説明

炭素ブロックフィルター

本発明は、金属含浸された結合炭素ブロックフィルターを製造するためのプロセスに関する。特に本発明は、銀、銅または亜鉛から選択された金属で含浸され、ブロックにわたって金属含有量における変動レベルが相対的に低く、理論上の金属含有量からの偏差が相対的に小さく、使用中のブロックからの金属浸出率が相対的に低い成型された炭素ブロックフィルターを調製するためのプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含浸された結合炭素ブロックフィルターを製造するためのプロセスに関する。
【0002】
本発明は、飲料水を浄化するための重力供給水濾過デバイスに使用するために主に開発されたものであり、以降、この用途に関連して説明される。しかし、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことが理解される。
【背景技術】
【0003】
本明細書全体を通して先行技術についてのいかなる議論も、このような先行技術が広く知られている、またはこの分野において共通する一般的な知識の一部を形成するという容認として考えられるべきではない。
【0004】
飲料水は、粒子状物質、有害な化学物質、細菌、胞子およびウイルスのような様々な汚染物質を含有する。このような汚染物質は、水が消費に適するように取り除かれなければならないことが医療従事者によって推奨されている。
【0005】
活性炭は、化学的汚染物質、胞子、粒子状物質および細菌の除去を補助するので、飲料水の浄化に有用である。しかし、活性炭粒子は、粗く、多孔質のテクスチャを有し、これが細菌の成長に有利な保護表面を与え得る。結果として、藻類および細菌は、炭素表面にコロニーを形成し、これによって水との接触に利用可能な表面を低減するとともに、これらの生物の成長を可能にする。水が塩素化されている場合であっても、一部の細菌は塩素耐性がある。従って、実際のところ活性炭は、塩素化された水では本来成長しない細菌の成長を促進し得る。このような水から単離された最も主要な細菌は、シュードモナス属に属していた。さらに、バチルス属の細菌も多量に見出された。
【0006】
浄水に使用するための結合炭素ブロックフィルターを製造する方法は、US4753728(Amway,1988)に記載されており、この文献において、炭素粒子は、ASTM(米国材料試験協会)D1238基準によって、190℃および15kg荷重にて測定される場合に、10分あたり1グラム未満のメルトインデックスを有するポリマー材料によってフィルターブロックに結合されている。
【0007】
CA2396510(TYK Corp,2003)には、50%以上のセラミック結合剤を有する粒径35から200μの粒子を用いて炭素フィルターを調製するためのプロセスが記載されており、この文献において、水は、この混合物が焼結される前に混合物上にスプレーされる。
【0008】
炭素ブロックの表面での細菌のコロニー形成の発生を予防および/または低減するために、このようなブロックは、一般に銀、銅または亜鉛のような金属で含浸されている。
【0009】
US2847332(Union Carbide Corporation,1958)には、結合炭素ブロック上に金属銀を含浸させるためのプロセスが記載されており、このプロセスにおいて結合ブロックは、硝酸銀水溶液中に浸され、浸されたブロックをアンモニア蒸気に曝して酸化銀を沈殿させることによって、銀イオンが不溶性の銀化合物として沈殿する。これは、熱処理による酸化銀の金属銀への還元に従うものである。このプロセスは結果として、均一な銀含有量分布を有する含浸されたブロックをもたらすことが述べられている。このプロセスは、より高いレベルの金属の含浸に好適であるが、本発明者らは、このプロセスに従って製造されたこのようなブロックは、異なるブロックにわたって含浸された金属量の変動を示すことを見出した。この変動は、求められる含浸レベルが低い場合に重要になる可能性がある。
【0010】
US2006000763(The Clorox Company,2006)には、約90から220μmの範囲の平均粒子径を有する活性炭粒子を約20から90重量%、および低メルトインデックスのポリマー材料を約10から50重量%含む重力フロー炭素ブロックフィルターが開示されている。低メルトインデックスのポリマー材料は、1.0g/10分未満または1.0g/10分超過のメルトインデックス、および約20から150μmの範囲の平均粒子径を有することができる。
