説明

無接触給電設備

【課題】電源装置を停止することなく、簡易な構成をもって、副誘導線路に対する給電の入り切りを行うことができ、開閉器の定格電流を小さくすることができるようにする。
【解決手段】主誘導線路21に所定の発振周波数で交流定電流を出力する電源装置12と、電源装置12に接続される主誘導線路21に設けられる一次側コイル22と、一次側コイル22と共に絶縁トランスを形成するとともに副誘導線路26に並列に接続される二次側コイル23と、二次側コイル23に並列に接続され、副誘導線路26と共に並列共振回路28を構成する共振コンデンサ27と、二次側コイル23と並列共振回路28との間に設けられる開閉器29を備え、並列共振回路28の共振周波数を電源装置12の発振周波数と同等の周波数となるように副誘導線路26および共振コンデンサ27の定数を選定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無接触給電設備、特に、主誘導線路から分岐する副誘導線路を有する無接触給電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無接触給電設備が、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている無接触給電設備は、搬送台車(台車)が走行するための主経路(本線ライン)と、主経路から分岐して、搬送台車を退避させてメンテナンス等を行うための副経路(退避ライン)が敷設されている。
また主経路あるいは副経路を走行する搬送台車に給電を行うために、主経路に沿って、高周波電流を出力する電源装置(高周波電源)に接続される主誘導線路(本線ライン用給電線)が敷設され、副経路に沿って、主誘導線路に接続される副誘導線路(退避ライン用給電線)が敷設されている。
さらに主誘導線路の中間部には、主誘導線路の接続状態/遮断状態を切換える第1の開閉器(第1のマグネットコンタクタ)が配設され、第1の開閉器の両端部で副誘導線路が主誘導線路に接続されている。さらに、副誘導線路の中間部には、副誘導線路の接続状態/遮断状態を切換える第2の開閉器(第2のマグネットコンタクタ)が配設されている。
【0003】
上記構成による作用を説明する。
通常時は、第1の開閉器を接続状態にすると共に第2の開閉器を遮断状態にし、副誘導線路を主誘導線路から電気的に切り離している。この状態で、電源装置から主誘導線路に高周波電流を出力することにより、主誘導線路の全体に電流が流れ、主経路上の各搬送台車にピックアップコイル(ピックアップ)を通じて給電が行われる。各搬送台車は主誘導線路から給電を受けて走行モータ等を駆動して主経路上を走行し、荷の搬送などを行う。
【0004】
一方、主経路上のいずれかの搬送台車についてメンテナンスを行う場合、主経路を走行している他の搬送台車の妨げとなることを防止するため、メンテナンスの対象となる搬送台車は主経路から副経路に一時的に退避してからメンテナンスが行われる。この際、まず電源装置を一旦停止し、第1の開閉器を遮断状態にすると共に第2の開閉器を接続状態にして主誘導線路の一部と副誘導線路を直列に接続する。この状態で、電源装置の運転を再開して、主誘導線路の一部及び副誘導線路に高周波電流を出力することにより、主誘導線路の一部及び副誘導線路に電流を流し、メンテナンスの対象となる搬送台車にピックアップコイルを通じて給電を行う。このとき、メンテナンスの対象となる搬送台車は、まず主誘導線路の一部より給電を受けて主経路から副経路に向けて走行し、副経路に入った後は、副誘導線路より給電を受けながら走行する。
【0005】
メンテナンスの対象となる搬送台車が副経路に完全に退避すると、再び電源装置を一旦停止し、第1の開閉器を接続状態にすると共に第2の開閉器を遮断状態にして副誘導線路を主誘導線路から電気的に切り離し、続いて、電源装置の運転を再開し、主誘導線路の全体に高周波電流を流すことにより、再び主経路上の各搬送台車に給電を行う。
