説明

無延伸アルミ蒸着フィルム及びそれを用いた包装材料

【課題】本発明は、ヒートシール性フィルムとして包装材料に汎用的かつ一般的に用いられている無延伸ポリプロピレンフィルムへアルミ蒸着を施したフィルムの改良に関するものである。特には遮光性に優れかつガスバリヤー性に優れた無延伸ポリプロピレンフィルムを基材とするアルミ蒸着フィルムを提供することを課題とするものである。
【解決手段】基材層が少なくとも2層からなり、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aとノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の混合物でる樹脂組成物Bを積層した構成からなる該基材層の樹脂組成物Bからなる層上にアルミ蒸着層を設けた無延伸アルミ蒸着フィルム。及びこの無延伸アルミ蒸着フィルムを用いた包装材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品、医薬品、電子部品を収納するバリアー性と遮光性を有する多層フィルム及びこの多層フィルムからなる包装材料に関するものであり、特には油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より酸素ガスや水蒸気に対するバリアー性(すなわち酸素ガスや水蒸気の透過性が低いこと)を有する包装材料としては様々なものが提案されまた用いられている。例えばオレフィンとポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニアルコール共重合体との多層フィルムやオレフィンと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムあるは延伸ポリプロピレンフィルムにポリ塩化ビニリデンをコートしたポリ塩化ビニリデンフィルムあるいは、延伸ポリエステルフィルムに珪素やアルミの酸化物を蒸着したフィルムなどがバリアー性のあるフィルムとして知られていた。そしてこれらのフィルムにシーランとして無延伸ポリプロピレン、あるいはポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体をヒートシール層としてラミネートした積層体などは広く用いられている。
【0003】
これらのフィルムは透明であり遮光性に劣る。一方、遮光性があるフィルムとしては金属特にはアルミを蒸着特には真空蒸着をしたフィルムが知られている。このような真空蒸着をしたフィルムとしては、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいは延伸ポリプロピレンフィルムにアルミを真空蒸着したフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムにアルミを真空蒸着したフィルムがあり、広く用いられている。
【0004】
上記のようなアルミ蒸着フィルムにはひとつの問題点があった。すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいは延伸ポリプロピレンフィルムにアルミを真空蒸着したフィルムの場合には、延伸フィルムのアルミ蒸着層側ではなく反対面に印刷をするしかなく表印刷(最表面に印刷がなされること)となり印刷インキが包装体同士で摩擦されることにより印刷が損なわれる。このため通常はこのような延伸アルミ蒸着フィルムを用いた場合には、さらにこの上面に印刷した延伸フィルム(たとえば延伸ポリプロピレンフィルム)などをラミネートする必要がある。
【0005】
無延伸フィルムに蒸着した場合にはこのような問題点は解消される。すなわち無延伸ポリプロピレンフィルムなどを用いた場合には無延伸ポリプロピレンフィルムの蒸着面に印刷した延伸フィルムを張り合わせることにより、裏印刷とアルミの蒸着層のもつ意匠性を両立させることができる。しかしながら、この場合無延伸ポリプロピレンフィルムにアルミ蒸着を行う場合、一つの問題点があった。すなわち、無延伸ポリプロピレンの耐熱性に起因するためか、アルミ蒸着層を厚くしようとした場合にはアルミ蒸着面が白濁してアルミ蒸着フィルムのもつ意匠性を発揮することができなくなる。このため、無延伸プリプロピレンフィルムにアルミ蒸着を行う場合には蒸着膜の厚みは最大でも400Åに過ぎず、遮光性が満足するものではなく、またバリアー性も満足されるものではなかった。
【0006】
このような特性は内容物の種類により致命的な性質となる。たとえば特にはたとえばポテトチップスや、穀物の粉末を油で揚げて発泡させたような油分を含む乾燥食品(以下このような食品を油性乾燥食品と称する。)の場合には特に問題となる。油性乾燥食品の場合には、遮光性能の不足により油分が光により参加して異臭がするようになる。同様に空気中の酸素ガスにより含有する鉄分の酸化熱により発熱する化学カイロの包装においてバリアー性の不足による問題が生じる。すなわち、上記の無延伸フィルムに蒸着したフィルムの場合にはバリアー性能が不足するため保管期間中に化学カイロが酸化され、開封しても発熱しなくなるなどの問題点があった。
【0007】
特開 昭61―281404号公報(特許文献1)にはノルボルネン重合体に蒸着層を形成する技術が開示されている。この文献では解決課題として機械的性質、光学的性質、電気的性質、熱的性質、化学的性質に優れた透明導電性フィルムが提供できることが記載されている。これらは金属膜を蒸着しているが透明性のある金属膜であり遮光性のあるものではなかった。(要約)
【0008】
特開 昭62‐206704号公報(特許文献2)にはテトラシクロドデセンまたはその誘導体:50から100モル%およびノルボルネンまたはその誘導体:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に導電性の有機膜または金属膜を設けたことを特徴とする導電性複合材料(特許請求の範囲)が記載されている。そして、実施例にはこれらの重合体からなるフィルムに2極マグネトロンスパッターを設けてIn2O3/SnO2の合金ターゲットを用いてIn膜を形成する技術が記載されている。(実施例1)これらの技術ではノルボルネン及びその誘導体とエチレンとの共重合体については何ら開示も示唆もされていない。