【0011】
US3355317(Keith et.al.,1967)には、タバコフィルターに使用するための金属酸化物によるガス吸着剤材料の含浸が開示されている。
【0012】
一方で、先行技術のプロセスでは、ブロック製造のために2つの別個の工程である、金属含浸工程、およびブロック製造工程が存在する。第1のプロセスは、一般に活性炭粒子の供給者によって行われる。これら2つのプロセスは、互いに独立しており、そのため金属含浸された炭素はブロックを製造する人のコストを上げるので、炭素ブロック製造者のコストが増大する。
【0013】
本発明者らは、上記手順は2工程プロセスであるので面倒であることを見出した。さらに、この手順は、異なるブロックにわたって金属含有量における変動レベルが相対的に低いままでありながら、銀または他の金属を0.01から5.0重量%のオーダーの低いレベルで含浸させるためには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4753728号明細書
【特許文献2】加国特許第2396510号明細書
【特許文献3】米国特許第2847332号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/000763号明細書
【特許文献5】米国特許第3355317号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術の不利益の少なくとも1つを克服または改善することが本発明の目的である。
【0016】
ブロック間の金属含有量における変動レベルが相対的に低く、理論上の金属含有量からの偏差が相対的に小さい、銀、銅または亜鉛から選択される金属で含浸された成型された炭素ブロックフィルターを調製するためのプロセスであって、使用中にブロックからの金属浸出率が相対的に低いプロセスを提供することが本発明の目的である。
【0017】
本発明の他の目的は、明細書の参照により当業者に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、ブロック間の金属含有量における変動レベルが相対的に低く、理論上の金属含有量からの偏差が相対的に小さく、および使用中のブロックからの金属浸出率が相対的に低い結合炭素ブロックフィルターが、活性炭粒子を水酸化アンモニウムの存在下で金属塩の水溶液と接触させ、続いてポリマーバインダーを添加し、最終的に圧力および熱を適用するこによってブロックに成型するプロセスによって得ることができることを見出した。
【0019】
均一な金属含浸は、熱および圧力による成型プロセス中に生じる。本発明者らはまた、このプロセスがエネルギー消費を低減するため、大きなコスト削減になることを認めた。さらに驚くべきことに、本発明に従うプロセスによって製造された含浸されたブロックは、従来の金属含浸された炭素ブロックと比較した場合に、有機汚染物質の吸収が相対的に高いことが認められた。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、金属含浸炭素ブロックフィルターを製造するためのプロセスを提供し、このプロセスは、
水酸化アンモニウムの存在下、活性炭粒子を銀、亜鉛または銅の塩の水溶液と接触させ、水性ミックスを形成する工程、
前記水性ミックスを、5g/10分未満のメルトフローレートを有するバインダーと混合し、混合物を形成する工程、
前記混合物をモールドに添加する工程、
前記モールドを150から350℃の範囲の温度に加熱する工程、および
炭素ブロックフィルターを離型する工程
を含む。
【0021】
活性炭粒子は、硝酸銀、硝酸亜鉛または硝酸銅の水溶液と接触させるのが好ましい。
【0022】
活性炭粒子は、硝酸銀の水溶液と接触させるのが特に好ましい。
【0023】
好ましくは、水溶液中の硝酸銀濃度は0.01から10%の範囲である。
【0024】
また、モールド中の混合物は、モールドを加熱する前に圧縮されるのが好ましい。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に従うプロセスによって得ることができる金属含浸された炭素ブロックフィルターを提供する。
【0026】
