説明

炭酸泉の製造装置

【課題】本発明は炭酸ガス濃度を高濃度にすることができるとともに、温水に溶解されない炭酸ガスの浴槽への供給を阻止して、安全に炭酸泉浴が可能な炭酸泉の製造装置を得るにある。
【解決手段】浴槽の温水を循環させる循環ポンプ4を介装した循環路5と、前記循環ポンプ4の下流の循環路5へ炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置9と、この炭酸ガス供給装置9で炭酸ガスが供給される部位あるいは、該部位よりも下流の前記循環路5に介装された炭酸ガスと温水とを混合する混合ミキサー8と、この混合ミキサー8の下流の前記循環路5に介装された外気へ排出される気泡除去装置10とで炭酸泉の製造装置1を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に入浴用の炭酸泉の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸泉は優れた保温作用があることから、古くから温泉を利用する浴場等で用いられている。炭酸泉の保温作用は、基本的に含有炭酸ガスの末梢血管拡張作用により、身体環境が改善されるためと考えられる。また、炭酸ガスの経皮進入によって毛細血管床の増加および拡張が起こり、皮膚の血行を改善すると考えられている。
このため、従来、浴槽内の湯を浴槽外で強制的に循環させる循環ポンプと、そのための循環流路とを有してなる炭酸泉製造装置であって、該循環流路中にフィルター、濾過器、殺菌装置、ヒーターおよび炭酸ガス溶解器が配設されてなり、該炭酸ガス溶解器は薄膜状の非多孔質層の両側を多孔質層で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜を内臓することを特徴とする炭酸泉製造装置が考えられている。
【0003】
しかしながら、このように構成された炭酸泉製造装置は、炭酸濃度が1000ppm〜1400ppmという高濃度の方が前述の効果が得られるということで、高濃度に設定して使用されるようになったため、浴槽の位置している浴室の換気を確実に行なわなければ酸欠状態になってしまうという欠点があった。
【特許文献1】特開2001−104439
【特許文献2】特開2003−66023
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、炭酸ガス濃度を高濃度にすることができるとともに、温水に溶解されない炭酸ガスの浴槽への供給を阻止して、安全に炭酸泉浴が可能な炭酸泉の製造装置を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は浴槽の温水を循環させる循環ポンプを介装した循環路と、前記循環ポンプの下流の循環路へ炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置と、この炭酸ガス供給装置で炭酸ガスが供給される部位あるいは、該部位よりも下流の前記循環路に介装された炭酸ガスと温水とを混合する混合ミキサーと、この混合ミキサーの下流の前記循環路に介装された外気へ排出される気泡除去装置とで炭酸泉の製造装置を構成している。
【発明の効果】
【0007】
以下の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0008】
(1)浴槽の温水を循環させる循環ポンプを介装した循環路と、前記循環ポンプの下流の循環路へ炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置と、この炭酸ガス供給装置で炭酸ガスが供給される部位あるいは、該部位よりも下流の前記循環路に介装された炭酸ガスと温水とを混合する混合ミキサーと、この混合ミキサーの下流の前記循環路に介装された外気へ排出される気泡除去装置とで構成されているので、混合ミキサーで温水に溶解しなかった炭酸ガスは気泡除去装置で外気へ排出することができる。
したがって、浴槽へは温水に溶解された炭酸ガスが供給されるため、従来のように浴槽の上部へ溶解されなかった炭酸ガスが排出されることがなく、安全に入浴することができる。
【0009】
(2)請求項2も前記(1)と同様な効果が得られるとともに、複数個の炭酸ガス分岐路を備えた炭酸ガスの供給装置によって、さら湯の場合には多量の炭酸ガスを供給し、残り湯やセーブの場合にはあらかじめ設定された炭酸ガス濃度を維持する炭酸ガスの供給を行なうことができる。
したがって、従来より短時間に高濃度の炭酸泉にできるとともに、所定の濃度になると炭酸ガスの供給量を少なくして、経済的に使用することができる。
【0010】
