説明

無機材料によるポリマー系固体デバイスのカプセル封入

【課題】ポリマーLEDの保存中およびストレス中でのデバイス効率(および光出力)が急速に減衰を防止すること。
【解決手段】陰極と陽極の間に挟まれた活性発光ポリマーの層を含む発光デバイスにおいて、環境による攻撃からデバイスを保護する、低温塗布無機材料のカプセル形成層を含むことを特徴とするデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電子デバイスをカプセル封入する方法およびカプセル封入されたデバイスに関する。より詳細には、本発明はカプセル封入された有機ポリマー発光デバイスに関する。本発明では、環境中の湿気や酸素がこのようなデバイスの作製に使用される材料と反応することを防止するために、デバイスをカプセル封入することが主として記述されている。
【背景技術】
【0002】
共役有機ポリマー層で作製されたダイオード、特に発光ダイオードは、表示技術に用いられる可能性のために注目されてきた(非特許文献1、非特許文献2)。これらの参考文献、ならびに、本明細書に引用されている全ての追加的な論文、特許および特許出願が、参考のために挿入されている。ポリマー発光ダイオードの活性層として用いられる有望な材料には、ポリ(フェニレンビニレン)(「PPV」)、および例えば約2.1eVのエネルギーギャップEgを有する半導体ポリマー、ポリ(2−メチルオキシ−5−(2′−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(「MEH−PPV」)のようなPPVの可溶性誘導体がある。この材料は、特許文献1にもっと詳細に記載されている。本出願において有用と記載される他の材料は、約2.2eVのエネルギーギャップEgを有する半導体ポリマー、ポリ(2,5−ビス(コレスタノキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(「BCHA−PPV」)である。この材料は、特許文献2にもっと詳細に記載されている。他の適当な材料には、例えばOCIC10−PPV、非特許文献3によって記載されたポリ(3−アルキルチオフェン)および非特許文献4によって記載された関連誘導体、非特許文献5によって記載されたポリ(パラフェニレン)および非特許文献6によって記載されたその可溶性誘導体、非特許文献7によって記載されたポリキノキサリンが含まれる。非共役ホストポリマー中の共役半導体ポリマーのブレンドも、非特許文献8によって記載されるようにポリマーLED中の活性層として有用である。2種以上の共役ポリマーを含むブレンドも、非特許文献9によって記載されるように有用である。一般に、ポリマーLEDに活性層として使用される材料には、半導体共役ポリマー、より詳細にはホトルミネセンスを示す半導体共役ポリマー、更により詳細にはホトルミネセンスを示し、かつ可溶で、溶液から均一な薄膜に処理し得る半導体共役ポリマーが含まれる。
【0003】
有機ポリマー系LEDの分野では、陽極として相対的に高い仕事関数金属を使用することが、当技術分野で教示されてきた。即ち、前記の高仕事関数陽極は、半導体発光ポリマーの通常なら満たされているπ−バンドにホールを注入するのに役立つ。相対的に低い仕事関数金属は陰極材料として好ましい。即ち、前記の低仕事関数陰極は、半導体発光ポリマーの通常なら空のπ*−バンドに電子を注入するのに役立つ。陽極に注入されたホールと陰極に注入された電子は、活性層内で放射再結合を起こし、光が発せられる。適当な電極の規準は、非特許文献10によって詳細に記載されている。
【0004】
陽極材料として使用される適当な相対的に高い仕事関数金属は、インジウム/酸化錫の透明導電性薄膜である(非特許文献11;非特許文献12。あるいは、非特許文献13、非特許文献14や特許文献3、非特許文献15、非特許文献16および非特許文献17によって示されるように、ポリアニリン(「PANI」)のような導電性ポリマーの薄膜を使用することができる。インジウム/酸化錫薄膜および導電性鮮緑色塩形態のポリアニリン薄膜は、透明電極としての両者によって、LEDからの発光が有用な水準でデバイスから放射することができるので、好ましいものである。
【0005】
陰極材料として使用される適当な相対的に低い仕事関数金属は、カルシウム、バリウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属およびイッテルビウムのような希土類金属である。例えば、銀中マグネシウムの合金およびアルミニウム中リチウムの合金のような低仕事関数金属の合金もまた、従来技術において公知である(特許文献4、特許文献5および特許文献6)。電子注入陰極層の厚さは、従来技術(特許文献7、特許文献8、特許文献9および非特許文献18)で示されるように、200〜5000Åにわたっていた。陰極層に対して連続フィルム(完全な遮蔽)を形成するためには、200〜500オングストローム単位(Å)の下限が必要である(特許文献10、非特許文献19、非特許文献20)。充分な遮蔽の他に、より厚い陰極層は、自己カプセル形成によって酸素や水蒸気をデバイスの化学活性部分から遠ざけると考えられていた。
