説明

炭水化物を含有した成形材料混合物

この発明は、金属加工用の鋳型を製造するための成形材料混合物と鋳型の製造方法とその方法によって製造される鋳型とその鋳型の適用に関する。鋳型を製造するために耐火性の成形基礎材料と水ガラスに基づいた結合剤を使用する。その結合剤に、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属を添加するが、その際特に好適には合成の非晶質二酸化珪素を使用する。成形材料混合物はさらに別の主要な成分として炭水化物を含む。炭水化物の添加によって鋳型の機械的強度と鋳造品の表面品質を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動性かつ耐火性の成形基礎材料と水ガラスベースの結合剤と二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属を少なくとも含んでなる、金属加工用の鋳型を製造するための成形材料混合物に関する。本発明はさらに、前記の成形材料混合物を使用した金属加工用の鋳型の製造方法、ならびにその方法によって製造される鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材を製造するための鋳型は主に2つの実施形態で製造される。第1のグループはいわゆる中子あるいは型部材を形成するものである。それらから鋳型が構成され、それは実質的に製造される鋳造品の雌型を形成する。第2のグループは中空部、いわゆるフィーダを形成するものであり、それらが補償リザーバとして機能する。それらは液体状の金属を収容するが、その際に適宜な措置によってその金属が雌型を形成する鋳型内に存在している金属よりもよりも長く液体相に留まるように処理される。雌型内で金属が硬化すると、金属の硬化の際に生じる容積収縮を補償するために補償リザーバから液体金属が追加流入する。
【0003】
鋳型は例えば珪砂等の耐火性の材料からなり、その粒子は鋳型の充分な機械的強度を確保するために鋳型の塑形後に適宜な結合剤によって結合される。すなわち鋳型の製造のために耐火性の適宜な結合剤で処理した成形基礎材料を使用する。その耐火性の成形基礎材料は適宜な中空体内に充填してそこで圧縮し得るよう流動性の形態であれば好適である。結合剤によって成形基礎材料の粒子間に固定的な結合力が形成され、それによって鋳型が所要の機械的安定性を保持する。
【0004】
鋳型は多様な要件を満たす必要がある。まず鋳造工程に際して金属溶湯を1つあるいは複数の鋳型(部材)から形成された中空部内に収容するために当然充分な安定性と耐熱性を有する必要がある。硬化工程が開始した後は中空部の壁に沿って形成される凝固金属層によって鋳型の機械的安定性が保持される。ここで金属から放出された熱の影響によって、機械的強度すなわち耐火性材料の個々の粒子間の結合力を喪失するような方式で鋳型の材料が分解される必要がある。このことは例えば熱作用によって結合剤が分解されることによって達成される。冷却後に硬化した鋳造品を振動させ、その際に理想的には鋳型の材料が再び金型の中空部から流出し得るような微細な砂に分解される。
【0005】
鋳型を形成するために有機あるいは無機のいずれの結合剤を使用することもでき、その硬化はいずれも低温あるいは高温の方式で実施することができる。その際低温方式とは実質的に鋳型を加熱せずに室温で実施する方式を呼ぶ。その場合大抵硬化は化学反応によって実施され、例えば硬化する成形体を介してガスあるいは触媒を通流させることによって開始される。高温方式においては、例えば結合剤中に含有される溶媒を排出させるかあるいは結合剤を例えば架橋結合によって硬化させる化学反応を開始するために成形材料混合物を塑形した後に充分に高い温度に加熱する。
【0006】
今日において鋳型を製造するために硬化反応がガス状の触媒によって加速されるかあるいはガス状の硬化剤による反応によって硬化される有機結合剤が頻繁に使用されている。この方法は“コールドボックス”法と呼ばれている。
【0007】
有機結合剤を使用する鋳型の製造の一例がいわゆるアシュランドコールドボックス法である。これは二成分システムである。第1の成分はポリオール、大抵はフェノール樹脂の溶液からなる。第2の成分はポリイソシアネートの溶液からなる。米国特許第3409579号A明細書によれば、塑形の後に成形基礎材料と結合剤の混合物を介してガス状の第三アミンを通流させることによってポリウレタン結合剤の両方の成分を反応させる。ポリウレタン結合剤の硬化反応は重付加反応、すなわち水等の副生成物の分離を伴わない反応に係る。このコールドボックス法のその他の利点には良好な生産性、鋳型の寸法精度、さらに鋳型の強度、成形基礎材料と結合剤からなる混合物の処理時間等の技術的特性が良好であることが含まれる。
【0008】
高温硬化性の有機方式には、フェノールおよびフラン樹脂に基づいたホットボックス法、フラン樹脂に基づいたウォームボックス法、フェノールノボラック樹脂に基づいたクローニング法が属する。ホットボックス法およびウォームボックス法においては液状の樹脂が高められた温度において初めて能動化する潜在性の硬化剤と共に成形材料混合物に加工される。クローニング法においては珪砂、クロム鉱砂、ジルコニウム砂等の成形基礎材料を約100ないし160℃の温度で(その温度で液体状の)フェノールノボラック樹脂によって被覆する。後の硬化のための作用物質として、ヘキサメチレンテトラミンが添加される。上述の高温硬化方式においては塑形および硬化が300℃の温度まで加熱可能な器具内で実施される。
【0009】
硬化メカニズムに関わらず全ての有機システムは金属溶湯を鋳型に充填する際に熱分解されその際に例えばベンゾール、トルエン、キシロール、フェノール、ホルムアルデヒド、およびより高次元で一部は識別不能なクラック生成物を放出し得る点において共通である。多様な措置によってそれらの放出を最少化することは可能であるが、完全に防止することは有機結合剤において不可能である。また、例えばレゾール−CO法において使用される結合剤のように一定割合で有機化合物を含んでいる無機−有機ハイブリッドシステムにおいても、前記のような金属の注入に際して有害な放出物が発生する。
【0010】
鋳造工程中の分解生成物の放出を防止するためには、無機材料に基づいているかあるいは最大でも極めて微量な有機化合物しか含んでいない結合剤を使用する必要がある。その種の結合剤システムは既に長く知られている。ガスの導入によって硬化することができる結合剤システムが開発されている。その種のシステムは例えば英国特許第782205号明細書に記載されており、それによればCOの導入によって硬化させることができるアルカリ性水ガラスが結合剤として使用される。独国特許第19925167号明細書にはアルカリ珪酸塩を結合剤として含んでいる発熱性のフィーダ材料が記載されている。さらに、室温中で自己硬化する結合剤システムが開発されている。その種のシステムは燐酸および酸化金属に基づいており、例えば米国特許第5582232号明細書に記載されている。さらに、例えば加熱器具内において高温硬化する無機結合剤システムも知られている。その種の高温硬化性の結合剤システムは例えば米国特許第5474606号明細書によって知られており、それによればアルカリ性水ガラスと珪酸アルミニウムからなる結合剤システムが記載されている。
【0011】
しかしながら、無機結合剤は有機結合剤に対して難点も有している。例えば水ガラスを結合剤として製造した鋳型は比較的低い強度を有する。このことは特に鋳型を器具から取り出す際に鋳型が破損し易いため問題となる。この時点における良好な強度は複雑かつ薄壁状の成形部材の製造ならびにその取扱いのために極めて重要である。強度が低い理由は第1に鋳型が結合剤からの残留水分をなお含有しているためである。高温で閉鎖された器具内における長い滞留時間によっても水蒸気を充分に放出し得ないため限定的にしか改善されない。可能な限り完全な鋳型の乾燥を達成するために、国際公開第98/06522号パンフレットにより、塑形後に安定形状でかつ移動可能な外殻部が形成されるまで成形材料混合物を温度調節された中子型内に滞留させることが提案されている。中子型を開放した後型部材を取り出してマイクロ波の作用によって完全に乾燥させる。しかしながらこの追加的な乾燥は手間を要し鋳型の製造時間を延長させるとともに、エネルギーコストを増加させるばかりでなく製造プロセス全体の費用を上昇させる。
【0012】
既知の無機結合剤のさらに別の難点は、それによって製造された鋳型の高湿度に対しての低い耐久性である。従って有機結合剤の場合に一般的である成形部材の長期間の保管が必ずしも可能でなくなる。
【0013】
水ガラスを結合剤として製造された鋳型は金属鋳造後にしばしば破砕が困難となる。特に水ガラスを二酸化炭素によって硬化させる場合高温の金属の影響で結合剤がガラス化する危険性があり、そのため鋳型が極めて硬質になり多大な手間をかけないと鋳造品から取り外すことができない。そのため高温の金属の影響で燃焼しその際の細孔形成によって鋳造後の鋳型の破砕が容易になるような有機成分を成形材料混合物に添加することが試みられている。
【0014】
