説明

炭酸ランタンの崩壊製剤

共沈により調製され、かつ錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、およびスプリンクル剤等の経口医薬剤形の製造を促進する、炭酸ランタンの崩壊製剤と、高リン血症の患者を治療するためのかかる剤形の使用方法とが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、およびスプリンクル剤等の薬の経口固形剤形を促進する、炭酸ランタンの安定な分解製剤と、高リン血症の患者を治療するためのかかる剤形の使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
血液が高濃度の無機リンを貯えている場合に、高リン血症が起こる。この症状は、慢性腎不全や末期腎臓疾患を含む重度の腎機能障害を有する患者においてよく見られる。カルシウムと同様に、リンは骨格と歯に見出され、ビタミンDを一貫して摂取することで吸収が効率的に起こる。正常な状態では、腎臓はリンを排泄する。しかしながら、高リン血症の患者では、腎臓がリンを除去することができず、透析は、リンの除去には効果がないことが分かっている。
【0003】
高リン血症の患者は症状を示さないことが多い。しかしながら、骨が漸進的に弱くなることが起こり、痛みが生じたり、骨がますます破損したり折れたりし易くなったりする。血管および心臓の壁に結晶化するリンは、動脈硬化症を引き起こし、卒中、心臓発作、および血行不良につながる場合がある。これらのリンの結晶が皮膚に生じた場合、皮膚の感度も生じる場合がある。
【0004】
炭酸ランタンは、公知のリン吸着薬であり、高リン血症の患者、具体的には末期腎臓疾患に起因する高リン血症の患者における、リン濃度を下げるために使用されている。炭酸ランタンによるリン吸着の阻害により、不溶性のランタンリン複合体の形成を通じて、血清リンとリン酸カルシウムの減少が達成される。さらに、ステージ4の慢性腎疾患患者の高リン血症の治療を含めて、リン吸着薬の標識付けした使用を拡大しようとする最近の動きがある。2007年の10月に、米国食品薬品局(FDA)の心血管および腎医薬諮問委員会(Cardiovascular and Renal Drug Advisory Committee)は、このより広い使用を含む拡大を推奨した。
【0005】
炭酸ランタンは、商標名Fosrenol(登録商標)で販売されている500、750および1000mgのチュアブル錠剤の形で、Shire US社から現在利用可能である。チュアブル錠は患者が入手できる唯一の剤形である。これらの錠剤は、水中に置かれても崩れず、長時間の期間後でさえ大きな顆粒として残る。Fosrenol(登録商標)チュアブル錠はサイズもかなり大きく、500mg強度の直径18mmから1000mg強度の直径22mmまでの範囲にある。チュアブル錠は、患者にとって複葉が困難である場合が多く、しばしば不愉快な味がするため、理想的でない場合が多い。さらに、多くの患者、特に子どもや高齢者は、そのような錠剤の完全な咀嚼に困難を示し、これは治療のための送達の不十分さにつながる。リンの摂取は不溶性の炭酸ランタン粒子の表面積に依存して決まる。炭酸ランタンの表面積は、患者の租借の完全さに依存して決まるため、活性炭酸ランタンの実際の服用量の有効性には広い分散がある。したがって、有効量の炭酸ランタンを得るにはFosrenol(登録商標)の投薬量の増加が多くの場合必要である。
【0006】
特許文献1は、胃腸管への投与のための形をした、医薬として許容される希釈剤または担体と混合された式La2(CO33・xH2O、xは3−6の炭酸ランタンから構成された、高リン血症の治療のための医薬組成物について開示している。その組成物の調製方法も開示され、3〜6モルの水を備えた炭酸ランタンを得るよう八水和炭酸ランタンをオーブンで乾燥させることを含む。この文献は、有効な遵守(compliance)および治療用送達
のための炭酸ランタンの経口送達の適切な手段を開示していない。
【0007】
特許文献2は、式La2(CO33・xH2O、xは0−10の炭酸ランタン組成と、水酸化炭酸ランタンへの脱炭酸に抗して炭酸ランタンを安定化させるための少なくとも1つの単糖または二糖の安定化剤とを含む製剤で、高リン血症を治療する方法を開示している。この文献は、有効な遵守および治療用送達のための炭酸ランタンの経口送達の適切な手段を開示していない。
【0008】
特許文献3は、ランタンと、咀嚼可能な賦形剤とを含む錠剤形式のチュアブルランタンについて開示している。この出願はさらに、ランタン化合物と賦形剤をミキサー中で粉末混合して混合物を形成する方法を通じて生産されたランタン錠剤についても開示している。この混合物は、次に、スラグ材料へと圧縮されるか、またはストランド材料へローラー圧縮される。その後、圧縮された材料は、自由に流動する混合物へと粉砕され、錠剤へと圧縮される。これらの製剤は高リン血症の治療の開示された使用用途がある。当該技術分野の現状のこの説明は、患者の遵守および治療用送達におけるこれらのチュアブル錠の不十分さに取り組んでいない。
【0009】
特許文献4−7は、リン結合能を増大させる比表面積を備えた炭酸ランタン製剤について開示している。これらの出願はよりよい患者の遵守および治療用送達を許容する適切な剤形に取り組んでいない。
【0010】
