説明

無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体、その製造方法およびそれを用いた分離方法

【課題】特に有機酸の存在下で適用可能な、有機物を含む気体または液体の混合物の分離・濃縮することができ、また高いエネルギーコストを要することなく経済的で、かつ適用範囲が限定されない、実用上十分な処理量と分離性能を両立するゼオライト膜複合体、その製造方法、およびその膜複合体を用いた分離、濃縮方法を提供することを課題とする。
【解決手段】無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、無機多孔質支持体がセラミックス焼結体を含み、かつゼオライト膜として無機多孔質支持体表面にCHA型ゼオライト結晶層を有することを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物を含有する気体または液体の混合物の分離、濃縮に好適である無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体、およびその製造方法、さらにこの無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を用いた有機物の分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を含有する気体または液体の混合物の分離、濃縮においては、それぞれ分離、濃縮の対象とする物質の性質に応じて蒸留法、共沸蒸留法、溶媒抽出/蒸留法、吸着剤による分離法などが行われている。しかしながらこれらの従来方法は、多くのエネルギーを必要とする、あるいは分離、濃縮対象の適用範囲が限定的であるといった欠点がある。
近年、これら従来の分離方法にかわる分離方法として、高分子膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜は加工性に優れるものであり、例えば平膜や中空糸膜などがある。しかし高分子膜は耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸といった有機物との接触で膨潤するものが多いため、分離、濃縮対象の適用範囲が限定的である。
【0003】
一方、ゼオライト膜などの無機材料の膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。
ゼオライト膜は、一般的には支持体上に膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体として分離、濃縮に用いる。例えば有機物と水との混合物を、ゼオライト膜複合体に通じさせ、水を選択的に透過させることにより、有機物を分離し、濃縮することができる。無機材料の膜を用いた膜分離、濃縮は、蒸留や吸着剤による分離に比べ、エネルギーの使用量を削減できるほか、高分子膜よりも広い温度範囲で分離、濃縮を実施でき、更に有機物を含む混合物の分離にも適用できる。
【0004】
ゼオライト膜を用いた分離では、親水性を有するゼオライトを水の選択的な透過に利用する方法が提案されている。例えばA型ゼオライト膜複合体を用いて水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献1)、モルデナイト型ゼオライト膜複合体を用
いてアルコールと水の混合系から水を選択的に透過させてアルコールを濃縮する方法(特許文献2)や、フェリエライト型ゼオライト膜複合体を用いて酢酸と水の混合系から水を選択的に透過させて酢酸を分離・濃縮する方法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−185275号公報
【特許文献2】特開2003−144871号公報
【特許文献3】特開2000−237561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実用化に十分な処理量と分離性能を両立し、かつ有機物、特に有機酸への耐性をもつゼオライト膜はいまだ見出せていない。ゼオライト膜による分離、濃縮の処理量(透過流量)は、一般的に単位時間、単位平面積あたりの透過物質の重量を表した透過流束で表される。この場合の水の透過流束については、ゼオライト膜を実用化するには透過流束は大きいほど望ましく、最低でも1kg/(m・h)以上であることが望まし
いといわれている。
【0007】
しかし、特許文献2記載のモルデナイト型ゼオライト膜複合体の透過流束は、透過した水の濃度が95重量%以上の場合、水/エタノール系で最大0.6kg/(m・h)、
水/酢酸系で0.23kg/(m・h)であり、実用化に要する処理量には不十分であ
る。
【0008】
また特許文献3に記載のフェリエライト型ゼオライト膜複合体の透過流束は、透過した水の濃度が95重量%以上の場合、水/酢酸系で最大0.22kg/(m・h)であり、処理量が実用化には不十分である。
【0009】
また有機物への耐性の点では前記ゼオライト膜に用いられているモルデナイト型ゼオライトやフェリエライト型ゼオライトは、酸性条件下で脱Al化反応が進行するので、一般にゼオライトの親水性を左右するSiO/Al比が変化することが予想される。したがって、上記のゼオライト膜複合体は、使用時間が長くなるにつれ分離性能が変化することが予想されるので、有機酸存在条件下での使用は望ましくない。またA型ゼオライトは酸と接触すると構造が破壊されるため有機酸存在下で分離膜として適用できないという問題があった。
【0010】
本発明は、無機材料分離膜による分離、濃縮において、実用上十分な処理量と分離性能を両立するゼオライト膜複合体、その製造方法、およびその膜複合体を用いた分離、濃縮方法を提供することを課題とするものである。
本発明は、高いエネルギーコストを要することなく経済的で、かつ適用範囲が限定されることが無く、実用化に十分な処理量と分離性能を両立するゼオライト膜複合体、その製造方法、およびその膜複合体を用いた分離、濃縮方法を提供することを課題とするものである。かつ有機物、特に有機酸の存在下で適用可能な、有機物を含む気体または液体の混合物の分離・濃縮することができる無機多孔質複合体とその製造方法およびそれを用いた分離・濃縮方法、特に有機酸/水の混合水溶液の分離・濃縮方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、無機多孔質支持体及び/又はゼオライト膜を最適化することにより、前記課題を解決し得ることを見出し以下の発明に到達した。
<1> 無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、無機多孔質支持体がセラミックス焼結体を含み、かつゼオライト膜として無機多孔質支持体表面にCHA型ゼオライト結晶層を有することを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<2> 無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、ゼオライト膜としてCHA型ゼオライト結晶層を有し、かつゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0
.5倍以上であることを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<3> 無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、ゼオライト膜としてCHA型ゼオライト結晶層を有し、かつゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の4倍
以上であることを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<4> ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍以上である<1>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<5> ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の4倍以上である<1>、<2>または<4>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<6> ゼオライト結晶層のSiO/Alモル比が5以上である<1>〜<5>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<7> 有機物を含む気体または液体の混合物のうち透過性の高い物質を透過し、該混合物から該透過性の高い物質を分離することが可能な<1>〜<6>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<8> 有機物を含む気体または液体の混合物が有機物と水との混合物である<7>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<9> 有機物が有機酸である<7>または<8>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<10> 有機物がアルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類である<7>または<8>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<11> 無機多孔質支持体がアルミナ、シリカ及びムライトから選ばれる少なくとも1種類を含む<1>〜<10>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
<12> <1>〜<11>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を製造する方法であって、無機多孔質支持体表面にCHA型ゼオライトを結晶化させる工程を含むことを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<13> 無機多孔質支持体表面にゼオライトの種結晶を付着させた後、CHA型ゼオライトを結晶化させる<12>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<14> ゼオライトの種結晶が、CHA型ゼオライトである<13>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<15> CHA型ゼオライトの結晶化を、Si元素源及びAl元素源を含む反応混合物を、SiとAlとの比を各酸化物換算で表した(SiO/Al)モル比が5以上10000以下となるように原料として用いて行うことを特徴とする<12>〜<14>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<16> 反応混合物中にアルカリ金属イオンが存在することを特徴とする<15>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<17> 原料としてさらに有機テンプレートを用い、かつ有機テンプレートが1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンである<15>または<16>に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
<18> <1>〜<11>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を含む分離膜。
<19> <1>〜<11>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、有機物を含む気体または液体の混合物を接触させて、該混合物のうち透過性の高い物質を透過させることにより、該混合物から該透過性の高い物質を分離することを特徴とする分離方法。
<20> 有機物を含む気体または液体の混合物が、有機酸と水との混合物である<19>に記載の分離方法。
<21> 有機物を含む気体または液体の混合物が、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類と水との混合物である<19>に記載の分離方法。
