説明

炭素繊維浮遊物検知装置

【課題】カーボンナノチューブ等の微細な炭素繊維浮遊物を検知する。
【解決手段】炭素繊維浮遊物10のフィルタリングのためのフィルタ1と、メッシュフィルタ下方に配置した櫛歯状電極2a,2bと、櫛歯状電極周囲に配置したオイル3と、フィルタ1と櫛歯状電極2a,bとの空間にプラスイオン風空間9を生成し、また、対向電極間に炭素繊維浮遊物の電気泳動空間12を生成し、電気泳動空間12内の電気的変化から炭素繊維浮遊物10を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に浮遊する炭素繊維の量を検知ないし測定することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維のうち、例えばカーボンナノチューブは、炭素原子が六角形に配置されたグラフェンシートを筒状に巻いた形状で長さ方向にほぼ一様な直径形状をなし、長さと直径との比であるアスペクト比が大きく直径が微細であり、機械的強度が高く、半導体にも金属にもなるなどにより、半導体材料、導電材料、電界電子放出源、強度増強材料等、各種用途に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、カーボンナノチューブ等の炭素繊維は、その微細さから製造工程等では人体への粉塵曝露に対して安全対策を施すことが好ましい。しかしながら、炭素繊維は、微細であることから、その量等を定性的あるいは定量的に検知することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−303250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭素繊維浮遊物を検知することができる浮遊物検知装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる浮遊物検知装置は、空中に浮遊する物をフィルタリングするメッシュフィルタと、メッシュフィルタ下方で対向配置された少なくとも一対の対向電極と、両対向電極周囲に配置された絶縁性ないし高抵抗性のオイルと、メッシュフィルタと対向電極との空間に、メッシュフィルタ通過物を帯電させて対向電極へ加速移動させるためのイオン風空間を生成する電界を、また、対向電極間オイル内空間には、メッシュフィルタ通過物が電気泳動できる電気泳動空間を生成する電界を印加する電界印加手段と、上記電気泳動空間内の電気的変化からメッシュフィルタ通過物を検知する検知手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【0007】
フィルターは炭素繊維を通過することができるサイズである。この場合、炭素繊維がカーボンナノチューブのようにアスペクト比が大きい炭素繊維の場合、そのフィルターは好ましくはメッシュ構造であり、サイズは好ましくは1μm〜500μmである。
【0008】
本発明装置では、空中を浮遊する物の中からナノメートルオーダー以下の物のみをメッシュフィルタによりフィルタリングし、このフィルタリングしたメッシュフィルタ通過物を電界印加手段で生成したイオン風空間内で帯電させて反対電荷側の対向電極方向に加速移動させ、対向電極周囲のオイルに衝突させると共に、電界印加手段で電気泳動空間とされた対向電極間のオイル空間内でメッシュフィルタ通過物を分極させ電気泳動させることで対向電極間に配向させ、検知手段により、上記配向した物の量などによる対向電極間の電気抵抗等の電気的変化から空中に浮遊する物を検知することができる。したがって、本発明装置では、このメッシュフィルタによりナノメートルオーダーサイズである炭素繊維を検知することができるようになる。この炭素繊維は、ナノメートルオーダーサイズであれば、カーボンナノチューブに限定されるものではなく、他の炭素繊維、例えば、グラファイトナノファイバ、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノバンブ、等にも適用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明装置によれば、カーボンナノチューブ等の微細な形状の炭素繊維浮遊物を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる装置の動作原理を概念的に示す図である。
【図2】図2は上記装置の動作説明に供するものでメッシュフィルタと電極との間の空間にイオン風空間が形成されている状態を示す図である。
【図3】図3は上記装置の動作説明に供するもので櫛歯状電極の間に電気泳動空間が形成され、櫛歯状電極間に炭素繊維浮遊物が配向している状態を示す図である。
【図4】図4は上記装置の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る炭素繊維浮遊物検知装置を説明する。図1は、同装置の動作原理を概念的に示すものであり、同図を参照して、1は、フィルタ、2は、櫛歯状に対向する上側と下側の対向電極、3は絶縁性ないし高抵抗性のオイル、4は第1直流電源、5は第2直流電源、6は検知手段、7はCPU(プロフェッサ)、8は表示装置である。フィルタ1は、例えば金属メッシュで構成されており、炭素繊維の大きさに対応するメッシュサイズを持って、カーボンナノチューブ等の炭素繊維をフィルタリングすることができるようになっている。炭素繊維がカーボンナノチューブであれば、フィルタ1の形状はメッシュが好ましく、メッシュサイズは1〜500μmが好ましい。それぞれの炭素繊維長さに適合した形状ならびにサイズのメッシュにすることが好ましい。
【0012】