【0009】
特開 平8−142263号公報(特許文献3)にはエチレンと、特定の式で表される環状オレフィンとの共重合体であり、かつ軟化温度が70℃以上である環状オレフィン系ランダム共重合体と金属または金属酸化物層とからなる金属・環状オレフィン系樹脂積層体が開示されている。(要約)そして、環状オレフィン系樹脂と金属あるいは金属酸化物とを積層してなる金属・環状オレフィン系樹脂積層体は、環状オレフィン系樹脂が有する、優れた防湿性、透明性、電気絶縁性等の特性を保持しつつ、ガスバリア性、光線遮断性、ひねり性、引裂性等の特性にも優れていることが記載されている。(段落番号[0005])また、真空蒸着法を実施する上で、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、吸湿性が低く、揮発分が少ないので、真空蒸着装置内の真空度を向上させやすく、効率よく金属・環状オレフィン系樹脂積層体を生産できることが記載されている。(段落番号[0081])しかしながら、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂層との積層については一般的なウェットラミ、ドライラミ、押出しラミなどの一般的な多層化の手法が記載されているのみである。(段落番号[0085])
【0010】
また、このフィルムの用途については、薬品、食品、タバコなどの日用・雑貨品等の包装用材料として好適に用いることができること。特に錠剤、カプセル剤などの薬剤、米菓、スナック、クッキー、ポテトチップなどの食品、タバコ、ティーバッグなど吸湿しやすく光により変質しやすい被包装物の包装材料として好適に使用することができることが非限定的に記載されているに過ぎない。(段落番号[0088])また、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂層との積層との層間密着強度を向上させる方法については何ら記載されていない。
【0011】
特開2001−315276号公報(特許文献4)には輸液容器として用いることが可能な輸液用プラスチックフィルムが記載されている。(要約)そしてこの文献には、ガスバリア層であるポリオレフィンフィルム上に、酸窒化珪素薄膜/接着性樹脂との接着性が良好なコーティング層/接着性樹脂からなる接着層/ポリオレフィンフィルムからなる保護層を順次形成して多層フィルムを得ることが記載されている。(請求項8)本文献においては請求項1ではバスバリヤー層として特に限定はされていないもののポリオレフィン層としては酸窒化珪素薄膜が実質的には開示されている。またこれ以外としてもコーティング層が酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン及びインジウム・錫酸化物(ITO)などの透明蒸着膜が開示されている。(請求項2、段落番号[0009])ポリオレフィン層としてはTMAが80℃の環状ポリオレフィンフィルムが開示されている。(実施例1)
【0012】
特開2003‐159767号公報(特許文献5)には、耐熱性、耐水性、強度等に優れ、ミクロボイドや発泡、条痕等による欠陥のない成形品を与えることができる熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーと他の樹脂とを共押出加工が記載されている。(要約)より具体的には(A)揮発成分の含有量が0.3重量%以下のノルボルネン系モノマー開環重合体水素添加物からなり、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下の酸化防止剤を配合した熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーと、(B)他のオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、及びハロゲン化炭化水素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂とからなる積層体が開示されている。(請求項1)この文献の解決課題としては耐熱性、耐水性、強度等に優れた熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーと他の樹脂とを共押出加工などを行うことにより、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの強度やガス透過性などを更に補うことができる積層体を提供することが記載されている。(発明が解決しようとする課題 段落番号[0009])
【0013】
そして、この積層体に更に真空蒸着やスパッタリング等の薄膜形成方法によって、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物等を、目的に応じ、単層または多層に成膜することができることが記載されている。そしてこの際、真空中でかなりの高温にさらされることもあるが、本発明によって得られた成形品は、揮発分が少なく、アウトガスが少ないため、短時間でチェンバーを所定の真空度に引くことができ、また、表面に「フクレ」等の発生のない平坦な膜を成膜することができることが記載されている。(段落番号[0054])
しかしながら環状オレフィン系樹脂と他の樹脂層との積層との層間密着強度を向上させる方法については何ら記載されていない。
【0014】
特開2003−266601号公報(特許文献6)には環状ポリオレフィン樹脂単体からなる層と該層に隣接する樹脂層とを含む少なくとも2層以上の多層フィルムであって、前記環状ポリオレフィン樹脂層に隣接する樹脂層が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単体もしくは該直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を50%以上含有し、密度が0.920以下である樹脂層もしくは環状ポリオレフィン樹脂と該樹脂と異なるポリオレフィン樹脂との混合樹脂層からなるを特徴とする多層フィルムとこれを用いた包装材料および包装体が開示されている。(請求項1)
【0015】