<22> <1>〜<11>のいずれか1に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、有機物を含む気体または液体の混合物を接触させて、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することを特徴とする濃縮方法。
<23> 有機物を含む気体または液体の混合物が、有機酸、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類と水との混合物である<22>に記載の濃縮方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、有機物を含む気体または液体の混合物から特定の化合物を分離、濃縮する際に、実用上も十分に大きい処理量を有し、かつ十分な分離性能を有する分離、濃縮用ゼオライト膜複合体であり、ゼオライト膜を用いた有機物を含む気体または液体の混合物からの分離、濃縮が可能となる。
また本発明のゼオライト膜複合体の製造方法によれば耐酸性に優れた分離、濃縮用ゼオライト膜複合体が得られ、有機酸を含有する混合物の分離・濃縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パーベーパレーション測定装置の概略図である。
【図2】実施例2に記載のゼオライト膜のXRD測定結果である。
【図3】実施例5に記載のゼオライト膜のXRD測定結果である。
【図4】実施例6に記載のゼオライト膜のXRD測定結果である。
【図5】実施例8および比較例1に記載の水/酢酸分離能の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(以下、単に「ゼオライト膜複合体」ということがある。)は、セラミックス焼結体を含む無機多孔質支持体の表面層に、CHA型ゼオライトが膜状に結晶化してなるものである。
先ず、本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を構成する各成分について、具体的に説明する。
【0016】
(無機多孔質支持体)
本発明において用いられる無機多孔質支持体としては、表面層にゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、多孔質であれば特に制限されるものではない。たとえばシリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
【0017】
本発明において用いられるセラミックス焼結体を含む無機多孔質支持体とは、基本的成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したものを含む多孔質の支持体をいう。
具体的にはα−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体が挙げられる。これらは単独で用いても複数のものを混合して用いてもよい。これらセラミックス焼結体は、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することで界面の密着性を高める効果があるためである。
【0018】
その中でもアルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体は、無機多孔質支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、無機多孔質支持体とCHA型ゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる点でより好ましい。
【0019】
本発明において用いられる無機多孔質支持体の形状は、気体混合物や液体混合物を有効に分離できるものであれば制限されるものではなく、具体的には平板状、管状のもの、または円筒状、円柱状や角柱状の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリスなどが挙げ
られ、いずれの形状のものでも良い。
【0020】
本発明において用いられる無機多孔質支持体は、その表面層(以下「無機多孔質支持体表面層」ともいう。)においてゼオライトを結晶化させる。
【0021】
前記無機多孔質支持体表面層が有する平均細孔径は特に制限されるものではないが、細孔径が制御されているものが好ましく、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲が好ましい。
【0022】
また無機多孔質支持体の表面は滑らかであることが好ましく、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。
なお、無機多孔質支持体表面層とはCHA型ゼオライトを結晶化させる無機多孔質支持体表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であっても良い。たとえば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
【0023】
また、本発明において用いられる無機多孔質支持体の、無機多孔質支持体表面層以外の部分の細孔径は制限されるものではなく、また特に制御される必要は無いが、その他の部分の気孔率は通常20%以上、60%以下であることが好ましい。無機多孔質支持体表面層以外の部分の気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右し、前記下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、前記上限超過では無機多孔質支持体の強度が低下する傾向がある。
【0024】
(CHA型ゼオライト)
本発明において用いられるCHA型ゼオライトとは、International Z
eolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコ
ードでCHA構造のものを示す。天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
【0025】
本発明において用いられるCHA型ゼオライトのフレームワーク密度は、14.5T/1000Åである。フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの酸素以外の骨格を構成する元素の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001 ELSEVIER に示されている。
【0026】
本発明において用いられるCHA型ゼオライトのSiO/Alモル比は、特に限定されるものではないが、通常5以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上である。前記モル比の上限としては通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。これは後述するゼオライト膜のSiO/Alモル比と同じである。
【0027】
(ゼオライト膜)
本発明におけるゼオライト膜とは、ゼオライトにより構成される膜状物のことであり、好ましくは、前記無機多孔質支持体の表面層にゼオライトを結晶化させて膜にしたものである。膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要
に応じ含んでいてもよい。
【0028】
本発明におけるゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよいが、好ましくは実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜である。具体的にはCHA型のゼオライトを主成分とするゼオライト膜であり、一部、モルデナイト型、MFI型などの他の構造のゼオライトが含まれていても、アモルファス成分などが含有されていてもよく、好ましくは、実質的にCHA型のゼオライトのみで構成されるゼオライト膜である。
【0029】
本発明において用いられるゼオライト膜の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。また通常以上100μm以下であり、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは20μm以下の範囲である。
なお本発明におけるゼオライト結晶層とは、前記ゼオライト膜の厚みを有するゼオライト膜状物をいう。
【0030】
本発明におけるゼオライト膜を形成するゼオライトの粒子径は特に限定されるものではないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向があることから、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに好ましくはゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合である。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなるためである。水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
【0031】
本発明におけるゼオライト膜のSiO/Alモル比は、特に限定されるものではないが、通常5以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上である。上限としては通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。SiO/Alモル比が前記下限未満では耐久性が低下する傾向があり、前記上限を超過すると疎水性が強すぎるため、透過流束が小さくなる傾向がある。
【0032】
なお本発明におけるSiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。数ミクロンの膜のみの情報を得るために通常はX線の加速電圧を10kVで測定する。
本発明におけるゼオライト膜は、ゼオライトにより構成される膜状物をそのまま用いることもできるが、通常は各種支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体として使用し、好ましくは以下詳述する無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体として用いる。
【0033】
(無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体)
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体とは、無機多孔質支持体の表面層にゼオライトが膜状に固着しており、場合によっては一部無機多孔質支持体の内部にまで固着している状態のものである。
【0034】
このようなゼオライト膜複合体を形成するためには、無機多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させて形成させる方法、無機多孔質支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、ゼオライトのスラリーを無機多孔質支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを無機多孔質支持体に固着させる方法などがある。
【0035】
本発明において好ましい様態は、無機多孔質支持体表面層にゼオライトを膜状に結晶化させたものである。
具体的には無機多孔質支持体表面層にCHA型ゼオライトを膜状に結晶化させたものであり、通常は水熱合成により、結晶化させたものである。
本発明において用いられるゼオライト膜の無機多孔質支持体表面上の位置は特に限定されるものではないが、管状無機多孔質支持体を用いる場合、外表面にゼオライト膜をつけてもよいし、内表面につけてもよく、さらに適用する系によっては両面につけてもよい。また、無機多孔質支持体の表面に積層させてもよいし、多孔質支持体の表面層の細孔内を埋めるように結晶化させてもよい。この場合、結晶化した膜層の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが重要であり、いわゆる緻密膜を形成させることが分離性を向上することになる。