独国特許第2059538号明細書には、珪酸ナトリウムを結合剤として含んだ中子砂および鋳物砂混合物が記載されている。金属鋳造後の改善された鋳型の破砕を達成するために、混合物にグルコースシロップを添加する。鋳型に加工される成形砂混合物は二酸化炭素ガスの導入によって硬化する。その成形砂混合物は1ないし3重量%のグルコースシロップと2ないし7重量%のアルカリ珪酸塩と充分な量の中子砂あるいは鋳物砂を含んでいる。実施例中においてグルコースシロップを含有する型部材および中子がサッカローズあるいは純粋なブドウ糖を含有する型部材および中子に比べて大幅に改善された破砕特性を有することが示されている。
【0015】
欧州特許出願公開第0150745号A2明細書には、特に珪酸ナトリウム等のアルカリ金属珪酸塩と多価のアルコールとその他の添加剤から形成され添加剤として改質された炭水化物、非吸湿性の澱粉、酸化金属、および充填剤が含まれている、鋳物砂を硬化するための結合剤混合物が記載されている。改質された炭水化物として6ないし15%の還元能力を有する非吸湿性の澱粉水解物を使用し、それを粉末として添加することができる。非吸湿性の澱粉および特に酸化鉄等の酸化金属は砂の量に対して0.25ないし1重量%の分量で添加される。場合によって結合剤混合物に粉末状の潤滑剤あるいは油を添加することができる。結合剤混合物はCOあるいは化学触媒を使用することによって硬化させることが好適である。
【0016】
英国特許第847477号明細書には、2.0ないし3.22のSiO/MO比率を有するアルカリ金属珪酸塩とポリヒドロキシ化合物を含んだ、鋳型製造用の結合剤化合物が記載されている。鋳型を製造するためにこの結合剤を耐火性の成形基礎材料と混合し、型部材の形成後に二酸化炭素のガス噴射によって硬化させる。ポリヒドロキシ化合物として例えば単糖類、二糖類、三糖類、四糖類が使用され、その際それらの化合物に対して高い純度は要求されない。
【0017】
英国特許第902199号明細書には、穀物から生成された接着剤100:砂糖2ないし20:ハロゲン酸あるいはハロゲン酸の塩2ないし20の比率からなる混合物を含んだ結合剤化合物を耐火性の成形基礎材料と共に含んでいる、鋳型を製造するため成形材料混合物が記載されている。それに適した塩は例えば塩化アンモニウムである。前記の接着剤は澱粉を部分的に加水分解することによって生成される。鋳型を製造するために成形材料混合物をまず適宜な形状に塑形し、少なくとも175ないし180℃の温度に加熱する。
【0018】
英国特許第1240877号明細書には、アルカリ金属珪酸塩と並んでそのアルカリ金属珪酸塩と親和性の酸化剤ならびに溶液に対して9ないし40重量%の容易に酸化する有機材料を含んでなる水分含有性の結合剤を耐火性の成形基礎材料と共に含んでいる、鋳型を製造するための成形材料混合物が記載されている。酸化剤として例えばアルカリ金属の硝酸塩、クロム酸塩、ニクロム酸塩、過マンガン酸塩、あるいは塩素酸塩を使用することができる。容易に酸化する有機材料としては例えば澱粉、デキストリン、セルロース、炭化水素、ポリエーテルあるいはポリスチロール等の合成ポリマー、ならびにタール等の炭化水素を使用することができる。この成形材料混合物は加熱あるいは二酸化炭素のガス噴射によって硬化させることができる。
【0019】
米国特許第4162238号明細書には、耐火性の成形基礎材料と並んで特に水ガラス等のアルカリ金属珪酸塩に基づいた結合剤を含んでいる、鋳型を製造するため成形材料混合物が記載されている。結合剤の溶液に対して2ないし75%に相当する割合で非晶質の二酸化珪素が結合剤に添加される。その非晶質の二酸化珪素は約2ないし500nmの範囲の粒子大を有する。さらに結合剤は3.5ないし10のSiO/MO比率を有し、そこでMはアルカリ金属を示している。
【0020】
前述した鋳造に際して発生する有害な放出物の問題のため複雑な形状を有する鋳型の製造に際しても有機結合剤を無機結合剤によって代替することが試みられている。しかしながら複雑な鋳造形状であっても製造直後の器具からの取り出し時ならびに金属鋳造中のいずれにおいても薄壁状の部位も含めて鋳型の充分な強度が保証されなければならない。鋳型の強度が貯蔵中に著しく劣化することは許容されない。すなわち鋳型は湿度に対して充分な安定性を有する必要がある。さらに鋳造品が製造後に過大な表面の後処理は必要としないことが好適である。鋳造品の後処理は多大な時間、人員、および材料を必要とし、従って製造に際して重要なコスト要因となる。従って鋳型からの取り出し直後に既に鋳造品が高い表面品質を有することが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第3409579号A明細書
【特許文献2】英国特許第782205号明細書
【特許文献3】独国特許第19925167号明細書
【特許文献4】米国特許第5582232号明細書
【特許文献5】米国特許第5474606号明細書
【特許文献6】国際公開第98/06522号パンフレット
【特許文献7】独国特許第2059538号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0150745号A2明細書
【特許文献9】英国特許第847477号明細書
【特許文献10】英国特許第902199号明細書
【特許文献11】英国特許第1240877号明細書
【特許文献12】米国特許第4162238号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って本発明の課題は、耐火性の成形基礎材料と水ガラスベースの結合剤システムを少なくとも含む成形材料混合物であって、さらにその成形材料混合物が二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属を含んでなり、例えば薄壁状の部位も含み得る複雑な形状の鋳型の製造を可能にするとともに金属鋳造後に得られた鋳造品が既に高い表面品質を有することが可能になるような、金属加工用の鋳型を製造するための成形材料混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の課題は本発明に従って請求項1の特徴を有する成形材料混合物によって解決される。本発明に係る成形材料混合物の好適な追加構成が従属請求項の対象である。
【0024】
意外なことに、成形材料混合物に炭水化物を添加することによって製造直後および長期間の貯蔵後のいずれにおいても高い強度を有する無機結合剤に基づいた鋳型の製造が可能になることが判明した。さらに金属鋳造後に極めて高い表面品質を有する鋳造品が得られ、従って鋳型の取り外し後に極少ない鋳造品の表面の後処理で充分となる。このことは鋳造品の製造コストを著しく低減することができるため大きな利点である。アクリル樹脂、ポリスチロール、ポリビニルエステル、あるいはポリアクリル化合物等のその他の有機添加剤に比べて鋳造に際して著しく少ない発煙が観察され、それによって作業所における操作員への負荷を大幅に低減することができる。
【0025】
本発明に係る金属加工用の鋳型を製造するための成形材料混合物は少なくとも:
− 耐火性の成形基礎材料と;
− 水ガラスに基づいた結合剤システムと;
− 二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属、
を含む。
【0026】
本発明によれば成形材料混合物が追加的な成分として炭水化物を含む。
【0027】
耐火性の成形基礎材料としては鋳型の製造において一般的な材料を使用することができる。耐火性の成形基礎材料は金属鋳造に際して一般的な全温度において充分な形状安定性を有する必要がある。従って好適な耐火性の成形基礎材料は高い融点を有することを特徴とする。その耐火性の成形基礎材料の融点は700℃超、特に800℃超、さらに好適には900℃超、特に好適には1000℃超となる。耐火性の成形基礎材料として例えば珪砂、あるいはジルコニウム砂が適している。さらに耐火粘土繊維等の繊維状の耐火性成形基礎材料も適している。その他の好適な耐火性の成形基礎材料は例えばカンラン石、クロム鉱砂、バーミキュライトである。
【0028】
さらに、耐火性の成形基礎材料として例えば珪酸アルミニウム中空球体(いわゆる微小球)、ガラスビーズ、ガラス顆粒、または“セラビーズ(登録商標)”あるいは“カルボアクキャスト(登録商標)”の商品名で知られている球状のセラミック成形基礎材料等の人工の耐火性成形基礎材料を使用することもできる。これらの人工の耐火性成形基礎材料は合成によって製造されるかあるいは例えば工業プロセスの廃棄物として発生するものである。球状のセラミック成形基礎材料は、例えばムライト、コランダム、β−クリストバライト等の鉱物を異なった割合で含有する。それらは主要な成分として酸化アルミニウムおよび二酸化珪素を含む。典型的な組成において例えばAlとSiOが略同じ割合で含まれる。加えてTiO、Fe等のその他の成分を10%未満の割合で含むことができる。球状の耐火性成形基礎材料の直径は1000μm未満、特に600μm未満であれば好適である。例えばムライト(xAl・ySiO、x=2ないし3、y=1ないし2;理想的な化学式は:AlSiO)等の合成によって製造された耐火性成形基礎材料も好適である。人工の成形基礎材料は天然の素材に基づくものではなく、例えば珪酸アルミニウム微細中空球体、ガラスビーズ、または球状のセラミック成形基礎材料を製造する際と同様に特殊な塑形処理を施すこともできる。珪酸アルミニウム微細中空球体は例えば化石燃料あるいはその他の可燃性材料の燃焼に際して発生し、燃焼に際して発生する灰から分離される。人工の耐火性成形基礎材料からなる微細中空球体は低い比重を特徴とする。これはその人工の耐火性成形基礎材料の気体が含まれた細孔を有する構造に起因するものである。その細孔は開孔あるいは閉鎖孔であり得る。閉鎖孔状の人工の耐火性成形基礎材料を使用することが好適である。開孔状の人工の耐火性成形基礎材料を使用する場合は水ガラスに基づいた結合剤の一部が細孔内に吸収され結合作用を発揮できなくなる。
