説明

無機系粉末状の水処理用凝集剤及び各種汚泥・汚濁廃水の処理方法

【課題】浚渫汚泥、下水場汚泥、工場排水汚泥や工事現場等での汚濁廃水に用いられ、沈降清澄を早め、濾過排水方法を簡略化させる低廉な無機系粉末状凝集剤及びそれを用いる汚泥及び汚濁廃水の処理方法を提供する。
【解決手段】シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシア成分を含有する吸水量が50〜90ml/100gの無機粉末と、シリカ成分が65〜80重量%で、平均粒子径15〜150μmで、吸水量が20〜40ml/100gの硅砂粉末と、半水石膏粉末及び高分子凝集剤を含有し、且つ無機粉末、硅砂粉末、半水石膏粉末及び高分子凝集剤の合計100重量部当たり、原子価3以上の水可溶性金属塩無機粉末を0.05〜20重量部含有する水処理用無機系粉末凝集剤である。この水処理用無機系粉末凝集剤を、懸濁物濃度が50〜20,000mg/リットルの汚泥廃水や汚濁廃水に100〜30,000ppmの範囲で添加し、処理する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、各種汚泥廃水、各種汚濁廃水の水処理用無機系粉末凝集剤に関し、より詳細には、各種の建設汚泥、河川・港湾等の浚渫汚泥、浄水場汚泥、工場排水汚泥等の汚泥廃水及び各種の工事、建設現場で発生する汚濁廃水の水処理に用いられて、沈降清澄速度を一層早めて濾過排水方法を著しく簡素化させることができる低廉でハンドリング性に優れる無機系粉末状の水処理用凝集剤及びその無機系凝集剤を用いる各種汚泥廃水及び各種汚濁廃水を簡便、低処理コストで処理する各種廃水の水処理方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場等におけうる下水の汚泥廃水、し尿及び有機性産業汚泥廃水は、高度に水処理されて河川、海等に排出されている。また、地盤改良、トンネル掘削、ビル建設現場等で発生する工事・建設汚濁(又は泥奨)廃水や、河川、港湾等の工事現場で発生する浚渫泥奨や、各種産業における工場廃水浄化設備等で発生する各種産業汚濁廃水も、それぞれ高度に水処理されてリサイクル又はリユース用水として利用又は、河川、海等に排出されている。このように、社会活動及び各種の産業活動を行うには、大量の水が使用されている。しかも、使用後には、日常の生活環境、自然環境である河川や海にそのまま排出できない各種の汚泥廃水、各種の汚濁廃水を大量に発生させている。
【0003】
従って、このような生活環境、社会環境で発生する生活廃水や、産業廃水や又は工場廃水等は、大量で、しかも、広域的に散在して発生することから、そのまま放置・汚染させたら地域の生活環境や自然環境を広域的に汚染・崩壊させてしまう。そこで、従来からそれぞれ発生地の終末処理場で水処理用凝集剤等を用いながら処理されて、リサイクル・リユース用水として、又は河川、海等に排出されている。
【0004】
従来からこのような汚泥・汚濁廃水の終末処理に使用される水処理用凝集剤は、これら汚泥・汚濁廃水中に浮遊する混濁浮遊物を効果的に沈降させて清澄な廃水にさせる終末処理には不可欠な処理剤である。また、このような終末処理場において使用されている凝集剤は、処理対照となるのが廃水で、その処理方法からして、従来から著しく低廉で、持ち運び性がよく、使用時におけるハンドリング性がよく、しかも、使用量が少なく低処理コストを可能にさせることが求められている。
【0005】
このような状況下に従来から使用されている水処理凝集剤には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の無機系凝集剤が挙げられ、また、通常、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の有機高分子凝集剤が組合わせて、汚泥廃水、汚濁廃水の水処理に使用されている。しかしながら、これらの凝集剤は、単に汚泥・汚濁廃水に添加させれば、浮遊混濁物が、凝集・沈降・清澄化される簡便で、且つ短時間で清澄化・排水処理されるものでないのが一般的である。
【0006】
更に詳述すれば、その処理行程、処理方法は、各種廃水の発生状況、汚泥・汚濁物の種類、濁度等にもよるが、無機凝集剤の単独又は2種以上の組合せ添加、又は高分子凝集剤種との組合せ添加、又はこれら凝集剤添加時のアルカリ剤等によるpH調整、又はこれら凝集剤添加時の撹拌速度等のように、単純で、簡便な処理工程でないのが実状である。例えば、[特許文献1]には、その処理工程として、有機性汚泥に硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の従来から使用されている無機凝集剤の単独又は2種以上を組み合わせて添加させ、次いで、有機高分子凝集剤を添加させて脱水ろ過するに当たって、pHを4以下になるまで無機凝集剤を添加させた後、アルカリ剤を添加させてpHを4〜7に調整し、次いで両性高分子凝集剤を添加させて、浮遊汚泥汚濁物を低含水率のろ過ケーキとして処理される汚泥の脱水方法が記載されている。
【0007】

み合わせてなる液状無機凝集剤が提案され、建設現場、採石工場、コンクリート製品工場、レディーミクスト工場等のコンクリート処理設備から発生する回収スラッジ水用の無機凝集剤として使用され、又必要に応じてベントナイト等の膨潤性粘土鉱物、セメント及びトリポリ燐酸ソーダ等のリン化合物を添加併用させることが記載されている。
【0008】
また、[特許文献3]には、商業用、事務用、家庭用等に広く使用されている感圧接着紙を含む古紙を再生処理して得られる粘着物を含有する再生パルプの処理方法として、この再生パルプ中に微分散されている粘着物を表面に吸着し、懸濁粒子を増大させる作用を発揮させる吸油量が40ml/100g以上であるベントナイト、活性白土等の無機凝集剤を添加させて、パルプ濃度2〜8重量%の懸濁液とした後、1時間以上撹拌処理してパルプ濃度1〜2重量%に希釈した懸濁液をスクリーン処理する、又はパルプ濃度0.5〜1重量%に希釈させた懸濁液をクリーナー処理して粘着物を除去する再生パルプの処理方法が記載されている。