【0036】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであることが好ましい。
ここでいうピークの強度とは測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比でいえば、望ましくは0.5以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
【0037】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて2θ=9.6°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の4倍以上の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で
表されるピーク強度比でいえば、望ましくは4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は特に限定はないが、通常は1000以下である。
【0038】
ここでいう、X線回折パターンとはゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作成した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
【0039】
ここでいうX線回折パターンは、膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
【0040】
ここでいう2θ=17.9°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指し、2θ=20.8°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち20.8°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
また2θ=9.6°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
【0041】
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhomboh
edral settingで空間群を
【0042】
【数1】

【0043】
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである。
【0044】
またX線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
【0045】
【数2】

【0046】
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,1,1)の面に由来するピークである。
【0047】
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
【0048】
【数3】

【0049】
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(2,0,−1)の面に由来するピークである。
【0050】
(1,0,0)面由来のピークの強度と(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER P
ATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによれば2.5である。そのためこの比が4以上であるということは例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
【0051】
(1,1,1)面由来のピークの強度と(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比はCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PA
TTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによれば0.3である。そのためこの比が0.5以上であるということは例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
【0052】
(ゼオライト膜の製造方法)
本発明におけるゼオライト膜の結晶化方法としては、無機多孔質支持体上にCHA型ゼオライトが膜状に結晶化し、CHA型ゼオライトの膜が形成されればどのような方法を用いてもよい。このうち無機多孔質支持体を、CHA型ゼオライト製造に用いる反応混合物中に入れて、直接水熱合成することで無機多孔質支持体表面層にCHA型ゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
【0053】
具体的に好ましい方法として、無機多孔質支持体表面層にCHA型ゼオライトを膜状に結晶化させる方法としては、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、無機多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して加熱する。
【0054】
(反応混合物)
前記反応混合物の例としてはSi元素源、Al元素源、(必要に応じて)有機テンプレート、および水を含み、さらに必要に応じアルカリ源を加えるのが好ましい。
【0055】
前記反応混合物に用いるSi元素源、Al元素源は特に限定されるものではない。Si元素源としては無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等のいずれでも用いることができる。Al元素源としてはアルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等のいずれでも用いることができる。
【0056】
本発明におけるCHA型ゼオライトの製造において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができ、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成する方が結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性が向上するためである。有機テンプレートとしては、CHA型を形成しうるものであれば種類は問わず、特に限定されるものではない。
【0057】
またテンプレートは1種類使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、例えばUSP4544538号公報、US2008/0075656A1号公報記載の有機テンプレートを好適に組み合わせて使用してもよい。具体的には、1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオン、3−キナクリジナールから誘導されるカチオン、3−exo−アミノノルボルネンから誘導されるカチオン、等の脂環式アミンから誘導されるカチオンであり、1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンがより好ましい。1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成しうるCHA型ゼオライトが結晶化する。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成しうるほか耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られるためである。
【0058】
1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンのうち、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンがさらに好ましい。N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンの場合の3つのアルキル基は、3つの独立したアルキル基であり、通常低級アルキル基であり、好ましくはメチル基である。具体的に好ましいものは、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンである。このようなカチオンはCHA型ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。水酸化物イオンは特に好適に用いられる。またその他の有機テンプレートとしてはN,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキルは3つの独立したアルキルであり、通常低級アルキルである。好ましくはメチルである。最も好ましいのは、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。
【0059】
前記反応混合物に用いるアルカリ源としては有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンやNaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物、Ca(OH)などのアルカリ土類金属水酸化物などを用いることができる。
アルカリの種類は特に限定されるものではないが、通常Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Baであり、好ましくはNa、Kであり、より好ましくはKである。アルカリは2種類以上を併用してもよく、具体的にはNaとKを併用するのが好ましい。
【0060】
反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、SiO/Alモル比(以下単にSiO/Al比ということがある。)として表わす。SiO/Al比は特に限定されるものではないが、通常5以上であり、好ましくは8以上であることがCHA型ゼオライト膜が緻密に生成しうる点で好ましく、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上が好ましい。また通常10000以下であり、好ましくは1000以下であり、より好ましくは300以下であり、更に好ましくは100以下である。
【0061】
SiO/Al比がこの範囲内にあるときCHA型ゼオライト膜が緻密に生成しうるため好ましく、更に生成したCHA型ゼオライトが強い親水性を示し、有機物を含有する混合物中から親水性の化合物、特に水を選択的に透過することができる点で好ましい。また耐酸性に強く脱AlしにくいCHA型ゼオライトが得られる。なお、Al以外に他の元素、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素を含んでいてもかまわない。
【0062】
SiO/Al比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成しうるCHA型ゼオライトが結晶化するので好ましい。また、膜が水を選択的に透過するのに十分な親水性を有するCHA型ゼオライトが生成しうるほか耐酸性に優れたCHA型ゼオライトが得られる点で好ましい。
【0063】
反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)が通常、0.005以上1以下であり、0.01以上0.4以下が好ましく、さらに好ましくは0.02以上0.2以下である。この範囲にあるとき緻密なCHA型ゼオライト膜が生成しうることに加えて生成したCHA型ゼオライトが耐酸性に強くAlが脱離しにくい。
【0064】
Si元素源とアルカリ源の比はアルカリ金属またはアルカリ土類金属をMであらわし、その価数をn(1または2)であらわすと、M(2/n)O/SiOのモル比で通常、0.02以上0.5以下であり、好ましくは0.04以上0.4以下、さらに好ましくは0.05以上0.3以下である。
【0065】
また、アルカリ金属の中でKが含まれる場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は通常、0.01〜1、好ましくは0.1〜1、さらに好ましくは0.3〜1である。また、Kの添加は、rhombohedral setting
で空間群を
【0066】
【数4】

【0067】