「含む」という用語は、続いて記述される要素に限定されるのではなく、むしろ主要または些細な機能的重要性を有する特定されていない要素を包含することを意味する。換言すれば、列挙された工程、要素または選択肢は、包括的である必要はない。「包含する」または「有する」という言葉が使用されるときは如何なるときも、これらの用語は、上記で定義されるような「含む」と等価であることを意味する。
【0027】
操作例および比較例におけるもの以外、またはそうでなければ明確に記載されていない場合、物質の量を示す本明細書のすべての数は、「約」という言葉によって修飾されているものとして理解されるべきである。
【0028】
濃度または量のいずれかの範囲を特定する際に、いずれかの特定の上位濃度は、いずれかの特定の下位濃度または量と関連し得ることに留意すべきである。
【0029】
本発明の上記およびその他の特徴および利点のより完全なる理解のために、好ましい実施形態に関する次の詳細な説明を参照すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書全体を通して使用される重量%という表現は、重量によるパーセンテージを意味する。
【0031】
活性炭粒子は、好ましくは、1つ以上の瀝青炭、ヤシ殻、および木材および石油タールから選択される。活性炭粒子の表面積は500m/gを超えるのが好ましく、より好ましくは1000m/gを超える。活性炭粒子のサイズ均一性係数は2未満、より好ましくは1.5未満であるのが好ましい。活性炭粒子の四塩化炭素(CCl)数は、50%を超えるのが好ましく、より好ましくは60%を超える。好ましくは活性炭粒子のヨウ素数は、800を超える、より好ましくは1000を超える。活性炭粒子の5%以下は、150メッシュのシーブを通過し、5%以下の粒子は12メッシュのシーブに留まるのが好ましい。活性炭粒子の5重量%以下は75メッシュのシーブを通過し、5重量%以下は30メッシュのシーブに留まるのがさらに好ましい。1%未満の活性炭粒子は、200メッシュのシーブを通過するのが特に好ましい。
【0032】
バインダーのメルトフローレート(MFR)は、5g/10分未満、好ましくは2g/10分未満、より好ましくは1g/10分未満である。バインダーの嵩密度は、好ましくは0.6g/cm以下、より好ましくは0.5g/cm以下、最も好ましくは0.25g/cm以下である。好ましいバインダーは、超高分子量ポリエチレンまたは超高分子量ポリプロピレンから選択され、これらはこうした低いMFR値を有する。これらの分子量は、好ましくは10ダルトンから10ダルトンの範囲である。この種類のバインダーは、Tycona GMBH,GURからの商標名HOSTALEN(商標)、SUNFINE(商標)(Asahi,Japanから)、HIZEX(商標)(Mitsubishiから)およびBrasken Corp(Brazil)から市販されている。他の好適なバインダーとしては、LUPOLEN(商標)(Basel Polyolefins)としてのLDPEおよびQunos(Australia)からのLLDPEが挙げられる。
【0033】
バインダーのメルトフローレートは、ASTM D1238(ISO(国際標準化機構)1133)試験を用いて測定される。この試験は、特定温度および荷重条件下で押出可塑度計を通して溶融ポリマーのフローを測定する。押出可塑度計は、底部にて2mmの小さいダイを有する垂直シリンダーおよび上方部において取り除くことができるピストンからなる。
【0034】
充填量の材料をシリンダー中に入れ、数分間予備加熱する。ピストンは、溶融ポリマーの上方部に配置し、この重量によりポリマーをダイに通して回収プレート上に向ける。本ポリマーバインダー材料を試験するための温度は、190℃に選択でき、荷重は15kgに選択できる。特定時間間隔の後に回収されたポリマーの量を計量し、10分以内に押出されたグラム数に規格化する。こうしてメルトフローレートは10分あたりのグラム単位で表現される。
【0035】
活性炭粒子とバインダーとの比は2:1から10:1重量部であるのが好ましく、より好ましくは2:1から8:1重量部である。
【0036】
