説明

無機充填剤を含むゴム組成物における、カップリング系(白色充填剤/エラストマー)としての異なる2タイプのカップリング剤配合物の使用

本発明は、(B)天然又は合成ゴムのような少なくとも1種のエラストマー;(C)補強充填剤のような無機充填剤;(D)特に1種(又は1種以上)の加硫剤を含めて一般的に使用される成分又は添加剤の全て又は一部を含むゴム組成物における無機充填剤−エラストマーカップリング剤としての多官能性カップリング系(A)の有効量の使用に関するものである。該使用は、該多官能性カップリング系が次の成分(A1)及び(A2):((A1)は、次式(I):[(G03SiO1/2m [(G0)2SiO2/2n [G0SiO3/2o [SiO4/2p [(G2a(G1a'(Z−CO−N=N−CO−A)SiO(3-a-a')/2q(式中、Z、A、G0、G1、G2、a、a’、m、n、o、p及びqは請求項1に定義されるものである。)の官能化有機珪素化合物の中から選択される少なくとも1種のカップリング剤であり;(A2)は、多硫黄含有「対称」シラン又は硫黄含有「対称」シランのいずれかから選択される少なくとも1種のカップリング剤である。)
を組み合わせることからなること、及び該多官能性カップリング系(A)がイソプレンエラストマー系ゴム組成物に取り入れられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、補強充填剤として無機充填剤を含むゴム組成物において、カップリング系(白色充填剤−エラストマー)として2つの非常に異なるタイプのカップリング剤配合物を使用する分野に関する。また、本発明は、該カップリング系を使用することによって得られたエラストマー組成物及び上記組成物を含む本体を有するエラストマー物品に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
本発明において最も有用なエラストマー物品のタイプは、特に次のストレス:温度変化及び/又はある種の力学的状態での非常に頻繁な応力変化;及び/又はかなりの静的応力;及び/又はある種の力学的状態での大きな歪み疲労にさらされるものである。このようなタイプの物品は、例えば、家電機器類用のシール、金属製電機子又はエラストマー内部にある油圧油と共にエンジン振動抑制器として作用する支持材、ケーブルシース、靴底及びケーブルカー用ローラーである。
【0003】
これは、特に、「補強」充填剤と呼ばれる、分散性の高い特定の無機充填剤で強化された新規なエラストマー組成物を開発することにより可能になった。該充填剤は、補強の観点から従来のカーボンブラックに匹敵することができ、しかも、これらの組成物のヒステレシスをさらに低くする(これは、特に、エラストマー物品(例えば、上記のようなもの)の使用中に該物品の内部加熱を低減させることと同義である)。
【0004】
それにもかかわらず、このような充填剤を含有するゴム組成物の実施(又は「処理加工性」)は、従来通りカーボンブラックを充填したゴム組成物よりも未だに困難なままである。特に、結合剤としても知られているカップリング剤であって、その機能が無機充填剤粒子の表面とエラストマーとの結合を確保すると同時に、この無機充填剤のエラストマーマトリックスへの分散を容易にすべきものを使用することが必要である。
【0005】
ここで、用語「カップリング剤」(無機充填剤−エラストマー)とは、既知の態様で、無機充填剤とエラストマーとの間に化学的及び/又は物理的な性質の十分な結合を確立させることができる試剤を意味するものとする。
【0006】
少なくとも二官能性であるこのようなカップリング剤は、簡略された一般式「Y−W−X」(式中:
・Yは、該無機充填剤に物理的に及び/又は化学的に結合することができる官能基(官能基「Y」)を表し、ここで、当該結合は、例えば、カップリング剤の珪素原子及び該無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカの場合には表面シラノール)との間に達成されてもよく;
・Xは、エラストマーに物理的に及び/又は化学的に、例えば好適な原子又は原子の群を介して結合することができる官能基(官能基「X」)を表し;
・Wは「Y」と「X」を結合させることができる2価基を表す。)
を有する。
【0007】
特に、カップリング剤と、無機充填剤を被覆するための単純な試剤であって、既知の態様で該無機充填剤に対して活性な官能基「Y」を有することができるが、ただし、いずれにせよエラストマーに対して活性な官能基「X」が欠落した試剤とを混同すべきではない。
【0008】
カップリング剤、特に(シリカ−エラストマー)は多数の特許文献に記載されており、最もよく知られているのは、二官能性含硫黄シラン、特に含硫黄アルコキシシランであり、これらは、現時点で、シリカ充填加硫物についてスコーチ安全性、使用しやすさ及び補強力の点で最高の妥協を与える製品であるとみなされている。これらの含硫黄シランのなかでは、特に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略記)を挙げなければならないが、これは、補強充填剤として無機充填剤を含むゴム組成物における基準カップリング剤である。
【0009】
現在もなお、例えばシリカのような無機充填剤用のこれらのカップリング剤の性能品質を改善させることが求められている。
【0010】
特にイソプレンエラストマーであって、既知の態様では、このエラストマーとの有効な結合がカーボンブラックを使用した場合と比較して得るのが非常に困難であるものを基材とするゴムマトリックスの場合に、特にこの要望がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
その研究を継続した結果、本出願人は、2つの非常に異なるタイプのカップリング剤の組み合わせによって、イソプレンエラストマーについてのカップリング性能品質を顕著に改善させることが可能になる新規な無機充填剤カップリング系を見いだした。この種の系は、特に、エラストマー物品(例えば、上で述べたようなもの)について、それらを使用する過程でこれらの物品の内部熱の低下で示される又はエンジンの支持材における振動防止部材の場合に伝達係数の増大で示されるゴム組成物のヒステリシス特性の顕著な改善を達成することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の主題
この目的は、とりわけ、第1の主題において、
「X」又は「Y」で示される少なくとも2種の官能基を有する多官能性カップリング系(A)(無機充填剤−エラストマー)であって、一方では官能基「X」によって該エラストマーにグラフトでき、他方では該官能基「Y」によって該無機充填剤にグラフトできるものの有効量の、
次の成分:
・(B)天然又は合成ゴム型の少なくとも1種のエラストマー;
・(C)補強充填剤としての無機充填剤;
・(D)次のものから選択される他の成分又は添加剤の全て又は一部:1種(又は1種以上)の硬化剤(D1)、随意に1種(又は1種以上)の硬化促進剤(D2)、随意に1種(又は1種以上)の硬化活性剤(D3)、随意に1種(又は1種以上)の非白色補強充填剤(D4)、随意に1種(又は1種以上)の非補強無機充填剤又は補強性に乏しい無機充填剤(D5)、随意に1種(又は1種以上)の保護剤(D6)、随意に1種(又は1種以上)の可塑剤及び/又は1種(又は1種以上)の助剤(D7)並びにこれらの種の混合物;
を含むゴム組成物における無機充填剤−エラストマーカップリング剤としての使用であって、
該多官能性カップリング系(A)が以下の成分(A1)及び(A2)の組み合わせに属する特定の組み合わせからなること:
(A1)は、カップリング剤の群であって、それぞれが次の一般式を有する単位を含む官能化有機珪素化合物(I)から本質的になる化合物であるものから選択される少なくとも1種のカップリング剤である:
[(G03SiO1/2m [(G02SiO2/2n [G0SiO3/2o [SiO4/2p [(G2a(G1a'(Z−CO−N=N−CO−A)SiO(3-a-a')/2q (I)
(式中、
m、n、o及びpは、それぞれ0以上の整数又は分数を表し;
qは1以上の整数又は分数を表し;
aは0、1、2及び3から選択される整数を表し;
a’は0、1及び2から選択される整数を表し;
a+a’の合計は0〜3の範囲内にあるが、ただし、a=0のときには、記号G0の少なくとも一つは、G2について以下に与える定義に相当し; a+a’=3のときには、m=n=o=p=0(ゼロ)であるものとし;
記号G0は、同一でも異なっていてもよく、それぞれG2又はG1に相当する基の一つを表し;
記号G2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれヒドロキシル基又は加水分解性の1価基を表し;
記号G1は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を表す基を表し;さらに、この場合、必要に応じて、G1基は、G2基並びにG1及びG2が結合する珪素原子と共に、2〜10の環炭素原子を含みしかも場合によっては1個以上の環酸素ヘテロ原子を含む単環式又は多環式炭素環式基を形成することができ;
記号Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和、不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;並びに飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を含有する基から選択される2価基を表し;該2価基は、酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素は、水素原子;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系原子;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;並びに飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を含有する基から選択される1個の1価基を保持するものとし;
記号Aは、
・飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を表す基;
・基−X−G3(式中:Xは−O−、−S−又は−NG4−を表し、ここで、G4はG1について上記した意味のいずれかを有するものとし;G3は、G4と同一でも異なっていてもよく、G1について定義した基のいずれかを表し;また、基−NG43の置換基G3及びG4は、これらのものが結合する窒素原子と共に、環中に3〜6個の炭素原子、1又は2個の窒素原子及び随意に1又は2個の不飽和二重結合を含む5〜7員の単環を形成してもよい。);
・又は、q=1のときには、基
[−Z−SiO(3-a-a')/2(G2a(G1a'] [(G03SiO1/2m [(G02SiO2/2n [G0SiO3/2o [SiO4/2p(式中、記号Z、G0、G1、G2、a、a’、m、n、o及びpは、上記の定義を表す。)
