説明

無毒性シュードモナス属外毒素A及びIV型ピリン配列を含むキメラ・タンパク質

【課題】無毒性シュードモナス属毒素A配列とIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A内に挿入されているIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を提供する。本発明は、前記キメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチド、並びに上記ポリヌクレオチド又は上記キメラ・タンパク質を含む組成物も提供する。本発明は、前記キメラ・タンパク質、ポリヌクレオチド、及び本発明の組成物の使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許
当該出願は、2000年12月21日に提出された米国仮出願番号第60/257,877号の優先権を主張し、その内容の全てを本明細書中に援用する。
連邦政府によって後援された研究開発下で成された発明に対する権利に関する陳述
該当なし
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
IV型ピリンは、細菌及び酵母を含む多くの微生物を覆っている線維状構造の繊毛(pilus又はpili)の主要なサブユニットである。これらの微生物の中で、例えばP.アエルギノーザ(P.aeruginosa)、N.メニンギチジス(N.meningitides)、N.ゴノロエエ(N.gonorrhoeae)、ビブリオ・コレラ(Vibro cholera)、及びパスツレラ・マルトサイダム(Pasteurella multocidam)を含め多くの病原性種がIV型ピリンを発現する。これらの病原性微生物による感染の最初のステップは、繊毛を介した標的細胞への接着である。特にシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)のIV型ピリンは、上皮細胞上のasialoGM1受容体に結合する(Saiman et al., J. Clin. Invest. 92(4): 1875-80 (1993); Sheth et al., 11(4):715-23 (1994); Imundo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(7):3019-23 (1995); Hahn, Gene 192(1):99-108 (1997))。このように、これらの微生物の繊毛は、主要な毒性因子であり、そして病原性微生物の定着とヒトへの感染をもたらす。
【0003】
例えば、シュードモナス・アエルギノーザは、ほとんどの病院の感染症の10%〜20%を引き起こす。シュードモナス属感染は、嚢胞性線維症、ひどい傷、臓器移植、及び静注薬物常用の患者の間で多く見られる。シュードモナス属感染症は、眼内炎、心内膜炎、髄膜炎、肺炎、及び敗血症のような重篤な症状をもたらす可能性がある。特に、嚢胞性線維症(CF)の個体へのシュードモナス・アエルギノーザの定着は、この病気の進行において明らかにマイナスな一大重要事件を表す。いったん定着すれば、患者は、様々な分泌された毒性因子の傷害効果、及び宿主の免疫系の炎症反応に晒される。
【0004】
IV型繊毛は、1回転につき5つのサブユニットを有するらせん構造に配置されたピリン重合体から構成される(Forest et al., Gene 192(1):165-9 (1997);Parge, Nature 378 (6552): 32-8 (1995))。セル結合を担うピリン・タンパク質の部分は、ジスルフィド結合から下側に伸びるβ-ターン・ループ中のC末端付近に見られる(第122〜148アミノ酸)(Campbell et al., Biochemistry 36 (42): 12791-801(1997);Campbell et al., J. Mol. Biol. 267(2): 382-402 (1997); Hazes et al., J. Mol. Biol. 299(4): 1005-1017(2000); McInnes et al., Biochemistry 32 (49): 13432-40 (1993))。P.アエルギノーザについて、このループの(菌株に依存する)12又は17のアミノ酸配列が、上皮細胞上の受容体と相互に作用する。CF個体について、突然変異した嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)のRドメインの過剰産生は、asialoGM1レベルの上昇、そしてそれによるP.アエルギノーザの結合の増加をもたらしうる(Imundo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(7):3019-23 (1995); Saiman et al., J. Clin. Invest. 92(4): 1875-80 (1993); Bryan et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 19(2):269-77 (1998); Imundo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(7):3019-23 (1995); Saiman et al., J. Clin. Invest. 92(4):1875-80 (1993))。ピリンの機能研究は、繊毛の最後のピリン・サブユニット(先端部)だけが上皮細胞の受容体と相互作用することを示した(Lee et al., Mol. Microbiol. 11(4):705-13 (1994))。
【0005】
今まで、効果的な抗ピリン・ワクチンを製造するための努力は、あまりうまくいっていなかった。一つには、この限られた成功は、主要な免疫原性タンパク質(中央部)の部分が、接着を妨げる抗体を産生しないことによる。残念ながら、ピリンのC末端ループは、全く免疫原性ではなく、そして高い力価応答は、ループ配列のコピーのマルチプル・ディスプレイを利用するストラテジーの使用によってのみ報告された(Hahn et al., Behring. Inst. Mitt. (98):315-25 (1997))。CF患者について、シュードモナス属の定着を抑えるという戦略は、通常、慢性感染症の発生に関する罹患率を下げる重要な要因であると考えられている(Tang et al., Infect. Immun. 63(4):1278-85 (1995); Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94(3):967-72 (1997); Tang et al., Infect. Immun. 63(4):1278-85 (1995) Doig, P. et al., Infect. Immun. 58(1):124-30 (1990); El-Zaim, H. S. et al., Infect. Immun. 66(11): 5551-4 (1998))。
【0006】
それ故に、特にシュードモナス・アエルギノーザを含む病原性微生物による感染症を減少させるか又は防ぐための組成物を開発する必要がある。本願発明の態様は、これと他の必要性を扱う。
【発明の開示】
【0007】
本発明の概要
本発明の態様は、無毒性シュードモナス属外毒素A配列とIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を提供する、ここで、上記IV型ピリン・ループ配列は、無毒性シュードモナス属外毒素配列中にある。本発明において、IV型ピリン・ループ配列は、ピリンのC末端に鎖内ジスルフィド・ループを形成する配列に言及する。このループが、上皮細胞上の受容体と相互作用して、結合する。本発明は、一つには、シュードモナス属外毒素A配列内のIV型ピリン・ループ配列が天然に近い立体構造で存在して、そして上皮細胞上の受容体と反応することができるという発見に基づく。結果として、当該キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を含み、これは、これらの上皮細胞への結合に競合し、そしてIV型ピリンを発現する病原性微生物の上皮細胞への接着を減少させることができる。従って、前記キメラ・タンパク質は、それ自身で又は組成物で直接的に宿主における病原性微生物の接着を減少させるために使用することができる。
【0008】
本発明は、一つには、本発明のキメラ・タンパク質に対して産生された抗血清が同様に宿主における(IV型ピリンを発現する)病原性微生物の接着を減少させることに有用であるという発見にも基づく。キメラ・タンパク質が天然に近い立体構造のIV型ピリン・ループを提示するので、宿主に導入された場合、本発明のキメラ・タンパク質は、このキメラ・タンパク質のピリン・ループ部分に結合するポリクローナル抗血清を産生する。この抗血清は、病原性微生物のIV型ピリンにも結合して、それにより競合して上皮細胞受容体への病原性微生物の結合を抑制することができる。それ故に、キメラ・タンパク質は、宿主において病原性微生物の接着と定着の両方の減少をもたらしうる、宿主における抗血清を産生するためのワクチンとして使用されることができる。
【0009】
さらに、キメラ・タンパク質が天然に近い立体構造の無毒性シュードモナス属外毒素A配列を示すので、宿主に導入された場合、本発明のキメラ・タンパク質は、無毒性シュードモナス属外毒素A並びに天然のシュードモナス属外毒素Aに結合するポリクローナル抗血清を産生する。シュードモナス・アエルギノーザから分泌される天然のシュードモナス属外毒素Aは、受容体を介したエンドサイトーシスにより細胞内に入り、次に一連の細胞内プロセッシング・ステップの後に細胞のサイトゾル及びADP-リボシル化伸長因子2に移行することによって細胞毒性を引き起こすことが知られている。これは、タンパク質合成阻害そして細胞死をもたらす。当該キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清は、シュードモナス属から放出された外毒素Aに結合し、細胞毒性を中和することができる。従って、(ピリン・ループ配列に対する抗体が定着を防ぎ)わずかなシュードモナス属しか防衛の最初のラインに打ち勝たないが、この外毒素Aの通常の破壊的な力は、無毒性シュードモナス属外毒素A配列に対して産生された抗体によって中和されるであろう。
【0010】
キメラ・タンパク質、キメラ・ポリヌクレオチド、及び本発明の組成物には多くの他の有用性がある。例えば、キメラ・タンパク質及びキメラ・タンパク質を含む組成物は、免疫学的測定法のような診断テストに使用することができる。そのような診断テストは、シュードモナス・アエルギノーザのような、IV型ピリン・ループ配列を担持する微生物の存在を検出するため、又は宿主が感染症によるIV型ピリン・ループに対する抗血清を持っているかどうかを決定するために使用することができる。他の例において、キメラ・タンパク質及びキメラ・タンパク質を含む組成物が、抗体を、例えばIV型ピリン・ループ配列に対して精製するためにも使用することができる。他の例において、キメラ・タンパク質に対する抗体は、他に関連するIV型ピリン配列のクローニング及び単離に使用することができる。
【0011】
それ故に、本発明の1の側面において、本発明は、以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0012】
他の側面において、本発明は、以下の:(a)第Iaドメイン、第IIドメイン、及び第IIIドメインを含む無毒性シュードモナス属外毒素A配列;並びに(b)無毒性シュードモナス属外毒素A配列の第IIドメインと第IIIドメインの間に位置するIV型ピリン・ループ配列、を含むキメラ・タンパク質を提供する。
【0013】
他の側面において、本発明は、以下の:本発明は、以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0014】
他の側面において、本発明は、以下の:(a)第Iaドメイン、第IIドメイン、及び第IIIドメインを含む無毒性シュードモナス属外毒素A配列;並びに(b)無毒性シュードモナス属外毒素A配列の第IIドメインと第IIIドメインの間に位置するIV型ピリン・ループ配列、を含むキメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
他の側面において、本発明は、以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を含む組成物を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0016】
他の側面において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を含む組成物の免疫学的有効量を宿主に投与するステップを含む宿主の免疫応答の発現方法を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0017】
他の側面において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットの免疫学的有効量を宿主に投与するステップを含む宿主の免疫応答の発現方法を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0018】
他の側面において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を含む組成物を宿主内に導入することを含む、IV型ピリン・ループ配列に特異的な抗体の製造方法を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させるポリクローナル抗血清を産生させることができる。
【0019】
定義
「シュードモナス属外毒素A」又は「PE」は、3つの突出した球状ドメイン(Ia、II、及びIII)から構成され、そして1つの小さなサブドメイン(Ib)が第II及び第IIIドメインを接続している67kDaのタンパク質としてP.アエルギノーザによって分泌される。(Allured et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:1320-1324 (1986))。PEの第Iaドメインは、N末端に位置し、細胞結合を仲介する。
【0020】
自然状態では、第Iaドメインは、α2-マクログロブリン受容体(「α2-MR」)としても知られている、低比重リボタンパク受容体に関係するタンパク質(「LRP」)に結合する(Kounnas et al., J. Biol. Chem. 267: 12420-23(1992))。それは第1〜第252アミノ酸に及ぶ。第IIドメインは、サイトゾルへの移行を仲介する。それは第253〜第364アミノ酸に及ぶ。第Ibドメインには知られている機能がない。それは第365〜第399アミノ酸に及ぶ。第IIIドメインは、細胞毒性を担い、小胞体保持配列を含む。それは、タンパク質合成を不活化する伸長ファクター2(「EF2」)のADPリボシル化を仲介する。それは、第400〜第613アミノ酸に及ぶ。天然のシュードモナス・アエルギノーザ外毒素Aの核酸配列とアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号2として示される。配列番号1及び2は、外毒素Aの成熟した形態であり、シグナル配列が切り取られている。毒性因子として、PEは、PMNs、マクロファージ、及び免疫系の他の要素を無効にすることができる(Pollack et al., Infect. Immuno. 19(3):1092-6 (1978))。
【0021】
本明細書中に使用されるとき、「シュードモナス属外毒素A」又は「PE」は、先に記載の機能を持つものに言及し、そして(それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す)核酸及びアミノ酸配列をもつ天然のシュードモナス属外毒素A、並びに以下の:(1)約25アミノ酸のウィンドウを上回る、好ましくは約50〜100アミノ酸のウィンドウを上回る配列番号2に対する約80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは約85〜90%のアミノ酸配列同一性を持つ:(2)配列番号2のアミノ酸配列を含む免疫原に対して産生させた抗体、及び保存的に修飾したその変異体に結合する;あるいは(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号1の配列及び保存的に修飾したその変異体に(少なくとも約500、好ましくは少なくとも約900ヌクレオチドのサイズで)特異的にハイブリダイズする、多形性の変異体、対立因子、突然変異体、及び種間ホモログをも含む。例えば、PEの遺伝学的に修飾された形態が、例えばPastanらの米国特許番号第5,602,095号;Pastanらの米国特許番号第5,512,658号、及びPastanらの米国特許番号第5,458,878号中に記載される。PEの対立遺伝子形態がこの定義に含まれている。例えば、Vasil et al., Infect. Immunol. 52:538-48 (1986)を参照のこと。
【0022】
「無毒性シュードモナス属外毒素A」又は「無毒性PE」は、ADPリボシル化活性を欠いている、(修飾された変異体を含む)本明細書中に記載の全てのシュードモナス属外毒素Aに言及する。PEのリボシル化活性は、PEの第400〜第600アミノ酸の付近に位置する。例えば、第IIIドメインからのアミノ酸E553(「ΔE553」)の欠失は、上記分子の毒性を除く。この毒性を除かれたPEを、「PEΔE553」と呼ぶ。他の例において、チロシン残基によるPEの426でのヒスチジン残基の置換もPEのADPリボシル化を不活化する(Kessler & Galloway, J. Biol. Chem. 267:19107-11 (1992)を参照のこと)。第IIIドメイン内の他のアミノ酸は、ADPリボシル化活性を除去するために、例えばアミノ酸残基の欠失、置換、又は付加により修飾されうる。無毒性PEの第IIIドメインは、本明細書中で時々「毒性を除かれた第IIIドメイン」と呼ばれる。
【0023】
用語「無毒性シュードモナス属外毒素A配列」は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの核酸配列か又はアミノ酸配列のいずれかに言及するために通常使用される。本明細書中に使用されるとき、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、完全長の配列の、完全長の配列又は一部であるかもしれない。一般的に、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの特定の生物活性を持つ1以上のドメイン又はドメインの一部、例えば細胞認識ドメイン、転座ドメイン、又は小胞体保持ドメインをもつ。例えば、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、第IIドメイン及び毒性を除かれた第IIIドメインのみを含むかもしれない。他の例において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、第Iaドメイン、第IIドメイン、及び毒性を除かれた第IIIドメインのみを含むかもしれない。他の例において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、第Ia、Ib、第II、及び毒性を除かれた第IIIドメインの全てを含むかもしれない。従って、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、天然のシュードモナス属外毒素Aの連続的な配列であるか、あるいはそれはADPリボシル化活性を欠いている、天然のシュードモナス属外毒素Aの不連続なサブシークエンスを含む配列であるかもしれない。一方、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、天然のPEのより小さい連続するか又は不連続な部分かもしれず、天然のPEのアミノ酸及び核酸配列の番号付けが、無毒性シュードモナス属外毒素A配列内の特定の位置を言及するために使用される(例えば、553位でのGluの欠失)。