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである2θ=9.6°付近のピーク強度、または(1,1,1)の面に由来するピークである2θ=17.9°付近のピーク強度と、(2,0,−1)の面に由来するピークである2θ=20.8°付近のピーク強度の比を大きくする傾向がある。
【0068】
Si元素源と水の比はSiOに対する水のモル比で通常10以上1000以下であり、好ましくは、30以上500以下、さらに好ましくは40以上200以下、特に好ましくは50以上150以下である。反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なCHA型ゼオライト膜が生成しうる。水の量は緻密なCHA型ゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが細かい結晶が生成して緻密な膜ができやすい傾向にある。粉末のCHA型ゼオライトを合成する際の水の量は一般的にはHO/SiOモル比で15〜50程度であるが、HO/SiOモル比が高い、水が多い条件にすることが好ましく、具体的に好ましくは50以上150以下といった条件下であると、無機多孔質支持体表面層にCHA型ゼオライトが緻密な膜状に結晶化し分離性能の高い膜複合体が得られる点で好ましい。
【0069】
(複合体の製造方法)
支持体表面層に、気体や液体混合物の分離に適用可能な緻密で、かつ十分な透過流量が達成できるような膜状のCHA型ゼオライトを結晶化させるには、単に上記の文献をそのまま適用するだけでは不十分であり、これらの方法から膜状にする条件を種々検討する必要がある。
【0070】
本発明における無機多孔質支持体表面層に膜状にCHA型ゼオライトを結晶化させる際に、種結晶が存在しなくてもかまわないが、反応系内に種結晶を加えることでCHA型ゼオライトの結晶化を促進できるという点で好ましい。種結晶を加える方法としては特に限定されるものではないが、粉末のCHA型ゼオライトの合成時のように反応混合物中に種結晶を加える方法や、無機多孔質支持体表面上に種結晶を付着させておく方法が可能であり、膜複合体の製造方法として無機多孔質支持体表面上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体表面上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
【0071】
本発明において使用する種結晶は、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためにはCHA型ゼオライトであることが好ましい。種結晶として用いられるCHA型ゼオライトは特に限定されるものではないが、その粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。通常、0.5nm以上であり、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは2nm以上であり、通常5μm以下であり、好ましくは、3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。
【0072】
本発明における無機多孔質支持体表面上に種結晶を付着させる方法は特に限定されるものではないが、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを無機多孔質支持体表面上に塗りこむ方法などがある。種結晶の付着量を制御し、再現性良く膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
【0073】
本発明において種結晶を分散させる溶媒は、特に限定されるものではないが、水が好ま
しい。分散させる種結晶の量は、特に限定されるものではないが、分散液の全重量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上が好ましく、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。分散させる種結晶の量が少なすぎると無機多孔質支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体表面に部分的にCHA型ゼオライトが生成しない箇所ができることがあり欠陥のある膜となる可能性がある。分散液中の種結晶の量が多すぎるとディップ法によって無機多孔質支持体表面上付着する種結晶の量はほぼ一定となるため、分散させる種結晶の量が多すぎると種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
【0074】
本発明における無機多孔質支持体はディップ法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させた後、乾燥した後に膜の合成を行うことが望ましい。
支持体表面上に予め付着させておく種結晶の重量は、特に限定されるものではないが、基材1mあたりの重量で、通常、0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下であり、好ましくは50g以下であり、より好ましくは10g以下であり更に好ましくは8g以下である。種結晶の量が前記下限未満の場合には結晶ができにくくなり、膜の成長が不十分になる場合や、膜の成長が不均一になったりする傾向があるために緻密な膜が生成しにくくなることがある。また種結晶の量が前記上限超過の場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体表面から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合があり、緻密な膜が生成しにくくなることがある。
水熱合成により結晶化させる場合、無機多孔質支持体を固定化するに際しては、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法で結晶化させてもよいし、反応混合物を攪拌させて結晶化させてもかまわない。
【0075】
ゼオライトを結晶化させる際の温度は特に限定されるものではないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下であり、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎる場合、CHA型ゼオライトが結晶化しないことがあり好ましくない。反応温度がこの範囲より高すぎる場合はCHA型とは異なるタイプのゼオライトが生成しうるので好ましくない。
【0076】
加熱時間は特に限定されるものではないが、通常1時間以上であり、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、通常は10日間以下であり、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。反応時間が短すぎる場合はCHA型ゼオライトが結晶化しないことがあり好ましくない。反応時間が長すぎる場合はCHA型とは異なるタイプのゼオライトが生成しうるため好ましくない。
【0077】
結晶化時の圧力は特に限定されるものではないが、密閉容器中に入れた反応混合物をこの温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、窒素などの不活性ガスを加えてもかまわない。
【0078】
水熱合成により得られた無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は水洗した後に、ゼオライト中の有機テンプレートを取り除くことが好ましい。有機テンプレートを取り除く方法としては焼成や抽出などの方法があり、その方法は限定されるものではないが、焼成が望ましく、好ましい焼成温度は通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、更に好ましくは480℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。焼成温度が低すぎる場合には有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離濃縮の際の透過流束が減少する可能性があり好
ましくない。焼成温度が高すぎる場合には支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなりやすくなることがある。
【0079】
焼成時間は有機テンプレートが十分に取り除かれれば特に限定されるものではないが、1時間以上が好ましくさらに好ましくは5時間以上である。上限は特に限定されるものではないが通常24時間以内である。焼成は空気雰囲気で行われることが一般的であるが、酸素が含まれる雰囲気で行うことができる。
【0080】
焼成の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。通常、5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。通常、5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
【0081】
無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を必要に応じてイオン交換しても良い。イオン交換はテンプレートを用いて合成した場合は通常、焼成などのテンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしてはプロトン、およびNa、K、Liなどのアルカリ金属イオン、およびCa2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などのアルカリ土類金属イオン、Fe、Cu、Znなどの遷移金属のイオンなどがあげられる。この中でプロトン、およびNa、K、Liなどのアルカリ金属イオンが好ましい。
【0082】
イオン交換の方法としては、焼成後(テンプレートを使用した場合など)の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体をNHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗し、必要に応じて200℃〜500℃で焼成する。
【0083】
(分離・濃縮方法)
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を用いて有機物を含有する気体または液体混合物を分離、濃縮する方法は、ゼオライト膜を備えた無機多孔質支持体を介し支持体側又はゼオライト膜側の一方の側に有機物を含む気体または液体の混合物を接触させ、その逆側を混合物が接触している側よりも低い圧力とすることによって混合物からCHA型ゼオライト膜に透過性がある物質(混合物中の透過性が高い物質)を選択的に透過させる方法である。これにより、混合物から透過性の高い物質を分離することができる。そしてその結果、有機物を含む混合物中の特定の有機物(混合物中の透過性が低い物質)の濃度を高めることで、特定の有機物を分離回収、あるいは濃縮する方法である。具体的に言えば、水と有機物の混合物の場合、通常水がゼオライト膜に対する透過性が高いので、混合物から水と有機物とが分離され、有機物は元の混合物中で濃縮される。透過性パーベーパレーション、ベーパーパーミエーションと呼ばれる分離・濃縮方法はひとつの形態である。
【0084】
本発明のゼオライト膜複合体の形状は特に限定されるものでなく、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されないが、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.5cm以上から2cm以下、厚さ0.5mm以上から4mm以下が実用的で好ましい。
【0085】
本発明のゼオライト膜複合体の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、C
HA型ゼオライトの有効細孔径3.8Å以上の大きさを有する気体分子または液体分子とそれ以下の気体または液体分子との分離に好適に使用される。なお分離に供される分子に上限はないが、分子の大きさは通常、100Å以下程度である。
【0086】
