説明

無機質球状化粒子の製造方法、無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置

【課題】原料粉体の融点に応じて圧力を調整しつつ、火炎長を適切に保つことができる無機質球状化粒子の製造方法、それに用いる無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の無機質球状化粒子の製造方法は、高圧雰囲気内でバーナによって発生させた火炎にキャリアガスによって原料粉体を投入して無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子の製造方法であって、原料粉末の融点に応じて高圧雰囲気の圧力を調整するとともに、火炎長をキャリアガスの噴出速度によって調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子の製造方法、それに用いる無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物の球状粒子を製造する方法として各種方法が知られているが、生産性や経済性の面から工業的には火炎法が広く採用されている。この火炎法は、燃料と支燃性ガス(助燃ガス)とをバーナから噴出させて形成した火炎中に原料粉末を投入し、火炎の高温雰囲気内で原料粉末を溶融乃至半溶融させて表面張力により粉末表面を球状化させることで球状粒子を得ている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
しかしながら、メタンやプロパンを主成分とするガス燃料の燃焼反応により形成される火炎の高温雰囲気内で溶融処理を行う火炎法では、火炎温度以上の融点をもつ材料の溶融は不可能であり、溶融可能な材料に制限があった。例えば、プロパン−酸素系において、化学量論比を満たし、各化学種が完全に混合され、完全に反応した状態の理論最高温度−断熱平衡火炎温度は3095Kであるから、3095Kを超える融点を有する材料の溶融処理は理論的に不可能である。
【0004】
また、融点が3095K以下の材料でも、融点が3095Kに近づくにしたがい、単位燃料流量当たりの理論溶融処理量[kg/Nm・fuel]が減少する事が知られている。
そこで、火炎法を用いた球状粒子の製造方法においては、高圧雰囲気中で火炎を形成することで、理論最高温度以上の火炎温度を形成し、原料粉末を処理する方法も行われている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
特許文献3に記載された球状粒子の製造方法では、球状粒子製造用バーナに搬送された原料粉末は高圧燃焼チャンバー内の高圧雰囲気中で形成された火炎中に投入され、高温の火炎中で溶融乃至半溶融することによって球状化する。球状化した粒子は高圧用のサイクロン及びキャンドルフィルターで捕捉され、製品球状粒子として回収される。球状粒子を製造して分離回収するまでの系内の圧力は排気弁の開度を制御することによって予め設定された高圧雰囲気に調節される。系内を高圧雰囲気に保つことで火炎の温度を上昇させることができるので、大気圧雰囲気では不可能だった高融点材料の球状化を行うことができる。
【0006】
図8は、特許文献3に記載された無機質球状化粒子製造用バーナのノズル部を拡大した断面図であり、図9はその先端側から眺めた平面図である。
この高圧燃焼球状粒子製造用バーナのノズル部100は、キャリアガスに搬送された原料粉末を供給する原料粉末供給路101と、原料粉末供給路101の外側の円周上に配置された複数の供給路からなる燃料ガス供給路102と、燃料ガス供給路102の外側の円周上に配置された複数の供給路からなる旋回酸素供給路103と、旋回酸素供給路103の外側の円周上に配置された複数の供給路からなる直進酸素供給路104と、直進酸素供給路104の外側の円周上に配置された冷却水通路105a,105bと、先端側に拡径した燃焼室106とを備えている。
また、原料粉末供給路101の先端には燃焼室106の底部108に形成された複数の噴出口からなる原料粉末噴出口107、燃料ガス供給路102の各供給路の先端には燃料ガス噴出口109、旋回酸素供給路103の各供給路の先端には旋回酸素噴出口110、直進酸素供給路104の各供給路の先端には直進酸素噴出口111が形成されている。
【0007】
この高圧燃焼球状粒子製造用バーナでは、上記の圧力の調整による火炎温度の高温化によって高融点材料の球状化を図る他に、直進酸素噴出口111から噴出される直進酸素と旋回酸素噴出口110から噴出される旋回酸素の流量割合と流速割合とを調節することにより、火炎の形状と火炎の温度分布とを調整することによって高融点材料の球状化を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−288399号公報
【特許文献2】特開2007−15884号公報
【特許文献3】特開2010−58059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、高圧雰囲気中で火炎を形成することにより、理論最高温度以上の火炎を形成することが可能となるが、高圧雰囲気場においては、圧力の上昇とともに火炎の長さ(火炎長)が短くなってしまい、原料粉体を球状化するための火炎内滞留時間が確保できないという問題があった。
【0010】
火炎中において原料粉体を効率よく球状化するためには、粒径や融点といった物理的性質に適した温度履歴を原料粉体に与える必要がある。例えば、平均粒径の大きい原料粉体を処理する場合には、粉体粒子に十分な熱量を与えるため、火炎中に長時間滞留させる必要がある。
【0011】
