説明

無機有機複合物質、無機有機複合物質の製造方法、無機有機複合物質を用いた製品

【課題】長寿命の電荷分離状態が得られる無機有機複合物質の提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩と、ゼオライトとから形成されている無機有機複合物質。


R1は、Hまたは任意の置換基であり、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。該複合物質は、長寿命の電界分離状態の特性を利用して、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、有機EL素子等の製品に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機有機複合物質、無機有機複合物質の製造方法、無機有機複合物質を用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子供与体・受容体連結分子は、例えば、光合成モデルなどの研究に用いられている。電子供与体・受容体連結分子としては、従来、ポルフィリンなどの色素分子が数多く報告され、その電荷分離状態(電子移動状態)が報告されている。これら電子供与体・受容体連結分子は、産業上利用性の観点から、電荷分離状態の寿命の長さ、酸化力の強さ、還元力の強さ等の特性が要求されており、さらなる特性向上のために研究が重ねられている。
【0003】
それらの特性の中でも、電荷分離状態の寿命の長さは重要な要素である。電荷分離状態の寿命がきわめて短ければ、電荷分離状態における特性を十分に利用できないためである。長寿命の電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子としては、例えば、9-メシチル-10-メチルアクリジニウムイオン(非特許文献1および2参照)等が報告されている。しかし、さらに長寿命の電荷分離状態が得られる物質の開発が望まれている。
【0004】
【非特許文献1】S. Fukuzumi, H. Kotani, K. Ohkubo, S. Ogo, N. V. Tkachenko, H. Lemmetyinen, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1600
【非特許文献2】K. Ohkubo, H. Kotani, S. Fukuzumi, Chem. Commun. 2005, 4520.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、長寿命の電荷分離状態が得られる無機有機複合物質の提供を目的とする。さらに、本発明は、前記無機有機複合物質の製造方法、および前記無機有機複合物質を用いた製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた。その結果、キノリニウムイオンのピリジン環部位に電子供与性部位を結合させて電子供与体・受容体連結分子とし、さらにゼオライトとの複合物質とすると、長寿命の電荷分離状態が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の無機有機複合物質は、下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩と、ゼオライトとから形成された無機有機複合物質である。
【化3】

前記式(I)中、
R1は、水素原子または任意の置換基である。
Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
【0008】
本発明の製造方法は、本発明の無機有機複合物質を製造する方法であり、
前記ゼオライトを、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩の溶液中に浸漬させる浸漬工程を含む製造方法である。
【0009】
本発明の製品は、本発明の無機有機複合物質を含み、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、または有機EL素子として用いられる製品である。すなわち、本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、または有機EL素子は、それぞれ、本発明の無機有機複合物質を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無機有機複合物質は、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩(以下、単に「化合物(I)」ということがある)とゼオライトとから形成されることにより、長寿命の電荷分離状態が得られる。このため、本発明の無機有機複合物質は、化合物(I)の電荷分離状態の特性を十分に利用することが可能であり、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、有機EL素子等の種々の製品に使用することができる。例えば、本発明の無機有機複合物質を白金触媒と組み合わせることで、水素発生光触媒とすることも可能である。また、本発明の電池は、本発明の無機有機複合物質を色素として含むことで、色素増感型太陽電池として用いることもできる。さらに、本発明の無機有機複合物質の用途は、これらに限定されず、あらゆる用途に使用可能である。また、本発明の無機有機複合物質は、前記本発明の製造方法により簡便かつ効率的に製造することができる。ただし、本発明の無機有機複合物質を製造する方法はこれに限定されず、どのような製造方法でも良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の説明には限定されない。
【0012】
本発明の無機有機複合物質により長寿命の電荷分離状態が得られる理由は必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられる。ただし、以下の説明は推定可能な機構の一例であり、本発明はこの考察により何ら限定されない。
【0013】
まず、電子供与体・受容体連結分子は、例えば溶液中での光照射等により励起することで、電荷分離状態が生成する。しかし、前記電荷分離状態の分子が2分子以上近接して存在すると、分子間の電子移動反応(逆電子移動反応)によって容易に元の状態に戻り、失活してしまう。すなわち、電荷分離状態の寿命が短く、その特性を十分に利用できない。
【0014】
本発明の無機有機複合物質の構造は特に限定されないが、例えば、化合物(I)が、多孔性物質であるゼオライトの細孔内に挿入された構造等をとることにより、化合物(I)の電荷分離状態分子が互いに孤立化した状態となり、前記電子移動反応(逆電子移動反応)を抑制できると考えられる。これにより、電荷分離状態の高い反応性を効率的に利用できる。従来の電子供与体・受容体連結分子では、前記電子移動反応(逆電子移動反応)を抑制するために電子供与体・受容体連結分子の溶液を凍結する等の必要があった。しかし、本発明の無機有機複合物質によれば、例えば、室温において長寿命の電荷分離状態を得ること等も可能である。
【0015】
従来、ゼオライト等の多孔性物質と、電子供与体・受容体連結分子とを用いて無機有機複合物質を形成することは困難であった。しかし、本発明者らは、化合物(I)とゼオライトを用いれば安定な無機有機複合物質が得られることを見出し、本発明の無機有機複合物質を発明するに到ったのである。
【0016】
本発明の無機有機複合物質が安定である理由も必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、従来の電子供与体・受容体連結分子は、分子内で電子供与体部位と電子受容体部位とを離れた位置に配置することで長寿命光電荷分離状態を達成しようとしていた。その結果、分子サイズが大きくなるため、ゼオライト等の細孔の小さな多孔性物質への導入は極めて困難であった。しかし、化合物(I)のキノリニウムイオン誘導体は、分子サイズが小さいため、ゼオライトの細孔内に挿入されやすく、安定な本発明の無機有機複合物質を形成すると考えられる。特に、化合物(I)において、キノリニウムイオン部分(電子受容体部分)のサイズは、理論計算によれば約7Åと小さいため、細孔入り口径が1ナノメートル以下である多孔性物質の細孔内にも安定に挿入されやすいと考えられる。ただし、この説明は理論的考察の一例であり、本発明はこの考察により何ら限定されない。なお、1Åは0.1nmすなわち10−10mに等しい。
【0017】
[ゼオライト]
本発明の無機有機複合物質において、ゼオライトは、特に限定されないが、例えば、Y型、A型、X型、L型、ベータ型、フェリエライト型、モルデナイト型、ZSM−5型、TS−1型、またはMCM−22型が好ましい。これらの中で、比較的細孔径が大きく、比較的入手が容易である等の理由により、Y型が特に好ましい。Y型ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、ジーエルサイエンス社のSK40(商品名)等を用いることができる。
【0018】
本発明の無機有機複合物質の構造は特に限定されないが、例えば、前述のように、化合物(I)が前記ゼオライトの細孔内に挿入された構造を有することが好ましい。前記細孔は、スーパーケージであることがより好ましい。化合物(I)がスーパーケージ内に挿入されれば、容易に脱着せず安定な構造となるため、電化分離状態における高い反応性等の特性を十分に利用できると考えられるためである。ただし、この説明も、本発明を何ら限定しない。
【0019】
[キノリニウムイオン誘導体(化合物(I))]
以下、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩(化合物(I))の好ましい構造等について説明する。
【0020】
前記式(I)中、R1は、例えば、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖であることが好ましい。また、R1は、例えば、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、ベンジル基、末端にカルボキシル基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミノ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖であることがより好ましい。PEG鎖は、前記ポリエーテル鎖の一例であるが、前記ポリエーテル鎖の種類は、これに限定されず、どのようなポリエーテル鎖でも良い。R1において、前記ポリエーテル鎖の重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。前記ポリエーテル鎖がPEG鎖の場合、重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。また、Ar1〜Ar3は、例えば、それぞれ、水素原子、アルキル基、または芳香環であることが好ましく、前記アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基であることがより好ましい。Ar1〜Ar3において、前記芳香環は環上にさらに1または複数の置換基を有していても良く、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
【0021】
前記式(I)中、Ar1〜Ar3において、前記芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環またはピレン環であることがより好ましい。また、Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルであることがより好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルであることがさらに好ましい。前記第2級アミンとしては、特に限定されないが、例えばアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基がより好ましい。前記第3級アミンとしては、特に限定されないが、例えばジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基を有するジアルキルアミノ基がより好ましい。
【0022】
なお、Ar1〜Ar3における前記芳香環上の置換基において「カルボン酸」とは、カルボキシル基または末端にカルボキシル基が付加した基(例えばカルボキシアルキル基等)をいい、「カルボン酸エステル」とは、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のカルボン酸エステル基、およびアシルオキシ基をいう。前記カルボキシアルキル基中のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基が好ましく、前記アルコキシカルボニル基中のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基が好ましい。
【0023】
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体のうち、電荷分離状態の長寿命、高酸化力、高還元力等の観点から特に好ましいのは、例えば、下記式1〜5のいずれかで表されるキノリニウムイオン誘導体である。
【化4】