【0006】
アルカリ土類金属、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの超薄層を含む電子注入陰極が、高輝度で高効率のポリマー発光ダイオードに対して記載されてきた。200Åを超える厚さのフィルムとして同じ金属(と他の低仕事関数金属)から作製された従来の陰極と比べて、100Å未満(例えば15Åから100Å)の厚さを有する超薄層アルカリ土類金属を含む陰極は、ポリマー発光ダイオードに安定性や動作寿命の有意の改善をもたらす(Y.Cao and G.Yu、特許文献11)。
【0007】
陰極から電子を効果的に注入し、デバイス性能を充分なものとするには低仕事関数電極の使用が必要であるが、不運なことに、カルシウム、バリウム、ストロンチウム等の低仕事関数金属は普通不安定であり、室温で酸素および/または水蒸気と容易に反応し、高温では一層激しく反応する。
【0008】
ポリマーLEDの構造が改善されてきたが、引き続き問題となるのは、保存中およびストレス中の、特に高温でのデバイス効率(および光出力)が急速に減衰することである。したがって、このようなデバイスのカプセル封入法であって、水蒸気や酸素がデバイス内に拡散し、その結果、有用な寿命を制限するのを防止するに充分な封入法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5189136号
【特許文献2】米国特許出願第07/800555号
【特許文献3】米国特許出願第08/205519号
【特許文献4】米国特許第5047687号
【特許文献5】米国特許第5059862号
【特許文献6】米国特許第5408109号
【特許文献7】米国特許第5151629号
【特許文献8】米国特許第5247190号
【特許文献9】米国特許第5317169号
【特許文献10】米国特許第5512654号
【特許文献11】米国特許出願第08/872657号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.H.Burroughs,D.D.C.Bradley,A.R.Brown,R.N.Marks,K.Mackay,R.H.Friend,P.L.Burns,and A.B.Holmes,Nature 347,539(1990)
【非特許文献2】D.Braun and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.58,1982(1991)
【非特許文献3】D.Braun,G.Gustafsson,D.McBranch and A.J.Heeger,J.Appl.Phys.72,564(1992)
【非特許文献4】M.Berggren,O.Inganas,G.Gustafsson,J.Rasmusson,M.R.Andersson,T.Hjertberg and O.Wennerstrom
【非特許文献5】G.Grem,G.Leditzky,B.Ullrich and G.Leising,Adv.Mater.4,36(1992)
【非特許文献6】Macromolecules,26,1188(1993)(Z.Yang,I.Sokolik,F.E.Karasz)
【非特許文献7】I.D.Parker,J.Appl.Phys,Appl.Phys.Lett.65,1272(1994)
【非特許文献8】C.Zhang,H.von Seggern,K.Pakbaz,B.Kraabel,H.W.Schmidt and A.J.Heeger,Synth.Met.,62,35(1994)
【非特許文献9】H.Nishino,G.Yu,T−A Chen,R.D.Rieke and A.J.Heeger,Synth.Met.,48,243(1995)
【非特許文献10】I.D.Parker,J.Appl.Phys,75,1656(1994)
【非特許文献11】H.Burroughs,D.D.C.Bradley,A.R.Brown,R.N.Marks,K.Mackay,R.H.Friend,P.L.Burns,and A.B.Holmes,Nature 347,539(1990)
【非特許文献12】D.Braun and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.58,1982(1991)
【非特許文献13】G.Gustafsson,Y.Cao,G.M.Treacy,F.Klavetter,N.Colaneri,and A.J.Heeger,Nature,357,477(1992)
【非特許文献14】Y.Yang and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett 64,1245(1994)