一方、平均粒径の小さい粉体を処理する場合には、粉体粒子が長時間火炎中に滞在すると、火炎中で粒子同士が衝突し、融着することにより原料粉体の粒子と比較して粒径が大きくなってしまうという問題が生じるため、短時間で火炎を通過させる必要がある。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みて為されたものであり、高圧雰囲気中でバーナによって形成された火炎中で高融点物質を球状化する際に、原料粉体の融点に応じて圧力を調整しつつ、火炎長を適切に保つことができる無機質球状化粒子の製造方法、それに用いる無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行なった結果、火炎中における原料粉体の加熱時間は原料粉体の火炎中の滞留時間に依存し、原料粉体の滞留時間は火炎長に依存し、火炎長はその原料粉体を搬送するキャリアガスの噴出孔における噴出速度によって変更できることに着目した。そして、高融点物質を球状化するためには高圧雰囲気する必要があるが、高圧になることで短くなった火炎長をキャリアガスの噴出速度を調整することにより原料粉体を球状化するのに十分な火炎長に回復し、これによって、様々な高融点物質に対して融点以上の火炎温度を実現しつつ、原料粉体の球状化に最適な火炎内滞留時間を確保して、良好な無機質球状化粒子を製造することに想到して本発明を完成させた。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、高圧雰囲気内でバーナによって発生させた火炎にキャリアガスによって原料粉体を投入して無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子の製造方法であって、前記原料粉末の融点に応じて前記高圧雰囲気の圧力を調整するとともに、火炎長を前記キャリアガスの噴出速度によって調整することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無機質球状化粒子の製造方法において、前記圧力の調整を行った後に、火炎長を維持するように前記キャリアガスの噴出速度を調整することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の無機質球状化粒子の製造方法において、前記噴出速度の調整を、前記バーナにおいて同心状に配置された原料粉体噴出孔の噴出面積を変化させることによって行うことを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子の製造方法において、前記キャリアガスの噴出速度を変化させることにより前記高圧雰囲気の圧力を制御することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子の製造方法に使用するバーナであって、キャリアガスによって原料粉体を噴出するための原料粉体噴出孔が同心状に設けられ、前記キャリアガスの噴出速度を調整するために前記原料粉体噴出孔の噴出面積を変化させることができることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを炉頂部に鉛直下向きに設けられた竪型炉と、該竪型炉内の圧力を調節する圧力調節弁と、下流にサイクロン及びバグフィルターとを備えることを特徴とする無機質球状化粒子製造装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無機質球状化粒子の製造方法によれば、原料粉末の融点に応じて高圧雰囲気の圧力を調整することで火炎温度を適切に設定するとともに、キャリアガスの噴出速度を調整することによって形成された火炎長に応じた原料粉末の火炎中の滞留時間を調整する構成を採用したので、様々な高融点物質に対して融点以上の火炎温度を実現しつつ、原料粉体の球状化に最適な火炎内滞留時間を確保して、良好な無機質球状化粒子を製造することができる。また、原料粉体の物性に応じて圧力を調整しつつ、火炎長を適切に保つことができるため、バーナやノズルを交換することなく、球状化粒子を効率よく得ることができる。
【0021】
本発明の無機質球状化粒子の製造方法によれば、圧力の調整を行った後にて得られた火炎長に対して、原料粉末の火炎中の滞留時間を適切に保つようにキャリアガスの噴出速度を調整する構成を採用することにより、高圧雰囲気場においてその圧力を変化させた際に、圧力上昇によって火炎が短くなった場合でも、また、圧力降下によって火炎が長くなった場合でも、キャリアガスの噴出速度を調整することで火炎中における原料粉体の滞留時間を適切に管理して良好な無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0022】
本発明の無機質球状化粒子の製造方法によれば、キャリアガスの噴出速度の調整を、バーナにおいて同心状に配置された原料粉体噴出孔の噴出面積を変化させることによって行う構成を採用することにより、噴出面積を大きくした場合にはキャリアガスの噴出速度が遅くなって火炎中における原料粉体の滞留時間を長くすることができ、また、噴出面積を小さくした場合にはキャリアガスの噴出速度が速くなって火炎中における原料粉体の滞留時間を短くすることができ、高融点物質の種類に応じて良好な無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0023】
本発明の無機質球状化粒子の製造方法によれば、キャリアガスの噴出速度を変化させることにより高圧雰囲気の圧力を制御する構成を採用することにより、高融点物質の種類に適した火炎温度に調整して良好な無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0024】
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナによれば、キャリアガスによって原料粉体を噴出するための原料粉体噴出孔が同心状に設けられ、キャリアガスの噴出速度を調整するために原料粉体噴出孔の噴出面積を変化させることができる構成を採用したので、様々な高融点物質に対して融点以上の火炎温度を実現しつつ、原料粉体の球状化に最適な火炎内滞留時間を確保して、良好な無機質球状化粒子を製造することができる。
【0025】
本発明の無機質球状化粒子製造装置によれば、無機質球状化粒子製造用バーナを炉頂部に鉛直下向きに設けられた竪型炉と、該竪型炉内の圧力を調節する圧力調節弁と、下流にサイクロン及びバグフィルターとを備える構成を採用したので、原料粉体の噴出方向と落下方向と燃料の噴出方向が一致するため、原料粉体と一体化した火炎の火炎長が延伸し、より高融点の物質について良好な無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の無機質球状化粒子の製造方法を実施可能な無機質球状化粒子製造装置の一例を示す系統図である
