器列A及びBにある。
【0045】
第2及び第4圧縮段階24及び28はまた、第3圧縮段階26と並列であるから、図1の全体構成1には2以上の並列の低圧圧縮段階が存在する。低圧圧縮段階が並列であるというのは、低圧圧縮段階24、26、28が直列ではない又は1つのケーシング内に並べられていない、且つ/又は他の蒸発冷媒流(図1中の第2、第3及び第4蒸発冷媒流50、60、70)が直列に圧縮されない、且つ/又は最低圧力の蒸発流(図1中の第4蒸発冷媒流70)がすべての圧縮段階を通過するわけではないという意味である。
【0046】
第2圧縮段階24からの流出物は、まだ部分圧縮冷媒流50aであり、第2圧縮器列Bの出口24aを通過させる。図1に示されているように、部分圧縮された冷媒流50aを、結合器34により、第1蒸発冷媒流40と結合し、第1圧縮器列Aの第1の又は高々圧圧縮段階22の入口32を通過させる。
【0047】
このようにして、一般に部分圧縮された冷媒流50a、60a及び70aのすべてを単一ケーシングの最大圧力圧縮段階22に通す。
【0048】
図1はまた、最大圧力圧縮段階(図1の第1圧縮段階22)に並列な当該又は各低圧圧縮段階(図1の第2及び第4圧縮段階24、28)の流出物(図1の線50a)がどのように最大圧力圧縮段階を通過するかの一例を示す。
【0049】
図2は、炭化水素冷却方法の第2の全体構成2を示し、一般に天然ガスなどの炭化水素流20の冷却を伴う。図1の第1の全体構成1について上記説明した方法と同様に、炭化水素流20を4つの熱交換工程12、14、16、18に通してもよい。
【0050】
第1の選択肢として、炭化水素流を冷媒流10と同じ熱交換工程12、14、16、18すべてに通さなくてもよい。図2の流れ20aは、第2、第3及び第4の熱交換工程14、16、18においてのみ冷却される炭化水素流を示す。第1熱交換工程12は、別の冷媒流や別の冷媒回路などの1以上の他の流れを冷却するのに使用できる。
【0051】
図2は図1に示された第1冷媒回路3に類似の第2冷媒回路4を示し、冷媒流10を第1熱交換工程12に通し、冷媒流10の後続の部分10a、10b、10cを後続の第2、第3及び第4熱交換工程14、16、18に通し、各熱交換工程12、14、16、18にて冷媒流10の一部分を膨張させ蒸発させ、第1の蒸発冷媒流40を得、同様に上述した第2、第3及び第4の低圧蒸発流50、60及び70を得る。
【0052】
第1蒸発流40を最大圧力圧縮段階22に通して圧縮し、最初の冷媒流10の一部分を冷却圧力にて得る。
【0053】
図2に示された第2の全体構成2において、最大圧力圧縮段階22は第3圧縮器列Cの一部であり、第3圧縮器列Cはそれと共に第2及び第4低圧圧縮段階24、28も含む。第2及び第4圧縮段階24及び28は、第3圧縮段階26と並列である。よって、少なくとも2つの圧縮器列C及びDには低圧圧縮段階24、26、28のうち少なくとも2つが存在する。
【0054】
第4の蒸発流70を第4圧縮段階28に送り、そこから部分圧縮冷媒流70aを、第2蒸発流50と共に第2圧縮段階24に直接送る。次に第2圧縮段階24から部分圧縮冷媒流50aを最大圧力段階22に直接送る。
【0055】
一方、第4圧縮器列Dを構成する並列の第3圧縮段階26に、第3蒸発冷媒流60を送り込む。よって、第4圧縮器列Dは、第3圧縮器列Cの圧縮段階22、24、28から分離されたただ1つの圧縮段階26を含む。
【0056】
第3圧縮段階26から部分圧縮冷媒流60aの流出物を、第2圧縮器列Dの出口26aから送り出し、結合器36により第1蒸発流40と結合し、最大圧力段階22に通す。
【0057】
図1及び2は、異なる蒸発圧力にて少なくとも3つの蒸発冷媒流を受け取るよう構成される本発明の柔軟性についての2例を示し、これらの流れは、少なくとも2つの別個の圧縮器列における3つの低圧圧縮段階24、26及び28により種々の構成又はシステムで再圧縮する。
【0058】
表1は、本発明による4つの異なる熱交換工程からの蒸発冷媒流を再圧縮するための4つの圧縮段階についてのいくつかの構成例を記載するが、単に参照しやすくするために図1及び2で用いられている圧縮段階の符号を用いている。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、最大圧縮器まで冷媒流を含まない各列の流出物を、どのようにして最大圧力段階22に直接転送するか、又はどのようにして最大圧力段階22と同じ列における先行の圧縮段階に送り、これらすべての冷媒を最大圧力段階22に通すかについて、確認できる。
