説明

無停電電源装置

【課題】交流電源の頻繁な瞬時停電時及び瞬時電圧低下時でも蓄電池の寿命を長くする。
【解決手段】交流電源及び蓄電池11に接続され、切替信号に基づき第1交流電力を出力するとともに蓄電池の充電及び放電を行う予備用無停電電源部3と、交流電源、予備用無停電電源部の出力側及び電気二重層コンデンサ9に接続され、第2交流電力を負荷に供給するとともに電気二重層コンデンサの充電及び放電を行う常用無停電電源部1とを有し、常用無停電電源部は交流電源が瞬時停電した場合及び瞬時電圧低下した場合には電気二重層コンデンサを放電させて負荷に第2交流電力を供給し、電気二重層コンデンサの両端電圧が放電終了前の規定値以下になった時に切替信号として放電終了前信号を予備用無停電電源部に送出し、予備用無停電電源部は放電終了前信号に基づき蓄電池を放電させて常用無停電電源部に第1交流電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置(UPS)は、交流電源の交流をAC−DCコンバータで直流に変換しDC−ACコンバータで所望の交流に変換してコンピュータ等の負荷に供給するものである。無停電電源装置は、交流電源の電圧低下時及び停電時には、鉛蓄電池(以下、蓄電池と略称する。)を直流入力源にしてDC−ACコンバータから安定した交流電力を負荷に供給するものである。
【0003】
また、無停電電源装置としては、常用無停電電源部が点検や故障の時に予備用無停電電源部から無停電電源を供給するようにした常用予備用無停電電源装置もあり、図3にその装置の一例を示す(特許文献1)。
【0004】
この無停電電源装置は、常用無停電電源部101Aと、予備用無停電電源部101Bとを有し、常用無停電電源部101A及び予備用無停電電源部101Bの各々は、蓄電池を有し、交流電源の瞬時電圧低下時及び停電時には、蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。
【0005】
そして、常用無停電電源部101Aが負荷給電している状態では、予備用無停電電源部101Bは、バイパス給電114による無負荷運転で待機し、AC−DCコンバータ105及びDC−ACコンバータ106は停止している。
【0006】
一方、常用無停電電源部101Aが故障した場合、予備用無停電電源部101Bは、常用無停電電源部101Aからの故障信号を受信すると、負荷に交流電源によるバイパス給電114で供給し、その間に、停止しているAC−DCコンバータ105及びDC−ACコンバータ106を自動的に運転し、バイパス給電114からUPS給電113に自動的に切り替え、負荷116にUPS給電113で供給する。
【特許文献1】特開2003−87998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の無停電電源装置では、蓄電池を用いているため、交流電源の瞬時停電及び瞬時電圧低下等の場合に頻繁なバックアップを行うと、蓄電池の充放電が繰り返し行われ、蓄電池の寿命が短くなる。また、蓄電池は、通常、許容温度は略40℃であるが、周囲温度の上昇に伴って寿命は短くなる。
【0008】
本発明は、交流電源の頻繁な瞬時停電時及び瞬時電圧低下時でも蓄電池の寿命を長くすることができる無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、蓄電池と、交流電源及び前記蓄電池に接続され、切替信号に基づき第1交流電力を出力するとともに前記蓄電池の充電及び放電を行う予備用無停電電源部と、電気二重層コンデンサと、前記交流電源、前記予備用無停電電源部の出力側及び前記電気二重層コンデンサに接続され、第2交流電力を負荷に供給するとともに前記電気二重層コンデンサの充電及び放電を行う常用無停電電源部とを有し、前記常用無停電電源部は、前記交流電源が瞬時停電した場合及び瞬時電圧低下した場合には、前記電気二重層コンデンサを放電させて前記負荷に前記第2交流電力を供給し、前記電気二重層コンデンサの両端電圧が放電終了前の規定値以下になった時に前記切替信号として放電終了前信号を前記予備用無停電電源部に送出し、前記予備用無停電電源部は、前記放電終了前信号に基づき前記蓄電池を放電させて前記常用無停電電源部に前記第1交流電力を供給することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の無停電電源装置において、前記常用無停電電源部は、前記交流電源が復電した場合及び電圧低下が回復した場合には、前記電気二重層コンデンサを充電させ、前記電気二重層コンデンサの充電が略完了となった時に前記切替信号として充電完了信号を前記予備用無停電電源部に送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、交流電源の瞬時停電時及び瞬時電圧低下時には、常用無停電電源部に接続された電気二重層コンデンサによる放電動作により負荷に交流電力を供給し、電気二重層コンデンサの両端電圧が定められた放電終了電圧以下になったときには予備用無停電電源部に接続された蓄電池による放電動作により負荷に交流電力を供給し続ける。これにより、交流電源の停電時間が長くなった場合及び電圧低下時間が長くなった場合にかぎり、電気二重層コンデンサによる放電動作に替えて蓄電池による放電動作により負荷に交流電力が供給される。