活性炭粒子は、水酸化アンモニウムの存在下、銀、亜鉛または銅の塩の水溶液と接触させて水性ミックスを形成する。活性炭粒子は硝酸銀水溶液と接触させるのが好ましいが、塩化銀またはヨウ化銀のような他の銀塩を使用することもできる。好ましくは、水溶液中の硝酸銀濃度は、0.01から10重量%、より好ましくは0.02から5重量%、最も好ましくは0.02から3重量%の範囲である。銀含浸の場合、活性炭粒子中の銀の含浸レベルは、好ましくは0.01から5重量%の範囲、より好ましくは0.02から2重量%の範囲、最も好ましくは0.05から1重量%の範囲である。銀含浸のレベルは1重量%であるのが特に好ましい。また、亜鉛、銅、銀および銅の混合物、銀および亜鉛の混合物、銅および亜鉛の混合物、または銀、銅および亜鉛の混合物を適切な塩を選択することによって含浸できる。
【0037】
水酸化アンモニウムと銀塩との好ましい比は、1:2から1:10の範囲、より好ましくは1:3から1:5の範囲、最も好ましくは1:2から1:3の範囲である。
【0038】
銅および亜鉛の場合、含浸のレベルは、好ましくは0.01から10重量%の範囲、より好ましくは0.01から5重量%の範囲、最も好ましくは0.01から2重量%の範囲である。水酸化アンモニウムと銅塩との好ましい比は、1:0.05から1:2の範囲、より好ましくは1:0.1から1:1の範囲、最も好ましくは1:0.1から1:0.7の範囲である。亜鉛の塩の場合、水酸化アンモニウムと塩との好ましい比は、1:0.2から1:5の範囲、より好ましくは1:0.4から1:3の範囲、最も好ましくは1:0.5から1:1.5の範囲である。硝酸塩とは別に、他の銅/亜鉛塩、例えば塩化物またはヨウ化物も使用できる。
【0039】
水中の水酸化アンモニウムの濃度は0.1から10重量%の範囲、好ましくは0.1から5重量%の範囲であるのが好ましい。
【0040】
活性炭粒子と銀、亜鉛または銅の塩の水溶液との比は、1:0.4から1.1.2の範囲、より好ましくは1:0.4から1:1の範囲であるのが好ましい。
【0041】
活性炭粒子は、水酸化アンモニウムの存在下、銀、亜鉛または銅の塩の水溶液と混合され、水性ミックスが得られる。混合は、撹拌器、刃が鈍いインペラブレードを備えたミキサ、リボンブレンダー、回転ミキサまたは粒径分布を顕著に変更しないいずれかの他の低剪断ミキサを含む容器中で行われるのが好ましい。混合は、炭素粒子の均一ミックスを調製するために行われる。次いでバインダーが上記水性ミックスに添加され、さらに混合されて混合物が得られる。混合は、好ましくは少なくとも5分、より好ましくは5から10分行われる。この混合物は、場合により、短期間、例えば3から10分振動されて、成型の前に混合物を圧縮させる。振動圧縮は、好ましくは30から100Hzの範囲の周波数を有する振動機にて行われる。このプロセス工程は、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは3から10分間行われる。振動によって圧縮されるかどうかに拘わらず、次いで塊を予め選択されたサイズおよび形状のモールドに配置し、20kg/cm以下、好ましくは3から15kg/cm、最も好ましく4から10kg/cmの圧力で圧縮する。圧力は、好ましくは水圧プレスまたは空気圧プレスのいずれか、より好ましくは水圧プレスを用いて適用される。モールドは、好ましくはアルミニウム、鋳鉄、鋼または400℃を超える温度に耐えることができるいずれかの材料製である。モールドは、150から350℃、好ましくは200から300℃の範囲に加熱される。モールドは、60分超過、好ましくは90から300分間加熱が維持される。モールドは、好ましくは、非対流式、強制空気または強制不活性ガス対流式オーブンにて加熱される。次いでモールドは冷却され、成型されたフィルターはモールドから離型される。好ましくは、モールド離型剤がモールドの内部表面にコーティングされる。モールド離型剤は、好ましくはシリコーンオイル、アルミニウム箔から選択され、またはモールドは、テフロンまたはフィルター材上にほとんどまたは全く吸着されないいずれかの他の市販のモールド離型剤のような好適な材料でコーティングできる。
【0042】
本発明のさらなる詳細、この目的および利点は、以下において、次の非限定的な実施例を参照してより詳細に説明される。多くのこのような実施例が可能であり、以下に与えられる実施例は例示を目的とするだけのものであることは当業者に明らかである。これらは、いかなる様式によっても本発明の範囲を限定するために構成されるべきではない。
【0043】
実施例
【実施例1】
【0044】
銀含浸された炭素ブロックフィルターの製造プロセス