を表し;
(A2)は、カップリング剤の群であって、それぞれが次のものから本質的になる化合物であるものから選択される少なくとも1種のカップリング剤である:
・次の一般式に相当する多硫黄含有「対称」シラン(A2−1):
(G6b(G53-bSi−M−(Sx−M)m−Si(G53-b(G6b (II)
(式中:
記号G6は、G2について上記した意味のいずれか一つを表し;
記号G5は、G1について上記した意味のいずれか一つを表し;
bは1、2又は3の整数を表し;
mは1又は2の整数を表し;
xは2〜6の範囲の整数又は分数を表し;
Mは、Zについて上記した意味のいずれか一つを表す。)
・又は次の一般式に相当する硫黄含有「非対称」シラン(A2−2):
(G6b(G53-bSi−M−Sz−J (III)
(式中:
・記号G6、G5、b及びMは式(II)について上記した定義に相当し;
・zは1〜4の範囲の整数又は分数を表し;
・記号Jは、
z=1のときは水素原子又は基−CO−R1を表し;
zが2〜4の範囲の整数又は分数であるときは、基−NR23又は基Bzt又は基Bzt(AA)yを表し;
ここで、R1は、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基、或いは飽和、不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基、或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を有する基であり;R2及びR3は、同一のもの又は異なるものであり、水素原子及び/又はR1によって表される基のいずれか一つであり;R2及びR3は、さらに、これらが結合する炭素原子と一緒になって、5〜7員の単環であって該環内に3〜6個の炭素原子と1又は2個の窒素原子と随意に1又は2個の二重結合とを有するものを形成することができ;記号Bztは、飽和脂肪族炭化水素系の基、或いは飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基、或いは飽和脂肪族炭化水素系の部分と飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式の部分とを有する基から選択される1個以上の基で置換されていてよい2−ベンゾチアゾール基を表し;記号AAは、酸素を含有する有機又は無機一酸又は多酸であって、その酸官能基の少なくとも1個が25℃の水中で3を超える電離定数(pKa)を有するものを表し;yは、0(ゼロ)以外で且つ3を超えない整数又は分数であるものとする。)
前記多官能性カップリング系(A)がイソプロピレンエラストマーを基材とするゴム組成物に取り入れられること
を特徴とする前記使用
に関する本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の目的上、表現「官能化有機珪素化合物(I)」とは、次の化合物を意味するものとする:
(i)式(I)(式中m=n=o=p=0(ゼロ)、q=1、a+a’=3である)に相当する少なくとも1種の官能化オルガノシラン;
(2i)式(I)(式中:a+a’の合計が0〜2の範囲にあり、m、n、o及びpの少なくとも一つが0(ゼロ)以外の数であり且つqが1以上であるか、又はqが1より大きく且つm、n、o及びpのそれぞれが任意の値を有するかのいずれかである。)に相当する少なくとも1種の官能化シロキサンオリゴマー;及び
(3i)官能化オルガノシラン(i)及び/又は官能化シロキサンオリゴマー(2i)の混合物。
【0014】
式(I)に相当する官能化シロキサンオリゴマーに関して、本発明において対象とするのに好都合なものは、式(I)において上で与えた、m+n+o+p+qの合計(オリゴマー中の珪素原子数に相当する)が2〜20、好ましくは2〜12、例えば2〜6の範囲にあるという定義に相当する化学種(2i)である。
【0015】
上記式(I)において、基(Z−CO−N=N−CO−A)は、単位SiO(3-a-a')/2のSi原子に2価の基−Z−を介して結合することを理解すべきである。
【0016】
上記式(I)において、カップリング剤の官能基「X」は活性化されたアゾ官能基CO−N=N−COであるのに対し、官能基「Y」はヒドロキシル/加水分解性官能基−Si−G0及び/又は−Si−G2である。上記式(II)において、カップリング剤の官能基「X」はポリスルフィド官能基Sxであるのに対し、官能基「Y」はヒドロキシル/加水分解性官能基−Si−G6である。上記式(III)において、カップリング剤の官能基「X」はポリスルフィド官能基Szであるのに対し、官能基「Y」はヒドロキシル/加水分解性官能基−Si−G6である。
【0017】
本明細書において、用語「脂肪族炭化水素系の基」とは、好ましくは1〜25個の炭素原子を含有する、置換されていてよい直鎖又は分岐基を意味する。
【0018】
好都合には、該脂肪族炭化水素系の基は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、さらに好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する。
【0019】
言及できる飽和脂肪族炭化水素系の基としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、1−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1−メチル−1−エチルプロピル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、1−プロピルブチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、1−メチルノニル、3,7−ジメチルオクチル、7,7−ジメチルオクチル及びヘキサデシル基が挙げられる。
【0020】
不飽和脂肪族炭化水素系の基は、エチレン型(二重結合)及び/又はアセチレン型(三重結合)の1個以上の不飽和、好ましくは1、2又は3個の不飽和を含む。
【0021】
これらの例は、上で定義したアルキル基から2個以上の水素原子を除去することによって誘導されるアルケニル又はアルキニル基である。好ましくは、不飽和脂肪族炭化水素系の基は、不飽和を1個のみ含む。
【0022】
本発明において、用語「炭素環式基」とは、置換されていてよい、好ましくはC3〜C50の単環式又は多環式基を意味する。好都合には、これは、好ましくは単環式、二環式又は三環式のC3〜C18基である。この炭素環式基が1個を超える環核を有する場合(多環式炭素環の場合)には、該環核は対になって縮合する。2個の縮合核はオルト縮合又はペリ縮合であることができる。
【0023】
特に示さない限り、炭素環式基は、飽和部分及び/又は芳香族部分及び/又は不飽和部分を含むことができる。
【0024】
飽和炭素環式基の例は、シクロアルキル基である。好ましくは、シクロアルキル基は、C3〜C18、さらに好ましくはC5〜C10のものである。特に、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル及びノルボルニル基が挙げられる。
【0025】
不飽和炭素環又は炭素環式型の任意の不飽和部分は、1個以上のエチレン系不飽和、好ましくは1個、2個又は3個のエチレン系不飽和を含む。このものは、好都合には、6〜50個、好ましくは6〜20個の炭素原子、例えば6〜18個の炭素原子を含有する。不飽和炭素環の例はC6〜C10シクロアルケニル基である。
【0026】
芳香族炭素環式基の例は、(C6〜C18)アリール、好ましくは(C6〜C12)アリール基、特にフェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリルである。
【0027】
上で定義した炭化水素系脂肪族部分及び上で定義した炭素環式部分の両方を含有する基は、例えば、ベンジルのようなアリールアルキル基又はトリルのようなアルキルアリール基である。
【0028】
炭化水素系脂肪族基又は炭化水素系脂肪族部分及び炭素環式基又は炭素環式部分上の置換基は、例えば、アルコキシ基であって、そのアルキル部分が好ましくは上で定義した通りのものである。
【0029】
記号G2及びG6に関する上記用語「加水分解性の1価基」とは、例えば、ハロゲン原子、特に塩素;基−O−G7及び−O−CO−G7であって、G7が、上で定義したような、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基、或いは飽和、不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基、或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分と炭素環式部分とを含有する基を表すもの(G7はハロゲン化されていてよく及び/又は1個以上のアルコキシ基で置換されていてよい);基−O−N=CG89であって、G8及びG9が、独立して、G7について上に与えた意味のいずれかを表すもの(G8及びG9は、ハロゲン化されていてよく及び/又は1個以上のアルコキシ基で置換されていてよい);基−O−NG89であってG8及びG9が上で定義した通りであるもののような基を意味する。
【0030】
好都合には、このような加水分解性の1価基は次の通りの基である:ハロゲン化されていてよく及び/又は1個以上の(C1〜C8)アルコキシで置換されていてよい直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルコキシ;ハロゲン化されていてよく又は1個以上の(C1〜C8)アルコキシで置換されていてよいC2〜C9アシルオキシ;C5〜C10シクロアルキルオキシ;或いはC6〜C18アリールオキシ。例示として、加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、メトキシメトキシ、エトキシエトキシ、メトキシエトキシ、β−クロルプロポキシ、β−クロルエトキシ又はアセトキシである。
【0031】
式(I)において、置換基G1及びG2と共に、これらが結合する珪素原子と一緒になって形成され得る1価の炭素環式基としては、例えば、次の環:
【0032】
【化1】

が挙げられる。
一方では式(I)の記号A中に存在する窒素原子と一緒になって置換基G3及びG4によって形成でき、他方では式(III)の記号J中に存在する窒素原子の置換基R2及びR3によって形成できる単環としては、例えば、遊離原子価が窒素原子によって保持される次の環:ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピロリジン、Δ2−ピロリン、イミダゾリジン、Δ2−イミダゾリン、ピラゾリジン、Δ3−ピラゾリン、ピペリジンが挙げられ、好ましい例はピロール、イミダゾール及びピラゾールである。
【0033】
官能化有機珪素化合物(A1)のうち、好適なもの(SA1−1という化合物)は、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物