【非特許文献15】Y.Yang,E.Westerweele,C.Zhang.P.Smith and A.J.Heeger,J.Appl.Phys.77,694(1995)
【非特許文献16】J.Gao,A.J.Heeger,J.Y.Lee and C.Y.Kim,Synth.Met.,82221(1996)
【非特許文献17】Y.Cao,G.Yu,C.Zhang,R.Menon and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.70,3191(1997)
【非特許文献18】J.Kido,H.Shionoya,K.Nagai,Appl.Phys.Lett.,67(1995)2281
【非特許文献19】J.C.Scott,J.H.Kaufman,P.J.Brock,R.DiPietro,J.Salem and J.A.Goitia,J.Appl.Phys.,79(1996)2745、
【非特許文献20】I.D.Parker,H.H.Kim,Appl.Phys.Lett.,64(1994)1774
【発明の概要】
【0011】
活性層として有機ポリマー材料で作製された発光デバイスは、一般に、例えばカルシウム、バリウム、ストロンチウム等の反応性低仕事関数金属を含む。これらのデバイスの普通の使用中に、湿気や程度は小さいが酸素もこれらの金属と接触し、反応して水酸化物および/または酸化物を形成することができる。酸素に曝すと、特に光存在下では、発光性半導体ポリマーの光酸化分解も起こり得る。このような反応は、デバイスの発光性の性能をかなり低下させると思われる。環境大気に長期間曝すと、デバイスからの光出力がかなり低下する。これらの反応によって、これらのデバイスの発光性が完全に失われ、光源として無用となることがしばしばある。電子デバイスを気密にカプセル封入する公知の方法の多くでは、カプセル封入工程中にデバイスを300℃より高い温度に加熱することが必要である。大部分のポリマー系発光デバイスは、このような高温とは相容れない。
【0012】
今や我々は、低処理温度でポリマー発光デバイスをカプセル封入する手法を見出した。このカプセル封入方法によって、デバイスと有害な湿気や酸素を含んだ環境大気との間に気密封止が実現する。
【0013】
この発明のカプセル封入法は、デバイスのカプセル封入によって、デバイスの全厚みが有意に増加しない方法である。
【0014】
所望であれば、当技術分野に公知の方法より少ない個々の工程段階を用いて、本法を実施することができる。
【0015】
本発明によれば、デバイス構造中に存在する反応性陰極上に、セラミック、例えば窒化珪素や酸化珪素のような耐火性無機材料を含む薄膜を低温で堆積させることによって、デバイス全体を保護する。好ましい一実施形態では、耐火性無機材料層を堆積させる前に、例えばアルミニウムのような非反応性金属の薄膜を低温で反応性陰極金属上に堆積させる。この層の次に、セラミック、例えば窒化珪素や酸化珪素のような耐火性無機材料を含む薄膜を、再び低温で堆積させる。この二層構造が好ましい。これらの層を約300℃未満のような低温で堆積させると、普通は微小なピンホールが含まれる。もし金属の単一層だけをカプセル形成層として用いるならば、湿気および酸素がこれらのピンホールに侵入し、デバイスの性能を害することになろう。しかし、ピンホールが両層の全く同じ場所に発生する確率は取るに足らないので、非反応性金属層とそれに耐火性薄膜の2層を使用することで、湿気や酸素がデバイス中の反応性材料に触れることが防止される。100℃未満の温度でこれらの層を堆積させても、このことが当てはまる。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態では、デバイスを横断する横行を形成するように、非反応性金属層をパターン形成する。この幾何学的配列は、横行と縦列との交点に画素を形成することによって、マトリックス表示装置を作製するためにしばしば使用される。この実施形態では、有害な湿気や酸素が、非反応性金属の横行の縁にあるデバイスの反応性構成部品に達する可能性がある。本発明のこの実施形態では、次に堆積されるセラミック膜によって、湿気や酸素が反応性金属に達することが防止される。
【0017】
他の好ましい実施形態では、非反応性金属層およびセラミック薄膜層に続いて、薄いふたがデバイスの周囲にあるエポキシのフレームによって固定される。このふたによって、環境中の湿気や酸素からの保護が更に追加される。このふたは、湿気や酸素に対する充分な障壁となる任意の材料から作製し得る。ふたの例には、プラスチック、ガラス、セラミックスおよび他の非反応性金属がある。
【0018】
本発明の更に他の好ましい実施形態では、デバイスの光活性領域全体のようなかなりの領域にわたってエポキシを分散させることによって、ふたを固定する。
【0019】
本発明の更に他の好ましい実施形態では、セラミック薄膜をフレームの形にパターン形成する。薄膜金属をこのセラミックフレームの上面に堆積させ、同じフレーム形にパターン形成する。同形の金属薄膜をカバープレート上に堆積させ、パターン形成する。金属はんだを用いて、カバープレートをセラミック薄膜フレームに取付ける。この構造では、はんだおよびセラミック薄膜フレームによって、デバイスが密封される。