これにより、搬送台車を一時的に退避させるために用いられる副誘導線路に給電を行うに際し、副誘導線路に専用の電源装置を設けること無く、主誘導線路と同じ電源装置から副誘導線路に給電することができるため、低コストかつ小さなスペースで副経路上の搬送台車に給電を行うことが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−341390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の無接触給電設備では、主誘導線路のみを電源装置に接続した状態と、副誘導線路が接続された主誘導線路を電源装置に接続した状態とでは、電源装置からみた回路のインピーダンスが大きく異なるため、電源装置が運転している状態で、副誘導線路に対する給電の入り切りを行うと、電源装置にとっては回路インピーダンスが急激に変化することとなり、誘導線路電流が変動し、瞬間的または一定時間搬送台車に十分な電力を供給できず、走行異常が発生するなどの問題がある。そのため、副誘導線路に対する給電の入り切りを行うときには、必ず電源装置を停止した状態で行う必要があり、副誘導線路に対する給電の入り切りを行う度に、電源装置の停止・再開をしていたため、切換え作業が煩雑となっていた。
【0008】
また、第1の開閉器と第2の開閉器は、電源装置に対して直列接続とされ、第1の開閉器と第2の開閉器には電源装置から出力される電流がそのまま流れることになるので、第1の開閉器と第2の開閉器として、定格電流が大きなものを用いる必要があり、開閉器に必要とされるコストやスペースが大きくなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、電源装置を停止することなく、簡易な構成をもって、副誘導線路に対する給電の入り切りを行うことができ、副誘導線路に対する給電の入り切りに用いる開閉器の定格電流を小さくすることができる無接触給電設備を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため本発明の無接触給電設備は、ピックアップコイルに誘導結合して無接触給電を行う主誘導線路及び副誘導線路を備え、前記主誘導線路から前記副誘導線路に対する電力の供給/遮断を切換える無接触給電設備において、所定の発振周波数の交流定電流を前記主誘導線路に出力する電源装置と、前記主誘導線路に設けられる一次側コイルと、前記一次側コイルと共に絶縁トランスを形成するとともに前記副誘導線路に接続される二次側コイルと、前記二次側コイルに接続され、前記副誘導線路と共に並列共振回路を構成する共振コンデンサと、前記二次側コイルと前記並列共振回路との間に設けられ、前記副誘導線路に対する電力の供給/遮断を切換える開閉器とを備え、前記並列共振回路は、当該並列共振回路の共振周波数が前記電源装置の発振周波数と同等の周波数となるように前記副誘導線路のインダクタンス及び前記共振コンデンサのキャパシタンスの定数を選定したものであることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の無接触給電設備は、前記一次側コイルのインダクタンスと、前記二次側コイルのインダクタンスと、前記副誘導線路のインダクタンスとが、同等となるように構成したことが好適である。
【0012】
さらに、本発明の無接触給電設備は、前記ピックアップコイルを移動体に備え、少なくとも前記副誘導線路からのピックアップコイルを通じた給電に基づいて、前記移動体が走行可能となる大きさの電流が前記副誘導線路に流れるように、前記一次側コイルと、前記二次側コイルと、前記副誘導線路とを選定したものであることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無接触給電設備によれば、電源装置から主誘導線路に所定の発振周波数による交流定電流を出力している状態で、開閉器を遮断状態にしたときは、副誘導線路が主誘導線路から遮断されて副誘導線路に電流は流れず、副誘導線路に対する電力の供給を遮断することができ、開閉器が遮断状態から接続状態に切換えられたときは、並列共振回路が電源装置の所定の発振周波数と同等の周波数で共振状態となって副誘導線路に電流が流れ、副誘導線路に対する電力の供給を行うことができる。
この際、共振状態となった並列共振回路のインピーダンスはほぼ無限大となっており、開閉器の遮断状態/接続状態を切換えても電源装置からみた回路のインピーダンスは殆ど変化しないため、電源装置が運転している状態で開閉器の遮断状態/接続状態を切換えても電源装置に対して過度な負担がかからないので、電源装置を停止することなく、副誘導線路に対する給電の入り切りを行うことができる。
