説明

点灯装置、照明器具、照明システム

【課題】カレントトランスを用いずに入力電力を測定することができ、且つ光源負荷の周囲温度が変化しても十分な精度で入力電力が求まるようにする。
【解決手段】検出抵抗45は、電力変換回路4のスイッチング素子42と直列に接続され、スイッチング素子42に流れる電流を検出する。電力演算部83は、電力設定部81から出力され放電灯11へ供給する電力の大きさを決定する電力設定値と、検出抵抗45の出力に対応する電流検出値とを用い、放電灯11の周囲温度の変化に起因して生じる電流検出値の変動分を補正して入力電力を求める。ここでは、電力演算部83は、電力設定値と電流検出値との差分に応じた電力調整値と、放電灯11に供給される電力が最大となるときの電力設定値である最大電力値と、電力設定値とを用いて入力電力を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電力を測定可能な点灯装置、照明器具、照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部電源から供給された電力を適宜変換して負荷に供給するとともに、入力電力(消費電力)を測定して外部へ提示する電源装置が提案されている(たとえば特許文献1,2参照)。これらの電源装置から得られる入力電力の測定結果は、電源装置の使用者や電源装置が取り付けられている設備の管理者などに提示され、無駄な消費電力削減(節電)等に役立てることができる。
【0003】
入力電力を測定する方法として、一般的にはカレントトランスを用いることが知られているが、カレントトランスは小型化が困難であり且つ比較的高価であるため、個々の電源装置に用いられると電源装置も大型化し高価になる。
【0004】
一方、カレントトランスを用いずに入力電力を測定可能な構成の点灯装置も提案されている。この点灯装置は、スイッチング素子を含み直流電源部から入力される直流電力を適宜変換して光源負荷に供給する電力変換部と、スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部の検出値を用いて入力電力を求める演算部とを備える。
【0005】
ここで、電流検出部は、スイッチング素子と直列接続された検出抵抗を含み、スイッチング素子および検出抵抗に流れる電流が大きいほど高くなる値を検出値として出力する。演算部は、電流検出部の検出値Vsと、定数α,βとを用いて、入力電力(消費電力)Winを式Win=α×Vs+βにより演算する。
【0006】
この構成では、スイッチング素子に直列に接続される抵抗素子により電流検出部を構成することができるため、点灯装置(電源装置)を比較的小型且つ安価に実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭64−13695号公報
【特許文献2】特許第3168842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、光源負荷として代表的な蛍光ランプは、その温度特性により、周囲温度によってインピーダンス(=ランプ電圧/ランプ電流)が変化し、高温や低温環境下ではランプ電流が増加し、ランプ電力が低下する傾向にあることが知られている。近年注目を浴びている発光ダイオードを用いた光源においても、その温度特性により、周囲温度によってインピーダンスが変化する。そのため、これらの光源負荷を点灯させる点灯装置においては、負荷に流れる電流や電圧が光源のインピーダンス変動に対して所定の特性となるように、フィードバック制御などによって制御性を上げる工夫が為されている。
【0009】
しかしながら、上述のように式Win=α×Vs+βにより演算される入力電力Winは、周囲温度変化による入力電力増加に対して信号積分値が低下するような負特性に対応できないため、実際の入力電力との間に比較的大きな誤差を生じる可能性がある。すなわち、光源負荷の周囲温度が一定であれば問題ないが、周囲温度が変化したときには、上述した演算式で求まる入力電力Winの値に十分な精度が出ないことがある。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、カレントトランスを用いずに入力電力を測定することができ、且つ光源負荷の周囲温度が変化しても十分な精度で入力電力を求めることができる点灯装置、照明器具、照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の点灯装置は、スイッチング素子を含み直流電力を入力として光源負荷に供給される電力をスイッチング素子のオンオフ動作によって調節する電力変換部と、光源負荷に供給される電力の大きさを決定する電力設定値を入力し電力変換部の動作を制御する制御部と、スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部の検出値を用いて入力電力を推定する電力推定部と、電力推定部の推定結果を提示する提示部とを備え、電力推定部は、電力設定値と、電流検出部の出力に対応する電流検出値とを用い、光源負荷の周囲温度の変化に起因して生じる電流検出値の変動分を補正し入力電力を求めることを特徴とする。