【0029】
一実施形態によれば人工の成形基礎材料としてガラス材料が使用される。それは特にガラス球体あるいはガラス顆粒として使用される。ガラスとしては汎用のガラスを使用することができ、その際高い融点を有するガラスが好適である。例えばカレットから製造されるガラスビーズおよび/またはガラス顆粒が好適である。硼酸ガラスも適している。その種のガラスの組成の例を次の表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
しかしながら、表に示されたガラスの他にも上記の化合物の含有率が上記以外の範囲にあるその他のガラスを使用することもできる。また、上記の酸化物と並んでその他の元素あるいはその酸化物を含んだ特殊ガラスを使用することもできる。
【0032】
ガラス球体の直径は1ないし1000μm、特に5ないし500μm、特に好適には10ないし400μmである。
【0033】
耐火性の成形基礎材料の一部のみをガラス材料によって形成することが好適である。耐火性の成形基礎材料中のガラス材料の比率は35重量%未満、特に25重量%未満、特に好適には15重量%未満に選定する。
【0034】
アルミニウムの鋳造試験によって、特にガラスビーズ、ガラス顆粒あるいはガラス微小球等の人工の成形基礎材料を使用する場合純粋な珪砂を使用する場合に比べてより少ない鋳物砂が鋳造後に金属表面に付着して残留することが判明した。従ってその種のガラス材料に基づいた人工の成形基礎材料の使用によって平滑な鋳造表面の形成が可能になり、その結果手間がかかる噴射仕上げによる後処理が不要になるか、少なくとも大幅に省略可能になる。
【0035】
前述した平滑な鋳造表面を形成する効果を達成するために、耐火性の成形基礎材料中のガラス材料の比率を0.5重量%超、特に1重量%超、さらに好適には1.5重量%超、特に好適には2重量%超に選定する。
【0036】
耐火性の成形基礎材料の全量を人工の耐火性成形基礎材料から形成することは不要である。耐火性の成形基礎材料の全量に対する人工の成形基礎材料の比率は少なくとも約3重量%、特に少なくとも5重量%、さらに好適には少なくとも10重量%、さらに好適には少なくとも約15重量%、特に好適には少なくとも約20重量%である。耐火性の成形基礎材料は流動性の形態を有することが好適であり、それによって本発明に係る成形材料混合物を一般的なコアシュータ内で加工することができる。
【0037】
コスト上の理由から人工の耐火性成形基礎材料の比率は低く抑制される。耐火性の成形基礎材料中の人工の耐火性成形基礎材料の比率は80重量%未満、特に75重量%未満、特に好適には65重量%未満である。
【0038】
別の成分として本発明に係る成形材料混合物は水ガラスに基づいた結合剤を含む。水ガラスとしては従来から結合剤として成形材料混合物中に使用されている一般的な水ガラスを使用することができる。その水ガラスは溶解されたナトリウム珪酸あるいはカリウム珪酸塩を含み、ガラス状のカリウムあるいはナトリウム珪酸塩を水中に溶解することによって製造することができる。水ガラスは1.6ないし4.0、特に2.0ないし3.5の範囲のSiO/MO比率を有することが好適であり、ここでMはナトリウムおよび/またはカリウムを示す。水ガラスは30ないし60重量%の範囲の固形成分含有率を有することが好適である。その固形成分含有率は水ガラス中に含まれているSiOおよびMOの分量に対するものである。
【0039】
さらに、成形材料混合物は二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属を含む。その粒子状酸化金属の平均一次粒子大は0.10μmないし1μmとなる。しかしながら一次粒子の凝集のため酸化金属の粒子大は300μm未満、特に200μm未満、特に好適には100μm未満となる。その粒子大は5ないし90μm、特に10ないし80μm、特に好適には15ないし50μmの範囲となる。粒子大は例えば篩分析によって判定することができる。63μmのメッシュ幅の篩状の篩残留分が10重量%未満、特に8重量%未満であれば極めて好適である。
【0040】
粒子状酸化金属として二酸化珪素を使用することが極めて好適であり、その際合成製造された非晶質の二酸化珪素が極めて好適である。
【0041】
粒子状酸化金属として沈殿珪酸および/または発熱性珪酸を使用すれば好適である。沈殿珪酸は水性のアルカリ珪酸塩溶液と鉱酸との反応によって得られる。その際に発生する沈殿物を分離、乾燥、および破砕する。発熱性の珪酸としては高温においてガス相からの凝結によって得られる珪酸が理解される。発熱性の珪酸の製造は、例えば四塩化珪素の燃焼加水分解によって、またはアーク炉内において珪砂をコークスあるいは無煙炭によって一酸化珪素ガスに還元しその後二酸化珪素に酸化させることによって実施することができる。アーク炉法によって製造された発熱性の珪酸はさらに炭素を含むことが可能である。沈殿珪酸および発熱性の珪酸も本発明に係る成形材料混合物に対して好適である。それらの珪酸を以後“合成非晶質二酸化珪素”と呼称する。
【0042】
発明者等は、強アルカリの水ガラスが合成製造された非晶質の二酸化珪素の表面上に存在するシラノール基と反応することができ、水の蒸発に際して二酸化珪素と固形になった水ガラスとの間に強固な結合が形成されると想定している。
【0043】
その他の主要な成分として本発明に係る成形材料混合物は炭水化物を含む。その際に単糖類あるいは二糖類、ならびにより高い分子量のオリゴ糖あるいはポリサッカリドのいずれを使用することも可能である。炭水化物は単一の化合物あるいは異なった炭水化物の混合物のいずれとしても使用することができる。使用される炭水化物の純度に関しては重大な要件は求められない。炭水化物が乾燥重量に対して80重量%超、特に90重量%超、特に好適には95重量%超の純度を有していれば充分である。炭水化物の単糖類単位は任意に連鎖することができる。炭水化物は好適には線形構造を有し、例えばα−あるいはβ−グリコシド1,4結合を有する。しかしながら炭水化物は全体的あるいは部分的に1,6結合であることも可能であり、例えば最大6%まで1,6−結合を有するアミロペクチンでもあり得る。
【0044】
炭水化物の分量は比較的低く抑制することが好適である。勿論、成形材料混合物内の有機成分の比率を可能な限り低く抑制しそれによってその有機成分の熱分解によって発生する発煙を可能な限り低減することも試みられている。従って比較的少量の炭水化物が成形材料混合物に付加され、それによって既に著しく改善された鋳造前の鋳型の強度ならびに顕著に改善された鋳造品の表面品質が観察される。耐火性の成形基礎材料に対する炭水化物の比率は0.01重量%超、特に0.02重量%超、特に好適には0.05重量%超に選定される。高い炭水化物の比率によっても鋳型の強度あるいは鋳造品の表面品質のさらなる改善の効果は得られない。耐火性の成形基礎材料に対する炭水化物の分量は5重量%未満、特に2.5重量%未満、さらに好適には0.5重量%未満、特に好適には0.4重量%未満に選定される。技術的な適用において0.1重量%を超える領域の低い炭水化物の比率であれば顕著な効果が得られる。技術的な適用において成形材料混合物中の炭水化物の比率は耐火性の成形基礎材料に対して0.1ないし0.5重量%、特に0.2ないし0.4重量%の範囲であれば好適である。炭水化物の比率が0.5重量%を超えても顕著な性質の改善はもはや達成されず、従って0.5重量%を超える量の炭水化物は不要である。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、炭水化物が非誘導形態で使用される。その種の炭水化物は、例えば穀物あるいはジャガイモ等の植物等の天然原料から低コストに獲得することができる。水中での溶解性等を改善するために、その種の天然原料から得られる炭水化物の分子量を例えば化学あるいは酵素による加水分解によって低下させることができる。しかしながら、炭素と酸素と水素のみから形成されている非誘導炭水化物と並んで、例えばヒドロキシ基の一部あるいは全部がアルキル基等によってエーテル化されている誘導炭水化物を使用することもできる。好適な誘導炭水化物は例えばエチルセルロースあるいはカルボキシメチルセルロースである。
【0046】
勿論、例えば単糖類あるいは二糖類等の既に低分子の炭化水素を使用することができる。その例はグルコースあるいはサッカローズである。しかしながら、特にオリゴ糖あるいはポリサッカリドを使用する場合に好適な効果が観察される。従って炭水化物としてオリゴ糖あるいはポリサッカリドを使用すれば極めて好適である。