また、本発明のゼオライト膜複合体のもう一つの分離機能は親水性の差を利用した分離である。ゼオライトの種類にもよるが、一般にはゼオライト骨格中Alが一定量含有されることにより、親水的性質が現れる。CHA型ゼオライト膜の結晶化条件を制御すれば結晶中のSiO/Alモル比を制御することは可能である。このような親水性膜を用いれば有機物と水の混合溶液から水分子を選択的に膜透過させることにより有機物を分離、濃縮することができる。すなわち、有機酸類/水、アルコール類/水、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類/水、アルデヒド類/水、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類/水、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機物)/水、酢酸エステル等のエステル類/水等の、有機物と水の混合水溶液から水を選択的に透過して有機物を分離、濃縮することができる。この場合に有機物と水との混合物における水の含有量はとくに制限は無く、A型ゼオライトでは構造が壊れてしまう高い水含有量、例えば20重量%以上の水含有量の混合物においても構造が壊れることなく高い選択率と透過量を実現することができる。
また、有機酸/水以外の系においても、有機酸や無機酸が存在していても耐酸性が高いので使用することができる。
【0087】
このように、本発明のゼオライト膜複合体は、高い水含有量の有機物との混合物からの分離や、酸性条件での分離においても高い選択率と透過量が実現できる。そのため通常蒸留で分離している混合物を本発明のゼオライト膜複合体を用いて分離することにより、蒸留に比べて分離に必要なエネルギーを小さくすることができる。本発明のゼオライト膜複合体は、広い範囲の水含有量の混合物からの分離が可能であるので、これまでできなかった系においても分離が可能となる。例えば、これまでA型のゼオライト膜では、高い水含有量の有機物との混合物からの分離ができなかったので、蒸留により90%程度まで有機物を濃縮してからA型ゼオライト膜を使用する必要があった。しかし、本発明のゼオライト膜複合体を用いれば、例えば50%以上の高い水含有量の有機物との混合物からであっても水と有機物を分離し、有機物を濃縮することができる。本発明のゼオライト膜複合体を用いて水と有機物を分離する場合に、所望の濃度まで有機物を濃縮するにあたり、すべての工程をゼオライト膜複合体を用いて行ってもよいし、ゼオライト膜複合体と蒸留や圧力スイング吸着(PSA)、温度スイング吸着(TSA)などの分離方法とを好適に組み合わせることも可能であり、条件を合わせることによって、最適なエネルギー効率による分離が可能となる。
【0088】
本発明のゼオライト膜複合体により分離可能な有機物の例としては、酢酸、プロピオン酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸類や、スルフォン酸、スルフィン酸、ハビツル酸、尿酸、フェノール、エノール、ジケトン型化合物、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第1級および第2級ニトロ化合物などの有機酸や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機物)、酢酸エステル等のエステル類などがあげられる。これらの中から、分子ふるいと親水性の両方の特徴を生かすことのできる有機酸と水との混合物から有機酸を分離するときに無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の効果が際立って発現する。好ましくはカルボン酸類と水との混合物、特に好ましくは酢酸と水の分離などがより好適な例である。また、有機酸以外の有機物と水との混合物から有機物と水を分離する場合の有機物は炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数が3以上であることがより好ましい。
【0089】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を用いると分離膜として、好ましくは浸透気化分離膜として機能し有機物を含む気体または液体の混合物から特定の化合物を分離し、さらに濃縮する、実用上も十分な処理量をもち十分な分離の性能も十分な膜分離が可能となる。ここでいう十分な処理量とは膜を透過する物質の透過流束が1kg/(m・h)以上であることをいう。また十分な分離の性能とは膜分離で一般的に用いられる分離の性能を表す、分離係数=(Pα/Pβ)/(Fα/Fβ)[ここでPαは透過液中の主成分の重量パーセント濃度、Pβは透過液中の副成分の重量パーセント濃度、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の重量パーセント濃度、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の重量パーセント濃度]が100以上であることあるいは透過液中の主成分の濃度が95重量%以上であることをいう。
【0090】
従来のモルデナイト型ゼオライト膜複合体やフェリエライト型ゼオライト膜複合体では十分な処理量と十分な分離性能を両立する有機物を含む混合液の膜分離はできなかった。本発明においてはCHA型ゼオライトの細孔構造が三次元構造であるために、細孔構造が一次元のモルデナイト型ゼオライトの膜よりも細孔内を分子が通りやすいために透過流束が高く十分な処理量を達成していると推測する。分離性能の高い緻密なゼオライト膜では透過物質の主な流路はゼオライト結晶中の細孔であるので、細孔が多い構造のゼオライトの膜では十分な処理量を高い分離性能と両立できると推測する。結晶中の細孔の量はゼオライトのフレームワーク密度からも推測できる。CHA型ゼオライトのフレームワーク密度が14.5T/1000Åであるのに対しモルデナイトでは17.2T/1000Å、フェリエライトでは17.6T/1000Åとなっているので、フレームワーク密度の点からもCHA型ゼオライトの結晶中に透過物質の流路となるような空間が多いことが推測される。
【0091】
本発明の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、高いSiO/Alモル比を持つCHA型ゼオライトがA型ゼオライトやモルデナイト型ゼオライトと異なり耐酸性に優れるため有機酸を含む混合物の分離に好適である。高いSiO/Alモル比でかつ有機テンプレートを含む反応混合液から結晶化するCHA型ゼオライトは酸性条件下でもAlが抜けにくく、構造も安定である。一方、モルデナイト型ゼオライトは酸性条件下で脱Alが進行する。脱Alが進行することによるモルデナイト型ゼオライトの結晶構造の変化は少ないものの結晶のSiO/Alモル比は大きくなる方向に変化することが予想されるのでモルデナイト型ゼオライト膜中の結晶の親水性は低くなって親水性を利用した分離では分離性能が低下する可能性がある。またA型ゼオライトは酸によって構造が破壊されるので有機酸の存在下では膜として機能しなくなると推測する。
【0092】
本発明のゼオライト膜複合体は耐酸性を有するため有機酸を含む混合物からの分離・濃縮、特に酢酸などの有機酸と水との混合物から水を選択的に透過することによる有機酸の分離・濃縮、エステル化反応促進のための水分離などに有効に利用できる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
・X線回折(XRD)の測定方法
XRD測定は以下の条件に基づきおこなった。
装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
なお、X線は円筒管の軸方向に対して垂直な方向に照射した。またX線は、できるだけノイズ等がはいらないように、試料台においた円筒管状の膜複合体と、試料台表面と平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面ではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
【0095】
・SEM−EDXの測定方法
装置:
SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
【0096】
(実施例1)
CHA型ゼオライト膜の作成のために、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液をUSP4544538の記載を参考に調製した。以下に例を示す。
5.5gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を75mlのメタノールに溶解し、24.2gの炭酸カリウムを加え、30分攪拌した。これに、10mlのヨードメタンを滴下させ、1昼夜攪拌した。その後塩化メチレンを50ml加えて固体をろ過した。得られた溶液の溶媒をエバポレーターにより除去して固体を得た。この固体に塩化メチレン130ml加えてろ過、溶媒の除去を2回繰り返した。その後、得られた固体をメタノールを用いて再結晶を行い、再結晶された固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄後、乾燥してN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨーダイド(TMADI)を得た。その後このTMADIを水に溶解させ、アニオン交換樹脂(三菱化学社製 SA−10A)によりイオン交換し、エバポレーターで濃縮し、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド水溶液を得た。滴定により、この水溶液中のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシドの濃度は0.75mmol/gであった。また、この水溶液中に含まれるK量は1.84重量%であった。
【0097】
無機多孔質支持体−(CHA型)ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液6.9gと水103.6gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.43gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、上記のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液9.2gを加
え(この溶液中にKとして0.17g含有している。)、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.4gを加えて3時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0098】
無機多孔質支持体としては(株)ニッカトー製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断した後、外表面を耐水性紙やすりを用いて滑らかにして、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、ディップ法で上記の方法と同様の方法によりSiO/Al/NaOH/HO/TMADOH=1/0.033/0.1/40/0.1のゲル組成で160℃、2日
間水熱合成して結晶化させた0.5μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。
【0099】
この種結晶を約1重量%水中に分散させたものに支持体を所定時間浸した後、100℃で5時間以上乾燥させて種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約3g/mであった。この種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後、テンプレート焼成前のゼオライト(以下as−madeということがある)の状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/(m・分)であった。
テンプレート焼成前のゼオライト(as−made)の膜複合体を電気炉で550℃、10時間焼成した。このときの昇温速度と降温速度はともに0.5℃/分とした。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は120g/mであった。SEM観察から膜厚は約15μmであった。
