説明

無双連子体

【課題】 閉鎖時に雨風や光が漏れない無双連子体の提供。
【解決手段】 連子子3を間隔をおいて有する固定連子体2と、連子子5を間隔をおいて有し固定連子体の連子子間の隙間を開閉する可動連子体4とを備え、固定連子体2の連子子3は、見込み方向の一方側が開放した溝形であり、可動連子体4の連子子5は、見込み方向の他方側が開放した溝形であり、双方の連子子3,5の見込み面部3b,3c,5b,5cが互い違いに重なる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨戸等に用いられる無双連子体に関する。
【背景技術】
【0002】
和風建築の換気窓として、古くから無双連子が知られている。無双連子は、帯板状の連子子をその幅だけ間をあけて配置した連子体二つを前後に並べ、外側の連子体を固定し,内側の連子体を左右に移動可能としたもので、内側の連子体の移動に伴って連子子の隙間が開閉し、採光、通風、眺望に使用できる。このような無双連子では、内側の連子体を閉鎖位置に移動したときでも、前側の連子体の連子子と後側の連子体の連子子との間に僅かな隙間が開き、雨風や光が多少室内に漏れる。
特許文献1には、無双連子を組み込んだ雨戸が記載され、特許文献2には無双連子を組み込んだ手摺が記載されている。これらの無双連子は、大きい板に縦長や横長のスリットを間隔をおいて多数設けて連子状に形成し、そのスリット付きの板2枚を前後に重ねて構成されている。このような無双連子においても、前後に並べた板の間に僅かに隙間があるため、閉鎖時でも雨風や光が漏れる。また、ある程度厚みのある大型の板2枚を重ねて用いることから、重量が重くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−42461号公報
【特許文献2】特開平5−302419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、閉鎖時に雨風や光が漏れない無双連子体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による無双連子体は、連子子を間隔をおいて有する固定連子体と、連子子を間隔をおいて有し固定連子体の連子子間の隙間を開閉する可動連子体とを備え、固定連子体の連子子は、見込み方向の一方側が開放した溝形であり、可動連子体の連子子は、見込み方向の他方側が開放した溝形であり、双方の連子子の見込み面部が互い違いに重なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による無双連子体は、請求項1記載の発明の構成に加え、固定連子体と可動連子体の連子子は、可動連子体を閉鎖位置に移動したときに、双方の連子子の見込み面部が互いに組み合う形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による無双連子体は、固定連子体の連子子を見込み方向の一方側が開放した溝形とし、可動連子体の連子子を見込み方向の他方側が開放した溝形とし、双方の連子子の見込み面部が互い違いに重なる位置に配置したので、可動連子体を閉鎖位置に移動すると、双方の連子子の見込み面部同士が重なるので、雨風や光が漏れ難い。また、連子子を溝形としたことで、軽量化が図られる。
【0008】
請求項2記載の発明による無双連子体は、固定連子体と可動連子体の連子子を、可動連子体を閉鎖位置に移動したときに双方の連子子の見込み面部が互いに組み合う形状としたことで、雨風や光の漏れをより確実に防止できると共に、風等による連子子のがたつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は図2のA部拡大図であり、(b)は図2のB部拡大図である。
【図2】雨戸の横断面図であって、(a)は可動連子体を閉鎖位置に移動した状態、(b)は可動連子を全開位置に移動した状態を示す。
【図3】雨戸の縦断面図である。
【図4】固定連子体の連子子と補助材を分離した状態で示す斜視図である。
【図5】固定連子体の連子子を固定する手順を示す縦断面図である。
【図6】サッシの縦断面図である。
【図7】サッシの横断面図である。
【図8−1】サッシの室外側正面図であって、(a)は雨戸を閉鎖し且つ無双連子を閉じた状態を示し、(b)は雨戸を閉鎖し且つ無双連子を開けた状態を示す。
【図8−2】サッシの室外側正面図であって、(c)は雨戸を開けた状態を示す。
【図9】固定連子体及び可動連子体の連子子の他の実施形態を示す横断面図であって、(a)は可動連子体を閉鎖位置に移動した状態、(b)は可動連子体を全開位置に移動した状態を示す。
【図10】連子体の製作方法の他の例を示す正面図である。
【図11】図10の要領で製作した連子体2つを前後に組み合わせて構成した無双連子の横断面図であって、(a)は可動連子体を閉鎖位置に移動した状態、(b)は可動連子体を全開位置に移動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図6〜図8はテラス窓用のサッシを示しており、本サッシはサッシ枠10内に外障子11と内障子12を引き違い開閉自在に備え、その室外側に1枚の網戸13を備え、さらにその室外側に2枚の雨戸1,1を備えている。サッシ枠10の室外側から見て左側には、雨戸1,1を収納する戸袋14を備えている。雨戸1は無双連子を組み込んだものとなっており、図8−1(b)に示すように、無双連子を開けることで雨戸1を開けなくても(戸袋14に収納しなくても)通風や眺望が得られるようにしている。以下、雨戸1の構造について詳細に説明する。