そして、開閉器を接続状態にしたときは、並列共振回路が共振状態となるため、副誘導線路に流れる電流と共振コンデンサに流れる電流が互いに逆方向となって打ち消されるので、開閉器に流れる電流の大きさが副誘導線路に流れる電流の大きさよりも遥かに小さくなり、副誘導線路に対する給電の入り切りに用いる開閉器として定格電流の小さなものを用いることができ、開閉器にかかるコスト・スペースを小さくすることができる。
また主誘導線路から電力の供給/遮断を切換える副誘導線路を敷設するために必要となるのは、基本的に、一次側コイルと二次側コイルから形成される絶縁トランスと、開閉器と、共振コンデンサのみであるため、簡易な構成をもって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る無接触給電設備の回路構成図である。
【図2】同無接触給電設備を備えた物品搬送設備の走行経路図である。
【図3】同無接触給電設備において絶縁トランスの一次側コイルと二次側コイルの巻数比を変更した場合の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明の実施の形態に係る無接触給電設備の回路構成図であり、図2に示すのは、本発明の実施の形態に係る無接触給電設備を備えた物品搬送設備の走行経路図である。
【0016】
まず図2について簡単に説明する。無接触給電設備10(図1)を備えた物品搬送設備は、複数の搬送台車30を走行させる主経路20を備えており、主経路20上には、搬送台車30に物品の積み込みが行われる積込部38と、搬送台車30(移動体の一例)に積み込んだ物品の卸しが行われる卸し部39とが配置されている。各搬送台車30は、主経路20上を走行して、積込部38において物品の積み込みを行い、主経路20を走行して、積込部38で積み込んだ物品を卸し部39へと卸すという作業を実行するためのものである。
【0017】
また主経路20とは別に、主経路20から分岐した副経路25が設けられている。この副経路25は、主経路20の経路長を簡易的に延長または拡大するものであり、主経路20と同様に、副経路25上において搬送台車30を走行させるようにされている。
これら主経路20上および副経路25上の搬送台車30に給電を行うために、主誘導線路21と副誘導線路26が敷設されている。
【0018】
主誘導線路21は、主経路20に沿って敷設されており、高周波の交流電流を出力する電源装置12に接続されている。また副誘導線路26は、副経路25に沿って敷設されており、主誘導線路21に対する接続状態/遮断状態を切換え可能とされている。副誘導線路26は、電源装置12から主誘導線路21を介して給電を受けることができるので、原則として、主誘導線路21に接続される電源装置12とは別に副誘導線路26のための電源装置を設ける必要はない。
また主経路20や副経路25上を走行する各搬送台車30はそれぞれ、主誘導線路21あるいは副誘導線路26に誘導結合して受電するピックアップコイル31と、ピックアップコイル31に誘起される電圧・電流を所望の電圧・電流に変換して出力する受電ユニット32と、受電ユニット32から所望の電圧・電流により給電を受けて、車輪等の駆動機構(図示せず)を駆動するための走行モータ33と、物品の積み卸し等を行う際の動力として駆動される駆動モータ(図示せず)とを備えている(図1)。
【0019】
次に、図1を用いて、無接触給電設備10の回路構成について詳しく説明する。
前記電源装置12は、商用電源11から入力した交流電流を、所定の発振周波数により高周波の交流定電流に変換して主誘導線路21に出力するものであり、商用電源11から入力した交流電流を直流電流に整流する整流部13と、整流部13から直流電流を入力して所定の発振周波数の交流電流を出力する発振部14と、電源側コンデンサ15とを備えている。
【0020】
この電源装置12に接続される主誘導線路21には、一次側コイル22が接続され、さらに、この一次側コイル22と共に絶縁トランス24を形成する二次側コイル23が配置されている。この二次側コイル23には、共振コンデンサ27が並列に接続されており、さらに、この二次側コイル23には、副誘導線路26が接続されている。この副誘導線路26および共振コンデンサ27により並列共振回路28が構成されており、この並列共振回路28の共振周波数が電源装置12の発振周波数と同等の周波数となるように副誘導線路26のインダクタンス及び共振コンデンサ27のキャパシタンスの定数が選定されている。これにより、電源装置12の発振周波数と同等の周波数で並列共振回路28が共振状態となるため、副誘導線路26に高い効率で給電を行うことができる。