また、前記化合物1〜5の他には、例えば、下記表1に示す化合物6〜36等が特に好ましい。下記表1および表2に、化合物6〜36の構造を、前記式(I)におけるR1およびAr1〜Ar3の組み合わせで示す。また、これら化合物6〜36は、後述の実施例を参照することにより、当業者であれば、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等をすることなく、化合物1〜5に準じて容易に製造し、かつ使用することが出来る。
【表1】

【表2】

【0024】
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も本発明に用いることができる。さらに、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体の塩も本発明に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体が塩基付加塩を形成し得る場合は、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。また、前記式(I)中のR1およびAr1〜Ar3に異性体が存在する場合はどの異性体でも良く、例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
【0025】
また、化合物(I)において、吸収帯は特に限定されないが、可視光領域に吸収帯を有することが好ましい。可視光領域に吸収帯を有することで、本発明の無機有機複合物質を可視光励起することが可能となり得るためである。これによれば、太陽光をエネルギー源として利用できるので、例えば、太陽電池等への適用も可能である。
【0026】
なお、本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられ、アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)においても同様である。また、ペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられ、ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基、等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。さらに、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0027】
[キノリニウムイオン誘導体(化合物(I))の製造方法]
キノリニウムイオン誘導体(化合物(I))の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下で説明する製造方法によって製造可能である。
【0028】
すなわち、キノリニウムイオン誘導体(化合物(I))は、例えば、下記式(II)で表されるキノリン誘導体と下記式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含む製造方法によって製造することができる。
【化5】

前記式(II)中、Ar1〜Ar3は、前記式(I)と同じである。
前記式(III)中、R1は、前記式(I)と同じであり、Qは電子吸引基である。
【0029】
前記式(III)中、Qは、電子吸引基であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等が挙げられ、中でも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルスルホニル基、およびトリフルオロメチルカルボニル基等がより好ましい。
【0030】
前記式(II)で表されるキノリン誘導体と前記式(III)で表される化合物との反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。キノリン誘導体(II)と化合物(III)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:4、特に好ましくは1:1である。また、例えば、キノリン誘導体(II)および化合物(III)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、アセトン等のケトン、およびアセトニトリル等のニトリル溶媒等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。溶媒を用いる場合、キノリン誘導体(II)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.01〜0.2mol/L、好ましくは0.02〜0.1mol/L、より好ましくは0.03〜0.05mol/Lである。反応温度は特に限定されないが、例えば0〜80℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば10〜40時間、好ましくは20〜30時間、より好ましくは25〜30時間である。
【0031】
さらに、キノリニウムイオンを製造した後、必要に応じ、陰イオン交換処理しても良い。前記陰イオン交換処理の方法は特に限定されず、必要に応じて任意の方法を用いることができる。前記陰イオン交換処理に使用可能な物質としては、例えば、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸、および、四フッ化ホウ素、六フッ化リンが挙げられ、単独で用いても二種類以上併用しても良く、また、これら以外の反応物質、溶媒等を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。
【0032】
前記式(II)で表されるキノリン誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、第1の製造方法として、下記式(IV)で表されるハロゲン化キノリンと下記式(V)で表されるボロン酸エステルを反応させて製造することが好ましい。
【化6】

前記式(IV)中、
X1は、ピリジン環上のハロゲン基であり、1つでも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
前記式(V)中、
R2およびR3は、水素原子または炭化水素基であり、R2とR3は一体となっていても良い。
Armのmは1〜3のいずれかの整数である。
ボロン酸エステル(V)は単一でも複数種類でも良い。
R2およびR3は、それぞれ水素原子もしくはアルキル基であるか、または一体となってアルキレン基を形成していることが好ましく、アルキル基の場合は炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基がより好ましく、アルキレン基の場合は、炭素数1〜12の直鎖または分枝アルキレン基がより好ましく、エチレン基(ジメチレン基)、またはトリメチレン基が特に好ましい。
【0033】
前記式(IV)で表されるハロゲン化キノリンと前記式(V)で表されるボロン酸エステルとの反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。ハロゲン化キノリン(IV)とボロン酸エステル(V)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:2〜1:10、好ましくは1:2〜1:4、特に好ましくは1:2である。また、例えば、ハロゲン化キノリン(IV)およびボロン酸エステル(V)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、ハロゲン化キノリン(IV)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.2〜2.0mol/L、好ましくは0.3〜1.5mol/L、より好ましくは0.5〜1.0mol/Lである。ハロゲン化キノリン(IV)およびボロン酸エステル(V)以外の反応物質としては、例えば触媒を用いても良い。前記触媒としては、例えば、パラジウム触媒等が挙げられる。前記パラジウム触媒としては、特に限定されないが、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2等が特に好ましい。また、これら触媒は、必要に応じ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記触媒の使用量は特に限定されないが、ハロゲン化キノリン(IV)のモル数に対し、例えば0.002〜0.1倍、好ましくは0.005〜0.04倍、より好ましくは0.01〜0.02倍である。さらに、これら触媒は、必要に応じ、他の物質と併用しても良いし、併用しなくても良い。前記他の物質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、トリエチルアミン等の塩基性物質が挙げられ、K2CO3、トリエチルアミン等が特に好ましい。これらの使用量は特に限定されないが、ハロゲン化キノリン(IV)のモル数に対し、例えば50〜500倍、好ましくは100〜400倍、より好ましくは200〜300倍である。また、前記化合物(IV)および(V)の反応に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、チオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル、およびジクロロエタン、DMF等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えば50〜120℃、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば10〜50時間、好ましくは15〜30時間、より好ましくは20〜25時間である。
【0034】
前記式(II)で表されるキノリン誘導体の第2の製造方法として、下記式(VI)で表される1-アシル-2-アミノベンゼンと下記式(VII)で表されるケトンを反応させて製造することが好ましい。
【化7】