【図2】図1に示す無機質球状化粒子製造用バーナの概略構成を示す断面図であり、噴出面積変更部材を構成する先端部の先端面をノズル部の先端面に対して面一とした状態を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の平面図である。
【図4】図1に示す無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、ノズル部の先端面から噴出面積変更部材を構成する先端部を突出させた状態を模式的に示す図である。
【図5】図4に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の平面図である。
【図6】キャリアガスの噴出速度の調整を行った場合と行わなかった場合の炉内圧力とガラス化率の関係を示すグラフである。
【図7】キャリアガスの噴出速度の調整を行った場合と行わなかった場合の炉内圧力とシリカ粉末の処理能力の関係を示すグラフである。
【図8】従来の無機質球状化粒子製造用バーナの概略構成を示す断面図である。
【図9】図8に示す無機質球状化粒子製造用バーナの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0028】
図1は、本発明の無機質球状化粒子の製造方法を実施可能な無機質球状化粒子製造装置の一例を示す系統図である。図1において、無機質球状化粒子製造用バーナ16の延在方向(バーナ中心軸方向)は、鉛直方向を示している。
図1を参照するに、無機質球状化粒子製造装置10は、キャリアガス供給源11と、燃料ガス供給源12と、支燃性ガス供給源13と、原料フィーダー14と、冷却水循環供給源15と、無機質球状化粒子製造用バーナ16と、竪型炉17と、送風ブロア18と、捕集部19を構成するサイクロン21及びバグフィルター23と、空気導入口22と、空気供給管24と、ダクト25,26と、圧力調整弁20と、圧力計Pと、噴出速度制御装置Mとを有する。
【0029】
キャリアガス供給源11は、キャリアガスを原料フィーダー14に供給可能な状態で原料フィーダー14と接続されている。キャリアガスとしては、例えば、酸素または酸素富化空気を用いることができる。
燃料ガス供給源12は、無機質球状化粒子製造用バーナ16に、燃料ガスを供給可能な状態で、無機質球状化粒子製造用バーナ16(具体的には、後述するノズル部28)と接続されている。燃料ガスとしては、例えば、LPG(Liquefied petroleum gas)を用いることができる。
支燃性ガス供給源13は、無機質球状化粒子製造用バーナ16に、支燃性ガスを供給可能な状態で、無機質球状化粒子製造用バーナ16と接続されている。支燃性ガスとしては、例えば、酸素または酸素富化空気を用いることができる。
【0030】
原料フィーダー14は、無機質原料粉体Xを供給するためのものである。原料フィーダー14から供給された無機質原料粉体Xは、キャリアガス供給源11から供給されたキャリアガスにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16(具体的には、後述するノズル部28)に輸送される。
無機質原料粉体Xとしては、例えば、シリカ(融点は1722℃)、アルミナ(融点は2053℃)、ジルコニア(融点は2680℃)等を例に挙げることができる。
【0031】
冷却水循環供給源15は、無機質球状化粒子製造用バーナ16の後述する筒状部29に冷却水を供給、及び筒状部29から冷却水を回収可能な状態で、筒状部29と接続されている。つまり、冷却水循環供給源15は、筒状部29に冷却水を供給すると共に、筒状部29から回収した冷却水を冷却し、再度、筒状部29に供給するためのものである。
【0032】
圧力計Pは、竪型炉17内の圧力を計測するためのものである。
竪型炉17内の圧力は、原料粉末の融点に応じて、圧力調整弁20の開度を制御することによってあらかじめ設定された高圧雰囲気に調節される。
圧力調整弁20の開度の調整は自動又は手動で行うことができる。
【0033】
噴出速度制御装置Mは、後述する噴出面積変更部材37の移動(進退)を制御して噴出面積を変更し、キャリアガスの噴出速度を調整するものである。具体的には、噴出速度制御装置Mは、竪型炉17内の圧力を示す圧力計Pからの圧力値とバーナに供給される燃料量とに基づいてバーナの火炎長を計算し、粒子(原料粉体)の滞留時間が最適になる噴出速度となるように、噴出面積変更部材37の移動の信号を送り、噴出面積を調整することができる。
噴出速度制御装置Mを用いずに、竪型炉17内の圧力を示す圧力計Pからの圧力値とバーナに供給される燃料量とに基づいてバーナの火炎長を計算し、手動で噴出面積変更部材37の移動を行ってもよい。
【0034】
球状化した粒子は、送風ブロア18から竪型炉17内に供給される加圧された空気によって冷却され、サイクロン21及びバグフィルター23で捕捉され、製品球状粒子として回収される。球状粒子を分離した燃焼排ガスは、圧力調整弁20で大気圧付近まで減圧されて大気中に放出される。球状粒子を製造して分離回収するまでの竪型炉17内の圧力は、圧力調整弁20の開度を制御することによってあらかじめ設定された高圧雰囲気に調節される。
【0035】
このように、竪型炉17内を高圧雰囲気に保って形成した火炎で無機質原料粉末の球状化を行うことにより、火炎の温度を上昇させることができるので、大気圧雰囲気では不可能だった高融点材料の球状化を行うことができる。
【0036】
燃料としては、火炎法で一般に使用されているものを使用することができ、液化天然ガス(LNG)、都市ガス(13A)、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、水素等を使用可能である。支燃性ガスとしては、必要とされる火炎温度によって適当なガスを使用することができるが、高温の燃焼火炎を得るためには酸素が最適である。また、キャリアガスとしては任意のガスを使用可能であるが、例えば酸素や窒素、これらの混合ガス等を使用することができる。
【0037】
図2は、図1に示す無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、噴出面積変更部材37を構成する先端部61の先端面61aをノズル部28の先端面33aに対して面一とした状態を模式的に示す図である。