【0020】
本発明の更に他の好ましい実施形態では、セラミック薄膜をデバイスの全活性領域に堆積させる。薄膜金属を堆積させ、フレーム形にパターン形成する。同様の金属フレームを遮蔽ぶた上に形成する。金属はんだを用いて、カバープレートをセラミック薄膜フレームに取付ける。
【図面の簡単な説明】
【0021】
付随する図面を参考としながら、本発明を更に説明する。
【図1】本発明に従って保護されるポリマー系電子デバイスの一実施形態の概略的横断面図である。
【図2】本発明に従った電子デバイスの他の実施形態の概略的横断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態の概略的横断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態の概略的横断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態の概略的横断面図である。
【図6】環境に曝したことによるデバイス性能の劣化を、活発に発光するデバイスの面積量によって表わすための、製作直後および使用の2期間後のポリマー発光表示装置の3枚の概略的平面図である。
【図7】図2に示した実施形態の構成において、本発明の方法を用いて保護したデバイスの概略図である。図2に示した表示装置を50℃の温度、95%の湿度に288時間曝した。この表示装置が図6に示したディバイスよりはるかに苛酷な条件に曝されたにもかかわらず、表示装置中の画素の発光領域にサイズ減少が有意に観察されないことに注目されたい。この図の表示装置には、発光領域中への侵入部として現れた少数の欠陥が示されていることにも注目されたい。表示装置を高湿度に曝すと、これらの「黒点」は次第に広がる。これらの「黒点」はこのセラミック層内の欠陥による。これらの欠陥のために、湿気および程度は少ないが酸素も層内にゆっくり拡散し、陰極金属中に含まれている反応性金属と反応する。
【図8】図4に示し、下記の実施例4に記載する表示装置の透視図である。
【図9】図8に示したデバイスの作用領域の概略図である。この特定の実施形態は、上述の図4にも示され、下記の実施例4にも記載される。この場合では、デバイスを50℃の温度、95%の湿度に900時間曝した。高湿度に長期間曝しても、この方法でパッケージしたデバイスでは、画素の発光領域に縮小が見られないことに注目されたい。その上、この方法でパッケージしたデバイスでは、他の欠陥や、「黒点」のような発光領域への侵入部も認められないことに注目されたい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には本発明の一実施形態が示されている。図1には、透明な陽極層16が堆積した基板18からなる発光デバイスの横断面が示されている。陽極16に続いて、1層または複数層のポリマー層14および陰極金属層12がある。図1に示した実施形態では、デバイスはセラミック薄膜保護層10で覆われており、その保護層は感受性陰極金属層およびポリマー層を保護している。
【0023】
図2には本発明の他の実施形態が示されている。図2には、基板34と、それに続く陽極30、ポリマー層28および陰極26からなるデバイスの横断面が示されている。セラミック薄膜保護層24がデバイスを保護している。保護層24は、窒素またはアルゴンのような不活性ガス21で満たされた空洞中に封じ込められている。カバープレート22およびエポキシ20の周縁封止材が空洞を形成する。
【0024】
図3には、本発明の更に他の実施形態が示されている。図3には、基板52と、それに続く陽極50、光活性ポリマー層48および陰極46からなるデバイスの横断面が示されている。デバイスはセラミック薄膜保護層44によって保護されている。保護層44は、エポキシ20の層と、それに続くカバープレート42によって覆われている。
【0025】
図4には、本発明の更に他の実施形態が示されている。図4には、基板76と、それに続く陽極74、活性ポリマー層72および陰極70からなるデバイスの横断面が示されている。本発明のこの実施形態では、デバイスの空気感受性構成部品の回りにフレームを形成するために、セラミック薄膜68が使用されている。このフレーム68の上面に、薄膜金属層64が、セラミック薄膜68と同じフレーム形に形成される。カバープレート66上に、他の金属層60が、セラミック薄膜68とやはり同じ形に形成される。カバープレート66が、デバイスの周囲全体で金属はんだ62を用いてデバイスに取付けられる。はんだ付け工程を促進するために、金属層60がカバープレート上に形成される。この金属層60の形は、デバイス上の金属層64およびセラミック薄膜フレーム68の形に合致している。はんだ付けは不活性雰囲気中で行われ、その結果、形成される空洞は窒素またはアルゴンのような不活性ガス78で満たされる。