【0021】
また一次側コイル22のインダクタンスと、前記二次側コイル23のインダクタンスと、前記副誘導線路26のインダクタンスとは同等となるように構成している。これにより、副誘導線路26に流れる電流の大きさを、主誘導線路21に流れる電流の大きさと同等の大きさにすることが可能となり、副経路25上において、主経路20上における場合と同じように搬送台車30に給電を行って、走行および物品の積み卸し等を行わせることができる。
【0022】
そして、二次側コイル23と並列共振回路28との間には、接続状態/遮断状態を切換えることにより、副誘導線路26に対する電力の供給/遮断を切換える開閉器29が備えられている。主誘導線路21に接続された一次側コイル22と開閉器29に接続される二次側コイル23とは、上記のように絶縁トランス24を形成して誘導結合されているため、開閉器29は主誘導線路21とは電気的に絶縁されている。
【0023】
上記構成による作用を説明する。
まず、副誘導線路26に給電を行う必要のないときには、開閉器29は遮断状態とされる。この状態のときは、電源装置12から主誘導線路21のみに給電が行われ、副誘導線路26が主誘導線路21から遮断されて開放状態となり、副誘導線路26に電流は流れず、副誘導線路26に対する電力の供給を遮断することができる。
したがって、開閉器29を遮断状態にしたときは、主経路20上の搬送台車30にのみ給電が行われる。主経路20上の各搬送台車30は、主誘導線路21よりピックアップコイル31を通じて給電を受け、主経路20に沿って走行し、物品の積み卸し等を行うことが可能とされる。なお、このとき、副経路25上に搬送台車30があっても、副誘導線路26には電流が流れていないため、副経路25上の搬送台車30には給電は行われない。
また開閉器29は遮断状態にしたとき、二次側コイル23の両端が開放されているので、電源装置12からみた二次側コイル23以降の回路のインピーダンスはほぼ無限大となっている。
【0024】
一方、副誘導線路26に給電を行う必要が生じたとき、開閉器29が遮断状態から接続状態に切換えられる。
ここで、開閉器29が遮断状態にあるときと接続状態にあるときに関わらず、一次側コイル22の巻数と二次側コイル23の巻数とを同等としている(一次側コイル22のインダクタンスと二次側コイル23のインダクタンスとを同等としている)ため、二次側コイル23には、一次側コイル22にかかる両端電圧と同等の誘起電圧が誘起されている。
このため、開閉器29を接続状態にしたとき、一次側コイル22にかかる両端電圧と同等の電圧とされた二次側コイル23の誘起電圧が副誘導線路26および共振コンデンサ27にかかる。
また副誘導線路26および共振コンデンサ27は、電源装置12の発振周波数と同等の周波数を共振周波数とする並列共振回路28を構成しているため、開閉器29を接続状態にしたとき、電源装置12の発振周波数と同等の周波数で共振状態となり、副誘導線路26には、電源装置12の発振周波数と同等の周波数の交流電流が流れる。
【0025】
このとき、二次側コイル23のインダクタンスが一次側コイル22のインダクタンスと同等となるように構成しているので、副誘導線路26に流れる電流の大きさは、主誘導線路21に流れる電流(一次側コイル22に流れる電流)の大きさと同等とすることができる。
この際、共振状態となった並列共振回路28のインピーダンスはほぼ無限大となっており、開閉器29を遮断状態/接続状態を切換えても電源装置12からみた二次側コイル23以降の回路のインピーダンスは殆ど変化しないため、電源装置12が運転している状態で開閉器29の遮断状態/接続状態を切換えても電源装置12に対して過度な負担がかからないので、電源装置12を停止することなく、主誘導線路21に対する給電とは独立して、副誘導線路26に対する給電の入り切りを行うことができる。
【0026】
そして、開閉器29を接続状態にしたときは、並列共振回路28が共振状態となるため、副誘導線路26に流れる電流と共振コンデンサ27に流れる電流が互いに逆方向となって打ち消されるので、開閉器29に流れる電流の大きさが副誘導線路26に流れる電流の大きさよりも遥かに小さくなり、副誘導線路26に対する給電の入り切りに用いる開閉器29として定格電流の小さなものを用いることができ、開閉器29にかかるコスト・スペースを小さくすることができる。加えて、共振コンデンサ27としてキャパシタンスが比較的小さなものを用いるため、開閉器29を遮断状態から接続状態とした瞬間に開閉器29に流れる突入電流の大きさも低く抑えることができる。