このため、交流電源の頻繁な瞬時停電時及び瞬時電圧低下時でも蓄電池は、充放電を頻繁に繰り返すことなく充放電サイクルが少なくなり、蓄電池の寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の無停電電源装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1の無停電電源装置の構成を示す図である。図1に示す無停電電源装置は、常用無停電電源部1、予備用無停電電源部3、短時間バックアップ可能な電気二重層コンデンサ9及び長時間バックアップ可能な蓄電池11を有する。蓄電池11は、鉛蓄電池でも良く、あるいは、リチウムイオン、ニッケル水素などの蓄電池でも良い。
【0014】
常用無停電電源部1は、交流入力端に接続され、交流電源からの交流を直流に変換するAC−DCコンバータと、該AC−DCコンバータで変換された直流を再び交流に変換(逆変換)するDC−ACコンバータと、DC−ACコンバータの出力と負荷との間に介装された無瞬断切換回路とを備える。さらに、常用無停電電源部1は、バイパス交流入力端と無瞬断切換回路との間にバイパス回路を備え、該バイパス交流入力端に供給された交流電力はバイパス回路及び無瞬断切換回路を介して負荷に供給される。
【0015】
常用無停電電源部1は、交流入力端子AC INを介して交流入力端に入力された交流電源の交流を直流に変換し、この直流を所望の交流に変換し交流出力端子AC OUTを介して負荷に供給する。
【0016】
予備用無停電電源部3は、交流入力端子AC INと常用無停電電源部1のバイパス交流入力端との間に接続され、交流電源が停電や電圧低下した場合及び常用無停電電源部1のAC−DCコンバータ及びDC−ACコンバータが点検や故障の場合に、常用無停電電源部1からの切替信号により動作して、常用無停電電源部1のバイパス回路に所望の交流電力を供給する。
【0017】
また、常用無停電電源部1には電気二重層コンデンサ9が接続され、常用無停電電源部1は、電気二重層コンデンサ9に対して充電及び放電を行う。予備用無停電電源部3には蓄電池11が接続され、予備用無停電電源部3は、蓄電池11に対して充電及び放電を行う。
【0018】
すなわち、予備用無停電電源部3は、本発明の「第1交流電力」として、常用無停電電源部1からの切替信号に基づき蓄電池11に蓄えられた直流電力を変換した交流電力を常用無停電電源部1のバイパス回路及び無瞬断切換回路を介して負荷に供給可能となっている。また、常用無停電電源部1は、本発明の「第2交流電力」として、交流電源からの入力交流電力を直流電力に変換して該直流電力を再び変換した交流電力、電気二重層コンデンサ9に蓄えられた直流電力を変換した交流電力及び上記第1交流電力のうちの少なくとも1つを負荷に供給可能となっている。
【0019】
常用無停電電源部1は、交流電源が瞬時停電した場合及び瞬時電圧低下した場合には、電気二重層コンデンサ9を放電させて、電気二重層コンデンサ9からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。常用無停電電源部1は、電気二重層コンデンサ9の両端電圧(放電電圧)が放電終了前の規定値以下になった時に、切替信号として放電終了前信号Sg1を予備用無停電電源部3に送出する。
【0020】
常用無停電電源部1は、交流電源が復電した場合及び電圧低下が回復した場合には、電気二重層コンデンサ9を充電させ、電気二重層コンデンサ9の充電が略完了となった時に切替信号として充電完了信号Sg2を予備用無停電電源部3に送出する。
【0021】
予備用無停電電源部3は、常用無停電電源部1からの放電終了前信号Sg1に基づき蓄電池11を放電させて、蓄電池11からの直流電力を交流電力に変換して常用無停電電源部1のバイパス回路(図示せず)を介して負荷に供給する。
【0022】
次に、このように構成された実施例1の無停電電源装置の動作を図2に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0023】
まず、交流電源が正常である通常時には、常用無停電電源部1により交流を直流に変換し、その直流電力を交流電力に変換して、負荷に安定した交流電力を供給する(ステップS1)。なお、予備用無停電電源部3は待機状態となっている。
【0024】
これと同時に、常用無停電電源部1、予備用無停電電源部3の各々は充電動作を行い、電気二重層コンデンサ9及び蓄電池11が充電される。
【0025】
次に、常用無停電電源部1は、交流電源が瞬時停電したか、瞬時電圧低下したかどうかの交流電源の異常を判定し(ステップS3)、交流電源が瞬時停電となった場合及び瞬時電圧低下となった場合には、電気二重層コンデンサ9を充電から放電に切り替え(ステップS5)、電気二重層コンデンサ9から負荷に安定した電力を供給し続ける。
【0026】
次に、常用無停電電源部1は、交流電源の停電時間が瞬時ではなく長くなった場合又は電圧低下時間が瞬時ではなく長くなった場合などの理由により、電気二重層コンデンサ9の両端電圧が放電終了前の規定値以下となった時に(ステップS7)、予備用無停電電源部3に放電終了前信号Sg1を送出する(ステップS9)。