(3)請求項3も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、少なくとも2個以上の仕切壁により3個以上の混合室を形成した混合ミキサーによって、効率よく短時間に温水に炭酸ガスを溶解させることができるとともに、従来のように三層構造の複合中空糸膜を用いるものと比べ、詰まりや複合中空糸膜の交換がなく、維持管理費を著しく低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1ないし図5に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は本発明の炭酸泉の製造装置で、この炭酸泉の製造装置1は浴槽2内の温水3を循環させる循環ポンプ4を介装した循環路5と、この循環ポンプ4の上流の循環路5に介装された毛やゴミを除去するフィルター6と、前記循環ポンプ4の下流の循環路5に流量計7を介して介装された温水と炭酸ガスとを混合する混合ミキサー8と、この混合ミキサー8と前記流量計7との間の前記循環路5へ炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置9と、前記混合ミキサー8の下流の前記循環路5に介装された温水に、溶解しなかった気泡となっている炭酸ガスを外気へ排出する気泡除去装置10とで構成されている。
【0013】
前記混合ミキサー8は図3ないし図5に示すように、前記循環路5の内径寸法よりも大きな内径寸法で、上下部で該循環路5に接続される脚部材11、11、11で立設されたミキサータンク12と、このミキサータンク12内を少なくとも流れ方向に3個以上、本発明を実施する形態では6個の混合室13、13、13、13、13、13となるように仕切る少なくとも2個以上、本発明を実施する形態では5個の、4本の心棒14、14、14、14と間隔保持管15とで固定された仕切壁16、16、16、16、16と、この5個の仕切壁16、16、16、16、16にそれぞれ形成された、前記混合室13、13、13、13、13、13内への流入、流出孔となる異なる部位に位置して、該混合室13、13、13、13、13、13内で渦流を生じさせる、前記循環路5の内径寸法よりも小径寸法の透孔17、17、17、17、17とで構成されている。
【0014】
前記炭酸ガス供給装置9は複数本の炭酸ガスボンベ18と、この炭酸ガスボンベ18に充填された炭酸ガスを圧力調整器19を介して前記循環路5へ導く炭酸ガス供給路20と、この炭酸ガス供給路20に炭酸ガスの供給量を調整できるように並列介装された開閉弁21およびニードル弁22をそれぞれ備える複数個、本発明を実施する形態では3個の炭酸ガス分岐路23、23、23と、この3個の炭酸ガス分岐路23、23、23の開閉弁21、21、21の開閉や前記圧力調整器19を制御するとともに、前記循環ポンプ4のON、OFFを行なう操作盤24とで構成されている。
【0015】
上記構成の炭酸泉の製造装置1は浴槽2に温水を入れ、この温水を循環ポンプ4で循環路5を循環させるとともに、炭酸ガス供給装置9で炭酸ガスを循環路5へ供給し、混合ミキサー8で温水に炭酸ガスを溶解させるとともに、溶解しなかった炭酸ガスは気泡除去装置10で外気へ排出する。
この時、温水がさら湯の場合には炭酸ガス供給装置9の3個の炭酸ガス分岐路23、23、23より炭酸ガスを多量に供給して短時間に高濃度の炭酸泉にし、残り湯やセーブ時には1個あるいは2個の炭酸ガス分岐路23、23より炭酸ガスを供給して、設定濃度を維持できるだけの炭酸ガスを供給して、炭酸ガスを経済的に使用する。
気泡除去装置10によって浴槽2内へ戻される炭酸泉には、温水に溶解しなかった炭酸ガスは外気へ排出され、炭酸ガスが温水に溶解されたものだけが供給されるため、従来のように溶解しなかった炭酸ガスが浴槽2の湯面上に排出されて酸欠状態になる不具合を効率よく防止することができる。
[発明を実施するための異なる形態]
【0016】
次に、図6ないし図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
図6ないし図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、径違いオスソケット25、25で循環路5に介装されるとともに、上流側の径違いオスソケット25と接続されるオスベント26に炭酸ガス供給路20に接続されるノズル27を取付けた混合ミキサー8Aを用いた点で、このような混合ミキサー8Aを用いて構成した炭酸泉の製造装置1Aにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
なお、本発明を実施するための形態では混合ミキサー8Aを縦に配置して使用したが、これに限らず、横に配置して使用しても同様な作用効果が得られる。
【0018】
