説明

無機系粒子水性分散液およびその製造方法

【課題】高濃度の状態でも低粘度であり、そうでなくても少なくとも依然としてポンプ輸送可能であるかもしくは流動性を保持している程度に安定な無機系微粒子の水性分散液を提供する。
【解決手段】水、酸化アルミニウムや酸化亜鉛などの無機系粒子、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル−無水マレイン酸−スチレン共重合体などの主鎖にカルボキシル基を有する高分子分散剤または主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子分散剤、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルなどのノニオン性界面活性剤、並びにスルホコハク酸エステル塩およびリン酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤を含有する無機系粒子水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度でも安定に分散した無機系粒子水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
無機系粒子水性分散液は、化粧料や農医薬品の製造、各種セラミックスの製造などにおいて用いられている。セラミックスや化粧料などの高機能化、高性能化などを目的として微小な無機系粒子の水性分散液が求められているが、無機系粒子の大きさが小さくなると、それに伴い比表面積が増大し、無機系粒子同士が水素結合等の引力を介して結合し、凝集塊または凝集体を形成しやすくなる。凝集体および凝集塊の形成は、無機系粒子の分散安定性を低下させ、沈殿、ケーキング、ゲル化などをまねく。また分散安定性の低下は、作業効率、製造効率、移送効率などの点で不都合を生じる。
【0003】
水などの媒体に無機系粒子を均一に分散させ、沈殿、ゲル化またはケーキングさせないようにするための試みが種々提案されている。
例えば、特許文献1には、主成分としての酸化亜鉛と副成分としての酸化アルミニウムとの混合粉末に、ポリカルボン酸ナトリウム塩型のアニオン性高分子界面活性剤と、ポリカルボン酸アンモニウム塩型のアニオン性高分子界面活性剤と、ノニオン性高分子界面活性剤とを添加してなるスラリーが開示されている。
【0004】
特許文献2には、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物微細粒子と、無水マレイン酸/マレイン酸エステル−アクリル酸エステル−ポリオキシアルキレンモノアリルエーテルコポリマーと、水とを含む水性分散液が記載されている。また、特許文献3にはセラミックス原料粉末の水性スラリー組成物の調製のために、無水マレイン酸−ポリオキシエチレンモノアリルエーテル共重合体からなる高分子分散剤を用いることが開示されている。さらに必要に応じて界面活性剤を使用することが示されているが、実際に界面活性剤を併用したものの開示はない。特許文献4にも、無水マレイン酸−ポリオキシエチレンモノアリルエーテル共重合体からなる高分子分散剤を用いたスラリー組成物が開示されている。これらのスラリーは、調製直後は高濃度においても分散性に優れ低粘度であるが、経時的に分散安定性が低下し高粘度化によってポンプ輸送が困難になるおそれがあった。特に無機系粒子の純度が低い場合、すなわち複数の無機系粒子を含有している場合には、分散安定性の低下が顕著に現れた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−235156号公報
【特許文献2】特開2005−529939号公報
【特許文献3】特開2001−58875号公報
【特許文献4】特開2007−261911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高濃度の状態でも低粘度であり、そうでなくても少なくとも依然としてポンプ輸送可能であるかもしくは流動性を保持している程度に安定な無機系微粒子の水性分散液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、分散剤として、主鎖にカルボキシル基を有する高分子分散剤または主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子分散剤と、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤とを組み合わせて用いることによって、高濃度の状態でも低粘度であり、そうでなくても少なくとも依然としてポンプ輸送可能であるかもしくは流動性を保持している程度に安定な無機系微粒子の水性分散液が得られることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討し完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、水、無機系粒子、主鎖にカルボキシル基を有する高分子分散剤または主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤を含有する無機系粒子水性分散液である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無機系粒子水性分散液は、高濃度でも安定に分散しているため、製造時の作業効率が良好であり、また長期安定して分散しているため、使用時の機能発現が長期間担保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(無機系粒子)
本発明に用いられる無機系粒子は、特に限定されない。例えば、金属粉、ガラス粉、石英粉、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、セラミックス原料粒子、金属酸化物粒子、複合酸化物粒子、金属酸化物の合金の粒子、金属錯体が好ましいものとして挙げられる。
具体的には、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、フッ化マグネシウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al23・SiO2系無機ガラス、MgO・Al23・SiO2系無機ガラス、LiO2・Al23・SiO2系無機ガラス;低融点ガラス;種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ;セラミックス原料粒子;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン等の金属酸化物粒子;アンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、チタン酸バリウム、アルミ含有酸化亜鉛、酸化アルミニウム含有酸化亜鉛等の複合酸化物の粒子、ジンクピリチオン等の金属錯体等が挙げられる。これら無機系粒子は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、酸化亜鉛又は酸化アルミニウム含有酸化亜鉛が本発明に好適である。酸化アルミニウム含有酸化亜鉛の具体例としては、SEABIO Z−28(大和化学製)が挙げられる。