【0011】
雨戸1は、図2,3に示すように、上框15と下框16と左右の竪框17a,17bとを四周框組みし、上下框15,16間に室内側が開放した溝形の連子子3を、連子子3の見付寸法と略同じ間隔をおいて複数架設して固定連子体2が構成されている。また上下框15,16間の室内側には、室外側が開放した溝形の連子子5を、連子子5の見付寸法と略同じ間隔をおいて複数配置した可動連子体4が、左右方向に移動可能に設けてある。
【0012】
固定連子体2の連子子3は、図1に示すように、見付け面部3aと、見付け面部3aの両側から室内側に向けてのびる左右の見込み面部3b,3cを有し、各見込み面部3b,3cは見込み方向の中間部が室内側から見て左側に膨らむように、略く字形に屈曲した断面形状となっている(以後、単に「左側」、「右側」と記載したときには、室内側から見ての左側、右側を意味する。)。右側の見込み面部3bと見付け面部3aとのコーナー部内側には、溝18が形成されている。
可動連子体4の連子子5は、見付け面部5aと、見付け面部5aの両側から室外側に向けてのびる左右の見付け面部5b,5cと、見付け面部5aの右側の端部より室内側に突出して設けた手掛け部5dとを有している。左右の見込み面部5b,5cは、固定連子体2の連子子3の見込み面部3b,3cと同様に、略く字形に屈曲した断面形状となっている。左側の見込み面部5cの先端には、係止部19が右側に突出して設けてある。
固定連子体2の連子子3と可動連子体4の連子子5とは、見付け寸法がほぼ同じになっており、且つ双方の連子子3,5の見込み面部3b,3c,5b,5cが互い違いに重なるように配置されている。
【0013】
上框15と下框16は、図3に示すように、内周側に開放した溝部20a,20bを室外側と室内側に隣接して有しており、室外側の溝部20aの底部に固定連子体2の連子子3,3,…を上下框15,16に固定するための補助材21が配置されている。固定連子体2の連子子3は、図4に示すように、左右の見込み面部3b,3cの上下端部に切欠き22が設けてあり、補助材21は室外側に向けて突出した係止片23を有し、係止片23に切欠き24が等間隔で設けてある。各連子子3は、上下端部に設けた切欠き22を補助材21の切欠き24にそれぞれ係止させ、全ての連子子3,3,…を上下の補助材21により連結した上で、図5(a)に示すように、補助材21及び連子子3,3,…の上下端部を上下框15,16の室外側の溝部20aに差し入れ、上下框15,16と左右の竪框17a,17bとを框組みする。この時点では連子子3,3,…は上下框15,16に固定されておらず、がたつきがあるが、その後、図5(b)に示すように、上側の補助材21に上方より螺合させた固定ネジ25を締め付けることで同補助材21を上方に引寄せ、次に図5(c)に示すように、下側の補助材21に下方より螺合させた固定ネジ25を締め付けることで同補助材21が下方に引寄せられ、それに伴い連子子3,3,…は上下方向にテンションが掛かった状態となって上下框15,16に固定される。連子子3,3,…を1本ずつ框15,16に直接固定する場合には、多くの加工や部品付けが必要になるが、上述のように連子子3,3,…の端部を補助材21に引っ掛け、補助材21を上下框15,16に固定ビス25で固定することで、加工や部品付けを極力少なくでき、組立てが簡単になる。
【0014】
可動連子体4は、図3に示すように、連子子5の見付け面部5aが上方と下方に突出して設けてあり、所定の間隔で並べた複数の連子子5,5,…の見付け面部5aの上部と下部を帯板状の連結材26a,26bで室外側と室内側から挟み、リベット27で固定することにより組み立てられ、上下框15,16と左右の竪框17a,17bとを框組みする際に、上下框15,16の室内側の溝部20bに上部と下部を挿入して取付けている。下框16の溝部20bの底部には、可動連子体4の滑りをよくするためにソロバン車28が設置してある。各連結材26a,26bにはモヘア37が取付けてあり、モヘア37により溝部20bの側面との隙間を塞いでいる。
【0015】
本雨戸は、図6に示すように、上部をサッシ上枠10aの室外側に形成された溝部29に差し入れ、下框16内部に設けた戸車30をサッシ下枠10bのレール31に乗せることで、通常の雨戸と同様にサッシ枠10に建て込まれる。
【0016】
本雨戸1は、図1(a)に示すように、可動連子体4を右側にスライドさせると、可動連子体4の連子子5の左右の見込み面部5b,5cが、固定連子体2の隣接する連子子3の見込み面部3c,3bの左側にそれぞれ当接して重なり、雨風や光が室内側に漏れるのを防止する。本雨戸1は、双方の連子子3,5の見込み面部3b,3c,5b,5cがそれぞれ略く字形に形成してあり、双方の連子子3,5の見込み面部3cと5b、3bと5cが互いに組み合うことで、雨風や光の漏れをより一層確実に防止できると共に、風等による連子子3,5のがたつきを抑制し、耐風強度が高められる。さらに本雨戸1は、可動連子体4の連子子5に設けた係止部19が固定連子体2の連子子3の溝18に係止することで、連子子3,5のがたつきを抑える効果を一層高めている。