【0012】
この点灯装置において、電力推定部は、光源負荷に供給される電力が最大となるときの電力設定値を最大電力値として用いて電力設定値を正規化するとともに、電力設定値と電流検出値との差分に応じた電力調整値を用いて入力電力を求めることが望ましい。
【0013】
この点灯装置において、電力推定部は、電力最大値に対する電力設定値の比率に対して、電力調整値よりも大きくなるように予め設定された係数を乗じた値から、電力調整値を減算することにより入力電力に対応する値を求めることがより望ましい。
【0014】
本発明の照明器具は、上記点灯装置を具備する器具本体と、当該器具本体に保持される光源負荷とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の照明システムは、上記照明器具を複数台備えるとともに、提示部から送出される通知信号を受信して電力推定部の推定結果を読み出す読出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、カレントトランスを用いずに入力電力を測定することができ、且つ光源負荷の周囲温度が変化しても十分な精度で入力電力を求めることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の点灯装置の構成を示す概略回路図である。
【図2】同上の要部を示す概略回路図である。
【図3】同上の周波数生成部の動作を示すタイムチャートである。
【図4】同上の入力電力と電流検出値との関係を示す説明図である。
【図5】同上の入力電力と電流検出値との関係を示す模式図である。
【図6】同上の入力電力と電流調整値との関係を示す説明図である。
【図7】(a)はα=4.5のとき、(b)はα=5のとき、(c)はα=6のときの入力電力と演算値との関係を示す説明図である。
【図8】同上のα=5のときのランプ電力と演算値との関係を示す説明図である。
【図9】同上のα=8のときの入力電力と演算値との関係を示す説明図である。
【図10】実施形態2の点灯装置の構成を示す概略回路図である。
【図11】同上の点灯装置を用いた照明器具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態の点灯装置1は、図1に示すように、交流電源100に接続される整流器2と、直流電源回路3と、電力変換回路4と、負荷回路5と、制御回路6と、周波数演算部7と、出力設定部8とを備えている。なお、点灯装置1は、図1中の交流電源100および放電灯11については構成要素に含まない。
【0019】
直流電源回路(直流電源部)3は、平滑用コンデンサ(図示せず)を具備し、整流器2の出力に接続されることにより、整流器2から出力される全波整流電圧を平滑化する。したがって、交流電源100が投入されると、直流電源回路3からは平滑された直流電圧が出力され、この直流電圧は後段の電力変換回路(電力変換部)4へ印加される。なお、直流電源回路3は、少なくとも平滑用コンデンサを備える構成であればよく、特定の具体的構成に限定されない。
【0020】
電力変換回路4は、直流電源回路3の出力端間に直列接続された一対のスイッチング素子41,42を有している。各スイッチング素子41,42はそれぞれMOSFETからなる。これら一対のスイッチング素子41,42は、制御回路6から出力される駆動信号に応じて交互にオンオフすることにより、負荷回路5へ高周波電力を供給する。
【0021】
負荷回路5は、スイッチング素子42に並列接続されており、直流カットコンデンサ51と共振用インダクタ52と共振用コンデンサ53との直列回路を有している。点灯装置1の負荷(光源負荷)としての放電灯11は、共振用コンデンサ53と並列に接続される。
【0022】