前記式(VI)中、Ar1は、前記式(I)と同じである。前記式(VII)中、Ar2およびAr3は、前記式(I)と同じである。
【0035】
前記式(VI)で表される1-アシル-2-アミノベンゼンと前記式(VII)で表されるケトンとの反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)とケトン(VII)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:3〜1:10、好ましくは1:3〜1:5、特に好ましくは1:3である。また、例えば、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.2〜3.0mol/L、好ましくは0.5〜2.0mol/L、より好ましくは0.8〜1.0mol/Lである。1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)以外の反応物質としては、例えば、ジフェニルフォスファイト等のフォスファイト(ホスファイト)、および水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、必要に応じ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。これらの使用量は特に限定されないが、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)のモル数に対し、例えば2〜10倍、好ましくは3〜8倍、より好ましくは5〜6倍である。また、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)の反応に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、特に限定されないが極性溶媒が好ましく、例えば、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のヒドロキシベンゼン類、およびDMF,DMSO等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えば100〜200℃、好ましくは120〜160℃、より好ましくは130〜140℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば5〜30時間、好ましくは10〜25時間、より好ましくは20〜25時間である。
【0036】
前記式(VI)で表される化合物の製造方法も特に限定されないが、例えば、下記式(VIII)で表される化合物と、下記式(IX)で表されるハロゲン化物を反応させて製造することが好ましい。
【化8】