【0061】
表1中の例1及び2は、添付の図1及び2に示される。
【0062】
表1の例4及び5は、圧縮器列Hとしての圧縮段階26から、又は圧縮器列Jとしての圧縮段階28から放出される部分圧縮冷媒流を、最大圧力圧縮段階22に直接送るのではなく、まず第2圧縮段階24に送ることができることを示す。第2圧縮段階24は最大圧力圧縮段階22と同じ圧縮器列G、Iの一部であるから、一般に部分圧縮冷媒流をさらに最大圧力圧縮段階22に通す。
【0063】
また、表1に示される例8は、3つの圧縮器列O、P及びQを含み、そのうち圧縮器列P及びQは夫々ただ1つの圧縮段階24及び26を含む。しかしながら、低圧圧縮段階24及び26の各々からの部分圧縮流出物は、一般に最大圧縮段階22に通すことができる。
【0064】
表1は4つの圧縮段階を含む例に関するものである。本発明はこれに限定されるものではなく、3又は5個の圧縮段階を含む構成も本発明の範囲に入る。当業者は異なる圧縮器列の圧縮段階の様々な組合せを見つけることができ、すべての部分圧縮された流れが共通して最大圧力圧縮段階を通過する限り、1以上の低圧圧縮段階からの流出物を、1以上の高圧圧縮段階の入口に送り込むことができる。
【0065】
要約すれば、3個以上の冷媒圧縮段階により3以上の蒸発冷媒流を圧縮する方法及び圧縮器の構成が開示されており、
(i)第1蒸発冷媒流(40)を共通の最大圧力圧縮段階(22)で圧縮し、十分に圧縮された冷媒流(10)の少なくとも一部分を冷媒冷却圧力にて得;
(ii)他の蒸発冷媒流(50、60、70)を少なくとも2つの並列低圧圧縮段階(24、26、28)で圧縮し、1以上の部分圧縮冷媒流(50a、60a、70a)を得;
(iii)一般に部分圧縮冷媒流(50a、60a、70a)のすべてを共通の最大圧力圧縮段階(22)に通す。
【0066】
圧縮段階の異なる配置又は構成により、冷媒流の再圧縮について異なる特徴が得られる。このようにして、本発明は、付随の圧縮器パワー要件、又は冷却負荷要件、又はそれらの組合わせに対し、蒸発冷媒流に必要な圧縮をより良く一致させて配置又は構成を更に効率的にすることについて、柔軟性が得られる。
【0067】
当業者は特許請求の範囲から逸脱することなく多くの方法で本発明を変更できることを容易に理解するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】米国特許第6,962,060号
【特許文献2】米国特許第6,637,238号
【符号の説明】
【0069】
1…全体構成
3…第1冷媒回路
10…冷媒流
12…第1熱交換工程
14…第2熱交換工程
16…第3熱交換工程
18…第4熱交換工程
20…炭化水素流
22…最大圧力圧縮段階
24…第2(高圧)圧縮段階
26…第3圧縮段階
28…第4(低圧)圧縮段階
30…冷却された炭化水素流
A…第1圧縮器列
B…第2圧縮器列


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)冷媒流を冷却圧力にて供給する工程、
(b)異なる圧力レベルにて動作する3以上の熱交換工程に冷媒流を通す工程、
(c)工程(b)の熱交換工程のうち少なくとも2つに炭化水素流を通すことで、炭化水素流の温度を漸次下げて冷却された炭化水素流を得る工程、
(d)各熱交換工程にて冷媒流の一部分を異なる圧力に膨張、蒸発させ、第1蒸発圧力の第1蒸発冷媒流と第1蒸発圧力より低い蒸発圧力の2以上の他の蒸発冷媒流とを得る工程、
(e)単一圧縮器ケーシングの最大圧力圧縮段階により第1蒸発冷媒流を冷却圧力に圧縮し、工程(a)の冷却圧力にて冷媒流の少なくとも一部分を得る工程、
(f)2以上の並列低圧圧縮段階により前記他の蒸発冷媒流を圧縮し、2以上の部分圧縮冷媒流を得る工程、及び
(g)部分圧縮冷媒流のすべてを工程(e)の前記最大圧力圧縮段階に通す工程
を少なくとも含む炭化水素流の冷却方法。
【請求項2】