また主誘導線路21から電力の供給/遮断を切換える副誘導線路26を敷設するために必要となるのは、基本的に、一次側コイル22と二次側コイル23から形成される絶縁トランス24と、開閉器29と、共振コンデンサ27のみであるため、簡易な構成をもって実現することができる。
【0027】
したがって、開閉器29を接続状態にしたとき、主経路20上の搬送台車30は、主誘導線路21よりピックアップコイル31を通じて給電を受けながら、副経路25に向けて走行し、主経路20から副経路25に乗り移ると、副誘導線路26よりピックアップコイル31を通じて給電を受け、副経路25上を走行することが可能とされる。
また副経路25上の搬送台車30は、副誘導線路26よりピックアップコイル31を通じて給電を受けながら、主経路20に向けて走行し、副経路25から主経路20に乗り移ると、主誘導線路21よりピックアップコイル31を通じて給電を受け、主経路20上を走行することが可能とされる。
搬送台車30が主経路20から副経路25へ移動が完了すると、あるいは、搬送台車30が副経路25から主経路20へ移動が完了すると、開閉器29が接続状態から遮断状態に切換えられる。これにより、副誘導線路26が再び開放状態されるため、副誘導線路26に電流は流れず、副経路25の近傍で安全に作業を行うことが可能とされる。また非常時などの場合においても、開閉器29を遮断状態とすることにより、副誘導線路26を速やかに開放状態とすることができるため、副経路25の近傍において高い安全性を確保することができる。
【0028】
以下に、上記実施の形態において、具体的な定数を付与した実験結果の一例を説明する。なお、以下では、電源側コンデンサ15のキャパシタンスをC1,共振コンデンサ27のキャパシタンスをC2,主誘導線路21のインダクタンスをL1,副誘導線路26のインダクタンスをL2,一次側コイル22のインダクタンスをL3,二次側コイル23のインダクタンスをL4,主誘導線路21に流れる電流の大きさをI1,副誘導線路26に流れる電流の大きさをI2,開閉器29に流れる電流の大きさをI3,一次側コイル22にかかる両端電圧をV3,二次側コイル23に誘起される誘起電圧をV4,電源装置12の発振部14による発振周波数をfo,並列共振回路28の共振周波数をfrとして説明する。
【0029】
図3に、絶縁トランス24の巻数比を変更した4パターンの例を示しているが、ここでは、図3における(1)の場合(L3:L4=1:1とした場合)について説明する。
各定数は、C1=8.0[μF],C2=12.5[μF],L1=35[μH],L2=22.5[μH],L3=23[μH],L4=24[μH],fo=9.96[kHz]と設定した。またI1は85[A]として定電流制御を行っている。このとき、V3は120[V]であった。
【0030】
またL3とL4とを同等のインダクタンスとするため、一次側コイル22の巻数と、二次側コイル23の巻数とを同等の巻数とした。このため、V4は、V3と同等の大きさである120[V]となった。
【0031】
開閉器29を遮断状態にしているときは、副誘導線路26は開放状態とされているため、I2は0[A]であった。開閉器29を遮断状態から接続状態にすると、I2は83[A]となり、I1と同等の大きさになった。
したがって、副経路25上の搬送台車30に対して、主経路20上にあるときと同等の給電を行うことができることが確認され、副経路25上の搬送台車30には、副経路25上を単に走行するだけでなく、主経路20上で行う作業と同等の作業を行わせることができた。
またこのとき、開閉器29を接続状態にしたとき、I3は15[A]となり、I2よりも大きさが遥かに小さくなることが確認され、定格電流が比較的小さな開閉器29を用いることができ、開閉器29にかかるコスト・スペースを小さくできることが確認された。またC2が12.5[μF]と比較的小さいため、開閉器29を遮断状態から接続状態とした瞬間に、開閉器29に流れ込む突入電流の大きさも小さく抑えることができた。
【0032】
以上に本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、副経路25上において、搬送台車30に主経路20上で行う作業と同等の作業を行わせるために、副誘導線路26に、主誘導線路21と同等の大きさの電流を流す場合について説明したが、副誘導線路26に流す電流の大きさと、主誘導線路21に流す電流の大きさとは異なっていてもよい。