からなり、
且つ、
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、それぞれ、ヒドロキシル基又は直鎖状若しくは分岐状のC1〜C8アルコキシ基であって、1個以上の(C1〜C8)アルコキシで置換されていてよいものを表し;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、C1〜C8アルキレン鎖;飽和C5〜C10シクロアルキレン基;C6〜C18アリーレン基;又はこれらの基の少なくとも2種の組み合わせからなる2価基を表し;
・Z”は原子価結合、−O−又は−NR4−を表し、ここで、R4は、水素原子;直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基;C6〜C18アリール基;又は(C6〜C18)アリール−(C1〜C8)アルキル基である。)
を表し;
・Aが基−O−G3又は−NG43を表し、ここで、G3及びG4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表す
構造の化合物である。
【0034】
官能化有機珪素化合物(A1)のうち、特に好適なもの(SA1−2という化合物)は、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物
からなり、
且つ
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、メトキシメトキシ、エトキシエトキシ及びメトキシエトキシ基よりなる群から選択され;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、C1〜C8アルキレン鎖を表し;
・Z”は、原子価結合、−O−又は−NR4−を表し、ここで、R4は、水素並びにメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル及びベンジル基よりなる群から選択される。)
を表し;
・Aが基−O−G3又は−NG43を表し、ここで、G3及びG4が、同一でも異なっていてもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択される
構造の化合物である。
【0035】
官能化有機珪素化合物(A1)のうち、特に好適なもの(SA1−3という化合物)は、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物
からなり、
且つ、
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシ基よりなる群から選択され;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、2価基のメチレン、エチレン及びプロピレンよりなる群から選択され;
・Z”は、原子価結合、−O−又は−NR4−を表し、ここでR4は水素原子である。)
を表し;
・Aが基−O−G3を表し、ここで、G3がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択される
構造の化合物が挙げられる。
【0036】
特に好適な官能化有機珪素化合物(A1)の例としては、特に次式の物質:
−(C25O)3Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOC25 (A1−1)
−化学種(A1−1)と以下の化学種(A1−1’)及び(A1−1”)との混合物:
[(CH33SiO1/2][(C25O)2{(CH23−NH−CO−N=N−COOC25} SiO1/2] (A1−1’)
[(CH33SiO1/22 [(C25O){(CH23−NH−CO−N=N−COOC25}SiO2/2] (A1−1”)
−(CH32(C25O)Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOC25 (A1−2)
−(CH3)(CH3O)2Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOCH3 (A1−3)
−(CH32(OH)Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOCH3 (A1−4)
−(C252(OH)Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOC25 (A1−5)
−(CH3)(CH3O)2Si−(CH23−CO−N=N−COOCH3 (A1−6)
−(CH32(OH)Si−(CH23−CO−N=N−COOCH3 (A1−7)
−(C252(OH)Si−(CH23−CO−N=N−COOC25 (A1−8)
が挙げられる。
【0037】
多硫黄含有オルガノシラン(A2)のうち、好適なもの(SA2−1というシラン)は、式(II)の「対称」シラン(式中:
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表し;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ、ヒドロキシル基、1個以上の(C1〜C8)アルコキシ基によって置換されていてよい直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルコキシ基を表し;
・Mは、C1〜C8アルキレン鎖;飽和C5〜C10シクロアルキレン基;C6〜C18アリーレン基;又はこれらの基の少なくとも2種の組み合わせからなる2価基を表し;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
である。
【0038】
多硫黄含有オルガノシラン(A2)のうち、特に好適なもの(SA2−2というシラン)は、式(II)のシラン(式中:
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、メトキシメトキシ、エトキシエトキシ及びメトキシエトキシ基よりなる群から選択され;
・MはC1〜C8アルキレン鎖を表し;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
である。
【0039】
多硫黄含有オルガノシラン(A2)のうち、特に好適なもの(SA2−3というシラン)は、式(II)のシラン(式中:
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びイソプロポキシ基よりなる群から選択され;
・Mは、2価のメチレン、エチレン及びプロピレン基よりなる群から選択され;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
である。
【0040】
特に好適な多硫黄含有オルガノシラン(A2)の例としては、特に次のもの:
・次式のビストリエトキシシリルプロピルジスルフィド(TESPDと略記):
(C25O)3Si−(CH23−S2−(CH23−Si(OC253
(A2−1)
・次式のビストリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(TESPTと略記):
(C25O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OC253
(A2−2)
・次式のビスモノヒドロキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィド:
(HO)(CH32Si−(CH23−S4−(CH23−Si(CH32(OH)
(A2−3)
・次式のビスモノエトキシジメチルシリルプロピルジスルフィド(MESPDと略記):
(C25O)(CH32Si−(CH23−S2−(CH23−Si(CH32(OC25
(A2−4)
・次式のビスモノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィド(MESPTと略記):
(C25O)(CH32Si−(CH23−S4−(CH23−Si(CH32(OC25
(A2−5)
が挙げられる。
【0041】
(i)型の官能化有機珪素化合物(A1)は次の工程:
(a):次式の前駆体シラン:
(G2a(G1a'Si−P1
と次式の前駆体ヒドラゾ誘導体:
2−NH−NH−CO−A
(上記式において、記号G1、G2及びAは上で定義した通りであり、a+a’=3であり、P1及びP2は、所定の基であって、その構造及び官能価が、これらの基が互いに反応して中心鎖鎖−Z−CO−を形成し、次式のヒドラゾ化合物:
(G2a(G1a'Si−Z−CO−NH−NH−CO−A
(IV)
を生じさせることができるものを表す。)
とを反応させ、
(b):式(IV)の化合物を次のスキーム:
(G2a(G1a'Si−Z−CO−NH−NH−CO−A(IV)→(G2a(G1a'Si−Z−CO−N=N−CO−A(I)
に従うヒドラゾ基の酸化反応に付す
ことを含む合成方法に従って製造できる。
【0042】
工程(b)の酸化は、化学量論的量又はこれに対して過剰量で使用される、例えばn−ブロムスクシンイミド及びピリジンを主体とする酸化系を使用して実施ことによって容易に行われる。
【0043】
使用するのに特に好適な式(I)の官能化オルガノシラン(A1)を製造する場合であって、その構造において記号Zが2価基−(CH23−NH−を表すときには、適用される合成スキームは次の通りである:
(a):式の前駆体シラン:
(G2a(G1a'Si−(CH23−NCO
と次式の前駆体ヒドラゾ誘導体:
2N−NH−CO−A
とを反応させて次式のヒドラゾ化合物:
(G2a(G1a'Si−(CH23−NH−CO−NH−NH−CO−A (IV)
を生じさせ、
(b):式(IV)の化合物を次のスキーム:
(G2a(G1a'Si−(CH23−NH−CO−NH−NH−CO−A(IV)→(G2a(G1a'Si−(CH23−NH−CO−N=N−CO−A(I)
に従うヒドラゾ基の酸化反応に付す。
【0044】
(b)で説明した方法を実施する実施形態に関して、さらに詳しくはFR−A−2340323を参照されたい。
【0045】
(2i)及び(3i)型の官能化有機珪素化合物(A1)は、
・前駆体(IV)のヒドラゾ基を、少なくとも1種の酸化剤(例えばハロゲン、例えば臭素)及び少なくとも1種の塩基(例えば無機塩基、例えばNa2CO3)を含む酸化系を使用して酸化させ、
・モノアルコキシシラン又はポリアルコキシシラン(例えばトリメチルエトキシシラン)から選択される追加の試薬を含ませ、そして
・好ましくは有機液体媒体(例えばジクロロメタンのような溶媒を使用する)中で作用させること
からなる合成方法に従って調製できる。
【0046】
この方法を実行するための有利な一手順は、
・室温(例えば23℃)の反応器中に、前駆体(IV)と、塩基(その量は使用される酸化剤に依存する;例えば、臭素の場合には、臭素に対して2モル当量の塩基が使用される)と、有機溶媒と、追加の試薬(その量は、例えば、前駆体に対して少なくとも1モル当量に相当する)とを置き、