本発明に従う銀含浸された活性炭ブロックフィルターは、Active Carbon(India)から供給される活性炭粒子(500μから1400μの範囲の粒径)30kgを用いることによって調製した。活性炭粒子を、0.3重量%の硝酸銀水溶液20リットルと接触させた。次いで溶液の濃度は0.1重量%となるように水酸化アンモニウムをこの溶液に添加した。水酸化アンモニウムの濃度と硝酸銀の濃度との比は1:3であった。この水溶液を、室温にてリボンブレンダーに移し、40RPM(毎分あたりの回転数)で混合し、活性炭粒子を添加した。活性炭粒子および上記の水溶液を約5分間混合し、水性ミックスを得た。この水性ミックスに、約0g/10分のMFRおよび0.45g/cmの嵩密度を有するAsahi Corporation(Japan)からの超高分子量ポリエチレン4.9kgを混合下で添加して、混合物を形成させた。上記成分をさらに5分間混合した。次いで混合物を取り出し、この混合物約600gをモールドに添加した。混合物を水圧プレスを用いて5kg/cmの圧力までモールド内で圧縮し、250℃の熱空気オーブン中で約150分間硬化させた。炭素ブロックを含有する熱モールドを少なくとも30分間冷却し、次いで離型させた。理論上の銀含有量は0.1重量%であった。
【0045】
同様の様式において、実施例1と同一の特性を有する市販の銀含浸された、0.1重量%の銀を有する活性炭粒子(即ち予め含浸された活性炭粒子)(Active Carbon(India)から購入)から製造された比較炭素ブロックフィルターを製造した。この比較フィルターブロックにおいて、製造された活性炭粒子は、既に銀金属で含浸されており、次いで粒子を、上記で行ったように超高分子量ポリエチレンバインダー、圧力および熱を用いてブロックにした。バインダーの量およびプロセスパラメータは上記と同じにした。活性炭粒子の供給元から入手可能な市販の銀含浸活性炭粒子は、一般に、可溶性銀塩の水溶液中に粒子を含浸させ、続いて110から120℃のオーブンにて非常に長期間、通常15から16時間乾燥させることによって製造される。
【実施例2】
【0046】
実施例1にて製造された炭素ブロックフィルター対比較銀含浸炭素ブロックフィルターの銀含有量分析
実施例1にて製造された炭素ブロックフィルターの銀含有量を、EPA(米国環境保護庁)参照番号200.9に従う原子吸光分析(AAS)測定に従う過塩素酸を用いる抽出を含む周知の手順によって見積もった。実施例1の炭素ブロックにおける理論上の銀含有量は0.1重量%であった。これを、実施例1にて製造された比較銀含浸炭素ブロックフィルターの平均銀含有量と比較した。それぞれの場合に関して3つの炭素ブロックフィルターの平均銀含有量の値(それぞれのブロックに関して3つの重複分析の平均であった)を以下の表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
上記の表のデータは、本発明に従って製造された実施例1の炭素ブロックフィルターの場合の平均銀含有量における変動が相対的に低いことを示す。一方、比較炭素ブロックは、一貫しない銀含有量を示し、0.1重量%であった理論上の値からの偏差がより大きかった。このような値から、実施例1のブロックフィルターおよび比較ブロックフィルターの平均銀含有量における変動(およびこの理論上の銀含有量0.1重量%からの偏差)を理解できる。
【実施例3】
【0049】
本発明に従う炭素ブロックフィルターによる水中に存在する有機汚染物質の吸着
この実験に関して、実施例1の炭素ブロックフィルター(本発明に従って製造された)を、上部および底部チャンバーを有する重力供給浄水デバイス内部に設置した。フィルターは上部チャンバー内部に備え付けた。底部チャンバーは、処理された水の出口が備え付けられていた。この実験において、5.4ppm(百万分の1部)の複素環式有機汚染物質(トリアジン)を含有する水1500リットルを、定期的にデバイスの上部チャンバーに添加した。このようにして、炭素ブロックフィルターを通過させ、底部チャンバーにて回収された処理水は、標準HPLC(高速液体クロマトグラフィー)方法によって複素環式有機汚染物質(トリアジン)の含有量に関して定期的に分析され、フィルターを通過後、このレベルの何らかの低下を確認した。比較例において、同じレベルの上記汚染物質を含有する1500リットルを、比較炭素ブロックフィルター(理論上の値が0.1%銀含浸である。)を備え付けた別のデバイスを通過させた。水中の汚染物質の量を、出口からの処理水を回収することによって規則的な間隔で測定した。結果を以下の表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