無機系粒子の平均粒径は、その種類によって大きく異なるが、通常0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。
【0011】
(高分子分散剤)
本発明に用いられる高分子分散剤は、主鎖にカルボキシル基を有する高分子または主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子である。高分子の主鎖は炭素−炭素結合によって連なっているものが好ましい。高分子分散剤の分子量は、性能などの面から、重量平均分子量で10000〜30000の範囲にあるのが好ましい。カルボキシル基またはイオン性親水性基およびノニオン性親水性基は、通常、一本の主鎖に複数有している。
【0012】
イオン性親水性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、硫酸エステル基、アミノ基、燐酸エステル基などが挙げられる。これらのうちカルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好ましい。ノニオン性親水性基としては、ポリオキシアルキレン基が挙げられる。
【0013】
該高分子分散剤は、式(1)で示される単量体に由来する構成単位(A)50〜99質量%、無水マレイン酸または式(2)で示される単量体に由来する構成単位(B)1〜50質量%および共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(C)0〜30質量%を有する共重合体であることが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中の、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
4は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。炭素数が4を超えると原料の入手が困難なため好ましくない。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基が挙げられる。プロピレン基としては、1−プロピレン基、2−プロピレン基が好適であり、ブチレン基としては、1,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基が好適である。
【0016】
5は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、フェニル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ナフチル基等がある。これらのうち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基が好ましい。炭化水素基の炭素数が22を超えると親水性が低下傾向になる。
【0017】
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上である。2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。
pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数である。pは、1〜150、好ましくは20〜100である。
【0018】
【化2】

【0019】
式(2)中の、Xは−OM2を表す。
1およびM2はそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。
アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。
有機アンモニウムは、有機アミン由来のアンモニウムである。有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンが挙げられる。好ましくはモノエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンである。
【0020】
構成単位(C)の由来元となる共重合可能な他の単量体としては、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、p−スチレンスルホン酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、イソブチレン等が挙げられる。これら共重合可能な他の単量体は1種単独でも2種以上組み合わせて用いることができる。構成単位(C)の由来元となる共重合可能な他の単量体としては、スチレンを含むものが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる高分子分散剤は、構成単位(A)50〜99質量%と、構成単位(B)1〜50質量%および構成単位(C)0〜30質量%を有する共重合体であり、好ましくは、構成単位(A)75〜99質量%、構成単位(B)1〜25質量%、および構成単位(C)0〜10質量%を有する共重合体である。
【0022】
本発明に用いられる主鎖にカルボキシル基を有する高分子分散剤の具体例としては、マレイン酸またはその誘導体、アクリル酸、メタクリル酸またはその誘導体を有する共重合体;マレイン酸−スチレンスルホン酸塩の共重合物またはその塩;無水マレイン酸−スチレン共重合物およびその加水分解物またはその塩;無水マレイン酸−オレフイン共重合物およびその加水分解物またはその塩;が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子分散剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合物またはその塩;ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテル−マレイン酸共重合物またはその塩;ポリオキシアルキレンモノアルキルモノ(メタ)アリルエーテル−無水マレイン酸共重合物またはその加水分解物またはその塩等が挙げられる。さらに、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル−無水マレイン酸共重合体;ポリオキシエチレンモノアリルエーテル−マレイン酸共重合体およびその塩;ポリオキシエチレンモノアリルエーテル−無水マレイン酸−スチレン共重合体;ポリオキシエチレンモノアリルエーテル−マレイン酸−スチレン共重合体およびその塩;ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体;ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル−マレイン酸共重合体およびその塩;ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル−無水マレイン酸−スチレン共重合体;ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル−マレイン酸―スチレン共重合体およびその塩等が挙げられる。