・次いで、反応媒体に酸化系(そのモル量は、例えば、前駆体のモル量に対して化学量論的である)を徐々に添加すること
からなる。
【0047】
多硫黄含有オルガノシラン(A2)は、様々な文献に記載されている様々な既知の合成方法によって製造できる;特に次の文献が挙げられる:
・「対称」多硫黄含有シランについては、EP−A−0680997、EP−A−1043357、WO−A−02/30939、WO−A−02/31041、WO−A−02/083719、US−A−4128438;
・「対称」硫黄含有シランについては、EP−A−0074632、EP−A−0939081、EP−A−0945556、WO−A−03/002574、WO−A−03/053983、FR−A−2839720。
【0048】
いくつかのオルガノシラン(A2)は市販されている:TESPDは、例えば、デグッサ社が商品名Si75の下に販売(ジスルフィド(75重量%)とポリスルフィドとの混合物の形態で)しており、又は別に、GE−OSI社が商品名Silquest A1589の下に販売している;TESPTは、例えば、デグッサ社が商品名Si69(又はカーボンブラック担体に担持された50重量%の製品の形態にある場合にはX50S)又はGE−OSI社が商品名Silquest A1289(両者の場合には、式(II)におけるSxのxがほぼ4である平均値を有するポリスルフィドの市販混合物)の下に販売されている。
【0049】
当業者であれば、上記カップリング剤(A1)及び/又は(A2)が補強無機充填剤、特にシリカにそれらの官能基「Y」を介してグラフトでき、次いでこのように予備カップリングした補強無機充填剤がエラストマーにそれらの遊離官能基「X」を介して結合できることがわかるであろう。また、カップリング剤(A1)及び/又は(A2)は、イソプレンエラストマーにそれらの官能基「X」を介してグラフトさせ、こうして官能化されたエラストマーを場合によっては無機充填剤にそれらの遊離官能基「Y」を介して結合させることもできる。しかしながら、特にゴム組成物を粗製の状態で良好に使用するという理由のため、充填剤にグラフトした又は遊離の形態の(即ちグラフトされていない)カップリング剤の全て又は一部分を使用することが好ましい。
【0050】
本発明の第2の主題
本発明の第2の主題は、
(B)少なくとも1種のイソプレンエラストマーと、
(C)補強無機充填剤と、
(A)上記成分(A1)及び(A2)の組み合わせに属する特定の組み合わせからなるカップリング系の適切な量と
を含む組成物に関する。
【0051】
さらに特定すると、これらの組成物は、
・イソプレンエラストマー100部当たり、
・10〜200部、好ましくは30〜150部、好ましくは40〜120部の無機充填剤(C)、
・それぞれの組成物において、
・0.5〜15部、好ましくは1〜10部の成分(A1)及び
・0.5〜15部、好ましくは1〜10部の成分(A2)
を与える組み合わせ(A1)+(A2)の量
を含む(これらの部は重量部である)。
【0052】
好都合には、組み合わせ(A1)+(A2)の量であって、成分(A1)及び(A2)の割合が上記一般的且つ好ましい範囲で選択されるものは、補強無機充填剤の重量に対して1%〜20%、好ましくは2%〜15%、特に3%〜10%を占めるように決定される。
【0053】
好都合には、一方で上記一般的な範囲及び好ましい範囲内で選択され、他方で有利には上記一般的範囲及び好ましい範囲内にある合計(A1)+(A2)を与える成分(A1)及び(A2)の割合は、また、成分(A1)/成分(A2)重量比が0.1〜10、好ましくは0.15〜5、好ましくは0.3〜3の範囲内にあるように決定される。
【0054】
ここで、以下、少なくとも1種のイソプレンエラストマーからなる化合物(B)と、補強無機充填剤からなる化合物(C)との定義に話を戻す。
【0055】
本発明の第2の主題に従う組成物について使用する用語「イソプレンエラストマー」とは、具体的には、
(1)イソプレン又は2−メチル−1,3−ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって、
・(2.1)4〜22個の炭素原子を含有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体、例えば:1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン(又はクロルプレン)、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン;
・(2.2)8〜20個の炭素原子を含有する芳香族ビニル単量体、例えば、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、市販混合物「ビニルトルエン」、p−t−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロルスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタリン;
・(2.3)3〜12個の炭素原子を含有するビニルニトリル単量体、例えばアクリロニトリル又はメタクリロニトリル;
・(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1〜12個の炭素原子を含有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル又はメタクリル酸イソブチル;
・(2.5)上記単量体(2.1)〜(2.4)の2種以上の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;
ここで、該ポリイソプレン共重合体は、99重量%〜20重量%のイソプレン単位と、1%〜80重量%のジエン、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位とを含有し、且つ、例えば、ポリ(イソプレン−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−スチレン)及びポリ(イソプレン−ブタジエン−スチレン)からなるものとする;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテンとイソプレンとの共重合によって得られる共重合体(ブチルゴム)、またこれらの共重合体のハロゲン化変種、特に塩素化又は臭素化変種;
(5)上記エラストマー(1)〜(4)の2種以上の混合物;
(6)主要量の(51%〜99.5重量%、好ましくは70%〜99重量%の範囲)上記エラストマー(1)又は(3)及び副次量(49%〜0.5重量%、好ましくは30%〜1重量%の範囲)の、イソプレンエラストマー以外の1種以上のジエンエラストマーを含有する混合物
を意味する。
【0056】
表現「イソプレンエラストマー以外のジエンエラストマー」とは、それ自体知られているように、上記(2.1)で定義した共役ジエン単量体の一つを重合させることによって得られる単独重合体、例えばポリブタジエン及びポリクロルプレン;上記共役ジエン(2.1)の少なくとも2種を互いに共重合させること又は上記共役ジエン(2.1)の1種と上記不飽和単量体(2.2)、(2.3)及び/又は(2.4)の1種以上とを共重合させることによって得られた共重合体、例えばポリ(ブタジエン−スチレン)及びポリ(ブタジエン−アクリロニトリル);エチレン、3〜6個の炭素原子を含有するα−オレフィンと、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンとを共重合させることによって得られる三元共重合体、例えばエチレン又はプロピレンと、上記のタイプの非共役ジエン単量体、例えば特に、1,4−ヘキサジエン、エチリデン−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(EPDMエラストマー)とから得られるエラストマーを意味する。
【0057】
好ましくは、(1)合成ポリイソプレン単独重合体;(2)ポリ(イソプレン−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−スチレン)及びポリ(イソプレン−ブタジエン−スチレン)からなる合成ポリイソプレン共重合体;(3)天然ゴム;(4)ブチルゴム;(5)上記エラストマー(1)〜(4)の混合物;(6)主要量の上記エラストマー(1)又は(3)及び副次量のイソプレンエラストマー以外のジエンエラストマーであってポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)及び三元共重合体(非共役エチレン−プロピレン−ジエン単量体)からなるものを含有する混合物
から選択される1種以上のイソプレンエラストマーを使用する。
【0058】
より好ましくは、(1)合成ポリイソプレン単独重合体;(3)天然ゴム;(5)上記エラストマー(1)及び(3)の混合物;(6)主要量の上記エラストマー(1)又は(3)及び副次量のイソプレンエラストマー以外のジエンエラストマーであってポリブタジエン及びポリ(ブタジエン−スチレン)からなるものを含有する混合物
から選択される1種以上のイソプレンエラストマーを使用する。
【0059】
本明細書において、用語「補強無機充填剤」とは、周知のように、その色及びその起源(天然又は合成)に関わらず、カーボンブラックとは対照的に「白色」充填剤又は場合によっては「透明」充填剤としても知られている無機充填剤を意味する。また、表現「補強無機充填剤」には、その定義に、「白色」充填剤及びカーボンブラックを主体とした混合充填剤が含まれる。この無機充填剤は、単独で、中間カップリング剤以外のいかなる手段をとることなく、工業用ゴム組成物を補強することができる、言い換えれば、その補強機能において、カーボンブラックのみを基材とする従来の充填剤の代わりに使用することができるであろう。
【0060】
補強無機充填剤は、任意の物理的状態にあることができる。即ち、該充填剤は、粉末、顆粒又はビーズ(マイクロパール)の状態にあることができる。
【0061】
好ましくは、補強無機充填剤、即ち化合物(C)は、シリカ、アルミナ、シリカ及び/又はアルミナで全体的に又は部分的に覆われたカーボンブラック或いはこれらの種の混合物からなる。
【0062】
さらに好ましくは、補強無機充填剤は、シリカ単独からなり又はアルミナとの混合物としてのシリカからなる。
【0063】
本発明において使用できるシリカとしては、当業者に知られている全ての沈降法シリカ及びヒュームドシリカ(燃焼シリカ)であって、好ましくは450m2/g以下のBET比表面積を有するものが使用するのに好適である。標準的であり又は非常に分散しやすい場合が多いため、沈降法シリカが好ましい。
【0064】
