説明

点鼻型液体マスク剤

【課題】 布や不織布等のマスクには、口や鼻を覆うことによる息苦しさや体裁の悪さといった不快感を被る課題がある。口や鼻を覆うマスクを利用しなくとも吸気中の微細な異物等を濾過するための手段を提供する。
【解決手段】 鼻自体で微細な異物を濾過できるようにすることで、マスクの濾過機能に代行できるようにした。微細な異物を鼻前庭部で電気的に捕捉できるようにするもので、電気石の微粉末を混合した液剤を鼻前庭部に点鼻することで、付着した電気石が鼻毛や表皮等を帯電させて、対極に帯電している吸気中の微細な異物の捕捉を促進できるようにした。これにより、布や不織布等のマスクを使用しなくとも、粉塵及び微細な大気浮遊物の体内侵入を阻止できるようになるため、口や鼻を覆うマスクによって生じる課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻や口を覆う布又は不織布等のマスクに代わる液体式の空気清浄マスク剤であって、微細な異物や細菌等の人体に有害な大気汚染物質を自らの鼻自体で除去できるようにするとともに、鼻前庭内を湿潤させて経鼻感染や呼吸器疾患等を予防する衛生用具に属する、点鼻型液体マスク剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布又は不織布製であるマスクは、吸気の湿度を高めながら吸気中の異物を濾過できるものとして、呼吸器系の疾患や風邪をひいた際に利用されている。
【0003】
また、微細な異物や花粉、悪臭成分の一部等も効果的に遮断するために、高機能型のマスクも開発・販売されており、例えばマスク内に帯電フィルターを装着することで対極側に帯電した異物を濾過するもの、マスク内に活性炭を内包することで悪臭成分を濾過しようとするものなどがある。
【0004】
一方、産業の発展に伴い大気には重金属成分や燃焼装置由来の有害な微粒子成分が多種含まれるようになり、近年の疫学的研究からも、呼吸による微粒子の体内蓄積が心肺疾患を原因とする疾病や病死のリスクを増すことが明白化しつつも、呼吸器系統に備わる人体本来の除塵、免疫機構だけでは微粒子の体内蓄積を回避することは困難となり、環境問題と同期して健康上の不安が高まってきている。
【0005】
すなわち、呼吸器系の疾患や風邪をひいた際に利用していたマスクを、人体が屋内外で常に有害な大気成分に曝露されている以上、具体的な症状がなく健康であっても常時着用して未知的リスクに備えることが望ましい状況となってきたといえる。
【0006】
しかし、健康時に着用するには未知の疾病や感染症、呼吸器疾患等の予防を認識していても、鼻や口を覆う従来のマスク形態では不健康に見られるなど体裁が悪く、さらに以下のような問題があるため実行を躊躇せざるを得ない状況である。
【0007】
従来のマスク形態では、吸気の濾過機能を向上するには活性炭や帯電フィルター等の付加、濾過繊維の緻密化のため、呼吸が妨げられて不快感の増大を免れない。
【0008】
従来のマスクでは、抗菌作用を特徴とするマスクであっても長時間連用すると雑菌が繁殖して不衛生となり、さらに洗浄すると性能が低下する可能性がある。
【0009】
眼鏡使用時にマスクを着用すると、眼鏡が呼吸により曇り易く視界が妨げられる。
【0010】
マスクのゴム紐による耳部への不快感、ゴムアレルギーを発生する場合もある。
【0011】
上記するように、鼻や口を覆う形態自体に使用者の抵抗感や不快感があることに加えて、濾過性能を高めるに従い呼吸の負担も高まるため、従来のマスクを健康と疾病の予防を目的として常時着用するには複数の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記するように、昨今の呼吸環境は燃焼装置類からもたらされる大気汚染や、密閉されがちな空調環境にあって屋内外で悪化の一方をたどっているため、未知の疾病に備えて常に呼吸ための濾過対策が欠かせない状況であるものの、従来のマスクには常時利用するには体裁や衛生面、使用感等に多くの問題が存在していた。
【0013】
そのため、従来の鼻や口を布又は不織布等で覆うマスクでは、使用者は体裁の悪さ、息苦しさ、不快感、連用に伴う不衛生さ等に耐える必要があったため、具体的な自覚症状や必要にせまられてはじめて着用することが少なくなかった。
【0014】
健康時であっても体裁や不快感等を意識することなく、気軽に四六時中常用できて鼻や口を覆うマスクに代わる空気清浄のための衛生用具の存在が望まれていた。