【0026】
図5には、本発明の更に他の実施形態が示されている。図5には、基板96と、それに続く陽極94、ポリマー層92および陰極90からなるデバイスの横断面が示されている。本発明のこの実施形態では、セラミック薄膜88がデバイスを保護する第一障壁として使用されている。このセラミック層88の上面に、薄膜金属層84が同じフレーム形に形成される。カバープレート86上には、他の金属層80が第1金属フレーム84と同形に形成される。カバープレート86は、デバイスの周囲全体で金属はんだ82を用いてデバイスに取付けられる。はんだ付け工程を促進するために、金属層80がカバープレート上に形成される。金属層80の形は、デバイス上の金属層84の形に合致する。はんだ付けは不活性雰囲気中で行われ、その結果、形成される空洞は窒素またはアルゴンのような不活性ガス98で満たされる。
【0027】
図6にはポリマー発光表示装置が示されている。同じ表示装置が3段階に示されており、図6aには製作直後のデバイスが示されている。発光領域は正方形領域である。図6bには、約25℃、30〜40%湿度の環境大気に24時間の期間曝した同一のデバイスが示されている。図6cには、同じ条件の環境大気に48時間曝した後の同じデバイスが示されている。画素の発光領域が24時間後にかなり減少した様子に注目されたい。環境大気に曝したほんの48時間後に、発光領域がほぼ完全に消失した様子に更に注目されたい。図6は、ポリマー発光表示装置のための適当なパッケージ技術の重要性を明らかに強調している。
【0028】
図7には、図2に示した構成にパッケージしたデバイスが示されている。図2に示した表示装置を、50℃の温度、95%の湿度に288時間曝した。図6に示したデバイスよりはるかに苛酷な条件に曝したにも関わらず、この表示装置では画素の発光領域のサイズに、有意な減少が認められないことに注目されたい。この図の表示装置では、発光領域への非発光性侵入部として現れた少数の欠陥が示されていることにも注目されたい。表示装置が高湿度に曝されると、これらの「黒点(black−spot)」は次第に広がる。これらの「黒点」は、このセラミック層内の欠陥による。これらの欠陥のために、湿気や程度は小さいが酸素も層内にゆっくり拡散し、陰極金属中に含まれる反応性金属と反応する。
【0029】
図8には、図4に示し、下記の実施例4に記載する表示装置の透視図が示されている。
【0030】
図9には、図8に示したデバイスの活性領域の2個の拡大図が示されている。この特定の実施形態は、上記の図4にも示され、下記の実施例4にも記載される。この場合デバイスを50℃の温度、95%の湿度に900時間曝した。発光領域は正方形で、周辺領域は非発光性である。高湿度に長時間曝しても、正方形の形および侵入部がないことから明らかなように、この方法でパッケージしたデバイスには画素の発光領域に減少が見られないことに注目されたい。更に、この方法でパッケージしたデバイスには「黒点」のような他の欠陥も見られないことに注目されたい。
【0031】
本発明によれば、環境中の湿気や酸素が、構成部品が電気的、化学的に活性であるデバイスの電極およびポリマー層と接触することを防止するために、セラミック薄膜が使用される。その無機耐火材料は、1種または複数種の酸化物および/または窒化物で構成される。これらの材料は、普通IIIb族およびIVb族元素の完全および部分的な酸化物および窒化物から選択することができる。これらにはホウ素、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、タンタルおよび鉛の酸化物および窒化物が含まれる。耐火性の酸化物および窒化物を形成するためには、シリコン、アルミニウム、インジウムおよび錫が好ましい金属であり、シリコンおよびアルミニウム、特にシリコンが最も好ましい。
【0032】
無機耐火層の厚さは、約0.025μmから数(10)ミクロン、好ましくは0.05から5ミクロンである。
【0033】
この構造の一実施形態の横断面が図1に示されている。セラミック層は、湿気や酸素に対する気密な障壁を築くに充分な完全性を有していなければならない。セラミック材料、例えば窒化シリコン(Sixy)、一酸化シリコン(SiO)または二酸化シリコン(SiO2)のような無機耐火材料は、充分な密度の薄膜を形成することができれば、必要な障壁性を示すことができる。しかし、過去にこの種の材料の高密度膜を得るためには、典型的には400℃を超える高温で膜を堆積させねばならない。最近、膜堆積中に高密度プラズマを用いて、150℃未満の温度で高密度膜が示された。この堆積温度の低下によって、ポリマー発光デバイス中の保護障壁として、セラミック薄膜の使用を検討することが可能となった。このような低い堆積温度では、微小なピンホールを全く含んでいない薄膜を得ることは通常は不可能である。しかし、1cm2当たり約10個未満のピンホール密度を有するセラミック膜を作製することは可能である。