この文献の解決課題は包装材料を積層する材料自身からの溶出物質が、食品・飲料の本来有する臭味への影響、医療・医薬品自身の効能への影響やそれを通じて人体への悪い影響を与える可能性があることであり、これを低減する包装材料を提供することである。(段落番号[0003])そして解決課題としては環状ポリオレフィン樹脂単体からなる層と該層に隣接する樹脂層とを含む少なくとも2層以上の多層フィルムとすることである。(段落番号[0006])より具体的には環状ポリオレフィン樹脂単体からなる層2と、該層に隣接する樹脂層と、シーラント層とからなり、環状ポリオレフィン樹脂単体からなる層2に隣接する中間層となる樹脂層して、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単体もしくは該直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を50%以上含有する密度が0.920以下である樹脂層3か、もしくは環状ポリオレフィン樹脂と該樹脂と異なるポリオレフィン樹脂との混合樹脂層3からなることを特徴とするものである。(段落番号[0014])そしてさらに環状ポリオレフィン樹脂単体からなる層の表面に蒸着層を設けたものであってもよいことが記載されている。(段落番号[0020])
【0016】
蒸着させる金属としてはアルミ、スズ、ニッケル、コバルト、クロム等が列記されていおり、無機酸化物としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化スズ等或いはそれらの混合物が列記されてる。蒸着させる厚みは蒸着層の厚さは用いられる材料種によって異なるが、一般的には5〜300nm(50〜3000Å)で好ましくは10〜150nm(100〜1500Å)の範囲であることが記載されている。(段落番号[0021])実施例においてはPET/PA/蒸着多層フィルムが開示されている。(実施例1)更に、実施例2においては基材層として環状ポリオレフィンとしてエチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(=ノルボルネン)共重合体、中間層としてLLDPE(エチレン/1−ヘキセン)+エチレン/プロピレン/1−ブテン+PP(ホモタイプ)(トータル密度;0.880)、シーラント層としてCPP(ブロックタイプ)を用いた蒸着多層フィルムが開示されているが、蒸着層としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素が用いられている。(実施例2、表1)
【0017】
この文献では実施例としてはSiOx、AlOxが記載されており、蒸着層のプライマー層とオーバーコート層がない包装材料の場合酸素透過度、透湿度が10以上であることが記載されている。(表1)この文献では蒸着層のプライマー層とオーバーコート層が無い場合でもより高い酸素透過度、透湿度が得られる包装材料については何ら記載されていないし、蒸着層を厚くする手段についても何ら記載されていない。この文献では、蒸着する場合には蒸着層と基材層の間にプライマーコートが必要であり、プライマーコートが存在しない場合には極めて低いバリアー性能しか得られないことが示唆されている。(表1)
更に、環状ポリオレフィンと中間層の密着強度についても何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開 昭61‐281404号公報(要約)
【特許文献2】特開 昭61―281404号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献3】特開 平8−142263号公報(要約、段落番号[0005]、[0081]、[0085]、[0088])
【特許文献4】特開2001−315276号公報(要約、請求項2,8、実施例)
【特許文献5】特開2003‐159767号公報(要約、請求項1、段落番号[0009]、[0054])
【特許文献6】特開2003−266601号公報(請求項1、段落番号[0003]、[0006]、[0014]、[0020]、[0021]、実施例1、実施例2、表1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は無延伸フィルムは延伸フィルムに対して耐熱性が劣る。このためか、アルミ蒸着層の厚みを厚くして遮光性を得ることができない。そして、延伸フィルムにアルミ蒸着した蒸着フィルムを用いる場合には、遮光性は得られるものの、アルミ蒸着面を表印刷することになり、延伸フィルムとシーラントという2枚の単純なラミネートフィルム構成をとることができず、蒸着された延伸フィルムに更に別の延伸フィルムを貼りあわせその上で更にシーラントを貼り合わせるという複雑な構成を必要とした。すなわち、シーラントに用いられる無延伸ポリプロピレンフィルムを基材としながら、蒸着層を厚くすることができる蒸着フィルムが存在しなかったことである。
【0020】
また本発明が解決しようとする別の課題は、無延伸フィルムの基材にプライマーコートをしなくても基材と蒸着層の間の層間密着強度が確保される蒸着フィルム、特には金属蒸着フィルムが存在しなかったことである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明(1)は基材層が少なくとも2層からなり、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aとノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物である樹脂組成物Bを積層した構成からなる該基材層の樹脂組成物Bからなる樹脂層Bの層上にアルミ蒸着層を設けた無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0022】