工程(b)の熱交換工程のうち少なくとも2つに炭化水素流を通す前記工程が、工程(b)の熱交換工程の少なくとも3つに炭化水素流を通すことからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4又は5の熱交換工程を含み、冷媒流を膨張、蒸発させることにより、4又は5の異なる圧力にてそれぞれ4又は5の蒸発冷媒流を得る請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
冷媒流と炭化水素流を同じ熱交換工程に通す請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)の熱交換工程の少なくとも2つにおいて冷媒流の一部分を蒸発させる工程が、前記熱交換工程を通る炭化水素流により熱交換することからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
冷媒流がプロパンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の熱交換工程にて冷媒流の第1の部分を膨張、蒸発させて、第1蒸発圧力である高々圧の蒸発冷媒流を得、高々圧蒸発冷媒流が第1蒸発冷媒流であり、
第2の熱交換工程にて冷媒流の第2の部分を膨張、蒸発させて、前記高々圧より低い高圧を有する高圧蒸発冷媒流を得、
第3の熱交換工程にて冷媒流の第3の部分を膨張、蒸発させて、前記高圧より低い中圧を有する中圧蒸発冷媒流を得、
第4の熱交換工程にて冷媒流の第4の部分を膨張、蒸発させて、前記中圧より低い低圧を有する低圧蒸発冷媒流を得、
工程(e)の前記最大圧力圧縮段階である高々圧圧縮段階により高々圧蒸発冷媒流を圧縮し、工程(a)の冷却圧力にて冷媒流を得、
低圧圧縮段階により低圧蒸発冷媒流を圧縮し、
中圧圧縮段階により中圧蒸発冷媒流を圧縮し、
高圧圧縮段階により高圧蒸発冷媒流を圧縮し、
中圧圧縮段階と高々圧圧縮段階が第1圧縮器列に含まれ、
低圧圧縮段階と高圧圧縮段階が、第1圧縮器列とは少なくとも部分的に分離した第2圧縮器列に含まれる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第2圧縮器列が部分圧縮された冷媒流を供給するための出口を有し、前記部分圧縮された冷媒流を、第1圧縮器列における高々圧圧縮段階の入口に送る請求項7に記載の方法。
【請求項9】
低圧圧縮段階の少なくとも2つが、2以上の圧縮器列中にある請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素流が好ましくは本質的に天然ガスからなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
炭化水素流を液化して液化炭化水素流を得る方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法による炭化水素流の冷却を含む前記方法。
【請求項12】
冷却圧力の冷媒流、
熱交換工程を異なる圧力レベルにて作動させるための減圧手段を備えた3以上の熱交換器、
冷媒流を3以上の熱交換器に通すための冷媒通過手段、
炭化水素流の温度を漸次下げて冷却された炭化水素流を得るために熱交換工程の少なくとも2つに炭化水素流を通すための炭化水素通過手段、
第1蒸発圧力の第1蒸発冷媒流、
第1蒸発圧力より低い蒸発圧力の2以上の他の蒸発流、
第1蒸発冷媒流を圧縮して冷却圧力にて冷媒流の少なくとも一部分を得るための、単一圧縮器ケーシング中の最大圧力圧縮段階、
前記他の蒸発冷媒流を圧縮して1以上の部分圧縮冷媒流を得るための2以上の並列低圧圧縮段階、及び
部分圧縮冷媒流のすべてを前記単一圧縮器ケーシング中の最大圧力圧縮段階に通すための通路
を少なくとも含む天然ガスなどの炭化水素流を冷却する装置。
【請求項13】
低圧圧縮段階の少なくとも2つが、少なくとも部分的に相互に分離した2以上の圧縮器列中にある請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−506893(P2011−506893A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536425(P2010−536425)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066623
【国際公開番号】WO2009/071538
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】