【0009】
また、[特許文献4]には、パルプ、製紙工業廃水の汚泥に硫酸バンド、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸鉄等の無機凝集剤を添加させ、pH5〜8コントロール下に、カチオン及びアニオンの組合わせ高分子凝集剤のコントロール添加下に処理するパルプ又は製紙工業の汚泥廃水の凝集脱水処理方法が記載されている。
【0010】
また、[特許文献5]には、下水道処理場、し尿処理場で発生する有機性汚泥の脱水性を向上させ、無機凝集剤の使用量を減らし、回収される脱水ケーキ焼却灰増加を抑制させる汚泥焼却灰を利用する有機性汚泥の凝集脱水処理法が提案されている。すなわち、下水場汚泥に、シリカ、アルミナ、酸化鉄、カルシア、マグネシア、リン酸分を含む汚泥焼却灰の塩酸水焼却灰スラリーを添加し、次いで無機凝集剤の塩化第二鉄水溶液と、メタクリレート系カチオン性又はメタクリレート系両性高分子凝集剤を添加させて、凝集・脱水・ろ過処理する凝集脱水処理法である。
【0011】
また、[特許文献6]には、浄水(上水)処理場における凝集沈殿処理水中に残留するアルミニウムイオンがアルツハイマ症の一要因との指摘から、アルミニウム系無機凝集剤であるPAC、硫酸バンドに代えて、しかも、水酸化物を形成しないマンガンイオン(MnイオンをSSとして分離できないため)であるため、Mn/Fe量比が9×10−4以下(凝集処理水中に、飲料水水質基準の快適水質基準:10μg/リットル以下とされている。)である新規な高純度第二鉄系無機凝集剤が提案されている。また、この高純度第二鉄系無機凝集剤は、工業用水処理分野においても、残留アルミニウムイオンの同様な観点から、また、マンガン汚染のおそれがなく、しかも、従来から設けられている特別にマンガン除去処理工程を必要としない好適な無機凝集剤であると記載されている。
【0012】
また、[特許文献7]には、処理水に対して、急速撹拌下に無機凝集剤を添加させて濁質分をマイクロフロックにさせた後、高分子凝集剤を添加させて凝集沈殿処理を行い、次いでろ過処理させて浄水処理にするに際して、高分子凝集剤の添加後における凝集フロックの流動電流を測定し、それに基づいて高分子凝集剤の添加量をコントロールする浄水処理方法が提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開平5−269500号
【特許文献2】特開03−251104号
【特許文献3】特開平6−065882号
【特許文献4】特開01−071000号
【特許文献5】特開04−081959号
【特許文献6】特開02−079003号
【特許文献7】特開03−340208号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のような状況にあって、各種の建設汚泥、河川、港湾等の浚渫汚泥、浄水場汚泥、工場等における汚泥・汚濁廃水は、自然環境や、生活環境を汚染させることから、そのまま河川や、海等へ排出させたり、リユース用水としてリサイクルできない。そのために、従来から、それぞれの終末処理場で水処理凝集剤等を用いて河川や、海に排水できる清澄な廃水に処理されている。また、既に上述した如く[特許文献1]〜[特許文献5]、[特許文献7]からも理解されるように、このような廃水の処理方法においては、用いる凝集剤はコスト的にも著しく低廉であって、また、その処理工程は著しく簡便で低コストな処理方法であることが望まれる。しかも、処理後に新たに発生するろ過ケーキの発生量の抑制・取り扱いが容易であることが望まれる。また、特に[特許文献6]からも明らかなように残留Alイオンに対する課題をクリアさせても、従来から用いられている無機凝集剤は、低廉でなければならないが故に凝集剤として使用することで、新たにMnイオン汚染を発生させることも事実である。
【0015】
以上のように廃水処理には、従来から技術的にも、コスト的にも未だ未解決な課題が多く、また、発生量が大量で、また、発生場所も広域的に散在して発生し、更には、発生する汚泥・汚濁廃水によって、必ずしも一様に処理できない傾向にあることから、未だ必ずしも満足される処理方法が提供されていないことも事実である。
【0016】
特に、汚泥・汚濁廃水を沈降清澄化させる水処理用無機系凝集剤には、従来から、通常、凝集用主剤及び高分子凝集剤を含めての凝集助剤とを組み合わせて用いられている。すなわち、従来から硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の鉄塩系の凝集剤のみでは、十分な凝集効果が得られず、また、消石灰等を併用してpH調整を要したりする傾向にあり、また、硫酸アルミ塩・硫酸鉄塩の塩基性混和凝集剤や、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や、珪酸アルカリ水溶液の珪酸ゾル(又はコロイダルシリカ)等の液状凝集剤も、単独使用では一長一短があって万能ではない。また、これら従来からの無機系凝集剤は、何れも「水和反応」→「ゾル・ゲル化」→「フロック凝集化」等の作用は、廃水のpH領域に依存して、すなわち鉄イオン及びアルミイオン等のゼータ電位の調整下に凝集剤としての作用を発揮させる。従って、従来からこのような浮遊分散する汚泥・汚濁物の「凝集・フロック・沈降」化には、ゼータ電位との関連付け下に実績評価がなされている。その実績評価として、フロック化促進効果及びフロック粒径を増大化させるためから、それぞれ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性等の高分子凝集剤を組み合わせて、架橋作用を発揮させる高分子凝集剤の併用が不可欠であることも事実である。
【0017】