用語「高分散性シリカ」とは、薄片について電子顕微鏡又は光学顕微鏡によって観察できる、重合体マトリックス中での高い崩壊及び分散能力を有する任意のシリカを意味する。使用できる高分散性沈降シリカのなかでは、特に、450m2/g以下、好ましくは30〜400m2/gのCTAB比表面積を有するもの、特に米国特許第5403570号並びに国際公開WO−A−95/09127号及びWO−A−95/09128(これらの内容はここで援用するものとする)に記載されたものが挙げられる。このような上記の好ましい高分散性シリカの例としては、ロディア社製のシリカZeosil 1165MP及び1115MP、デグッサ社製のシリカBV3380及びUltrasil 7000、PPG社製のシリカHi−Sil 2000及びHi−Sil EZ150G、Huber社製のシリカZeopol 8715、8741、8745又は8755が挙げられるが、これらに限定されない。また、処理された沈降シリカ、例えば、欧州特許第0735088号(その内容はここで援用するものとする)に記載された「アルミニウムドープ」シリカも使用するのに好適である。
【0065】
より好ましくは、使用するのに好適な沈降法シリカは、
・60〜250m2/g、好ましくは80〜230m2/gのCTAB比表面積、
・60〜260m2/g 、好ましくは80〜240m2/gのBET比表面積、
・1.0〜1.6のBET比表面積/CTAB比表面積比
を有するものである。
【0066】
言うまでもないが、用語「シリカ」とは、様々なシリカのブレンドも意味する。CTAB比表面積は、1987年11月のNFT 45007法に従って決定される。BET比表面積は、1996年12月のNF基準法ISO 9277に相当する、「The Journal of the American Chemical Society,第60巻,309頁(1938)」に記載されたブルナウアー・エメット・テラー法に従って決定される。
【0067】
使用するのに都合のよい補強アルミナは、欧州特許第0810258号に記載されるような、
・30〜400m2/g、好ましくは60〜250m2/gのBET比表面積、
・500nm未満、好ましくは200nm未満の平均粒度、及び
・反応性表面Al−OH官能基の高含有量
を有する高分散性アルミナである。
【0068】
このような補強アルミナの例としては、特に、バイコウスキー社製のアルミナA125、CR125及びD65CRが挙げられる。
【0069】
「白色」充填剤で全体的に又は部分的に覆われたカーボンブラックとしては、特に、キャボット社製のEcoblackの部類の製品、特に商品名CRX2000が挙げられる。
【0070】
本発明のゴム組成物に使用できる無機充填剤の他の例としては、水酸化アルミニウム(酸化物)、アルミノシリケート、酸化チタン、炭化珪素又は窒化珪素、例えば、国際公開WO−A−99/28376、WO−A−00/73372、WO−A−02/053634、WO−A−2004/003067及びWO−A−2004/056915に記載された補強タイプの全ても挙げられる。
【0071】
また、本発明に従う組成物は、エラストマー及びゴム組成物の分野において通常使用される他の補助添加剤及び成分の全て又は一部分を含む成分(D)をも含有する。
【0072】
従って、以下の他の成分及び添加剤の全て又はいくつかを使用することができる:
・硬化系に関しては、例えば、
−(D1):必須成分として、硫黄及び硫黄供与化合物、例えばチウラム誘導体から選択される硬化剤;硫黄に関しては、例えば、イソプレンエラストマー100重量部当たり0.5〜10、好ましくは0.5〜5重量部の範囲の含有量で周知の態様で使用される;
−(D2):随意成分として、硬化促進剤、例えばグアニジン誘導体及びスルフェンアミド誘導体;このような活性剤は、使用される場合には、エラストマー100重量部当たり0.5〜10、好ましくは0.5〜5重量部の範囲の含有量で既知の態様で使用される;
−(D3):随意成分として、硬化活性剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛
が挙げられ、
・他の添加剤に関しては、例えば、
−(D4):随意成分として、カーボンブラックからなる従来の補強充填剤;好適なカーボンブラックとしては、任意のカーボンブラック、特にHAD、ISAF及びSAF型のカーボンブラックが挙げられる;言及できるこのようなカーボンブラックの例としては、カーボンブラックN115、N134、N234、N339、N347及びN375が挙げられる;カーボンブラックの量は、一方では使用される補強無機充填剤が無機充填剤+カーボンブラック集合体の重量の50%を超え、他方では補強充填剤の全量(無機充填剤+カーボンブラック)が、該組成物の重量構成に対して、該補強無機充填剤に関して上で示した値の範囲内に維持されるように決定される;
−(D5):随意成分として、弱補性又は非補強性の慣用の白色充填剤、例えばクレー、ベントナイト、タルク、チョーク、カオリン、二酸化チタン又はこれらの種の混合物;
−(D6):随意成分として、保護剤、例えば酸化防止剤及び/又はオゾン発生防止剤、例えばN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン;
−(D7):随意成分として、可塑剤及び助剤
が挙げられる。
【0073】
助剤(D7)について、本発明に従う組成物は、ゴムマトリックス内での充填剤の分散を改善させ且つ該組成物の粘度を低下させるため、該組成物を未加工の状態で使用することの容易さを既知の方法で向上させることができる、例えば、単一の官能基「Y」を含有する補強充填剤用の被覆剤を含むことができる。この種の助剤は、例えば、ヒドロキシル含有シラン又は加水分解性シラン(特にアルキルトリエトキシシラン)、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール)、アルカノールアミン(例えばトリアルカノールアミン)及びα,ω−ジヒドロキシル化ポリオルガノシロキサンからなる。この種の助剤は、使用する場合には、補強無機充填剤100部当たり、1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部の割合で使用される。
【0074】
本発明の第3の主題
本発明の第3の主題は、補強無機充填剤と、カップリング系の有効量とを含むエラストマー組成物の製造方法に関する。この方法は、標準的な手順に従い2工程で実行できる。ここで:
・工程1(「加温」非生産工程という):一般に硬化剤(D1)を除き、全ての必須成分を、1又は2以上の工程で標準的な内部ミキサーに導入し、そしてブレンドする;例示として、この場合、以下に規定する全ての成分を導入し、そしてブレンドすることが可能である:エラストマー(B)、無機充填剤(C)、カップリング剤(A2)の全て又は一部、随意にカップリング剤(A1)の全て又は一部、随意に少なくとも1種の被覆剤(D7)、随意に1種(又は1種以上)の硬化促進剤(D2)、随意に1種(又は1種以上)の硬化活性剤(D3)、随意に1種(又は1種以上)の保護剤(D6)、随意に1種(又は1種以上)の非白色補強充填剤(D4)、随意に1種(又は1種以上)の弱補強性又は非補強性の白色充填剤(D5);この方法は、40〜200℃、好ましくは60〜180℃の温度で実行される;該混合物を滴下し、そして中間程度に冷却(好ましくは100℃未満の冷却温度)した後に、熱動力作用の1以上の後工程を、該組成物に追加の熱動力処理を施す目的で該内部ミキサー内で実行して、特に補強無機充填剤とカップリング剤とのエラストマーマトリックスへの分散をさらに改善させる;このような後工程の間に、上記必須成分の一方及び/又は他方を導入することが可能である;
・工程2(「低温」生産工程という):次いで、このようにして得られた混合物を外部ミキサー中に取り入れ、そして硬化剤及び随意に1種以上の他の成分をそれに添加する;例えば、次の成分を添加する:随意にカップリング剤(A2)の残部、随意にカップリング剤(A1)の残部の全部又は残部、1種(又は1種以上)の硬化剤(D1)、随意に1種(又は1種以上)の硬化促進剤(D2)、随意に1種(又は1種以上)の硬化活性剤(D3)、随意に1種(又は1種以上)の保護剤(D6);この方法をさらに低い温度、120℃未満、好ましくは25〜100℃で実行する。
【0075】
好ましくは、エラストマー組成物の製造方法を次の2つの工程1及び2において標準的な手段に従って実行する:
・カップリング剤(A2)を補強無機充填剤と同時に工程1の間に全部導入する;
・これに対して、カップリング剤(A1)を
工程1の間に全体的に導入するか、
又は工程2の間に全体的に導入するか、
又は該2つの工程1と2とに分けて導入し、ここで、工程1において導入される第1部分は、10%〜80重量%の割合に相当し、工程2において導入する第2部分は、20%〜90重量%の割合に相当する。
【0076】
より好ましくは、エラストマー組成物の製造方法を、好ましい手順について上に示したように実行するが、この場合には、カップリング剤(A1)をこれら2つの工程1と2とにわたって分配することによって実行する。
【0077】
カップリング剤(A1)及び/又は(A2)の全て又は一部分をこれらのカップリング剤に相当する化学構造と相溶性のある固体上に担持された形態で(担体上への配置があらかじめ実行される)導入することが可能であることに留意すべきである;このような担体は、特にカーボンブラックからなる。例えば、カップリング剤(A1)及び/又は(A2)を2つの工程1及び2にわたって分配する間に、それらの導入及び分散を容易にするために該カップリング剤を担体上に設置した後に工程2の外部ミキサーに該カップリング剤を導入することが好都合であるかもしれない。
【0078】
次いで、得られた最終組成物を、例えば、エラストマー物品の製造のために使用できるシート、プラック又は異形材の形態で圧延する。
【0079】
硬化(又は加硫)は、一般に130〜200℃の範囲の温度で、特に硬化温度、使用される硬化系及び問題の組成物の硬化速度の関数として5〜90分を範囲とすることができる十分な時間にわたって、周知の態様で実行される。
【0080】
第2の主題をなす本発明が粗製の状態(即ち硬化前)及び硬化された状態(即ち架橋又は硬化後)の両方の状態にある上記エラストマー組成物に関するものであることは言うまでもないことである。
【0081】
本発明の第4の主題
本発明の第4の主題は、本発明の第2の主題の文脈において説明した組成物を含む本体を有するイソプレンエラストマー物品に関する。本発明は、例えば、エンジンの支持材、靴底、ケーブルカー用ローラ−、家庭用電化製品に用いるシール及びケーブルシースからなる物品を製造するのに特に有用である。
【0082】
次の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0083】
例1
この例は、(A−1)型のカップリング剤の製造を示すものである。
次の反応スキームを採用した:
(C25O)3Si−(CH23−NCO+H2N−NH−COOC25(C25O)3Si−(CH23−NH−CO−NH−NH−COOC25
(1)前駆体成分の合成:
(1.1)装填材料
【0084】
【表1】

【0085】
(1.2)操作プロトコール
カルバジン酸エチルと無水トルエンを反応器内に室温(23℃)で置き、これをアルゴン雰囲気下に置く。