【0038】
図2において、図1に示す無機質球状化粒子製造装置10と同一構成部分には同一符号を付す。また、図2において、Dは、原料粉体輸送孔34のうち、ノズル部28の先端面33aから露出された部分の直径(以下、「直径D」という)を示しており、dは、ノズル部28の先端面33aを通過する平面で噴出面積変更部材37を切断した際の切断面の直径(以下、「直径d」という)を示している。
【0039】
図2の場合、噴出面積変更部材37を構成する先端部61の先端面61aをノズル部28の先端面33aに対して面一とした状態を示しているため、図2に示す直径dは、噴出面積変更部材37の先端面61aの直径を示している。
さらに、図2では、説明の便宜上、無機質球状化粒子製造用バーナ16の構成要素ではない、キャリアガス供給源11、燃料ガス供給源12、支燃性ガス供給源13、原料フィーダー14、及び冷却水循環供給源15を図示する。
【0040】
図2を参照するに、ノズル部28は、鉛直方向に延在しており、火炎が形成される先端33と、原料粉体輸送孔34と、基端35と、原料粉体供給管36と、噴出面積変更部材37と、原料粉体噴出用溝39と、複数の供給管からなる燃料ガス供給管41と、複数の供給管からなる支燃性ガス供給用空間42と、複数の燃料ガス噴出孔44と、複数の支燃性ガス噴出孔45と、を有する。
【0041】
ノズル部28の先端33は、略円柱形状とされており、火炎が形成される先端面33aと、筒状部29の内壁と接触する外周側面33bと、を有する。
ノズル部28の先端面33aは、ノズル部28の延在方向に対して直交する平面とされている。ノズル部28の先端面33aは、円形面とされており、燃焼室31により露出されている。
【0042】
図2を参照するに、原料粉体輸送孔34は、ノズル部28の先端面33aから露出されるように、ノズル部28の先端33の中央に設けられている。原料粉体輸送孔34は、酸素または酸素富化空気よりなるキャリアガスに輸送された無機質原料粉体Xをノズル部28の先端面33a側に輸送すると共に、噴出面積変更部材37の先端部61を収容するための孔である。原料粉体輸送孔34は、ノズル部28の先端面33aに向かうにつれて、幅が狭くなる円錐台形状とされている。
ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体輸送孔34の直径Dは、例えば、30mmとすることができる。
【0043】
図2を参照するに、ノズル部28の基端35は、挿入穴52と、第1のねじ部53と、シール材収容溝55と、を有する。
挿入穴52は、ノズル部28の基端35を貫通するように設けられている。挿入穴52は、原料粉体供給管36内に形成される後述する第1の空間58と対向するように配置されている。挿入穴52は、第1の空間58及び原料粉体輸送孔34に噴出面積変更部材37を挿入するための穴である。
【0044】
第1のねじ部53は、挿入穴52に露出された基端35のうち、挿入穴52に挿入された噴出面積変更部材37と対向する一部に設けられている。第1のねじ部53としては、例えば、めねじを用いることができる。
【0045】
シール材収容溝55は、挿入穴52に露出された基端35のうち、第1のねじ部53の形成領域よりも燃焼室31側に位置する部分に設けられている。シール材収容溝55は、噴出面積変更部材37の外周側面37aと接触するシール材56を収容するための溝である。
シール材56としては、例えば、Oリングを用いることができる。
【0046】
図2を参照するに、原料粉体供給管36は、略円筒形状とされており、ノズル部28の延在方向に延在している。原料粉体供給管36の基端側の外周には、キャリアガス及び原料導入口36Aが設けられている。キャリアガス及び原料導入口36Aは、原料フィーダー14と接続されている。キャリアガス及び原料導入口36Aには、キャリアガスにより輸送された無機質原料粉体Xが導入される。
【0047】
原料粉体供給管36の先端は、ノズル部28の先端33の一部を構成している。原料粉体供給管36内には、円柱状空間である第1の空間58が設けられている。第1の空間58は、原料粉体輸送孔34及びキャリアガス及び原料導入口36Aと接続されている。
【0048】
第1の空間58の中心軸は、原料粉体輸送孔34の中心軸と一致している。また、第1の空間58の中心軸、及び原料粉体輸送孔34の中心軸は、ノズル部28の中心軸に相当する中心軸である。
第1の空間58には、キャリアガス及び原料導入口36Aを介して、キャリアガスに輸送された無機質原料粉体Xが供給される。第1の空間58に供給されたキャリアガス及び無機質原料粉体Xは、原料粉体輸送孔34に輸送される。
【0049】
図2を参照するに、噴出面積変更部材37は、先端部61と、第2のねじ部62と、を有する。噴出面積変更部材37は、ノズル部28の延在方向に延在しており、ノズル部28の基端35に設けられた挿入穴52に挿入されている。
噴出面積変更部材37の直径は、原料粉体供給管36の内径よりも小さくなるように構成されている。噴出面積変更部材37は、噴出面積変更部材37の中心軸がノズル部28の中心軸と一致するように、原料粉体輸送孔34、及び原料粉体供給管36内(第1の空間58)に収容されている。
【0050】
これにより、噴出面積変更部材37と原料粉体供給管36との間には、環状空間64(第1の空間58の一部)が形成され、環状空間64により、燃焼室31側にキャリアガス及び無機質原料粉体Xが輸送される。
【0051】
先端部61は、先端部61の中心軸と原料粉体輸送孔34の中心軸とが一致するように、原料粉体輸送孔34に配置されている。先端部61は、先端に向かうにつれて直径が小さくなる円錐台形状とされている。
先端部61の先端面61aは、ノズル部28の先端面33aに対して平行な円形面とされている。ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体輸送孔34の直径Dが30mmの場合、先端面61aの直径は、例えば、2mmとすることができる。
【0052】