また、点灯装置1は、放電灯11のフィラメントを予熱するための予熱回路9をさらに備え、この予熱回路9もスイッチング素子42に並列接続されている。予熱回路9は、電力変換回路4の出力にコンデンサ91を介して一次巻線が接続された予熱トランス92を具備し、予熱トランス92の二次巻線からコンデンサ93とコンデンサ94とを介して、放電灯11の各フィラメントに予熱電流を供給する。
【0023】
さらに、図1の例では、制御回路6へ制御電源電圧Vcc1を供給する制御電源回路10もスイッチング素子42に並列接続されている。制御電源回路10は、電力変換回路4のスイッチング動作に応じてコンデンサ101の両端間に制御電源電圧を生成し、ツェナダイオード102のツェナ電圧によって所望のレベルに電圧クランプする。ただし、制御電源回路10は、電力変換回路4のスイッチング動作に応じて制御電源を生成できる構成であればよく、具体的な回路構成は図1の構成に限らない。
【0024】
制御回路6は、主にドライブ部61、基準電源生成部62、周波数生成部63で構成される。基準電源生成部62は、制御回路6に入力される制御電源電圧Vcc1を入力し、周波数生成部63や後述する周波数演算部7や出力設定部8へ出力する電源電圧Vcc2を生成する。基準電源生成部62は、ツェナダイオードやバンドギャップを用いて一定電圧(電源電圧Vcc2)を生成できるような構成であればよく、特定の具体的構成に限定されない。
【0025】
周波数生成部63は、電力変換回路4のスイッチング素子41,42へ出力される駆動信号の周波数を決めている。この周波数生成部63は、図2に示すように、定電圧バッファ部を構成するオペアンプ631と、出力トランジスタ630と、カレントミラー632と、コンパレータ633とを有している。カレントミラー632は、オペアンプ631の出力に応じて、出力トランジスタ630を通して負荷部(ここでは抵抗634等)に流れる電流を元に、コンデンサ635へ流れる電流値を決める。コンパレータ633は、コンデンサ635の両端電圧と所定のしきい値とを比較してコンデンサ635に流れる充放電電流を制御する。
【0026】
コンデンサ635の両端電圧が所定のしきい値Vref2より低い場合、抵抗634には、定電圧バッファ部の出力電圧Vref1と抵抗634の抵抗値とによって決まる電流が流れる。この電流が、所定のミラー比を持つカレントミラー632を介してコンデンサ635を一定電流にて充電する。一方、コンデンサ635の両端電圧がしきい値Vref2に達すると、コンパレータ633の「+」入力が、トランスファゲート部636によってしきい値Vref3へ切り替えられる。さらに、コンパレータ633の出力によってスイッチング素子637がオフされ、コンデンサ635が一定電流で放電を開始する。
【0027】
すなわち、コンパレータ633の出力が図3(b)に示すように「H」・「L」間で切り替わるのに合わせて、コンデンサ635の両端電圧は充放電の切り替えに伴い図3(a)に示すような三角波状波形となる。
【0028】
ここにおいて、オペアンプ631の出力に応じて出力トランジスタ630に流れる電流が大きければ、コンデンサ635の充放電電流値も大きくなり、図3(a)の三角波の傾きも大きくなって、三角波の周波数は高くなる。このように、周波数生成部63は、コンデンサ635の両端電圧と所定のしきい値とを比較して、コンデンサ635に流れる充放電電流を制御するコンパレータ633を用いた発振器によって、三角波の周波数を制御している。
【0029】
コンパレータ633の出力電圧は、後段のカウンタ部638およびデッドタイム部639に入力される。図2では具体的回路は図示していないが、カウンタ部638は入力信号の立ち下りエッジで出力が反転するよう構成されることで、図3(c)に示すような矩形波のカウンタ信号を生成する。カウンタ部638で生成されたカウンタ信号はデッドタイム部639に入力され、デッドタイム部639においてスイッチング素子41,42が同時オンしないように休止期間を持った2つの駆動信号が生成される。
【0030】
デッドタイム部639は、コンデンサなどの遅延要素と論理素子との組み合わせにより、図3(d)に示すようにカウンタ信号の立ち上がりから期間tdの間「L」を維持するような第1駆動信号を生成する。デッドタイム部639は、この第1駆動信号を、ドライブ部61を構成する第1ドライブ部611へ出力する。第1ドライブ部611は、第1駆動信号を受けて、抵抗43(図1参照)を介してスイッチング素子42を駆動する。
【0031】