図1(b)に示すように、可動連子体4を左側にスライドさせると、可動連子体4の連子子5の見込み面部5b,5cが固定連子体2の連子子3の見込み面部3b,3cの右側にそれぞれ当接して重なり、固定連子体2の連子子3同士の隙間と可動連子体4の連子子5同士の隙間が合致して開口部32が形成され、開口部32から風や光を室内に取り込める。このときも、双方の連子子3,5の見込み面部3bと5b、3cと5cが互いに組み合うため、連子子3,5のがたつきを抑制できる。なお図1(b)は、無双連子を全開にした状態を示しているが、可動連子体4を全開位置の手前で停止することで、開口部32の大きさを調節することができる。
【0017】
図9は固定連子体2と可動連子体4の連子子3,5の他の実施形態を示しており、(a)は無双連子を閉じた状態、(b)は無双連子を全開にした状態を示している。固定連子体2の連子子3は、左右の見込み面部3b,3cがまっすぐな板状に形成されており、右側の見込み面部3bの根元の位置に突条33が右側に突出して形成されている。可動連子体4の連子子5は、左右の見込み面部5b,5cがまっすぐな板状になっている。本実施形態のものは、図9(a)に示すように、可動連子体4を閉鎖側に移動したときに、可動連子体4の連子子5の左側の見込み面部5cが、その端縁に突条33が当接する状態で固定連子体2の連子子3の右側の見込み面部3bと組み合う。このように、突条33が見込み面部5cの端縁に当たっていることで、雨風や光が室内に漏れるのを確実に防止できる。
【0018】
可動連子体4は、アルミ等の板34に図10中に実線35で示すような切れ目を入れ、図中の点線36で見込み方向に折り曲げることで、溝形の連子子5を等間隔で形成することもできる。固定連子体2も同様に形成できる。このように形成した固定連子体2と可動連子体4を、図11に示すように、双方の連子子3,5の見込み面部3b,3c,5b,5cが互い違いに重なる状態で前後に重ね、無双連子を構成できる。
【0019】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。連子子3,5は横方向に配置することもでき、その場合は可動連子体4を上下方向にスライド可能に設ける。固定連子体2と可動連子体4の連子子3,5は、見込み方向の一方側と他方側がそれぞれ開放した溝形であればよいが、少なくとも可動連子体4を閉鎖位置に移動したときに、双方の連子子3,5の見込み面部3b,3c,5b,5cが互いに組み合うようになっているのが好ましい。そのために見込み面部3b,3c,5b,5cの形状は、所定の形に曲がった形状(例えば所定の方向に湾曲して膨らんだ形状、略S字形に湾曲した形状)や、一方の見込み面部に突部を設け、他方の見込み面部にその突部と係合する凹部を設けたものなどとすることができる。補助材21を用いて連子子3,3,…を框15,16に一括して固定する構造に関しては、連子窓における連子子の框への固定に限らず、対向する框間に光や風の量を調整する調整部材を複数配置したルーバーや格子等の開口部装置に広く用いることができる。対向して配置した框15,16と、框15,16間に架設した複数の調整部材3,3,…と、両框15,16の長手方向に沿って配置した補助材21と、補助材21を框15,16に固定する固定ネジ25とを備え、調整部材3は、長手方向の両端部に切欠き22を有し、補助材21は、長手方向に間隔をおいて切欠き24を有し、調整部材3,3,…を両端部の切欠き22を補助材21の切欠き24に引っ掛けて框15,16間に配置し、補助材21を固定ネジ25で框15,16に固定することで調整部材3,3,…を框15,16に固定することができるので、加工や部品付けを極力少なくでき、組立てが簡単になる。なお、調整部材の材質や形態は任意であり、例えば中空状やパネル状のものであってもよい。本発明の無双連子体は、雨戸に限らず、手摺やフェンス、スクリーン等にも適用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 雨戸(開口部装置)
2 固定連子体
3 固定連子体の連子子(調整部材)
3a 見付け面部、3b,3c 見込み面部
4 可動連子体
5 可動連子体の連子子
5a 見付け面部、5b,5c 見込み面部
15 上框(框)
16 下框(框)
21 補助材
22 連子子の切欠き
24 補助材の切欠き
25 固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連子子を間隔をおいて有する固定連子体と、連子子を間隔をおいて有し固定連子体の連子子間の隙間を開閉する可動連子体とを備え、固定連子体の連子子は、見込み方向の一方側が開放した溝形であり、可動連子体の連子子は、見込み方向の他方側が開放した溝形であり、双方の連子子の見込み面部が互い違いに重なる位置に配置されていることを特徴とする無双連子体。
【請求項2】
固定連子体と可動連子体の連子子は、可動連子体を閉鎖位置に移動したときに、双方の連子子の見込み面部が互いに組み合う形状としたことを特徴とする請求項1記載の無双連子体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−111801(P2011−111801A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268979(P2009−268979)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【Fターム(参考)】