【0015】
折しも、近年人体自身の呼吸器、免疫機構はもちろん、鼻や口を覆う布又は不織布等のマスク形態でも遮断が困難な、炭素等のナノ粒子といった超微細粒子による新たな健康への悪影響も明らかとなりつつあるが、従来のマスク形態では除去しようとする対象が細かければ細かいほど濾過のために繊維密度を上げることで、息苦しさ等の不快感も一層増大させるため、繊維等による物理的な濾過方法に依らない新しい濾過手段が必要となってきていた。
【0016】
本発明では、体裁や不快感をもたらす従来のマスク形態を解消しながら、息苦しさなどの不快感を伴わずにナノ粒子ほどの微細な汚染物質の除去能力の実現を両立させるため、本発明では従来のマスクである鼻や口を覆う方法と繊維類等による物理的な濾過方法を改め、自らの鼻前庭内で電気的に汚染物質を遮断できるようにする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、鼻や口を繊維類で覆って物理的に異物を遮断しようとする従来のマスクとは異なり、自らの鼻自体でマスクの役割と機能を果たせられるように、液剤を点鼻するだけで、マスク本来の目的である空気清浄機能と湿潤保護機能を鼻前庭内で電気的、薬理的に実現させることで、マスクを着用することなく上記した問題の解決をはかるものである。
【0018】
そこで、鼻前庭内とその鼻毛、そして気道上にある繊毛に対し、別個に働きかける手段によって解決を計るもので、まず両者における体内の異物処理方法について簡単に示した上で、発明による方法が両者に働きかける内容を説明する。
【0019】
吸気の際の気流に含まれる大小の異物は、肺に到達する前に鼻前庭内の鼻毛と、気道上にある繊毛によって除去される仕組みとなっており、異物は鼻粘膜から分泌される粘液により加湿されながら、まずは鼻毛に衝突する異物が同毛によって捕捉され、捕捉しきれなかった異物は鼻前庭奥の粘膜にある繊毛に捉えられた後、咽頭へ移動させて体外に排出することが呼吸器系統における異物の処理方法である。
【0020】
ここで重要なのは、体内における異物の除去手段は完璧ではないという事実であって、10ミクロン以下の微細な粒径の異物は肺まで到達し、毛細気管支と肺胞に沈着したり、体液に溶け込んだりして体内に蓄積し続けるということである。
【0021】
従来のマスクは、通気中の異物を繊維に衝突させて濾過する方法のため、ナノ粒子のような極めて微細な異物を濾過するには繊維密度を格段に高める必要から、想定される呼吸の不快感の大きさからも、従来のマスクの濾過形態では日常の超微粒子の対応策として現実的ではないはずである。
【0022】
本発明による異物排除の補完方法とは、口や鼻を繊維等で覆って吸気中の異物を摩擦で濾過する従来のマスク形態を使用するのではなく、人体本来の濾過装置である鼻前庭内の鼻毛等を安全かつ人工的に帯電させて、対極に帯電する吸気中の微細な異物を、鼻毛自体が静電誘導によって捕捉できるようにする方法である。
【0023】
そこで本発明は、人体に安全で自ら帯電する特性を有する粒子を、保湿及び湿潤できる化粧液又は乳液に相当する液体に混合し、スプレー容器に収めて鼻孔に点鼻することで、塗布された鼻毛、表皮等を人工的に帯電させるための手段を提供する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から請求項3に記載の点鼻式液体マスク剤を点鼻することによって、利用者は従来のマスクのように鼻や口を覆うことなく、大気中に含まれる重金属や煤煙、雑菌、胞子、ウイルス、花粉等の有害な微粒子を鼻前庭の段階で遮断できることで、体内への吸引及び蓄積を抑えられ、鼻からの空気感染を主因とする各種疾病、アレルギー、風邪やインフルエンザ等の予防に貢献できるようになる。
【0025】
請求項1から請求項4に記載の点鼻式液体マスク剤を点鼻することによって、呼吸器系に備わる異物の除去機能や免疫機能を向上させるとともに、静電誘導により微細な物質の捕捉に対し特に効力を発揮できるため、ナノ粒子等の微細な異物の濾過対策として安全で有力な方法となる。
【0026】
従来のマスクの課題であった、布や不織布で鼻や口を覆うことで生じる前述した様々な問題を解消し、さらに日常におけるナノ粒子等の微細な異物の濾過対策として、誰もがいつでもどこでも気軽にマスクに代わる効用を享受できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0027】