前記式(VIII)中、R4およびR5は、それぞれ水素原子またはアルキル基であり、同一でも異なっていても良い。前記式(IX)中、Ar1は前記式(VI)と同じであり、X2はハロゲンである。R4およびR5は、それぞれ水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基であることが好ましく、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0037】
前記式(VIII)で表される化合物と前記式(IX)で表されるハロゲン化物との反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。化合物(VIII)とハロゲン化物(IX)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.5、特に好ましくは1:1である。また、例えば、化合物(VIII)およびハロゲン化物(IX)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、化合物(VIII)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.05〜0.8mol/L、好ましくは0.1〜0.5mol/L、より好ましくは0.2〜0.3mol/Lである。化合物(VIII)およびハロゲン化物(IX)以外の反応物質としては、例えばn-ブチルリチウム等の有機リチウム試薬等が挙げられ、必要に応じ単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記有機リチウム試薬の使用量は特に限定されないが、化合物(VIII)のモル数に対し、例えば1.5〜2.5倍、好ましくは1.6〜2.3倍、より好ましくは1.9〜2.1倍である。また、前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、チオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えばマイナス100〜マイナス50℃、好ましくはマイナス80〜マイナス60℃、より好ましくはマイナス80〜マイナス70℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば1〜5時間、好ましくは2〜4時間、より好ましくは2〜3時間である。
【0038】
以上で説明した反応に用いる反応物質、溶媒等は、前述の通り特に限定されないが、適切な組み合わせで用いることが好ましい。例えば、n-ブチルリチウム等の物質は水との反応性が高いため、溶媒中の水により反応性に影響が出る場合がある。そのような場合は、溶媒中から水をなるべく除いて用いることが好ましい。また、化合物(I)の製造方法は、前述の通り、これらに限定されず、どのような製造方法でも良い。
【0039】
[無機有機複合物質の製造方法]
本発明の無機有機複合物質の製造方法は、前述の通り特に限定されないが、前記本発明の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法は、前述の通り、ゼオライトを(化合物(I))の溶液中に浸漬させる浸漬工程を含む。以下、本発明の製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0040】
本発明の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、ゼオライトを焼成により前処理する。本発明の製造方法において、この前処理工程は、あってもなくても良いが、この工程を含むほうが好ましい。ゼオライトを焼成すれば、細孔内の水分子等が取り除かれ、化合物(I)の分子が挿入されやすくなり、本発明の無機有機複合物質の活性等が高くなると考えられるからである。ただし、本発明は、この考察により何ら限定されない。
【0041】
前記前処理工程における焼成温度は、特に限定されないが、例えば100〜400℃、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。焼成時間も特に限定されないが、例えば2〜24時間、好ましくは5〜15時間、より好ましくは8〜12時間である。焼成時における雰囲気も特に限定されず、例えば、大気中でも良いが、不活性ガス雰囲気、減圧下等でも良い。焼成方法も特に限定されず、例えば、電気炉、乾燥機(乾燥器)等、ゼオライトの焼成に通常用いる器具を適宜使用することができる。なお、使用可能なゼオライトの種類は特に限定されず、例えば前述の通りである。
【0042】
次に、ゼオライトを化合物(I)の溶液中に浸漬させる前記浸漬工程を行う。この工程は、単にゼオライトを化合物(I)の溶液中に浸漬させるのみでも良いが、前記溶液を撹拌しながら行うと、複合物質の形成速度等の観点から好ましい。前記溶液において、溶媒は特に限定されず、単独で用いても二種類以上併用しても良いが、化合物(I)の溶解度等の観点から高極性溶媒が好ましい。より具体的には、例えば、ニトリル、ハロゲン化溶媒、エーテル、アミド、スルホキシド、ケトン、アルコール、および水からなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。前記ニトリルは、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。前記ハロゲン化溶媒は、特に限定されないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。前記エーテルは、特に限定されないが、例えば、THF(テトラヒドロフラン)等が挙げられる。前記アミドは、特に限定されないが、例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)等が挙げられる。前記スルホキシドは、特に限定されないが、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。前記ケトンは、特に限定されないが、例えば、アセトン等が挙げられる。前記アルコールは、特に限定されないが、例えば、メタノール等が挙げられる。これら溶媒の中で、アセトニトリルが特に好ましい。前記溶液において、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体の分子の濃度は、特に限定されないが、例えば1.25×10−5〜1.50×10−4mol/L、好ましくは5.0×10−5〜1.50×10−4mol/L、特に好ましくは1.0×10−4〜1.25×10−4mol/Lである。また、前記溶液において、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体の分子の物質量(モル数)は、特に限定されないが、前記ゼオライト1g当り、例えば2.5×10−5〜3.0×10−4mol、好ましくは1.0×10−4〜2.9×10−4mol、より好ましくは2.0×10−4〜2.5×10−4molである。この浸漬工程において、前記溶液の温度も特に限定されないが、例えば0〜45℃、好ましくは15〜40℃、より好ましくは20〜30℃、特に好ましくは20〜25℃である。例えば、前記溶液の加熱または冷却等を特に行わず、室温で前記浸漬工程を行うことが、簡便で好ましい。浸漬時間も特に限定されないが、例えば1〜48時間、好ましくは3〜48時間、より好ましくは8〜36時間、特に好ましくは12〜24時間である。
【0043】
さらに、前記無機有機複合物質を濾取し、洗浄し、乾燥する単離工程を行う。この単離工程も特に限定されず、必要ないのであれば行わなくても良い。洗浄溶媒は特に限定されず、例えば、前記浸漬工程と同じ溶媒等を用いることができる。乾燥温度も特に限定されないが、例えば15〜60℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃である。乾燥時における雰囲気も特に限定されず、例えば、大気中、不活性ガス雰囲気中等であっても良い。また、常圧条件下で乾燥を行っても良いが、減圧下で乾燥を行うと乾燥速度の観点から好ましい。
【0044】
[本発明の製品]
次に、本発明の製品およびその使用方法について説明する。
【0045】
本発明の無機有機複合物質は、これをそのまま本発明の製品すなわち本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、および有機EL素子として用いても良いが、他の適宜な物質とともに用いても良い。本発明の製品すなわち本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、および有機EL素子は、化合物(I)の電荷分離状態の生成により、その優れた機能を発揮し得る。すなわち、化合物(I)は、例えば、前記電荷分離状態の生成により、前記式(I)で表される分子間で、あるいは前記式(I)の分子と他の物質との間で電子移動を起こすことが可能である。これにより、本発明の無機有機複合物質は、前記分子間あるいは物質間の電子移動に関する用途、すなわち前述の酸化剤、還元剤、電池等に好適に用いることができる。また、前述の通り、本発明の無機有機複合物質は、化合物(I)がゼオライトとともに複合物質を形成していることで、化合物(I)の電荷分離状態が長寿命であり、その高い反応性等の特性を利用しやすい。本発明の無機有機複合物質は、例えば、化合物(I)の電荷分離状態から、ビオローゲン等の電子アクセプター物質に電子を移動させ、電子移動還元反応を行うことが可能である。また、本発明の還元剤が還元できる物質(被還元物質)は、前記ビオローゲン等の電子アクセプター物質に限定されない。本発明の還元剤は、種々の物質の還元反応に用いることが可能である。前記被還元物質としては、特に限定されないが、例えば、キノン類、ニトロベンゼン類、シアノベンゼン類等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の有機EL素子については、例えば以下の通りである。まず、一般的な有機EL素子の構造の一例として、透明基板上に、透明電極(陽極)、有機発光層および金属電極(陰極)がこの順序で積層されている。前記有機発光層は、発光物質を含んでいる。このような有機EL素子は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入される。前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが前記発光物質を励起する。そして、励起された前記発光物質が基底状態に戻るときに発光する。本発明の有機EL素子は、例えば、前記発光物質として本発明の無機有機複合物質を含む有機EL素子であっても良い。この構成によれば、例えば、化合物(I)が励起により電荷分離状態を生じ、さらに励起状態(電荷分離状態)から基底状態に戻ることにより発光する。なお、本発明の有機EL素子は、この説明により何ら限定されない。
【0047】
本発明の無機有機複合物質を含む本発明の製品において、化合物(I)の電荷分離状態を生成させる方法は、特に限定されないが、例えば光励起が好ましく、可視光励起がより簡便であるため特に好ましい。可視光励起を行うためには、前述の通り、化合物(I)が可視光領域に吸収帯を有することが好ましい。これにより、長寿命、高酸化力および高還元力を併せ持つ電荷分離状態を簡便に生成させることも可能である。
【0048】
本発明の無機有機複合物質は、化合物(I)が光励起により電荷分離状態を生じ、前述のような分子間あるいは物質間の電子移動を起こすことで、光触媒、光増感剤等に使用可能である。例えば、前述の通り、本発明の無機有機複合物質を白金触媒と組み合わせることで、水素発生光触媒とすることもできる。さらに、本発明の無機有機複合物質は、化合物(I)が可視光領域に吸収帯を有する場合は色素として使用可能である。例えば、前述の通り、本発明の電池は、本発明の無機有機複合物質を色素として含むことで、色素増感型太陽電池として用いることもできる。
【0049】
化合物(I)を光励起する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の無機有機複合物質を適宜な溶媒に浸漬させた後、光照射しても良い。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良い。前記有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒、THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル、DMF(ジメチルホルムアミド)等のアミド、DMSO(ジメチルスルホキシド)等のスルホキシド、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコール等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記溶媒としては、化合物(I)の溶解度、励起状態の安定性等の観点から、極性の高い溶媒が好ましく、例えば、溶解度の観点からアセトニトリルが特に好ましい。本発明の無機有機複合物質の使用量は特に限定されず、必要に応じて適宜調整すれば良いが、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体の濃度が、前記溶媒に対し、例えば5×10-5M以上、好ましくは1×10-4〜1×10-3Mとなるようにする。
【0050】
また、励起光も特に限定されないが、例えば可視光が好ましい。特に、太陽光等の自然光に含まれる可視光を利用すれば、簡便に励起可能である。照射する可視光の波長のうち、より好ましい波長は、化合物(I)が有する吸収帯によるが、キノリニウムイオン誘導体が前記式1〜5のいずれかで表される場合、例えば300〜450nmがより好ましく、300〜360nmがさらに好ましい。可視光を照射する際の温度も特に限定されないが、例えば、キノリニウムイオン誘導体が前記式1〜5のいずれかで表される場合、10〜30℃程度の室温で反応(励起)を進行させることも可能である。
【0051】
本発明の無機有機複合物質を還元剤として用いるためには、例えば、化合物(I)を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させ、前記励起種から前記被還元物質に電子を移動させて前記被還元物質を還元する。また、本発明の無機有機複合物質を酸化剤として用いるためには、例えば、化合物(I)を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させ、前記被酸化物質から前記励起種に電子を移動させて前記被酸化物質を酸化する。これらの詳細は、特に限定されない。例えば、光照射により前記励起種を生成させる工程は、前述のように、本発明の無機有機複合物質を溶媒に浸漬させた後、光照射することにより行っても良い。また、前記溶液中に前記被還元物質または前記被酸化物質をあらかじめ溶解させておき、光照射することにより行っても良い。これらの場合の使用溶媒、溶液濃度、照射光波長、温度等の各種条件は、特に限定されないが、例えば前述の通りである。前記還元工程または酸化工程も特に限定されない。例えば、本発明の還元剤においては、前記溶液への光照射後、前記励起種から前記被還元物質への電子移動が自動的に起こることをもって前記還元工程としても良い。同様に、本発明の酸化剤においては、前記溶液への光照射後、前記被酸化物質から前記励起種への電子移動が自動的に起こることをもって前記酸化工程としても良い。
【0052】
本発明の還元剤において、前記被還元物質は、特に限定されないが、例えば、キノン類、ニトロベンゼン類、シアノベンゼン類等が挙げられる。前記式(I)で表される分子と前記被還元物質の物質量比(モル比)は特に限定されず、前記式(I)で表される分子と前記被還元物質の種類等に応じて適宜選択可能であるが、例えば1:0.001〜1:1000、好ましくは1:0.005〜1:100、より好ましくは1:0.01〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:1である。
【0053】
本発明の酸化剤において、前記被酸化物質は、特に限定されないが、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルアントラセン類、NADH類縁体等が挙げられる。前記式(I)で表される分子と前記被酸化物質の物質量比(モル比)は特に限定されず、前記式(I)で表される分子と前記被酸化物質の種類等に応じて適宜選択可能であるが、例えば1:0.001〜1:1000、好ましくは1:0.005〜1:100、より好ましくは1:0.01〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:1である。
【0054】
また、例えば、本発明の無機有機複合物質においては、ゼオライトの細孔径が均一であることにより、反応基質をサイズ選択的に取り込むこともできる。これにより、本発明の無機有機複合物質を光触媒として用いれば、例えば、均一系反応では困難な位置選択的反応や構造選択的反応を行うことが可能となる。さらに、ゼオライトに助触媒として金属や金属酸化物微粒子を担持させることで、化合物(I)の電荷分離状態の酸化還元力を利用して、水素発生や水の分解等の様々な光触媒反応を行うこともできる。さらに、本発明の光触媒は、化合物(I)がゼオライトに固定化されて複合物質を形成しているため、化合物(I)を単独で用いる場合と異なり、光触媒として使用後に反応溶液との分離回収が容易にできるので、リサイクル可能な光触媒として利用することもできる。ただし、これらの説明は例示であり、本発明を何ら限定しない。
【0055】
さらに、本発明の無機有機複合物質の用途および使用方法は、以上の説明に限定されず、あらゆる用途および使用方法が可能である。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、以下の実施例において述べる反応機構等の理論的考察は、推定可能な機構等の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定しない。
【0057】
本実施例では、焼成により前処理したNa-Yゼオライトを、電子供与体・受容体連結分子(化合物(I))の溶液中で撹拌し、さらに濾取、洗浄および乾燥させることにより、前記電子供与体・受容体連結分子とゼオライトとの複合物質すなわち本発明の無機有機複合物質を得た。
【0058】
以下において、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL社製の機器JNM-AL300 NMR spectrometer(商品名)(1H測定時300MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、株式会社島津製作所社製の機器Kratos Compact MALDI I(商品名)を用い、MALDI-TOF-MS法により測定した。元素分析値は、Perkin-Elmer社製Model 240C(商品名)を用いて測定した。溶液の吸光度(紫外可視吸収スペクトル)は、Hewlett-Packard社製の機器8453 photodiode array spectrophotometer(商品名)を用いて測定した。レーザー照射には、Continuum社製の機器Nd:YAG laser(SLII-10, 4-6 ns fwhm)(商品名)を用いた。拡散反射分光法による紫外可視吸収スペクトルは、株式会社島津製作所製のShimadzu UV-3300PC(商品名)およびその付属装置として同社のISR-3100(商品名)を用いて測定した。全ての化学物質は、試薬級であり、東京化成、和光純薬、Aldrich社から購入した。ゼオライトは、Y型ゼオライト(ジーエルサイエンス社、商品名SK40)を用いた。
【0059】
<キノリニウムイオン誘導体塩の合成>
以下の通り、前記式1〜5で表されるキノリニウムイオン誘導体の塩を合成した。
【0060】
[1]キノリニウムイオン誘導体1〜5の合成
前記式1〜5で表されるキノリニウム誘導体の塩を合成した。なお、前記式1〜5を下に再掲する。
【化9】