以上から、本発明の目的は、地域生活圏及び産業圏から発生する各種の生活廃水、産業廃水の処理に、フロック形成速度が大きく、また、最終到達フロック粒径が大きく、沈降速度を速くして、上澄み液とスラッジとの分離が短時間であって、しかも、処理工程がより簡便な処理を可能にさせ、且つ低廉で取扱い容易な凝集剤であることを特徴とする無機系粉末状の各種廃水の水処理用凝集剤を提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、このようなフロック形成速度が大きく、最終到達フロック粒径が大きく、沈降速度が速く、上澄液とスラッジとの分離が短時間にさせる無機系粉末状凝集剤を用いて、各種汚泥廃水及び各種汚濁廃水を簡便で、しかも、低コストで処理できる水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、本発明者らが、既に特許出願済みの特願03−204126号において、各種の建設汚泥、河川、港湾等の浚渫汚泥、浄水場汚泥、工場排水汚泥等で発生する高含水率でドロドロ状(又はヘドロ状)で取扱い搬送・運搬し難い各種の汚泥を、取扱い容易な形状に凝集固結化させ、再汚泥化させない高含水率汚泥の固化処理材を提案している。
【0020】
本発明者らが提案済みの固化処理材とは、
(1)各種の廃水を処理させて発生する高含水率のろ過ケーキや、自然沈降及び沈降堆積の高含水率の汚泥、浚渫汚泥に、極めて容易に分散混合することができ、汚泥を取扱い容易な形状に凝集化させ、固結化させる無機系の固化処理材である。
(2)しかも、使用することで、環境汚染・環境保全等に係わって、再汚染を発生させない更にはコスト的にも低廉な素材から構成されている。
(3)そのために、各種の環境規制をクリヤし、各種の産業に利用され排出・回収される産業排出材等の低廉な素材を有効にリユースさせた無機質固化処理材である。
(4)そこで、その主配合成分が、従来から各種の工業から排出・回収されている代表的な工業廃材であって、火力発電所等の排煙脱硫処理で副生する排煙石膏や、製紙工場の焼却ダスト、鋳物砂の取扱い業からの使用済み鋳物砂の焼成再生処理時に回収される微硅砂等の著しく低廉で、再使用しても環境的にも極めて安全性の高い無機質素材である。
例えば、製紙工場から排出される焼却ダストは、国内で約100,000t/M以上で、これは紙の抄紙工程で使用されるタルク,カオリン,アルミナ,シリカ等の添料としての粘土鉱物等の無機質成分が、パルプ繊維と共に濾過処理されて回収される含水ケーキ状物を約850℃で焼成させ副性する焼却ダストで、ダイオキシンや、有害金属を含まず、既に焼成汚泥肥料としても認可されているクリーンな工業廃材である。
(5)しかも、配合されている、製紙工場の焼成炉から捕収されるシリカ、アルミナ、マグネシア及びカルシアを主成分に含有する粉末状の焼成ダストは、無機質吸水性硬化促進材として作用し、特にその他有機質成分を全く含まないJIS K5101.19法の吸油量測定法に準拠させて求まる吸水量が50〜90ml/100gの範囲にあって、優れた吸水作用を発揮する素材である。
(6)また、その産業廃材が、特に水質汚濁防止法で定める排出基準としての、カドミ、全シアン、有機リン、六価クロム、鉛、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、ジクロロメタン、PCB等の有害成分の含有基準を全てクリヤする素材でもある。
【0021】
そこで、本発明者らは、これらの知見に着目して上記課題を解決するために、高含水率の汚泥ケーキの前駆体として発生した懸濁物(SS)濃度が8,500mg/リットルで浮遊する汚濁廃水に、既に本発明者らが提案した粉末状の汚泥固化処理材を添加・撹拌処理をした結果、汚泥ケーキに対して作用したと同様に粉末状で、吸水性で、撹拌分散性で、凝集性等が活かされて、汚濁廃水中の浮遊懸濁物が効果的に凝集・沈降されることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0022】
すなわち、本発明が提供する水処理用凝集剤の第一の特徴が、シリカ、アルミナ、マグネシア及びカルシア成分を主成分として含有する吸水量が50〜90ml/100gの範囲にある無機粉末(1)と、シリカ成分が65〜80重量%で、平均粒子径15〜150μmで、吸水量が20〜40ml/100gの範囲にある硅砂粉末(2)と、半水石膏粉末(3)及び高分子凝集剤(4)とを含有し、しかも、高分子凝集剤(4)以外の主配合剤である無機粉末(1)、硅砂粉末(2)及び半水石膏粉末(3)の何れもが水不溶性で粉末状の無機質配合成分である。
また、その第二の特徴が、主配合剤として粉末状に混合配合されている無機粉末(1)、硅砂粉末(2)、半水石膏粉末(3)及び高分子凝集剤(4)との合計含有量100重量部当たり、唯一、水可溶性である原子価が3価以上である金属塩無機粉末(5)が0.05〜20重量部の範囲で含有するワンパックタイプであって、各種の汚泥・汚濁廃水に用いることができる無機系粉末凝集剤である。
【0023】
また、本発明によれば、高速攪拌下にある活性汚泥法で処理されて懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルの廃水1000ml当たり、請求項1に載するワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤を、100〜30,000ppmの範囲で、しかも、少なくとも一段法で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水にできることを特徴とする汚泥廃水の処理方法を提供する。
【0024】