反応器を300rpmで撹拌し、次いで、この反応混合物を60℃に加熱する。この反応混合物は、加温すると、みたところ均質になる。
次いで、99.8gのシランを、圧力均等化滴下漏斗を使用して60分間にわたり添加する。
この反応混合物を60℃で2時間にわたり撹拌し、次いで室温にまで冷却する。
この反応混合物を数時間室温で放置する。
白色固体が結晶化する。次いで、これをろ過し、150mLのイソプロピルエーテルで2回洗浄し、次いで真空下でこれを除去する。最後に、この固形物を60℃で一定重量m=131.5gにまでオーブン乾燥させる。
生成物をNMRで分析する(モル純度>99%)。収率=97.4%。
【0086】
(2)成分(A1−1)の合成:
成分(A1−1)を、前駆体から、該前駆体に対して化学量論的量で添加されたN−ブロムスクシンイミド(NBS)及びピリジンを主体とする酸化系を使用してヒドラジノ官能基をアゾ官能基に酸化させることによって1工程で得る。
(2.1)装填材料:
【0087】
【表2】

【0088】
(2.2)操作プロトコール:
前駆体、ピリジン及びジクロロメタンを、アルゴン雰囲気下に置いた反応器内に置く;この反応媒体は均質であり、また見た目には無色である。
N−ブロムスクシンイミドをへらで30分間にわたり添加する。この温度を25℃よりも低く維持する。NBSの最初の添加から、この反応媒体は、鮮やかな橙色に変化する。
この反応媒体をNBSの添加終了後2時間にわたり室温で撹拌する。
この反応媒体をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮する。
橙色のペーストの状態にある残留物をヘプタン/iPr2O混合物(1/1:vol/vol)100mLに取り入れ、次いで多孔度4の焼結漏斗(125mL)に通してろ過する。フィルターのケークを上記溶媒混合物25mLでさらに4回洗浄する。
母液をこのケークを通して2回ろ過する。ろ液を減圧下で濃縮する。
無臭の鮮やかな橙色の液体が得られる:m=18.8g。この液体をNMRで分析する;そのモル組成は次の通りである:成分(A1−1)94.5mol%;前駆体化合物:0.2mol%;スクシンイミド:5mol%及びピリジン残留物:0.3%。
【0089】
例2
この例の目的は、次の組み合わせ:
・次式のオルガノシランから本質的になる成分(A1):
(C25O)3Si−(CH23−NH−CO−N=N−COOC25 (A1−1)
・及び、次式のオルガノシランから本質的になる成分(A2):
(C25O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OC253 (A2−2)
からなる特定の組み合わせのカップリング性能品質(白色充填剤−エラストマー)を実証するものである。
これらの性能品質を、一方では単独で使用した成分(A1)を基材とするカップリング剤の性能品質と比較し、他方では単独で使用した成分(A2)を基材とするカップリング剤の性能品質と比較する。
靴底処方物の代表的な4種のエラストマー組成物を比較する。これら4種の組成物は、次の相違点を除き、同一である:
・組成物1(対照1):カップリング剤は全く存在しない;
・組成物2(対照2):カップリング剤の全てを内部ミキサーに導入し、4部のシラン(A2−2)を該組成物に与える;
・組成物3(対照3):カップリング剤を内部ミキサー(3.8部)と外部ミキサー(1.5部)とに分配し、該組成物に5.3部のシラン(A1−1)を与える;
・組成物4(例2):該組成物に4.9部のシラン(A2−2)及び(A1−1)を与えるカップリング剤の組み合わせ;シラン(A2−2)を全て(1.9部)内部ミキサーに導入するのに対し、シラン(A2−2)を内部ミキサー(1.5部)と外部ミキサー(1.5部)とに分与する。
【0090】
(1)エラストマー組成物の構成:
エラストマー100部当たりの重量部(部)として表される構成が以下の表Iに示される組成物をブラベンダー型の内部ミキサーで製造する:
【0091】
【表3】

凡例:
(1)天然ゴムSMR−CV60(Safic−Alcan社により供給)。
(2)96%minのシス1−4を有し且つネオジムによる触媒作用によって製造されたポリブタジエン又はBR(バイエル社製のBuna CB24)。
(3)150−160m2/gの範囲にあるBET及びCTAB表面積を有するシリカ(ロディア社製のZ1165MP)。
(4)TESPT(GE−Osi社製のSilquest A1289)。
(5)エチル[(3−トリエトキシシリルプロピル)アミノ]カルボニルジアゼンカルボキシレート(例1に記載した手順に従って合成)。
(6)N−1,3−ジメチルブチル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(フレキシス社製のSantoflex 6−PPD)。
(7)N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(バイエル社製のRhenogran CBS−80)。
(8)テトラベンジルチウラムジスルフィド(フレキシス社製のPerkacit TBzTD)。
【0092】
カップリング剤を珪素等モル含有量を使用する。即ち、組成に関わらず、シリカ及びその表面ヒドロキシル基と反応性のある官能基「Y」、ここでは[「Y」=Si(OC253]の同一のモル数を使用する。
【0093】
(2)エラストマー組成物の製造:
エラストマー組成物の製造方法を2つの連続製造工程で実行する。第1工程は、高温の熱動力作用の工程からなる。その後、110℃よりも低い温度での機械的作用の第2工程を行う。この工程は、硬化系の導入を可能にする。
この第1工程を、ブラベンダーブランドの内部ミキサー(70mLの容量)のようなブレンド機を使用して実行する。充填率は0.75である。初期温度及びローター速度を140〜160℃の範囲の混合物滴下温度を達成するように毎回設定する。
これによって、エラストマーを取り入れ、次いで補強充填剤(分割導入)をカップリング剤の全て又は一部と共に導入し、その後様々な硬化活性剤(ステアリン酸、酸化亜鉛)及び保護剤(6−PPD)を導入することができる。この工程について、持続期間は5〜10分である。
この混合物を冷却(100℃よりも低い温度)した後に、第2工程で、硬化系(硫黄及び促進剤)と、随意にカップリング剤の残余と、随意に従来の補強充填剤(カーボンブラック)とを導入する。これを50℃に予備加熱されたロールミキサーで実行する。この工程の持続時間は2〜6分である。
1種のカップリング剤又は複数のカップリング剤の量を2種のミキサー間で分割するときには、該カップリング剤を、好ましくはカーボンブラックを使用して(予め)担体上に置いた後にロールミキサーに導入することに留意すべきである。
次いで、この最終組成物を2〜3mmの厚みのプラックとして圧延する。
これらの粗製混合物について、それらのレオロジー特性を評価することで、持続時間と硬化温度を最適化することが可能になる。
次に、最適に硬化された混合物の機械的特性及び動力学的特性を測定する。
【0094】
(3)組成物のレオメトリー:
測定値を粗製の状態の組成物について得る。表IIは、ODR Monsanto 100Sレオメーターを使用して基準法DIN53529に従って150℃で実施されるレオロジー試験に関する結果をまとめている。
この試験に従い、試験する組成物を150℃の温度に設定された試験室に30分間置き、該試験室に備えられている双円錐ローターの弱い振幅(3°)の変動に対する、組成物とは反対の抵抗トルクを測定するが、ここで、この組成物は、上記室に完全に満たされているものとする。
【0095】
時間の関数としての該トルク変動の曲線から、次のことを決定する:
−上記温度での組成物の粘度を反映する最小トルク(Tm);
−最大トルク(TM);
−架橋剤及びあるとすればカップリング剤の作用に伴う架橋の程度を反映するΔトルク(ΔT=TM−Tm);
−98%の完全な硬化に相当する硬化状態を得るのに必要な時間T98(この時間は、最適な硬化時間とみなされる);及び
−問題の温度(150℃)で最小トルクを2ポイント上昇させるのに必要な時間に相当し且つ硬化の開始を必要とすることなくこの温度で粗製混合物を使用することを可能にする時間を反映するスコーチ時間TS2。
【0096】
得られた結果を表IIに示す。
【0097】
【表4】

【0098】
(4)硬化した材料の機械的性質:
150℃の温度に対して最適に硬化した組成物(T98)について測定値を得る。
一軸引張試験を基準法NFT46−002の指示に従いH2型の試験片を用いて500mm/分の速度でInstron 5564装置で実行する。10%、100%及び300%のモジュラス値及び引張強さをMPaで表す;破断点伸びを%で表す。300%のモジュラス値と100%収率でのモジュラスとの間の比から補強指数を決定することが可能である。
硬化材料についてのショアA硬度の測定を基準法ASTM D2240の指示に従って実行する。与えた値は、15秒目に測定したものである。
摩耗による質量損失の測定を基準法DIN 53516の指示に従い、円筒形の試験片をP60粒径の研磨布の作用に付し且つ10Nの接触圧で40メートルにわたって回転ドラムの表面に取り付けたZwick摩耗計を使用して実行する。
測定値は、磨損後の物質の損失体積(mm3で表す)である;この値が小さければ小さいほど耐摩耗性は良好である。
測定した特性を表IIIにまとめる。
【0099】
【表5】

【0100】
(5)硬化材料の動力学的特性:
機械的性質を粘度分析器(Metravib VA3000)で基準法ASTM D5952に従って測定する。
損失係数(tanδ)及び複合力学的圧縮係数(E*)の値を、硬化した試料(95mm2の断面積及び14mmの高さの円筒形試験片)について記録する。この試料を最初に10%の予備曲げに付し、次いで交互にプラス又はマイナス2%の制限曲線圧縮曲げに付す。測定値を60℃及び10Hzの振動数で得る。
表IVに示した結果は、複合圧縮係数(E*−60℃−10Hz)及び損失係数(tanδ−60℃−10Hz)である。
損失係数(tanδ)及び動的剪断における弾性率の大きさ(ΔG’)の値を硬化試料について記録する(8mm2の断面積及び7mmの高さの平行六面体試験片)。この試料を40℃の温度及び10Hzの振動数での交互の二面剪断で正弦曲線の曲げに付す。歪振幅走査方法を0.1%〜50%の範囲の往復サイクル、その後50%〜0.1%の戻しに従って実行する。
表IVに示した結果は、回復歪み振幅走査から得、且つ、損失係数(tanδ最大回復−40℃−10Hz)の最大値並びに0.1%の歪み及び50%の歪みでの値(ペイン効果)の間の弾性率の大きさ(ΔG’−40℃−10Hz)に関する。
【0101】
【表6】

【0102】
各種表II〜IVの検討から、本発明に従う組成物(例2)は、対照組成物(対照1〜3)で得られたものに対して、大きな歪みでの強化/最大摩擦特性/ヒステリシス特性間の折り合いを改善させることを可能にすることが分かる。本発明の組成物は、特に、有意に減少した60℃での損失係数(tanδ)の値によって表IVに示したようにヒステリシスが実質的に改善することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「X」又は「Y」で示される少なくとも2種の官能基を有する多官能性カップリング系(A)(無機充填剤−エラストマー)であって、一方では該官能基「X」によって該エラストマーにグラフトでき、他方では該官能基「Y」によって該無機充填剤にグラフトできるものの有効量の、