電極2は、フィルタ1下方に配置されており、0.1−1000μmの間隔で複数の電極2a,2bが櫛歯状に交互に対向配置されて構成されている。フィルタ1と一方の櫛歯状電極2aとの間には、第1直流電源4から電界が印加される。フィルタ1には第1直流電源4のプラス電位、櫛歯状電極2aには第1直流電源4のマイナス電位が印加される。絶縁性オイル3は電極2周囲に配置されている。
【0013】
このオイル3は、絶縁性オイルでは例えばシリコンオイル、フッ素オイル等であり、高抵抗性オイルでは例えばパラフィルオイル等を利用することができる。第1直流電源4は例えば10〜1000V程度の電源であり、第2直流電源5は例えば100〜5000V程度の電源である。また電源はパルス電源を用いることができる。
【0014】
検知手段6は、櫛歯状電極2a,2b間の電気的変化、例えば、電流値、電圧値、抵抗値等の変化を検知し、その検知した電気信号をデジタル値に変換してCPU7に出力することができるようになっている。CPU7は、上記デジタル値に変換された電気信号からフィルタ1を通過した物の量を演算し、その演算した値を表示装置8に数値、グラフ、その他の表示形態で表示させる。この場合、炭素繊維サイズ以下の物が浮遊していない場合では、その表示した値は炭素繊維である。また、炭素繊維サイズ以下、すなわち、粉塵でもnm以下の物は存在しない清浄雰囲気とした空間内に実施の形態の装置を配置し、測定することで、炭素繊維の存在量をより正確に検知することができる。
【0015】
以下、図2、図3を参照して炭素繊維浮遊物検知装置の動作を説明すると、まず、第1、第2直流電源4,5を投入すると、図2で示すように、フィルタ1と櫛歯状電極2aとの間の空間には、第1直流電源4により、フィルタ1側をプラス、櫛歯状電極2a側をマイナスとした電界印加により、フィルタ1と電極2との間にイオン風空間9が生成される。そして、フィルタ1により、炭素繊維浮遊物10よりサイズが大きい他の浮遊物11が除去される一方、炭素繊維浮遊物10はフィルタ1を通過する。フィルタ1を通過した炭素繊維浮遊物10はイオン風空間9によりプラスに帯電され、マイナス側(反対電荷側)である櫛歯状電極2aに向けて加速移動し、櫛歯状電極2a上のオイル3に衝突する。
【0016】
一方、図3で示すように、櫛歯状電極2aと2bとのオイル空間12には、第2直流電源5により櫛歯状電極2a側をプラス、櫛歯状電極2b側をマイナスとした電界が印加されており、上記のようにしてオイル3に衝突した炭素繊維浮遊物10は、櫛歯状電極2aと2bとの間のオイル空間12内においてプラス、マイナスに分極し電気泳動することで当該櫛歯状電極2a,2b間に配向する。
【0017】
このように櫛歯状電極2a,2b間に電気伝導性の炭素繊維浮遊物10が配向すると、その間の電気抵抗値が低くなる方向に変化するので、検知手段6がこの電気的変化を検知し、その検知した値をデジタル値に変換してCPU7に入力する。CPU7においては、このデジタル値から炭素繊維浮遊物10の量を演算し、その演算した値を表示装置8に表示させる。図4は、実施の形態の装置の外観を示し、上記したフィルタ1は装置ケーシング13の上面に配備されて、装置外の浮遊物をフィルタ1でフィルタリングすることができるようになっている。表示装置8は装置ケーシング13の正面に配備されて、ユーザが表示装置8を視認しやすいようになっている。
【0018】
以上説明した本実施の形態では、フィルタ1により炭素繊維浮遊物10をフィルタリングし、フィルタ1と電極との間に第1直流電源4の投入によりイオン風空間9を生成し、このイオン風空間9において炭素繊維浮遊物10をプラスに帯電させてマイナス側である電極2方向に加速移動させる。そして、この炭素繊維浮遊物10を電極2周囲のオイル3に衝突させると共に、第2直流電源5の投入により電極2を構成する櫛歯状電極2a,2b間をオイル充填の電気泳動空間12として炭素繊維浮遊物10を分極させ電気泳動させることで櫛歯状電極2a,2bに配向させる。そして、検知手段6により、上記配向した炭素繊維浮遊物の量などに対応した電気抵抗等の電気的変化から炭素繊維浮遊物10を検知することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 フィルタ
2 電極
2a,2b 櫛歯状電極
3 オイル
4 第1直流電源
5 第2直流電源
6 検知手段
7 CPU
8 表示装置
9 イオン風空間
10 炭素繊維浮遊物
11 他の浮遊物
12 電気泳動空間(オイル空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に浮遊する物をフィルタリングするためのメッシュフィルタと、
メッシュフィルタ下方で対向配置した少なくとも一対の対向電極と、
両対向電極周囲に配置された絶縁性ないし高抵抗性のオイルと、
メッシュフィルタと対向電極との空間に、メッシュフィルタ通過物を帯電させて対向電極へ加速移動させるためのイオン風空間を生成する電界を、また、対向電極間オイル内空間に、メッシュフィルタ通過物が電気泳動できる電気泳動空間を生成する電界を印加する電界印加手段と、
上記電気泳動空間内の電気的変化からメッシュフィルタ通過物を検知する検知手段と、
を具備した、ことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7724(P2011−7724A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153506(P2009−153506)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】