また、デッドタイム部639は、図3(c)のカウンタ信号を反転した信号を用いて、反転信号の立ち上がりから期間tdの間「L」を維持する第2駆動信号を生成し、ドライブ部61を構成する第2ドライブ部612へ出力する。第2ドライブ部612は、第2駆動信号を受けて、抵抗44(図1参照)を介してスイッチング素子41を駆動する。つまり、期間tdは駆動信号の休止期間となる。
【0032】
次に、周波数演算部7について図2を参照して説明する。周波数演算部7は、図2に示すように、主にオペアンプ71と、オペアンプ71の反転入力端−出力端間に接続されたコンデンサ72とを有し積分器を構成する。オペアンプ71の出力電圧を、以下では電力調整値という。
【0033】
後述する出力設定部8を構成する電力設定部81からパルス信号が出力され、このパルス信号が抵抗73,74、コンデンサ75で構成される平滑部によって直流に変換された直流電圧が、電力設定値としてオペアンプ71の非反転入力端へ入力される。電力設定部81が出力するパルス信号は、電力設定部81の内部で決定され、または外部で操作可能な調光信号生成装置から入力される調光信号に基づいて決定される調光率に対応するデューティ比を持つ。
【0034】
一方、オペアンプ71の反転入力端へは、電力変換回路4の低圧側のスイッチング素子42と直列に接続された検出抵抗(電流検出部)45の両端電圧が、抵抗76を介して入力される。検出抵抗45は、スイッチング素子42に流れる電流を検出するように、スイッチング素子42の低圧側(ソース)と直流電源回路3の負極側の出力端との間に挿入されている。これにより、オペアンプ71の反転入力端には、スイッチング素子42を流れる電流に相当する電流検出値(検出抵抗45の両端電圧の積分値)が、入力されることになる。
【0035】
オペアンプ71の出力端は、周波数生成部63を構成するオペアンプ631の出力端に接続された出力トランジスタ630へ、ダイオード77と抵抗78とを介して接続される。
【0036】
上記構成により、オペアンプ71は、非反転入力端へ入力される電力設定値よりも、反転入力端へ入力される電流検出値が大きい場合には、出力電圧(電力調整値)が低下する。オペアンプ71の出力電圧(電力調整値)が低下すると、ダイオード77と抵抗78とを介してオペアンプ71の出力端に引き抜かれる電流が増加する。そのため、周波数生成部63を構成する出力トランジスタ630を流れる電流が増加して、電力変換回路4へ供給される駆動信号の周波数が高くなり、負荷回路5の共振作用によって負荷回路5で消費される電力が減少する。
【0037】
一方、電力設定値に対して電流検出値の積分値が小さい場合には、オペアンプ71の出力電圧(電力調整値)は上昇し、電力変換回路4へ供給される駆動信号の周波数が低くなるため、負荷回路5で消費される電力が増大する。
【0038】
このように、周波数演算部7は、オペアンプ71の出力する電力調整値の増減に応じて、電力変換回路の動作周波数(スイッチング周波数)を変化させ、負荷回路5の消費電力を所望の値となるよう制御する。要するに、制御回路6および周波数演算部7は、放電灯11に供給される電力(ランプ電力)の大きさを決定する電力設定値を入力し、電力変換回路4の動作を制御する制御部を構成する。
【0039】
次に、出力設定部8について説明する。出力設定部8は、図1に示すように、調光率に対応したデューティ比を持つパルス信号を生成する電力設定部81と、最大電力値を記憶する最大電力設定部82と、所定の演算を実施する電力演算部83とから構成される。
【0040】
最大電力設定部82は、負荷回路5で消費される電力値が最大となるときに電力設定部81から出力されるパルス信号に対応する最大電力値を予め記憶する。
【0041】
電力演算部83は、電力設定部81の出力(電力設定値)と、最大電力設定部82の出力(最大電力値)と、さらに上述の周波数演算部7から入力される電力調整値とを入力として、所定の演算を実施し、点灯装置1の入力電力を推定する。すなわち、電力演算部83は、電流検出部である検出抵抗45の検出値を用いて入力電力を推定する電力推定部として機能する。
【0042】
以下、電力演算部83が点灯装置1の入力電力を求める動作について、表1,2および図4〜6を参照して説明する。
【0043】
表1,2は、放電灯11の周囲温度ごとに、入力電力(消費電力)、ランプ電力、電流検出値、電力調整値、電力演算部83の演算結果を示している。ここでは、表1,2は、放電灯11に蛍光ランプ(FHF63形)を2灯用い、点灯装置1の入力を200Vとして放電灯11を共振作用により調光点灯させ、放電灯11の周囲温度が−10℃から60℃まで変化した場合の、各値を示している。ここでいう電流検出値は、図1の検出抵抗45の両端電圧を平均化した数値であり、微小な値であり測定誤差も含まれている。電力調整値は、周波数演算部7を構成するオペアンプ71の出力電圧である。