第2のねじ部62は、噴出面積変更部材37の基端側の外周に設けられている。第2のねじ部62は、ノズル部28の基端35に設けられた第1のねじ部53と螺合するねじ部である。第1のねじ部53がめねじの場合、第2のねじ部62としては、おねじを用いることができる。
【0053】
このように、ノズル部28の基端35に第1のねじ部53を設けると共に、噴出面積変更部材37の基端側の外周に第1のねじ部53と螺合する第2のねじ部62を設けることにより、先端部61を含む噴出面積変更部材37をノズル部28の延在方向に移動させることが可能になると共に、ノズル部28の先端面33aに対する噴出面積変更部材37の先端部61の位置を規制することができる。つまり、ノズル部28の先端面33aから先端部61の一部を突出させることが可能となる。
【0054】
図3は、図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の断面図である。図3において、図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナ16と同一構成部分には、同一符号を付す。
図2及び図3を参照するに、原料粉体噴出用溝39は、原料粉体輸送孔34に露出されたノズル部28の先端33の面39aと噴出面積変更部材37を構成する先端部61の外周側面61bとの間に設けられた環状の溝である。
【0055】
図2を参照するに、原料粉体噴出用溝39は、ノズル部28の先端面33aに露出されると共に、環状空間64と接続されている。原料粉体噴出用溝39は、環状空間64により輸送されたキャリアガス及び無機質原料粉体Xを燃焼室31に噴出する。
原料粉体噴出用溝39から噴出されるキャリアガスの噴出速度は、原料粉体噴出用溝39の溝幅のうち、ノズル部28の先端面33aに露出された部分の溝幅E、すなわち、キャリアガスが噴出できる実質的な面積(噴出面積)により決定される。
【0056】
図4は、図1に示す無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、ノズル部28の先端面33aから噴出面積変更部材37の先端部61を突出させた状態を模式的に示す図である。図4において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図5は、図4に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の断面図である。図4及び図5に示す原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)は、図2及び図3に示す原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)よりも狭い場合を例に挙げて図示している。
【0057】
図2〜図5を参照するに、無機質球状化粒子製造用バーナ16では、ノズル部28の先端面33aに対して噴出面積変更部材37の先端面61aが面一とされた状態(図2及び図3に示す状態)から、燃焼室31側に向かう方向に円錐台形状とされた先端部61を移動させて、ノズル部28の先端面33aから噴出面積変更部材37の先端部61の一部を突出させる(図4及び図5に示す状態にする)ことで、原料粉体噴出用溝39の幅のうち、ノズル部28の先端面33aに露出された部分の幅E(あるいは、噴出面積)を変更可能な構成とされている。
つまり、噴出面積変更部材37は、ノズル部28の延在方向に移動することで、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変更する機能を有する。
【0058】
例えば、図2に示すように、ノズル部28の先端面33aに対して噴出面積変更部材37の先端面61aを面一にすると、噴出面積変更部材37の幅E(あるいは、噴出面積)が広くなるため、噴出面積変更部材37から噴出されるキャリアガスの噴出速度を遅くすることが可能となる。
この場合、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を長くすることが可能となるので、高融点の無機質原料粉体X1を溶融させる際に適している。
【0059】
また、図4に示すように、ノズル部28の先端面33aから噴出面積変更部材37の先端部61を突出させると、噴出面積変更部材37の幅E(あるいは、噴出面積)が狭くなるため、噴出面積変更部材37から噴出されるキャリアガスの噴出速度を速くすることが可能となる。
この場合、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を短くことが可能となるので、上記X1よりも低い融点の無機質原料粉体X2を溶融させる際に適している。
【0060】
このように、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変更可能な噴出面積変更部材37を設けることにより、原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変更するだけで、燃料室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度を変更することが可能となる。
【0061】
また、燃料室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度は、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、火炎が無機質原料粉体Xを加熱する加熱時間)を決定する。
したがって、融点の異なる無機質原料粉体Xを処理して無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0062】
本発明の無機質球状化粒子の製造方法においては、原料粉末の融点に応じて圧力調整弁20の開度を調節して当該高融点物質の融点以上の火炎温度になるように高圧雰囲気の圧力を調整し、次いで、噴出速度制御装置Mによって、竪型炉17内の圧力を示す圧力計Pからの圧力値とバーナに供給される燃料量とに基づいてバーナの火炎長を計算し、その火炎長を維持して原料粉体の滞留時間が最適になる噴出速度となるように、噴出面積変更部材37の移動の信号を送り、噴出面積を調整する。
【0063】