特許文献8は、サンドイッチビスケットの形をした炭酸ランタン製剤を開示している。この「クッキー」は、食べられない薬物(つまり炭酸ランタン)を支える2つ以上の層を有している。しかしながら、この出願は、炭酸ランタンのリン結合を改善する方法を開示していない。
【0011】
炭酸ランタンの医薬剤形の現状は、十分でない。咀嚼錠のかなりの大きさと、不快な味とが相まって、患者の遵守が低くなるとともに、治療用送達も不十分となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,968,976号
【特許文献2】米国特許第7,381,428号
【特許文献3】米国特許第7,465,465号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0161474号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0003018号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0083791号
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0226735号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0208080号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
炭酸ランタンの新しい医薬剤形が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、水中に置かれるとすばやく崩壊し、このため薬の多くの経口用の固体および液体の剤形の開発を可能にする、炭酸ランタン共沈物の製剤について開示する。
【0015】
さらに、本発明は、より低用量のランタン元素を利用しつつ、Fosrenol(登録
商標)の500、750および1000mg用量に生物学的に等価な剤形を提供する。
本明細書に開示される剤形は、水分の獲得や喪失に対してかなり安定している。最終含水率は、使用される予備的方法により制御されるので、所定レベルに乾燥させる必要はない。
【0016】
本発明の目的に従って、出願人は、空気乾燥させた水和炭酸ランタンを共沈させることによる、炭酸ランタンの経口用剤形の製造方法を開発した。この共沈物は、錠剤の形式に圧縮すると水の中で迅速に崩壊するため、多くの経口剤形の開発を可能にする。これらの剤形には、経口溶液、エリキシル剤、錠剤、カプセル剤、スプリンクル剤、顆粒剤、および乾燥粉末剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、炭酸ランタンを含む共沈物中の添加剤として、崩壊剤が使用されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、水和炭酸ランタンを空気乾燥させ、次にかかる材料を賦形剤と共沈させることにより調製された、炭酸ランタンの経口用剤形である。本明細書に開示される場合、「共沈」は、残りの材料が結晶化する代わりに沈殿するように、混合物から急速に水を取り除くプロセスを指す。共沈は凍結乾燥および噴霧乾燥を含む当該技術分野で周知の方法により実施することが可能であり、マンニトールまたはラクトースを含む糖、五価アルコールまたは六価アルコールの存在下で実施することが可能である。限定ではない例として本明細書に開示される凍結乾燥および噴霧乾燥を含めて、多くの共沈技術が利用可能である。この共沈プロセスにより、水分の獲得および喪失に対してかなり安定し、リンの結合力を保持し、かつ水に入れられると完全に崩壊する小さな粒径の材料が生じる。
【0019】
本発明で使用される炭酸ランタン(La2(CO33)は、水和型(La2(CO33・xH2O)であり、4〜15モルの水(x=4−15)をどの場所であってもよいが含ん
でいる。米国特許第5,968,976号に記載されているいずれかの方法により、合成出発原料として本明細書で使用される空気乾燥させた水和炭酸ランタンを調製することができるが、当該技術分野で周知の他の方法が使用されてもよい。
【0020】
製剤中に使用されるランタン元素の量は100mgから1000mgまでの範囲である。好ましい実施形態では、使用されるランタン元素の量は250mg〜700mgを含む。より高用量の市販されている500、750および1000mgのFosrenol(登録商標)チュアブル錠の生物学的同等性を保持しつつ、より低用量の炭酸ランタン元素も可能である。炭酸ランタンおよび水酸化炭酸ランタンの両方を含む任意のランタン元素の複合体または塩も使用することが可能であるが、用量の範囲はすべてランタン元素の量に基づく。
【0021】
錠剤にするための賦形剤は、共沈に先立って、上述の水和炭酸ランタンと混合される。適切な錠剤用の賦形剤には糖および五価アルコールもしくは六価アルコールが含まれるが、これらに限定されない。1実施形態では、マンニトールが錠剤用の賦形剤である。糖誘導体および浸透圧利尿薬として、賦形剤マンニトールは、凍結乾燥後に湿りにくいことが知られている。本発明の別の実施形態では、ラクトースが錠剤用賦形剤として使用される。本発明の別の実施形態は、「製薬賦形剤ハンドブック(The Handbook of Pharmaceutical Excipients)」に記述されている薬剤のような、当業者に周知の他の製薬錠剤用の薬
剤の使用を含む。
【0022】