本発明における荷電の特性を付与する液剤とは、化粧液又は乳液に相当する任意の液体に対し、圧電気と焦電気の性質を有す極性結晶としての電気石に代表される微粉末を混合させたもので、鼻孔に点鼻する形態で実施される。
【0028】
電気石等の微粉末を混合させる溶媒としての化粧液又は乳液には、電気石が発する自発分極の中和を防ぐため、帯電防止作用の成分を含まないことが望ましい。
【0029】
極性結晶に属する鉱物は、加圧や加熱等の作用によって結晶を構成している原子の位置が変化した際、自発分極の大きさが変化するが、電気石はその表面に生じる電荷の量が最も顕著な極性結晶であるとされ、本発明は電気石が有す公知な電荷の発現原理を利用して構成するものである。
【0030】
点鼻によって当該液剤中の電気石粉末が鼻前庭の表皮や鼻毛に塗布されると、鼻前庭内における呼吸による風圧と温度変化が電気石の分極を促して荷電させるため、表皮や鼻毛表面も対極の異物を捕捉できるようになる。
【0031】
電気石の静電誘導により、捕捉対象となる異物が小さければ小さいほど強く引き寄せる性質があるため、従来のマスク形態では除塵が困難であったナノ粒子等、微細な異物の除塵に特に効果を発揮できるものである。以下、本発明の点鼻式液体マスク剤による捕捉方法を図面に基づいて簡単に説明する。
【0032】
図1は、本発明による液剤を点鼻する前の鼻前庭周辺の概念図で、鼻孔1より吸気される比較的粗大な異物3が鼻毛5aによって捕捉されるものの、微細な異物2は鼻毛5aの間をすり抜けて鼻腔方向6に進んでいく状況を示している。
【0033】
図2は、本発明による液剤を点鼻した後の鼻前庭周辺の概念図で、鼻毛5b及び鼻前庭表皮4には当該液剤が塗布された状態となっており、粗大な異物3と共に微細な異物2も、当該液剤に含まれる電気石の微粒子が付着した鼻毛5bや鼻前庭表皮4に吸引される状況を示すものである。
【0034】
一方、鼻毛をすり抜けていく残りの異物2は、当該液剤中に含まれる芳香成分であるフィトンチットと共に鼻腔へと進んでいくため、同成分が粘膜上の繊毛や免疫機能を活性化して異物排除機能を向上させるため、残りの異物の多くが排除されるものと推測される。
【0035】
鼻前庭内では、電気石が吸引する異物を粘着し続けながらも異物が表皮に直接接触するのを防ぐ必要がある。図3は、表皮4に電気石の液層7と油脂による保護膜層8が塗布された鼻前庭内に、大小の異物が電気石の液層7の液面に吸引及び粘着されるものの、塗布された保護膜層8によって各異物3、2が表皮4に直接接触しないように防護している状況を表している。
【0036】
当該電気石には、粒径3ミクロン程度の粉末を用い、混合範囲は溶媒100に対して0.5から5の範囲を想定している。混合量が多すぎると石同士が接触して石表面に分極した電荷が中和して発明の目的やスプレーの噴出を妨げる可能性がある。
【0037】
電気石には多数の種類が存在し、プリメーラ・インジアーノ、セグンダ・インジアーノ等の審美的なグレードよりも、本発明で利用する電気石には、最も焦電性が高いピンクや緑黄色に発色した部位を多く有す種類を選択することが望ましい。
【0038】
また本発明の目的である吸気中の異物の排除を補完するため、前記電気石の微粉末を混合した液剤に対し、繊毛運動を高める液剤を加えることにより、人体自身の呼吸器系の濾過及び免疫機能を強化することができる。
【0039】
上記の繊毛運動を高める液剤に関して、本発明としては、医薬品に属さず副作用の少ないアロマテラピー等の自然療法として公知な、フィトンチッドを含有する精油等を用いることを想定している。
【0040】
皮膚や粘膜表面を保護するための皮膚及び粘膜用の保護皮膜剤に関して、本発明としては前記粉末の媒体としても共用可能な、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、セラミド、スクワレン、サンホワイトワセリン/プロペト等があるが、中でも人の皮脂成分に近くほとんど刺激のない保湿と湿潤化機能を有しながら、粉末を鼻前庭内の表皮や鼻毛に着粉させる効果が期待される、多少の粘性を持ち合わせた油脂であれば、上記の成分に制限されるものではない。
【0041】
本液剤の目的を花粉対策にも拡張する場合、鼻前庭内で吸着される花粉等、アレルゲン等の成分が、鼻前庭内の皮膚や粘膜表面に付着してアレルギー等が生じることがないように、捕捉した物質の皮膚への接触や滞留を抑えて粘膜表面を保護するために、粘性が少なく保護皮膜効果のあるキャリアオイル類を溶媒としてもよい。