すなわち、本発明(1)ではノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物を用いるのであるが、ノルボルネンとエチレンの共重合体を用いた場合はノルボルネンの単独重合物に対してガラス転移温度は低くなるがノルボルネンとエチレンの共重合体の分子鎖中に存在するエチレン成分のため、ポリオレフィンとの相容性が向上する。また、環状ポリオレフィン系高分子の成形加工温度は、その高分子のガラス転移温度により決定されるが、ノルボルネンとエチレンとを共重合させることにより、ガラス転移温度を低くすることができ、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aとの共押出での製膜を可能にする。
したがってノルボルネンの単独重合物のガラス転移温度よりもより低くすることができる共重合モノマーであればエチレンに限らず使用することができる。しかしながら、樹脂組成物Bは環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物で構成されているためエチレンを共重合モノマーとするのが最も好ましい。
【0023】
本発明(1)においては基材層の樹脂組成物Bは環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物である。本発明(1)の樹脂組成物Bにおいても環状ポリオレフィン系高分子の連続相中にポリオレフィンのドメインが形成されている構造をとっているものではあるが、環状ポリオレフィン系高分子がノルボルネンとエチレンとの共重合であるため相容性が改善され、かつポリオレフィンの量的割合が少なく均一に分散された状態であるので、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aとの相容性が向上する。
そしてこのような構成を取る樹脂組成物Bであるためポリプロピレンからなる樹脂組成物Aとの相容性に優れるので二層からなる基材層の樹脂組成物A層と樹脂組成物B層の層間密着強度を高く保つことができる。
【0024】
本発明(2)は基材層の樹脂組成物Bのポリオレフィンがポリエチレンである本発明(1)に記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。樹脂組成物Bの環状ポリオレフィン系高分子はエチレンを共重合モノマーとしているので、ポリオレフィンの分散性を改良するためには混合するポリオレフィンはポリエチレンが最も好ましい。
【0025】
本発明(3)は基材層の樹脂組成物Bのガラス点移転が70〜130℃である本発明(2)に記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。蒸着する面の樹脂層のガラス転移温度が金属蒸着における蒸着適性に影響を与えるため上記範囲のガラス転移温度としていることが好ましい様態である。
【0026】
本発明(4)は基材層の樹脂組成物Bのポリエチレン含有量が3重量%から7重量%である本発明(2)に記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。蒸着する面の樹脂層においてポリエチレンの含有量が多いと金属蒸着時にポリエチレンが融解することにより蒸着適性を損なう。またポリエチレンの環状ポリオレフィン系高分子鎖中の拡散及び分散状態にも依存するが、一般的にはポリエチレンの含有量が多いとポリエチレンのドメインが溶融することにより蒸着フィルムの外観が低下する。
【0027】
本発明(5)はアルミ蒸着層の厚みが700Åから1200Åである本発明(1)から(4)何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。本発明の基材層を用いた場合にはアルミ蒸着時の蒸着適性に優れる。このためポリプロピレンからなる樹脂組成物Aと積層した場合であってもアルミ蒸着層を厚くすることができる。本発明(1)から(4)の構成を取ることでアルミ蒸着層の厚みを400Åよりも大きく、例えば500Å以上とすることができる。アルミ蒸着層の厚みを700Åから1200Åとした場合にはバリアー性や遮光性に優れるアルミ蒸着フィルムとすることができる。
【0028】
本発明(6)はポリプロピレンからなる樹脂組成物Aがさらにポリエチレンを含んでいる本発明の(1)から(3)何れかにに記載した無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0029】
本発明(7)はポリプロピレンからなる樹脂組成物Aがポリエチレンを0.5から1.0wt%を含んでいる本発明(4)から(6)の何れかに記載した無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0030】
本発明(8)は本発明(1)から(7)何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルムに延伸ポリプロピレンまたは延伸ポリエステルフィルムを貼り合せた構成である油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料である。遮光性とバリアー性を兼ね備え、かつ延伸フィルムと無延伸フィルムの二枚のフィルムを貼り合せた(ラミネート)した単純な構成の包装材料とすることで、現在の三枚のフィルムをラミネートした複雑な包装材料を置き換えることができ、包装材料のコストダウンや省資源に寄与することができる。また、バリアー性に優れた化学カイロ用包装材料は化学カイロの品質保持期間を長くすることができる。
【0031】
本発明(9)は基材層にプライマーコートをすることがなくアルミ蒸着を行なった本発明(1)から(7)何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0032】
本発明(10)はアルミ蒸着層にトップコートをすることがない本発明(1)から(7)何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0033】
本発明(11)はアルミ蒸着層にトップコートをすることがない本発明(10)に記載の無延伸アルミ蒸着フィルムである。
【0034】