本発明の別の実施形態では、共沈の前に、崩壊剤も水和炭酸ランタン−賦形剤混合物に加えられる。崩壊剤は当業者に周知の賦形剤である。1実施形態では、コロイド状二酸化
ケイ素または二酸化ケイ素が崩壊剤である。これらの崩壊剤は、凍結乾燥された剤形の効率的な崩壊を可能にするのに非常に有効である。本発明の他の実施形態は、マンニトール/ソルビトール混合物、珪酸カルシウム、グリコール酸デンプンナトリウムとカルボキシメチルデンプンナトリウムの混合物、コロイド状SiO2、Pharmaburst(登
録商標)としてSPI Polyols社により現在販売されているもの等の迅速な崩壊を可能にする同時加工賦形剤システム、Avicel(登録商標)としてFMC社により現在販売されているもの等のケイ酸化微結晶性セルロース、ExploTab(登録商標)としてJ.Rettenmaier& Soehne社により現在販売されているもの等のグリコール酸デンプンナトリウムとカルボキシメチルデンプンナトリウムの混合物、Ac−Di−Sol(登録商標)としてSeppicにより現在製造されるもの等のクロスカルメロースナトリウム、およびAmberlite(登録商標)としてRohmおよびHaas社により現在製造されているもの等のイオン交換樹脂、等の崩壊剤の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
好ましくはRxCIPIENTS(登録商標)FM−1000としてHuber社により現在販売されているもの等のコロイド状二酸化ケイ素または二酸化ケイ素の使用が、崩壊剤として使用される。このHuber社の材料は、CaSiO4と、より少量のCaS
4とを含んでおり、迅速に崩壊する経口用製剤に使用するために販売されている。
【0024】
製剤に使用される錠剤用賦形剤の量は、約100から約1000mgまでの範囲である。好ましい実施形態では、使用される錠剤用の賦形剤の量は約100から約750mgまでの範囲である。錠剤用の賦形剤に対する水和炭酸ランタンの種々の比が許容される。そのような比は約0.1〜約10までの範囲で変わってよい。好ましい実施形態では、錠剤用賦形剤に対する水和炭酸ランタン(水和炭酸ランタン:錠剤用賦形剤)の1:1の比が使用される。
【0025】
製剤中で使用される崩壊剤の量は、炭酸ランタンの重量に基づいて、0から25%までの範囲である。好ましい実施形態では、使用される崩壊剤の量は、炭酸ランタンの重量に基づいて、0〜15%を含む。水和炭酸ランタン:錠剤用賦形剤:崩壊剤の種々の比が許容される。一般に、これらの比は約1−75:1−75:0−34の範囲である。好ましくは、かかる比は、約25−75:25−75:2−25の範囲である。最も好ましい実施形態では、水和炭酸ランタン:賦形剤:崩壊剤の比は約50:50:10である。
【0026】
次に、水和炭酸ランタン−賦形剤の混合物または水和炭酸ランタン−賦形剤−崩壊剤の混合物は凍結乾燥または噴霧乾燥等により共沈を受ける。水和炭酸ランタン混合物を共沈させると、過剰な水が除去され、炭酸ランタン共沈物が形成される。この炭酸ランタン共沈物は、ほぼ間違いなく、水和された炭酸ランタンとしてまたは別の状態として、いくらかの再生可能ではあるか未定量の水を含む。さらに、この複合体は空気に開放してもかなり安定しており、追加の水分をあまり吸収しない。
【0027】
炭酸ランタン共沈物は、さらに崩壊剤、滑剤(glidant)、および潤滑剤等の任意選択の賦形剤を組み込んだ適切な医薬剤形に圧縮されてもよい。そのような剤形は、錠剤、カプセル剤、スプリンクル剤を含むがそれらに限定されない。好ましい実施形態では、共沈物は容易に噛まれるか、全体を丸飲みできるか、または水またはジュースに分散させてから服用できる、錠剤に圧縮される。
【0028】
この製剤の迅速かつ完全に崩壊する性質は、細かく分散された粒子としての炭酸ランタンに、この炭酸ランタンの以前の製剤よりも大きな表面積を提供するため、固形経口剤形の大きさおよび形は重要ではない。したがって、より低用量の炭酸ランタンが使用されてもよい。1実施形態では、炭酸ランタンを含む錠剤は、円の直径で22mm未満である。
好ましい実施形態では、同じ強度の錠剤は円の直径で18mm未満である。
【0029】
本発明によれば、本明細書に記載するすべての製剤は、高リン血症の患者の治療に適している。乾燥水和炭酸ランタンの上述の製剤の使用は、Fosrenol(登録商標)に匹敵するかこれを上回るリン結合力を有すると共に、チュアブル錠以外の剤形での患者への経口投与を可能にする。
【0030】
これらの炭酸ランタン製剤の優れた予期しない特性は、本発明の製剤が崩壊し、以前に記述された水和炭酸ランタンと比較して、炭酸ランタンに大きな表面積を提供する能力に起因する。本明細書の実施例を発明についてのよりよい理解を提供するために開示するが、これは本発明をいかようにも限定するものではない。
【0031】
以下の実施例はさらに本発明およびその固有の特性を示す。これらの実施例は、本発明をいかようにも限定するものではない。
実施例1−8。凍結乾燥により共沈物を調製するための基本手順
マンニトール(6.5g)を、600mL凍結乾燥フラスコ中で200mLの脱イオン水に溶かした。コロイド状SiO2(650mg)等の任意選択の崩壊剤を加え、次に6
.5gのLa2(CO33・8H2Oを加えた。混合物を渦撹拌し、ドライアイス/アセトン(−78℃)浴中で素早く凝固させた。その後、これを真空下に置き、氷の粒子がなくなるまで2〜3日間凍結乾燥させた。生じたけばのある白色化合物を収集した。
【0032】
【表1】