更にはまた、本発明によれば、高速攪拌下にある各種の工事現場で発生する懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルである1次沈降槽中の汚濁廃水1000ml当たり、請求項5に記載するワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で、しかも、少なくとも一段法で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水にできることを特徴とする汚濁廃水の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
以上から、本発明によって提供される水処理凝集剤は、数種の粉末状の無機質成分からなり、しかも、従来の無機凝集剤とは著しく相違するほぼ水不溶性の数種の無機成分がワンパックタイプに混合された取扱い容易な水処理用凝集剤である。また、この水処理用凝集剤は、各種の汚泥廃水又は汚濁廃水に、「強撹拌下に一段法で添加」させた後、「緩撹拌下」後の「静置下」に廃水中に浮遊する懸濁物に対して、ワンパックタイプの無機質粉末状凝集剤が、「分散接触」→「吸水吸引収束」及び/又は「吸水水和収束」→「フロック凝集化」及び「フロック粒径の成長化」→「沈降清澄化」等の作用が効果的に発揮させる従来の無機凝集剤とは、著しく相違する新規なワンパックタイプの水処理用の無機系粉末凝集剤である。
【0026】
このようなワンパックタイプに粉末混合された配合剤のそれぞれが発揮させる詳細な作用効果は不明であるが、ワンパックタイプであることで、以下の(i)〜(iv)なる作用効果が、並行及び/又は時間差下に組み合わされて処理効果を進行するものと言える。
(i):吸水量が50〜90ml/100gの範囲にある無機粉末(1)、吸水量が20〜40ml/100gの範囲にある硅砂粉末(2)とは、「強撹拌下」に素早く水親和性を発揮させて、浮遊する懸濁物に「分散接触」→「吸水吸引収束」させる。
(ii):半水石膏粉末(3)は、「強撹拌下」に素早く水親和性及び/又は2水化の水和反応を発揮させて、浮遊する懸濁物に「分散接触」→「吸水水和収束」させる。
(iii):唯一の水可溶性である原子価2以上の金属塩無機粉末(5)と架橋作用を発揮する高分子凝集剤(4)とが、「強撹拌下」に素早く、「分散溶解」→「イオン接触」して浮遊する懸濁物の電荷を調整させて、「緩撹拌下」に「フロック凝集化」→「フロック粒径の増大化」を発揮させる。なお、本発明におけるこの水可溶性金属塩無機粉末(5)は、廃水中に分散して容易に不溶性の水和物に転化する。
(iv):「静置下」に水不溶性で従来には見られない程の高比重である無機粉末成分(1)〜(3)が発揮する「重力沈降性」も作用して、浮遊する懸濁物を効果的に「沈降清澄化」させる。
【0027】
また、従来からの廃水の水処理行程は、各種廃水の発生状況、汚泥・汚濁物の種類、濁度等によって、無機凝集剤の単独又は2種以上の組合せ添加、又は高分子凝集剤種との組み合せ添加、又はこれら凝集剤添加時のアルカリ剤等によるpH調整、又はこれら凝集剤添加時の撹拌速度の組合わせ等から、通常、単純・簡便でない多段の処理工程を余儀なくされていた各種の汚泥・汚濁廃水を、このよう作用効果を発揮させる本発明によるワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤は、一段の添加工程で沈降清澄化できる簡便、低処理コストを可能にさせる新規な廃水の水処理方法を提供することができる。
【0028】
また、このような特徴を発揮させるワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤によって凝集沈降される汚泥・汚濁沈降物は、例えば、濁度SS濃度5,000〜20,000ppm範囲の汚濁廃水に対して、本発明の水処理用無機系粉末凝集剤5,000〜15,000ppm範囲の添加処理で得られる重力脱水物の水分(%)は、65〜73であって、通常、加圧脱水処理されることから、例えば、ベルトプレスの多段加圧条件0.2Kg/cm→0.5Kg/cm→1.0Kg/cm(各1分加重下)の加圧脱水物の水分(%)は、53.1〜53.8の含水物として沈降処理される。このような事実から、本発明によるほぼ水不溶性の無機系粉末配合剤からなる凝集剤は、脱水性の良好な汚濁沈降物を形成させる効果を発揮させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明によるワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤について、その実施に係わる最良形態を更に説明する。
【0030】
既に上述する如く、本発明による汚泥廃水及び汚濁廃水用の水処理凝集剤は、「強撹拌下」に素早く水親和性を発揮させて、浮遊する懸濁物に「分散接触」→「吸水吸引収束」させる吸水量が50〜90ml/100gの範囲にある無機粉末(1)と、吸水量が20〜40ml/100gの範囲にある硅砂粉末(2)と、「強撹拌下」に素早く水親和性及び2水化の水和反応を発揮させて、浮遊する懸濁物に「分散接触」→「吸水水和収束」させる半水石膏粉末(3)と、「強撹拌下」に素早く「分散溶解」→「イオン接触」して浮遊する懸濁物の電荷を調整させて、「緩撹拌下」に「フロック凝集化」及び「フロック成長」させる唯一の水可溶性である原子価3以上の金属塩無機粉末(5)[以後、単に金属塩無機粉末(5)と記すこともある。]及び可溶して架橋作用を発揮させる高分子凝集剤(4)とが、「各種粉末状機能性配合材」と「吸水・吸引・収束・凝集の作用効果」とがワンパックタイプ化されていることを特徴とする無機系粉末状の新規な廃水用の水処理凝集剤である。
【0031】
このように数種の異なる粉末状配合剤が水処理用凝集剤としてワンパックタイプ化されていることは、従来の水処理用凝集剤とは異なる新規なものである。また、既に上述する如くの作用効果を発揮させる本発明のワンパックタイプの水処理用凝集剤においては、特に主配合剤でもある吸水量が50〜90ml/100gの範囲にあるシリカ、アルミナ、マグネシア及びカルシアを主成分に含有する無機粉末(1)と、シリカ成分が65〜80重量%で、平均粒子径15〜150μmで吸水量が20〜40ml/100gの範囲にある硅砂粉末(2)に係わって、その吸水量が、必ずしも格別高吸水性ではなく、例えば、ベントナイトのような高吸水量(ml/100g)の水膨潤性層状粘土鉱物や、高吸油価(ml/100g)の微粉シリカでないことも特徴と言える。