【0024】
「キメラ・タンパク質」又は「キメラ・ポリヌクレオチド」は、それぞれ異種のアミノ酸配列又は異種の核酸配列を含む人為的に構築されたタンパク質又はポリヌクレオチドである。
【0025】
タンパク質か核酸に関して使用されるとき、用語「異種」は、自然では互いに同じ関係の中で発見されることのない、2以上の配列かサブシークエンスを含むタンパク質又は核酸を示す。例えば、核酸は、新しい機能的な核酸を作製するために、関係がない遺伝子からの2以上の配列を有し、一般に組み換え的に産生される。例えば、1の態様において、核酸は、異なる遺伝子からのコード配列の発現を指揮するように配置されたある遺伝子からのプロモーターをもつ。このように、コード配列については、プロモーターは異種である。同じように、2つの配列がゲノムにおける核酸の天然の関係以外の関係に置かれるとき、シュードモナス属外毒素Aからの配列は、IV型ピリン・ループ配列への言及とは異種である。
【0026】
「IV型繊毛」は、多くのグラム陰性菌、酵母、及び他の微生物を覆っている線維状構造に言及する。微生物の表面上の繊毛は、上皮細胞に接着する。特に、シュードモナス属又はカンジダ菌の繊毛は、asialoGM1受容体との特異的な相互作用を通して上皮細胞に結合する。IV型繊毛は、らせん状の束に配置された重合体であるタンパク質ピリンから元来構成される。例えば、シュードモナス・アエルギノーザの繊毛は、平均で2.5 μmの長さをもち、約15,000の分子量の単一のタンパク質から成る(Paranchych et al., Am. Soc. Microbio. 343-351(1990))。
【0027】
本明細書中に使用されるとき、「IV型ピリン」は、ピリンのプロセッシングと分泌でメチル化されたアミノ末端のフェニルアラニンで始まる保存されたアミノ末端の疎水性ドメインを含むピリンに言及する。IV型ピリンの他の特性は、プロピリン形態において、それらが典型的なシグナル配列よりずっと短い類似した6又は7アミノ酸の長さのリーダー・ペプチドを含むことである。IV型ピリンは、ナイセリア属、モラクセラ属(Moraxella)、バクテロイデス、パスツレラ、及びシュードモナス属、E.コリ(E.coli)、及び酵母、例えばカンジダ菌(Candida)を含む、いくつかの細菌属によって発現される。IV型ピリンを発現するこれらの属内の種は、例えばP.アエルギノーザ、N.ゴノロエエ、N.メニンギチジス、パスツレラ・マルトサイダ、M.ボビス(M.bovis)、B.ノドサス(B.nodosus)である。
【0028】
本明細書中に使用されるとき、用語「IV型ピリン」は、他の属のIV型ピリンに高度に一致しているビブリオ属(例えば、V.コレラ)のTcpピリンを含む。Tcpピリンは、特徴的なアミノ末端の疎水性ドメインを含み、並びに他のものがフェニルアラニンをコードする全ての位置でTcpピリン遺伝子がメチオニン残基をコードするので、この場合、修飾されたメチオニンであるところの修飾されたN末端アミノ酸を有することを含む。前駆体TcpAは、プロセッシング部位を囲む部位の同一性を保つが、典型的なIV型プロピリンよりずっと長いリーダー配列を含む。一般的に、ピリンタンパク質は、保存された及び高頻度可変部位を程よく含む他のタンパク質と一緒に、高度に保存されているN末端部位を含む(Paranachych et al., 前記)。全てのピリンの特性は、ピリンのC末端の鎖内ジスルフィド・ループである。
【0029】
様々な微生物のIV型ピリンのアミノ酸配列及び核酸配列が、本技術分野で知られている。例えば、シュードモナス属PAK株についてNCBIデータベース登録番号M14849、J02609;シュードモナス属T2A株についてNCBIデータベース登録番号AAC60462;シュードモナス属PAO株についてNCBIデータベース登録番号M11323;シュードモナス属CD株についてNCBIデータベース登録番号P17837;シュードモナス属P1株についてNCBIデータベース登録番号B31105;シュードモナス属KB7株についてNCBIデータベース登録番号Q53391;シュードモナス属577B株についてNCBIデータベース登録番号AAC60461;シュードモナス属K122-4株についてNCBIデータベース登録番号A33105;N.メニンギジスについてNCBIデータベース登録番号Z49820、Z69262、及びZ69261;N.ゴノロエエについてNCBIデータベース登録番号X66144及びAF043648;V.コレラについてNCBIデータベース登録番号U09807及びX64098;パスツレラ・マルトサイダについてNCBIデータベース加入番号API54834を参照のこと。
【0030】
「IV型ピリン・ループ配列」は、ピリンのC末端の鎖内ジスルフィド・ループを形成する配列に言及する。この部位は、物理的に繊毛の先端部にさらされて、上皮細胞受容体と相互作用する。本明細書中に使用されるとき、IV型ピリン・ループ配列は、ピリンのC末端の鎖内ジスルフィド・ループを形成する2つのシステイン残基の間の配列(すなわち、システイン残基を除く)か、上記2つのシステイン残基の間のシステイン残基とアミノ酸の両方を含む配列に言及する。無毒性シュードモナス属外毒素A配列内の挿入の部位がシステイン残基をもつかどうかに依存して、側方のシステイン残基をもつか又はもたないIV型ピリン・ループ配列は、本発明のキメラ・タンパク質を作製するために使用される。IV型ピリン・ループ配列の例を配列番号3〜20に示す。
【0031】
用語「免疫原性断片」又は「その免疫原性部分」は、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、又はB細胞によって認識されるエピトープを含むポリペプチドに言及する。
【0032】
「ポリクローナル抗血清」は、免疫原(例えば、本発明のキメラ・タンパク質)を用いて免疫された宿主から得られる、免疫原に対するポリクローナル抗体を含む血清に言及する。
IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の「接着を減少させる」ポリクローナル抗血清は、対照と比べて微生物の接着を約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%まで減少させるポリクローナル抗血清に言及する。対照は、血液を抜き取る前、又は本発明のキメラ・タンパク質にさらされない血清であるかもしれない。
【0033】
本発明の文脈中の、用語シュードモナス属外毒素Aの「細胞毒性を中和する」ポリクローナル抗血清は、シュードモナス属外毒素Aタンパク質合成の抑制作用を減少させる抗血清の能力に言及する。一般に、ポリクローナル抗血清は、シュードモナス属外毒素Aによるタンパク質合成の抑制作用を、対照と比べて少なくとも約30%、より一般に少なくとも約50%、より一般に少なくとも80%、更により一般に少なくとも約90%、95%又は99%減少させることができる。対照は、血液を抜き取る前(prebleed)、又は本発明のキメラ・タンパク質にさらされない血清であるかもしれない。
【0034】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、2本鎖又は1本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、あるはその重合体に言及する。前記用語は、合成か、天然か、そして天然ではない、基準核酸と類似の結合性質があり、そして基準ヌクレオチドと類似した様式で代謝させられる、既知のヌクレオチド類似体、あるいは修飾された骨格残基又は連鎖を含む核酸を取り込む。そのような類似体の例は、これだけに制限されることなく、ホスホロチオ酸、ホスホルアミド酸、メチルホスホン酸、キラル-メチルホスホン酸、2-O-メチル・リボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNAs)を含む。
【0035】
別段に示されない限り、特定の核酸配列は、保存的に修飾したその変異体(例えば、縮合コドンの置換)、及び相補的な配列、並びにはっきりと示された配列を暗黙の内に取り込みもする。特に、縮合コドンの置換は、1以上の選択した(又は全て)コドンの3番目の位置を混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基配列により置換した配列を作製することによって成し遂げられうる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。用語、核酸は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0036】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体に言及するために本明細書中で互換的に使用される。前記用語は、1以上のアミノ酸残基が対応の天然のアミノ酸の人工的で化学的な模倣であるアミノ酸重合体、並びに天然のアミノ酸重合体及び天然ではないアミノ酸重合体に適用される。
【0037】
用語「アミノ酸」は、天然、合成アミノ酸、並びに天然のアミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似体及び模倣アミノ酸に言及する。天然のアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされたもの、並びにあとで修飾されるそれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学的構造をもつ化合物、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合するαカーボン、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニン・スルホキシド、メチオニン・メチル・スルホニウムに言及する。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格をもつが、しかし天然のアミノ酸と同じ基本的な化学的構造を保っている。模倣アミノ酸は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造をもつが、しかし、それは天然のアミノ酸と類似した様式で機能する化合物に言及する。
【0038】
アミノ酸は、本明細書中、それらの一般に知られている3文字表記又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionの推薦する1文字表記のいずれかにより記載される。同様に、ヌクレオチドをそれらの一般に受け入れられた1文字コードによって記載する。
【0039】
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同じであるか又は本質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列に言及する。遺伝コードの縮合のために、機能的に同じ多くの核酸が、いずれかの既知のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUの全てがアミノ酸アラニンをコードする。このように、アラニンがコドンによって指定される全ての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを変えることなく、記載された対応のコドンのいずれにも変更されうる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異の1種である「サイレント変異」である。1のポリペプチドをコードする、本明細書中の全ての核酸配列は、核酸の、可能性のあるあらゆるサイレント変異を記載する。当業者は、(メチオニンに関する唯一のコドンであるAUG、及びトリプトファンに関する唯一のコドンであるTGGを除く)核酸中の各々のコドンが機能上同じ分子を生じるように修飾されることができることを認識する。
【0040】
それ故に、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント変異を各々の記載の配列に内包する。
アミノ酸配列に関して、当業者は、1つのアミノ酸又はコードされた配列中のアミノ酸のわずかなパーセンテージを変えるか、加えるか又は削除する核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列への個々の置換、欠失、又は付加は、この変更が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす「保存的に修飾された変異」であることを認識する。
【0041】
機能上類似したアミノ酸を提供する保存的な置換の表は、本技術分野で周知である。保存的に修飾された変異体は、多形変異体、種間相同体、及び本発明の対立因子に加えられ、除外されない。
【0042】
以下の8つの群は、互いに保存的な置換であるアミノ酸を各々含む:
1) アラニン(A)、グリシン(G);
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4) アルギニン(R)、リジン(K);
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7) セリン(S)、トレオニン(T);そして
8) システイン(C)、メチオニン(M)、
(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
用語「選択的(又は特異的)ハイブリダイズ」は、その配列が複合混合物(例えば、全細胞又はライブラリーDNA又はRNA)中に存在するとき、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列だけに結合、2本鎖形成、又は分子のハイブリダイズ形成に言及する。
【0043】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、プローブが一般に核酸の複合混合物中のターゲット・サブシークエンスにハイブリダイズするが、しかし他の配列にハイブリダイズしない条件に言及する。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、異なる情況において異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する幅広い手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology―Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)中に見ることができる。
【0044】
一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHでの特定の配列に関するメルティング・ポイント(Tm)の温度よりも約5〜10℃低くなるように選ばれる。Tmは、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下)ターゲットに相補的なプローブの50%が平衡状態でターゲット配列にハイブリダイズする温度である(ターゲット配列が過剰に存在し、Tmで、プローブの50%が平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で、塩濃度が約1.0 Mのナトリウム・イオン未満、一般に少なくとも0.01〜1.0 Mのナトリウム・イオン濃度(又は他の塩)、かつ、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成されうる。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのために、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、場合によりバックグラウンド・ハイブリダイゼーションの10倍である。代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のとおりである:0.2xSSC及び0.1%のSDS中、65℃での洗浄を伴う、50%のホルムアミド、5xSSC、及び1%のSDS、42℃でインキュベーション、又は5xSSC、1%のSDS、65℃でインキュベーション。
【0045】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一ならば、それでも実質的に同一である。これは、例えば核酸のコピーが遺伝暗号による許容される最大限のコドン縮合を使用して作製されるときに生じる。そのような場合、核酸は一般に中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。代表的な「中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、37℃での40%のホルムアミド、1M NaCl、1%のSDSの緩衝物質中のハイブリダイゼーション、そして45℃での1XSSC中の洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代わりのハイブリダイゼーション及び洗浄条件が類似したストリンジェントな条件を提供するために利用されうることを容易に認識するであろう。
【0046】
「発現カセット」は、コード配列に使用できるように連結された発現制御配列を含むポリヌクレオチド分子に言及する。
「ベクター」は、他のポリヌクレオチド・セグメントを結合する、結合したセグメントの複製及び/又は発現を引き起こすためのレプリコンである。
【0047】
「制御配列」は、それらが連結されるコード配列の発現を成し遂げるのに必要なポリヌクレオチド配列に言及する。そのような制御配列の性質は、宿主生体に依存して異なる;原核生物において、そのような制御配列は、一般にプロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネータを含み;真核生物において、そのような制御配列は、一般にプロモーター、ターミネータ、及び場合によりエンハンサーを含む。用語「制御配列」は、最低限、その存在が発現に必要な全ての成分を含み、さらにその存在が好都合な追加成分、例えばリーダー配列をも含むことを意図する。
【0048】
「利用可能なように連結されていること」は、並列に言及し、そのように記載される成分は、それらに意図された様式での機能のためにそれらを可能にする関係にある。コード配列に「利用可能なように連結された」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような方法で連結される。
【0049】
「リガンド」は、ターゲット分子に特異的に結合する化合物である。
「受容体」は、リガンドが特異的に結合する化合物である。