実施例9−13。噴霧乾燥により共沈物を調製するための基本手順
八水和炭酸ランタン(13.4g)、マンニトール(12.1g)およびFM−1000(4.8g)の混合物を、Ehrlenmeyerフラスコ中で500mLの脱イオン水に入れて撹拌させた。数分後、溶液を250μMメッシュスクリーンを通して篩いにかけた。その後、溶液を撹拌しつつ、SDマイクロスプレードライヤー(GEA Niro社)にかけた。使用条件は1500℃の入口温度、75℃の出口温度、2.5kg/分のスプレー速度、30kg/時の乾燥ガス流、および1.5バールのノズル圧力であった。けばのある白色化合物を収集した。
【0033】
【表2】

実施例14−17。単純な水和炭酸ランタン。単純な水和炭酸ランタン(実施例14−16)を米国特許第5,968,976号に従って調製し、含水率について分析した。活性成分として炭酸ランタンの四水和物および/または五水和物を含むFosrenol(登録商標)錠剤も購入し、分析した。
【0034】
【表3】

コーティングのない圧縮錠剤を崩壊について評価した。表Iは脱イオン水中の完全な錠剤全体の崩壊時間を示す。崩壊時間は、米国薬局方第29巻の物理試験<701>(崩壊)に記述された手順および装置を使用して測定した。各実施例からの一つの錠剤の崩壊を測定した。
【0035】
【表4】