【0100】
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRD測定は前記の条件によりおこなった。また照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパ
ターンを得た。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピ
ークの強度)=2.9であり、rhombohedral settingにおける(1
,1,1)面への配向が推測された。
【0101】
また短冊状に切断した無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していた。
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、22であった。
(実施例2)
無機多孔質支持体CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
【0102】
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.0gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.95gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0103】
無機多孔質支持体としては実施例1と同様に処理したものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、実施例1と同様に粒径0.5μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約5g/mであった。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/(m・min)であった。テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は120g/mであった。SEM観察から膜厚は約15μmであった。
【0104】
生成したゼオライト膜のXRDを測定したところ、CHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRD測定は実施例1と同様に行った。生成した膜のXRDと種結晶として使用した粉末のCHA型ゼオライト(USP4544538号公報においてSSZ−13と一般に呼称されるゼオライト、以下SSZ−13として表わす。)であるSSZ−13のXRDの比較を図2に示す。図2において、a)は実施例2の膜の、b)はSSZ−13のXRDを示す。また、図中の*は支持体由来のピークである。生成した膜のXRDでは、粉末のCHA型ゼオライトであるSSZ−13のXRDにくらべ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きいことがわかる。粉末のCHA型ゼオライトであるSSZ−13の(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.2に対し、生成した膜の(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=12.6であり、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
【0105】
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、17であった。
【0106】
(実施例3)
無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
【0107】
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.4gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(
TMADOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.37gを加
え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0108】
無機多孔質支持体としては実施例1と同様に処理したものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、実施例1と同様に粒径2μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約2g/mであった。種結晶に用いた粒径2μm程度のCHA型ゼオライトは、セイケム社の25重量%N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液を用いて、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.
1のゲル組成で160℃、2日間水熱合成をして結晶化させたものをろ過、水洗、乾燥したものである。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/ (m・min)であった。テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は130g/mであった。
【0109】
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRD測定は実施例1と同様に行った。生成した膜のXRDの結果から、2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きいことがわかる。生成した膜の(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=1.0であった。
【0110】
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、20であった。
【0111】
(実施例4)
無機多孔質支持体として多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を用いた以外は、実施例3と同様に行って、無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。
生成したCHA型ゼオライト膜のXRDの結果から、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=1.2であった。また、SEM−
EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、17であった。
【0112】
(実施例5)
無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
【0113】
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液32gと1mol/L−KOH水溶液48gと水457gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)4.0gを加えて撹拌し溶解させ、ほぼ透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMA
DOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)13.5gを加え、さ
らにコロイダルシリカ (日産化学社製 スノーテック−40)48gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0114】
無機多孔質支持体としては実施例1と同様に処理したものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、粒径2μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた以外は実施例1と同様の処理を行った。付着した種結晶の重量は約5g/mであった。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してこのテフロン(登録商標)製内筒を1Lのステンレス製オートクレーブに入れ、オートクレーブを密閉し昇温に5時間をかけたのち、160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。反応の間、200rpmで回転する撹拌翼によって反応混合物を混合した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体
を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で4時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/(m・min)であった。テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は120g/mであった。
【0115】
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRD測定は実施例1と同様に行った。生成した膜のXRDを図3に示す。図中の*は支持体由来のピークである。
生成した膜のXRDでは粉末のCHA型ゼオライトであるSSZ−13のXRDにくらべ2θ=9.6°付近のピークの強度が顕著に大きいことがわかる。生成した膜の(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=6.8とCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERに記載の粉末のCHAのXRDの比((2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=2.5にくらべ著しく大きく、rhombohedral settingにおける(1,0,0)面への配向が推測された。また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、17であった。
【0116】
(実施例6)
無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
【0117】
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液30.1gと水66.0gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.057gを加えて撹拌し溶解させ、ほぼ透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)12.7gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)23.6gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0118】
無機多孔質支持体としては実施例1と同様に処理したものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、実施例1と同様に0.5μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約3g/mであった。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で4時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/ (m・min)であった。テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は100g/mであった。
【0119】
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRD測定は実施例1と同様に行った。生成した膜のXRDを図4に示す。図中の*は支持体由来のピークである。
生成した膜のXRDにおいて(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.