【0032】
すなわち、高吸水性であるがベントナイトの如く水膨潤性で、また、同じく高吸油量で高吸水性を発揮する微粉シリカ等は、吸水後、いずれもゲル状の粘弾粘調状物になって、反面、懸濁浮遊物の凝集沈降を著しく阻害させる傾向にある。従って、本発明における無機粉末(1)及び硅砂粉末(2)係わる吸水量は、撹拌分散下に汚泥・汚濁廃水中に素早く分散して、懸濁浮遊物に「分散接触」→「吸水水和収束」を発揮させる水親和性であることを示すものと言える。
【0033】
そこで、本発明においては、必ずしも限定されないが、無機粉末(1)として、好ましくは、無機粉末(1)が製紙工場の焼成炉から捕収される粉末状の焼成ダストが適宜好適に使用される。また、硅砂粉末(2)として、好ましくは、鋳物砂取扱い業から発生する使用済み鋳物砂の焼成硅砂粉末が適宜好適に配合剤として使用することができる。いずれの配合剤も粉末状であって、撹拌下の廃水中への分散・拡散性に優れ、しかも、優れる水親和性を発揮させる低廉な配合剤である。
【0034】
また、上述する粉末状で、水分散性で、吸水性又は水親和性である無機粉末(1)及び硅砂粉末(2)係わって、その互いの吸水量から発揮させる両者配合材は、粉末状の吸水性無機質配合剤と、粉末状の吸水性無機質配合助剤としての配合組合わせである。本発明において、無機粉末(1)として、上記する製紙工場の焼成炉から捕収される焼成ダストは、粉末状のシリカ、アルミナ、マグネシア及びカルシアを主成分に含有し、吸水量が50〜90ml/100gの範囲にある。既に上述するように、粉末状で撹拌下に分散・拡散して、水親和性で、吸水性を発揮させる過程が、汚泥・汚濁廃水中に浮遊する懸濁物に「強撹拌下」系に素早く「分散接触」→「吸水吸引収束」を適宜効果的に作用させると思われる。また、高温下の焼成炉からの焼成ダストとして捕収されることから、本発明においては、成分的にも極めて再汚染性のないクリーンで低廉な優れた工業廃材のリユース配合剤である。また、その粉末粒度は、撹拌下の分散性、吸水性又は水親和性を効果的に発揮させることから、好ましくは、平均粒子径が20〜400μmの範囲にあることが好適である。
【0035】
また、本発明において、硅砂粉末(2)として上記する鋳物砂取扱い業から発生する使用済み鋳物砂の焼成硅砂粉末は、低廉で、水不溶性で、再汚染性のないシリカ成分が65〜80重量%で、好ましくは、平均粒子径が15〜150μmで、より好ましくは100μm以下であって、しかも、吸水量が20〜40ml/100gの範囲にあるように、特に水親和性で、水分散性の粉末状配合剤として適宜好適に使用される。
【0036】
また、本発明に用いる半水石膏粉末(3)は、既に上述する如く、「強撹拌下」に素早く「半水石膏」→「2水石膏」化なる水和反応を発揮させる変化過程が、浮遊する懸濁物に「分散接触」→「吸水水和収束」させる作用を発揮させると理解される。その半水石膏粉末(3)も低廉な素材であることが望まれ、好ましくは、火力発電所で大量に副生する排煙脱硫石膏を、半水化させた粉末石膏が適宜好適に用いられる。また、その粉末粒度は、撹拌下の分散性、2水化の水和反応性から、好ましくは、平均粒子径が40〜400μmの範囲にあれば好適である。
【0037】
また、本発明に用いる唯一水可溶性で、原子価が3価以上である水可溶性金属塩無機粉末(5)としては、従来から凝集剤として使用されている硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、特開02−079003号に提案する高純度第二鉄塩等や、硫酸バンド、硫酸アルミ塩・硫酸鉄塩の塩基性混和アルミ塩や、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等が挙げられる。本発明において、好ましくは、低廉で、粉末ワンパック化が容易で、しかも、廃水中に分散させて容易に水不溶性の水和物に転化する観点から硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の金属アルミニウム塩粉末の1種又は2種混合物を適宜好適に用いることができる。
【0038】
なお、このような無機塩凝集剤を用いることによる既に上述したMnイオン汚染に関しては、本発明において、例えば、金属塩無機粉末(5)として従来から市販されている水処理用の凝集剤硫酸バンド[通常、Mnイオンの最大含有量は50ppmである粉末硫酸バンド中(Al(SO・12HO)である。]を用いた場合、本発明による水処理用無機系粉末凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で添加処理すると、処理水中に排出されるMnイオン量は、0.5ppb〜0.15ppmの範囲(飲料水水質基準の快適水質基準:Mnイオンが10μg/リットル以下とされている。)になると言える。また、Alイオンのアルツハイマ症要因に係わって、その添加処理時におけるAlで表すAlイオンの添加量は、水処理用無機系粉末凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で、0.882〜264.6ppmの範囲になるが、そのほぼ全量が水不溶化のAl水和物であるフロック沈降物として消費されて、処理水中へのAlイオン排出はないと言える。
【0039】