「抗体」は、抗原に特異的に結合し及び認識する免疫グロブリン遺伝子からのフレームワーク部位を含むポリペプチド又はその断片に言及する。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン、及びミュー定常域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、順にそれぞれ免疫グロブリン・クラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。
【0050】
代表的な免疫グロブリン(抗体)構造ユニットは、四量体を含む。各々の四量体は、各々のペアが1つの「軽」(約25kDa)及び1つの「重」(約50〜70kDa)鎖をもつ、ポリペプチド鎖の2組の同質のペアから成る。各々の鎖のN末端は、抗原認識を本質的に担う約100〜110アミノ酸以上の可変領域を定義する。用語、可変H鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)は、それぞれこれら軽及び重鎖に言及する。
【0051】
抗体は、例えば完全な免疫グロブリンとしてか、又は様々なペプチダーゼでの消化によって生じた相当数の十分に特徴づけられた断片として存在する。このように、例えば、ペプシンは、ヒンジ部中のジスルフィド結合の下方の抗体を消化し、それ自体がジスルフィド結合でVH-CH1につながれた軽鎖であるFabの二量体、F(ab)'2を生じる。F(ab)'2は、温和な条件下で還元されヒンジ部分のジスルフィド結合を破壊され、それによりF(ab)'2二量体をFab'単量体に変換される。Fab'単量体は本質的にヒンジ部分の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)を参照のこと)。様々な抗体断片が完全な抗体の消化に関して規定される一方で、当業者は、そのような断片が化学的に又は組み換えDNA方法論を使うことによってde novo合成されうることをも認識する。このように、用語抗体は、本明細書中に使用されるとき、抗体全体の修飾か、組み換えDNA方法論を使ったde novo合成か(例えば、1本鎖Fv)、又はファージ・ディスプレイ・ライブラリーを使ったそれらの同定のいずれかにより製造された抗体断片をも含む(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)。
【0052】
モノクローナル又はポリクローナル抗体の準備のために、本技術分野で知られるあらゆる技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy (1985)中、77〜96ページを参照のこと)。1本鎖抗体(米国特許番号第4,946,778号)の製造のための技術は、本願発明のポリペプチドに対する抗体を産生するために適合させることができる。また、トランスジェニックマウス又は他の生体、例えば他の哺乳動物を、ヒト化抗体の発現に使用する。あるいは、ファージ・ディスプレイ技術を、選ばれた抗原に特異的に結合する抗体及びヘテロメリックFab断片を同定するために使用することができる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照のこと)。
【0053】
用語、抗体への「特異的な(又は選択的な)結合」又は「特異的な(又は選択的な)免疫応答」は、タンパク質かペプチドに言及するとき、タンパク質と他の生物学的物質の混成集合中においてそのタンパク質の存在を決定するものである結合反応を言及する。このように、指示された免疫学的測定法条件下で、指定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍の特定のタンパク質に結合し、かつ、サンプル中に存在する他のタンパク質に有意な量で実質的に結合しない。そのような条件下、抗体への特異的な結合は、特定のタンパク質に関するその特異性のために選ばれる抗体を必要とするかもしれない。例えば、融合タンパク質に対して産生されたポリクローナル抗体は、融合タンパク質と特異的に免疫反応し、かつ、融合タンパク質の個々の成分と免疫反応しないポリクローナル抗体だけを得るように選ばれうる。この選択は、個々の抗原と交差反応する抗体を除外してゆくことにより達成することができる。
【0054】
種々の免疫学的測定形式が、具体的には特定のタンパク質と免疫応答性の抗体を選ぶことに使用されうる。例えば、固相ELISA免疫学的測定法は、具体的にタンパク質と免疫応答性の抗体を選ぶためにルーチンに使用される(例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと、特異的な免疫反応性を測定するために使用することができる免疫学的測定形式と条件の記載に関する)。一般に特異的又は選択的な反応は、バックグラウンド・シグナル又はノイズの少なくとも2倍、そしてより一般にはバックグラウンドの10〜100倍超である。
【0055】
ポリヌクレオチドは、天然の配列(すなわち、個々の抗原又はその一部をコードする内性の配列)を含むか、又はその配列の変異体を含むかもしれない。ポリヌクレオチド変異体は、天然の抗原を含むキメラ・タンパク質に関連する、コードされたキメラ・タンパク質の生物活性が減らされないような、1以上の置換、付加、欠失、及び/又は挿入を含むかもしれない。変異体は、天然のポリペプチド又はその一部をコードするポリヌクレオチド配列に対し、好ましくは少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を示す。
【0056】
用語「同一」又は「同一性」パーセントは、2以上の核酸かポリペプチド配列の関係において、比較ウィンドウにわたる最大限の対応について、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを使って測られるような指定の領域、又は手作業によるアラインメントと目視検査により比較及びアラインされる時、2以上の配列又はサブシークエンスが、同一のものであるか又は同一のアミノ酸残基若しくはヌクレオチド(すなわち、指定された部位にわたり70%の同一性、場合により75%、80%、85%、90%、又は95%同一性)の指定されたパーセンテージを有することを言及する。そして、そのような配列を「実質的に同一である」と言う。この規定は、試験配列の相補体をも言及する。場合により、同一性は、長さが少なくとも約25〜約50アミノ酸又はヌクレオチドの、あるいは場合により長さが75〜100アミノ酸又はヌクレオチドの部位にわたり存在する。
【0057】
配列比較のために、一般に一方の配列が、試験配列を比較する基準配列として働く。配列比較アルゴリズムを使う場合、試験及び基準配列は、コンピュータに入力され、必要ならば、サブシークエンス座標が指示されて、配列アルゴリズム・プログラム指標が指示される。デフォルト・プログラム指標を使用することができ、又は代わりの指標を指示することもできる。そして、配列比較アルゴリズムが、プログラム指標に基づいて基準配列に関する試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
【0058】
「比較ウィンドウ」は、本明細書中に使用されるとき、2つの配列が最適にアラインされた後に配列が連続的な位置の同数の基準配列と比較される、25〜500、一般に約50〜約200、より一般に約100〜約150から成る群から選ばれたいずれか1の数的に連続した位置のセグメントに対する言及を含む。比較のための配列のアラインメント方法は、本技術分野で周知である。比較のための最適な配列のアラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同アラインメント・アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同アラインメント・アルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性の検索方法により、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、the Wisconsin Genetics Software Package中、Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のコンピューターによる実施により、あるいは手作業での配列及び目視検査により(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照のこと)実施されうる。
【0059】
有用なアルゴリズムの1つの例は、PILEUPである。PILEUPは、連続的な、ペアの配列を使った関連配列の群からの複数の配列のアラインメントを作製し、関連性及び配列同一性のパーセントを示す。それは、アラインメントの作製に使用した関連性の集団を示す階層図又は樹状図を描く。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351-360 (1987)の連続的なアラインメント方法の単純化されたものを使用する。使われた方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-153 (1989)により記載された方法に似ている。前記プログラムは、各々最大5,000ヌクレオチド、又はアミノ酸の長さで、最多で300までの配列を、アラインすることができる。複数のアラインメント手順は、2の最も類似した配列のペアの配列で始まり、2のアラインした配列の集団を生み出す。次に、この集団を、次の最も関連する配列か又はアラインされた配列の集団とアラインする。配列の2の集団を、2の個々の配列ペアの配列のシンプルな伸長によってアラインする。最終的なアラインメントは、一連の連続的なペア配列によって達成される。プログラムは、特定の配列とそれらのアミノ酸又はヌクレオチド比較を、配列比較の部位について座標を指示することによって、そしてプログラム指標を指示することによって実施する。PILEUPを使用することで、基準配列を他の試験配列と比較して、以下の指標を使って配列同一性パーセントの関係を測定する:デフォルト・ギャップ加重(3.00)、デフォルト・ギャップ長加重(0.10)、及び加重した末端ギャップ。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ、例えばバージョン7.0(Devereaux et al., Nuc. Acids Res. 12:387-395 (1984))から得られる。
【0060】
配列同一性パーセントと配列類似性の測定のために好適なアルゴリズムの他の例は、それぞれ、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)及びAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載のBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国際バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)にて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインした場合にいくつかの正に評価されたしきい値のスコアTに合致するか又は満足させるクエリー配列中でショートワードの長さWを同定することによって高スコア配列ペア(HSPs)をまず同定することを必要とする。Tは、近接ワード・スコアしきい値と呼ばれる(Altschul et al., 前記)。これらの最初の近接ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPsを見つけるために検索開始の種として働く。
【0061】
ワードのヒットは、累積アラインメント・スコアが増加しうる限り、各々の配列沿いに両方向に広げられる。ヌクレオチド配列に関して指標M(1組の合致残基の報酬スコア;常に>0)、及びN(ミスマッチ残基の罰金スコア;常に<0)を使って累積スコアが計算される。アミノ酸配列に関して、累積スコアを計算するためにスコアリング・マトリックスを使用する。各々の方向へのワード・ヒットの伸長は、以下の場合:達成されたその最大値から数量Xまで累積アラインメント・スコアが低下した場合;1以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアが零又はそれ未満になる場合;又はどちらの配列の末端に達した場合、に止められる。BLASTアルゴリズム指標W、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。(ヌクレオチド配列に関する)BLASTNプログラムは、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、そして両方の鎖の比較を使う。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、及び10の期待値(E)、そして50のBLOSUM62スコアリング・マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、そして両方の鎖の比較を使用する。
【0062】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性の統計分析をも実施する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993))。BLASTアルゴリズムによって提供された類似の1の尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間での合致の可能性の目安を提供する、最小合計確立(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、基準核酸と試験核酸との比較において最小合計確立が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合には、核酸が基準配列に類似しているとみなされる。
【0063】
「免疫原」は、宿主動物に抗体産生を誘発するものを言及する。
「ワクチン」は、ただ非常に低いレベルの罹患率又は死亡率を引き起こす一方で、生体に治療としての程度の免疫を引き起こすのに有効である薬剤か薬剤を含む組成物を言及する。ワクチン及びワクチンの製造方法は、免疫系の研究と動物又はヒトの病気の予防、治療に有用である。
「免疫原量」又は「免疫学的有効量」は、対象の免疫応答を引き出すために有効な量である。
【0064】
「実質的に純粋」又は「単離された」は、目的の種が主に存在する種であることを意味し(すなわち、分子ベースで、成分中の他のどんな個々の高分子より多量に存在する)、そして実質的に精製された画分は、存在する全ての高分子の少なくとも約50%(分子ベースで)の目的の種を含むことを意味する。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する高分子の約80%〜90%以上が着目の精製された種であることを意味する。組成物が本質的に単一の高分子種から成る場合、目的の種は本質的に同種まで精製される(慣例の検出方法によって、夾雑種は組成物中に発見できない)。溶媒種、低分子(<500ダルトン)、安定剤(例えば、BSA)、基本的なイオン種は、この規定の目的のための高分子種と考えられない。
【0065】
物に利用される場合、「天然」は、上記の物が自然に発見されうるという事実を言及する。例えば、自然の源から単離することができる(ウイルスを含む)生物中に存在し、かつ、実験室でヒトによって意図的に修飾されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列が天然である。
【0066】
「宿主」は、ヒトであるか又は人類以外の動物、例えば齧歯動物(例えば、マウス又はネズミ)、霊長類、羊、豚、モルモットなどを含む全ての動物を言及する。
【0067】
「処置」は、予防的処置又は治療上の処置を言及する。
「予防的」処置は、進行している病理学的危険性を減少させる目的のために病気の兆候を示していないか又は初期の兆候だけを示す宿主に対し処置を与えることである。
「治療上の」処置は、病理学的兆候を示す宿主にそれらの兆候を減少させるか又は除く目的で与えられる処置である。
【0068】
特定の態様の説明
I.無毒性シュードモナス属外毒素A配列及びIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質
本発明の1の側面において、本発明は、以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び上記無毒性シュードモナス属外毒素A配列中に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質を提供する。ここで、前記キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着又は接着性を減少させることができ、さらにここで、前記キメラ・タンパク質は、宿主に導入された場合、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着性を減少させるポリクローナル抗血清を産生させることができる。いくつかの態様において、本発明のキメラ・タンパク質は、宿主に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生を可能にすることもできる。他の側面において、本発明は、以下の:(a)第Iaドメイン、第IIドメイン、及び第IIIドメインを含む無毒性シュードモナス属外毒素A配列;並びに(b)無毒性シュードモナス属外毒素A配列の第IIドメインと第IIIドメインの間に位置するIV型ピリン・ループ配列、を含むキメラ・タンパク質を提供する。いくつかの態様において、キメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列が部分的に又は完全に第Ibドメインに置き換わり、そして第IIドメインと第IIIドメインの間に位置することを除き、天然の組織構造で第Ia、第II、及び第IIIドメインを含む無毒性シュードモナス属外毒素A配列を含む。
【0069】
あるいは又はその上、いくつかの態様において、キメラ・タンパク質は、第265〜第287アミノ酸を置き換えて、第IIドメイン中にIV型ピリン・ループ配列を含む。無毒性シュードモナス属外毒素A配列の性質、無毒性シュードモナス属外毒素A配列の様々なドメイン、IV型ピリン・ループ配列、及び本発明のキメラ・タンパク質内のそれらの物理的な関係を以下に詳細に記載する。
【0070】
A.無毒性のシュードモナス属外毒素A配列
先の定義の項に記載のとおり、シュードモナス属外毒素A又はPEは、シュードモナス・アエルギノーザによって分泌されて、3つの突出したドメイン(第Ia、第II、及び第III)、及び第II及び第IIIドメインをつなぐ1つの小さなサブドメイン(Ib)を含む。自然状態では、第1〜第252アミノ酸に及ぶPEの第Iaドメインは、細胞結合を仲介する。第253〜第364アミノ酸に及ぶ第IIドメインは、サイトゾルへのタンパク質の移行を仲介する。第365〜第399アミノ酸に及ぶ第Ibドメインは、知られている機能はない。第400〜第613アミノ酸に及ぶ第IIIドメインは、細胞毒性を担い、そして小胞体保持配列を含む。それは、タンパク質合成を不活化する伸長因子2(「EF2」)のADPリボシル化を仲介する配列をも含んでいて、それが細胞に有毒であるPEを提供する。このように、細胞結合を仲介する第Iaドメインかその変異体は、「細胞認識ドメイン」と呼ばれる。サイトゾルへのタンパク質の移行を仲介する第IIドメインかその変異体は、「移行ドメイン(translocation domain)」と呼ばれる。エンドソームから小胞体までのタンパク質の移行に機能するドメイン第IIIかその変異体は、「小胞体保持ドメイン」と呼ばれる。
