説明

無機質建築材

【課題】強度及び耐久性が高く、耐火性に優れた無機質建築材を提供する。
【解決手段】セメントを主成分とする成形材料により形成される無機質建築材に関する。成形材料は、セメント100質量部に対して15〜40質量部の水酸化アルミニウムと、この水酸化アルミニウム100質量部に対して10〜20質量部の石膏とを含む。好ましくは、石膏が無水石膏である。成形材料に水酸化アルミニウムと石膏とを混合することにより、耐火性、強度、耐凍害性の高い無機質建築材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを主成分とする無機質建築材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを主成分とした無機質建築材が知られている。無機質建築材は、セメント系材料が硬化して形成されたものであり、柱材、壁材などの建築構造材料となるものである。
【0003】
セメントを主原料とした無機硬化体において耐火性能を向上することは商品価値を高める上で有効である。セメント系の混和材料を用いて耐火性能を向上させる方法にはいくつかあるが、その中の1つの方法として、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどを添加することが知られている。これらの物質は、ある温度域になると分解・脱水により吸熱反応がおこり基材の温度上昇を抑制する効果がある。分解温度としては、水酸化アルミニウムの方が水酸化マグネシウムよりも低く、そのため、樹脂成分が含まれる系では分解温度の低い水酸化アルミニウムの方が高い難燃効果を得ることが可能である。
【0004】
特許文献1では、耐火性を高めるために、セメント材料に水酸化アルミニウムなどの吸熱物質を混合し、高強度コンクリートの表面に被覆させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−116357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セメント系材料に水酸化アルミニウムを添加すると、セメントの水和反応が阻害され、著しく強度や耐久性が低下する場合がある。そのため、水酸化アルミニウムの添加量を制限したり、水酸化アルミニウムの代用材料として水酸化マグネシウムを添加したりしていた。
【0007】
特許文献1には、コンクリート表面への被覆材として、セメント系材料に水酸化アルミニウムを添加したものが記載されているが、このような混合材料は、被覆材としてはよいものの、それ自体の硬化体では強度や耐久性が十分でなく、無機質建築材の原料にすることは難しかった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、強度及び耐久性が高く、耐火性に優れた無機質建築材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無機質建築材は、セメントを主成分とする成形材料により形成される無機質建築材であって、前記成形材料は、前記セメント100質量部に対して15〜40質量部の水酸化アルミニウムと、この水酸化アルミニウム100質量部に対して10〜20質量部の石膏とを含むことを特徴とする。
【0010】
上記無機質建築材は、好ましくは、前記石膏が無水石膏である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、強度及び耐久性が高く、耐火性に優れた無機質建築材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
無機質建築材の成形に用いる材料は、セメントを主成分とする成形材料であり、好ましくは水硬性材料である。この成形材料は、主成分であるセメントの他に、水酸化アルミニウムと石膏とを含むものであり、さらにその他に、必要に応じて、パルプ繊維、骨材、珪石粉、補強繊維、減水剤などを配合して調製することができる。
【0013】
成形材料にあっては、水酸化アルミニウムが含まれることによって耐火性が向上するものである。ここで、成形材料により硬化体を作製する際、水酸化アルミニウム存在下においてセメントの水和反応が進むと強度の低いハイドロガーネット結晶が生成されてしまう。ハイドロガーネット結晶が増加すると強度が弱くなり無機質建築材の強度を低下させてしまうことになる。しかしながら、水酸化アルミニウムとともに石膏を成形材料に添加するとハイドロガーネット生成が抑制され、セメントの良好な水和反応が進行し、硬化体に高い強度が発現させることが見出されたのである。これにより、水酸化アルミニウムと石膏とを同時に含むセメント系成形材料が発明されたものである。
【0014】
水酸化アルミニウムは、成形材料において、セメント100質量部に対して15〜40質量部含まれる。この範囲で水酸化アルミニウムが含まれることにより耐火性と強度を高めることができる。水酸化アルミニウムの量が上記の範囲未満では耐火性が低くなる。水酸化アルミニウムの量が上記の範囲を超えると強度や耐久性が悪くなる。耐火性及び強度の観点から、セメント100質量部に対する水酸化アルミニウムの量は、15〜35質量部であることが好ましい。
【0015】
石膏は、成形材料において、水酸化アルミニウム100質量部に対して10〜20質量部含まれる。この範囲で石膏が含まれることにより、セメントの水和反応を良好に進行させることができ、無機質建築材の耐火性と強度を高めることができる。石膏の量が上記の範囲未満では添加の効果が見られなくなり無機質建築材の強度が低くなる。石膏の量が上記の範囲を超えると石膏が過剰になって物性が低下し品質が劣化する。過剰に石膏を添加すると硬化体中の未反応の石膏が増加し吸水量が増えるため、寸法変化が大きくまた凍害性などの耐久性が低下することになるのである。強度の観点から、水酸化アルミニウム100質量部に対する石膏の量は、12〜18質量部であることが好ましい。特に、水酸化アルミニウム100質量部に対する石膏の量が15質量部であることが好ましい。