また、本発明によるワンパックタイプの無機系粉末凝集剤として、無機粉末(1)、硅砂粉末(2)、半水石膏粉末(3)及び原子価2以上の水可溶性金属塩無機粉末(5)に、高分子凝集剤(4)を組合わせ配合させる作用効果は、既に説明済みであるが、水分散下で、これら無機配合剤との作用効果をよる効果的に発揮させることから、好ましくは、アニオン性の高分子凝集剤であることが好適である。また、本発明において、その高分子凝集剤は、他の配合材と同様に、粉末状であることにより吸水性を発揮させて、素早く凝集剤としての[フロック−凝集]化作用を汚泥・汚濁粒子に及ぼさせることができる。本発明において、その平均粒子径は、好ましくは60〜200μmである。また、本発明の凝集剤の配合剤機能からして、粉末状にすることでその溶解性(20℃での溶解度が0.01g/100ml以上)も加わって、その添加量も少量でよい。従って、その粒子径も下限値60μm以下にする必要がなく、単に粉砕コストを要すだけである。そこで、粉末状の高分子凝集剤として、好ましくは、その適正pHが弱酸性〜アルカリ性で、適正使用系が無機系で、また、その効果の凝集・沈殿性等からアニオン系又はノニオン系で、同様の理由から、より好ましくは、アニオン系が好適で、例えば、アニオン系;ポリアクリル酸ソーダ、ポリスルホメチル化ポリアクリドアミド、また、ノニオン系;ポリアクリドアミド、ポリエチレンpキサイドが挙げられる。高分子凝集剤の添加量は、0.05〜0.5mg/リットルで、使用上の規制値は、処理水中の残留アクリルアミドモノマーとして、0.00005mg/リットル以下であることから、本発明の粉末凝集剤中のアクリルアミドモノマーは、理論上0.005wt%以下であることが重要である。
【0040】
なお、本発明によるワンパックタイプの無機系粉末凝集剤として、無機粉末(1)、硅砂粉末(2)、半水石膏粉末(3)及び原子価3以上の水可溶性金属塩無機粉末(5)に、更に組合わせ配合させる高分子凝集剤(4)の作用効果も、本発明においては重視され、その作用効果を効果的に発揮させるため、より好ましくはアニオン系ポリマーを適宜好適に配合するものである。すなわち、水質汚濁されている廃水には懸濁粒子と呼ばれる微細粒子が多く含まれている。その微細粒子とはたんぱく質やベントナイトのようなコロイド粒子(100mμ〜1μm)部分が相当含まれている。このような微細粒子はゼーター電位により粒子間の静電気反発力(クーロン斥力)により互いに反発して、なかなか凝結し難い特徴がある。広い有効pH領域を持つアニオン系ポリマーは、特に本発明による無機系粉末凝集剤との相乗効果が発揮される。また、既に上述するように、廃水中の浮遊懸濁微粒子に対して「強攪拌下」に無機系粉末凝集剤が「イオン接触」すると同時に、コロイド粒子の界面電位を中和し、粒子間の反発力を弱め、粒子間引力が増す状態となり小フロックを作る。更に、この小フロックはアニオン系ポリマーによって吸着架橋が進み、粗大フロックの生成に繋がるものと推察される。また、浮遊懸濁粒子の他にこの無機系粉末粒子自身もアニオン系ポリマーによる吸着架橋が速やかに進み、粗大フロックの生成要因になっていると思われる。
【0041】
<第1の水処理用無機系粉末凝集剤>
以上から、本発明において、ワンパックタイプの「第1の水処理用無機系粉末凝集剤」として、ワンパックタイプ化させるに際して、重量部数で表して、無機粉末(1)が20〜80重量部で、好ましくは沈降速度の観点から、50重量部以下で、また、硅砂粉末(2)が5〜50重量部で、好ましくは沈降速度の観点から、30重量部以下で、また、半水石膏粉末(3)が1〜50重量部で、好ましくは凝集速度の観点から、10〜25重量部で、また、高分子凝集剤(4)が0.05〜5重量部で、好ましくは形成フロックサイズの観点から、0.5〜3重量部で、及び水可溶性の金属塩無機粉末(5)が0.05〜20重量部で、好ましくは処理水のpHの観点から、0.5〜10重量部であって、従来から周知の機械的混合法で適宜容易にワンパックタイプの水処理用無機系粉末凝集剤にすることができる。
【0042】
本発明においては、上記する「第1の水処理用無機系粉末凝集剤」を、活性汚泥法で処理された、例えば、下水処理場、食品加工場、製紙工場等で発生する余剰汚泥、混合汚泥、消化汚泥、生汚泥の懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルの廃水1000ml当たり、高速攪拌下に100〜30,000ppmの添加量で、好ましくは、500〜20,000ppmの添加量で、少なくとも一段で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水に処理することができる。なお、上記高速攪拌下とは、120〜160rpm範囲の撹拌速度であって、また、緩速攪拌とは、40〜60rpmの範囲の撹拌速度であって、このような処理方法で、緩速攪拌後、6分以下の静置時間で各種の汚泥廃水を処理することができる。
【0043】
<第2の水処理用無機系粉末凝集剤>
また、本発明においては、必要に応じて、半水石膏粉末(3)と同様に水和反応性を発揮する平均粒子径30〜100μmの軽焼マグネシア粉末を配合剤として組み合わせすることができる。廃水の種類によっては、既に上述した無機粉末(1)、硅砂粉末(2)、半水石膏粉末(3)、高分子凝集剤(4)及び原子価3以上の水可溶性金属塩無機粉末(5)に、更に軽焼マグネシア粉末(6)をワンパックに配合させてなる「第2の水処理用無機系粉末凝集剤」を提供することができる。
【0044】
すなわち、本発明においては、上記「第1の水処理用無機系粉末凝集剤」100重量当たり、軽焼マグネシア粉末が0.01〜50重量部の範囲で、好ましくは有効pHの観点から、2〜20重量部を含有することを特徴とする水処理用無機系粉末凝集剤である。本発明においては、より速やかに水和反応をして2水石膏化する半水石膏粉末(3)に比べ、軽焼マグネシア粉末(6)は、より緩慢な水和反応下に水和反応物を生成させ、且つ半水石膏粉末(3)の2水化水和に比べ、軽焼マグネシア粉末(6)の「MgO」→「Mg(OH)」なる水和化のpH領域が、より塩基度領域である相違が、廃水の種類に対して、より好ましい凝集効果を発揮させることができる。尚、上記する有効pHとはpH10.5〜6.5である。
