説明

炭素膜

【課題】電力消費を低く抑えることができる一方で要求される輝度レベルでの発光に必要な電子放出を機械的、電気的に安定して行うことを可能とする炭素膜を提供すること。
【解決手段】基板上に曲線状に繋がる壁4を電子放出点の配置間隔を制約する壁として網目状に成膜し、この網目状の壁4に囲まれた領域内に先端が電子放出点となるカーボンナノチューブ8を上記網目状の壁4の高さよりも高く成膜し、このカーボンナノチューブ8にその膜下部から膜中途に至りまとわる形態で広がるように壁状の膜10を成膜した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界電子放出用材料としての炭素膜およびこれを用いた電子放出源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、携帯端末、パソコン等の電子機器においては、TFT液晶等の液晶は、当該機器の薄型化の促進に貢献し、また、低消費電力であるとして、その表示部に多用されるに至っている(例えば、特許文献1参照。)。このような電子機器において、液晶を用いた表示部は、一般に、液晶表示パネルと、該液晶表示パネルをバック側から照明するバックライトとにより構成されている。このような電子機器は、液晶を用いたことにより、低消費電力化が達成されてきている一方で、消費電力の大半がバックライトにより消費されているという現状になっている。
【0003】
このような現状において、液晶テレビ等のごとく電子機器の薄型化に伴い、バックライトも薄型化と低消費電力化とが要求されてきている。
【0004】
こうしたバックライトとして、フィールドエミッション型の照明ランプが提案されている。このフィールドエミッション型の照明ランプは、陽極と陰極との間に電界を印加して陰極から電子を放出しこの放出した電子を陽極側の蛍光体に衝突させて該蛍光体を励起発光させる照明ランプである。
【0005】
この種の照明ランプとしては、陰極に電子放出源として炭素膜を用いたものがあるが、この炭素膜にはバックライトとして電力消費を低く抑えることができる一方で要求される輝度レベルを充足することができる電子放出特性を備えた炭素膜を得ることができるには至っていない。
【0006】
特に、炭素膜の電子放出源としての重要な性能の一つに電界集中があり、そのため、アスペクト比が高いカーボンナノチューブ等のカーボンファイバを基板上に多数密集させて成膜する技術が提案されてきている。
【0007】
しかしながら、カーボンナノチューブでは、アスペクト比が極めて大きいために基板上に機械的に支持しにくく、かつ、基板上で倒れ込み易いために照明ランプの電子放出源としての安定性が低く、また、カーボンナノチューブに電流を流し込むために必要な基板との電気的コンタクトがとりにくいために照明ランプの電子放出源として必要な電子放出特性を得難い。
【0008】
さらに、カーボンナノチューブが多数密集すると、アスペクト比が高く1つの電子放出特性が高いにもかかわらず、全体としては電界集中が起こりにくく、電子放出特性が損なわれ易い。
【特許文献1】特開平06−242439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明により解決すべき課題は、カーボンナノチューブを用いた場合に、当該カーボンナノチューブの有利性を活用する一方で、その課題を克服することで、電界電子放出源として用いた場合、低電界で多量の電子を機械的、電気的に安定して放出することができる炭素膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による炭素膜は、電界電子放出用材料としての炭素膜であって、基板上に曲線状に繋がる壁が電子放出点の配置間隔を制約する壁として網目状に成膜され、この網目状の壁に囲まれた領域内に先端が電子放出点となるカーボンナノチューブを上記網目状の壁の高さよりも高く成膜されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、好ましい態様は、上記カーボンナノチューブにはその膜下部から膜中途に至りまとわる形態で広がるように壁状の膜が成膜され、この壁状の膜により上記カーボンナノチューブが基板上に支持されかつ該基板との電気的コンタクトをとっていることである。
【0012】
上記基板には、基板の名称に限定されず、矩形あるいは円形等の各種形状を備えた基板、あるいはワイヤ状の基板等、本発明の効果を達成することができる形状であればよく、その具体的に特定した形状に限定されるものではない。ワイヤ状とは導電性を有する線状体を含む。ワイヤ状とは、直線状、曲線状、それらの複合形状を含む。基板がワイヤである場合、そのワイヤは中実、中空を問わない。ワイヤの断面形状は、円形、楕円形、矩形、その他の形状を含む。