表Iから、本発明の凍結乾燥および噴霧乾燥させたすべての複合体1−13は、実施例
14−17の先行技術の炭酸ランタン複合体に対して有意な改善を示した。複合体1−13は、複合体11および12を除き、その崩壊が予想外に一様であった。しかしながら、実施例11および12の組成物の崩壊時間は、従来技術の組成物の崩壊時間の整数分の1であった。崩壊剤の割合(w/w)は崩壊剤の追加がないものから開始八水和炭酸ランタンの重量で40%(これはランタン元素の重量に基づくと87%)まで変化したが、これらの組成物間に違いはほとんど観察されなかった。凍結乾燥対噴霧乾燥による複合体の調製もほとんど効果がなかった。ほとんどのこれらの複合体は、6分以内に完全に崩壊した。
【0036】
この増強された崩壊プロフィールが、炭酸ランタンへの賦形剤からもっぱら生じている可能性を除外するために、Fosrenol(登録商標)錠も分析した。Fosrenol(登録商標)中の不活性成分はデキストラン、コロイド状SiO2およびステアリン酸
マグネシウムである。しかしながらFosrenol(登録商標)錠は実施例14−16の水和炭酸ランタンと等しく少ない崩壊を示した。
【0037】
表IIは、錠剤全体または粉砕した(ground)錠剤のいずれかで調製した実施例のリン結合能について記述している。粉砕錠剤は、咀嚼が起こった後のチュアブル錠製剤をシミュレートする。リン結合能は、胃で見出されるように、大過剰のリンを使用する条件下で金属イオン封鎖剤により結合可能なリンの量を予測するために使用される用語である。Mazzeo, J. R. ; et. al. Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 1999, vol. 19, pps . 911-915この分析は、大過剰のリンを利用しているため、炭酸ランタン1モル当たりわずか2モル当量のリン酸イオンしか利用しない米国特許第5,968,976号に記述されている分析よりも、生物学的条件のよりよい機能モデルである。
【0038】
実施例1−17から得られたコーティングのない圧縮錠剤を、リン結合能について評価した。上述したように調製した錠剤全体と、粗く粉砕した錠剤とを共に試験した。
リン結合アッセイ
iストックリン酸溶液の調製:
21.4g N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、4.7g NaClおよび2.7g KH2PO4(超高純度)を、1000mLメスフラスコに加え、950mL 脱イオン水に溶かした。その後、pHをHClで3.0(±0.05)に調整し、溶液を体積まで脱イオン水で希釈し、混合した。
【0039】
ii.分析:
最終濃度が2.5mg La2(CO33/mLリン酸溶液となるように、炭酸ランタ
ン複合体をストックリン酸溶液に加えた。混合物を一定撹拌し続けた状態で37℃で60分間加熱した。その後、混合物を0.2μmのナイロンフィルタでろ過した。
【0040】
その後、サンプルを希釈し、イオン交換クロマトグラフに注入した。ここで、100の希釈倍率を使用した。すなわち、1.0mLのアリコートを100mLの体積になるよう脱イオン水で希釈した。
【0041】
iii.リン測定
未結合のリンの量は、伝導度セル(35°C)およびDionex ASRS 300 4mm自動サプレッサーを装備したDionex ICS−1500イオン交換クロマトグラフのイオンクロマトグラフィにより決定した。材料を、移動相として25mM NaOH 脱イオン水溶液を使用して、1.0 mL/分でDionex AGIl−HCガードカラム(4×50mm)およびDionex ASIl−HCカラム(4×250mm)を通して溶出させた。その後、サンプル反応をコンピュータ化クロマトグラフィデータシステムにより記録した。
【0042】
iv.リン検量線の構築
反応の線形性を以下のように確認した。広範囲の遊離リン酸濃度(約0.04、0.06、0.10、0.15、0.20および0.25mM)に対する一連の標準試料を調製し、これらのイオンクロマトグラフィ反応を決定した。その後、遊離リン酸濃度対反応(mM)のプロットを構築した。その後、生じた線形回帰プロットの勾配およびy切片を決定した。
【0043】
リン結合力を次の方程式から計算した。
【0044】
【数1】