【0044】
表1では、調光率100%(全点灯)であり、出力設定部8はデューティ比100%のパルス信号を出力し、平滑部において直流330mVの電力設定値に変換される。表2では、調光率約25%の調光点灯であり、出力設定部8はデューティ比50%のパルス信号を出力し、平滑部において直流165mVの電流設定値に変換される。さらに、最大電力設定部82には、調光100%時に出力設定部8が出力するデューティ比100%のパルス信号に対応する直流330mVの電力設定値が、最大電力値として予め設定されている。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
図4は、表1(調光率100%時)と表2(調光率約25%時)とのそれぞれについて、入力電力と電流検出値との関係を示している。図4中、表1の測定データは菱形のマークで示され、表2の測定データは正方形のマークで示されている。
【0048】
ここで、図5に入力電力と電流検出値との関係を簡略化して示す。
【0049】
放電灯11の周囲温度が一定であれば、調光率が変化すると、入力電力の増加に応じて信号積分値もやや曲線的に増大する(正特性)。図5における「X」は、周囲温度が25℃の環境下において調光率が約20%から100%に変化したときの入力電力と電流検出値との関係を表している。
【0050】
一方、調光率100%の状態で、放電灯11の周囲温度が−10℃から75℃まで変化した場合、放電灯11の温度特性によって入力電力が増減するが、電流検出値は、図5に「Y」で示す領域のように入力電力の増加に応じて低下する負特性の傾向にある。調光率約20%の状態で、放電灯11の周囲温度が−10℃から75℃まで変化した場合においても、図5に「Z」で示す領域のように、電流検出値は入力電力の増加に応じて低下する負特性の傾向にある。
【0051】
なお、図5中において、調光率100%あるいは20%付近での入力電力と電流検出値との関係が長円形の領域「Y」、「Z」で示されているのは、検出抵抗45が比較的低い抵抗値とされ、検出電流値が微小な値であって測定誤差も多いためである。検出抵抗45が低抵抗とされているのは、検出抵抗45の大型化を避け、さらにスイッチング素子42がオンしている際に、ソース電位が高くなることによってゲート駆動電圧が不足しないようにするためである。
【0052】
電流検出値と入力電力との関係が図5に「Y」や「Z」で示すような傾向を示す主な要因としては、温度特性によって放電灯11のインピーダンスが変化し、共振作用による有効電流と無効電流とのバランスが変わることが考えられる。
【0053】
つまり、高温あるいは低温環境下では、ランプ電流が増大し、ランプ電力が低下すなわちランプ電圧が低下するが、放電灯11には共振用コンデンサ53が並列接続されているため、ランプ電圧が低下すると無効電流が低減することになる。言い換えれば、温度特性によって放電灯11のインピーダンスが低下し、放電灯11と共振用コンデンサ53との並列回路を流れる無効電流が低減する。一方、ランプ電流の増大時には有効電流は増大する。
【0054】
結果的に、有効電流と無効電流との合成電流は増加しやすく、回路部品の損失は増大する。これに対して、ランプ電力は上述のように低下しているため、入力電力の増加に対して電流検出値が低下する傾向となる。
【0055】
以上のことから、背景技術の欄で説明したように入力電力Winを式Win=α×Vs+βにより演算すると、放電灯11の周囲温度が一定であるならば演算が可能であるが、周囲温度変化による入力電力増加に対する電流検出値の低下分には対応できない。したがって、放電灯11の周囲温度が変化したときには、求まる入力電力Winの値に十分な精度が出ないことがある。
【0056】
また、点灯装置1を器具本体に備えた照明器具には様々な形態があり、照明器具をたとえば周囲温度25℃の条件下で動作させても、放電灯11の周囲温度は照明器具の形態によってばらつくことになる。そのため、照明器具の周囲温度が一定であっても、照明器具の形態によっては入力電力の値に十分な精度が出ないことがある。
【0057】