【0071】
無毒性のシュードモナス属外毒素A配列は、ADPリボシル化活性を欠いている全てのシュードモナス属外毒素A配列に言及する。一般的に、無毒性のシュードモナス属外毒素A配列は、特定の生物活性をもつ1以上のドメインかドメインの一部を有する。例えば、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、移行ドメイン(例えば、シュードモナス属外毒素Aの第IIドメイン)、及び小胞体ドメイン(例えば、ADPリボシル化活性をもたないシュードモナス属外毒素Aの毒性をもたない第IIIドメイン)を含むかもしれない。他の例において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、「PE40」と呼ばれる構築物をもたらす第1〜第252アミノ酸を除去することにより構築されうる。他の例において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、「PE37」と呼ばれる構築物をもたらす第1〜第279アミノ酸を除去することにより構築されうる(Pastanらの米国特許番号第5,602,095号を参照のこと)。
【0072】
場合により、シュードモナス属外毒素Aの細胞認識ドメイン(例えば、第Iドメイン)又はシュードモナス属外毒素Aに関係がない他の細胞認識ドメインが、当該キメラ・タンパク質に含まれうる。細胞認識ドメインは、直接的に又は間接的にキメラ・タンパク質の残部と連結されることができる。例えば、当業者は、さらにIV型ピリン・ループ配列を含むPE40かPE37構築物の無毒性異形の5'末端に細胞認識ドメインをコードする配列を連結することができる。
【0073】
1.移行ドメイン
本発明のキメラ・タンパク質は、「PE移行ドメイン」を含む無毒性シュードモナス属外毒素A配列を含む。PE移行ドメインは、サイトゾル中への細胞によるエンドサイト−シスされたキメラ・タンパク質の移行を成し遂げるのに十分なアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は、PEの第IIドメインから選ばれた配列と同一であるか又は実質的に同一である。
【0074】
移行させるのに十分なアミノ酸配列は、天然のPEの移行ドメイン由来でありうる。このドメインは、第253〜第364アミノ酸に及ぶ。移行ドメインは、第IIドメインの全配列を含むことができる。しかし、全配列が移行に必要なわけではない。例えば、アミノ酸配列は、最小限、例えばPEの第IIドメインの第280〜第344アミノ酸を含むことができる。この領域の外側の配列、すなわち第253〜第279及び/又は第345〜第364アミノ酸を、前記ドメインから除くことができる。移行活性が保たれる限り、このドメインは置換により処理されることができる。
【0075】
移行ドメインは、以下のとおり機能する。細胞表面上の受容体に結合した後、キメラ・タンパク質は、クラスリン・コート・ピットからエンドサイトーシスにより細胞内に入る。残基265及び287が、ジスルフィド・ループを形成するシステインである。いったん酸性環境をもつエンドソーム中に内部化すると、そのペプチドは、Arg279とGly280の間をプロテアーゼ、フリン(furin)によって分割される。そして、ジスルフィド結合が還元される。Arg279での突然変異は、タンパク質分解による分割、続くサイトゾルへの移行を阻害する。Ogata et al., J. Biol. Chem. 265:20678-85(1990)。しかし、Arg279の下流の配列(「PE37」と呼ばれている)を含むPEの断片は、サイトゾルへの移行のために十分な能力を保つ。Siegall et al., J. Biol. Chem. 264:14256-61(1989)。第345アミノ酸以降の第IIドメインの配列も移行を阻害することなく削除されることができる。さらに、339位及び343位のアミノ酸が移行に必要であるように思われる。Siegall et al., Biochemistry 30:7154-59(1991)。
【0076】
移行ドメインの機能性を測定方法を、以下の試験の項に記載する。
2.ER保持ドメイン
本発明のキメラ・タンパク質は、無毒性外毒素A配列の一部である「小胞体保持ドメイン」をコードしているアミノ酸配列を含みうる。小胞体(「ER」)保持ドメインは、それが小胞体からサイトゾルに輸送される場合、エンドソームから小胞体へのキメラ・タンパク質の移行に機能する。ER保持ドメインは、PEの第IIIドメインに位置する。ER保持ドメインは、そのカルボキシ末端にER保持配列を有するアミノ酸配列を含む。天然のPEにおけるER保持配列は、REDLK(配列番号21)である。リジンは、活性の低下なしに除かれることができる(すなわち、REDL(配列番号22))。REDLK(配列番号21)は、他のER保持配列、例えばKDEL(配列番号23)、又はこれらの配列の重合体と置き換えることができる。Ogata et al., J. Biol. Chem. 265:20678-85 (1990); Pastan et al., 米国特許番号第5,458,878号;Pastan et al., Annu. Rev. Biochem. 61:331-54 (1992)を参照のこと。
【0077】
ER保持配列の配列上流は、(好ましくは無毒化された)天然のPE第IIIドメインであるか、完全に除かれるか、又は他のアミノ酸配列に置き換えることができる。他のアミノ酸配列に置き換えた場合、上記配列は、それ自体が高い免疫原性又はわずかに免疫原性でありうる。このドメインの活性は、以下に記載のアッセイを使った標的細胞のサイトゾル中へのタンパク質の移行について試験することによって評価することができる。
【0078】
天然のPEにおいて、ER保持配列は、第IIIドメインのカルボキシ末端にある。第IIIドメインは、PEにおいて2つの機能を持っている。それは、ADPリボシル化活性を示し、小胞体中へのエンドサイト−シスされる毒素に向けられる。キメラ・タンパク質からER保持配列を除くことは、超抗原としてのシュードモナス属外毒素の活性を変えないが、MHCクラスI依存性細胞性免疫応答を引き出すためのその有用性を阻害する。
【0079】
PEのリボシル化活性は、おそらくPEの第400〜第600アミノ酸の間に位置する。この本発明のキメラ・タンパク質を使った宿主の予防接種方法において、タンパク質が無毒性であることが好ましい。そのようにする1つの方法は、ADPリボシル化活性を除くことである。この方法で、キメラ・タンパク質は、毒素としてよりむしろ、細胞により処理され、そしてMHCクラスI分子と一緒に細胞表面上に存在するIV型ピリン・ループ配列のためのベクターとして機能することができる。ADPリボシル化活性は、例えば天然のPEのE553アミノ酸の欠失(「ΔE553」)により除くことができる。例えば、Lukac et al., Infect. and Immun. 56:3095-3098(1988)を参照のこと。他の例において、426位のPEのヒスチジン残基のチロシン残基による置換もPEのADPリボシル化を不活化する(Kessler & Galloway、前記を参照のこと)。第IIIドメイン中の他のアミノ酸は、ADPリボシル化活性を除くためにタンパク質から修飾されることができる。ER保持配列は、一般にキメラ・タンパク質のカルボキシ末端に含まれている。
【0080】
1の態様において、ER保持ドメインの配列は、第IIIドメインの天然のアミノ酸配列又はその断片と実質的に同一である。いくつかの態様において、ER保持ドメインは、PEの第IIIドメインである。
【0081】
他の態様において、細胞認識ドメインは、ER保持ドメインのアミノ酸配列(例えば、第IIIドメインの中に)に挿入される。例えばER保持配列が直接又は10アミノ酸以内に細胞認識ドメインのカルボキシ末端に接続されるように、細胞認識ドメインは、ER保持配列のすぐ上流に挿入される。
【0082】
B.細胞認識ドメイン
場合により、本発明のキメラ・タンパク質は、「細胞認識ドメイン」をコードするアミノ酸配列を含むことができる。細胞認識ドメインは、細胞表面レセプタに対するリガンドとして機能する。それは細胞へのタンパク質の結合を仲介する。それは細胞をキメラ・タンパク質のターゲットにするために使用することができ、上記細胞は、プロセッシングのためにサイトゾルにそれを輸送する。キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列が上皮細胞上の受容体を狙う場合に、細胞認識ドメインは、必ずしもキメラ・タンパク質に含まれているわけでない。
【0083】
細胞認識ドメインは、キメラ・タンパク質を標的細胞に接着させるために機能し、そしてあらゆる好適な物質、例えば標的細胞の特定の受容体に対する既知のポリペプチドであるかもしれない。例えば、細胞認識ドメインは、一般に既知のポリペプチド・リガンドのサイズ、例えば約10アミノ酸〜約1500アミノ酸、又は約100アミノ酸〜約300アミノ酸を有する。数個の方法が、キメラ・タンパク質に使用するための機能上の細胞認識ドメインを確認するために有用である。1の方法は、細胞認識ドメインを含むキメラ・タンパク質と受容体又は受容体をもつ細胞との間の結合の検出を伴う。他の方法は、最初のステップである細胞の結合がうまくいったことを示す、サイトゾル中へのキメラ・タンパク質の移行の検出を伴う。これらの方法を、以下に試験の項で詳細に記載する。
【0084】
1の態様において、細胞認識ドメインは、PEの第Iaドメインであり、それによって、キメラ・タンパク質はα2-MRドメインを狙う。他の態様において、第Iaドメインは、細胞表面レセプタ、又は細胞表面レセプタに対する抗体若しくは抗体断片に結合するリガンドと置換されうる。例えば、上皮細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、EGFレセプター、トランスフェリン・レセプター、インターロイキン-2・レセプター、インターロイキン-6・レセプター、インターロイキン-8・レセプター若しくはFcレセプター、又はポリIgGレセプターに対する抗体又はリガンドでありうる。肝細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、アシアロ・グリコプロテイン受容体に対するリガンド又は抗体であるかもしれない。T細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、例えばCD3、CD4、CD8に対する抗体、又はケモカイン受容体についてのリガンドであるかもしれない。活性化されたT細胞とB細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、例えばCD25に対するリガンド又は抗体であるかもしれない。
【0085】
樹状細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、例えばCD11B、GD11C、CD80、及びCD86 MHCクラスI及びIIに対するリガンド又は抗体であるかもしれない。マクロファージをターゲットとするために、細胞結合ドメインは、例えばTNFアルファ・レセプター、ケモカイン・レセプター、TOLLレセプター、M-CSFレセプター、GM-CSFレセプター、スカベンジャー・レセプター、及びFcレセプターに対するリガンド又は抗体であるかもしれない。内皮細胞をターゲットとするために、細胞結合ドメインは、例えばVEGFレセプターに対するリガンド又は抗体であるかもしれない。また、多くの細胞型に見られるサイトカイン・レセプターをターゲットとすることができる。Pastan et al., Ann. Rev. Biochem. 61:331-54 (1992)。
【0086】
細胞認識ドメインは、当該キメラ・タンパク質のあらゆる好適な位置に配置することができる。例えば、細胞認識ドメインは、キメラ・タンパク質のN末端(例えば、無毒性PEの第Iaドメインに相当する位置)に配置することができる。しかし、このドメインは、外毒素Aの正常な組織の配列から移転される可能性がある。より特に、細胞認識ドメインは、ER保持ドメインの上流に挿入されることができる。あるいは、細胞認識ドメインは、キメラ・タンパク質の残部に化学的につながれるうる。また、キメラ・タンパク質は、第Iaドメインの位置に最初の細胞認識ドメインを、そして第2の細胞認識ドメインをER保持ドメインの上流に含むことができる。そのような構築物は、1以上の細胞型に結合することができる。例えば、Kreitman et al., Bioconjugate Chem. 3:63-68 (1992)を参照のこと。例えば、TGFαは、第IIIドメインの第604アミノ酸の直前、すなわちカルボキシ末端から約10アミノ酸に挿入された。このキメラ・タンパク質は、EGF・レセプターをもつ細胞に結合する。Pastanらの米国特許番号第5,602,095号。
【0087】
細胞認識ドメインは、いずれか好適な方法を使用してキメラ・タンパク質の残部に挿入又は結合することができる。例えば、前記ドメインは、リンカーを使って直接的に又は間接的にキメラ・タンパク質の残部に結合することができる。このリンカーは、共有結合又は高親和性非共有結合を形成することができる。好適なリンカーは、当業者に周知である。他の例において、単独の連続的なキメラ・タンパク質をコードする核酸配列からの細胞認識ドメイン単独のキメラ・ポリペプチドとして発現される。
【0088】
C.IV型ピリン・ループ配列
キメラ・タンパク質は、無毒性シュードモナス属外毒素A配列内にIV型ピリン・ループ配列をも含む。IV型ピリン・ループ配列は、一般にピリン・タンパク質のC末端に鎖内ジスルフィド・ループを形成する配列に由来する。IV型ピリン・ループ配列は、キメラ・タンパク質の上皮細胞上のasialoGM1受容体との反応を可能にする。このループは、主鎖残基によって特色付けられる。従って、数個の菌株からのピリンが配列変異及び長さの相違(例えば、特定のシュードモナス属菌株に関して12及び17アミノ酸のループ(又は14〜19アミノ酸が側面のシステイン残基を含む))にもかかわらず同じ受容体と結合する。IV型ピリン・ループ配列は、少なくとも約5つのアミノ酸残基、一般に約10〜100アミノ酸、より一般に約12〜70アミノ酸、より更に一般に約12〜20アミノ酸を含む。本発明の態様は、1単位のIV型ピリン・ループ配列又は(例えば2、3、4など)複数の反復単位の同じ又は異なるIV型ピリン・ループ配列をもちうる。いくつかの態様において、キメラ・タンパク質は、異なる位置に1より多いIV型ピリン・ループ配列を含む。
【0089】
IV型ピリン・ループ配列は、上皮細胞に接着するあらゆる微生物から得ることができる。例えば、IV型ピリン配列は、細菌又はシュードモナス・アエルギノーザのような酵母、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラ、パスツレラ・マルトサイダム、又はカンジダ菌から得ることができる。IV型ピリン配列の例を配列番号3〜20として示す。
【0090】
異なるシュードモナス・アエルギノーザ株からのIV型ピリン配列は、それらの配列、並びにそれらの長さの点で異なる。数種のシュードモナス・アエルギノーザ株は、以下の表1に示されるように、14アミノ酸(129システイン〜142システイン)から成る短いピリン・ループをもつ。他のシュードモナス・アエルギノーザ菌株は、以下の表2に示されるように、19アミノ酸(133システイン〜151)から成る長いピリン・ループをもつ。
【表1】

【表2】

【0091】
P.アエルギノーザ以外の微生物からのIV型ピリン・ループ配列が、本発明のキメラ・タンパク質に含まれることもできる。他の微生物からのIV型ピリン・ループのアミノ酸配列を、以下の表3に示す。
【表3】

【0092】
当業者は、先に記載されたIV型ピリン配列が単に代表的なものであり、他のIV型ピリン配列が容易に本発明のキメラ・タンパク質に挿入されることができることを認識する。例えば、米国特許番号第5,612,036号(Hodges et al.)に記載のIV型ピリン・ループ配列が、本発明のキメラ・タンパク質に組み入れられることもできる。
【0093】
IV型ピリン・ループ配列は、本発明のキメラ・タンパク質内のいずれか好適な位置に配置することができる。1の態様において、IV型ピリン配列は、移行ドメイン(例えば、無毒性外毒素Aの第IIドメイン)とER保持ドメイン(例えば、無毒性外毒素Aの第IIIドメイン)との間に挿入される。他の態様において、キメラ・タンパク質は、第Ibドメインが不完全に又は完全にIV型ピリン・ループ配列に置き換えられたことを除き、第Iaドメイン、第IIドメイン、第Ibドメイン、及び第IIIドメインを含む、無毒性シュードモナス属外毒素Aの基本的な組織構造を有する。天然のシュードモナス属外毒素Aにおいて、第Ibドメインは、365〜399アミノ酸に及ぶ。天然の第Ibドメインは、372位及び379位の2つのシステインの間のジスルフィド結合によって構造的に特徴づけられる。第Ibドメインは、細胞結合、移行、ER保持、又はADPリボシル化活性に必須ではない。
【0094】
従って、それは不完全に又は完全にIV型ピリン・ループ配列に置き換えることができる。例えば、IV型ピリン・ループ配列は、2つのシステイン間の6つのアミノ酸残基を置き換えて、372位と379位の2つのシステインの間に挿入されることができる。他の態様において、IV型ピリン・ループ配列は、第Ibドメイン配列のを全く取り除くことなく、第Ibドメイン内に挿入されることができる。他の態様において、IV型ピリン・ループ配列は、システイン-システイン・ジスルフィド結合ループを形成する他の位置、例えば無毒性シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインの第265〜第287アミノ酸に配置されることができる。いくつかの態様において、1以上のIV型のピリン・ループ配列が、キメラ・タンパク質内の異なる位置に挿入される。
【0095】
無毒性シュードモナス属外毒素A配列内の挿入部位がシステイン残基をもつかどうかに依存して、N-及びC末端にシステイン残基をもつ又はもたないIV型ピリン・ループ配列を使用することができる。例えば、無毒性シュードモナス属外毒素A配列の挿入部位がシステイン残基をもたない場合、その末端にシステイン残基をもつIV型ピリン・ループ配列(例えば、配列番号3に示された14アミノ酸)を挿入することができる。他の例において、IV型ピリン・ループ配列が、システイン残基間の6つのアミノ酸を置き換えて、天然の第Ibドメインのシステイン-システイン・ループ内に挿入された場合、IV型ピリン・ループ配列は、末端のシステインをもたない配列(例えば、配列番号3に示された2つのシステインの間の12のアミノ酸)である。従って、システイン-システイン・ループは、好ましくは本発明のキメラ・タンパク質内に形成される。キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列がシステイン-システイン・ジスルフィド結合ループとして存在する場合、IV型ピリン・ループ構造は、キメラ・タンパク質の残部から突出するかもしれず、それは、例えばasialoGM1レセプター、又は免疫系成分と相互作用することが可能である。
【0096】
II.キメラ・ポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドの発現