図2を参照するに、燃料ガス供給管41は、原料粉体供給管36の外周を囲むように設けられている。燃料ガス供給管41と原料粉体供給管36との間には、環状とされた第2の空間66が設けられている。
燃料ガス供給管41の基端側には、燃料ガス供給管41と一体に構成され、かつ燃料ガス供給管41の外側に突出する燃料ガス導入口41Aが形成されている。燃料ガス導入口41Aは、燃料ガス供給源12と接続されている。燃料ガス導入口41Aは、燃料ガス供給源12から供給された燃料ガスを、第2の空間66に導入するための導入口である。
【0064】
図2を参照するに、支燃性ガス供給用空間42は、ノズル部28の外周側面と筒状部29の内周面との間に設けられている。支燃性ガス供給用空間42は、支燃性ガス供給源13から供給された支燃性ガスを輸送する流路として機能する。
【0065】
図2及び図3を参照するに、複数の燃料ガス噴出孔44は、ノズル部28の先端33のうち、第2の空間66と対向する部分を貫通するように設けられている。複数の燃料ガス噴出孔44は、第2の空間66と接続されると共に、ノズル部28の先端面33aから露出されている。
複数の燃料ガス噴出孔44は、原料粉体噴出用溝39よりも外側の位置に配置されている。複数の燃料ガス噴出孔44は、原料粉体噴出用溝39から噴出される無機質原料粉体X及びキャリアガスの外側から燃料ガスを噴出する。
【0066】
図2及び図3を参照するに、複数の支燃性ガス噴出孔45は、ノズル部28の先端33のうち、支燃性ガス供給用空間42と対向する部分を貫通するように設けられている。複数の支燃性ガス噴出孔45は、支燃性ガス供給用空間42と接続されると共に、ノズル部28の先端面33aから露出されている。
複数の支燃性ガス噴出孔45は、複数の原燃料ガス噴出孔44よりも外側の位置に配置されている。複数の支燃性ガス噴出孔45は、複数の燃料ガス噴出孔44から噴出された燃料ガスの外側から支燃性ガスを噴出する。
【0067】
図3を参照するに、上記説明した原料粉体噴出用溝39、複数の燃料ガス噴出孔44、及び複数の支燃性ガス噴出孔45は、ノズル部28の先端面33aの中心Cに対して同心円状に配置されている。
このように、ノズル部28の先端面33aの中心Cに対して同心円状に原料粉体噴出用溝39、複数の燃料ガス噴出孔44、及び複数の支燃性ガス噴出孔45を配置することにより、火炎が無機質原料粉体Xの噴流を包み込むことが可能となるため、火炎により無機質原料粉体Xを効率よく溶融することができる。
【0068】
図2及び図3を参照するに、筒状部29は、略円筒形状とされており、ノズル部29の先端33から突出するように、ノズル部28の外周側面に設けられている。
図2を参照するに、筒状部29は、冷却水用管路68と、冷却水供給口69と、冷却水回収口71と、支燃性ガス導入口72と、を有する。
【0069】
図2を参照するに、冷却水用管路68は、筒状部29に内設されている。冷却水用管路68は、ノズル部28の先端33を冷却するための冷却水を流動させるための管路である。このように、筒状部29に冷却水用管路68を設け、冷却水用管路68に冷却水を流すことで、火炎の熱によりノズル部28の先端33が損傷することを抑制できる。
【0070】
図2を参照するに、冷却水供給口69は、冷却水用管路68の形成領域に対応する筒状部29の外壁から外側に突出するように設けられている。冷却水供給口69は、冷却水用管路68及び冷却水循環供給源15と接続されている。冷却水供給口69は、冷却水循環供給源15から供給される冷却水を冷却水用管路68に供給するための供給口である。
【0071】
図2を参照するに、冷却水回収口71は、冷却水用管路68の形成領域に対応する筒状部29の外壁から外側に突出するように設けられている。冷却水回収口71は、冷却水用管路68及び冷却水循環供給源15と接続されている。冷却水回収口71は、冷却水用管路68を流動する温度上昇した冷却水を回収するための回収口である。
【0072】
図2を参照するに、支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給用空間42と対向する筒状部29の外壁を貫通するように設けられている。支燃性ガス導入口72は、筒状部29の外壁から外側に突出している。支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給源13と接続されている。支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給源13から供給された支燃性ガスを支燃性ガス供給用空間42に供給する。
【0073】
図2を参照するに、燃焼室31は、ノズル部28の先端面33aと筒状部29の内壁29Aとで囲まれた空間であり、ノズル部28の先端面33aを露出している。
【0074】
この無機質球状化粒子製造用バーナによれば、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な噴出面積変更部材37を設けることにより、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更するだけで、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、無機質原料粉体の加熱時間)を、溶融させる無機質原料粉体Xの融点に最適な時間に設定することが可能となる。
【0075】
したがって、融点の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0076】
図1を参照するに、竪型炉17は、円筒形状とされた炉であり、竪型炉17の上端には、無機質球状化粒子製造用バーナ16の先端が収容されている。これにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16が形成する火炎は、竪型炉17の内部に形成される。
竪型炉17の下端側には、空気供給管24が接続されている。また、竪型炉17の下端側には、空気供給管24と対向するように、サイクロン21と接続されたダクト25が設けられている。
竪型炉17内では、無機質球状化粒子製造用バーナ16の火炎により、無機質原料粉体Xが溶融され、溶融した無機質原料粉体Xが竪型炉17の下方に移動しながら固まることで無機質球状化粒子Yとなる。
【0077】