【0045】
すなわち、各種の建設、河川、港湾工事現場、浄水場等で発生する懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルである1次沈降槽中の汚濁廃水(又は汚濁用水)1000ml当たり、高速攪拌下に上記する「第2の水処理用無機系粉末凝集剤」を100〜30,000ppmの範囲で、少なくとも一段で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水にすることを特徴とする汚濁廃水の処理方法である。なお、上記高速攪拌下とは、120〜160rpmの範囲の撹拌速度であって、また、緩速攪拌とは、40〜60rpmの範囲の撹拌速度であって、このような処理方法で、緩速攪拌後、6分以下の静置時間で各種の汚濁廃水(又は汚濁用水)を処理することができる。
【0046】
<第3の水処理用無機系粉末凝集剤>
また、本発明によれば、必要に応じてこれらの第1及び第2の水処理用無機系粉末凝集剤に、予め硫酸第1鉄塩粉末をワンパック状に配合させた「第3の水処理用無機系粉末凝集剤」を提供することができる。このような第3の水処理用無機系粉末凝集剤を、例えば、有害重金属イオンの六価Crイオン(Cr6+)を含有する廃水に対して、硫酸第1鉄塩が[Fe2+→Fe3+]として還元剤として作用し、廃水中の六価Crを[Cr6+→Cr3+]に還元させて、凝集沈降物中に捕捉させることができる。本発明においては、第1及び第2の水処理用無機系粉末凝集剤100重量部当たり、硫酸第1鉄塩粉末の1.5〜3重量部で、好ましくは、2〜2.8重量部を配合させたものである。通常、例えばCr6+が0.8〜1(ppm)含有する汚濁廃水に、第3の水処理用無機系粉末凝集剤を通常の水処理添加量範囲で処理することで、Crイオンを0.05(ppm)以下の処理廃水として排出させることができる。
【0047】
また、このように提供でいる本発明による水処理用無機系粉末凝集剤は、各種の工業廃材を含む数種の無機系粉末配合剤をワンパックタイプにした凝集剤であることから、クロム、カドミウム等の重金属類や、ダイオキシン等の有機物の含有されていないことが重要である。一般的に、産業廃棄物をリサイクル、リユースするには、環境保全、水質規制の立場からその可溶成分に留意しなかればならない。既に上述することから明らかなように、本発明による水処理用無機系粉末凝集剤を使用しても、例えば、有害物質として、環境庁告示令として定めている溶質基準値は、以下の通りである。例えば、鉛化合物(1.0mg/kg以下)、カドミウム化合物(0.30mg/kg以下)、全クロム化合物(1・5mg/kg以下)、全水銀(0.005mg/kg以下)、ヒ素化合物(3.0mg/kg以下)、シアン化合物(1.0mg/kg以下)、有機リン化合物(1.5mg/kg以下)、PCB(0.0030mg/kg以下)、トリクロロエチレン(0.1mg/kg以下)、テトラクロロエチレン(0.1mg/kg以下)である。
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらにいささかも限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
無機粉末(1)として吸水量が80ml/100gの焼成ダスト53dと、硅砂粉末(2)としてシリカ成分が75重量%で、平均粒子径45μmで、吸水量が38ml/100gの硅砂粉末の35.25gと、半水石膏粉末(3)の10gと、高分子凝集剤(4)としてポリアクリルアミド粉末の1.75gとの合量100gに対して、水可溶金属塩無機粉末(5)として硫酸バンド粉末の0.5g、3g、10g及び15gのそれぞれを粉末混合させて、本発明によるワンパックタイプの粉末状の水処理凝集剤−1、水処理凝集剤−2、水処理凝集剤−3及び水処理凝集剤−4をそれぞれ調製した。なお、硫酸バンド粉末の10gを配合させて水処理凝集剤−3において硫酸バンド粉末に代えてポリ塩化アルミニウム(PAC)粉末10gとしたものを水処理凝集剤−5として調製した。
<水処理凝集試験>
次いで、ジャーテスト試験装置を用いて、製紙会社で排出された活性汚泥法で処理された懸濁物質(SS)の濁度濃度が440mg/リットル(440ppm)の汚泥廃水500mlを1リットルビーカーに採集し、140rpmの高速撹拌下に、本発明によるワンパックタイプの粉末状凝集剤を、従来の水処理方法とは異なり全くの一段法で、水処理凝集剤−1[4000]、水処理凝集剤−2[3000]、水処理凝集剤−3[1000,2000,3000,4000]、水処理凝集剤−4[2000]及び水処理凝集剤−5[1000]のそれぞれを[ppm]内に示す添加量で添加し、1分間撹拌保持した。次いで、60rpmの緩速撹拌下に2分間撹拌保持した後、撹拌停止・撹拌羽根を引き上げて静置2分後の上澄み液である凝集処理水の濁度SS(ppm)を測定した結果を下記<ppm>内に表示した。
なお、従来から、通常、実施されているこのような廃水処理法としては、このような廃水に対して多段法で、すなわち、例えば、無機凝集剤の硫酸バンドを添加し、次いでNa(OH)でpH7に中和し、次いでアニオン系高分子凝集剤とを添加させて凝集沈殿させて上澄み処理水を排出させているのが実状である。
<凝集水処理結果>
水処理凝集剤−1[3000]/<178>
水処理凝集剤−2[4000]/< 80>
水処理凝集剤−3[1000]/<135>
水処理凝集剤−3[2000]/< 37>
水処理凝集剤−3[3000]/< 9>
水処理凝集剤−3[4000]/< 5>
水処理凝集剤−4[2000]/< 22>
水処理凝集剤−5[1000]/<128>
水処理凝集剤−0[ − ]/<440>
【0049】
(実施例2)