A.キメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチド
他の側面において、本発明は、本発明のキメラ・タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを提供する。(例えば、移行ドメイン及びER保持ドメインを含む)無毒性シュードモナス属外毒素A配列の好適なアミノ酸配列、細胞認識ドメイン、及びIV型ピリン・ループ配列、そして当該キメラ・タンパク質内のそれらの物理的な配置は、先に詳細に記載されている。これらのアミノ酸配列をコードするあらゆるポリヌクレオチドが、本発明の範囲内にある。
【0097】
1.無毒性のシュードモナス属外毒素A配列の同定
無毒性シュードモナス属外毒素Aアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが、あらゆる様々な確立された技術を使用して同定され、製造され、そして操作される。天然のシュードモナス属外毒素Aをコードするヌクレオチドを、配列番号1として示す。当業者は、本技術分野で知られている様々なクローニング及び生体外の増幅方法を使用して無毒性シュードモナス外毒素A配列を作成するためにこの配列を使用することができる。PCR法は、例えば米国特許番号第4,683,195号; Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263 (1987);及びErlich, ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989); Dieffenfach & Dveksler, PCR Primer: A Laboratory Manual (1995)に記載されている。これらのプライマーは、例えば完全長の配列、部分的な配列のいずれかの増幅、又は百〜数百のヌクレオチドのプローブに使用することができて、それはその後、cDNA又は核酸配列相同体に関するゲノム・ライブラリーをスクリーンするために使用される。ポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、所望のポリヌクレオチドの配列から選ばれたプローブを用いたゲノム又はcDNAライブラリー(例えば、シュードモナス・アエルギノーザ)のスクリーニングによって単離させられることもできる。
【0098】
説明として、全てのドメイン(第Iaドメイン、第IIドメイン、第Ibドメイン、及び第IIIドメイン)を含むシュードモナス属外毒素A配列をクローニングするために、以下のプライマー:
フォワード-GGCCCATATGCACCTGATACCCCAT(配列番号24);及び
リバース-GAATTCAGTTACTTCAGGTCCTCG(配列番号25)、
を使用することができる。
【0099】
第IIドメイン、第Ibドメイン、及び第IIIドメインを含むシュードモナス属外毒素A配列をクローニングするために、以下のプライマー:
フォワード-GGCCCATATGGAGGGCGGCAGCCTGGCC(配列番号26);及び
リバース-GAATTCAGTTACTTCAGGTCCTCG(配列番号27)、
を使用することができる。
本発明の態様で使用することができる他のシュードモナス属外毒素A構築物は、例えば米国特許番号第5,602,095号(Pastanら)に記載されもする。‘095特許に記載のとおり、第1〜第252アミノ酸をコードするヌクレオチドの除去は、「PE40」と呼ばれる構築物を生じる。第1〜第279アミノ酸をコードするヌクレオチドの除去は、「PE37」と呼ばれる構築物を生じる。これらの構築物の(天然の外毒素Aの第Iaドメインを欠く)無毒性変異は、これらの構築物の5'末端で細胞認識ドメインの相同体をコードする配列にそれらを連結するために特に有用である。これらの構築物は、場合によりアミノ末端メチオニンをコードすることができる。
【0100】
さらに、シュードモナス属外毒素Aは、部位特異的突然変異誘発又は特定の所望の適用のために分子を変えるために本技術分野で知られている他の技術を使ってさらに修飾される。本明細書中に記載のPE分子によって提供された機能上の利点に実質的に影響することのないやり方で、シュードモナス属外毒素Aを変更する手段を使用することができて、こうして得られた分子は、本明細書中に含まれると意図される。
【0101】
無毒性シュードモナス属外毒素A配列は、それらがADPリボシル化活性を欠くように第IIIドメインの一部を修飾することによってシュードモナス属外毒素A配列から製造することができる。PEのリボシル化活性は、おそらく天然のシュードモナス属外毒素Aの第400〜第600アミノ酸に存在する。例えば、第IIIドメインからのE553アミノ酸の削除(「ΔE553」)は、分子を無毒化する。この無毒化されたPEは、「PEΔE553」と呼ばれる。第IIIドメイン内の他のアミノ酸は、ADPリボシル化活性を除去するために、例えばアミノ酸残基の欠失、置換、又は付加により修飾される。例えば、チロシン残基による426位でのPEのヒスチジン残基の置換もPEのADPリボシル化を不活化する(Kessler & Galloway、前記を参照のこと)。
【0102】
いくつかの態様において、IV型ピリン・ループ配列の挿入のためのクローニング部に適応させるために、無毒性シュードモナス属外毒素A配列をさらに修飾することができる。例えば、IV型ピリン配列のためのクローニング部位は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの第Ibドメインのシステインをコードしているヌクレオチド間に導入することができる。例えば、システイン・コード残基間の第Ibドメインの一部をコードしているヌクレオチド配列は、取り除かれて、そしてアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と置き換えることができ、しかもこのヌクレオチド配列は、PstIクローニング部位を含む。この例を、実施例の項で詳細に記載する。あるいは、第Ibドメインのより長い部分又は第Ibドメイン全体が、取り除かれ、そしてアミノ酸配列と置き換えることことができて、しかもこのアミノ酸配列はクローニング部位を含む。
【0103】
構築物は、タンパク質のアミノ末端に分泌配列をコードするように設計することもできる。そのような構築物は、哺乳動物細胞のキメラ・タンパク質の産生に有用である。生体外において、そのような構築物がキメラ・タンパク質の単離を簡単にする。生体内において、構築物はポリヌクレオチド・ワクチンとして有用である;構築物を取り込んだ細胞は、タンパク質を発現し、そしてそれが免疫系と相互作用することができるところにそれを分泌する。
【0104】
2.IV型ピリン・ループ配列の同定
IV型ピリン・ループ・アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、種々の確立された技術のいずれかを使用して同定され、準備され、そして操作される。様々な微生物からのIV型ピリン・ヌクレオチド及びアミノ酸配列が本技術分野で周知である。例えば、シュードモナス属PAK株についてNCBIデータベース登録番号M14849、J02609;シュードモナス属T2A株についてNCBIデータベース登録番号AAC60462;シュードモナス属PAO株についてNCBIデータベース登録番号M11323;シュードモナス属CD株についてNCBIデータベース登録番号P17837;シュードモナス属P1株についてNCBIデータベース登録番号B31105;シュードモナス属KB7株についてNCBIデータベース登録番号Q53391;シュードモナス属577B株についてNCBIデータベース登録番号AAC60461;シュードモナス属K122-4株についてNCBIデータベース登録番号A33105;N.メニンギジスについてNCBIデータベース登録番号Z49820、Z69262、及びZ69261;N.ゴノロエエについてNCBIデータベース登録番号X66144及びAF043648;V.コレラについてNCBIデータベース登録番号U09807及びX64098;パスツレラ・マルトサイダについてNCBIデータベース加入番号API54834を参照のこと。
【0105】
当業者は、本技術分野で知られている様々なクローニング及び生体外の増幅方法を使用して、他の微生物からの他のピリン・ヌクレオチド及びアミノ酸配列をクローンし、そして同定することができる。例えば、ライブラリーからのシュードモナス属株の他のピリン・ループをクローンするために、シュードモナス属ゲノム中のピリン遺伝子の高度に保存された5'末端、及び隣接する遺伝子(ニコチネート-ヌクレオチド・ピロホスホリラーゼ)の3'末端からの増幅のためのプライマーを使用することができる。
【0106】
ピリン遺伝子の配列決定のための代表的なプライマーPCR(5'→3'方向で記載)は以下のとおりである:
pilATG(26nc)GAGATATTCATGAAAGCTCAAAAAGG(配列番号28);及び
nadB4(20nc)ATCTCCATCGGCACCCTGAC(配列番号29);又は
nadB1(21nc)TGGAAGTGGAAGTGGAGAACC(配列番号30)。
これらのIV型ピリン・ポリヌクレオチドから、C-末端の鎖内ジスルフィド・ループ(すなわち、IV型ピリン・ループ)を形成する部分を、容易に視覚的に確認することができる。IV型ピリン・ループ・アミノ酸の例を、前記の表1〜3に配列番号3〜20として示す。これらの及び他のIV型ピリン・ループ・アミノ酸をコードしている全ての縮合ヌクレオチドを、本発明のキメラ・ポリヌクレオチド構築のために使用することができる。いくつかの態様において、無毒性シュードモナス属外毒素A配列の中へのIV型ピリン・ループ配列の挿入を容易にするために、IV型ピリン・ループ・ヌクレオチド配列の5'及び/又は3'末端が、クローニング部位(例えば、PstI)のための突出末端を組み込むために修飾されうる。
【0107】
先に記載のとおり、一般に、IV型ピリン・ループ配列は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの第Ibドメインに挿入されるか、又は部分的に若しくは完全に第Ibドメインを置き換えることができる。いくつかの態様において、IV型ピリン・ループ配列は、無毒性シュードモナス属外毒素A配列内の他の好適な位置に挿入されることができる。例えば、IV型ピリン・ループ配列は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの他の位置に挿入されることができ、上記位置は、無毒性シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインの第265〜第287アミノ酸のようにシステイン-システイン・ジスルフィド結合ループを形成する。挿入のための他の好適な位置は、本明細書中に記載の機能試験を使って容易に試験されることができる。いくつかの態様において、1以上のIV型ピリン・ループ配列を、本発明のキメラ・ポリヌクレオチドに挿入することができる(例えば、第Ibドメインの最初のピリン・ループ配列と第IIドメインの2番目のピリン・ループ配列)。
【0108】
3.細胞認識ドメインの同定
様々な細胞認識ドメインをコードしているポリヌクレオチドが本技術分野で周知である。先に記載のとおり、1つの態様において、細胞認識ドメインがPEの第Iaドメインに存在し、それによって、キメラ・タンパク質はα2-MRドメインを標的とする。この態様において、細胞認識ドメインは、先に記載の配列番号1を使ってキメラ・ポリヌクレオチドに容易に包含されうる。他の態様において、第Iaドメインは、細胞表面レセプタに結合するリガンド、又はで細胞表面レセプタに対する抗体若しくは抗体断片により置換されうる。好適なリガンド、及び抗体又は抗体断片は、先のIBの項において記載した。キメラ・タンパク質及びキメラ・ポリヌクレオチド中の細胞認識ドメインの挿入のための好適な位置も、IBの項において先に記載した。
【0109】
細胞認識ドメインは、いずれかの好適な方法を使ってキメラ・タンパク質の残部に挿入されるか又は結合されうる。例えば、前記ドメインは、リンカを使って直接的に又は間接的にキメラ・タンパク質の残部に結合されうる。前記リンカーは、共有結合又は高親和性非共有結合を形成することができる。好適なリンカーは、当業者に周知である。他の態様において、細胞認識ドメインは、単独の連続的なキメラ・タンパク質をコードする核酸配列から単独のキメラ・ポリペプチドとして発現される。
【0110】
B.発現カセット及びベクター
本発明の態様は、当該キメラ・タンパク質を発現するための発現カセット及びベクターをも提供する。発現カセットは、キメラ・タンパク質をコードしているポリヌクレオチドに利用可能なように連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチド分子である。発現ベクターは、細胞における複製に必要な他の配列に加えてこれらの発現カセットを含む。
【0111】
発現ベクターは、転写及びmRNAの翻訳のための適切なプロモーター、複製配列、マーカーなどの包含により、原核生物又は真核生物における機能のために適合させることができる。発現ベクターの構築及びトランスフェクトした細胞における遺伝子の発現は、本技術分野で周知でもある分子クローニング技術の使用を含む。Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1989)及びCurrent Protocols in Molecular Biology, P.M. Ausubel et al., eds., (Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.)。そのような目的のために有用なプロモーターは、メタロチオネイン・タンパク質プロモーター、構造的なアデノウイルスの主な遅延プロモーター、デキサメタゾン-誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRPpolIIIプロモーター、構造的なMPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えば、ヒト前初期CMVプロモーター)、及び構造的なCMVプロモーターを含む。遺伝子治療に有用であるプラスミドは、選択マーカー、同定領域、及び他の遺伝子のような他の機能上の要素を含むことができる。
【0112】
本願発明に有用な発現ベクターは、それらの意図された使用に依存する。そのような発現ベクターは、宿主細胞に適合した発現及び複製シグナルを含む必要がある。キメラ・タンパク質を発現するのに有用な発現ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスのようなウイルス性ベクター、プラスミド・ベクター、コスミドなどを含む。ウイルス性及びプラスミド・ベクターは、哺乳動物細胞のトランスフェクトに好ましい。その中の発現制御配列がCMVプロモーターを含む発現ベクターpcDNA1(Invitrogen, san Diego, CA)は、トランスフェクション及び発現の優れた程度を提供する。アデノ随伴ウイルス・ベクターが、本願発明の遺伝子治療法に有用である。
【0113】
例えば、溶液からの細胞による分子の直接的な取り込み、リポフェクション(例えば、リポソーム又はイムノリポソーム)を通した促進された取り込み、粒子を介したトランスフェクション、及びに抑制ポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に利用可能なように連結された発現制御配列をもつ発現カセットからの細胞内発現を含む種々の手段が細胞にポリヌクレオチドをデリバリーするために利用可能である。Inouye et al., 米国特許番号第5,272,065号; Methods in Enzymology, vol. 185, Academic Press, Inc., San Diego, CA (D.V. Goeddel, ed.) (1990)、又はM. Krieger, Gene Transfer and Expression -- A Laboratory Manual, Stockton Press, New York, NY, (1990)も参照のこと。生体外の化学合成により短いオリゴヌクレオチドを作製する方がより経済的であるかもしれないが、組み換えDNA発現プラスミドは、遺伝子治療以外の手段によるデリバリーのための本発明のポリヌクレオチドの製造に使用することができる。
【0114】
構築物は、タンパク質の単離を容易にするためにタグを含むことができる。例えば、6つのヒスチジン残基から成るポリヒスチジン・タグは、タンパク質のアミノ末端の終わりに取り込まれることができる。ポリヒスチジン・タグは、ニッケル-キレート・クロマトグラフィーによる一段階の簡便なタンパク質の単離を可能にする。
【0115】
C.組み換え細胞
本発明は、本願発明のキメラ・タンパク質をコードしているヌクレオチド配列の発現のための発現カセット又はベクターを含む組み換え細胞をも提供する。宿主細胞は、タンパク質を精製するために高いレベルの発現のために選ばれる。細胞は、原核細胞、例えばE.コリ、又は真核細胞であるかもしれない。有用な真核細胞は、酵母及び哺乳動物細胞を含む。細胞は、例えば培養の組み換えの細胞又は生体内の細胞であるかもしれない。
【0116】
E.コリが、本発明のキメラ・タンパク質を産生するためにうまく使用された。タンパク質は折りたたまれ、そしてジスルフィド結合はこの細胞内で形成できる。
D.キメラ・タンパク質の精製と製造
いったん組み換えキメラ・タンパク質が発現されれば、産物の放射性標識、続くゲル電気泳動法による解析、ラジオイムノアッセイ、ELISA、バイオアッセイなどを含む産物の物理学的又は機能上の性質に基づいたアッセイによって同定することができる。
【0117】
コードされたタンパク質がいったん同定されれば、それは分離され、クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換、親和性、及びサイジング・カラム・クロマトグラフィー)、遠心分離法、溶解度の差異を含む標準方法により、又はタンパク質の精製のためのあらゆる他の標準的技術により精製されうる。一般に、R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982), Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照のこと。使用された実際の条件は、一つには総荷電、疎水性、親水性などのような因子に依存し、かつ、当業者にとって明白である。
【0118】
生物学的な発現又は精製の後に、キメラ・タンパク質は、構成タンパク質の天然の立体構造に比べて実質的に異なる立体構造をもつかもしれない。この場合、キメラ・タンパク質を変性し、還元して、そしてそのタンパク質の好ましい立体構造への再折りたたみを引き起こすことは有益である。ポリペプチドの還元及び変性、そして再折りたたみの誘発の方法は、当業者に周知である(Debinski et al., J. Biol. Chem. 268:14065-14070 (1993); Kreitman & Pastan, Bioconjug. Chem. 4:581-585 (1993);及び Buchner et al., Anal. Biochem. 205:263-270 (1992))。例えば、Debinskiらは、グアニジン-DTEによる封入体ポリペプチドの変性及び還元を記載する。次に、このポリペプチドを、酸化型グルタチオンとL-アルギニンを含む酸化還元緩衝液中で再折りたたみさせる。
【0119】