送風ブロア18は、空気供給管24と接続されている。送風ブロア18は、空気供給管24を介して、竪型炉17の下端に空気を供給する。送風ブロア18は、空気供給管24を介して、竪型炉17の下端に空気を供給することで、無機質球状化粒子Yを冷却すると共に、ダクト25を介して、冷却した無機質球状化粒子Yをサイクロン19に輸送する。
【0078】
サイクロン21は、竪型炉17の下流側に設けられており、ダクト25を介して、竪型炉17の下端と接続されている。サイクロン21は、ダクト25を介して輸送された無機質球状化粒子Yのうち、第1の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集する。第1の粒子径とされた無機質球状化粒子Yは、サイクロン21の下端から捕集される。第1の粒子径は、後述する第2の粒子径よりも大きい値とされている。
【0079】
空気導入口22は、サイクロン21の上端と接続されている。空気導入口22は、サイクロン21の上端に接続されたダクト26と対向するように配置されている。空気導入口22は、サイクロン21の上端に空気を導入するための導入口である。
空気導入口22を介して、サイクロン21の上端に導入された空気は、無機質球状化粒子を冷却すると共に、ダクト26を介して、無機質球状化粒子Yをバグフィルター23に輸送する。
【0080】
バグフィルター23は、サイクロン21の下流側に設けられており、ダクト26を介して、サイクロン21の上端と接続されている。バグフィルター23は、ダクト26を介して、第1の粒子径よりも小さい第2の粒子径とされた無機質球状化粒子Yを捕集する。
【0081】
この無機質球状化粒子製造用バーナによれば、キャリアガス及び無機質原料粉体Xを噴出する原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な構成とされた無機質球状化粒子製造用バーナ16を備えることにより、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更するだけで、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、無機質原料粉体の加熱時間)を、溶融させる無機質原料粉体Xの融点に最適な時間に設定することが可能となる。
【0082】
したがって、融点の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0083】
具体的には、高融点の無機質原料粉体X1を溶融させる場合には、図2に示すように、噴出面積変更部材37の幅Eを広くする。また、上記X1よりも低い融点の無機質原料粉体X2を溶融させる場合には、図4に示すように、噴出面積変更部材37の幅E(あるいは、噴出面積)を狭くする。
【0084】
無機質球状化粒子の製造方法によれば、無機質原料粉体Xと共に燃焼室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度が、火炎により溶融させる無機質原料粉体Xの融点に最適な噴出速度となるように、原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変更する工程と、燃料ガス及び支燃性ガスで形成される火炎により、無機質原料粉体Xを溶融させて無機質球状化粒子Yを生成する工程と、を含むことにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16自体、或いは、ノズル部28を交換することなく、原料粉体噴出用溝39から噴出されるキャリアガスにより、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を最適な滞留時間に設定することが可能となる。
【0085】
これにより、融点の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【実施例】
【0086】
以下、具体的な実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
図1に示す無機質球状化粒子製造装置10(図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナ16を備えた装置)を用いて、無機質原料粉体Xを溶融させて、無機質球状化粒子Yを生成し、その後、サイクロン21及びバグフィルター23で無機質球状化粒子Yを回収した。
【0088】
このとき、キャリアガス供給源11からキャリアガスとして、酸素を7.5Nm/hの供給量で供給すると共に、原料フィーダー14から無機質原料粉体Xとして、平均粒度20μmとされたシリカ粉末を供給した。
また、燃料ガス供給源12から燃料ガスとして、LPG(Liquefied petroleum gas)を5Nm/hの供給量で供給すると共に、支燃性ガス供給源13から支燃性ガスとして、酸素を20Nm/hの供給量で供給した。
【0089】
(実施例1)
まず、大気圧(1atm)の条件において、ガラス化率(η)99%以上となるようなシリカ粉末の供給条件を決定した。
この条件において、キャリアガスの噴出速度を一定とした条件において、炉内圧力を変化させ、得られるシリカ粉末のガラス化率を測定した。
次に、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法を用いて、各圧力において形成されるバーナ火炎長に対し、火炎内での粒子滞留時間が同じとなるように、図2に示す原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変えることでキャリアガスの噴出速度を調整し、各圧力についてガラス化率(η)を測定した。
この結果を図6に示す。
【0090】
図6において、「速度調整無し(従来技術)」は、キャリアガスの噴出速度を調整せず、キャリアガスの噴出速度一定の条件の下で、炉内圧力を変化させて得られたシリカ粉末のガラス化率を示すものである。また、「速度調整有り(本発明)」は、各圧力においてキャリアガスの噴出速度を調整して得られたシリカ粉末のガラス化率を示すものである。