次の成分:
・(B)天然又は合成ゴム型の少なくとも1種のエラストマー;
・(C)補強充填剤としての無機充填剤;
・(D)次のものから選択される他の成分又は添加剤の全て又は一部:1種(又は1種以上)の硬化剤(D1)、随意に1種(又は1種以上)の硬化促進剤(D2)、随意に1種(又は1種以上)の硬化活性剤(D3)、随意に1種(又は1種以上)の非白色補強充填剤(D4)、随意に1種(又は1種以上)の非補強性無機充填剤又は弱補強性無機充填剤(D5)、随意に1種(又は1種以上)の保護剤(D6)、随意に1種(又は1種以上)の可塑剤及び/又は1種(又は1種以上)の助剤(D7)並びにこれらの種の混合物;
を含むゴム組成物における無機充填剤−エラストマーカップリング剤としての使用であって、
該多官能性カップリング系(A)が以下の成分(A1)及び(A2)の組み合わせに属する特定の組み合わせからなること:
(A1)は、カップリング剤の群であって、それぞれが次の一般式を有する単位を含む官能化有機珪素化合物(I)から本質的になる化合物であるものから選択される少なくとも1種のカップリング剤である:
[(G03SiO1/2m[(G0)2SiO2/2n[G0SiO3/2o[SiO4/2p[(G2a(G1a'(Z−CO−N=N−CO−A)SiO(3-a-a')/2q (I)
(式中、
m、n、o及びpは、それぞれ0以上の整数又は分数を表し;
qは1以上の整数又は分数を表し;
aは0、1、2及び3から選択される整数を表し;
a’は0、1及び2から選択される整数を表し;
a+a’の合計は0〜3の範囲内にあるが、ただし、a=0のときには、記号G0の少なくとも一つは、以下に与えるG2についての定義に相当し; a+a’=3のときには、m=n=o=p=0(ゼロ)であるものとし;
記号G0は、同一でも異なっていてもよく、それぞれG2又はG1に相当する基の一つを表し;
記号G2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれヒドロキシル基又は加水分解性の1価基を表し;
記号G1は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を表す基を表し;さらに、この場合、必要に応じて、G1基は、G2基並びにG1及びG2が結合する珪素原子と共に、2〜10の環炭素原子を含みしかも場合によっては1個以上の環酸素ヘテロ原子を含む単環式又は多環式炭素環式基を形成することができるものとし;
記号Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和、不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;並びに飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を含有する基から選択される2価基を表し;該2価基は、酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系原子;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;並びに飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を含有する基から選択される1個の1価基を保持するものとし;
記号Aは、
・飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基;飽和又は不飽和及び/又は芳香族単環式又は多環式の炭素環式基;或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を表す基;
・基−X−G3(式中:Xは−O−、−S−又は−NG4−を表し、ここで、G4はG1について上記した意味のいずれかを表すものとし;G3は、G4と同一でも異なっていてもよく、G1について定義した基のいずれかを表し;また、基−NG43の置換基G3及びG4は、これらのものが結合する窒素原子と共に、環中に3〜6個の炭素原子、1又は2個の窒素原子及び随意に1又は2個の不飽和二重結合を含む5〜7員の単環を形成してもよい。);
又は、q=1のときには、基
[−Z−SiO(3-a-a')/2(G2a(G1a'] [(G03SiO1/2m [(G02SiO2/2n [G0SiO3/2o [SiO4/2p(式中、記号Z、G0、G1、G2、a、a’、m、n、o及びpは、上記の定義を表す。)
を表し;
(A2)は、カップリング剤の群であって、それぞれが次のものから本質的になる化合物であるものから選択される少なくとも1種のカップリング剤である:
・次の一般式に相当する多硫黄含有「対称」シラン(A2−1):
(G6b(G53-bSi−M−(Sx−M)m−Si(G53-b(G6b (II)
(式中:
記号G6は、G2について上記した意味のいずれか一つを表し;
記号G5は、G1について上記した意味のいずれか一つを表し;
bは1、2又は3の整数を表し;
mは1又は2の整数を表し;
xは2〜6の範囲の整数又は分数を表し;
記号Mは、Zについて上記した意味のいずれか一つを表す。)
・又は次の一般式に相当する硫黄含有「非対称」シラン(A2−2):
(G6b(G53-bSi−M−Sz−J (III)
(式中:
・記号G6、G5、b及びMは式(II)について上記した定義に相当し;
・zは1〜4の範囲の整数又は分数を表し;
・記号Jは、
z=1のときは水素原子又は基−CO−R1を表し;
zが2〜4の範囲の整数又は分数であるときは、基−NR23又は基Bzt又は基Bzt(AA)yを表し;
ここで、R1は、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の基、或いは飽和、不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基、或いは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系の部分及び上で定義した炭素環式部分を有する基であり;R2及びR3は、同一のもの又は異なるものであり、水素原子及び/又はR1によって表される基のいずれか一つであり;R2及びR3は、さらに、これらが結合する炭素原子と一緒になって、5〜7員の単環であって該環内に3〜6個の炭素原子と1又は2個の窒素原子と随意に1又は2個の二重結合とを有するものを形成することができ;記号Bztは、飽和脂肪族炭化水素系の基、或いは飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基、或いは飽和脂肪族炭化水素系の部分と飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式の部分とを有する基から選択される1個以上の基で置換されていてよい2−ベンゾチアゾール基を表し;記号AAは、酸素を含有する有機又は無機一酸又は多酸であって、その酸官能基の少なくとも1個が25℃の水中で3を超える電離定数(pKa)を有するものを表し;yは、0(ゼロ)以外で且つ3を超えない整数又は分数であるものとする。)
前記多官能性カップリング系(A)がイソプロピレンエラストマーを基材とするゴム組成物に取り入れられること
を特徴とする前記使用。
【請求項2】
前記成分(A1)が、前記カップリング剤の群であって、それぞれが、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物
からなり、且つ、
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、それぞれ、ヒドロキシル基又は直鎖状若しくは分岐状のC1〜C8アルコキシ基であって1個以上の(C1〜C8)アルコキシで置換されていてよいものを表し;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、C1〜C8アルキレン鎖;飽和C5〜C10シクロアルキレン基;C6〜C18アリーレン基;又はこれらの基の少なくとも2種の組み合わせからなる2価基を表し;
・Z”は、原子価結合、−O−又は−NR4−を表し、ここでR4は水素原子;直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基;C6〜C18アリール基;又は(C6〜C18)アリール(C1〜C8)アルキル基である。)
を表し;
・Aが基−O−G3又は−NG43(式中、G3及びG4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表す
構造の化合物から本質的になる有機珪素化合物であるものから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記成分(A1)が、前記カップリング剤の群であって、それぞれが、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物からなり、且つ、
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、メトキシメトキシ、エトキシエトキシ及びメトキシエトキシ基よりなる群から選択され;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、C1〜C8アルキレン鎖を表し;
・Z”は、原子価結合、−O−又は−NR4−を表し、ここで、R4は、水素並びにメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル及びベンジル基よりなる群から選択される。)
を表し;
・Aが基−O−G3又は−NG43(式中、G3及びG4は、同一でも異なっていてもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択される)を表す
構造の化合物から本質的になる有機化合物であるものから選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記成分(A1)が、カップリング剤の群であって、それぞれが、
・(i)式(I)(式中:a+a’=3;m=n=o=p=0(ゼロ);及びq=1である。)に相当する官能化オルガノシラン;
・(2i)式(I)(式中:a+a’=1又は2であり;mは1〜2の範囲にあり;n=p=o=0(ゼロ)であり;及びq=1である。)に相当する官能化シロキサンオリゴマー;
・(3i)化学種(i)及び/又は(2i)の混合物
からなり、且つ、
・同一でも異なっていてもよい記号G0が、それぞれG1又はG2について以下に選択される基の一つを表し;