上記表のデータは、本発明に従う炭素ブロックフィルターの吸着が、比較ブロックフィルターよりも約16%高かったことを示す。
【実施例4】
【0052】
本発明に従う含浸された炭素ブロックフィルターからの銀の浸出に関する実験
金属含浸された炭素ブロックフィルターの場合、この含浸された金属がブロック内部に硬く留まり、濾過された水への浸出率が最小であることが重要である。この理由から、多くの場合、金属の浸出程度は、10億分の1部(ppb)単位で測定され、報告される。実験の別の組において、炭素ブロックフィルター(本発明に従う)からの浸出率を、比較ブロックフィルターと比較した。銀の量を規則的な間隔で測定しつつ、水1200リットルを、実施例3におけるような別個の重力供給浄水デバイスに備え付けた両方の炭素ブロックフィルターに別々に通過させた。銀含有量は、当業者に周知の方法によって測定した。結果を以下の表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
上記の表のデータから、水1200リットルを通過させている間および通過後に、本発明に従う炭素ブロックからの銀の浸出は、同じ(理論上)銀を充填した比較炭素ブロックと比較した場合に、実質的に低いことが示されている。
【実施例5】
【0055】
0.5%および1%銅;0.5%および1%亜鉛;および0.67%銅および0.33%亜鉛の組み合わせを有する炭素ブロックフィルターの調製−ブロックフィルターの金属浸出率の試験
銅含浸炭素ブロックフィルター、亜鉛含浸炭素ブロックフィルターおよび銅および亜鉛金属の混合物を含浸したブロックフィルターを、実施例1と同様の方法によって調製した。個々のプロセスの詳細は次の通りである:
0.5%銅含浸炭素ブロックフィルターを製造するために、3.0重量%の硝酸銅(ml)水溶液100mlを調製し、この溶液に水酸化アンモニウム(100%)1.4gを添加した。溶液を混合して透明な溶液を得た。この透明な溶液に、活性炭粒子(250μから500μの範囲の粒径)150gを添加し、内容物を実施例1に記載されるようにリボンブレンダー中で混合し、水性ミックスを得た。さらに、約0g/10分のMFRおよび0.45g/cmの嵩密度を有するAsahi Corporation(Japan)製の超高分子量ポリエチレンを混合しながら添加し、混合物を形成させた。この混合物をモールドに添加し、高温にて硬化させて、実施例1に記載される様式と同様の様式にてブロックフィルターを形成した。
【0056】
1重量%銅含浸に関して、硝酸銅6.0gを水100ml中に溶解させ、水酸化アンモニウム(100%)2.8gを添加した。手順の残りは、0.5重量%銅含浸に関して上述されたものと同じであった。
【0057】
同様の様式において、0.5重量%の亜鉛含浸炭素ブロックフィルターは、3.75重量%の硝酸亜鉛水溶液100mlをまず調製することによって製造した。この溶液に、水酸化アンモニウム(100%)1.1gを添加した。手順の残りは、0.5重量%銅含浸に関して上述されたものと同じであった。
【0058】
1重量%亜鉛含浸に関して、7.5%の硫酸亜鉛を含有する水溶液100mlを調製し、この溶液に水酸化アンモニウム(100%)2.2gを添加した。手順の残りは、0.5重量%銅含浸に関して上述されたものと同じであった。
【0059】
CuおよびZn混合金属含浸(0.67重量%銅および0.33重量%亜鉛含浸)
銅および亜鉛で含浸された炭素ブロックフィルターを製造するプロセスは、水酸化アンモニウムの存在下、活性炭粒子を銅/亜鉛の可溶性塩(好ましくは硝酸塩)の水溶液と混合する工程、続いてポリエチレンバインダーを混合する工程、充填物を成型する工程、圧縮する工程、およびオーブンで硬化させる工程を含んでいた。このプロセスに関して、4.2重量%の硝酸銅の水溶液100mlをまず調製した。この溶液に、硝酸亜鉛2.5gを添加し、両方の塩が完全に溶解するまで混合した。この100ml溶液に、水酸化アンモニウム(100%)2.7gを添加した。この水溶液に、活性炭粒子150gを添加し、混合して、上記実施例1にて記載されたようにリボンブレンダーにて水性ミックスを得た。この水性ミックスに、バインダー25gを添加して、混合物を得た。次いで、混合物をモールドに充填し、10kg圧力で圧縮し、250℃のオーブンにて3.5時間硬化させた。次いで、モールドを室温まで冷却し、ブロックをモールドから離型させた。