さらに、上述の演算式に用いる定数α,βを予め複数設定し、温度検出部(図示せず)によって検出される温度に対応したα,βを適宜選択するような構成も考えられ、マイコンを用いればこのような構成も比較的容易に実現可能ではある。しかし、上記説明から明らかなように、温度検出部は放電灯11の近傍に配置されなければ意味を為さないため、照明器具の器具本体に温度検出部を取り付ける構造が必要となり、照明器具が高価になる。さらに、定数α,βを予め複数記憶するために記憶容量が比較的大きなマイコンを用いる必要がある。
【0058】
これに対して、本実施形態の点灯装置1においては、電力演算部83は、電力設定値と検出抵抗45の出力に対応する電流検出値とを用い、放電灯11の周囲温度の変化に起因して生じる電流検出値の変動分を補正して入力電力を求める。さらに、本実施形態では、電力演算部83は、放電灯11に供給される電力が最大となるときの電力設定値である最大電力値を用いて電力設定値を正規化するとともに、電力設定値と電流検出値との差分に応じた電力調整値を用いて入力電力を求める。
【0059】
具体的には、電力演算部83は、電力設定値Wsと、係数αと、最大電力設定部82で設定される最大電力値Wmaxとを用いて、式α×Ws/Wmaxで表される第1の演算を実行する。さらに、電力演算部83は、第1の演算結果から電力調整値Vfbを減ずる第2の演算を実行する。つまり、電力演算部83は、式(α×Ws/Wmax)−Vfbで表される演算を行い、この結果を演算値(演算結果)として出力する。
【0060】
図6は、表1(調光率100%時)と表2(調光率約25%時)とのそれぞれについて、入力電力と電力調整値との関係を示している。図6中、表1の測定データは菱形のマークで示され、表2の測定データは正方形のマークで示されている。本実施形態では、周波数生成部63を構成するオペアンプ631の出力電圧Vref1を3.5Vとし、オペアンプ71の出力電圧(電力調整値)が常に出力電圧Vref1(3.5V)より低くなるよう設定されている。図6で示す入力電力と電力調整値との関係にも、図5で説明した負特性の傾向と同様の傾向がみられる。
【0061】
ここで、表1,2の演算結果の欄には、電力演算部83が上記演算(第1および第2の演算)を係数α=5として行ったときの演算結果(演算値)を示している。
【0062】
また、電力演算部83が上記演算(第1および第2の演算)を係数α=4.5、5、6として行ったときの演算値と入力電力との関係を図7(a)〜(c)にそれぞれ示す。
【0063】
係数α=4.5のときには、図7(a)に示すように、演算値は、0[W]と最大電力値(139.9[W])とを結ぶ直線(以下、「基準線」という)より低くなる傾向がある。一方、係数α=6のときは、図7(c)に示すように、基準線より演算値が高くなる傾向がある。基準線と演算値とが比較的高精度で一致するのは、係数α=5前後のときであり、係数α=5のときの入力電力と演算値とは図7(b)に示すような関係となる。
【0064】
ここにおいて、係数αは、周波数生成部63を構成するオペアンプ631の出力電圧Vref1(ここでは3.5V)より高い値の中から、目標とする電力演算精度や使用する負荷の種類、周波数演算部7の回路定数に応じて選定される。オペアンプ71の出力電圧(電力調整値)はオペアンプ631の出力電圧Vref1より低くなるよう設定されているので、係数αは少なくとも電力調整値よりも大きな値に設定されることになる。
【0065】
また、電力演算部83の演算値は、点灯装置1の入力電力だけでなく、図8に示すようにランプ電力に対しても略比例する関係にある。図8は、電力演算部83が係数α=5として上記演算を行ったときの演算値とランプ電力との関係を表している。
【0066】
上述のようにして求められた電力演算部83の演算結果(あるいは演算結果から推定される入力電力もしくはランプ電力)は、点灯装置1の提示部(図示せず)から提示される。提示部は、表示あるいは音声といった方法で、演算結果を点灯装置1の使用者等に対して提示する。これにより、使用者等は、提示された演算結果を、無駄な消費電力削減(節電)等に役立てることができる。
【0067】
以上説明した本実施形態の点灯装置1によれば、電力演算部83が、検出抵抗45の出力に対応する電流検出値を用いて、入力電力を求めるので、カレントトランスを用いずに入力電力を測定することができる。さらに、電力演算部83は、電力設定値と電流検出値とを用い、放電灯11の周囲温度の変化に起因して生じる電流検出値の変動分を補正しているので、入力電力もしくはランプ電力に略比例した演算結果が高精度で得られる。要するに、電力演算部83は、電流検出値だけでなく、放電灯11に供給される電力の大きさを決定する電力設定値をも用いることにより、電流検出値と電力設定値との関係から、周囲温度の変化に起因した電流検出値の変動分を補正して入力電力を求めることができる。