本発明(12)は本発明(11)に記載のアルミ蒸着フィルムに延伸ポリプロピレンまたは延伸ポリエステルフィルムを貼り合せた構成である油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の構成をとることによりアルミ蒸着層の厚みが厚い無延伸ポリプロピレンを主としてなるアルミ蒸着フィルムを得ることができる。そして、基材層の樹脂組成物Aの層と樹脂組成物Bの層間密着強度を高く保つことができる。このアルミ蒸着フィルムはアルミ蒸着層の厚みが厚いので遮光性およびバリアー性に優れたアルミ蒸着フィルムとすることができる。そして、延伸フィルムと無延伸フィルムのシーラントという2枚の単純なラミネートフィルム構成の包装材料でありながら遮光性とバリアー性に優れた包装材料を提供することができる。
【0036】
このような包装材料は油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料として有用に用いることができる。
【0037】
本発明の一実施例として多層フィルムの構成を示した断面図を(図1)に示す。また、本発明の包装材料としての具体的な多層フィルムを用いた包装材料の構成を示した断面図を(図2)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[樹脂組成物A]
本発明で使用される樹脂組成物Aはポリプロピレンである。樹脂組成物Aの目的としてはヒートシール性であるの一般的なヒートシール層として用いられているポリプロピレンであれば樹脂組成物Aとしてお用いることができる。すなわち、ランダム、ホモあるいはブロックタイプのいずれのポリプロピレンでもよいがランダムタイプの方が好ましい。特に好ましいのは、ポリプロピレンにエチレンを2から7mol%程度共重合させたランダムポリプロピレンである。
【0039】
本発明の樹脂組成物Bを用いる場合は本発明の樹脂組成物Aの層と樹脂組成物Bの層とは良好な層間密着強度を示す。しかしながら、より層間密着強度を向上させる必要がある場合には、樹脂組成物Aにポリエチレンを添加することが好ましい。樹脂組成物Aに添加するポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)の何れも使用することができるが、高密度ポリエチレンが分子構造の点で好ましい。ポリエチレンの添加量としては0.1から3.0wt%、より好ましくは0.5から2.5wt%、特に好ましくは0.5から1.0wt%である。ポリエチレンの添加量が少なすぎる場合には、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの層間密着強度の改善効果が十分に得られない。
【0040】
またポリエチレンの添加量が多くなりすぎる場合には樹脂組成物A層のヒートシール性が損なわれたり、樹脂組成物A層が白濁する場合がある。樹脂組成物Aにポリエチレンを添加する添加方法としては特に限定されるものではなく、通常の溶融混合で添加すればよい。樹脂組成物Aは一般的なヒートシール層としての適性を有するために、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを含有していてもよい。
【0041】
[樹脂組成物B]
以下本発明で使用される樹脂組成物Bについて説明する。本発明で使用される樹脂組成物Bは環状オレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)好ましくはポリエチレンの混合物である。
【0042】
[環状オレフィン系高分子(1)]
環状オレフィン系高分子(1)は環状オレフィン系ランダム共重合体であり、(a)エチレンと、(b)下記式[I]で表される構造単位を有するポリマーを挙げることができる。
一般式〔I〕
【化1】


〔ただし、式中、R1およびR2は、水素、炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジルなどの極性基で、それぞれ同一または異なっていてもよく、また、R1およびR2は、互いに環を形成してもよい。nは、正の整数である。qは、0または正の整数である。〕

一般式〔I〕で表される構造単位を有するポリマーは、単量体として、例えば、ノルボルネン、並びにそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル置換体、およびハロゲン等の極性基置換体;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび、またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾンデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等を1種または2種以上使用し、公知の開環重合方法により重合して得られる開環重合体を、通常の水素添加方法により水素添加して製造される飽和ポリマーである。
【0043】
目的とする開環重合体水素添加物(飽和ポリマー)のガラス転移温度(Tg)を70から150℃、特に好ましくは70〜130℃とすることが好ましい。ガラス転移点を上げる為にはこれらのノルボルネン系モノマーの中でも4環体また5環体のものを使用するか、これらを主成分とし、2環体や3環体のモノマーと併用することが好ましい。逆にガラス点移転を下げるためにはエチレンの含有率を上げることで達成することができる。エチレン−テトラシクロ[4.4.0.12 , 5 .17 , 1 0 ]−3−ドデセン共重合体を用いた場合には、エチレン含有率を概ね35〜25wt%とすることでガラス転移温度を70〜130℃とすることができる。
【0044】
上記のような一般式[I]で表される環状オレフィン系高分子(1)は、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。
これらの環状オレフィンモノマーは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。上記のような環状オレフィンモノマーと共に環状オレフィン系高分子(1)すなわち環状オレフィン系ランダム共重合体を形成するのはエチレンである。
【0045】
また、環状オレフィン系高分子(1)は、重合体の製造過程で、分子量調節剤として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのエチレン以外のα−オレフィンを存在させたり、あるいはシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロシクロペンタジエン等のシクロオレフィンなどの他のモノマー成分を少量成分として添加することにより、共重合したポリマーであっても構わない。