【0013】
網目状の壁(膜)は、そのすべてが連続した壁で成膜されていることに限定されず、その一部で途切れている壁を含むことができる。その途切れ状態がどの程度であるかには何等限定されるものではない。
【0014】
膜下部から膜中途において、膜下部とは、壁状の膜がカーボンナノチューブの最下端部にまとわりついて接触する必要はなく、どの位置かに具体的に限定されるものではない。また、膜中途とは、カーボンナノチューブの先端近傍にまで含むことができるものであり、また、カーボンナノチューブの半分以下の高さも含むことができるものであり、具体的に限定されるものではない。この膜下部から膜中途とは本発明を実施するうえで、本発明が意図する効果を達成することができる位置を含むものである。
【0015】
本発明の炭素膜によると、網目状の壁に囲まれた領域内に先端が電子放出点となるカーボンナノチューブを上記網目状の壁の高さよりも高く成膜されているので、カーボンナノチューブが網目状の膜の壁によりその配置間隔が制約されているので、カーボンナノチューブが多数密集することを制約して、それぞれのカーボンナノチューブの電界集中性能を発揮させることが可能となって優れた電子放出特性を提供することができるようになる。
【0016】
上記本発明の好ましい態様では、
カーボンナノチューブのアスペクト比が大きいのであるが、壁状の膜の膜形態が、カーボンナノチューブにその膜下部から膜中途に至りまとわる形態で壁状に広がる形態をなして成膜されているので、
(1)カーボンナノチューブの基板上での姿勢が極めて安定化し、電子を安定して放出することができ、
(2)複数のカーボンナノチューブそれぞれの成膜方向が揃い易くなり、この面からも複数のカーボンナノチューブそれぞれからの電子放出量が基板全体にわたり均一にすることができ、フィールドエミッション型の照明ランプ全体において蛍光体を励起発光させる電子量が均一になって発光輝度を照明ランプ全体で均一化し、輝度むらを低減することができ、
(3)基板上に機械的に強固に支持され、基板上に倒れ込みにくくなる結果、照明ランプの電子放出源としての安定性が向上するとともに、
(4)カーボンナノチューブの直径が細くても、電流を流し込むための基板との電気的コンタクトを壁状の膜によりとることができることに加えて、
(5)カーボンナノチューブが網目状の膜の壁によりその配置間隔が制約されているので、カーボンナノチューブが多数密集することを制約して、それぞれのカーボンナノチューブの電界集中性能を発揮させることが可能となって優れた電子放出特性を提供することができるようになる。
【0017】
さらに加えて、本発明の炭素膜では、直流プラズマCVD法により成膜する場合では、カーボンナノチューブをさらに高配向に成膜することができる。
【0018】
上記壁状の膜の側面から見た形状が概ね裾広がりの形状をなしていることが好ましい。
【0019】
この形状によると、壁状の膜に電界集中しにくくすることができるとともに、カーボンナノチューブを機械的に支持する姿勢を安定化させることができ、かつ、基板との電気的な接触抵抗が下がり、電流を効率的に流すことができるようになる。その結果、低い電力消費で多量の電子を放出することができる炭素膜を提供することができる。
【0020】
上記網目状の壁はカーボンナノウォールにより構成することができる。カーボンナノウォールは、多数のナノオーダの壁状炭素薄片が平面方向に集合連成された形態であり、数十層のグラフェンシートからなる。カーボンナノウォール単独の場合、電圧印加により端部である壁状部の上面で高い電界集中が起こって電子を放出することができるものである。しかしながら、本発明の場合では、カーボンナノチューブの直径が極めて細く、かつ、アスペクト比が大きく、網目状の壁の高さよりも高いため、電界集中が起こらない。電界集中は上記カーボンナノチューブに起こるようになっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電力消費を低く抑えることができる一方で要求される輝度レベルでの発光に必要な電子放出を機械的、電気的に安定して行うことを可能とする炭素膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係る炭素膜、これを備えた電子放出源、ならびにフィールドエミッション型の照明ランプを詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の実施の形態に係る炭素膜の部分的な断面図、図2は同炭素膜の部分的な斜視図、図3は同炭素膜を模式的に示す側面図である。これらの図には炭素膜と、基板を含む電子放出源が示されている。