図6に示す通り、キャリアガスの噴出速度を調整しなかった場合には、圧力が上昇すると、ガラス化率が低下している。これは、火炎長が短くなって火炎内での粒子滞留時間が短縮したためである。これに対して、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法を用いて、キャリアガスの噴出速度を調整した場合には、ガラス化率(η)99%以上の無機質球状化粒子を得ることが可能であることが確認された。これは、炉内圧力の上昇に伴って火炎長が短くなったものをキャリアガスの噴出速度を調整することで火炎長を元の長さに回復させ、火炎内での粒子滞留時間を同じになるように維持して無機質球状化粒子の製造を行ったからである。
【0091】
(実施例2)
まず、大気圧(1atm)の条件において、ガラス化率(η)99%以上となるようなシリカ粉末の供給条件を決定した。
キャリアガスの噴出速度を一定とした条件において、炉内圧力を変化させ、99%以上のガラス化率が得られるシリカ粉末供給速度を求めた。
次に、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法を用いて、各圧力において形成されるバーナ火炎長に対し、火炎内での粒子滞留時間が同じとなるように、図2に示す原料粉体噴出用溝39の幅E(あるいは、噴出面積)を変えることでキャリアガス噴出速度を調整し、99%以上のガラス化率が得られるシリカ粉末供給速度を求めた。
図7は、大気圧におけるシリカ粉末供給速度をωp0、各圧力におけるシリカ粉末供給速度をωpとして、各圧力におけるシリカ粉末の供給速度比ωpp0で、従来技術と本発明の効果を比較したものである。
【0092】
図7に示す通り、キャリアガスの噴出速度を調整しなかった場合には、圧力が上昇すると、シリカ粉末の供給速度比ωpp0が低下している。これは、火炎長が短くなって火炎内での粒子滞留時間が短縮したため、99%以上のガラス化率にまで加熱できるシリカ粉末の量が減少した(シリカ粉末の処理能力が低下した)ためである。これに対して、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法を用いて、キャリアガスの噴出速度を調整した場合には、圧力の上昇に伴い、シリカ粉末の供給速度比ωpp0(シリカ粉末の処理能力)が向上させることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、無機質球状化粒子の製造方法、それに用いる無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10,70…無機質球状化粒子製造装置、11…キャリアガス供給源、12…燃料ガス供給源、13…支燃性ガス供給源、14…原料フィーダー、15…冷却水循環供給源、16,71…無機質球状化粒子製造用バーナ、17…竪型炉、18…送風ブロア、19…捕集部、20…圧力調整弁、21…サイクロン、22…空気導入口、23…バグフィルター、24…空気供給管、25,26…ダクト、28,72…ノズル部、29…筒状部、29A…内壁、31…燃焼室、33…先端、33a,61a…先端面、33b…外周側面、34…原料粉体輸送孔、35…基端、36…原料粉体供給管、36A…キャリアガス及び原料導入口、37…噴出面積変更部材、37a,61b…外周側面、39…原料粉体噴出用溝、39a…面、41…燃料ガス供給管、41A…燃料ガス導入口、42…支燃性ガス供給用空間、44…燃料ガス噴出孔、45…支燃性ガス噴出孔、52…挿入穴、53…第1のねじ部、55…シール材収容溝、56…シール材、58…第1の空間、61…先端部、62…第2のねじ部、64…環状空間、66…第2の空間、68…冷却水用管路、69…冷却水供給口、71…冷却水回収口、72…支燃性ガス導入口、M…噴出速度制御装置、P…圧力計、X…無機質原料粉体、Y…無機質球状化粒子、C…中心、d,D…直径、E…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧雰囲気内でバーナによって発生させた火炎にキャリアガスによって原料粉体を投入して無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子の製造方法であって、
前記原料粉末の融点に応じて前記高圧雰囲気の圧力を調整するとともに、火炎長を前記キャリアガスの噴出速度によって調整することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項2】
前記圧力の調整を行った後に、火炎長を維持するように前記キャリアガスの噴出速度を調整することを特徴とする請求項1に記載の無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項3】
前記キャリアガスの噴出速度の調整を、前記バーナにおいて同心状に配置された原料粉体噴出孔の噴出面積を変化させることによって行うことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項4】
前記キャリアガスの噴出速度を変化させることにより前記高圧雰囲気の圧力を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子の製造方法に使用するバーナであって、キャリアガスによって原料粉体を噴出するための原料粉体噴出孔が同心状に設けられ、前記キャリアガスの噴出速度を調整するために前記原料噴出孔の噴出面積を変化させることができることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項6】
請求項5に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを炉頂部に鉛直下向きに設けられた竪型炉と、該竪型炉内の圧力を調節する圧力調節弁と、下流にサイクロン及びバグフィルターとを備えることを特徴とする無機質球状化粒子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206077(P2012−206077A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75627(P2011−75627)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】