【0047】
その際、オリゴ糖あるいはポリサッカリドが1000ないし100000g/モル、特に2000ないし30000g/モルの範囲の分子量を有していれば好適である。特に炭水化物が5000ないし20000g/モルの範囲の分子量を有してれば鋳型の強度の著しい増加が観察され、従って製造時に鋳型を容易に成形型から取り出し搬送することが可能になる。さらに長期間の貯蔵に際しても鋳型が極めて良好な強度を示し、従って鋳造品の大量生産のために必要となる数日間にわたった湿気中での鋳型の貯蔵も問題なく可能である。さらに、例えば鋳型への粘着剤の塗布に際して不可避な水分の影響に対しての耐久性も極めて良好である。
【0048】
ポリサッカリドはグルコース単位から形成することが好適であり、その際それはα−あるいはβ−グリコシド1,4結合することが特に好適である。しかしながら、グルコースと並んでガラクトースあるいはフルクトース等のその他の単糖類を含んだ炭水化物化合物を本発明に係る添加剤として使用することもできる。好適な炭水化物の例はラクトース(α−あるいはβ−1,4−結合のガラクトースおよびグルコースからなる二糖類)およびサッカローズ(α−グルコースおよびβ−フルクトースからなる二糖類)である。
【0049】
炭水化物はセルロース、澱粉、デキストリン、ならびにそれらの炭水化物の誘導体からなる一群から選択すれば極めて好適である。好適な誘導体は例えば全体的あるいは部分的にアルキル基によってエーテル化された誘導体である。しかしながら、例えば無機あるいは有機酸によるエステル化等のその他の誘導も実施可能である。
【0050】
特殊な炭水化物、特に好適には澱粉、デキストリン(澱粉の加水分解生成物)およびそれらの誘導体を成形材料混合物の添加剤として使用すれば、鋳型の安定性ならびに鋳造品の表面のさらなる最適化を達成することができる。澱粉としてはジャガイモ澱粉、コーンスターチ、米澱粉、豆澱粉、バナナ澱粉、トチの実澱粉あるいは小麦澱粉等の天然に存在する澱粉を使用することができる。しかしながら、例えばα化(Pregelatinised)澱粉、弱沸騰性(Thin−boiling)澱粉、酸化澱粉、クエン酸澱粉、アセテート澱粉、澱粉エーテル、澱粉エステル、あるいは澱粉ホスフェート等の改質された澱粉を使用することも可能である。澱粉の選択に制限はない。澱粉は例えば低粘性、中粘性、あるいは高粘性、陽イオン性あるいは陰イオン性、低温水溶性あるいは高温水溶性のいずれとすることもできる。デキストリンはジャガイモデキストリン、コーンデキストリン、黄色デキストリン、白色デキストリン、硼酸デキストリン、シクロデキストリン、マルトデキストリンからなる一群の中から選択すれば極めて好適である。
【0051】
特に極めて薄壁状の部位を有する鋳型の製造に際して成形材料混合物が追加的に燐含有化合物を含んでいれば好適である。その際有機および無機のいずれの燐化合物を使用することも可能である。さらに金属鋳造に際して有害な副作用が発生しないように燐が特に酸化数Vの燐含有化合物中に存在すれば好適である。燐含有化合物の添加によって鋳型の安定性をさらに向上させることができる。このことは、金属鋳造に際して金属溶湯が傾斜した面に当接しそこで高い金属静力学圧力のため高い浸食作用が発生するかあるいは特に薄壁状の鋳型の部位の変形が生じる危険性がある場合に非常に重要な意味を有する。
【0052】
その際燐含有化合物は燐酸塩あるいは燐酸化物の形態で存在することが好適である。その際燐酸塩はアルカリあるいはアルカリ土類金属燐酸塩として存在することができ、中でもアルカリ金属燐酸塩、特にナトリウム塩が好適である。勿論、燐酸アンモニウムあるいはその他の金属イオンの燐酸塩を使用することもできる。しかしながら、前述の好適であるとされたアルカリあるいはアルカリ土類金属燐酸塩は容易に取得でき、任意の分量で低コストに入手可能である。多価、特に三価の金属イオンの燐酸塩は好ましくない。その種の多価、特に三価の金属イオンの燐酸塩を使用すると成形材料混合物の加工時間が短縮されることが観察された。
【0053】
成形材料混合物の燐含有混合物が燐酸化物の形態で使用される場合、その燐酸化物が五酸化燐の形態で存在することが好適である。しかしながら、三酸化燐あるいは四酸化燐を使用することも可能である。
【0054】
別の実施形態によれば、成形材料混合物に燐含有化合物をフルオロ燐酸の塩の形態で添加することができる。その際モノフルオロ燐酸の塩とすれば極めて好適である。ナトリウム塩が特に好適である。
【0055】
好適な一実施形態によれば、成形材料混合物に燐含有化合物として有機燐酸塩が添加される。その際アルキル燐酸塩あるいはアリール燐酸塩が好適である。その際アルキル基は1ないし10個の炭素原子を含むことが好適であり、直鎖あるいは枝分れ鎖のいずれでもあり得る。アリール基は6ないし18個の炭素原子を含むことが好適であり、そのアリール基はアルキル基によって置換することもできる。グルコース、セルロース、あるいは澱粉等のモノマーあるいはポリマー炭水化物から誘導される燐酸塩化合物が特に好適である。添加剤としての燐含有有機成分の使用は2つの観点において好適である。第1に燐成分によって所要の鋳型の耐熱性を達成することができ、他方有機成分によって鋳造品の表面品質に良好な影響が与えられる。
【0056】
燐酸塩としてはオルト燐酸塩ならびにポリ燐酸塩、ピロ燐酸塩あるいはメタ燐酸塩のいずれを使用することもできる。燐酸塩は例えば適宜な酸を例えばNaOH等のアルカリ金属塩基または場合によってアルカリ土類金属塩基等の適宜な塩基で中和することによって製造することができ、その際必ずしも燐酸塩の全ての負の電荷が金属イオンによって中和される必要はない。その際金属燐酸塩および燐酸水素金属ならびに二水素燐酸金属のいずれを使用することもでき、例えばNaPO、NaHPO、およびNaHPOを使用することができる。同様に無水の燐酸塩および水化燐酸塩のいずれを使用することもできる。燐酸塩は結晶質あるいは非晶質のいずれの形態で成形材料混合物に添加することができる。
【0057】
ポリ燐酸塩としては特に2個以上の燐原子を含んだ直線状燐酸塩が理解され、その際燐原子はいずれも酸素架橋を介して結合されている。ポリ燐酸塩は脱水しながらオルト燐酸塩イオンを凝縮することによって生成され、従っていずれも角部で結合されているPO四面体の直鎖が得られる。ポリ燐酸塩は(O(PO(n+2)−の一般式を有し、その際nは鎖長に相当する。ポリ燐酸塩は数百個までのPO四面体を含むことができる。しかしながら、短い鎖長を有するポリ燐酸塩を使用することが好適である。nは2ないし100、特に5ないし50の数値を有することが好適である。しかしながらより高レベルに凝縮されたポリ燐酸塩を使用することもでき、すなわちPO四面体が2個より多い角部を介して互いに結合され従って二次元あるいは三次元の重合を示すポリ燐酸塩を使用することができる。
【0058】
メタ燐酸塩としてはいずれも角部で結合されたPO四面体から形成された循環構造が理解される。メタ燐酸塩は((POn−の一般式を有し、その際nは少なくとも3となる。nは3ないし10の数値を有することが好適である。
【0059】
単一の燐酸塩ならびに異なった燐酸塩および/または酸化燐の組み合わせのいずれを使用することも可能である。
【0060】
耐火性の成形基礎材料に対する燐含有化合物の好適な比率は0.05ないし1.0重量%である。0.05重量%未満の比率の場合は鋳型の形状安定性に対する顕著な影響は確認されない。燐酸塩の含有率が1.0重量%を超えると鋳型の耐熱強度が低下する。燐含有化合物の比率は0.10ないし0.5重量%に選定することが好適である。燐含有化合物はPとして計算して0.5ないし90重量%の燐を含むことが好適である。無機燐化合物が使用される場合、それがPとして計算して40ないし90重量%、特に50ないし80重量%の燐を含むことが好適である。有機燐化合物を使用する場合、それがPとして計算して0.5ないし30重量%、特に1ないし20重量%の燐を含むことが好適である。
【0061】
燐含有化合物は勿論固形あるいは溶解された形態のいずれにおいて成形材料混合物に添加することも可能である。燐含有化合物は固形材料として成形材料混合物に添加することが好適である。燐含有化合物を溶解された形態で添加する場合、水を溶媒とすることが好適である。
【0062】
鋳型を製造するための成形材料混合物への燐含有化合物の添加の別の利点として、型部材が金属鋳造後に極めて良好な破砕性を示すことが判明した。このことは、特にアルミニウム等の軽金属である低い鋳造温度を必要とする金属に該当する。しかしながら、鉄鋳造に際しても改善された鋳型の破砕が確認された。鉄鋳造に際しては1200℃超の高い温度が鋳型に作用し、従って鋳型のガラス化ならびに破砕性の劣化の危険性が高まる。
【0063】
発明者等によって実施された鋳型の安定性と破砕性の実験において、酸化鉄も可能な添加剤として考慮された。成形材料混合物への酸化鉄の添加に際しても金属鋳造に際しての鋳型の安定性の改善が確認される。従って酸化鉄の添加によって薄壁状の鋳型の部位の安定性の改善も可能である。しかしながら酸化鉄の添加は、燐含有化合物の添加に際して観察される金属鋳造、特に鉄鋳造後の鋳型の破砕性の改善には影響を及ぼさない。