【0024】
これらの図において、基板2上に成膜技術、例えば、直流プラズマCVD法により、曲線状に繋がって連続した、網目状の連続壁(膜)4が成膜される。この基板2にはシリコンウエハ、石英ガラス、等の基板がある。この基板2では基板表面に金属膜あるいは導電性膜を設けたものでもよい。あるいは、基板2はアルミニウム等の金属製の基板でもよい。基板2には矩形あるいは円形等の各種形状を備えた基板あるいはワイヤ状の基板でもよい。この炭素膜の用途には、種々あり、炭素膜が有する強度を利用した補強材料、炭素膜の導電性を利用した電気配線等に用いる電気材料、炭素膜の電子放出特性を利用した電子エミッタ等に用いる電子材料がある。そのうち、電子エミッタは不純物が混入されないことが好ましい。電子エミッタは、直径や長さ、および性能を制御可能であることが重要である。
【0025】
基板2に連続的に成膜してなる壁4は、平面方向から見た場合、全体がほぼ網目状になっている。この壁4の高さ(h)はほぼ10nm以下の程度であり、この壁4の幅(W)は4nmないし8nm程度である。この壁4で囲まれた基板2上の領域6は、チューブ状に伸びその先端が電界集中して電子を放出する電子放出点となるカーボンナノチューブ8が成膜される領域となる。この領域6は、壁4で囲まれていることにより、各領域6内それぞれに成膜される電子放出点の相互の間隔を制約ないしは規定することができるようになっている。
【0026】
この領域6には、成膜技術、例えば、直流プラズマCVD法により、先端が電子放出点となるカーボンナノチューブ8が成膜される。このカーボンナノチューブ8は、上記網目状の壁4の高さ(h)よりも高い高さ(H)、例えば、60μm以上程度に成膜される。このカーボンナノチューブ8は、平行に対向する平行平板電極間において一方の電極上に配置された矩形基板に対して該矩形基板に垂直ないしはほぼ垂直に均等に電界を印加して成膜したり、あるいは、円筒形のコイルの中心に該コイルの長手方向に沿って配置された断面円形をなす導電性ワイヤに対して該導電性ワイヤの外周面全周に均等に電界を印加して成膜するものであるから、矩形基板の基板面にはほぼ垂直に配向することができ、導電性ワイヤの外周面には半径方向に配向することができる。
【0027】
このカーボンナノチューブ8には、成膜技術、例えば、直流プラズマCVD法により、その膜下部から膜中途に至りまとわる形態で広がるように壁状の膜10が成膜される。この壁状の膜10は、カーボンナノチューブ8を基板2上に支持するとともに基板2との電気的コンタクトをとることができるものである。この壁状の膜10の側面から見た形状は概ね裾広がりの形状をなしている。この形状は、例えば、円錐形状になっている。ただし、幾何学的に完全な円錐形を意味するものではなく、理解し易い表現として説明していて、壁状の膜10は横広がり状態、螺旋状態、等の各種の形状となっている。いずれにしても、この壁状の膜10は、基板2に対して広い底面積で接触することにより、カーボンナノチューブ8を基板2に機械的に強固に支持することができるとともに、基板2に対するカーボンナノチューブ8の電気的コンタクトを十分に確保することができる。
【0028】
以上の構造を有する実施の形態の炭素膜では、カーボンナノチューブ8は、アスペクト比が大きいのであるが、壁状の膜10の膜形態が、カーボンナノチューブ8にその膜下部から膜中途に至りまとわる形態で壁状に広がる形態をなして成膜されているので、基板2上に機械的に強固に支持され、基板2上に倒れ込みにくくなる結果、照明ランプの電子放出源としての安定性が向上するとともに、カーボンナノチューブ8の直径が細くても、電流を流し込むための基板との電気的コンタクトを壁状の膜10によりとることができるので、照明ランプの電子放出源として必要な電子放出特性を得ることができる。
【0029】
また、実施の形態の炭素膜では、図4に示すように、この基板に平行に対向した陽極と陰極との間の電圧印加により、カーボンナノチューブ8の先端の周りの電位面12が急激に変化して、電界が強く集中するようになっている。また、網目状の膜4には電界集中が起こらない。また、カーボンナノチューブ8は網目状の壁4により相互の間隔を互いの電界集中作用を阻害しないように適宜の間隔(D)、例えば、100μm程度隔てられている。実施の形態では網目状の壁4で囲まれた1つの網目領域6内に1つのカーボンナノチューブ8を形成したが、2以上の複数でもよい。このカーボンナノチューブ8の集合程度は、従来のカーボンナノチューブのような密集状態ではなく、網目領域6毎のカーボンナノチューブ8の電界集中に対する影響は極めて小さいものである。
【0030】