【0068】
しかも、電力演算部83は、放電灯11に供給される電力が最大となるときの電力設定値である最大電力値を用いて電力設定値を正規化するとともに、電力設定値と電流検出値との差分に応じた電力調整値を用いて入力電力を求めている。そのため、電力演算部83は、比較的簡単な演算でありながらも、比較的精度よく入力電力を求めることができる。
【0069】
すなわち、電力演算部83は、最大電力値Wmaxと電力設定値Wsと電力調整値Vfbとを用いて、式(α×Ws/Wmax)−Vfbで表される演算を行えばよいので、四則演算のみの簡単な演算で、入力電力に略比例した演算結果を得ることができる。したがって、電力演算部83は、マイコンを用いなくても、簡単な論理素子等の組み合わせにより実現することができる。
【0070】
なお、電力演算部83が行う演算は、最大電力値Wmaxと電力設定値Wsと電力調整値Vfbとを用いた演算であればよく、上述した演算式に限らない。つまり、電力演算部83は、たとえば係数βを用いて式(Ws/Wmax)−(β×Vfb)で表される演算を行っても、上述した例と同様に、入力電力もしくはランプ電力に略比例した演算結果を得られることは明らかである。
【0071】
さらに、上述の式(α×Ws/Wmax)−Vfbを用いて、係数α=8とした場合について、入力電力と演算結果(演算値)との関係を図9に示す。入力電力が0のときに演算値が0にならないこと、および演算精度が若干低くなることを許容すれば、図9の場合でも、入力電力と演算値とは略線形な関係にある。そのため、このような場合には、所定値Aを用いて(α×Ws/Wmax)−Vfb−Aという演算を行えば、上述した例と同様に、入力電力もしくはランプ電力に略比例した演算結果を得られることになる。
【0072】
また、本実施形態では、電力演算部83が電力推定部として機能する例を示したが、電力推定部は、電流検出部である検出抵抗45の検出値を用いて入力電力を精度よく推定できる構成であればよく、演算を行うことは必須ではない。たとえば、電力推定部は、電力設定値と電流検出値との関係から入力電力を近似するテーブルを予め具備し、電力設定値と電流検出値とをテーブルに当てはめることにより入力電力を推定する構成であってもよい。
【0073】
なお、本実施形態では、光源負荷を放電灯とし、インバータ動作による高周波点灯を行う点灯装置1を例示したが、この構成に限らない。すなわち、点灯装置1は、スイッチング素子に流れる電流の検出値に基づいてオペアンプを用いた周波数制御やパルス幅制御を行い、本実施形態と同様の演算を用いて入力電力もしくはランプ電力に略比例した演算結果を得られる構成であればよい。たとえば、点灯装置1は、照明用の発光ダイオードを光源負荷として、この光源負荷を降圧チョッパ動作によって点灯させる構成であってもよい。
【0074】
(実施形態2)
本実施形態の点灯装置1は、図10に示すように出力設定部8の電力演算部83で演算された結果を受けて演算結果を外部装置に通知する通知部12が提示部として設けられている。以下、実施形態1と同じ構成については、実施形態1と同一の符号を付し説明を適宜省略する。
【0075】
本実施形態では、電力演算部83は、係数αおよび係数γと、最大電力値Wmaxと電力設定値Wsと電力調整値Vfbとを用いて次の演算を実行する。
{(α×Ws/Wmax)−Vfb+Ws}×γ
下記表3,4は、放電灯11の周囲温度ごとに、入力電力、ランプ電力、電流検出値、電力調整値、電力演算部83の演算結果、入力電力と演算結果との誤差を示している。これら表3,4は、放電灯11に蛍光ランプ(FHF63形)を2灯用い、点灯装置1の入力を200Vとして放電灯11を共振作用により調光点灯させ、放電灯11の周囲温度が−10℃から60℃まで変化した場合の、各値を示している。ここでは、電力演算部83が係数α=4.9とし、係数γ=62として演算した場合の演算結果を示している。
【0076】
表3では、調光率100%(全点灯)であり、出力設定部8はデューティ比100%のパルス信号を出力し、平滑部において直流330mVの電力設定値に変換される。表4では、調光率約25%の調光点灯であり、出力設定部8はデューティ比50%のパルス信号を出力し、平滑部において直流165mVの電流設定値に変換される。さらに、最大電力設定部82には、調光100%時に出力設定部8が出力するデューティ比100%のパルス信号に対応する直流330mVの電力設定値が、最大電力値として予め設定されている。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