具体的には、副経路25を、搬送台車30のメンテナンスを行う場所として利用する場合等が挙げられる。この場合、副経路25上において、搬送台車30は走行に要する電力以外は必要としないため、副誘導線路26からは、搬送台車30が走行しうるだけの電力の供給を行えば十分となる。
よって、副誘導線路26に流れる電流の大きさを、主誘導線路21に流れる電流の大きさよりも小さくすることができ、これにより、副誘導線路の定常ロスを低減できる。
【0033】
このように、副誘導線路26に流れる電流の大きさを、主誘導線路21に流れる電流の大きさよりも小さくするには、大別して2種類の手法がある。
まず第1の手法は、二次側コイル23に誘起される誘起電圧を、一次側コイル22の両端にかかる電圧よりも小さくするというものである。
これは、二次側コイル23の巻数を、一次側コイル22の巻数よりも少なくする(二次側コイル23のインダクタンスを、一次側コイル22のインダクタンスよりも小さくする)ことにより実現できる。
【0034】
図3を参照しながら、上記の第1の手法の具体例について説明する。このとき、搬送台車30が走行可能となる大きさの電流が前記副誘導線路26に流れるように、一次側コイル22と、二次側コイル23と、副誘導線路26とを選定しているが、搬送台車30が走行しうるためには、副誘導線路26に流れる電流I2が50[A]以上であることが必要であるものとする。
【0035】
図3における(2)の場合、L3:L4=6:5(L3が23[μH],L4が19.2[μH])としている。これにより、V4は92.5[V]となり、I2は66.8[A]となり、I3[A]は15[A]となった。この場合、I2が50[A]以上となるため、搬送台車30は副経路25上を走行可能であり好ましい。
また図3における(3)の場合、L3:L4=3:2(L3が23[μH],L4が13.8[μH])としている。これにより、V4は76.2[V]となり、I2は51.1[A]となり、I3[A]は20[A]となった。この場合、I2が50[A]以上となるため、搬送台車30は副経路25上を走行可能であり好ましい。
【0036】
一方、図3における(4)の場合では、L3:L4=2:1(L3が23[μH],L4が11.4[μH])としている。これにより、V4は58.1[V]となり、I2は37.4[A]となり、I3[A]は20[A]となった。この場合、I2が50[A]未満となるため、搬送台車30の走行が困難になるおそれがある。
したがって、副経路25上において搬送台車30を走行可能とするために副誘導線路26に50[A]以上の電流を流す必要がある場合、1≦L3/L4≦1.5となるように、一次側コイル22および二次側コイル23を選定することが望ましい。
【0037】
上記の第1の手法を採用する場合、絶縁トランス24において、副経路25を、主経路20と同様に用いる場合(副誘導線路26に主誘導線路21と同等の大きさの電流を流す場合)の第1の端子と、副経路25を搬送台車30のメンテナンスを行うためのみに利用する場合(副誘導線路26に搬送台車30が走行しうるだけの給電を行う場合)の第2の端子を設け、このような第1の端子および第2の端子を設けた絶縁トランス24を予めユニット化しておけば、現場において、絶縁トランス24の第1の端子と第2の端子とを切換えて接続することにより、副経路25の用途の変更に容易に対処することが可能とされる。
【0038】
また第2の手法は、副誘導線路26のインダクタンスを増加するというものである。
副誘導線路26のインダクタンスを増加するには、副誘導線路26の線路長を長くする、あるいは副誘導線路26にインダクタを直列付加することにより実現できる。
但し、この場合、電源装置12の発振周波数と同等の周波数を共振周波数とする並列共振回路28を、インダクタンスを増加した後の副誘導線路26および共振コンデンサ27により構成するため、副誘導線路26の増加後のインダクタンスに併せて、共振コンデンサ27のキャパシタンスを調整する必要がある。
共振コンデンサ27として、キャパシタンスの増減が可能である可変コンデンサを用いれば、現場において、可変コンデンサのキャパシタンスを変更することにより、並列共振回路28の共振周波数を容易に調整することが可能となる。
【0039】