【0061】
[1−1]キノリニウムイオン誘導体1〜3の合成
下記スキーム1に従い、キノリニウムイオン誘導体2(3-(1-ナフチル)キノリニウムイオン)の過塩素酸塩を合成した。
【化10】

【0062】
以下、前記スキーム1についてさらに詳しく説明する。
【0063】
前記スキーム1の反応を行うに先立ち、まず、1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)を合成した。すなわち、まず、10mLの脱水THF中において、1-ナフチルブロマイド(2.07g, 10.0mmol)とマグネシウム(0.27g, 11.0mmol)の反応によってグリニヤール試薬を生成させた。次に、このグリニヤール試薬を、-78℃でトリメトキシボラン(2.08g, 20.0mmol)の脱水THF溶液10mLに加え、1時間攪拌した。反応終了後、溶媒を除去し、得られた白色固体をトルエン50mL中で攪拌しながらエチレングリコール5mLを加えた。その後、115℃で12時間還流し、反応させた。反応終了後、室温に冷却し、トルエン相のみ抽出し溶媒を除去した。その結果、1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)が得られた(1.60g, 81%)。以下に、この1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)の機器分析データを示す。
【0064】
1-ナフチルボロン酸エステル(2-1):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.73(d, J=7.5Hz, 1H), 8.11(s, J=7.5Hz, 1H),7.95(s, J=7.5Hz, 1H), 7.84(s, J=7.5Hz, 1H), 7.56-7.45(m, 3H), 4.52(s, 4H).
【0065】
次に、前記1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)(1.00g, 5.00mmol)と3-ブロモキノリン(0.62g, 3.00mmol)のジメトキシエタン(DME)溶液4mLに、2.0M炭酸カリウム水溶液1.0mL、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム[Pd(PPh3)4](30mg, 0.026mmol)を加えて90℃で12時間還流した。反応終了後、室温に冷却し、クロロホルム100mLを加え、水100mLでの洗浄処理を2回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)を得た(84mg, 11%)。以下に、この3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)の機器分析データを示す。
【0066】
3-(1-ナフチル)キノリン(2-2):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 9.06(s, 1H), 8.28(s, 1H), 8.21(d, J=8.4Hz, 1H), 7.97-7.75(m, 5H), 7.65-7.46(m, 5H).
【0067】
さらに、前記3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)(70mg, 0.27mmol)をアセトン10ml中に溶解させ、さらに、ヨウ化メチルを(130μl, 2mmol)加え10時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール20mLを加え、過塩素酸ナトリウム(0.12g, 1.0mmol)を加えて塩交換(イオン交換)し、3-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体2)の過塩素酸塩を得た。得られたキノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩の収量は93mgであり、前記3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)からの収率は93%であった。以下に、このキノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩の機器分析データを示す。
【0068】
キノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 9.25 (s, 1H), 9.20(s, 1H), 8.42(t, J=8.4 Hz, 2H), 8.30(t, J=8.4Hz, 1H), 8.15-8.08(m, 3H), 7.86(d, J=8.4Hz, 1H), 7.74-7.56(m, 4H), 4.63(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 270(M+ Calcd for C20H16N 270.1). Anal. Calcd for C20H16ClNO4: C, 64.96; H, 4.36; N, 3.79. Found: C, 64.80; H, 4.24; N, 3.82.
【0069】
さらに、下記スキーム1’に従い、キノリニウムイオン誘導体1の過塩素酸塩を得た。
【化11】