【0046】
[ポリオレフィン(2)]
本発明で用いるポリオレフィン(2)を用いる理由は、ポリオレフィン(2)を環状オレフィン系高分子(1)と混合することにより樹脂組成物Bと良好な層間密着強度を確保することができる。このためポリオレフィン(2)は樹脂組成物Bとの相容性が良好な高分子を選択する必要がある。本発明において樹脂組成物Bはポリプロピレンであるので、ポリプロピレンと相容性が良好なポリオレフィンが選択できる。この意味で、ポリオレフィン(2)に用いることができる高分子は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくはポリプロピレン(PP)を用いることができる。これらのポリオレフィン(2)としては、ランダム、ホモあるいはブロックタイプのいずれでもよいがホモタイプの方が好ましい。
【0047】
上記の通り樹脂組成物Bの環状ポリオレフィン系高分子はエチレンを共重合モノマーとしているので、混合するポリオレフィン(2)はポリエチレンが最も好ましい。
[樹脂組成物Bの作成法]
本発明のようにノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子(2)とポリオレフィン(2)の混合物は数多く提案されている。本発明においては、この公知の混合物を使用することができる。本発明の効果を最大に発揮するためには、ポリオレフィン(2)が環状ポリオレフィン系高分子(1)に良好に分散している必要がある。このような分散状態を発現させるためには量的割合が少ないポリオレフィン(2)を環状ポリオレフィン系高分子(1)の連続相の中にポリオレフィン(2)が巨大なドメインを形成することなく分散させることが必要である。良好な分散方法としては、混錬性が良好な溶融混錬を用いることができる。
【0048】
また環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の共通溶媒に各々溶解した後、これらの希薄溶液を混合しながら、環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の貧溶媒中に滴下する。あるいは、(ロ)環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の共通溶媒に溶解した状態で凍結し、凍結乾燥により溶媒分を除去する。あるいは、(ハ)環状ポリオレフィン系高分子(1)の重合溶媒中にポリオレフィン(2)を予め溶解しておき環状ポリオレフィン系高分子(1)の重合と同時にポリオレフィン(2)をその環状ポリオレフィン系高分子(1)に分散させる等の方法を用いることができる。
【0049】
[ポリオレフィン(2)の含有量]
樹脂組成物Bのポリオレフィン(2)がポリエチレンである場合には、その含有量について記載する。ポリエチレンの含有量は樹脂組成物Bの重量%として、3重量%から7重量%である。好ましくは4重量%から6重量%である。ポリエチレンの含有量が3重量%未満の場合には樹脂組成物Aとの層間密着強度が低下する。またポリエチレンの含有量が7重量%を超えるの場合にはポリエチレンが巨大なドメインを形成するためアルミ蒸着時の熱によりポリエチレンの度面イン部分が融解するためか、蒸着適性が低下して、蒸着面が白濁するという問題点が生じる。
【0050】
[ガラス点移転点]
環状ポリオレフィン系高分子(1)のガラス転移点は熱示査走査熱量計(DSC)により測定される。測定方法はJIS K7121に従って測定することができる。環状ポリオレフィン系高分子(1)のガラス点移転としては70〜130℃であり、好ましくは、80〜125℃、より好ましくは90〜120℃である。ガラス点移転が70℃以下である場合には、アルミ蒸着での耐熱性が劣り本発明の目的のアルミ蒸着フィルムとすることができない。一方ガラス点移転が130℃よりも高い場合には、ポリエチレンの分散性が低下するという問題点が生じる。
【0051】
[アルミ蒸着]
本発明のアルミ蒸着は通常のアルミ蒸着で用いられている技術により実施できる。蒸着方法としては好ましくは真空蒸着である。蒸着厚みとしては400Åよりも大きく、例えば500Å以上とすることができる。アルミ蒸着層の厚みを700Åから1200Åとした場合にはバリアー性や遮光性に優れるアルミ蒸着フィルムとすることができる。
本発明においては蒸着層の形成のためにプライマーコートあるいはアンカーコートをしなくても良好なアルミ蒸着膜との密着強度をえることができる。更には、蒸着層にさらにトップコートをしなくてもバリアー性を保つことができる。トップコートやプライマーコートにおいては、塗布、乾燥、が必要であり、工程が煩雑となり製品のロス率が高くなる。このため、本発明のアルミ蒸着フィルムは蒸着装置の汎用性が高く、省資源で製造することができる。更には無延伸フィルムであっても蒸着時の耐熱性に優れる。
【0052】
[包装材料]
本発明の無延伸アルミ蒸着フィルムに延伸ポリプロピレンまたは延伸ポリエステルフィルムを貼り合せて好適な包装材料を製造することができる。構成である油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料である。遮光性とバリアー性を兼ね備え、かつ延伸フィルムと無延伸フィルムの二枚のフィルムを貼り合せた(ラミネート)した単純な構成の包装材料とすることで、現在の三枚のフィルムをラミネートした複雑な包装材料を置き換えることができ、包装材料のコストダウンや省資源に寄与することができる。また、バリアー性に優れた化学カイロ用包装材料は化学カイロの品質保持期間を長くすることができる。
【0053】
以下本願発明を詳細に説明するために実施例を記す。
[実施例1]
樹脂組成物Aとして、エチレン含有量10mol%のエチレンプロピレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー製F219DA)を用いた。