・同一でも異なっていてもよい記号G1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・同一でも異なっていてもよい記号G2が、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシ基よりなる群から選択され;
・Zが2価基−Z’−Z”−(式中:
・Z’は、2価基のメチレン、エチレン及びプロピレンよりなる群から選択され;
・Z”は、原子価結合、−O−又は−NR4−であり、ここでR4は水素原子である。)
を表し;
・Aが基−O−G3(式中、G3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択される。)を表す
化合物から本質的になる有機珪素化合物であるものから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記成分(A2)が、カップリング剤の群であって、それぞれの構成要素が式(II):(式中、
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルキル基;C5〜C10シクロアルキル基又はC6〜C18アリール基を表し;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ、ヒドロキシル基、直鎖状又は分岐状のC1〜C8アルコキシ基であって1個以上の(C1〜C8)アルコキシ基によって置換されていてよいものを表し;
・Mは、C1〜C8アルキレン鎖;飽和C5〜C10シクロアルキレン基;C6〜C18アリーレン基;又はこれらの基の少なくとも2種の組み合わせからなる2価基を表し;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
の「対称」シランから本質的になる化合物であるものから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記成分(A2)が、カップリング剤の群であって、それぞれが式(II)(式中:
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、メトキシメトキシ、エトキシエトキシ及びメトキシエトキシ基よりなる群から選択され;
・MはC1〜C8アルキレン鎖;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
のシランから本質的になる化合物であるものから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記成分(A2)が、カップリング剤の群であって、それぞれが式(II)(式中:
・bは1、2又は3の整数を表し;
・記号G5は、同一のもの又は異なるものであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル及びフェニル基よりなる群から選択され;
・記号G6は、同一のもの又は異なるものであり、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びイソプロポキシ基よりなる群から選択され;
・Mは、2価のメチレン、エチレン及びプロピレン基よりなる群から選択され;
・mは1であり;
・xは2〜4の範囲の整数又は分数を表す。)
のシランから本質的になる化合物であるものから選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
エラストマー組成物であって、
(B)少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
(C)補強無機充填剤、及び
(A)請求項1〜7のいずれかに記載の成分(A1)と(A2)の組み合わせに属する特定の組み合わせからなるカップリング系の適切な量
を含むことを特徴とする、エラストマー組成物。
【請求項9】
前記組成物が、
・イソプレンエラストマー100部当たり、
・10〜200部の無機充填剤(C)、
・それぞれの組成物において、
・0.5〜15部の成分(A1)と
・0.5〜15部の成分(A2)と
を与える組み合わせ(A1)+(A2)の量(前記の部は重量部である)
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、
・イソプレンエラストマー100部当たり、
・30〜150部の無機充填剤(C)、
・それぞれの組成物において、
・1〜10部の成分(A1)と
・1〜10部の成分(A2)と
を与える組み合わせ(A1)+(A2)の量(前記の部は重量部である)
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記イソプレンエラストマーが
(1)イソプレン又は2−メチル−1,3−ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって
(2.1)4〜22個の炭素原子を含有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体、
(2.2)8〜20個の炭素原子を含有する芳香族ビニル単量体、
(2.3)3〜12個の炭素原子を含有するビニルニトリル単量体、
(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1〜12個の炭素原子を含有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体、及び
(2.5)上記単量体(2.1)〜(2.4)の2種以上の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;ここで、該ポリイソプレン共重合体は、99重量%〜20重量%のイソプレン単位及び1%〜80重量%のジエン、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位を含有し、且つ、例えば、ポリ(イソプレン−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−スチレン)及びポリ(イソプレン−ブタジエン−スチレン)からなるものとする;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテンとイソプレンとの共重合によって得られる共重合体(ブチルゴム)、また、これらの共重合体のハロゲン化変種、特に塩素化又は臭素化変種;
(5)上記エラストマー(1)〜(4)の2種以上の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)の51重量%〜99.5重量%を範囲とする主要量と、イソプレンエラストマー以外の1種以上のジエンエラストマーの49重量%〜0.5重量%を範囲とする副次量とを含有する混合物
から選択されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
(1)合成ポリイソプレン単独重合体;(2)ポリ(イソプレン−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−スチレン)及びポリ(イソプレン−ブタジエン−スチレン)からなる合成ポリイソプレン共重合体;(3)天然ゴム;(4)ブチルゴム;(5)上記エラストマー(1)〜(4)の混合物;(6)上記エラストマー(1)又は(3)の主要量及びポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)及び三元共重合体(非共役エチレン−プロピレン−ジエン単量体)からなる、イソプレンエラストマー以外のジエンエラストマーの副次量を含有する混合物から選択される1種以上のイソプレンエラストマーを使用することを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記補強無機充填剤がシリカ単独からなり又はシリカとアルミナとの混合物からなる、請求項8〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記シリカが例えば450m2/g以下のBET比表面積を有する沈降シリカであり、 前記アルミナが例えば30〜400m2/gのBET比表面積及び高含有量の反応性表面Al−OH官能基を有する高分散性アルミナであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、
・硬化系に関しては
(D1):必須成分として、硫黄及び硫黄供与化合物から選択される硬化剤;
(D2):随意成分として硬化促進剤;
(D3):随意成分として硬化活性剤;
・他の添加剤に関しては、
(D4):随意成分としてカーボンブラックからなる従来の補強充填剤;
(D5):随意成分として、弱補強性又は非補強性の従来の白色充填剤;
(D6):随意成分として保護剤;
(D7):随意成分として可塑剤及び助剤
を含む他の補助添加剤又は成分の全て又は一部をも含有することを特徴とする、請求項8〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれかに記載のイソプレンエラストマー組成物の製造方法であって、次の2つの工程1及び2:
・工程1:概して前記硬化剤を除き、前記必須成分の全てを、1以上の工程で、40〜200℃の温度で作動する内部ミキサーに導入してブレンドし;
・工程2:このようにして得られた混合物を、120℃よりも低い温度で作動する外部ミキサーに取り入れ、次いで、前記硬化剤及び随意に1種以上の他の成分をそれに添加すること
を実行することからなることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項17】
前記カップリング剤(A2)を工程1の間に補強無機充填剤と同時に全部導入し;
前記カップリング剤(A1)を、
・工程1の間に全体的に導入し、又は
・工程2の間に全体的に導入し、又は
・該2つの工程1と2とに分けて導入し、
ここで、工程1において導入される第1部分は、10重量%〜80重量%の割合に相当し、工程2において導入される第2部分は、90重量%〜20重量%の割合に相当する
ことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項8〜15のいずれかに記載の組成物を含む本体を有することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項19】
エンジンの支持材、靴底、ケーブルカー用ローラ−、家庭用電化製品に用いるシール及びケーブルシースからなることを特徴とする、請求項18に記載の物品。

【公表番号】特表2008−542463(P2008−542463A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512864(P2008−512864)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001120
【国際公開番号】WO2006/125891
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】