また上記とは別に、副誘導線路26の線路長が短縮される(副誘導線路26のインダクタンスが小さくなる)可能性がある場合、副誘導線路26に対して可変コイル(可変インダクタ)を直列接続するようにしてもよい。副誘導線路26の線路長が短縮された場合、現場において、可変コイルのインダクタンスを増加することにより、副誘導線路26と可変コイルおよび共振コンデンサ27からなる並列共振回路28の共振周波数を、電源装置12の発振周波数と同等の周波数となるよう容易に調整することが可能となる。
【0040】
また例えば、上述した実施の形態では、電源装置12に接続される主誘導線路21に1つの副誘導線路26を、主誘導線路21に対する接続状態/遮断状態を切換え可能に敷設した例を説明したが、電源装置12に接続される主誘導線路21に対して2つ以上の副誘導線路26を、主誘導線路21に対する接続状態/遮断状態を切換え可能に敷設することもできる。
この場合、主誘導線路21に直列に接続する一次側コイル22を、副誘導線路26の数だけ増加することにより対応できる。なお、二次側コイル23以降の回路の構成は同様である。
副誘導線路26を主誘導線路21に対する接続状態/遮断状態を切換えても、電源装置12からみた回路のインピーダンスは無限大のまま殆ど変化しないため、電源装置12が運転している状態で、各副誘導線路26についてそれぞれ給電の入り切りを自由に行っても、電源装置12に過度な負担がかかることがない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、特に、主経路から分岐する副経路上に数台の搬送台車を走行させ、あるいは貯留する場合に適し、主経路上の移動体に給電を行いながら、副経路上の移動体に対する給電の入り切りを行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0042】
10 無接触給電設備
11 商用電源
12 電源装置
13 整流部
14 発振部
15 電源側コンデンサ
20 主経路
21 主誘導線路
22 一次側コイル
23 二次側コイル
24 絶縁トランス
25 副経路
26 副誘導線路
27 共振コンデンサ
28 並列共振回路
29 開閉器
30 搬送台車
31 ピックアップコイル
32 受電ユニット
33 走行モータ
38 積込部
39 卸し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップコイルに誘導結合して無接触給電を行う主誘導線路及び副誘導線路を備え、
前記主誘導線路から前記副誘導線路に対する電力の供給/遮断を切換える無接触給電設備において、
所定の発振周波数の交流定電流を前記主誘導線路に出力する電源装置と、
前記主誘導線路に設けられる一次側コイルと、
前記一次側コイルと共に絶縁トランスを形成するとともに前記副誘導線路に接続される二次側コイルと、
前記二次側コイルに接続され、前記副誘導線路と共に並列共振回路を構成する共振コンデンサと、
前記二次側コイルと前記並列共振回路との間に設けられ、前記副誘導線路に対する電力の供給/遮断を切換える開閉器とを備え、
前記並列共振回路は、当該並列共振回路の共振周波数が前記電源装置の発振周波数と同等の周波数となるように前記副誘導線路のインダクタンス及び前記共振コンデンサのキャパシタンスの定数を選定したものであること
を特徴とする無接触給電設備。
【請求項2】
前記一次側コイルのインダクタンスと、前記二次側コイルのインダクタンスと、前記副誘導線路のインダクタンスとが同等となるように構成したこと
を特徴とする請求項1に記載の無接触給電設備。
【請求項3】
前記ピックアップコイルを移動体に備え、
少なくとも前記副誘導線路からのピックアップコイルを通じた給電に基づいて、前記移動体が走行可能となる大きさの電流が前記副誘導線路に流れるように、前記一次側コイルと、前記二次側コイルと、前記副誘導線路とを選定したものであること
を特徴とする請求項1に記載の無接触給電設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−13207(P2013−13207A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143629(P2011−143629)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】