【0070】
すなわち、2,4,6-トリメチルフェニルボロン酸(1.64g, 10.0mmol)と3-ブロモキノリン(1.24g, 6.00mmol)のジメトキシエタン(DME)溶液8mLに2.0M炭酸カリウム水溶液2.0mL、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム[Pd(PPh3)4](60mg, 0.052mmol)を加えて90℃で12時間還流した。反応終了後、クロロホルム100mL加え、水100mLでの洗浄処理を2回、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。溶媒を除去し、ジクロロメタンを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、3-(1-メシチル)キノリン(化合物1-2)が得られた(500mg, 34%)。
得られた3-(1-メシチル)キノリン(500mg, 2.02mmol)をアセトン80ml中で、ヨウ化メチル(8mmol)を加え10時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール30mLを加え、過塩素酸ナトリウム(0.12g, 1.0mmol)を加え過塩素酸塩へと塩交換した。得られた3-(1-メシチル)キノリニウムイオン;Qu+-Mesは105mgで収率は14%であった。
【0071】
また、1-ナフチルブロマイドに代えて2-メチル-1-ナフチルブロマイドを用いる以外は前記スキーム1と同様にしてキノリニウムイオン誘導体3の過塩素酸塩を得た。以下に、これらキノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩、キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩およびそれらの中間体の機器分析データを示す。
【0072】
3-(1-メシチル)キノリン(キノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩の中間体、化合物1-2):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.67(s, 1H), 8.14(d, J=8.4Hz, 1H), 7.96(s, 1H), 7.76-7.55(m, 3H), 7.00(s, 2H), 2.34(s, 3H), 2.03(s, 6H).
【0073】
3-[1-(2-メチル)ナフチル)]キノリン(キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩の中間体):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.85(s, 1H), 8.22(d, J=8.4Hz, 1H), 8.10(s, 1H), 7.89-7.60(m, 6H), 7.49-7.32(m, 3H), 2.29(s, 3H).
【0074】
キノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩:
1H NMR(300MHz, CD3CN) δ 8.93(s, 1H), 8.90(s, 1H), 8.39(d, J=7.8Hz, 1H), 8.33(d, J=7.8 Hz, 1H), 8.26(t, J=7.8 Hz, 1H), 8.04(t, J=7.8Hz, 1H), 7.08(s, 2H), 2.04(s, 6H), 4.57(s, 3H), 2.35(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 262(M+ Calcd for C19H20N 261.8). Anal. Calcd for C19H20ClNO4: C, 63.07; H, 5.57; N, 3.87. Found: C, 62.91; H, 5.49; N, 3.89.
【0075】
キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩:
1H NMR(300MHz, CD3CN) δ 9.09(s, 1H), 9.05(s, 1H), 8.49-8.25(m, 3H), 7.96-8.12(m, 3H), 7.62-7.32(m, 4H), 4.61(s, 3H), 2.38(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 284(M+ Calcd for C21H18N 284.1). Anal. Calcd for C21H18ClNO4: C, 65.71; H, 4.73; N, 3.65. Found: C, 65.58; H, 4.73; N, 3.65.
【0076】
[1−2]キノリニウムイオン誘導体4および5の合成
下記スキーム2に従い、キノリニウムイオン誘導体5(2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン)の過塩素酸塩を合成した。
【化12】