【0064】
本発明に係る成形材料混合物は少なくとも上述の各成分の強力な混合からなる。その際耐火性の成形基礎材料の粒子が結合剤層によって被覆されることが好適である。結合剤中に含まれている水分(結合剤の重量に対して40ないし70重量%)の蒸発によって耐火性の成形基礎材料の粒子間に固定的な結合を形成することができる。
【0065】
結合剤、すなわち水ガラスと粒子状の酸化金属、特に合成非晶質二酸化珪素ならびに炭水化物が成形材料混合物内に20重量%未満、特に1ないし15重量%の範囲の比率で含まれていれば好適である。その結合剤の比率は結合剤の固形成分に関するものである。例えば珪砂等の中実の耐火性成形基礎材料を使用する場合、結合剤が10重量%未満、特に8重量%未満、特に好適には5重量%未満の比率で含まれることが好適である。例えば前述した微細中空球体等の低い密度を有する耐火性の成形基礎材料を使用する場合、結合剤の比率が適宜に上昇する。
【0066】
粒子状の酸化金属、特に合成非晶質二酸化珪素は、結合剤の総重量に対して2ないし80重量%、特に3ないし60重量%、特に好適には4ないし50重量%の比率で含まれる。
【0067】
水ガラスと粒子状の酸化金属、特に合成非晶質二酸化珪素の比率は広範囲に変動することができる。そのことによって、非晶質二酸化珪素を含まない水ガラス結合剤に比べて、鋳型の最終強度、すなわち冷却後の鋳型の強度に著しい影響を与えることなく、鋳型の初期強度、すなわち高温の器具(成形型)から取り出した直後の強度と湿度耐久性を改善する利点が得られる。このことは特に軽金属鋳造に際して極めて有効である。一方において、鋳型を製造後に問題なく搬送しまた他の鋳型と重ね合わせることができるように高い初期強度が望まれる。他方では、鋳造後の結合剤分解の難易性を防止するために硬化後の最終強度が過度に高いものであってはならず、すなわち鋳造後に成形材料混合物を問題なく鋳物の中空部から取り出し可能であることが好適である。
【0068】
本発明の一実施形態によれば本発明に係る成形材料混合物内に含まれている成形基礎材料が少なくとも一定比率の微細中空球体を含む。微細中空球体の直径は通常5ないし500μmの範囲、特に10ないし350μmの範囲となり、外殻の厚みは通常微細中空球体の直径の5ないし15%の範囲となる。その微細中空球体は極めて低い比重を有し、従って微細中空球体を使用して製造された鋳型は低い重量を有する。特に微細中空球体の隔離作用が好適である。従って微細中空球体は、特に高い隔離作用を有する必要がある場合に鋳型の製造に使用される。その種の鋳型は例えば冒頭に述べた補償リザーバとして機能し金属溶湯を収容するフィーダであり、その際に金属は空洞部内に充填された金属が硬化するまでの間液状に保持される必要がある。微細中空球体を含んだ鋳型の別の適用分野は、例えば完成した鋳物の特に薄壁状の部位に相当する鋳型の部位である。微細中空球体の隔離効果によって薄壁状の部位内において金属が拙速に硬化して鋳型内の流路を閉塞させることが無いことが保証される。
【0069】
微細中空球体を使用する場合、その微細中空球体の低い密度のため結合剤を20重量%未満、特に10ないし18重量%の範囲の比率で使用することが好適である。その数値は結合剤の固形成分に関するものである。
【0070】
微細中空球体は金属鋳造に際して拙速に軟化してその形状を喪失することが無いように、充分な温度耐久性を有することが好適である。微細中空球体は珪酸アルミニウムから形成することが好適である。その珪酸アルミニウム微細中空球体は20重量%超の酸化アルミニウム含有率を有することが好適であるが、さらに40重量%超の含有率を有することも可能である。その種の微細中空球体は例えば、独国ノーダーシュテット市のオメガ・ミネラルズ・ジャーマニー社から、約28ないし33%の酸化アルミニウム含有率を有するオメガスフェレス(登録商標)SG、約35ないし39%の酸化アルミニウム含有率を有するオメガスフェレス(登録商標)WSG、約43%の酸化アルミニウム含有率を有するEスフェレス(登録商標)の商品名で市販されている。類似の製品がPQコーポレーション(USA)から“エクステンドスフェレス(登録商標)”の商品名で入手可能である。
【0071】
別の実施形態によれば、耐火性の成形基礎材料としてガラスから形成された微細中空球体が使用される。
【0072】
好適な一実施形態によれば、微細中空球体は硼珪酸ガラスから形成される。その際硼珪酸ガラスはBとして計算して3重量%超の硼素含有率を有する。微細中空球体の比率は成形材料混合物に対して20重量%未満に選定することが好適である。硼珪酸ガラス微細中空球体を使用する場合より低い比率を選択することが好適である。その比率は、5重量%未満、特に3重量%未満、特に好適には0.01ないし2重量%の範囲であることが好適である。
【0073】
前述したように本発明に係る成形材料混合物は好適な実施形態において少なくとも一定割合でガラス顆粒および/またはガラスビーズを耐火性の成形基礎材料として含む。
【0074】
また、成形材料混合物を例えば発熱性のフィーダとして好適な発熱性の成形材料混合物として形成することも可能である。そのため成形材料混合物が酸化性の金属と適宜な酸化剤を含む。成形材料混合物の全質量に対して酸化性の金属は15ないし35重量%の比率を成すことが好適である。酸化剤は成形材料混合物に対して20ないし30重量%の比率で添加することが好適である。好適な酸化性金属は例えばアルミニウムあるいはマグネシウムである。好適な酸化剤は例えば酸化鉄あるいは硝酸カリウムである。
【0075】
水を含んだ結合剤は有機溶媒に基づいた結合剤と比べて成形材料混合物の流動性が低下する。成形材料混合物の流動性は粒子状の酸化金属の添加によってさらに低下し得る。すなわち、従って通路部および複数の方向転換部を有する成形工具への充填が困難になる。その結果として鋳型が充分に密度の高くない部位を有し、それによっても鋳造に際して鋳造不良が発生する危険性がある。好適な実施形態によれば、本発明に係る成形材料混合物が一定割合で潤滑剤を含み、好適には黒鉛、MoS、タルク、および/またはパイロフィライト等のフレーク状の潤滑剤を含む。意外なことに、その種の潤滑剤、特に黒鉛の添加によって薄壁状の部位を有する複雑な型部材を形成することもでき、それによって鋳型が常に均等に高い密度および強度を備え、その結果鋳造に際して実質的に全く鋳造不良が観察されない。添加されるフレーク状の潤滑剤、特に黒鉛の分量は耐火性の成形基礎材料に対して0.05重量%ないし1.0重量%であることが好適である。
【0076】
本発明に係る成形材料混合物は前述した成分と並んでその他の添加剤を含むことができる。例えば成形型からの鋳型の取り出しを容易にする内部分離剤を添加することができる。好適な内部分離剤は例えばステアリン酸カルシウム、脂肪酸エステル、ワックス、天然樹脂、あるいは特殊なアルキド樹脂である。さらに、シランを本発明に係る成形材料混合物に添加することもできる。
【0077】
従って好適な一実施形態において本発明に係る成形材料混合物は40ないし180℃、特に50ないし175℃の範囲の融点を有し従って室温においては固体である有機添加剤を含む。有機添加剤としてはその分子構造が主に炭素原子から形成されている化合物、例えば有機ポリマー等が理解される。有機添加剤の添加によって鋳造品の表面品質をさらに改善することができる。有機添加剤の作用メカニズムは解明されていない。しかしながら、その理論に限定されるものではないが、発明者等は少なくとも有機添加剤の一部が鋳造工程中に燃焼してその際に金属溶湯と鋳型の壁部を形成している成形基礎材料の間に薄いガスクッションが生じ、それによって金属溶湯と成形基礎材料との間の反応が防止されると想定している。さらに、発明者等は有機添加剤の一部が鋳造の際に一般的である還元環境下においていわゆる光沢カーボンの薄い層が形成され、それも同様に金属と成形基礎材料の間の反応を防止すると想定している。さらに別の好適な効果として、有機添加剤の添加によって硬化後の鋳型の強度の改善を達成することができる。
【0078】
有機添加剤は耐火性の成形材料に対して0.01ないし1.5重量%、特に0.05ないし1.3重量%、特に好適には0.1ないし1.0重量%の分量で添加される。金属鋳造中の強度の発煙を防止するために、有機添加剤の比率は0.5重量%未満に選定することが好適である。
【0079】
意外なことに、極めて多様な有機添加剤を使用して鋳造品の表面品質の改善を達成し得ることが判明した。好適な有機添加剤は、例えばノボラック等のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、例えばビスフェノール−A−エポキシ樹脂、ビスフェノール−F−エポキシ樹脂あるいはエポキシ化されたノボラック等のエポキシ樹脂、例えばポリエチレングリコールあるいはポリプロピレングリコール等のポリオール、例えばポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレンあるいはプロピレン等のオレフィンからのコポリマー、ビニルアセテート等のその他のコモノマー、例えばポリアミド−6、ポリアミド−12あるいはポリアミド−6,6等のポリアミド、例えばバルサム樹脂等の天然樹脂、例えばステアリン酸等の脂肪酸、例えばパルミチン酸セチル等の脂肪酸エステル、例えばエチレンジアミンビスステアラミド等の脂肪酸アミド、例えば一価ないし三価の金属のステアリン酸エステルあるいはオレイン酸エステル等の金属石鹸である。有機添加剤は単一原料として含まれるか、あるいは異なった有機添加剤の組み合わせとして含まれることのいずれも可能である。
