説明

無停電電源システム

【課題】比較的簡単な構成且つ高い制御信頼性で系統切換時の異常電流を抑制することが可能な無停電電源システムを提供する。
【解決手段】コンバータ11と、第1の機械式スイッチ13を介して負荷に給電するインバータ12と、バイパス入力電源を入力とし、出力が前記負荷に接続された第2の機械式スイッチ14と半導体スイッチ15の並列回路と、バイパス電流検出器16と、切換制御手段2とで構成する。切換制御手段2は、負荷への給電をインバータ12の出力からバイパス入力電源側に切換える指令を受けたとき、半導体スイッチ15の位相制御手段28を開始すると共に第2の機械式スイッチ13にオフ指令を出力し、所定時間経過後に第1の機械式スイッチ14にオン指令を出力する。位相制御手段28は、バイパス電流検出器16に流れる電流が所定の電流制限基準値以下となるように半導体スイッチ15の点弧位相を制御する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商用電源が異常になっても安定した電力を負荷に継続給電できる無停電電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の無停電電源システムの負荷は、瞬時的な停電も許容されない例えばコンピュータ等である場合が多い。ここで無停電電源システムとは、少なくとも1台の無停電電源装置を有するシステムである。負荷の運転に際し、無停電電源装置が故障したとき、あるいは無停電電源装置の保守を行なう必要があるとき、無停電電源装置と商用電源の系統切換を素早く行なうことが必要となる。
【0003】
上記の系統切換を行なうとき、異なる系統を接続することになるため、系統切換点での2系統間の電圧、あるいは位相が一致しないことによってお互いに横流が発生するなど異常電流が生じる。この異常電流が大きい場合には系統切換スイッチが故障する、あるいは無停電電源装置が過電流故障となって停止してしまう恐れがあった。
【0004】
このような異常電流を抑制する対策として、無停電電源装置から商用電源への系統切換を行うとき、無停電電源装置の出力電流と負荷電流の偏差を検出し、その偏差がゼロになるように無停電電源装置の出力電圧を制御する提案が為されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−4544号公報(第2−3ページ、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された手法は、軽負荷状態であっても無停電電源装置から商用電源への負荷移行をスムースに行うことを狙ったものであるが、出力電圧制御のみに頼っているため、例えば負荷にコンデンサが接続されている場合には制御の応答速度が問題となる場合があり、また、負荷側の短時間の過電流等の異常現象に対応することが困難な場合もある。従って、無停電電源装置の出力を閉ループ制御するという複雑な制御を行うにしては、その制御信頼性に問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、比較的簡単な構成且つ高い制御信頼性で系統切換時の異常電流を抑制することが可能な無停電電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の無停電電源システムは、交流電源の入力電圧を直流に変換するコンバータと、この直流または前記交流電源が停電したときバッテリから直流を交流に変換し、第1の機械式スイッチを介して負荷に給電するインバータと、バイパス入力電源を入力とし、出力が前記負荷に接続された第2の機械式スイッチと半導体スイッチの並列回路と、前記バイパス入力電源に流れる電流を検出するバイパス電流検出器と、前記第1の機械式スイッチ、第2の機械式スイッチ及び半導体スイッチを制御する切換制御手段とを備え、前記切換制御手段は、前記負荷への給電を前記インバータの出力から前記バイパス入力電源側に切換える指令を受けたとき、前記半導体スイッチの位相制御手段を開始すると共に前記第2の機械式スイッチにオフ指令を出力し、所定時間経過後に前記第1の機械式スイッチにオン指令を出力し、前記位相制御手段は、前記バイパス電流検出器に流れる電流が所定の電流制限基準値以下となるように前記半導体スイッチの点弧位相を制御するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、比較的簡単な構成且つ高い制御信頼性で系統切換時の横流を抑制することができる無停電電源システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る無停電電源システムの回路構成図。
【図2】本発明の実施例2に係る無停電電源システムの回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1に係る無停電電源システムを図1を参照して説明する。
【0013】
図1において、無停電電源システム主回路1は、交流入力、バッテリ入力及びバイパス入力を受け、交流出力を図示しない負荷に給電する。交流入力は、開閉器52RCを介して、コンバータ11に与えられる。コンバータ11の直流出力は、インバータ12によって、再び交流に変換され、機械式スイッチ13を介して交流出力となる。交流入力が健全な常時は上述のルートで交流入力から負荷への給電が行われる。バッテリ入力は開閉器72Bを介してインバータ12の入力に接続されている。交流入力が停電により喪失したとき、このバッテリ入力から負荷への給電が行われる。尚、コンバータ11及びインバータ12の制御回路についてはこれらの図示を省略する。