【0016】
石膏としては、無水石膏、二水石膏のいずれでも使用することができる。二水石膏は排煙脱硫石膏についても効果がある。また、天然石を粉砕した無水石膏について効果が確認されている。ただし、二水石膏は水分を含むため乾式にて混合する際は均一に混ざりにくいので、成形材料の調製の観点や得られる無機質建築材の均一性の観点から、無水石膏を用いることが好ましい。
【0017】
無機質建築材は、上記のように水酸化アルミニウムと石膏を配合した成形材料を用いて製造されるものである。例えば、成形材料をミキサーなどで混練し、押出機にてシート状にし、プレス成形したり、あるいは、型材に投入した後、室温にて所定時間、放置し養生することにより、柱材、板材などの所望の無機質建築材を得ることができる。また、成形ベルトの上に成形材料を層状に供給し、そして成形に必要な量の水を散布した後に、ロール等で圧縮成形し、この成形板をオートクレーブ養生して硬化させることによって、無機質建築板を得ることができる。
【0018】
このようにして得られる無機質建築材にあっては、水酸化アルミニウムが含まれていることにより耐火性が高いものであり、しかも、石膏が水酸化アルミニウムによるハイドロガーネット生成を抑制するので、強度が高いものである。また、水酸化アルミニウムと石膏を配合することで、耐凍結融解性を低下させることなく耐火性の高い硬化体を得ることができるものである。
【0019】
そして、得られた無機質建築材は、そのまま、あるいは、着色層などの所望の塗膜を形成し塗装して建築材料として使用することができる。
【実施例】
【0020】
[試験体の作成]
表1に示す配合量(質量%)で各原料を小型ミキサーにて混合混練し、各成形材料を調製した。簡易の押出機にてシート状にし、プレスにて8mm厚に成形した。この成形材料を60℃にて24時間養生し板状の試験体を作成した。
【0021】
なお、軽量骨材としてパーライトを使用し、減水剤としてポリカルボン酸系の減水剤を使用した。また、ポリプロ繊維とは、ポリプロピレン繊維のことである。また、A〜D成分の合計量(水以外)を100質量%とした。
【0022】
[試験体の評価]
各試験体について3点曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。また、水中に浸漬し24時間後の吸水率を測定した。また、耐凍結融解性評価(耐凍害性)についてはJIS−B法気中凍結水中融解300サイクル後に外観評価を行った。耐凍害性では、厚み膨潤率1%以下のものを「◎」とし、膨潤率が1%を超えて3%以下のものを「○」とし、3%を超えて膨潤したものを「×」とした。また、耐火性についてはコーンカロリーメーターにて評価した。耐火性では、着火しなかったものを「○」とし、600秒より後で1200秒以内に着火したものを「△」とし、600秒以内に着火したものを「×」とした。
【0023】
結果を表1に示す。
【0024】
比較例1〜4で示されるように、石膏を配合しない場合、水酸化アルミニウムを増量するにつれて曲げ強度が著しく低下することが分かる。また、吸水率はそれほど変わらないが、耐凍害性能は悪化していくことが確認された。
【0025】
実施例1〜3に示されるように、二水石膏の系では、二水石膏を所定量添加すると、曲げ強度が上昇した。この曲げ強度は、水酸化アルミニウム100質量部に対して15質量部の二水石膏の添加で最大となった。一方、比較例5に示すように、二水石膏の添加量が少ないと十分な強度が得られなかった。また、比較例6で示されるように、二水石膏の添加量が上がると強度が低下し、比較例7のように二水石膏を過剰に添加すると吸水率が上昇し耐凍害性が悪化する傾向であることが確認された。
【0026】
実施例4〜6で示されるように、無水石膏の系では、無水石膏を所定量添加すると、曲げ強度が上昇した。この曲げ強度は、水酸化アルミニウム100質量部に対して15質量部の無水石膏の添加で最大となった。一方、比較例8で示されるように、無水石膏の量が少ない場合、十分な強度が得られなかった。
【0027】
また、比較例9〜11で示されるように、水酸化アルミニウム量が少ない場合、良好な耐火性が得られなかった。
【0028】
以上のように、石膏の好適な添加量は、水酸化アルミニウム100質量部に対して10〜20質量部であり、特に、水酸化アルミニウム100質量部に対し石膏15質量部の割合が最適であることが確認された。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主成分とする成形材料により形成される無機質建築材であって、前記成形材料は、前記セメント100質量部に対して15〜40質量部の水酸化アルミニウムと、この水酸化アルミニウム100質量部に対して10〜20質量部の石膏とを含むことを特徴とする、無機質建築材。
【請求項2】
前記石膏が無水石膏であることを特徴とする、請求項1に記載の無機質建築材。

【公開番号】特開2013−18671(P2013−18671A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151791(P2011−151791)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】