E.キメラ・タンパク質の機能特性の試験
その全体又は各々の成分としてのキメラ・タンパク質の機能特性は、様々なルーチンのアッセイを使用している。例えば、キメラ・タンパク質は、細胞認識、サイトゾル移行、IV型ピリン接着、及び免疫原性の点で試験される。キメラ・タンパク質全体を、試験するか、又は様々なドメインの機能を、それらを野生型外毒素Aの天然ドメインと置き換えることによって試験することができる。
【0120】
1.受容体結合/細胞認識
キメラ・タンパク質中に存在する細胞結合ドメインが適当に機能するかどうかを決定するために、キメラ・タンパク質の、(分離したか又は細胞表面の)ターゲット受容体に結合する能力を、本技術分野で知られている様々な方法を使って試験する。
【0121】
1つの方法において、ターゲットへのキメラ・タンパク質の結合を、親和クロマトグラフィによって実施する。例えば、キメラ・タンパク質を、アフィニティ・カラムの基質に結合させ、この基質への受容体の結合を検出する。あるいは、ターゲット受容体をアフィニティ・カラムの基質に結合させ、基質へのキメラ・タンパク質の結合を検出する。
【0122】
細胞上の受容体へのキメラ・タンパク質の結合は、例えばキメラ・タンパク質を標識し、そして、例えば蛍光性セルソーティング、オートラジオグラフィーなどで細胞へのその結合を検出することにより試験することができる。
【0123】
いくつかの態様において、ADPリボシル化活性をもつキメラ・タンパク質の有毒な変異体が、キメラ・タンパク質の細胞結合ドメインがそのターゲット受容体に結合するかどうかを試験するために使用される。例えば、キメラ・タンパク質の有毒な変異体を、ターゲット受容体を発現する細胞かターゲット受容体を発現しない細胞と一緒にインキュベートし、そしてキメラ・タンパク質の有毒な変異体の細胞障害効果を(例えば、[3H]ロイシン取り込みの抑制作用を測定することにより)決定することができる。
【0124】
抗体が細胞認識ドメインが誘導されるリガンドに結合することが確認されれば、それらは、同系統の受容体に関する免疫学的測定法又は競合分析によるキメラ・タンパク質の細胞認識ドメインの存在の検出に有用である。
【0125】
前述の試験方法において、一般にターゲットに対するキメラ・タンパク質の特異的又は選択的な反応は、バックグラウンド・シグナル又はノイズの少なくとも2倍、そしてより一般にはバックグラウンドの10〜100倍超である。
【0126】
これらの方法は、例えばKreitman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 87:8291-5 (1990); Siegall et al., Semin. Cancer Biol. 1:345-50 (1990); Siegall et al., Cancer Res. 50:7786-8 (1990); FitzGerald et al., J. Cell Biol. 126(6):1533-41 (1995)中に詳細に記載される。
【0127】
2.サイトゾルへの移行
キメラ・タンパク質の移行ドメイン及びER保持ドメインが適当に機能するかどうかを決定するために、サイトゾルへの出入りを増すためのキメラ・タンパク質の能力を試験する。
【0128】
a)サイトゾル中での存在
1つの方法おいて、サイトゾルへの出入りを、サイトゾル中のキメラ・タンパク質の物理的な存在を検出することによって決定される。例えばキメラ・タンパク質を標識し、そしてこのキメラ・タンパク質を細胞にさらす。次に、サイトゾル画分を分離し、そしてこの画分の標識の量を検出する。画分中の標識の検出は、キメラがサイトゾルへの出入りを増したことを示す。この結果は、対照、例えばバックグラウンド・ノイズ又はシグナルと比較することができる。サイトゾル画分の検出可能な標識が、バックグラウンド・シグナル又はノイズ少なくとも2倍、そして一般にはバックグラウンドの10〜100倍超である場合、この結果は、キメラ・タンパク質がサイトゾルへの出入りを増したことを示す。
【0129】
b)ADPリボシル化活性
他の方法において、サイトゾルへの移行を達成する移行ドメイン及びER保持ドメインの能力を、ADPリボシル化活性を有する第IIIドメインを含む構築物で試験することができる。要するに、細胞を組織培養プレートに蒔き、そして修飾された移行ドメイン又はER保持配列を含むキメラ・タンパク質の有毒な変異体にさらす。ADPリボシル化活性を、、例えば3H-ロイシンの取り込みを観察することにより、タンパク質合成の抑制作用の機能として測定する。この方法は、FitzGerald et al., J. Bio. Chem. 273:9951-9958(1998)でさらに詳細に記載されている。キメラ・タンパク質の有毒な変異体を晒された細胞における3H-ロイシンの取り込みは、無毒性対象物又はバックグラウンド・ノイズのそれと比較される。有毒な変異体に晒された細胞の3H-ロイシンの取り込みが、無毒性対象物(又はバックグラウンド・ノイズ)のそれと比べて少なくとも2倍、そして一般には10〜100倍超まで減少した場合、キメラ・タンパク質が適当なサイトゾルへの出入りを得たことは示す。
【0130】
3.IV型ピリン・ループの接着
キメラ・タンパク質内のIV型ピリン配列が溶剤に晒される構造をもち、天然に近い立体構造をもつ場合、キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列は、例えばasialoGM1受容体又は上皮細胞上の他の受容体に結合するはずであり、そしてこれらの受容体に結合するためのIV型ピリン・ループ配列を発現する微生物と競合しもする。従って、キメラ・タンパク質内でIV型ピリン・ループ配列が適当に機能しているかどうかを、上皮細胞に接着するその能力か又はIV型ピリン・ループ配列を発現する微生物(例えば、P.アエルギノーザ)の上皮細胞への接着を妨げるその能力を計測することによって試験する。これらのアッセイは、当業者によって容易に設計される。
【0131】
例として、IV型ピリン・ループ配列がP.アエルギノーザ又はカンジダ菌から得られる場合、接着アッセイは、asialoGM1でコートした担体を用いて実施することができる。IV型ピリン配列を含む様々な濃度のキメラ・タンパク質を、固定化されたasialoGM1との反応性についてアッセイする。キメラ・タンパク質とasialoGM1の間のこの反応性の特異性を確認するために、競合アッセイを実施する。例えば、可溶性のasialoGM1を、固定化されたasialoGM1に結合しているキメラ・タンパク質を妨害するために添加する。この方法を、実施例の項IIB3で詳細に記載する。結合結果を、対照(例えば、ピリン・ループ挿入断片を伴わないか又はごちゃ混ぜの(scrambled)ピリン・ループ配列挿入断片を伴う同じキメラ・タンパク質)と比較する。固定化されたasialo GM1へのキメラ・タンパク質の結合量が対照より少なくとも2倍、より一般に約10〜100倍大きい場合には、キメラ・タンパク質中のピリン・ループ挿入断片が適当に機能していることを示す。
【0132】
他の態様において、当業者は、IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の、上皮細胞への結合を妨げるキメラ・タンパク質の能力を試験することができる。上皮細胞の選定は、キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列がどの微生物から得られたかに依存する。例えば、キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列がV.コレラから得られた場合には、腸の上皮細胞を結合アッセイに使用することができる。キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列がV.ゴノロエエから得られた場合、生殖泌尿器系の上皮細胞を結合アッセイにに使用することができる。キメラ・タンパク質内のIV型ピリン・ループ配列がP.アエルギノーザから得られた場合には、肺上皮細胞を結合アッセイに使用することができる。
【0133】
説明として、IV型ピリンを発現する様々なシュードモナス・アエルギノーザ菌株を、これらの細胞へのシュードモナス・アエルギノーザの結合をもたらすであろうヒト肺上皮細胞系、A549に別個に添加する。そして、キメラ・タンパク質を添加する。キメラ・タンパク質内のIV型ピリン配列が天然に近い立体構造で提供された場合には、キメラ・タンパク質は、シュードモナス・アエルギノーザ結合と競合し、上皮細胞へのシュードモナス・アエルギノーザの接着の減少をもたらす。この方法を、以下の実施例の項IIIで詳細に記載する。この競合アッセイからの結果を、対照(例えば、ピリン・ループ挿入断片を伴わない以外は同じキメラ・タンパク質か、又はごちゃ混ぜのピリン・ループ配列挿入断片を伴う同じキメラ・タンパク質)を用いて得られた結果と比較する。キメラ・タンパク質が対照に比べ少なくとも2倍又は一般に約10〜100倍よくシュードモナス属の結合を減少させることができれば、キメラ・タンパク質のピリン・ループ挿入断片が適当に機能していることを示す。
【0134】
4.免疫原性
キメラ・タンパク質がキメラ・タンパク質の両方の部分(すなわち、IV型ピリン・ループ配列と無毒性シュードモナス属外毒素A配列)に関しその免疫原性を保つかどうかを確認するために、キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清の性質を試験する。
【0135】
a)IV型ピリン配列の免疫原性
キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清を使って、キメラ・タンパク質内のIV型ピリン配列の免疫原性を接着試験により試験する。以下の実施例の項IVAで記載のとおり、キメラ・タンパク質を含む組成物で動物、例えばマウス又はウサギを免疫する。前記動物から免疫後の抗血清を得、そして抗血清がIV型ピリン配列を発現する微生物の上皮細胞への結合を阻害するかどうかを確認するために準備する。例えば、シュードモナス・アエルギノーザを上皮細胞に添加し、そして上皮細胞へのシュードモナス属の結合量を測定する。次に免疫後の抗血清を上皮細胞に添加し、抗血清がシュードモナス・アエルギノーザの上皮細胞への結合を減少させるかどうかを確認する。このアッセイを、実施例の項IVBで詳細に記載する。キメラ・タンパク質内のピリン・ループ配列が天然に近い立体構造で提供された場合、(好適な希釈率の、例えば1:10又は1:100)キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清は、少なくとも約20%、一般に少なくとも約30%、より一般に少なくとも約50%までシュードモナス属の結合を減少させることが期待される。
【0136】
b)毒素中和反応
キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清を使用して、キメラ・タンパク質内の無毒性のシュードモナス属外毒素A配列の免疫原性を試験する。特に、免疫後抗血清を、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するその能力について試験する。例えば、当業者は、培養状態の真核細胞における精製されたシュードモナス属外毒素Aのタンパク質合成の抑制作用を試験することができる。シュードモナス属外毒素Aを真核細胞に添加するとき、それは細胞のタンパク質合成を減少させるか又は妨げ、細胞毒性を引き起こす。抗血清がシュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を減少させるか又は不活化することができるかどうかを決定するために、シュードモナス属外毒素Aを、キメラ・タンパク質に対して導かれた抗体を含む抗血清と一緒にインキュベートする。このインキュベート混合物を培養細胞に添加する。次に、細胞のタンパク質合成に対する抗血清の効果を計測する(例えば、[3H]ロイシン取り込みの観察)。このアッセイは、以下の実施例の項IVCに、及びOgata et al., J. Biol. Chem. 265(33):20678-85 (1990)にも記載される。キメラ・タンパク質内の無毒性外毒素A配列が天然に近い立体構造で提供された場合、(好適な希釈率での、例えば1:10又は1:100)キメラ・タンパク質に対して産生された抗血清は、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を対照(例えば、抗血清を伴わない精製されたシュードモナス属外毒素Aの添加)に比べて少なくとも約30%、一般に少なくとも約50%、より一般に少なくとも約70%、80%、90%、95%、又は99%まで減少させることが期待される。
【0137】
III.キメラ・タンパク質又はポリヌクレオチドを含む組成物
本発明は、単独又は他の成分との組み合わせて、細胞又は動物に投与するための医薬として許容された溶液の状態の、本明細書中に開示した1以上のキメラ・ポリペプチド又はポリヌクレオチド組成物の製剤をも提供する。
【0138】
A.キメラ・タンパク質を含む組成物
本発明のキメラ・タンパク質は、医薬組成物として直接的に対象に投与される。投与は、キメラ・タンパク質を、処置すべき組織、好ましくは粘膜及び上皮細胞との最終的な接触に導くために通常使用されるいずれかの経路による。キメラ・タンパク質を含む組成物は、いずれかの好適な様式で、好ましくは医薬として許容される担体と一緒に投与される。そのようなモジュレータを投与する好適な方法が、利用可能であり、そして当業者に周知である。2以上の経路を特定の組成物の投与に使用することができるが、特定の経路が他の経路より素速い、かつ、より効果的な反応をしばしば提供する。
【0139】
本発明のキメラ・タンパク質を含む医薬組成物は、生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は医薬として使用されうる製剤へのポリペプチドの処理を容易にする補助物を使って慣習の様式で処方される。適切な製剤は、選ばれた投与経路に依存している。
【0140】
医薬として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤は、投与される特定の組成物によって、並びに組成物の投与に使用される特定の方法によりある程度決定される。それ故に、本発明の医薬組成物に関する幅広い好適な製剤が提供される。例えば、医薬組成物は、局所投与、全身的な製剤、注入、経粘膜投与、経口投与、吸入/経鼻投与、直腸、又は膣投与のために処方される。様々な投与法のための好適な製剤は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985に記載されている。
【0141】
要するに、局所投与のために、タンパク質は溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして処方される。全身的な製剤は、注射、例えば皮下、静中、筋中、くも膜下又は腹腔内注入による投与のために設計されたもの、並びに経皮、経粘膜、経口又は肺投与のために設計されたものを含む。注射のために、タンパク質は、水性溶液、好ましくは生理学的に適用する緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、又は生理的緩衝食塩水中に配合される。経粘膜投与のために、通り抜けるべき関門に適切な浸透剤が製剤に使用される。経口投与のために、組成物は、キメラ・タンパク質が錠剤、丸剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁液などとして処方されることを可能にするためにキメラ・タンパク質を医薬として許容される担体と組み合わせることによって容易に処方されうる。吸入による投与のために、本発明による使用のためのキメラ・タンパク質は、好適な噴射剤、例えば、ジクロルジフルオルメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガス、又は他の好適な気体の使用により都合よく加圧された包装からのエアロゾル・スプレー又はネブライザーの形態でデリバリーされる。タンパク質は、直腸又は膣組成物、例えばカカオ脂若しくはグリセリドのような他の慣習の坐剤基剤を含む、坐剤又は保持浣腸器の状態に処方されもする。
他の好適な製剤及び投与方法は、当業者にとって容易に明白で、かつ、本発明に適用することができる。
【0142】
B.キメラ・ポリヌクレオチドを含む組成物
本発明は、キメラ・タンパク質をコードしているポリヌクレオチド(時々「キメラ核酸」又は「キメラ・ポリヌクレオチド」と呼ばれる)を含む組成物をも提供する。これらの核酸は、標的細胞又は宿主組織のトランスフェクションのための相当数の周知のベクターのいずれかの中に挿入される。例えば、核酸は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、及びリポソームのようなデリバリー媒体と複合した核酸としてデリバリーされる。DNA及びRNAウイルスを含むウイルス・ベクター・デリバリー系は、細胞へのデリバリー後にエピソーム又は組み込まれたゲノムのいずれかを有する。遺伝子治療手順の総説に関しては、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Feigner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:161-115 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(l):31-44 (1995); Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds) (1995);及びYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照のこと。
【0143】
核酸の非ウイルス性のデリバリー方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸結合、ネイキッドネイキッドDNA、人工的なウイルス粒子、及び薬剤によって高めたDNA取り込みを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許番号第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号中に記載されており、かつ、リポフェクション試薬は、商業的に売られている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適な陽イオン性及び中性脂質は、Feigner、WO91/17424、WO91/16024のものを含む。デリバリーは、細胞(ex vivo投与)又はターゲット組織(生体内投与)に対してであるかもしれない。
【0144】
C.ワクチン
本発明のいくつかの好ましい態様において、ワクチンを提供する。ワクチンは、免疫促進剤と組み合わせて、先に議論されたもののような1以上の医薬組成物を一般に含む。免疫促進剤は、外因性の抗原に対する(抗体及び/又は細胞性)免疫応答を高めるか又は増強するいずれかの物質であるかもしれない。免疫促進剤の例は、アジュバント、生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)、及びリポソーム(その中に化合物が組み込まれている;例えば、Fullerton米国特許番号第4,235,877号を参照のこと)を含む。ワクチンの製造は、一般に、例えばPowell & Newman, eds., Vaccine Design (the subunit and adjuvant approach) (1995)に記載されている。本発明の範囲内の医薬組成物及びワクチンは、生物学的に活性であるか又は不活性である他の化合物を含むかもしれない。