このようなピンホール密度ではポリマー発光デバイスを気密封止することができないので、これらのセラミック薄膜を、カルシウム、バリウム、ストロンチウム等の低仕事関数金属の超薄層(約1〜100nm)と、それに続くアルミニウム、銅、銀等の非反応性金属のより厚い層(>100nm)、例えば100から10000nm、とりわけ100から1000nmの層からなる陰極金属構造と組合せることによって、ピンホールの超低密度(<<0.1ピンホール/cm2)を実現することが可能であることは、驚くべきことであり、意外なことである。セラミック層および陰極金属膜は、共に1〜10ピンホール/cm2の範囲のピンホール密度を有するが、これらのピンホールの直径は一般に<<10μmと極めて小さい。したがって、これらのピンホールが直接相互の上面に生ずる確率は極めて小さく、重ね合せ全体では0.1ピンホール/cm2よりはるかに小さいピンホール密度となる。
【0034】
保護層は低温堆積法を用いて形成される。低温とは、350℃未満のような、約400℃未満の基板温度で各層を堆積させる方法を指す。反応スパッタリングを含むスパッタリングによって、基板が充分に冷却されていれば、これは実現される。プラズマ化学蒸着は、高密度膜が環境温度より少し高い温度(40℃)から300℃未満の温度で得られるので、好ましい方法である。これらの方法は当技術分野で公知である。
【0035】
図6には、高温高湿度試験に曝す前後のポリマー発光画素のマトリックス配列の例が示されている。セラミック薄膜のない画素が湿気により次第に攻撃され、遂にはこのデバイスから光出力が完全に消失する様子に注目されたい。セラミック薄膜障壁を有する同様の試料も、比較のために図7に示されている。セラミック薄膜障壁によって、この試料は同一の試験条件下で全く影響を受けない。
【0036】
図2には、上記と同じ構造からなり、セラミック、ガラスまたは金属材料から作られたカバープレート22からなる障壁が追加されている本発明の他の実施形態が示されている。このふたは、エポキシ20の周縁封止材を介してデバイスに取付けられている。カバープレートおよびエポキシ封止材の目的は、湿気および酸素に対する追加障壁を提供することによって、セラミック薄膜保護層に対する要件を減少させることである。
【0037】
図3には、デバイスとふたの間の領域をエポキシで完全に満たすことによって、ふたが取付けられる本発明の更に他の実施形態が示されている。
【0038】
図4には本発明の更に他の実施形態が示されている。この実施形態では、ふたが金属はんだを用いてデバイスに取付けられている。ふたおよびはんだによって、この実施形態で気密封止が実現される。セラミック薄膜は、陽極と陰極リードとはんだ封止材の間の短絡を防止するように、電気絶縁をもたらす。この実施形態では、セラミックは図4および図8に示されるフレームの形に構築された。この実施形態では、温度感受性のポリマー材料を塗布する前にセラミック層を堆積することができ、したがってより広範囲の処理温度が利用できる。
【0039】
図5には本発明の更に他の実施形態が示されている。この実施形態では、ふたが金属はんだを用いてデバイスに取付けられている。セラミック薄膜は、陽極と陰極リードとはんだ封止材の間の短絡を防止するように、電気絶縁をもたらす。この実施形態では、はんだ封止材およびカバープレートが一次保護を提供し、セラミック薄膜がデバイスを保護する二次障壁を提供する。
【0040】
本発明に記述した方法でカプセル封入したときの、ポリマーLEDの安定性と寿命の顕著な改善が実施例に記録されている。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
この実施例では、画素の配列(30×60)からなるポリマー発光表示装置を作製した。表示装置の作製には数段階が必要であった。先ず、酸化インジウム錫(ITO)からなる陽極層を、ガラス基板上に列にパターン形成した。この実施例では60列を形成した。次いでデバイス全体を発光ポリマー材料で被覆した。その例にはOC1C10−PPV、MEH−PPVおよび関連する可溶性PPV誘動体が含まれる。次に、低仕事関数金属の薄層からなる陰極金属を堆積させ、続いてアルミニウム層を堆積させた(アルミニウム層は、単にもっと反応性の高いCa層を保護するために追加された)。陰極層を、行を形成するようにパターン形成した。前記の行を、下方にある陽極の列と直交するように配向させた。この実施例では30行を形成した。こうして列−行の各交点に発光画素を形成した。したがって、この実施例の表示装置は1800画素から構成された。環境大気中の酸素および湿気が陰極中の低仕事関数金属と反応することを防止するために、デバイス全体を窒化シリコンの薄層(約1μm)で被覆した。プラズマ化学蒸着(PECVD)を使用して被覆を行った。高密度プラズマを利用することにより、この堆積をほんの85℃の温度の表示装置で実現した。表示装置をこの相対的に低い温度に曝したために、有意な損傷が発生せずに、低ピンホール密度の窒化シリコン薄膜が形成された。この窒化シリコン薄膜は、アルミニウム保護層と共にほぼ気密な封止を形成し、環境大気中の酸素および湿気がアルミニウム層下の反応性金属に達することを防止する。この実施例に記述したデバイスの横断面が図1に示されている。図6には、高湿度に曝したときの未保護デバイス中での画素の分解が示されている。図7には、この実施例に記述したように密封したデバイスが示されている。窒化シリコン被覆デバイス中の発光画素の水平方向縁部に、有意な分解が見られないことに注目されたい。