【0014】
バイパス入力は、開閉器52RSと、これと直列に接続された機械式スイッチ14と半導体スイッチ15の並列回路を介して交流出力(負荷)に接続される。コンバータ11またはインバータ12が故障したとき、またはこれらの保守を行うとき、半導体スイッチ15をオンし、機械式スイッチ13をオフし、更に機械式スイッチ14をオンすることによって、交流入力からの給電をバイパス入力からの給電に切換える。
【0015】
機械式スイッチ13、機械式スイッチ14及び半導体スイッチ15は切換制御回路2からの指令により動作している。切換制御回路2には、無停電電源システム主回路1内に設けられたバイパス電流検出器16による電流フィードバック信号が与えられている。
【0016】
切換制御回路2には、手動切換シーケンス回路3からの手動切換指令と自動切換えロジック回路4からの自動切換え指令が与えられる。以下、切換制御回路2の内部構成について説明する。
【0017】
操作回路21及び操作回路22は、夫々機械式スイッチ13、機械式スイッチ14のオンオフ操作を行う。手動切換シーケンス回路3からの手動切換指令と自動切換えロジック回路4からの自動切換え指令はOR回路23に与えられ、バイパス給電への切換指令が与えられたとき、OR回路23の出力は操作回路21に対して機械式スイッチ13のオフ指令を与えると共に、遅延回路24を介して操作回路22に機械式スイッチ14のオン指令を与える。また、同時に以下に説明するイネーブル回路27をオンさせる指令を与える。
【0018】
バイパス電流検出器16による電流フィードバック信号は、設定された電流制御基準信号と突き合わされ、その偏差は電流制御器25によって増幅されイネーブル回路26の入力となる。イネーブル回路26の出力は位相制御回路27に与えられる。位相制御回路27はドライブ回路28を介して半導体スイッチ15の点弧位相を制御する。
【0019】
次に動作について説明する。通常、無停電電源システムは、機械スイッチ13をオンしインバータ12の出力を交流出力として負荷に給電している。このとき、機械スイッチ14及び半導体スイッチ15はオフしている。この状態において、インバータ12またはコンバータ11が故障、或いはインバータ12が過負荷を検出すると、切換ロジック回路4によって切換条件が作られる。すると、瞬時にイネーブル回路26がオンとなって電流制御器25の出力による半導体スイッチ15の位相制御が有効となる。
【0020】
この時点では、電流制限基準信号に対してバイパス電流検出器16による電流フィードバック信号はゼロ(電流は流れていない)であるので、電流制御器26の出力は最小値に振れ、位相制御回路27は最小位相(最大点弧角)でドライブ回路28を駆動する。このとき、インバータ12の出力とバイパス入力が同期していれば、負荷電流相等のバイパス電流は、電流制限基準信号より小さいため、そのまま位相制御回路27は最小位相(最大点弧角)でドライブ回路28を駆動する。
【0021】
ところが、インバータ12の出力とバイパス入力が非同期の場合で且つ負荷に変圧器やコンデンサが接続されていると、バイパス入力側の半導体スイッチ15がONすると同時に位相急変によって過大なバイパス電流が流れ、電流制限基準信号を越え、その差分に相当した点弧位相(差分が大きいほど点弧位相が大きくなり、半導体スイッチ15のオフ期間が長くなる。)にてドライブ回路28を駆動することになり、結果として半導体スイッチ15によってバイパス電流が制限される。この非同期時の電圧位相差による過大電流は、例えば負荷に接続された変圧器の偏磁が回復する数サイクルで減衰するので、これに見合う一定時間を遅延回路24で作り、一定時間後にバイパスの機械式スイッチ14をONしてもバイパス入力から過大電流は流れず、負荷へはバイパス電源によって給電を継続することができる。
【0022】
上記制御動作において、インバータ12の出力は機械式スイッチ13のオフによって遮断される。操作回路21及び機械スイッチ13の固有の遅れによって交流入力とバイパス入力が短時間ラップするが、通常の故障時や過負荷時にはラップさせる意味は薄い。しかしながら、例えば手動切換時に機械式スイッチ13の動作を遅らすことによってラップ期間を増やすようにすることも可能である。
【実施例2】
【0023】
図2は本発明の実施例2に係る無停電電源システムの回路構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係る無停電電源システムの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、バイパス入力を交流電源からではなく、予備の無停電電源システム1Bから給電する構成とした点、また、無停電電源システム主回路1Aのインバータ12の出力電流を検出するインバータ電流検出器17を設け、バイパス電流検出器16との差分を切換制御回路2A内の差電流検出器29で演算し、この差電流を電流制御器25の入力とするようにした点である。
【0024】
バイパス入力を予備の無停電電源システム1Bから給電する構成は直列冗長システムと呼ばれる。予備の無停電電源システム1Bは無停電電源システム主回路1Aと同様、コンバータ11B、インバータ12B、機械スイッチ13B、14B及び半導体スイッチ15Bを備えている。