【0080】
別の好適な実施形態によれば、本発明に係る成形材料混合物は少なくとも一種類のシランを一定割合で含む。好適なシランは例えばアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ヒドロキシシラン、メタクリルシラン、ウレイドシラン、およびポリシロキサンである。好適なシランの例は、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、およびN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0081】
粒子状の酸化金属に対して通常約5ないし50重量%、特に約7ないし45重量%、特に好適には約10ないし40重量%のシランが使用される。
【0082】
本発明に係る結合剤によって達成可能な高い強度にもかかわらず、本発明に係る成形材料混合物によって製造される鋳型、特に中子および型部材は鋳造後、特にアルミニウム鋳造後に非常に良好な破砕性を示す。前述したように、本発明に係る成形材料混合物によって鉄鋳造に際しても極めて良好な破砕性を示す鋳型を製造することができ、従って鋳造後に成形材料混合物を狭くかつ曲折した鋳型の部位からも容易に取り除くことが可能であることが判明した。従って本発明に係る成形材料混合物から製造された成形体の適用は軽金属鋳造に限定されることはない。鋳型は全般的に金属鋳造に適している。それらの金属は、例えば真鍮、ブロンズ等の非鉄金属、ならびに鉄金属である。
【0083】
本発明はさらに本発明に係る成形材料混合物を使用した金属加工用の鋳型の製造方法に関する。本発明に係る方法は:
− 前述した成形材料混合物を生成し;
− 成形材料混合物を塑形し;
− 成形材料混合物を加熱することによって塑形された成形材料混合物を硬化させそれによって硬化した鋳型を形成する、
各ステップからなる。
【0084】
本発明に係る成形材料混合物の製造に際して、一般的にまず耐火性の成形基礎材料を供給しその後攪拌しながら結合剤を添加する。その際に水ガラスおよび特に合成非晶質二酸化珪素等の粒子状酸化金属、ならびに炭水化物を任意の順序で添加することができる。炭水化物は例えば澱粉粉末等の乾燥した形態で添加することができる。しかしながら、炭水化物を溶解した形態で添加することも可能である。その場合炭水化物の水性溶液が好適である。水性の溶液の使用は、特に例えばグルコースシロップのように製造プロセス上の理由から既に溶液として提供される場合に好都合である。炭水化物の溶液は耐火性の成形基礎材料に添加する前に水ガラスと混合することもできる。好適には、固形状態の炭水化物を耐火性の成形基礎材料に添加する。
【0085】
別の実施形態によれば、適宜な担体、例えば別の添加剤あるいは耐火性の成形基礎材料を炭水化物の溶液によって被覆することによって成形材料混合物に炭水化物を添加することができる。溶媒としては水または有機溶剤を使用することができる。好適には水を溶媒として使用する。炭水化物被覆と担体の間の良好な結合ならびに溶媒の除去のために、被覆後に乾燥工程を実施することもできる。これは例えば乾燥窯内あるいはマイクロ波照射によって実施することができる。
【0086】
前述した添加剤は勿論任意の形態で成形材料混合物に添加することができる。それは単独であるいは混合物として付加することができる。それは固形材料の形態で添加することができるが、溶解液、ペースト、あるいは分散物の形態で添加することもできる。添加が溶解液、ペースト、あるいは分散物として実施される場合、水が溶媒として好適である。結合剤として使用される水ガラスを添加剤の溶媒あるいは分散媒として使用することも可能である。
【0087】
好適な実施形態によれば、結合剤が二成分システムとして製造され、その際液体状の第1の成分が水ガラスを含み、固形の第2の成分は粒子状の酸化金属を含む。固形成分はさらに例えば燐酸塩ならびに場合によって好適にはフレーク状である潤滑剤を含むことができる。炭水化物を固形の形態で成形材料混合物に添加する場合は、それを固形の成分に付加することができる。
【0088】
成形材料混合物の製造に際して耐火性の成形基礎材料を混合器内に供給し、その後まず結合剤の固形成分を添加し耐火性の成形基礎材料と混錬することが好適である。混錬時間は、耐火性の成形基礎材料と固形の結合剤成分の間の完全な混合が達成されるように選択される。混錬時間は製造される成形材料混合物の量と使用される混合装置に依存する。混錬時間は1ないし5分に選定することが好適である。好適にはさらに混合物を動かしながら結合剤の液体成分を添加し、その後耐火性の成形基礎材料の粒子上に均一な結合剤層が形成されるまで混合物をさらに混錬する。ここでも混錬時間は製造される成形材料混合物の量と使用される混合装置に依存する。混合工程の継続時間は1ないし5分に選定することが好適である。液体成分としては、多様な液体状成分の混合物ならびに全ての液体状の個別成分の総称のいずれと理解することもでき、それらの個別成分は別々に添加することもできる。同様に固形成分としては、前述した固形成分の個別あるいは全ての混合物ならびに全ての固形の個別成分の総称のいずれと理解することもでき、それらの個別成分を同時にあるいは前後して成形材料混合物に添加することができる。
【0089】
別の実施形態によれば、まず結合剤の液体状成分を耐火性の成形基礎材料に添加しその後固形成分を混合物に添加することができる。別の実施形態によれば、まず成形基礎材料の重量に対して0.05ないし0.3%の水を耐火性の成形基礎材料に添加し、その後結合剤の固形および液体状の成分を添加する。この実施形態によって成形材料混合物の加工時間に意外なほど良好な影響がもたらされる。発明者等は、この方式によって結合剤の固形成分の脱水作用が低減され、それによって硬化工程が遅延すると想定している。
【0090】
その後成形材料混合物を適宜な形状に塑形する。その際塑形のために一般的な方法を使用する。例えばコアシュータを使用し圧力空気の補助によって成形材料混合物を成形型内に充填することができる。その後加熱によって成形材料混合物を硬化させ、結合剤中に含まれている水分を蒸発させる。加熱によって成形材料混合物から水分が除去される。脱水によってシラノール基間の縮合反応が開始されることが予測され、それによって水ガラスの結合が発生する。従来の技術として記載されている低温硬化方式においては、例えば二酸化炭素の導入あるいは多価の金属イオンによって非溶解性の化合物の沈降ならびに鋳型の固化を促進する。
【0091】
成形材料混合物の加熱は例えば成形型内で実施することができる。鋳型を既に成形型内で完全に硬化させることが可能である。しかしながら、鋳型の縁部領域のみを硬化させ従って成形型から取り出すために充分な強度を鋳型が備えるようにすることも可能である。その後さらに脱水することによって鋳型を完全に硬化させることができる。このことは例えば窯内で実施することができる。例えば減圧によって水を蒸発させて脱水を実施することもできる。
【0092】
鋳型の硬化は成形型内に熱風を吹き込むことによって加速させることができる。この実施形態によれば結合剤中に含まれている水分の迅速な除去が達成され、それによって産業上の用途に適した時間間隔で鋳型を固化させることができる。吹き込まれる空気の温度は100℃ないし180℃、特に120℃ないし150℃とすることが好適である。熱風の流速は、鋳型の硬化が産業上の用途において適した時間間隔内で達成されるように選定される。その時間間隔は製造される鋳型の大きさに依存する。5分未満、特に2分未満の時間間隔内で硬化を実施することが試みられる。しかしながら、極めて大きな鋳型の場合より長い時間間隔が必要ともなり得る。
【0093】
成形材料混合物からの水分の除去は、成形材料混合物の加熱をマイクロ波の照射によって促進する方式で実施することもできる。しかしながら、マイクロ波の照射は鋳型を成形型から取り出した後に実施することが好適である。しかしながらそのためには鋳型が既に充分な強度を有することが必要となる。このことは前述したように例えば少なくとも鋳型の外殻を既に成形型内で硬化させることによって促進することができる。
【0094】
脱水しながらの成形材料混合物の熱硬化によって金属鋳造中における鋳型の後硬化の問題を防止することができる。従来の技術において記載された成形材料混合物を介して二酸化炭素を通流させる低温硬化方式においては水ガラスから炭酸塩が沈降する。しかしながら、硬化した鋳型内には比較的多量の水分が結合されて残留し、それが金属鋳造に際して排出され極めて強力な鋳型の硬化がもたらされる。また、二酸化炭素の導入によって固化する鋳型は熱によって脱水して硬化させた鋳型の安定性には到達しない。炭酸塩の形成によって結合剤の結合が阻害され、そのため強度が低下する。従って水ガラスに基づいて低温硬化した鋳型によっては複雑な形状を有することもあり得る薄壁状の鋳型の部位は製造できない。従って低温で二酸化炭素の導入によって硬化した鋳型は、鋳型が必要な安定性に到達せずまた金属鋳造後に極めて多大な手間をかけないと鋳型を完全に鋳造品から除去することができないため、例えば内燃機関のオイル管等の極めて複雑な形状および多くの曲折部を伴った狭い通路を有する鋳造品の製造には適していない。熱硬化においては充分に鋳型から水分が除去され、金属鋳造時に観察される鋳型の後硬化が著しく減少する。二酸化炭素の導入によって硬化した鋳型に比べて金属鋳造後の鋳型の破砕性が大幅に改善される。熱硬化によって極めて複雑な形状および狭い通路を有する鋳造品を加工するための鋳型を製造することも可能になる。