【0042】
本発明により鼻前庭内での集塵能力が高まることが原因となって、鼻前庭内の悪玉雑菌が増殖する可能性が否定できないが、副作用の懸念なくその増殖を阻止・対抗できるようにするため、善玉の表皮有用菌の増殖と活性を促す作用のあるキシリトール、ファルネソール等の成分を、当該液剤に対し適宜混合することもできる。
【実施例2】
【0043】
上記実施例1の液剤に関しては、さらに芳香精油を微量加味することもできるため、市場の需要に合わせて実施例1の処方に対しアロマテラピーの処方を加味して市場に提供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、従来のマスクでは集塵が困難な微細な粒径で新たな大気汚染物質として注目される「ナノ粒子」等、超微粒子による塵肺や体内汚染に対応する有力な予防手段として、新規の衛生用具市場を形成できる可能性を持っている。
【0045】
本発明は、従来のマスクの代用品となるばかりでなく、近年注目されるアロマテラピーの処方を加味することで、リラクゼーション市場にも通用する、新規の衛生用具市場を形成できる可能性を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による液剤点鼻前の鼻前庭内の状態であって、異物(大)は鼻毛によって除塵されるものの、異物(小)は鼻腔方向へ進んでいく状況図。
【図2】本発明による液剤点鼻後の鼻前庭内の状態であって、異物(小)も異物(大)と共に鼻毛によって除塵されて、吸気が清浄化されたことを示す状況図。
【図3】本発明による液剤点鼻後の鼻前庭内であって、付着した液剤が鼻前庭内の表皮に形成される電気石の液層と油脂の皮膜層を表す断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 鼻孔方向部
2 吸気中の異物(小)
3 吸気中の異物(大)
4 鼻前庭表皮
5a 当該液剤が付着していない鼻毛
5b 当該液剤が付着した鼻毛
6 鼻腔方向部
7 電気石の液層
8 油脂による保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻自体がマスク同等に集塵する役割をマスクに代わって機能できるようにする発明であって、無害にして保湿及び湿潤できる化粧液又は乳液に相当する任意の液体を媒体に、圧電気と焦電気の性質を有す電気石等の微粉末を混合したものを、スプレー容器に収めて鼻孔に点鼻する方法により、鼻前庭内の表皮と鼻毛を帯電させて、吸気時の気体中に含まれ電気石と対極に帯電している微細な異物を、電気的に捕捉して鼻前庭内の鼻毛等によって集塵できるようにすることを特徴とする、点鼻式液体マスク剤の製造方法。
【請求項2】
鼻自体がマスク同等に集塵する役割をマスクに代わって機能できるようにする発明であって、捕捉する微細な異物が鼻前庭の表皮に直接付着して汚染及び吸収されるのを阻止する目的で、電気石を混合した溶媒に対し鼻前庭の表皮を微粒子から保護する成分を含めたことを特徴とする請求項1記載の点鼻式液体マスク剤。
【請求項3】
鼻自体がマスク同等に集塵する役割をマスクに代わって機能できるようにする発明であって、請求項1記載の点鼻式液体マスク剤による集塵機能を人体自身で補完する目的で、気道の繊毛運動を活性化するための成分を含めたことを特徴とする、請求項1から請求項2記載の点鼻式液体マスク剤。
【請求項4】
鼻自体がマスク同等に集塵する役割をマスクに代わって機能できるようにする発明であって、請求項1記載の点鼻式液体マスク剤により集塵される粉塵等によって、鼻孔内表皮の悪玉の雑菌等が繁殖することを阻止すべく、善玉の表皮有用菌を活性させるキシリトール、ファルネソール等の有用菌活性成分を含有させることを特徴とする、請求項1から請求項3記載の点鼻式液体マスク剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−273832(P2006−273832A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127080(P2005−127080)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(597070390)
【Fターム(参考)】