【0025】
このような構成において、手動によってインバータ12からバイパス給電側へラップ切換したとき、2台のインバータ12及び12Bの出力がラップすることにより、インバータ出力制御の干渉が発生し、インバータ相互間で定格電流以上の横流が流れる場合がある。このとき、無停電電源システム主回路1A内のバイパス電流検出器16とインバータ電流検出器17との差分電流を差電流検出回路30で検出し、この電流が電流制限基準信号(例えば定格電流に設定しておく。)以内かどうかを電流制御器25で比較し、電流制限基準信号以上であれば半導体スイッチ15の位相制御によりバイパス入力側電流を制限する。そして、一定時間後にインバータ側の機械式スイッチ13がオフすると横流がなくなりバイパス電流は、定格電流以下なるので、バイパス入力側の機械式スイッチ14をオンする。
【0026】
以上の動作により、この実施例2によれば、インバータ出力間でラップさせても過大な横流が流れず、過電流を検出することなくインバータ側からバイパス側へ給電を切換えることが可能となる。
【0027】
この実施例2においても、インバータ12の出力は機械式スイッチ13のオフによって遮断されるが、操作回路21及び機械スイッチ13の固有の遅れによって交流入力とバイパス入力が数サイクルの期間ラップする。バイパス電源が、負荷急変に対して応答が遅い発電機や旧型の無停電電源装置の場合は、切換時の負荷移行を遅らせることが必要となる場合もあるので、機械式スイッチ13の動作を遅らすことによってラップ期間を増やすようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1、 無停電電源システム主回路
1A 常用の無停電電源システム主回路
1B 予備の無停電電源システム
2、2A 切換制御回路
3 手動切換シーケンス回路
4 自動切換えロジック回路
11、11B コンバータ
12、12B インバータ
13、13B 機械式スイッチ
14、14B機械式スイッチ
15、15B 半導体スイッチ
16 バイパス電流検出器
17 インバータ電流検出器
21 操作回路
22 操作回路
23 OR回路
24 遅延回路
25 電流制御器
26 イネーブル回路
27 位相制御回路
28 ドライブ回路
29 差電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の入力電圧を直流に変換するコンバータと、
この直流または前記交流電源が停電したときバッテリから直流を交流に変換し、第1の機械式スイッチを介して負荷に給電するインバータと、
バイパス入力電源を入力とし、出力が前記負荷に接続された第2の機械式スイッチと半導体スイッチの並列回路と、
前記バイパス入力電源に流れる電流を検出するバイパス電流検出器と、
前記第1の機械式スイッチ、第2の機械式スイッチ及び半導体スイッチを制御する切換制御手段と
を備え、
前記切換制御手段は、
前記負荷への給電を前記インバータの出力から前記バイパス入力電源側に切換える指令を受けたとき、前記半導体スイッチの位相制御手段を開始すると共に前記第2の機械式スイッチにオフ指令を出力し、所定時間経過後に前記第1の機械式スイッチにオン指令を出力し、
前記位相制御手段は、前記バイパス電流検出器に流れる電流が所定の電流制限基準値以下となるように前記半導体スイッチの点弧位相を制御するようにしたことを特徴とする無停電電源システム。
【請求項2】
交流電源の入力電圧を直流に変換するコンバータと、この直流または前記交流電源が停電したときバッテリから直流を交流に変換し、第1の機械式スイッチを介して負荷に給電するインバータと、
バイパス入力電源を入力とし、出力が前記負荷に接続された第2の機械式スイッチと半導体スイッチの並列回路と、
前記第1の機械式スイッチ、第2の機械式スイッチ及び半導体スイッチを制御する切換制御手段と
を備えた常用無停電電源システムと、
前記常用無停電電源システムと同一構成で、その出力が前記常用無停電電源システムの前記バイパス入力電源である予備無停電電源システムと
を具備し、
前記常用無停電電源システムの前記切換制御手段は、
前記負荷への給電を前記インバータの出力から前記バイパス入力電源側に切換える指令を受けたとき、前記半導体スイッチの位相制御手段を開始すると共に前記第2の機械式スイッチにオフ指令を出力し、所定時間経過後に前記第1の機械式スイッチにオン指令を出力し、
前記位相制御手段は、
前記常用無停電電源システムに設けられたバイパス入力電流検出器及びインバータ出力電流検出器によって検出された各電流の差分電流が、所定の電流制限基準値以下となるように前記半導体スイッチの点弧位相を制御するようにしたことを特徴とする無停電電源システム。
【請求項3】
前記負荷への給電を前記インバータの出力から前記バイパス入力電源側に切換える指令を受けたとき、所定時間遅らせて前記第2の機械式スイッチにオフ指令を出力するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無停電電源システム。

【図1】
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【図2】
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