【0077】
前記スキーム2の反応は、具体的には以下のように行った。すなわち、まず、アントラニル酸N-メトキシ-N-メチルアミド(5-1)(2.00g, 11.1mmol)と1-ナフチルブロマイド(5-2)(2.29g, 11.1mmol)を、脱水THF60mLに溶かした。次に、この溶液を-78℃に冷却し、その温度のまま攪拌しながら、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(13.8mL, 1.6M, 22.2mmol)を20分間かけて滴下した。滴下後、1N塩酸20mLを加え、酢酸エチル150mLで抽出し、水100mLでの洗浄処理を2回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。有機溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)を得た。収量は500mg、収率は18%であった。以下に、この1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)の機器分析データを示す。
【0078】
1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.97-7.93(m, 3H), 7.49-7.42(m, 4H), 7.28-7.20(m, 2H), 6.73 (d, J=7.5Hz, 1H), 6.52(bs, 1H), 6.43(t, J=7.5Hz, 3H).
【0079】
次に、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)(400mg, 1.6mmol)とアセトフェノン(400mg, 4.4mmol)にジフェニルフォスファイト(DPP)(2.5g, 10.0mmol)とm-クレゾール(1.6g, 14.8mmol)を加え、140℃で5時間攪拌した。反応終了後、室温に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液100mLと塩化メチレン100mLを加えた。塩化メチレンを分離回収し、水100mLでの洗浄処理を3回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4)を得た。収量は150mg、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)からの収率は28%であった。以下に、この2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4)の機器分析データを示す。
【0080】
2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.27(d, J= 8.5 Hz, 1H), 8.21(d, J=8.5 Hz, 2H), 7.97(t, J=8.5 Hz, 2H), 7.91s, 1H), 7.71 (t, J=8.5Hz, 1H), 7.61-7.32(m, 11H).
【0081】
さらに、4-ナフチル-2-フェニルキノリン(5-4)(150mg, 0.45mmol)の塩化メチレン溶液10mLにメチルトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸メチル)(82mg, 0.50mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール20mLを加え、過塩素酸ナトリウム(0.12g, 1.0mmol)を加え過塩素酸塩へと塩交換した。熱メタノールで再結晶を行い、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の過塩素酸塩を190mg得た。4-ナフチル-2-フェニルキノリン(5-4)からの収率は95%であった。以下に、キノリニウムイオン誘導体5過塩素酸塩の機器分析データを示す。
【0082】
キノリニウムイオン誘導体5過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 8.52(d, J=9.0Hz, 1H), 8.25(t, J=9.0Hz, 1H), 8.18(d, J=9.0Hz, 1H), 8.08(d, J=9.0Hz, 1H), 8.05(s, 1H), 7.82-7.69(m, 8H), 7.61(t, J=9.0Hz, 2H), 7.45(t, J=9.0Hz, 1H), 7.41(d, J=9.0Hz, 1H), 4.44(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 346(M+ Calcd for C20H16N 346.2). Anal. Calcd for C26H20ClNO4: C, 70.03; H, 4.52; N, 3.14. Found: C, 69.78; H, 4.39; N, 3.19.
【0083】
さらに、1-ナフチルブロマイドに代えてブロモベンゼンを用いる以外は前記スキーム2と同様にしてキノリニウムイオン誘導体4の過塩素酸塩を得た。以下に、キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩およびその中間体の機器分析データを示す。
【0084】
2,4-ジフェニルキノリン(キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩の中間体):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.26-8.18(m, 2H), 7.90(d, J=8.4Hz, 1H), 7.82(s, 1H), 7.73(t, J=8.4Hz, 1H), 7.57-7.43(m, 10H).
【0085】
キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 8.48(d, J=8.4Hz, 1H), 8.31-8.25(m, 2H), 7.98(t, J=8.4Hz, 1H), 7.95(s, 1H), 7.75-7.67(m, 10H), 4.36(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 270(M+ Calcd for C20H16N 270.1). Anal. Calcd for C22H18ClNO4: C, 66.75; H, 4.58; N, 3.54.
<実施例1〜5>
【0086】
Y型ゼオライト200mgを電気炉により200℃で8時間焼成した。これを前記キノリニウムイオン誘導体1すなわち3-(1-メシチル)キノリニウムイオン(Qu+-Mes)7.2mg(2.0×10-2mmol)のアセトニトリル200mL溶液(1.0×10-4M)中に浸漬させ、室温で12時間撹拌し、濾取した後、アセトニトリルで三回洗浄し、真空(減圧)下で乾燥させた。このようにして、本発明の無機有機複合物質を得ることができた(実施例1)。また、比較例として、前記キノリニウムイオン誘導体1に代えて下記式(X)で表される9-メシチル-10-メチルアクリジニウムイオン(Acr+-Mes)を用いる以外は同様にしてY型ゼオライトの浸漬、濾取、洗浄および乾燥を行った。
【0087】
【化13】

【0088】
図1に、実施例1(Qu+-Mes)と、比較例(Acr+-Mes)における前記アセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを、ゼオライト添加前と添加後で測定した結果をそれぞれ示す。図1(a)は、実施例1の結果であり、図1(b)は、比較例の結果である。同図において、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度を示す。図示の通り、実施例1では、ゼオライト添加後に吸収帯が大きく変化しており、本発明の無機有機複合物質の生成が確認された。この無機有機複合物質の構造は必ずしも明らかではないが、例えば、Y型ゼオライトのスーパーケージ内にQu+-Mesの分子が挿入されていると考えられる。また、前記キノリニウムイオン誘導体1(Qu+-Mes)に代えて前記キノリニウムイオン誘導体2〜5をそれぞれ用いても、同様に本発明の無機有機複合物質が得られた(それぞれ実施例2〜5とする)。これに対し、比較例では、ゼオライト添加前と添加後でスペクトルに全く変化がなかった。このことは、無機有機複合物質が全く生成しなかったことを示す。
【0089】
このように、キノリニウムイオン誘導体では無機有機複合物質が得られ、アクリジニウムイオン誘導体では得られない理由は、必ずしも明らかではないが、例えば、以下のように考えられる。すなわち、キノリニウムイオン誘導体では、電子受容部位(キノリニウム環)のサイズが約7Åと小さいため、Y型ゼオライトのスーパーケージ内に挿入されることが可能であるが、アクリジニウムイオン誘導体では、電子受容部位(アクリジニウム環)のサイズが大きすぎるため、挿入不可能と推測される。ただし、この説明は、推定可能な機構の一例であり、本発明を何ら限定しない。また、下記化学式中における数値も、理論計算等により導き出されるサイズの一例であり、本発明を何ら限定しない。
【化14】