【0095】
前述したように、好適にはフレーク状の潤滑剤、特に黒鉛および/またはMoSおよび/またはタルクの添加によって本発明に係る成形材料混合物の流動性を改善することができる。また、例えば葉蝋石等のタルクに類似した鉱物によっても成形材料混合物の流動性を改善することができる。製造に際してフレーク状の潤滑剤、特に黒鉛および/またはタルクを両方の結合剤成分から分離して成形材料混合物に添加することができる。しかしながら、フレーク状の潤滑剤、特に黒鉛を粒子状の酸化金属、特に合成非晶質二酸化珪素と予め混合し、その後水ガラスおよび耐火性の成形基礎材料と混合することも同様に可能である。
【0096】
前述したように、成形材料混合物は炭水化物と並んでさらに別の有機添加剤を含むことができる。その別の有機添加剤の添加は勿論成形材料混合物の製造のどの時点で実施することも可能である。その際その有機添加剤の添加は独立体としてあるいは溶解液の形態で実施することができる。しかしながら、有機添加剤の分量は少量に選定され、特に耐火性の成形基礎材料に対して0.5重量%未満に選定することが好適である。炭水化物を含めた有機添加物の総量を耐火性の成形基礎材料に対して0.5重量%未満に選定することが好適である。
【0097】
水溶性の有機添加剤は水性溶液の形態で使用することができる。有機添加剤が結合剤中で溶解性であってその中で分解されずに数ヶ月間安定貯蔵可能である場合は、結合剤中に溶解してそれと共に成形基礎材料に添加することができる。非水溶性の添加剤は分散体あるいはペーストの形態で使用することができる。その分散体あるいはペーストは分散媒として水を含むことが好適である。勿論有機溶媒中で有機添加剤の溶液あるいはペーストを生成することもできる。しかしながら、有機添加剤の添加のために溶媒を使用する場合は水を使用することが好適である。
【0098】
有機添加剤の添加は粉末あるいは短繊維として実施することが好適であり、その際平均の粒子大あるいは繊維長は耐火性の成形基礎材料の大きさを超えないように選定することが好適である。有機添加剤は約0.3mmの目幅の篩によって極めて好適に篩分けることができる。耐火性の成形基礎材料に添加される成分の数を削減するために、粒子状の酸化金属および有機添加剤を別々に鋳物砂に添加せずに予め混合することが好適である。
【0099】
成形材料混合物がシランあるいはシロキサンを含む場合その添加は一般的な方法で実施され、すなわち予め結合剤に混合する。しかしながら、シランあるいはシロキサンを独立した成分として成形材料混合物に添加することもできる。しかしながら、粒子状の酸化金属をシラン化、すなわち酸化金属をシランあるいはシロキサンと混合し、それによって表面にシランあるいはシロキサンの薄い層を形成することが極めて好適である。そのように前処理された粒子状の酸化金属を使用する場合、未処理の酸化金属の場合に比べてより高い強度ならびに改善された湿度耐久性が達成される。前述したように成形材料混合物あるいは粒子状の酸化金属に有機添加剤を添加する場合はシラン化の前にそれを実施することが有効である。
【0100】
本発明に係る方法は勿論金属鋳造において一般的な全ての鋳型の製造に適しており、すなわち例えば中子および型部材の製造に適している。その際極めて薄壁状の部位を有する鋳型を製造することもできる。特に隔離性の耐火性成形基礎材料あるいは発熱性の材料を本発明に係る成形材料混合物に添加する場合、本発明に係る方法はフィーダの製造に適する。
【0101】
本発明に係る成形材料混合物から、あるいは本発明に係る方法によって製造される鋳型は製造直後に極めて高い強度を有するが、その際鋳造品の鋳造後に鋳型の取り外しに問題が生じるほど硬化後の鋳型の強度が高くなることはない。この鋳型は特にアルミニウム等の軽金属鋳造ならびに鉄鋳造のいずれに際しても極めて良好な破砕性を示すことが判明した。さらに、この鋳型は空気中湿度が高い場合でも極めて高い安定性を有し、すなわちこの鋳型は意外なほど長期間にわたって問題なく貯蔵することができる。この鋳型は主要な利点として機械的負荷に対して極めて高い耐久性を示し、従って鋳造に際しての金属静力学的圧力によって鋳型が変形する危険性を伴わずに薄壁状の鋳型の部位を実現することができる。従って本発明の別の対象は、前述した本発明に係る方法によって製造された鋳型である。
【0102】
本発明に係る鋳型は全般的に金属鋳造に適し、特に軽金属鋳造に適している。アルミニウム鋳造に際して特に好適な結果が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0103】
次に、本発明について例を参照しながら以下詳細に説明する。
【0104】
例1
成形基礎材料として珪砂を含んだ鋳型の強度に対しての合成製造された非晶質の二酸化珪素および種々の炭水化物の影響
1. 成形材料混合物の製造および試験
成形材料混合物の検査のためにいわゆるゲオルグ・フィッシャー試験バー(試験片)を形成した。ゲオルグ・フィッシャー試験片としては150mm×22.36mm×22.36mmの立方体形状の試験片が理解される。
【0105】
成形材料混合物の組成は表1に示されている。ゲオルグ・フィッシャー試験片を形成するために以下の工程を実施した:
表1に示されている成分を実験室用スクリューミキサ(独国ハーゲン市のフォーゲル&シェマン社製)内で混合した。そのためまず珪砂を用意し、攪拌しながら水ガラスを添加した。水ガラスとしてカリウム分を含んだナトリウム水ガラスを使用した。従って下記の表には、SiO:MO比率が示されており、そこでMはナトリウムとカリウムの合計を示している。混合物を1分間攪拌した後、必要に応じて非晶質二酸化珪素および/または炭水化物をさらに攪拌しながら添加した。その後混合物をさらに1分間攪拌し;
成形材料混合物を独国フィアゼン市のレパーヴェルク−ギースライマシーネン社製のH2,5ホットボックスコアシュータ装置内に注入し、その成形型を200℃に加熱し;
成形材料混合物を圧力空気(5バール)によって成形型内に圧入し、その中に35秒間滞留させ;
混合物の硬化を加速するために最後の20秒間に成形型を介して熱風(器具内への進入時に2バール、120℃)を通流させ;
成形型を開放して試験片を取り出した。
【0106】
曲げ強度を判定するために、3点曲げ装置(スイス国シャフハウゼンシ市のDISAインダストリー社製)を装備したゲオルグ・フィッシャー強度検査装置内に試験片を挿入し、試験片が破断する時の応力を測定する。
【0107】
曲げ強度は以下のスキームで測定した:
− 取り出しの10秒後(高温強度)
− 取り出しの1時間後(低温強度)
− 空調庫内において30℃および相対湿度75%で冷却された中子を3時間貯蔵した際。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
結果
添加された炭水化物の影響
例1.1は非晶質の二酸化珪素あるいは炭水化物を添加しないと充分な高温強度を達成できないことを示している。成形材料混合物1.1によって製造された中子の貯蔵耐久性からも、技術的に安定した量産が不可能であることが示されている。非晶質の二酸化珪素の添加によって高温強度を改善することができ(例1.2および1.3)、従って中子製造後に直ぐに後加工するために充分な強度を中子が有する。非晶質二酸化珪素の添加によって、特に高い相対湿度において中子の貯蔵耐久性が改善される。意外なことに、炭水化物化合物、特にデキストリン化合物の添加(例1.4)によって非晶質の二酸化珪素の場合と同様に高温強度の改善が達成される。加えて、成形材料混合物1.1との比較において製造された中子の貯蔵耐久性の改善が見られる。非晶質の二酸化珪素とデキストリンを組み合わせた添加(例1.5)によって、極めて高い即効性強度とさらに改善された貯蔵耐久性が示される。また、最終的な強度もその他の混合物の場合に比べて顕著に高められる。非晶質の二酸化珪素と組み合わせたエチルセルロース(例1.6)あるいはジャガイモ澱粉派生物(例1.7)の使用によっても技術的に安定した中子製造が可能になる。僅か0.1%のジャガイモデキストリン(混合物1.8)の添加でも、中子の即効性強度および貯蔵耐久性に良好な影響が与えられる(混合物1.3と比較)。
【0111】
例2
前述した成形材料混合物(表1)による成形部材によって製造された鋳造品の表面に対しての合成製造された非晶質の二酸化珪素と種々の炭水化物の影響
鋳造工程中に4本の長辺のうちの3本が鋳造金属と接合するように成形材料混合物1.1ないし1.8のゲオルグ・フィッシャー試験片を砂鋳型内で形成した。鋳造温度735℃において226型アルミニウム合金を鋳造した。鋳型の冷却後に高周波ハンマ衝撃によって鋳造品を砂から解放した。残留している付着砂材の観点から鋳造物を評価した。