【0045】
【数2】

【0046】
【表5】

表IIのデータは、本発明の共沈物が全体錠剤の形式で使用するのに適していることを明らかに示している。実施例1−13は、粉砕状態の形式でも全体錠剤の形式でも本質的に同じ結合能を示しているが、実施例14−16は、錠剤全体としての結合能を著しい量で失っている。したがって、錠剤、カプセル剤、粉末剤、スプリンクル剤または顆粒剤等の本発明の組成物の剤形を使用することが可能である。これらの材料は、固体経口剤形を飲み込むことができないか飲み込むのに気が進まない患者への投薬を促進するために、経口溶液またはエリキシル剤等の液体に分散されてもよい。
【0047】
最も驚くことには、本発明の共沈物は、市販のFosrenol(登録商標)錠剤の2倍も多いリン結合能を一貫して示している。したがって、これらの共沈物の使用により、はるかに低用量を使用して同じ量のリンの除去を達成することが可能となるだろう。
【0048】
本発明を、上記の特定の実施形態に述べてきたが、製剤および凍結乾燥または噴霧乾燥技術についての多数のバリエーションを包含する。上記に概説した実施形態は、本発明の例示であって、製剤や原理を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形剤と共沈された炭酸ランタンを含む、急速に分解できる医薬剤形。
【請求項2】
炭酸ランタンは凍結乾燥により共沈させられる請求項1の医薬剤形。
【請求項3】
炭酸ランタンは噴霧乾燥により共沈させられる請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項4】
賦形剤が糖、五価アルコール、または六価アルコールである請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項5】
賦形剤がマンニトールまたはラクトースである請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項6】
賦形剤が炭酸ランタンに対して1:1の比で存在する請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項7】
100〜750mgの前記賦形剤を含む請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項8】
崩壊剤をさらに含む請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項9】
崩壊剤がコロイド状二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、デンプンおよびポビドンから成るグループから選択される請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項10】
崩壊剤がRxCIPIENTS FM−1000、Pharmaburst(登録商標)、Avicel(登録商標)、AcDiSol(登録商標)、ExploTab(登録商標)、およびAmberlite(登録商標)から成るグループから選択される請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項11】
20〜200mgの前記崩壊剤を含む請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項12】
炭酸ランタンが水和されている請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬剤形。
【請求項13】
前記水和された炭酸ランタンが、一般式:
La2(CO33・xH2Oを有し、xは4−15の値を有する請求項12に記載の医薬剤形。
【請求項14】
xは8−14の値を有する請求項13に記載の医薬剤形。
【請求項15】
水和された炭酸ランタンが空気乾燥され、一般式:
La2(CO33・xH2Oを有し、xは空気乾燥後に6−11の値を有する請求項12に記載の医薬剤形。
【請求項16】
空気乾燥後に、xが8の値を有する請求項15に記載の医薬剤形。
【請求項17】
100〜1000mgの前記水和炭酸ランタンを含む請求項12に記載の医薬剤形。
【請求項18】
炭酸ランタン:賦形剤:崩壊剤の比が0−50:30−50:10−30である請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項19】
前記比が40:40:20である請求項18に記載の医薬剤形。
【請求項20】
経口用の固形剤形に圧縮された請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項21】
経口用の固形剤形に圧縮された請求項12に記載の医薬剤形。
【請求項22】
経口用の固形剤形が錠剤、カプセル剤、およびスプリンクル剤から成るグループから選択される請求項20に記載の医薬剤形。
【請求項23】
経口用の固形剤形が、液体へ溶解され、次に患者により服用される請求項20に記載の医薬剤形。
【請求項24】
経口用の固形剤形が、錠剤である請求項21に記載の医薬剤形。
【請求項25】
錠剤の高さが4mm未満であり、直径が18mm未満である請求項24の医薬剤形。
【請求項26】
請求項1に記載の医薬剤形で高リン血症を治療する方法。
【請求項27】
請求項12に記載の医薬剤形で高リン血症を治療する方法。
【請求項28】
前記剤形は投与前に水に溶かされる錠剤である請求項27に記載の高リン血症を治療する方法。
【請求項29】
前記剤形が2分から20分の間で崩壊する請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項30】
崩壊が2〜10分である請求項29に記載の医薬剤形。
【請求項31】
2.5〜5mmol/gのリン結合力を有する請求項8に記載の医薬剤形。
【請求項32】
リン結合力が3〜4.6mmol/gの間にある請求項31に記載の医薬剤形。
【請求項33】
以下の成分からなる混合物の凍結乾燥により調製された生成物を含む医薬剤形であって、
【表1】

炭酸ランタンは約6−約11モルの水の含水率に水和され、前記剤形は約195秒〜約400秒の崩壊時間と約34mmol/gのリン結合力を有する、医薬剤形。
【請求項34】
以下の成分からなる混合物の凍結乾燥により調製された生成物を含む請求項34に記載の医薬剤形であって、
【表2】