樹脂組成物Bとして、ノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子(1)としてポリプラスチック株式会社製TOPAS 6013を用いた。また、ポリオレフィン(2)としてポリエチレン(株式会社プライムポリマー製ネオゼックス0434Nを用いた。上記の環状ポリオレフィン系高分子(1)95wt%とポリオレフィン(2)5wt%を予めペレット状態でよく混合したのち、二軸混錬押出機にて温度220℃、回転数50rpmにて溶融混錬して樹脂組成物Bを作成した。
【0054】
樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを40mm押出機二台を接続したマルチマニホールド型の二層押出機による二層の多層押出フィルムを製造した。
樹脂組成物Aの樹脂層厚みは20μm、樹脂組成物Bの樹脂層厚みは5μmであった。
この二層フィルムの樹脂組成物Bの表面に真空蒸着でアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着は、蒸着速度200m/minでおこなった。蒸着厚みは800Åとなった。
【0055】
[実施例2]
上記の実施例1と同一の樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを用い、実施例1と同様にして二層の多層押出フィルムを製造した。但し、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの吐出量を調整し、樹脂組成物Aの樹脂層厚みは22μm、樹脂組成物Bの樹脂層厚みは3μmとした。
この二層フィルムの樹脂組成物Bの表面に真空蒸着でアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着は、蒸着速度150m/minでおこなった。蒸着厚みは1000Åとなった。
【0056】
[実施例3]
樹脂組成物Aは実施例1と同じものと用いた。樹脂組成物Bとして、環状ポリオレフィン系高分子(1)及びポリオレフィン(2)は実施例1と同じものと用いたが、環状ポリオレフィン系高分子(1)及びポリオレフィン(2)の組成割合を変更した。すなわち、環状ポリオレフィン系高分子(1)を92wt%とポリオレフィン(2)8wt%の混合割合とした。その他の条件は実施例1と同様にして樹脂組成物Bを作成した。
樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを実施例1と同様にして二層の多層押出フィルムを製造した。樹脂組成物Aの樹脂層厚みは20μm、樹脂組成物Bの樹脂層厚みは5μmであった。
この二層フィルムの樹脂組成物Bの表面に真空蒸着でアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着は、蒸着速度200m/minでおこなった。蒸着厚みは800Åとなった。
【0057】
[実施例4]
実施例1で作成した二層フィルムを用いた。但し、実施例1と真空蒸着条件を変更した。すなわち、アルミ蒸着は、蒸着速度300m/minでおこなった。蒸着厚みは600Åとなった。
【0058】
[比較例1]
比較例としてエチレン含有量10mol%のエチレンプロピレンランダム共重合体からなるCPPフィルム(東洋紡株式会社製 パイレンフィルムCT P1128)25μmを用いた。
このフィルムに真空蒸着でアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着の条件は実施例1と同じ条件でおこなった。蒸着厚みは800Åとなった。
【0059】
[比較例2]
上記比較例1のフィルムに対して、実施例2と同様の条件でアルミ蒸着を行った。蒸着厚みは1000Åとなった。
【0060】
[比較例3]
上記比較例1のフィルムに対して、アルミ蒸着は、300m/minでおこなった。蒸着厚みは400Åとなった。
【0061】
[比較例4]
実施例1と同じ樹脂組成物Aを用いた。樹脂組成物Bとして実施例1の環状ポリオレフィン系高分子(1)を単独で用いた。すなわち、樹脂組成物Bにはポリオレフィン(2)は添加しなかった。これらの樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを用いて、実施例1と同様にして二層の多層押出フィルムを製造した。樹脂組成物Aの樹脂層厚みは20μm、樹脂組成物Bの樹脂層厚みは5μmであった。
この二層フィルムの樹脂組成物Bの表面に実施例1と同じ条件でアルミ蒸着をおこなった。蒸着厚みは800Åとなった。
【0062】
[比較例5]
実施例1と同じ樹脂組成物Aを用いた。樹脂組成物Bとして環状ポリオレフィン系高分子(1)及びポリオレフィン(2)は実施例1と同じものと用いたが、環状ポリオレフィン系高分子(1)及びポリオレフィン(2)の組成割合を変更した。すなわち、環状ポリオレフィン系高分子(1)を85wt%とポリオレフィン(2)15wt%の混合割合とした。その他の条件は実施例1と同様にして樹脂組成物Bを作成した。
そして実施例1と同様にして二層の多層押出フィルムを製造した。また、実施例1と同じ条件でアルミ蒸着をおこなった。蒸着厚みは800Åとなった。
【0063】
[比較例6]
実施例1と同じ二層フィルムを用いた。アルミ蒸着条件を変更することでアルミ蒸着層を厚くした。すなわち、アルミ蒸着は、蒸着速度100m/minでおこなった。蒸着厚みは1500Åとなった。
【0064】
[比較例7]
比較例6と同様に蒸着条件を変更することで蒸着厚みを変更した。すなわち、実施例1と同じ二層フィルムを用いた。アルミ蒸着条件を変更することでアルミ蒸着層を薄くした。蒸着厚みは400Åとなった。
上記の実施例、比較例に対して、酸素ガス透過度、透湿度、全光線透過度、フィルム層間密着強度及びその剥離面の確認、蒸着面の光沢について測定した。
【0065】
酸素ガス透過度は、JIS−K7126に従って測定した。また透湿度はJIS−K7129に従って測定した。全光線透過度はJIS−K7361−1に従って測定した。アルミ蒸着面密着強度はJIS−K7127に規定する測定装置を用い、1号試験片形状に切り出したサンプル片に対して、剥離開始端を手で作成した後、引張応力(剥離力)が安定した時点以降の平均剥離強度をチャートから読み取ることで求めた。