市販されているものとしては、マリアリムAKM、マリアリムEKM(日本油脂社)を好適な例として挙げられる。
【0024】
これら高分子分散剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また高分子分散剤の量は、無機系粒子水性分散液100質量部当り、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。高分子分散剤の量が少なすぎると分散安定性の向上効果が十分に発揮され難くなる。高分子分散剤の量が多すぎると、水性分散液の物性が損なわれるおそれがある。
【0025】
(ノニオン性界面活性剤)
本発明で用いるノニオン性界面活性剤は、親水部にポリオキシアルキレン構造を有するものである。
そのようなノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーやポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジスチリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアリールエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンポリアリールエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油等のポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化植物油;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヒマシ油等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン植物油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪アミン、多価アルコールおよび蔗糖のエステルなどが挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレン基とアルキル基またはフェニル基とのエーテルが好ましく、特にポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルが好ましい。
【0026】
好適に使用されるポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルでは、ポリオキシアルキレン基部分が重合度2〜50のポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基であることが好ましい。またアリールフェニル基部分が、フェニル基、ナフチル基、スチリル基等の炭素数6〜40のアリール基で、モノ−、ジ−またはトリ置換されたフェニル基が好ましい。
ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
これらノニオン性界面活性剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またノニオン性界面活性剤の量は、無機系粒子水性分散液100質量部当り、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。ノニオン性界面活性剤の量が少なすぎると分散安定性の向上効果が十分に発揮され難くなる。ノニオン性界面活性剤の量が多すぎると、水性分散液の物性が損なわれるおそれがある。
【0028】
(アニオン性界面活性剤)
本発明で用いるアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型などがある。
【0029】
カルボン酸型アニオン性界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アルシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−脂肪酸サルコシネート、脂肪酸またはその塩などが挙げられる。。
【0030】
硫酸エステル型アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルコールエトキシサルフェート、油脂硫酸エステル塩などが挙げられる。具体的には、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキルフェニルエーテルのポリマーの硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)フェニルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマーの硫酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの硫酸エステル、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸および硫酸化オレフィン等の硫酸エステル、並びにそれら硫酸エステルの塩が挙げられる。
【0031】
スルホン酸型アニオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン塩、アミドスルホン酸塩などが挙げられる。さらに具体的には、パラフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキルフェニルエーテルスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル、ナフタレンスルホン酸、(モノまたはジ)アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、(モノまたはジ)アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、イゲポンT(商品名)、ポリスチレンスルホン酸およびスチレンスルホン酸とメタアクリル酸の共重合物等のスルホン酸、並びにそれらスルホン酸の塩が挙げられる。
【0032】
リン酸エステル型アニオン性界面活性剤としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩などが挙げられる。さらに具体的には、アルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)アルキルフェニルエーテルのポリマーの燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)フェニルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)ベンジルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマーの燐酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの燐酸エステル、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールイミンおよび縮合燐酸(例えばトリポリリン酸等)等の燐酸エステル、並びにそれら燐酸エステルの塩が挙げられる。