表3から、調光率100%点灯の場合の演算結果は入力電力の略1%以内の誤差で求まり、表4から、調光率約25%点灯の場合の演算結果は入力電力の略3%以内の誤差で求まることが分かる。
【0080】
さらに、本実施形態の点灯装置1は、提示部としての通知部12を備えているので、電力演算部83の演算結果を通知部12より外部に通知することができる。通知部12は、点灯装置1の外部の読出装置に対して通信により演算結果を通知する。
【0081】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0082】
ところで、上記各実施形態の点灯装置1は、図11に示すように、たとえば天井取付型の器具本体130に内蔵され、器具本体130に保持される光源負荷(放電灯11)と共に照明器具13を構成する。点灯装置1と放電灯11との間の電気的接続は、器具本体130に設けられているソケット部131,132を介して行われる。
【0083】
このような照明器具13を複数台備えた照明システムにおいて、システム管理者や使用者は、複数台の照明器具13の通知部12から出力される通知信号を数値表示可能なリモコン受信器やパソコンなどを読出装置として用いる。つまり、システム管理者や使用者は、1台の読出装置によって通知部12からの通知信号を受信し、使用電力量を比較的高精度に把握することができる。このような照明システムも、カレントトランスを用いる場合に比べて安価に構成できる。
【符号の説明】
【0084】
1 点灯装置
3 直流電源回路(直流電源部)
4 電力変換回路(電力変換部)
6 制御回路
7 周波数演算部
11 放電灯(光源負荷)
12 通知部(提示部)
13 照明器具
42 スイッチング素子
45 検出抵抗(電流検出部)
81 電力設定部
83 電力演算部(電力推定部)
130 器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を含み直流電力を入力として光源負荷に供給される電力を前記スイッチング素子のオンオフ動作によって調節する電力変換部と、前記光源負荷に供給される電力の大きさを決定する電力設定値を入力し前記電力変換部の動作を制御する制御部と、前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部の検出値を用いて入力電力を推定する電力推定部と、前記電力推定部の推定結果を提示する提示部とを備え、
前記電力推定部は、前記電力設定値と、前記電流検出部の出力に対応する電流検出値とを用い、前記光源負荷の周囲温度の変化に起因して生じる前記電流検出値の変動分を補正し前記入力電力を求めることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記電力推定部は、前記光源負荷に供給される電力が最大となるときの前記電力設定値を最大電力値として用いて前記電力設定値を正規化するとともに、前記電力設定値と前記電流検出値との差分に応じた電力調整値を用いて前記入力電力を求めることを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記電力推定部は、前記電力最大値に対する前記電力設定値の比率に対して、前記電力調整値よりも大きくなるように予め設定された係数を乗じた値から、前記電力調整値を減算することにより前記入力電力に対応する値を求めることを特徴とする請求項2記載の点灯装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の点灯装置を具備する器具本体と、当該器具本体に保持される光源負荷とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項5】
請求項4記載の照明器具を複数台備えるとともに、前記提示部から送出される通知信号を受信して前記電力推定部の推定結果を読み出す読出装置を備えることを特徴とする照明システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−74156(P2012−74156A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216200(P2010−216200)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】