【0060】
上記実施例にて調製されたフィルターブロックは、別個の重力供給浄水デバイス内部に備え付け、水をフィルターに通過させた。フィルターブロックを通過して水中に浸出した金属の量を、出口からの処理水を回収することによって規則的な間隔で測定した。金属の量を周知の方法によって分析した。結果を、ブロックから浸出した銅または亜鉛の百万分の1部の単位で以下の表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
上記の表におけるデータは、水100リットルがブロックを通過した後であっても、浸出率は顕著に低く、許容可能なレベルの十分な範囲内であったことを示している。
【0063】
例示された例は、ブロック間の金属含有量の変動レベルが相対的に低く、ブロックからの金属浸出率が相対的に低い銀、銅または亜鉛から選択された金属で含浸された成型炭素ブロックフィルターを調製するためのプロセスを提供する。
【0064】
本明細書において例示され、記載された本発明の特定形態は、特定の変更が開示の明確な教示から逸脱することなく行われ得るので、例示することのみを目的としていることを理解すべきである。
【0065】
本発明が特定の実施形態を参照して記載されたが、本発明が多くの他の形態にて具現化できることを当業者は理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含浸炭素ブロックフィルターを製造するためのプロセスであって、
(i)水酸化アンモニウムの存在下、活性炭粒子を銀、亜鉛または銅の塩の水溶液と接触させ、水性ミックスを形成する工程、
(ii)前記水性ミックスを、5g/10分未満のメルトフローレートを有するバインダーと混合し、混合物を形成する工程、
(iii)前記混合物をモールドに添加する工程、
(iv)前記モールドを150から350℃の範囲の温度に加熱する工程、および
(v)炭素ブロックフィルターを離型する工程
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記塩が硝酸銀、硝酸亜鉛または硝酸銅である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水溶液中の硝酸銀の濃度は、0.01から10重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水溶液中の水酸化アンモニウムの濃度が、0.1から10重量%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
水酸化アンモニウムと銀、亜鉛または銅の前記塩との濃度比が、1:2から1:10の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記活性炭粒子と前記塩の前記水溶液との比が1:0.4から1:2の範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合物が、3kg/cmから20kg/cmの範囲の圧力を適用することによって圧縮される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
(i)少なくとも500m/gの表面積を有する炭素、
(ii)5g/10分未満のメルトフローレート(MFR)を有するバインダー、
(iii)銀、銅または亜鉛もしくはこれらの組み合わせの塩から選択される金属
を含む、金属含浸された炭素ブロックフィルター。

【公表番号】特表2012−505737(P2012−505737A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531427(P2011−531427)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062183
【国際公開番号】WO2010/043472
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】