剥離面の確認は上記の剥離強度測定で得られた剥離サンプルの剥離面をATR−IRを用いてその剥離表面の構成分析をすることで決定した。蒸着面の光沢についてはアルミ蒸着面を目視で観察して、曇りが認められないものを「○」、濁りが生じ、包装材料にした場合にその表面印刷の外観、デザイン性に影響を与えると判断されるものを「×」、明らかには白濁が生じるものを「××」として評価した。
【表1】

【0066】
[包装材料の作成]
以下の実施例、比較例では上記の実施例、比較例で作成した無延伸アルミ蒸着フィルムを用いた包装材料を作成し、その酸素ガス透過度、透湿度、全光線透過度、アルミ蒸着面密着強度及びその剥離面の確認、については実施例1と同様の試験方法で行った。また包装材料の内容物の保護性について実験した。
【0067】
[実施例5]
延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製パイレンOT P2102)20μm(OPPフィルム)にウレタン系のドライラミネート剤(東洋モートン製TM595、硬化剤RT36)を塗布量2g/m2で塗布して、上記の実施例1で得られた無延伸アルミ蒸着フィルムのアルミ蒸着面と貼り合せて油性乾燥食品用包装材料を作成した。
内容物保護性の試験としては、内容物に市販のポテトチップス(カルビー社製「ポテトチップうす塩味」)を市販品と同一の寸法に実施例5の油性乾燥食品用包装材料を切り出し、三辺をヒートシールした。シールされていない一辺から、内容物のポテトチップスを入れヒートシールして密封し、蛍光灯下(20W、90cmの投射距離)で20℃にて3ヶ月保管後開封して内容物の臭気をパネラー5人で官能評価した。油の酸化臭がする場合には「×」、開封したポテトチップスと差別が付かない場合は「○」とした。
【0068】
[比較例8]
上記の比較例3で得られた無延伸アルミ蒸着フィルムのアルミ蒸着面に、実施例5と同様にしてOPPフィルムを張り合わせ、実施例5と同様の試験を行った。
【0069】
[比較例9]
上記の比較例7で得られた無延伸アルミ蒸着フィルムのアルミ蒸着面に、実施例5と同様にしてOPPフィルムを張り合わせ、実施例5と同様の試験を行った。
【0070】
[実施例6]
化学カイロ用包装材料の適性試験を行った。内容物保護性試験以外の試験項目については実施例5と同様に行った。内容物保護性については、市販の化学カイロ(桐バイ製「はる」)を用いて、同一の寸法に実施例5の包装材料を切り出し、三辺をヒートシールした。シールされていない一辺から、内容物の化学カイロを入れヒートシールして密封し40℃×90%RHの環境下で3ヶ月間保管した。保管後、包装を開封して化学カイロを取り出し、市販品の化学カイロと発熱温度を比較した。発熱温度の差が3℃未満の場合は「○」として、発熱が認められなかった場合には「×」とした。
【0071】
[比較例10]
比較例8の包装材料について実施例6と同様の試験を行い評価した。
上記の実施例1〜4及び比較例1〜7について表1にまとめた。また実施例5〜6、及び比較例8〜10について表2にまとめた。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例として多層フィルムの構成を示した断面図である。
【図2】本発明の一実施例として多層フィルムを用いた包装材料の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・多層フィルム
2・・・ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aの樹脂層
3・・・ノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の混合物である樹脂組成物Bの樹脂層
4・・・アルミ蒸着層
5・・・接着剤層
6・・・延伸ポリプロピレンフィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層が少なくとも2層からなり、
ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aと
ノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子(1)とポリオレフィン(2)の混合物でる樹脂組成物Bを
積層した構成からなる該基材層の樹脂組成物Bからなる層上に
アルミ蒸着層を設けた無延伸アルミ蒸着フィルム
【請求項2】
基材層の樹脂組成物Bのポリオレフィン(2)がポリエチレンである請求項1に記載の無延伸アルミ蒸着フィルム。
【請求項3】
基材層の樹脂組成物Bのガラス点移転が70〜130℃である請求項2に記載の無延伸アルミ蒸着フィルム。
【請求項4】
基材層の樹脂組成物Bのポリエチレンの含有量が3重量%から7重量%である請求項2に記載の無延伸アルミ蒸着フィルム。
【請求項5】
アルミ蒸着層の厚みが700Åから1200Åである請求項1から4何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルム。
【請求項6】
請求項1から5何れかに記載の無延伸アルミ蒸着フィルムに延伸ポリプロピレンまたは延伸ポリエステルフィルムを貼り合せた構成である油性乾燥食品用包装材料または化学カイロ用包装材料。
【請求項7】
ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aがポリエチレンを0.5から1.0wt%を含んでいる請求項4から6の何れかに記載した無延伸アルミ蒸着フィルムである。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224921(P2011−224921A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98479(P2010−98479)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(505339058)ダイセルバリューコーティング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】