【0042】
(実施例2)
この実施例では、ポリマー発光性表示装置を実施例1に記載したように作製した。窒化シリコン層の堆積後、第2のふたを塗布した。このふたは薄い(0.7mm)ガラス板からなっていた。エポキシの周縁封止材を用いて、このふたをデバイスに取付けた。エポキシ封止材を、窒化シリコン層の周縁部の外側に配置した。その密閉を不活性ガス環境、即ちアルゴンガス(代わりに、窒素も使用された。)を含んだ制御雰囲気ドライボックス中で行った。この二次的な密閉の目的は、環境大気中の湿気が表示装置の陰極中の反応性低仕事関数金属に到達する所要時間を増加させることにより、デバイスの寿命を更に増加させることである。環境大気中の湿気は先ずエポキシ封止材に侵入し、次いで窒化シリコン層中のピンホールまたは欠陥の中を拡散するにちがいない。この型のデバイスの横断面は図2に示されている。
【0043】
(実施例3)
この実施例では、ポリマー発光性表示装置を実施例1に記載したように作製した。窒化シリコン層の堆積後、第2のふたを塗布した。このふたは薄い(0.7mm)ガラス板からなっていた。エポキシの均一分布層を用いて、そのふたをデバイスに取付けた。エポキシ封止材を、窒化シリコン層の周縁部の外側に配置した。その密閉を不活性ガス環境、即ちアルゴンガス(代わりに、窒素も使用された。)を含んだ制御雰囲気ドライボックス中で行った。この二次的な密閉の目的は、環境大気中の湿気が表示装置の陰極中の反応性低仕事関数金属に到達する所要時間を増加させることにより、デバイスの寿命を更に増加させることである。環境大気中の湿気は先ずエポキシ封止材に侵入し、次いで窒化シリコン層中のピンホールまたは欠陥の中を拡散するにちがいない。この型のデバイスの横断面は図3に示されている。
【0044】
(実施例4)
この実施例は、実施例1〜3に記載したデバイスに類似したポリマー発光性表示装置に関する。窒化シリコン堆積中のプロセスウィンドをより広くするために、プロセス順序を変更した。この実施例では、陽極列を図1のように形成した。陽極をパターン形成した後、窒化シリコンの薄層を堆積させた。表示装置の活性領域の回りにフレームを形成するように、窒化シリコン層を構築した。次いで金属の薄層を窒化シリコンフレームの上面に堆積させた。次ぎに、発光ポリマー層を堆積させ、続いて上記の実施例1に記載したように、横行にパターン形成した陰極を堆積させた。合致する金属フレームを有する、離れたガラスぶたを作製し、低融点はんだを用いて表示装置に取付けた。この実施例では、ガラスぶたおよび金属−はんだフレームが密封を実現した。窒化シリコン層は電気絶縁をもたらし、それによって、はんだが陽極および陰極線を短絡させることが防止された。このデバイスの横断面は図4に示されている。このデバイスの写真は図8に示されている。高湿度条件に大量に曝した後のデバイスの写真は、図9に示されている。黒点が全くないこと、および画素の縁で発光の減少が認められないことに注目されたい。
【0045】
(実施例5)
この実施例では、上記の実施例1に記載したようにポリマー発光性表示装置を構築した。窒化シリコン堆積の後、窒化シリコン層の周縁に金属フレームを堆積させた。その寸法が大きさ、形共に窒化シリコン層上のフレームに合致する金属フレームの付いた、離れたガラスぶたも作製した。次に、そのガラスぶたを低融点はんだ(この実施例では135℃)を用いて表示装置に取付けた。この場合、表示装置の一次保護は、ガラスぶたおよびそれと結合した金属はんだ封止材によってなされた。この実施例における窒化シリコンの目的は、陽極を形成する列と陰極を形成する行の間に、金属フレーム封止材が電気的短絡を創生するのを防止するためであった。このデバイスの横断面は図5に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極の間に挟まれた活性発光ポリマーの層を含む発光デバイスにおいて、環境による攻撃からデバイスを保護する、低温塗布無機材料のカプセル形成層を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
低温塗布無機材料がIIIb族またはIVb族元素の酸化物または窒化物を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
無機材料がシリコン系材料であることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
無機材料が、窒化シリコンおよび酸化シリコンから選択されたシリコン系材料であることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