炭酸ランタンは約6−約11モルの水の含水率に水和され、前期剤形は、約195秒〜約400秒の崩壊時間と約34mmol/gのリン結合力を有する、医薬剤形。
【請求項35】
以下の成分からなる混合物の噴霧乾燥により調製された生成物を含む医薬剤形であって、
【表3】

炭酸ランタンは8モルの水の含水率に水和され、剤形は約260秒〜約270秒の崩壊時間と約4−約4.6mmol/gのリン結合力を有する、医薬剤形。
【請求項36】
以下の成分からなる混合物の噴霧乾燥により調製された生成物を含む医薬剤形であって、
【表4】

炭酸ランタンは8モルの水の含水率に水和され、剤形は約260秒〜約270秒の崩壊時間と約4−約4.6mmol/gのリン結合力を有する、医薬剤形。
【請求項37】
使用されるコロイド状SiO2はHuber社より販売されているRxCIPIENTS
(登録商標)FM−1000である請求項33、34、35および36のいずれか一項に記載の医薬剤形。
【請求項38】
水和炭酸ランタンを共沈させることを含む、急速に崩壊する医薬剤形を調製する方法であって、炭酸ランタンは該共沈に先立って賦形剤と混合される、方法。
【請求項39】
炭酸ランタンは凍結乾燥により共沈させられる請求項38に記載の方法。
【請求項40】
炭酸ランタンは噴霧乾燥により共沈させられる請求項38に記載の方法。
【請求項41】
賦形剤が糖、五価アルコール、または六価アルコールである請求項38、請求項39、または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
賦形剤がマンニトールまたはラクトースである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
賦形剤が炭酸ランタンに対して1:1の比で存在する請求項41に記載の方法。
【請求項44】
剤形が100〜1000mgの前記賦形剤を含む請求項41に記載の方法。
【請求項45】
共沈の前に崩壊剤をさらに加えることを含む請求項38に記載の方法。
【請求項46】
共沈の前に崩壊剤をさらに加えることを含む請求項41に記載の方法。
【請求項47】
崩壊剤がコロイド状二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、デンプンおよびポビドンから成るグループから選択される請求項45に記載の方法。
【請求項48】
崩壊剤がRxCIPIENTS FM−1000、Pharmaburst(登録商標)、Avicel(登録商標)、AcDiSol(登録商標)、ExploTab(登録商標)、およびAmberlite(登録商標)から成るグループから選択される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
20〜200mgの前記崩壊剤を含む請求項47に記載の方法。
【請求項50】
炭酸ランタンが水和されている請求項38、39および40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記水和された炭酸ランタンが、一般式:
La2(CO33・xH2Oを有し、xは4−15の値を有する請求項50に記載の方法。
【請求項52】
xは8−14の値を有する請求項51に記載の方法。
【請求項53】
水和された炭酸ランタンが空気乾燥され、一般式:
La2(CO33・xH2Oを有し、xは空気乾燥後に6−11の値を有する請求項50に記載の方法。
【請求項54】
空気乾燥後に、xが8の値を有する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
100〜1000mgの水和炭酸ランタンを含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
炭酸ランタン:賦形剤:崩壊剤の比が0−50:30−50:10−30である請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記比が40:40:20である請求項56に記載の方法。
【請求項58】
共沈後に、組成物が経口用の固形剤形に圧縮される請求項38、39および40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
経口用の固形剤形が錠剤、カプセル剤、およびスプリンクル剤から成るグループから選択される請求項58に記載の方法。
【請求項60】
経口用の固形剤形が錠剤である請求項58に記載の方法。
【請求項61】
請求項58に記載の方法により製造された剤形を投与することを含む、高リン血症を治療する方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法により製造された錠剤を投与することを含む、高リン血症を治療する方法。
【請求項63】
錠剤が投与前に水またはジュースに溶かされる、請求項62の高リン血症を治療する方法。
【請求項64】
水和された炭酸ランタンを含む医薬剤形であって、
前記水和された炭酸ランタンが、一般式:
La2(CO33・xH2Oを有し、xは4−15の値を有し、
剤形は錠剤であり、
錠剤の高さが4mm未満であり、直径が18mm未満であり、
前記共沈物は、炭酸ランタンと賦形剤との共沈物である、医薬剤形。

【公表番号】特表2012−515723(P2012−515723A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546449(P2011−546449)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021573
【国際公開番号】WO2010/085520
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511157826)マイラン インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MYLAN INC.
【Fターム(参考)】