図9ないし図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、最下流の混合室13Aより温水に溶解しなかった炭酸ガスを外気へ排出する安全弁28を介装したガス抜き管29を設けた混合ミキサー8Bを用いた点で、このような混合ミキサー8Bを用いることで、該混合ミキサー8Bと気泡除去装置10とで温水に溶解しなかった炭酸ガスを外気へ排出して、浴槽2内へ供給されるのを確実に阻止することができる炭酸泉の製造装置1Bにできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は炭酸泉の製造装置を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の構成図。
【図2】本発明を実施するための最良の第1の形態の概略説明図。
【図3】本発明を実施するための最良の第1の形態の混合ミキサーの縦断面図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態の混合ミキサーの下部拡大断面図。
【図5】本発明を実施するための最良の第1の形態の仕切壁の取付け状態を示す説明図。
【図6】本発明を実施するための第2の形態の構成図。
【図7】本発明を実施するための第2の形態の混合ミキサーの縦断面図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の混合ミキサーの下部拡大断面図。
【図9】本発明を実施するための第3の形態の構成図。
【図10】本発明を実施するための第3の形態の混合ミキサーの縦断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の混合ミキサーの上部拡大断面図。
【符号の説明】
【0021】
1、1A、1B:炭酸泉の製造装置、
2:浴槽、 3:温水、
4:循環ポンプ、 5:循環路、
6:フィルター、 7:流量計、
8、8A、8B:混合ミキサー、
9:炭酸ガス供給装置、 10:気泡除去装置、
11:脚部材、 12:ミキサータンク、
13、13A:混合室、 14:心棒、
15:間隔保持管、 16:仕切壁、
17:透孔、 18:炭酸ガスボンベ、
19:圧力調整器、 20:炭酸ガス供給路、
21:開閉弁、 22:ニードル弁、
23:炭酸ガス分岐路、 24:操作盤、
25:径違いオスソケット、
26:オスベント、 27:ノズル、
28:安全弁、 29:ガス抜き管。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の温水を循環させる循環ポンプを介装した循環路と、前記循環ポンプの下流の循環路へ炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置と、この炭酸ガス供給装置で炭酸ガスが供給される部位あるいは、該部位よりも下流の前記循環路に介装された炭酸ガスと温水とを混合する混合ミキサーと、この混合ミキサーの下流の前記循環路に介装された外気へ排出される気泡除去装置とからなることを特徴とする炭酸泉の製造装置。
【請求項2】
炭酸ガスの供給装置は炭酸ガスボンベと、この炭酸ガスボンベに充填された炭酸ガスを循環路へ導く炭酸ガス供給路と、この炭酸ガス供給路に炭酸ガスの供給量を調整できるように並列介装された開閉弁を備える複数個の炭酸ガス分岐路と、この複数個の炭酸ガス分岐路の開閉弁を制御する操作盤とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の炭酸泉の製造装置。
【請求項3】
混合ミキサーは循環路の内径寸法よりも大きな内径寸法で、上下流端部が循環路に接続されるミキサータンクと、このミキサータンク内を少なくとも流れ方向に3個以上の混合室となるように仕切る少なくとも2個以上の仕切壁と、この少なくとも2個以上の仕切壁にぞれぞれ形成された、前記混合室内への流入、流出孔となる異なる部位に位置して、該混合室内で渦流を生じさせる前記循環路の内径寸法よりも小径寸法の透孔とで構成されていることを特徴とする請求孔1、2いずれかに記載の炭酸泉の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−296651(P2006−296651A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121187(P2005−121187)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【出願人】(305020457)株式会社富士化学計測 (2)
【出願人】(591257144)三和ライフセラ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】