図5および図6を参照して炭素膜の成膜方法を説明する。図5はその成膜に用いる成膜装置の概略構成を示す図、図6は成膜操作に用いるチャンバ内圧と電流とを示す図である。石英製のチャンバ14の内部に一対の平行平板電極16,18を対向配置する。チャンバ14はガス導入口管20とガス排気口22とを備える。直流電源24の負極側を上側平行平板電極18に接続し、直流電源24の正極側を接地する。下側平行平板電極16を接地する。チャンバ14に導入するガスは水素とメタンとの混合ガスである。下側平行平板電極16上には基板2を搭載する。
【0031】
まず、チャンバ14内にガス導入口20から水素ガスを導入しその内圧を30torr程度に徐々に減圧し、チャンバ14内圧力を30torrにする。チャンバ14内圧が30torrになると、その圧力を5ないし25分程度維持する。この場合、直流電源24の印加により、プラズマ23を発生させ、電流を2.5A程度にまで徐々に増加させ、チャンバ14内圧が30torrになるときには電流を2.5Aに維持する。こうして基板2上の酸化物を除去する。
【0032】
次いで、チャンバ14内にガス導入口20から水素ガスとメタンガスとの混合ガスを導入しチャンバ14内圧を75torr程度にまで徐々に増大し、チャンバ14内圧が75torrになると、この内圧を2時間程度維持する。なお、圧力としてはこれに限定されず、10ないし100torrでも実施することができる。このとき、同時に直流電源24により電流を2.5Aから6A程度にまで徐々に増加させ、6Aに到達すると、その電流を2時間維持する。なお、メタンガスに代えて他の炭素を含むガス、例えば、アセチレン、エチレン、プロパン、プロピレン等のガス、あるいは一酸化炭素、二酸化炭素、エタノールやアセトンの有機溶剤の蒸気を用いることができる。
【0033】
その結果、基板2上に発生するプラズマ23により、基板2の温度が900℃ないし1150℃程度となって、メタンガスが分解され、基板2表面に図1、図2に示す炭素膜が成膜される。
【0034】
以上の成膜装置に代えて、図7に示す成膜装置でも同様に実施することができる。図7に示す成膜装置は、導電性または絶縁性の円筒形のチャンバ14を備え、このチャンバ14にガス導入口20とガス排出口22とを設ける。チャンバ14の内部には筒状の基板であるコイル26を配設する。このコイル26内部のほぼ中心軸に沿って導電性のワイヤ28を配置する。コイル26は一方向にストレートに延び、その内部空間に円筒状にプラズマ30が発生する。ワイヤ28はこの内部空間に細長に延びている。コイル26の内周面とワイヤ28の外周面とはその延設方向にほぼ均等に距離を隔てて対向している。コイル26の一端側を直流電源24の負極側に接続する。ワイヤ28を直流電源24の正極側に接続する。
【0035】
以上の成膜装置においても、上記と同様にチャンバ14内圧と電流とを図6に示す操作に従って制御する。この制御によりワイヤ28表面に図1、図2に示す炭素膜を成膜することができる。
【0036】
なお、図8および図9に上記炭素膜のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。図8は、カーボンナノチューブ8と網目状の膜4とを示し、図9は、カーボンナノチューブ8に壁状の膜10が成膜されている様子を示す。
【0037】
図8は、陽極と陰極との間の印加電圧3.0kVでの電子顕微鏡写真である。図9は、印加電圧3.0kVでの電子顕微鏡写真である。図8は実施の形態の炭素膜を横方向(側面方向)から撮影した写真である。この写真にはカーボンナノウォールからなる多数の網目状の膜4と、この網目状の膜4で囲まれた領域内の多数のカーボンナノチューブ8とが成膜されている状態が示されている。図9は実施の形態の炭素膜を横方向(側面方向)から撮影した写真である。この写真にはカーボンナノウォールからなる多数の網目状の膜4と、この網目状の膜4で囲まれた領域内の多数のカーボンナノチューブ8と、壁状の膜10とが成膜されている状態が示されている。図9の写真には網目状の壁4に囲まれた領域内に先端が電子放出点となるカーボンナノチューブ8が網目状の壁4の高さよりも高く成膜され、このカーボンナノチューブ8にその膜下部から膜中途に至りまとわる形態で広がるように壁状の膜10が成膜されている状態が示されている。
【0038】
図10は、図9のSEM写真に示す炭素膜によるフィールドエミッション特性を示す図である。図10の横軸は印加電圧、縦軸は電流である。実線(1)は実施の形態の炭素膜によるフィールドエミッション特性を示す。破線(2)はカーボンナノウォールによるフィールドエミッション特性を示す。図10で明らかであるように、実施の形態の炭素膜によるフィールドエミッション特性は、カーボンナノウォールのそれよりも優れている。
【0039】