8°付近のピークの強度)=1.7であり、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.3であった。
【0120】
このように、生成した膜のXRDピークに特異な強度を示すものはなかった。これから例えば、生成した膜がrhombohedral settingにおける(1,0,0
)面、(1,1,1)面のいずれにも配向していないことが推測される。
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定しようとしたが、出発の反応混合物のSiO/Alモル比が500であることからゼオライト膜のSiO/Alモル比も非常に高くなることから、正確な値が得られなかった。ゼオライト膜のSEM−EDXでは通常、SiO/Alモル比の測定限界値が100程度と考えられるため、少なくともこのゼオライト膜のSiO/Alモル比は100以上であると推測される。
【0121】
(実施例7)
実施例1で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
【0122】
パーベーパレーションに用いた装置の概略図を図1に示す。図1において5のゼオライト膜複合体は9の真空ポンプによって内側が減圧され、4の被分離液が接触している外側と圧力差が約1気圧になっている。この圧力差によって4の被分離液中透過物質の水が5のゼオライト膜複合体に浸透気化して透過する。透過した物質は7のトラップで捕集される。一方、酢酸は5のゼオライト膜の外側に滞留する。一定時間ごとに4の被分離液の濃度を測定し、その濃度を用いて各時間の分離係数を算出した。
【0123】
トラップに捕集した透過液、被分離液の組成分析はガスクロマトグラフによって行った。透過開始から約5時間程度で安定してくるので、約5時間後の透過成績を示す。
透過流束は4.0kg/(m・h)、分離係数は384、透過液中の水の濃度は99.74重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0124】
(実施例8)
実施例2で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は4.8kg/(m・h)、分離係数は544、透過液中の水の濃度は99.81重量%であった。測定結果を表1に示す。
また、分離を長時間継続し、透過流束の経時変化を調べた。開始から約10時間後の変化を開始60分後の透過流束を1としてプロットしたものを図5に示した。これから透過流束は約5時間後はほぼ安定していることがわかる。
【0125】
(実施例9)
実施例2で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により80℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は6.0kg/(m・h)、分離係数は649、透過液中の水の濃度は99.84重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0126】
(実施例10)
実施例2で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7
と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は1.4 kg/(m・h)、分離係数は1411、透過液中の水の濃度は9
9.33重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0127】
(実施例11)
実施例3で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は5.6kg/(m・h)、分離係数は230、透過液中の水の濃度は99.57重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0128】
(実施例12)
実施例4で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/2−プロパノール水溶液(30/7
0重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は7.7kg/(m・h)、分離係数は3000、透過液中の水の濃度は99.92重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0129】
(実施例13)
実施例5で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は4.6kg/(m・h)、分離係数は64、透過液中の水の濃度は98.46重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0130】
(実施例14)
実施例6で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は0.9kg/(m・h)、分離係数は26、透過液中の水の濃度は96.30重量%であった。測定結果を表1に示す。約3時間で透過流束、分離係数、透過液中の水の濃度が安定したのでこの値は約3時間後の値である。
【0131】
(実施例15)
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した以外は実施例2と同様にして無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。用いた水熱合成のための反応混合物は、1mol/L−NaOH水溶液12.9gと1mol/L−KOH水溶液8.6gと水92.4gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重
量%含有、アルドリッチ社製)1.16gを加えて撹拌し溶解させ、ほぼ透明溶液とし、これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.91gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)12.9gを加えて2時間撹拌して調製した。得られた膜複合体の焼成後の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は150g/mであった。
XRD測定を実施例1と同様に行った。
生成した膜の(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピー
クの強度)=12.8であった。
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Alモル比を測定したところ、15であった。
【0132】
(実施例16)
実施例15で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。透過流束は4.5kg/(m・h)、分離係数は180、透過液中の水の濃度は99.43重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0133】
(実施例17)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/2−プロパノール溶液(
10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は4.0kg/(m・h)、分離係数は36000、透過液中の水の濃度は99.97重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0134】
(実施例18)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/2−プロパノール溶液(
30/70重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は5.8kg/(m・h)、分離係数は31000、透過液中の水の濃度は99.99重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0135】
(実施例19)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により50℃の水/2−プロパノール溶液(
30/70重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は2.5kg/(m・h)、分離係数は29000、透過液中の水の濃度は99.99重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0136】
(実施例20)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により50℃の水/テトラヒドロフラン溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は3.1kg/(m・h)、分離係数は3100、透過液中の水の濃度は99.97重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0137】
(実施例21)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により40℃の水/アセトン溶液(50/5
0重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は1.6kg/(m・h)、分離係数は14600、透過液中の水の濃度は99.99重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0138】
(実施例22)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/N−メチル−2−ピロリドン溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は5.6kg/(m・h)、分離係数は10300、透過液中の水の濃度は99.95重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0139】
(実施例23)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/エタノール溶液(86/
14重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は1.3kg/(m・h)、分離係数は500、透過液中の水の濃度は99.97重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0140】
(実施例24)
実施例2と同様にして得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により40℃のメタノール/アセトン溶液(
50/50重量%)からメタノールを選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は0.1kg/(m・h)、分離係数は670、透過液中のメタノールの濃度は99.86重量%であった。測定結果を表2に示す。
【0141】
(比較例1)
比較のため無機多孔質支持体−MOR型ゼオライト膜複合体を、MOR型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製し、実施例7と同様の方法で70℃の水/酢酸混合溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
【0142】
水酸化ナトリウム(97.0重量%、純正化学社製)14.9gと水69.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、Aldrich社製)1.09gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)90.0gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
無機多孔質支持体としては実施例1と同様のものを用いた。水熱合成に先立ち、東ソー製MOR型ゼオライトTSZ−640NAAを5重量%水に分散させたスラリーを支持体上に塗りこんでMOR型ゼオライトの種結晶として付着させた。付着した種結晶の重量は約6g/mであった。この種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で8時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/(m・分)であった。乾燥後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体状に結晶化したMOR型ゼオライトの重量は約35g/mであった。
【0143】
分離評価の結果、透過流束は0.38kg/(m・h)、分離係数は2300、透過液中の水の濃度は99.96重量%であった。
この実施例8と比較例1の結果からCHA膜複合体はMOR膜複合体と同等の高い選択透過性を有し、かつMOR膜複合体の10倍以上の高い透過流束を持つことがわかる。
さらに、実施例8の場合と同様に分離を長時間継続し、透過流束の経時変化を調べた。開始から約10時間後の変化を開始60分後の透過流束を1としてプロットしたものを図5に示した。実施例8に比べて経時的な低下が大きく、安定性という点でもCHA型ゼオライト膜複合体が優れていることがわかる。
【0144】
(比較例2)
比較のため金属多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を、CHA型ゼオライトを金属メッシュ支持体上に直接水熱合成することで作製し、実施例7と同様の方法で70℃の水/酢酸混合水溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
金属メッシュ支持体としては日本精線(株)のTFφ14XL250 NF2M―02S
2を約80mmに切断したものを用いた。
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液32.0gと水74.55gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.76gを加えて撹拌し溶解させ、ほぼ透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)27.00gを加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製 アエロジル200)9.6gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0145】
金属メッシュ支持体には実施例1と同様の処理を行った。支持体上には水熱合成に先立ち、実施例1と同様に0.5μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約18g/mであった。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で4時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/ (m・min)であった。テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は280g/mであった。
XRDの測定から基材の表面にCHA型ゼオライトが生成していた。XRD測定は実施例1と同様に行った。
生成した膜のXRDにおいて(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.