【0112】
混合物1.1の鋳造部材は混合物1.2および1.3の場合と同様に極めて多量の砂付着を示す。炭水化物を含有した成形材料混合物(混合物1.4)は鋳造品表面品質に対して良好な影響を与える。混合物1.5、1.6および1.7の鋳造部材も同様に殆ど砂付着を示さず、それによってそれらの場合も鋳造品表面品質に対する炭水化物(ここではデキストリンおよびエチルセルロース)の好適な影響が確認される。僅か0.1%のデキストリン(混合物1.8)の添加においても、炭水化物を含まない比較例(混合物1.3)に比べて顕著な表面品質の改善が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 耐火性の成形基礎材料と;
− 水ガラスに基づいた結合剤と;
− 二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛の一群の中から選択される一定割合の粒子状酸化金属、
を少なくとも含んでなる金属加工用の鋳型を製造するための成形材料混合物であり、
成形材料混合物に炭水化物を添加することを特徴とする成形材料混合物。
【請求項2】
耐火性の成形基礎材料に対する炭水化物の比率は0.01ないし5重量%の範囲、特に0.02ないし2.5重量%の範囲、さらに好適には0.05ないし2.5重量%の範囲、特に好適には0.1ないし0.4重量%の範囲選定することを特徴とする請求項1記載の成形材料混合物。
【請求項3】
炭水化物がオリゴ糖あるいはポリサッカリドであることを特徴とする請求項1または2記載の成形材料混合物。
【請求項4】
オリゴ糖あるいはポリサッカリドが1000ないし100000g/モル、特に2000ないし30000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする請求項3記載の成形材料混合物。
【請求項5】
ポリサッカリドがグルコース単位から形成されることを特徴とする請求項3または4記載の成形材料混合物。
【請求項6】
炭水化物はセルロース、澱粉、デキストリン、ならびにそれらの炭水化物の誘導体からなる一群から選択することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項7】
炭水化物が非誘導炭水化物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項8】
デキストリンはジャガイモデキストリン、コーンデキストリン、黄色デキストリン、白色デキストリン、硼酸デキストリン、シクロデキストリン、マルトデキストリンからなる一群の中から選択することを特徴とする請求項6記載の成形材料混合物。
【請求項9】
澱粉はジャガイモ澱粉、コーンスターチ、米澱粉、豆澱粉、バナナ澱粉、トチの実澱粉あるいは小麦澱粉からなる一群の中から選択することを特徴とする請求項6記載の成形材料混合物。
【請求項10】
成形材料混合物に燐酸塩を添加することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項11】
燐含有化合物がオルト燐酸塩、メタ燐酸塩、あるいはポリ燐酸塩であることを特徴とする請求項10記載の成形材料混合物。
【請求項12】
燐酸塩が好適にはアルキル基、アリール基、あるいは炭水化物含有燐酸塩の基から誘導される有機燐酸塩であることを特徴とする請求項10記載の成形材料混合物。
【請求項13】
耐火性の成形基礎材料に対する燐含有化合物の比率は0.05ないし1.0重量%に選定することを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項14】
燐含有化合物はPとして計算して0.5ないし90重量%の燐含有率を有することを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項15】
粒子状の酸化金属は沈殿珪酸および発熱性珪酸からなる一群の中から選択することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項16】
水ガラスが1.6ないし4.0、特に2.0ないし3.5の範囲のSiO/MO比率(Mはナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを示す)を有することを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項17】
水ガラスは30ないし60重量%の範囲のSiOおよびMOの固形成分含有率を有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項18】
結合剤が20重量%未満の比率で成形材料混合物中に含まれることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項19】
粒子状の酸化金属は結合剤に対して2ないし80重量%の比率で含まれることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項20】
成形基礎材料が少なくとも一定比率の微細中空球体を含むことを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項21】
微細中空球体が珪酸アルミニウム微細中空球体および/またはガラス微細中空球体であることを特徴とする請求項20記載の成形材料混合物。
【請求項22】
成形基礎材料が少なくとも一定比率のガラス顆粒、ガラスビーズ、および/または球状のセラミック成形体を含むことを特徴とする請求項1ないし21のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項23】
成形基礎材料が少なくとも一定比率のムライト、クロム鉱砂、および/またはカンラン石を含むことを特徴とする請求項1ないし22のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項24】
成形材料混合物に酸化性の金属と酸化剤を添加することを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項25】
成形材料混合物が一定比率のフレーク状の潤滑剤を含むことを特徴とする請求項1ないし24のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項26】
フレーク状の潤滑剤は黒鉛、硫化モリブデン、タルク、および/または葉蝋石から選択することを特徴とする請求項24記載の成形材料混合物。
【請求項27】
成形材料混合物が室温において固形の少なくとも1種類の有機添加剤を一定比率で含むことを特徴とする請求項1ないし26のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項28】
成形材料混合物が少なくとも1種類のシランあるいはシロキサンを含むことを特徴とする請求項1ないし27のいずれかに記載の成形材料混合物。
【請求項29】
− 請求項1ないし28のいずれかに記載の成形材料混合物を生成し;
− 前記成形材料混合物を塑形し;
− 前記塑形された成形材料混合物を加熱することによってその塑形された成形材料混合物を硬化させそれによって硬化した鋳型を形成する、
各ステップからなる金属加工用の鋳型の製造方法。
【請求項30】
成形材料混合物を100ないし300℃の温度に加熱することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
硬化のために塑形された成形材料混合物に熱風を吹き付けることを特徴とする請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
成形材料混合物の加熱をマイクロ波の作用によって促進することを特徴とする請求項29ないし31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
鋳型がフィーダであることを特徴とする請求項29ないし32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
請求項29ないし33のいずれかに記載の方法によって製造される鋳型。
【請求項35】
金属鋳造、特に軽金属鋳造における請求項34記載の鋳型の適用。

【公表番号】特表2010−506730(P2010−506730A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532734(P2009−532734)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009108
【国際公開番号】WO2008/046651
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505211374)アシュラント−ジュートヒェミー−ケルンフェスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】