【化15】

【0090】
さらに、実施例1(Qu+-Mes)および比較例(Acr+-Mes)において、ゼオライトの使用量をアセトニトリル1mLに対して0.50mgとし、電子供与体・受容体連結分子溶液の濃度を種々変化させる以外は前記と同様にして浸漬、濾取、洗浄および乾燥を行った。そして、ゼオライト添加前後の溶液の紫外可視吸収スペクトルにおける吸収帯の減少値から、ゼオライトのスーパーケージ10個に対するQu+-Mes分子数を決定した。図2のグラフに、その結果を示す。同図において、横軸は前記電子供与体・受容体連結分子溶液の濃度、縦軸は、ゼオライトのスーパーケージ10個に対する前記電子供与体・受容体連結分子(D-Aダイアド)の数である。図示の通り、Qu+-Mes(メシチルキノリニウムイオン)は、無機有機複合物質を形成した。ゼオライトのスーパーケージ10個に対するQu+-Mes分子数は、Qu+-Mes濃度に比例して増大し、最大2.2分子で飽和に達した。また、浸漬、濾取、洗浄および乾燥済の無機有機複合物質について、固体の拡散反射分光法により紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、ゼオライトのスーパーケージ10個に対するQu+-Mes分子数の増大に応じて吸光度も増加することが確認された。これに対し、Acr+-Mesは無機有機複合物質を形成しなかった。
【0091】
さらに、実施例1(Qu+-Mes)の無機有機複合物質(濾取、洗浄および乾燥済)1.0mgをアセトニトリル3.8mL中に加えて懸濁させ、拡散反射分光法により紫外可視吸収スペクトルを測定した。図3に、その結果を、Qu+-Mesアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルと併せて示す。同図において、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度を示す。図中、実線で示した「アセトニトリル中ゼオライト懸濁」は、前記拡散反射分光法により測定した無機有機複合物質の紫外可視吸収スペクトルである。点線で示した「アセトニトリル中」は、Qu+-Mesの5.00×10−5mol/Lアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルである。図示の通り、無機有機複合物質の拡散反射分光スペクトルにおける吸収帯は、Qu+-Mes溶液の吸収帯とよく一致した。これは、実施例1の無機有機複合物質がアセトニトリル溶液中においても安定にQu+-Mes分子を包含していることを示す。このことは、アセトニトリル溶液中において例えば酸化剤、還元剤、光触媒等として用いる際に有利である。
【0092】
なお、図3の測定に用いた無機有機複合物質は、前記キノリニウムイオン誘導体1すなわち3-(1-メシチル)キノリニウムイオン(Qu+-Mes)の1.25×10−4mol/Lアセトニトリル溶液を用い、ゼオライトの使用量をアセトニトリル1mLに対して0.50mgとして前記と同様に浸漬、濾取、洗浄および乾燥を行い、製造した。ゼオライトのスーパーケージ10個に対するQu+-Mes分子数は、前記と同様、製造工程において、ゼオライト添加前後の溶液の紫外可視吸収スペクトルにおける吸収帯の減少値から決定したところ、2.2個であった。
【0093】
さらに、図3の測定に用いたものと同じ無機有機複合物質(濾取、洗浄および乾燥済)を、溶媒に浸漬させずにそのまま、固体の拡散反射分光法を用いて紫外可視吸収スペクトルを測定した。図4に、その結果を示す。同図において、横軸は波長であり、縦軸は吸光度である。図示の通り、実施例1の無機有機複合物質について固体の拡散反射分光法により測定した吸収極大波長は、アセトニトリル中(図3)とほぼ一致した。この測定結果は、実施例1の無機有機複合物質がアセトニトリル溶液中で安定であることをさらに支持する。
【0094】
実施例1〜5の無機有機複合物質をアセトニトリル等の溶媒中で光励起すると、キノリニウムイオン誘導体1〜5単独の溶液と比較して、はるかに長寿命の電荷分離状態(電子移動状態)の生成が観測された。また、キノリニウムイオン誘導体1〜5が可視光領域に吸収帯を有するため、これを含む実施例1〜5の無機有機複合物質は、可視光励起が可能であった。さらに、実施例1〜5の無機有機複合物質は、アセトニトリル等の溶媒中で光励起することにより、酸化剤、還元剤または光触媒として用いることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明した通り、本発明の無機有機複合物質によれば、長寿命の電荷分離状態が得られる。このため、本発明の無機有機複合物質は、電子供与体・受容体連結分子の電荷分離状態の特性を十分に利用することが可能であり、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、有機EL素子等の種々の製品に使用することができる。例えば、本発明の無機有機複合物質を白金触媒と組み合わせることで、水素発生光触媒とすることも可能である。さらに、ゼオライトに助触媒として金属や金属酸化物微粒子を担持させることで、電子供与体・受容体連結分子の電荷分離状態の酸化還元力を利用して、水素発生や水の分解等の様々な光触媒反応を行うこともできる。さらに、本発明の光触媒は、電子供与体・受容体連結分子がゼオライトに固定化されて複合物質を形成しているため、電子供与体・受容体連結分子を単独で用いる場合と異なり、光触媒として使用後に反応溶液との分離回収が容易にできるので、リサイクル可能な光触媒として利用することもできる。また、本発明の電池は、本発明の無機有機複合物質を色素として含むことで、色素増感型太陽電池として用いることもできる。さらに、本発明の無機有機複合物質の用途は、これらに限定されず、あらゆる用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、電子供与体・受容体連結分子溶液の紫外可視吸収スペクトルを、ゼオライト添加前と添加後で測定した結果をそれぞれ示す。図1(a)は、実施例の結果であり、図1(b)は、比較例の結果である。
【図2】図2は、実施例および比較例において、ゼオライトのスーパーケージ10個に対する前記電子供与体・受容体連結分子の数を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例の無機有機複合物質において、アセトニトリル中懸濁状態の拡散反射分光法で測定した紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、実施例の無機有機複合物質において固体の拡散反射分光法で測定した紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩と、ゼオライトとから形成された無機有機複合物質。
【化1】

前記式(I)中、
R1は、水素原子または任意の置換基である。
Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
【請求項2】
前記式(I)中、R1が、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である請求項1記載の無機有機複合物質。
【請求項3】
前記式(I)中、R1が、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、ベンジル基、末端にカルボキシル基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミノ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖である請求項1記載の無機有機複合物質。
【請求項4】
前記式(I)中、Ar1〜Ar3が、それぞれ、水素原子、アルキル基、または芳香環であり、前記芳香環は環上にさらに1または複数の置換基を有していても良く、前記置換基は複数の場合は同一でも異なっていても良い、請求項1〜3のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項5】
Ar1〜Ar3において、前記アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である請求項4記載の無機有機複合物質。
【請求項6】
Ar1〜Ar3において、前記芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環またはピレン環である請求項4または5記載の無機有機複合物質。
【請求項7】
Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルである請求項4〜6のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項8】
Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルである請求項4〜6のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項9】
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体が、下記式1〜5のいずれかで表されるキノリニウムイオン誘導体である請求項1記載の無機有機複合物質。
【化2】

【請求項10】
前記ゼオライトが、Y型、A型、X型、L型、ベータ型、フェリエライト型、モルデナイト型、ZSM−5型、TS−1型、またはMCM−22型のゼオライトである請求項1〜9のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項11】
前記ゼオライトが、Y型ゼオライトである請求項1〜9のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項12】
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩が、前記ゼオライトの細孔内に挿入された構造を有する請求項1〜11のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項13】
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩が、前記ゼオライトのスーパーケージ内に挿入された構造を有する請求項1〜11のいずれかに記載の無機有機複合物質。
【請求項14】
請求項1記載の無機有機複合物質を製造する方法であり、
前記ゼオライトを、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩の溶液中に浸漬させる浸漬工程を含む製造方法。
【請求項15】
前記溶液において、溶媒が、ニトリル、ハロゲン化溶媒、エーテル、アミド、スルホキシド、ケトン、アルコール、および水からなる群から選択される少なくとも一種類である請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記溶液において、溶媒が、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、アセトン、メタノール、および水からなる群から選択される少なくとも一種類である請求項14記載の製造方法。
【請求項17】
前記溶液において、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体の分子の濃度が1.25×10−5〜1.50×10−4mol/Lである請求項14〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
前記溶液において、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体の分子の物質量(モル数)が、前記ゼオライト1g当り2.5×10−5〜3.0×10−4molである請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
前記溶液を撹拌しながら前記浸漬工程を行う請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
前記浸漬工程における浸漬時間が1〜48時間である請求項14〜19のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
前記浸漬工程において、前記溶液の温度が0〜45℃である請求項14〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
前記浸漬工程に先立ち、前記ゼオライトを焼成する前処理工程をさらに含む請求項14〜21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
前記浸漬工程の後、前記無機有機複合物質を濾取し、洗浄し、乾燥する単離工程をさらに含む請求項14〜22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜13のいずれかに記載の無機有機複合物質を含み、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、または有機EL素子として用いられる製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−222471(P2008−222471A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60929(P2007−60929)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】