8°付近のピークの強度)=0.8であり、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.1であった。
このように、生成した膜のXRDピークに特異な強度を示すものはなかった。これから例えば、生成した膜がrhombohedral settingにおける(1,0,0
)面、(1,1,1)面のいずれにも配向していないことが推測される。
【0146】
分離評価の結果、透過流束は0.48kg/(m・h)、分離係数は5、透過液中の水の濃度は84.65重量%であった。
この比較例2と実施例3、4、5、6、7、8の結果から金属多孔質支持体―CHA膜複合体はセラミックス無機多孔質支持体―CHA膜複合体と異なり、選択透過性が低く、透過流束も低いことが分かる。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.
8°付近のピークの強度)、または(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)の値が小さい、金属多孔質支持体―CHA膜複合体では
セラミックス無機多孔質支持体―CHA膜複合体と異なり、緻密な膜が形成されにくいと推測される。
【0147】
(実施例25)
無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで作製した。
水熱合成のための反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−KOH水溶液126gに水酸化アルミニウム(Al 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)5.7gを加えて撹拌し溶解させ、ほぼ透明溶液とした。これにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)27gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用混合物を調製した。
【0148】
無機多孔質支持体としては実施例1と同様に処理したものを用いた。支持体上には水熱合成に先立ち、実施例1と同様に0.2μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶を付着させた。付着した種結晶の重量は約3g/mであった。
この0.2μm程度のCHA型ゼオライトの種結晶は以下のように合成した。触媒化成社製のSiO/Al比が7のY型ゼオライト10gを、KOH5gを水100gに溶かした水溶液に加え、2時間攪拌した。この反応混合物をテフロン(登録商標)製内筒に入れてオートクレーブを密閉し100℃7日間加熱した。その後、放冷し、ろ過、水洗してCHA型ゼオライトを得た。
実施例1と同様にこの種結晶を付着させた支持体を上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し140℃で108時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し洗浄後100℃で4時間以上乾燥させた。乾燥後のas−madeの状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ透過量は0ml/(m・min)であった。この膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は50g/mであった。
【0149】
生成した膜のXRDを測定したところ、CHA型ゼオライトが生成していることがわかった。生成した膜のXRDにおいて(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.3であり、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.1であった。
【0150】
このように、生成した膜のXRDピークに特異な強度を示すものはなかった。これから例えば、生成した膜がrhombohedral settingにおける(1,0,0
)面、(1,1,1)面のいずれにも配向していないことが推測される。
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO/Al比を測定したところ6であった。
【0151】
(実施例26)
実施例25で得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/2−プロパノール水溶液(30/
70重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
透過流束は3.9kg/(m・h)、分離係数は21、透過液中の水の濃度は90重量%であった。測定結果を表2に示す。
(実施例27)
実施例25で得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて実施例
7と同様にパーベーパレーション法により70℃の水/酢酸水溶液(50/50重量%)から水を選択的に透過させる分離を行った。
【0152】
透過流束は2.0kg/(m・h)、分離係数は12、透過液中の水の濃度は92.2
8重量%であった。測定結果を表1に示す。
【0153】
【表1】

【0154】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明によれば有機物を含む気体または液体の混合物から特定の化合物を濃縮する際に実用に耐える大きな処理量を有し、かつ十分な分離性能を有する分離、濃縮用ゼオライト膜複合体が得られ、ゼオライト膜を用いた有機物を含む気体または液体の混合物からの分離、濃縮が可能となる。
また本発明によれば耐酸性に優れた分離、濃縮用ゼオライト膜複合体が得られ、酢酸などの有機酸を含有する混合物の分離・濃縮が可能となる。特に有機酸と水との混合物から
水を選択的に透過することによる有機酸の分離・濃縮、エステル化反応促進のための水分離などに有効に利用できる。
【符号の説明】
【0156】
1 スターラー
2 湯浴
3 撹拌子
4 被分離液
5 ゼオライト膜複合体
6 ピラニゲージ
7 透過液捕集用トラップ
8 コールドトラップ
9 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、無機多孔質支持体がセラミックス焼結体を含み、かつゼオライト膜として無機多孔質支持体表面にCHA型ゼオライト結晶層を有することを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項2】
無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、ゼオライト膜としてCHA型ゼオライト結晶層を有し、かつゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍
以上であることを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項3】
無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、ゼオライト膜としてCHA型ゼオライト結晶層を有し、かつゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の4倍以上で
あることを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項4】
ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍以上である請求項1に
記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項5】
ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の4倍以上である請求項1、2また
は4に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項6】
ゼオライト結晶層のSiO/Alモル比が5以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項7】
有機物を含む気体または液体の混合物のうち透過性の高い物質を透過し、該混合物から該透過性の高い物質を分離することが可能な請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項8】
有機物を含む気体または液体の混合物が有機物と水との混合物である請求項7記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項9】
有機物が有機酸である請求項7または8に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項10】
有機物がアルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類である請求項7または8に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項11】
無機多孔質支持体がアルミナ、シリカ及びムライトから選ばれる少なくとも1種類を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を製造する方法であって、無機多孔質支持体表面にCHA型ゼオライトを結晶化させる工程を含むことを特徴とする無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項13】
無機多孔質支持体表面にゼオライトの種結晶を付着させた後、CHA型ゼオライトを結晶化させる請求項12に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項14】
ゼオライトの種結晶が、CHA型ゼオライトである請求項13に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項15】
CHA型ゼオライトの結晶化を、Si元素源及びAl元素源を含む反応混合物を、SiとAlとの比を各酸化物換算で表した(SiO/Al)モル比が5以上10000以下となるように原料として用いて行うことを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項16】
反応混合物中にアルカリ金属イオンが存在することを特徴とする請求項15に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項17】
原料としてさらに有機テンプレートを用い、かつ有機テンプレートが1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンである請求項15または16に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を含む分離膜。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、有機物を含む気体または液体の混合物を接触させて、該混合物のうち透過性の高い物質を透過させることにより、該混合物から該透過性の高い物質を分離することを特徴とする分離方法。
【請求項20】
有機物を含む気体または液体の混合物が、有機酸と水との混合物である請求項19に記載の分離方法。
【請求項21】
有機物を含む気体または液体の混合物が、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類と水との混合物である請求項19に記載の分離方法。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の無機多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、有機物を含む気体または液体の混合物を接触させて、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することを特徴とする濃縮方法。
【請求項23】
有機物を含む気体または液体の混合物が、有機酸、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、及び窒素を含む有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種類と水との混合物である請求項22に記載の濃縮方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−121040(P2011−121040A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43366(P2010−43366)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】