【0027】
予備用無停電電源部3は、常用無停電電源部1からの放電終了前信号Sg1に基づき充電から放電に切り替えて(ステップS11)、蓄電池11を放電させて(ステップS13)、蓄電池11から常用無停電電源部1のバイパス回路を介して負荷に電力を供給する。
【0028】
なお、予備用無停電電源部3が、常時商用給電方式の場合には、放電終了前信号Sg1を予備用無停電電源部3に入力して無瞬断でインバータ運転(DC−ACコンバータの運転)に切り替える。
【0029】
次に、常用無停電電源部1は、交流電源が復電した場合及び電圧低下が回復した場合には(ステップS15)、電気二重層コンデンサ9を充電させ(ステップS17)、電気二重層コンデンサ9の充電が略完了となった時に充電完了信号Sg2を予備用無停電電源部3に送出する(ステップS19)。
【0030】
予備用無停電電源部3は、常用無停電電源部1からの充電完了信号Sg2に基づき蓄電池11によるバックアップ運転を完了する(ステップS21)。その後、予備用無停電電源部3は、蓄電池11の充電動作を行う。
【0031】
なお、常用無停電電源部1のAC−DCコンバータ及びDC−ACコンバータが故障した場合には、予備用無停電電源部3から無瞬断で、常用無停電電源部1のバイパス回路を介して負荷に電力を供給し続ける。
【0032】
このように、実施例1の無停電電源装置によれば、交流電源の瞬時停電時及び瞬時電圧低下時には、常用無停電電源部1に接続された電気二重層コンデンサ9による放電動作により負荷に交流電力を供給し、交流電源の停電時間が長くなった場合及び電圧低下時間が長くなった場合には予備用無停電電源部3に接続された蓄電池11による放電動作により負荷に交流電力を供給し続ける。このため、交流電源の頻繁な瞬時停電時及び瞬時電圧低下時でも蓄電池11は、充放電を頻繁に繰り返すことなく充放電サイクルが少なくなり、蓄電池11の寿命が長くなる。
【0033】
また、短時間バックアップ分を電気二重層コンデンサ9を用いた常用無停電電源部1で負担し、長時間バックアップ分を蓄電池11を用いた予備用無停電電源部3で負担し、経済的に分担している。
【0034】
また、蓄電池の充電不足又は温度異常により先に蓄電池11が寿命劣化となった場合でも、交流電源の瞬時停電時及び瞬時電圧低下時に対しては、電気二重層コンデンサ9でバックアップが可能である。
【0035】
また、予備用無停電電源部3が常時商用給電方式の場合、電気二重層コンデンサ9の放電終了前信号Sg1を予備用無停電電源部3に送る処理により、予備用無停電電源部3を先にインバータ運転に切り替えることができ、無瞬断で予備用無停電電源部3から負荷に交流電力を供給することができる。
【0036】
また、交流電源の復電後及び電圧低下の回復後に、電気二重層コンデンサ9の充電を、予備用無停電電源部3のバックアップ完了や蓄電池11の充電動作開始より先に行うことにより電気二重層コンデンサ9の充電完了を早くし、続けて起こる瞬時停電などに備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の無停電電源装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の無停電電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】従来の無停電電源装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 常用無停電電源部
3 予備用無停電電源部
9 電気二重層コンデンサ
11 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
交流電源及び前記蓄電池に接続され、切替信号に基づき第1交流電力を出力するとともに前記蓄電池の充電及び放電を行う予備用無停電電源部と、
電気二重層コンデンサと、
前記交流電源、前記予備用無停電電源部の出力側及び前記電気二重層コンデンサに接続され、第2交流電力を負荷に供給するとともに前記電気二重層コンデンサの充電及び放電を行う常用無停電電源部とを有し、
前記常用無停電電源部は、前記交流電源が瞬時停電した場合及び瞬時電圧低下した場合には、前記電気二重層コンデンサを放電させて前記負荷に前記第2交流電力を供給し、前記電気二重層コンデンサの両端電圧が放電終了前の規定値以下になった時に前記切替信号として放電終了前信号を前記予備用無停電電源部に送出し、
前記予備用無停電電源部は、前記放電終了前信号に基づき前記蓄電池を放電させて前記常用無停電電源部に前記第1交流電力を供給することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
前記常用無停電電源部は、前記交流電源が復電した場合及び電圧低下が回復した場合には、前記電気二重層コンデンサを充電させ、前記電気二重層コンデンサの充電が略完了となった時に前記切替信号として充電完了信号を前記予備用無停電電源部に送出することを特徴とする請求項1記載の無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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