無機粉末(1)として焼成ダスト40gと、硅砂粉末(2)として17.5gと、半水石膏粉末(3)の23gと、高分子凝集剤(4)としてポリアクリルアミド粉末の1.5gと、軽焼マグネシア粉末(6)の18gとの合量100gに対して、水可溶金属塩無機粉末(5)として硫酸バンド粉末の10gを粉末混合させて、本発明によるワンパックタイプの粉末状の水処理凝集剤−6を調製した。
<水処理凝集試験>
次いで、ジャーテスト試験装置を用いて、トンネル工事で排出された廃水を予め沈殿槽で沈降させた懸濁物質(SS)の濁度濃度が95mg/リットル(95ppm)の汚濁廃水500mlを1リットルビーカーに採集し、140rpmの高速撹拌下に、実施例1と同様に一段法で、本発明によるワンパックタイプの水処理凝集剤−6[250]、水処理凝集剤−6[500]、水処理凝集剤−6[750]、水処理凝集剤−6[1000]及び水処理凝集剤−6[1250]のそれぞれを[ppm]内に示す添加量を添加し、1分間撹拌保持した。次いで、60rpmの緩速撹拌下に2分間撹拌保持した後、撹拌停止・撹拌羽根を引き上げて静置2分後の上澄液である凝集処理水の濁度SS(ppm)を測定した結果を下記<ppm>内に表示した。
<凝集水処理結果>
水処理凝集剤−6[250]/<48>
水処理凝集剤−6[500]/<21>
水処理凝集剤−6[750]/< 7>
水処理凝集剤−6[1000]/<3>
水処理凝集剤−6[1250]/<3>
水処理凝集剤−0[ − ]/<94>
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上から、本発明による複数の粉末状配合剤をワンパック状にした無機系粉末状凝集剤によって、各種の汚泥・汚濁廃水に対して、従来の水処理である多段法による水処理法とは全く相違して、極めて簡便、低コストな一段法による水処理法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ、アルミナ、マグネシア及びカルシア成分を含有する吸水量が50〜90ml/100gの範囲にある無機粉末(1)と、
シリカ成分が65〜80重量%で、平均粒子径15〜150μmで、吸水量が20〜40ml/100gの範囲にある硅砂粉末(2)と、
半水石膏粉末(3)及び高分子凝集剤(4)とを含有し、
且つ無機粉末(1)、硅砂粉末(2)、半水石膏粉末(3)及び高分子凝集剤(4)との合計含量100重量部当たり、原子価が3価以上の水可溶性金属塩無機粉末(5)が0.05〜20重量部の範囲で含有することを特徴とする水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項2】
前記水可溶性金属塩無機粉末(5)が、硫酸バンド、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種のアルミニウム金属塩無機粉末であることを特徴とする請求項1に記載の水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項3】
前記無機粉末(1)が製紙工場の焼成炉から捕収される粉末状の焼成ダストで、前記硅砂粉末(2)が鋳物砂取扱い業から発生する使用済み鋳物砂の焼成硅砂粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項4】
前記高分子凝集剤(4)が、平均粒子径60〜200μmの少なくともアニオン性の高分子凝集剤であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項5】
重量部数で表して、前記無機粉末(1)が20〜80、前記硅砂粉末(2)が5〜50、 前記半水石膏粉末(3)が1〜50、前記高分子凝集剤(4)が0.05〜5で1、 あることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項6】
請求項5に記載する水処理用無機系粉末凝集剤の100重量当たり、軽焼マグネシア粉末が0.01〜50重量部の範囲で含有することを特徴とする水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項7】
請求項1〜6に記載する何れかの水処理用無機系粉末凝集剤の100重量部当たり、硫酸第1鉄塩粉末の1.5〜3重量を含有することを特徴とする水処理用無機系粉末凝集剤。
【請求項8】
活性汚泥法で処理された懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルの汚泥廃水1000ml当たり、高速攪拌下に請求項1〜5から選ばれる何れかの水処理用無機系粉末凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で、少なくとも一段で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水にすることを特徴とする汚泥廃水の処理方法。
【請求項9】
各種の工事現場で発生する懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルである1次沈降槽中の汚濁廃水1000ml当たり、高速攪拌下に請求項6又は7に記載する水処理用無機系粉末凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で、少なくとも一段で添加させ、次いで、緩速攪拌後の静置下に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の清澄水にすることを特徴とする汚濁廃水の処理方法。

【公開番号】特開2006−837(P2006−837A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206605(P2004−206605)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(501362021)株式会社エコ・プロジェクト (6)
【Fターム(参考)】