【0145】
種々の免疫促進剤のどれもがこの本発明のワクチンに利用されうる。例えば、アジュバントが含まれうる。ほとんどのアジュバントが、迅速な異化作用から抗原を保護するように設計された物質、例えば水酸化アルミニウム又は鉱油、及び免疫応答の刺激薬(例えば、リピドA)を含む。好適なアジュバントは、例えばフロイントの不完全アジュバントと完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI);Merck Adjuvant 65 (Merck and Company, Inc., Rahway, NJ); AS-2 及びその誘導体(SmithKline Beecham, Philadelphia, PA);CWS、TDM、Leif、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム・ゲル(ミョウバン)若しくはリン酸アルミニウム; カルシウム、鉄、又は亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖類; カチオン又はアニオン誘導された多糖類; ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフィア;モノホスホリル・リピドA、及びクイルA(quil A)として市販されている。GM-CSF又はインターロイキン-2、-7、又は-12のようなサイトカインがアジュバントとして使われることもできる。
【0146】
本技術分野で知られているあらゆる好適な担体が本発明のワクチンに利用されることができて、投与の方式に依存して担体の種類が変わる。ワクチンは、例えば、局所、経口、経鼻、静中、頭蓋内、腹膜内、皮下又は筋中投与を含む、あらゆる適切な様式の投与のためにも処方されうる。これらの製剤及び投与方法は先に記載したので、この項では繰り返さない。
【0147】
本発明の医薬組成物及びワクチンは、単位用量又は複数用量容器、例えば封をしたバイアルで提供される。そのような容器は、好ましくは使用まで製剤の無菌を保つために密封される。一般的に、製剤は、油性又は水性の媒質中、懸濁剤、溶液、又は乳液として保存される。あるいは、医薬組成物又はワクチンは、使用直前に無菌の液体担体の添加だけが必要な凍結乾燥条件で保存されうる。
【0148】
D.有効用量
対象の免疫応答を誘発するためのキメラ・タンパク質の有効量の定量は、特に本明細書中に提供された詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0149】
有効用量は、生体外アッセイからまず見積もられる。例えば、用量は、本技術分野で周知の技術を使って免疫応答の誘導を達成するために動物モデルに処方される。当業者は、動物データに基づきヒトへの投与を容易に最適化しうる。投与の量及び間隔は、個々に調節されうる。例えば、ワクチンとして使用する場合、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドは、1〜36週の期間に約1〜3回投与で与えられる。好ましくは、約3〜4ヶ月の間隔で、3回の投与が与えられ、ブースター予防接種がその後定期的に与えられる。代わりのプロトコールが個々の患者に適当であるかもしれない。好適な用量は、先に記載のとおり投与されるとき、少なくとも1〜2年間、IV型ピリン配列を発現する微生物による感染症から患者を保護するのに十分な、予防接種を受けた患者の免疫応答を引き起こすことができる量のポリペプチド又はDNAである。一般的に、一用量中に存在する(又は用量中の上記DNAによってin situにおいて産生される)ポリペプチド又は核酸の量は、宿主1 kgあたり約1 pg〜約5 mg、一般に約10 pg〜約1 mg、そして好ましくは約100 pg〜約1 μgの範囲である。好適な用量は、患者のサイズによって変化するが、一般に約0.1 mL〜約5 mLの範囲である。
【0150】
IV.免疫応答の誘発方法
本発明のキメラ・タンパク質は、宿主の免疫応答の誘発に有用である。体液性免疫応答の誘発は、特異的にIV型ピリン・ループ配列又は無毒性外毒素A配列を認識する抗体の産生、並びにIV型ピリン配列を有する微生物に対する免疫に有用である。
【0151】
A.予防及び治療上の処置
キメラ・タンパク質は、シュードモナス・アエルギノーザ、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラなどを含む様々な病原性微生物からのIV型ピリン・ループ配列を含むことができる。それ故に、本願発明は、IV型ピリン・ループ配列を有する病原菌の病理的な活性を伴っている病気の予防及び治療上の処置を提供する。前記方法は、IV型ピリン配列を有するキメラ・タンパク質ベースの無毒性シュードモナス属外毒素Aによる対象の予防接種を伴う。得られた免疫応答は、病原体、それら自身に対する攻撃をしかける。例えば、細菌又は酵母の感染から病変が起これば、免疫系は病原菌に対する応答を起こす。
【0152】
B.体液性免疫応答
キメラ・タンパク質は、対象による、IV型ループ・ピリン配列及び無毒性シュードモナス属外毒素A配列に対する抗体の産生の誘発に有用である。キメラ・タンパク質は、天然のシステイン-システイン・ループ内に生じるIV型ピリン・ループ配列に対する抗体を作製するための魅力的な免疫原である:システイン-システイン・ループ内にIV型ピリン・ループ配列を含んでいるので、それらはIV型ピリン・ループ配列を天然に近い立体構造で免疫系に提示する。得られた抗体は、一般に、IV型ピリン配列の線状変異体に対して産生されたものよりよく天然の抗原を認識する。
【0153】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、当業者に周知である。手短に言えば、免疫原、好ましくは精製されたポリペプチド、適切な担体(例えば、GST、鍵穴リンペット・ヘマノシアニン(hemanocyanin)など)に結合したポリペプチド、又は免疫処置ベクターの中に取り込まれたポリペプチド、例えば組み換えワクチニア・ウイルス(米国特許番号第4,722,848号を参照のこと)を、アジュバントと混ぜる。動物を前記混合物で免疫する。免疫原性調製物に対する動物の免疫応答を試験血液を採取し、そして着目のポリペプチドへの反応性の力価を測定すること。免疫原に対する適切に高い力価の抗体が得られた場合、血液を動物から集め、抗血清を準備する。ポリペプチドに反応的な抗体を濃縮するために抗血清のさらなる分画を、望まれた場合に実施する。例えばColigan, Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY (1991);及びHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY (1989)を参照のこと。
【0154】
様々な態様において、最終的に産生された抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は抗体断片であるかもしれない。
【0155】
モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌している細胞から準備できる。これらの抗体は、エピトープを含むポリペプチドに結合するために関してスクリーンされるか、又はアゴニスト又はアンタゴニスト活性、例えば天然のものではないエピトープを含む物質を通して仲介された活性に関してスクリーンされる。いくつかの例において、マウス、齧歯動物、霊長類、ヒトなどのような様々な哺乳動物宿主からのモノクローナル抗体を調製することが望ましい。そのようなモノクローナル抗体を準備のための技術の記載は、例えばStites et al. (eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA、及び本明細書中に引用した参考文献; Harlow and Lane, Supra; Coding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY; and Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497中に見られる。
【0156】
他の態様において、抗体はヒト化免疫グロブリンである。組み換えDNA技術によりヒト以外の抗体のCDR領域をヒトの不変領域と連結することによってヒト化抗体を作製する。Queenらの米国特許番号第5,585,089号を参照のこと。
【0157】
本発明の他の態様において、IV型ピリン・ループ配列に対する抗体断片を提供する。一般に、これらの断片は、完全な免疫グロブリンのそれに類似したIV型ピリン・ループ配列に特異的な結合を示す。抗体断片は、別個の重鎖、軽鎖、Fab、Fab'F(ab')2及びFvを含む。断片は、組み換えDNA技術、又は原型の免疫グロブリンの酸素又は化学的な分離によって産生される。
【0158】
他の好適な技術は、ファージ又は類似したベクターによる組み換え抗体のライブラリーの選定を含む。Huse et al., Science 246: 1275-1281 (1989);及びWard et al., Nature 341: 544-546 (1989)を参照のこと。
【0159】
ヒト・モノクローナル抗体又はその結合断片をコードするDNA塩基配列を分離するためのアプローチは、Huse et al., Science 246:1275-1281(1989)によって概説される一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞からDNAライブラリーをスクリーニングし、次に所望の特異性の抗体(又は結合断片)をコードする配列をクローニング及び増幅することによる。Huseにより記載されたプロトコールは、ファージ・ディスプレイ技術との組み合わせてより効果的に提供をされる。例えば、Dower et al., WO91/17271及びMcCafferty et al., WO92/01047を参照のこと。ファージ・ディスプレイ技術は、本願発明のポリペプチド又はそれらのリガンドに親和性をもつことが先に示された抗体のCDR領域の突然変異誘発のために使用することもできる。改善された結合親和性をもつ抗体が選ばれる。
【0160】
本願発明の抗体は、IV型ピリン配列をもつ物質を単離における親和性クロマトグラフィに有用である。カラムを、例えば固形支持体、例えば粒子、例えばアガロース、セファデックスなどに連結された抗体により準備し、ここで細胞ライセートを上記カラムに通して、洗浄して、精製された物質を放出させる高めた濃度の緩やかな変性剤により処理する。
【0161】
実施例の項に記載のとおり、免疫を受けたウサギからの血清は、2つの反応性をもっていた:接着を妨げるもの及び外毒素Aを中和するもの。従って、組成物(例えば、ワクチン)としてのキメラ・タンパク質を対象に導入することによって、IV型ピリン配列を有する微生物(例えば、シュードモナス・アエルギノーザ)の定着を防ぐ抗体を、対象内に提供することができる。特にシュードモナス・アエルギノーザについて、これらの細菌のごく一部がこの防衛に打ち勝つはずであるが、外毒素Aの正常な破壊力も抗血清によって中和される。
【0162】
C.IgA仲介分泌性免疫応答
粘膜は、IV型ピリン配列をもつものを含む多くの感染性病原体の主要な入口である。粘膜は、例えば口、鼻、咽喉、肺、膣、直腸、及び結腸を含む。侵入に対する防御として、体は、病原体に対する粘膜上皮膜の表面上に分泌性IgAを分泌する。さらに、1つの粘膜表面で示された抗原は、これらの粘膜の間の抗体を分泌する細胞のトラフィッキングにより他の粘膜表面での応答を引き起こすことができる。分泌性IgAの構造は、その維持された残基、及び粘膜の管腔表面での効果的な機能について重大であることを示唆した。本明細書中に使用されるとき、「分泌性IgA」又は「sIgA」は、J連鎖によりつながれ、かつ、さらに分泌成分を結合した2つのIgA免疫グロブリンを含む重合体分子を言及する。抗原の粘膜投与がIgG応答を生じうる一方で、免疫原の非経口投与は、強いslgA応答をめったに生じない。
【0163】
シュードモナス属外毒素は、粘膜上の受容体に結合する。従って無毒性外毒素A配列を含むキメラ・タンパク質は、IV型ピリン・ループ配列を粘膜表面にもたらすための魅力的なベクターである。そこで、キメラ・タンパク質は、このキメラ・タンパク質に対するIgA仲介免疫応答を発現させる。それ故に、本願発明は、粘膜を通っての侵入を引き起こす病原体からのIV型ピリン・ループ配列を含む、無毒性シュードモナス属外毒素ベースのキメラ・タンパク質を提供する。細胞認識ドメインは、あらゆる粘膜細胞表面レセプタに標的とされる可能性がある。これらのキメラ・タンパク質は、粘膜を通して体への侵入を引き起こす免疫原に対するIgA仲介分泌性免疫応答の発現に有用である。この目的のために使われたキメラ・タンパク質は、それらの細胞認識ドメインとして粘膜上の受容体に結合するリガンドを持つであろう。例えば、上皮成長因子は、粘膜表面上の上皮成長因子レセプターに結合する。
【0164】
キメラ・タンパク質は、液体又は固体、例えばスプレー、軟膏、坐剤、又は免疫原を染み込ませた侵食性重合体の形態の医薬組成物を含むいずれかの典型的な手段により粘膜表面に適用することができる。投与は、免疫原を、例えばブースター免疫として、一連の免疫における多数の異なる粘膜表面に適用することを伴う。ブースター接種は、非経口で、例えば皮下に投与することもできる。キメラ・タンパク質は、約1μg〜1000 μg、例えば約10 μg〜100 μgの用量で投与される。
【0165】
IgA応答は、免疫原に晒された粘膜表面で最も強い。従って、1つの態様において、免疫原は、特定の病原体に晒された部位であることが見込まれる粘膜表面に適用される。それ故に、特定の病原体に晒された部位に依存して、キメラ・タンパク質は、肺、鼻粘膜、膣、肛門、又は口粘膜に投与されるか、又はそれらは経口薬として投与される。例えば、嚢胞性線維症患者に関して、キメラ・タンパク質は肺に投与される。
【0166】
本願発明は、キメラ・タンパク質の粘膜投与は、IgAとIgGの両方について強いメモリー応答をもたらす。従って、それらによる予防接種において、粘膜的に又は非経口的にブースター用量を提供することは有用である。メモリー応答は、初回量後1年以上、ブースター用量の投与により発現される。例えば、ブースター用量は、初回量後、約12、約16、約20、又は約24ヶ月で投与される。
【0167】
シュードモナス属ワクチンの潜在能力の値は、一つには環境中に存在する菌株から広く個体を保護するその能力に関する。ピリン・ループ挿入断片の長さに基づいて、Ps.アエルギノーザについて2つのグループ分けがある:一方のグループは12のアミノ酸配列をもち、そして一方は17のアミノ酸挿入断片をもつ。どちらのループもおそらくasialo-GM1に結合し、かつ、類似した構造を示すと考えられる。これを反射して、我々は、PAK株からの12のアミノ酸ループを含む我々のワクチン・タンパク質がより短いループをもつ菌株についてだけでなく、より長いループを示すSBI-N株についても反応性である抗体を産生することが可能であることを指摘する。我々の研究は、ピリン及びピリン・ループ配列に関する追加の配列データをも提供する。我々は、これまでデータベース(表1及び2)に入力されていない、2種類のピリン・ループ配列(Ps.アエルギノーザ1071株及びPsアエルギノーザSBI-N株に関するもの)を本明細書中で報告する。
【0168】
Ps.アエルギノーザによる慢性の肺への定着は、CF患者の臨床経過の落ち込みに関係する。しばしば、肺のデリバリーによる抗生物質療法でさえ、これらの患者におけるPs.アエルギノーザ感染症を根絶することに失敗する(Steinkamp, G., B. et al., Pediatr Pulmonol 6(2):91-8(1989))。Ps.アエルギノーザ感染症を制御すること、又はできたら、それらを予防することは、このようにCF患者の医療の極めて重要なまだ対応されていない医学的な必要性になった(Bauernfeind, A. et al., Behring Inst Mitt(98):256-61(1997))。
【0169】
これに取り組むために、相当数のワクチン・アプローチが、検討されて、多数が膜外成分に (Matthews-Greer, J. M., et al.; J Infect Dis 155(6): 1282-91 (1987); Owen, P. Biochem Soc Trans 20(1):1-6 (1992); Sawa, et al.; Nat Med 5(4):392-8(1999))、あるものは毒素に(Chen, T. Y., et al., J Biomed Sci 6(5):357-63 (1999); Denis-Mize, K. S., et al.; FEMS Immunol Med Microbiol 27(2):147-54 (2000); Gilleland, H. E., et al.; J Med Microbiol 38(2):79-86 (1993); Matsumoto, et al.; J Med Microbiol 47(4):303-8 (1988))、そしてあるものは組み合わせアプローチに(Cryz, S. J., et al.; Antibiot Chemother 39:249-55 (1987); Cryz, S. J., et al., Infect Immun 52(1):161-5 (1986); Cryz, S. J., et al,; Infect Immun 55(7):1547-51 (1987);及びCryz, S. J., et al. J Infect Dis 154(4):682-8 (1986) (Johansen, H. K., et al.; APMIS 102(7):545-53(1994))注目した。
【0170】
いくつかの態様における本発明の組成物は、感染、そして特にシュードモナス・アエルギノーザ感染の危険に晒されているヒトを処置するために使用される。これらのヒトは、特に嚢胞性線維症、熱傷創、臓器移植、免疫機能不全、又は静中薬剤の添加のある入院患者を含む。
【0171】
これまで、我々は、皮下経路を毒素-V3ループ・タンパク質の粘膜デリバリーと比較した(Mrsny, R. et al., Vaccine 17(11-12):1425-33(1999))。強固な項V3ループ応答を示す粘膜予防接種の結果は、血清IgGと分泌性IgA抗体の高力価応答により達成されうる。毒素ピリン・キメラ・タンパク質がCFにおけるシュードモナス属定着を防ぐためのワクチン候補であるため、1の態様は、気道上皮での粘膜抗体応答をターゲットとしてデリバリーされたワクチンを提供する。
【実施例】
【0172】
I.プラスミドの構築