図11は、実施の形態の炭素膜をパイプ状のフィールドエミッション型の照明ランプに適用した例を示す。図11において、パイプ状の管体32は、ガラス好ましくはソーダライムガラスからなり内部が真空状態とされている。管体32は、直管形状ではなく、U字管形状でもよい。管体32の内面には、蛍光体付き陽極34が形成されている。蛍光体付き陽極34は、電子線励起により白色に発光する蛍光体粉末から構成された層状の蛍光膜34aと、導電性に優れた金属好ましくはアルミニウムを蒸着して構成された層状の陽極膜34bとから構成されている。管体32内にはその中央を長手方向にワイヤ状陰極36が配置されている。ワイヤ状陰極36は、蛍光体付き陽極34と上記長手方向で対向している。
【0040】
ワイヤ状陰極36は、導電性のワイヤ36aとその表面に成膜された炭素膜36bとから構成されている。このワイヤ36aの材料は特には限定されないが、例えば、グラファイト、Ni、Fe、Co、等がある。
【0041】
図12(a)(b)は、実施の形態の炭素膜をフラットパネル状のフィールドエミッション型の照明ランプに適用した例を示す。図12(a)は正面から見た断面図、図12(b)は図12(a)のA−A線に沿う断面図である。これらの図において、このフィールドエミッション型の照明ランプは、内部が真空とされたフラットパネル38,40と、一方のフラットパネル38の内面に設けられた蛍光体付き陽極34と、他方のフラットパネル40上に間隔を隔てて配置された複数のワイヤ状陰極36とを備える。
【0042】
ワイヤ状陰極36は、図14の照明ランプと同様に、導電性ワイヤ36aと、その導電性ワイヤ36aの表面に形成された炭素膜36bとを含み、この炭素膜36bは、実施の形態の炭素膜により形成されている。
【0043】
以上の構成を備えた照明ランプに対して蛍光体付き陽極34とワイヤ状陰極36との間に直流電圧を印加したところ、高輝度で発光する結果が得られた。 この試験の結果は、実施の形態の照明ランプをバックライトに用いた場合、低消費電力で高輝度で大型液晶テレビ等の液晶表示パネルをバック側から照明するバックライトとして非常に適したものとなることを示す。
【0044】
本発明は、上述の実施の形態に限定されず、種々な変形が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る炭素膜の断面構造を示す図である。
【図2】図2は図1の炭素膜の斜視図である。
【図3】図3は図1の炭素膜を模式的に示す図である。
【図4】図4は図1の炭素膜のカーボンナノチューブに対する電界集中を示す図である。
【図5】図5は図1の炭素膜の成膜に用いる成膜装置の概略構成図である。
【図6】図6は図1の炭素膜の成膜操作を示す図である。
【図7】図7は他の成膜装置の概略構成図である。
【図8】図8は、陽極と陰極との間の印加電圧3.0kVでの炭素膜の電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、印加電圧3.0kVでの炭素膜の電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は実施の形態の炭素膜を用いた電子放出源のフィールドエミッション特性を示す図である。
【図11】図11は実施の形態の炭素膜を用いた電子放出源が組み込まれているフィールドエミッション型の照明ランプの概略構成図である。
【図12】図12は実施の形態の炭素膜を用いた電子放出源が組み込まれているフィールドエミッション型の照明ランプの概略構成図であって、図12(a)は正面から見た断面図、図12(b)は図12(a)のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 基板
4 網目状の壁(膜)
8 カーボンナノチューブ
10 壁状の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界電子放出用材料としての炭素膜であって、基板上に曲線状に繋がる壁が電子放出点の配置間隔を制約する壁として網目状に成膜され、この網目状の壁に囲まれた領域内に先端が電子放出点となるカーボンナノチューブを上記網目状の壁の高さよりも高く成膜されている、炭素膜。
【請求項2】
上記カーボンナノチューブには、その膜下部から膜中途に至りまとわる形態で広がるように壁状の膜が成膜され、この壁状の膜により上記カーボンナノチューブが基板上に支持されかつ該電極基板との電気的コンタクトをとっている、請求項1に記載の炭素膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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