これらアニオン性界面活性剤のうち、スルホコハク酸エステル塩およびリン酸エステル塩を用いることが好ましい
【0033】
これらアニオン性界面活性剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またアニオン性界面活性剤の量は、無機系粒子水性分散液100質量部当り、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。アニオン性界面活性剤の量が少なすぎると分散安定性の向上効果が十分に発揮され難くなる。アニオン性界面活性剤の量が多すぎると、水性分散液の物性が損なわれるおそれがある。
【0034】
本発明の無機系粒子水性分散液においては、無機系粒子の濃度は、取扱い性や成形性などの点から、20〜70質量%の範囲、特に30〜65質量%の範囲が好ましい。
【0035】
本発明の無機系粒子水性分散液においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、他の分散剤、粘度調整剤、他の界面活性剤、消泡剤など、従来公知の各種添加剤を含有させることができる。
【0036】
本発明の無機系粒子水性分散液は、水性媒体中に、無機系粒子、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤、ならびに必要に応じて含有させることができる他の各種添加剤を所定の割合で加え、攪拌混合し、均質に分散させ、得られた混合液を粉砕処理することにより調製することができる。この際、水性媒体としては、例えば水、又は水と水に対して混和性を有する有機化合物、具体的には低級アルコール、グリコール類、グリコールエーテル類などとの混合物などが用いられる。粉砕処理には、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル等が用いられる。このようにして本発明の無機系粒子水性分散液を、得ることができる。また、得られた水性分散液には所望により他の水性分散液、各種添加剤をさらに追加することができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味する。
【0038】
実施例
表1に示す処方に従って各成分をスリーワンモーターを用いて、600rpmの回転速度で攪拌し、静置後も沈殿物が生じなくなるまで混合した。続いて横型湿式粉砕機(「ダイノーミル」、300ml連続式ベッセル:スイスWAB社製)を用いて、送液量300ml/分にて粉砕を行い、粉砕物を得た。用いたダイノーミルの中を、表2に示す処方の液で洗浄し、該洗浄液と前記粉砕物とを混合攪拌して無機系粒子水性分散液を得た。得られた無機系粒子水性分散液は、平均粒径0.18μm、粘度40mPa・sであり、目視にて分散性を確認したところ、良好な分散性を示した。
水性分散液を二葉科学製プログラム低温度恒温槽に入れ、50℃にて72時間と−15℃にて72時間を1サイクルとする加温加速試験を行った。試験後、目視にて分散性を確認したところ、良好な分散性を示していた。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
比較例
ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(Soprohor BSU)と、トリスチリルフェニルエーテルフォスフェート・カリウム塩(NewKalgen FS3K)を用いなかった以外は実施例と同じ手法にて水性分散液の調製を試みた。混合困難で水性分散液を得られなかった。
比較例において、酸化亜鉛(SEABIO Z-28)の量を31質量部から20質量部に減らしても、粘度が高く、攪拌混合が困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、無機系粒子、主鎖にカルボキシル基を有する高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤を含有する無機系粒子水性分散液。
【請求項2】
水、無機系粒子、主鎖にイオン性親水性基とノニオン性親水性基とを有する高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤を含有する無機系粒子水性分散液。
【請求項3】
高分子分散剤が、式(1)で示される単量体に由来する構成単位(A)50〜99質量%、無水マレイン酸または式(2)で示される単量体に由来する構成単位(B)1〜50質量%および共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(C)0〜30質量%を有する共重合体である請求項2に記載の無機系粒子水性分散液。

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R5は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数でp=1〜150である。)

(式中、Xは−OM2を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。)
【請求項4】
共重合可能な他の単量体がスチレンを含むものである請求項3に記載の無機系粒子水性分散液。
【請求項5】
ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基とアルキル基またはフェニル基とのエーテルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機系粒子水性分散液。
【請求項6】
アニオン性界面活性剤は、スルホコハク酸エステル塩およびリン酸エステル塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機系粒子水性分散液。
【請求項7】
無機系粒子が、金属粉、ガラス粉、石英粉、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、セラミックス原料粒子、金属酸化物粒子、金属酸化物の合金の粒子および金属錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機系粒子水性分散液。
【請求項8】
無機系粒子が、酸化亜鉛または酸化アルミニウム含有酸化亜鉛である請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機系粒子水性分散液。
【請求項9】
水、無機系粒子、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤を、混合撹拌し、粉砕することを含む請求項1〜8に記載の無機系粒子水性分散液の製造方法。

【公開番号】特開2010−30836(P2010−30836A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194762(P2008−194762)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】