デバイスと無機材料層の間に配置され、非反応性金属を含む低温塗布被覆を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
無機材料層の上に取付けられた保護用カバープレートを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
保護用カバープレートがエポキシで取付けられることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
エポキシがカバープレートの周辺にあることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
カバープレートと無機材料層の間に不活性ガスを更に含むことを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
エポキシがカバープレートと無機材料層の間に均一に分布していることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
無機材料層の上に取付けられた保護用カバープレートを更に含むことを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項12】
保護用カバープレートがエポキシで取付けられることを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
エポキシがカバープレートの周辺にあることを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
カバープレートと無機材料層の間に不活性ガスを更に含むことを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
エポキシがカバープレートと無機材料層の間に均一に分布していることを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
保護用カバープレートがはんだで取付けられることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項17】
保護用カバープレートがはんだで取付けられることを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
無機材料の被覆がフレームプレートの形をしていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
無機材料層が400℃未満の温度で塗布されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
非反応性金属が400℃未満の温度で塗布されることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項21】
非反応性金属と無機材料が、共に400℃未満の温度で塗布されることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項22】
陰極と陽極の間に挟まれた活性発光ポリマーを含む発光デバイスを保護する方法であって、前記デバイスを低温塗布無機材料のカプセル形成層でカプセル封入することを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
低温塗布無機材料がIIIb族またはIVb族元素の酸化物または窒化物を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
低温塗布無機材料層を非反応性金属層でオーバーコートする段階を更に含むステップを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
無機材料層の上に保護板を取付ける段階を更に含むステップを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
デバイスと無機材料層の間に配置され、非反応性金属を含む低温塗布被覆を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159630(P2011−159630A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45514(P2011−45514)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【分割の表示】特願2000−564416(P2000−564416)の分割
【原出願日】平成11年8月3日(1999.8.3)
【出願人】(500091357)デュポン ディスプレイズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】