4つのプラスミド、pPE64、pPE64Δ553、pPE64pil、pPE64Δ553pilを構築した。プラスミドpPE64は、以下で詳細に記載されるように、プラスミドが第Ibドメインの多くを欠き第Ibドメインに新規PstI部位をもつPEよりわずかに小さい変異体をコードすることを除いて、天然のシュードモナス属外毒素Aをコードする。プラスミドpPE64Δ553は、酵素的に不活性なPEの第IIIドメインを導入するためにプラスミドpPE64をサブクローニングにより修飾する(すなわち、553位アミノ酸のGluを欠失する)ことによる、プラスミドpPE64の無毒性変異体をコードする。PEベースのピリン・キメラ・タンパク質を産生するために、PAK株のピリンからの129〜142アミノ酸をコードするオリゴヌクレオチド2本鎖を合成した。そして、プラスミドpPE64pilを、プラスミドpPE64に基づいて構築する。ここで、P.アエルギノーザPAK株からのピリン・ループ配列をプラスミドpPE64のPstI部位に挿入した。プラスミドpPE64Δ553pilを、プラスミドpPE64Δ553に基づいて構築する。ここで、P.アエルギノーザPAK株からのピリン・ループ配列をプラスミドpPE64Δ553のPstI部位に挿入した。これらのベクターの全てを、組み換えタンパク質が封入体として発現されることを可能にする細菌性の分泌配列なしに構築した。
【0173】
具体的には、プラスミドでpPE64及びpPE64Δ553を、以下のとおり構築する。PEをコードするプラスミドpMOA1A2VK352(Ogata et al., J. Biol. Chem.267, 25396-401(1992))SfiIとApaIで消化し(それぞれ第1143及び第1275残基)、次に新規PstI部位を含む2本鎖と再連結した。2本鎖のコード鎖は以下の配列:
5'-tggccctgac cctggccgcc gccgagagcg agcgcttcgt ccggcagggc accggcaacg acgaggccgg cgcggcaaac ctgcagggcc-3'、
を有する。得られたプラスミドは、PEよりわずかに小さな変異体をコードして、そして第Ibドメインの多くを欠いていた。次に、PstI部位を、システイン残基によって両側を挟まれたピリン・ループ配列をコードする2本鎖を導入するために使用した。非毒素タンパク質を作製するために、ベクターをpVC45ΔE553からの酵素的に不活な第IIIドメイン中にサブクローニングすることによって修飾した。pJH4(Hwang et. al., Cell 48:129-136(1987))からのさらなるサブクローニングを、シグナル配列を欠くベクターを産生するために必要とした。プラスミドpPE64とpPE64Δ553の構築は、FitzGerald et al., J. Biol. Chem.273(16):9951-8(1998)に記載されてもいる。
【0174】
ピリン・ループ配列挿入をもつpPE64pilとpPE64Δ553pilプラスミドを、それぞれpPE64とpPE64Δ553プラスミドに基づいて構築した。PstIに関する突出末端をもち、そしてPAK株の12アミノ酸のピリン・ループをコードする54bpのセンス・オリゴヌクレオチドを、10 mMのTris/HCl、50 mMのNaCl pH7.4中で54bpのアンチセンス・オリゴヌクレオチドとアニールさせた。センス・及びアンチセンス・オリゴヌクレオチドには以下の配列:
センス5'-TTGTACTAGTGATCAGGATGAACAGTTTATTCCGAAAGGTTGTTCACGTATGCA-3';
アンチセンス5'-TACGTGAACAACCTTTCGGAATAAACTGTTCATCCTGATCACTAGTACAATGCA-3'、
が存在した。
【0175】
94℃で5分間加熱することによりアニーリングを達成し、続いて25℃まで40分間かけて冷却した。それぞれ酵素的に活性な、不活性なPEをコードする、プラスミドpPE64とpPE64Δ5532を第1470残基でPstIにより消化した(FitzGerald, D. J., et al., J Biol Chem 273(16):9951-8(1998)。リン酸化されたピリン・オリゴの2本鎖との連結が、PstI部位を破壊して、独特なSpeI部位を導入した。XhoI/SpeIによる2本鎖消化を、挿入断片の正しい配向性を確認するために使用した。PstI切断ベクター中へのピリン・オリゴの2本鎖の連結に、正しい配向性のピリン挿入断片の存在を確認するためのいくつかの特徴づけステップが続いた。最終的な構築物をジデオキシ2本鎖配列決定法によって確認した。
【0176】
II.タンパク質の発現と特徴づけ
A.発現と精製
Studierら(Methods Enzymol. 185:60-89(1990))により説明されたT7発現系を使用することで、4つのPE関連タンパク質を、E.コリで発現した。これらは、PE64、PE64Δ553、PE64pil、及びPE64Δ553pilを含む。
【0177】
キメラ・タンパク質を発現させ、そしてBuchner et al., Anal. Biochem. 205(2):263-70(1992)に記載のとおり封入体として単離した。各々のタンパク質を別々に発現させて、近い均一性まで精製した。要するに、BL21(λDE3)を、毒素発現ベクターの最初のATGの上流にT7プロモーターを含むプラスミドにより形質転換した。培養物を、アンピシリン(50 μg/ml)を伴うSuperbroth(KDMedical, Bethesda, MD)中で培養し、次に、IPTG(1 mM)の添加によってタンパク質発現を誘発した。2時間のさらなる培養の後に、細菌細胞を遠心分離によって採取した。細胞溶解に続いて、発現されたタンパク質を封入体の状態で回収した。
【0178】
タンパク質を、グアニジンHCl(6.0 M)、2 mMのEDTA pH8.0とジチオエリスレイトール(65 mM)によって可溶化した。次に、可溶化タンパク質を、酸化還元混合緩衝液中に希釈し再折り畳みさせた(Buchner et al., Anal. Biochem.205(2), 263-70(1992))。再び折り畳まれたタンパク質を、20 mMのTris、100 mMの尿素pH7.4に対して透析し、Qセファロース(Amersham Pharmacia Biotech)に吸着させ、150 mMのNaCl、20 mMのTris、1 mMのEDTA pH6.5により洗浄し、そして280 mMのNaCl、20 mMのTris、1 mMのEDTAにより溶出した。溶出したタンパク質を、5倍に希釈し、次にMonoQカラム(HR10/10, Amersham Pharmacia Biotech)上に吸着させ、そして線形塩濃度勾配(Tris EDTA, pH7.4中、0〜0.4 M NaCl)の適用により精製した。PEタンパク質を0.2〜0.25 MのNaClで抽出した。PBS, pH7.4中、ゲル濾過カラム(Superdex 200, Amersham Pharmacia Biotech)を使って最終精製を達成した。
【0179】
B.タンパク質の特徴づけ
1.ウエスタンブロット分析
PK99Hマウス・モノクローナル抗体及び精製されたピリン・タンパク質を、カナダ、アルバータ大学のDr.ランダル・アーヴィンから得た。抗マウスIgG及び抗ウサギIgG抗体を、ウエスタンブロット及びELISAの一次抗体を検出するために使用した(Jackson Immuno Research Lab, West Grove, PAから入手可能)。
【0180】
タンパク質を、SDS-PAGEで最初に分析した(図2A)。先に概説した精製スキームを使って実質的に純粋なタンパク質を得た。ウエスタンブロット分析において、PE64pil及びPE64Δ553pilタンパク質をピリンのC末端ループに対するモノクローナル抗体であるPK99Hと反応させた(図2B)。同一抗体は、同一タンパク質の可溶性調製物とも反応し、ピリン挿入断片がPE-ピリン・キメラ・タンパク質の表面に晒されたことを示した。挿入断片なしのPEタンパク質は、PK99H抗体と反応しなかった(図2B)。
【0181】
2.細胞毒性分析
毒素の構造と機能に対するピリン挿入断片の影響を調査するために、2つの酵素的に活性なタンパク質、PE64及びPE64pilを細胞毒性アッセイで比較した。Ogata et al., J. Biol.Chem.265(33), 20678-85(1990)に記載の細胞毒性アッセイ法を使用した。0.002〜20 ng/mlの範囲の濃度のPE64及びPE64pilを、一晩のインキュベーションの間にL929細胞に添加した。次に、細胞のタンパク質合成の抑制作用(例えば、3H-ロイシンの取り込みの観察)を計測するることによって、細胞毒性を決定した。データは、両タンパク質に関して0.1 ng/mlの範囲でPE64とPE64pilがIC50値の類似した毒性を見せることを示した(図3)。この結果は、14アミノ酸の挿入断片が毒素機能、そして推論して毒素構造を過度に撹乱しなかったことを示唆した。
【0182】
3.固定化Asialo-GM1との反応性
先の結果は、ピリンのC末端から誘導した合成ペプチドが上皮細胞への繊毛の結合を妨げうることを示していた(Irvin et al., Infect. Immun. 57(12):3720-6 (1989); Yu, L. et al., Mol Microbiol 19(5):1107-16 (1996))。ブロッキングは、上皮細胞の表面上のasialo-GM1に結合するペプチドに起因する。PE64タンパク質中のピリン挿入断片の機能性を試験するために、様々な濃度のPE64pilを固定化asialo-GM1との反応性についてアッセイした。
【0183】
96ウェル・プレートを、メタノール中に可溶化されたasialo-GM1かmonosialo-GM1(Sigma Chem Co, St Louis, MO)でコートした。100 μlのガングリオシド(5 μg/ml)を、各々のウェルに添加し、乾燥するまで4℃で留去した。ウェルをPBSで3回洗浄し、そしてアイシングラスPBS(BioFX, Randallstown, USA)により4℃で16時間ブロッキングした。ブロッキング緩衝液中に試験タンパク質を様々な濃度で添加した。22℃で1時間のインキュベーション後に、上清を取り除き、そして結合したタンパク質を、一次抗体として熱不活化抗PE64Δ553pil血清(1:100)を使って検出した。競合検討のために、0.2 μg/mlのタンパク質を、2 μg/mlのasialo-GM1かmonosialo-GM1と一緒に室温で30分間インキュベートした。次に、サンプルを前記のとおりasialo-GM1コート・プレートに加えた。
【0184】
0.1〜2.0 μg/mlから増加したPE64pilの濃度は、固定化asialo-GM1と特異的に反応した(図4A)。PE64を対照として使用し、低いレベルの結合のみが示された(図4A)。PE64pilとPE64Δ553pilのガングリオシド特異性を確認するために、追加の検討を実行した。可溶性asialo-GM1は、PE64pilとPE64Δ553pilの固定化asialo-GM1への結合を減少させるが、それに反してmonosialo-GM1の添加は、そうならなかった(図4B及び4C)。どちらのガングリオシドもPE64とPE64Δ553の低いレベルの結合を妨げなかった(図4Bと4C)。まとめて考えると、これらの結果は、反応的なピリン配列の存在だけを確認したわけではなく、PE64pilタンパク質についての機能獲得を明らかにした。
【0185】
III.接着アッセイ
A.シュードモナス属の菌株
シュードモナス属の以下の菌株:PAK、PAO1、SBN-1、1071、M2、82932、82935、及び90063を、接着及び他のアッセイで使用した。接着研究のために使用されるシュードモナス属の菌株をLBアガロース上で、次に、0.4%グルコースを添加したM9最少培地(KD Medical, Bethesda, MD)中で、30℃で振盪せずに培養した。後期ログ相の培養物を、接着アッセイのためにルーチンに使用した。
【0186】
B.細胞培養
A549(ATCC、CCL-185)、L929(ATCC、CCL-1)、WI38、Vero、及びCHO細胞を、5%のCO2、37℃、10%ウシ胎仔血清(FBS)、2.5 mMのグルタミン、標準ペニシリン/ストレプトマイシン(100 U/100 μg/ml、GibcoBRL, Grand Island, USAを補ったDMEM/F12又はRMPI1640)(完全培地としてさらに設計された)中で維持した。細胞に、2〜3日ごとに栄養を与え、5〜7日ごとにパッサージした。アッセイのために、細胞を24-ウェル又は96-ウェル・プレートに蒔き、そして集密状態まで培養した。
【0187】
C.細菌接着の定量化
シュードモナス属とA549細胞との関連性を定量化するために、我々は、Chi et al., infect. Immun. 59(3):822-8(1991)により記載された接着アッセイに従った。要するに、A549細胞を、1ウェルあたり約2x104細胞の密度まで、24ウェル・プレート内で(抗生物質を含まない培地で)培養した。細胞を、無血清HBSSにより3回洗浄し、0.5 mlのFBS不含DMEM/F12完全培地で表面を覆った。10 μlの適切な細菌の希釈液を加えることによって20のMOIを達成した。プレートを37℃、5%CO2で1又は2時間インキュベートした。
【0188】
結合していない細菌を取り除くために、細胞をHBSSで緩やかに3回洗浄した。次に、細胞を3.7%のパラホルムアルデヒド、200 mM HEPES, pH7.2中、1時間固定した。細胞を、生理食塩液で2回洗浄し、そして10%のギムザで10分間染色した。サンプルを水で3回洗浄し、400倍の倍率の光学顕微鏡検査下で検査した。100のA549細胞の細胞に結びついた細菌をカウントすることによって、接着細菌を定量化した。
【0189】
D.結果
上皮細胞へのピリン仲介接着は、P.アエルギノーザが感染を開始するのを可能にする。従って、接着を妨げる薬剤が、細菌による悩みを減少させる。以下の3つのペプチド:PAK株の第128〜142アミノ酸に対応する、長いC末端ペプチド(ペプチド1:アセチル-KCTSDQDEQFIPKGCSK-NH2;)(ジスルフィド結合の形成を可能にするためにこのペプチドは酸化された)、第134〜140アミノ酸に対応する、コア・ペプチド(ペプチド2:アセチル-DEQFIPK-NH2;)、及びコアと同じアミノ酸組成だが、ごちゃ混ぜにされた配列をもつ、スクランブルされたペプチド(ペプチド3:アセチル-QIDPEFK-NH2;)を合成した。安定性を高めるために、これらの合成ペプチドのN末端を、アセチル化し、一方でC末端をアミド化した。これらのペプチドを、Sigma社のGenosysによって注文して合成した。同一ペプチドを、ビオチン標識を伴って合成もした。
【0190】
これらのペプチドの機能を試験するために、P.アエルギノーザPAK株のうちの洗浄細菌をヒト肺上皮細胞株A549に加えることによる、接着アッセイが考案された。具体的には、集密A549細胞の培養を、40 μMのペプチド1、40 μMのペプチド2、40 μMのペプチド3、2 nmol/mlのPAK-ピリン・タンパク質、2 nmol/mlのPE64、2 nmol/mlのPE64Δ553、2 nmol/mlのPE64pil、2 nmol/mlのPE64Δ553pil、及び4 nmol/mlのウシ・アルブミンと一緒に37℃で60分インキュベートした。予熱したDMEMにて1回洗浄し、そしてP.アエルギノーザPAK株を、DMEM、2%のFBS中、約50のMOIで加えられた。細菌を細胞上に遠心分離し(700g、5分間)、37℃、5%のCO2で60分間インキュベートした。先に記載のとおり接着を測定した。
【0191】
結果は以下のとおりだった。A549細胞への接着は、40 μMの長い又はコア・ピリン・ペプチドの存在により約50%まで減少した(図5をを参照のこと)。スクランブルされたペプチドは接着を妨げなかった。
【0192】
PE-ピリン・タンパク質がasialo-GM1への結合活性を示したので、これらを同様に試験した。合成ペプチドとほぼ同一のモル濃度で、PE64pilとPE64Δ553pilも細菌の接着を妨げた。挿入断片のない毒素分子が接着に競合しないので、挿入断片の存在による効果であった。
【0193】
IV.PE64Δ553PILに対する免疫応答
A.ポリクローナル抗体の産生
関連した抗体応答を生じる毒素ピリン・タンパク質の能力を試験するために、4羽のウサギにPE64Δ553pilタンパク質を注射した。2羽のウサギ(87及び88と番号を付けた)は、タンパク質とアジュバント(最初の注射のために完全フロイント、続く注射のために不完全フロイント)を受け、2羽(89及び90と番号を付けられた)は、タンパク質だけで受けた。1回の注射につき200 μgのタンパク質を、約2週間おきの間隔をあけた合計4サイクルの間、皮下に与えた。約12 mlの血清を隔週で各々のウサギから分離した。血清を、56℃で20分間熱不活化し、そしてその希釈物をさらに精製することなくアッセイに使用した。ビオチン化ピリンペプチドをストレプトアビジン・コート・プレートに固定化したELISAアッセイを使って、抗ピリン力価を測定した。免疫期間の間、抗ピリン力価は、4匹の動物の全てで増加した(図6)。しかし、応答のスピード及び程度は、抗原とアジュバントを受けた2羽のウサギにおいてより大きかった。補体を介した細菌の殺菌を回避するために、免疫血清を熱不活化した。この処理は有意にELISAアッセイの抗体価を変えることはなかった(データは示さない)。
【0194】
B.免疫後血清による接着の抑制作用
接着の抗体を介した抑制作用を評価するために、抗PE64Δ553pilウサギ血清を、1:20〜1:100の希釈で、4x105の細菌と一緒に、22℃で30分間インキュベートした。次に、細菌を、遠心分離し、何も追加していないDMEM中に再懸濁し、そしてA549細胞の集密単層に20のMOIで1〜2時間加えられた。先に記載のとおり接着を測定した。4回目の注射の後に採取した免疫血清を、同一ウサギから採取した血液を抜き取る前のサンプルと比較した。
【0195】
1.P.アエルギノーザ(PAK株)の抑制作用
最後の注射の2週間後に採取した血清を、細菌の接着アッセイにおけるブロッキング活性についてアッセイした。血液を抜き取る前と比べて、様々な希釈率の免疫血清がPs.アエルギノーザPAK株の接着を妨げた(図7A)。接着の減少は、1:100希釈での60%〜1:20希釈での90%に及んだ。1:20の希釈率において、ブロッキング活性は、抗原調製におけるアジュバントの存在に関係なく比較可能だった(図7B)。
【0196】
2.P.アエルギノーザ(様々な菌株)の抑制作用
PAK株接着の抑制作用を、ウサギがワクチンで投与した特定のピリン配列に応答したことを確認した。しかし、C-の末端のピリン・ループは多数の配列変異を示すので、他の何種類ものPs.アエルギノーザに関して免疫血清の反応性を測定することが重要である。菌株PAO1、1071、SBI-N、82935、82932、90063、1244、及びM2を、PAK菌株と類似した条件下でA549細胞への接着について試験した。熱不活化した免疫ウサギ血清を1:20の希釈率で細菌と混ぜた場合、全ての菌株の特異的な細胞結合は、接着において減少した(図7C)。異なる菌株の間の接着の減少は、おおよそPAK株の範囲内であった(約90%の減少)。
【0197】
前述の菌株の各々がPAK菌株と同じループ配列を表すことはありそうもないとはいえ、ピリン遺伝子のこの部分の変異を分析することは興味深かった。各々の菌株のピリン遺伝子のPCRクローンを産生し、そしてこれらの配列決定によりピリン配列を決定した。増幅のためのプライマーは、ピリン遺伝子の5'末端から、及び(さらに詳細に他の場所で記載される)シュードモナス属ゲノムの隣接する遺伝子(ニコチネート-ヌクレオチド・ピロホスホリラーゼ)の3'末端からであった。結果は、以下のことを示した:ほとんどの菌株が12アミノ酸のループを示した一方で、1種類、SBI-Nが、17アミノ酸のループをもっていた。菌株82932及び82935は、KB7(登録番号Q53391)と同じループ配列をもち、そして90063は、PAO1(登録番号A25023)と一致したループをもっていた。菌株1071及びSBI-Nは、新規配列をもつループを展した(表1及び2を参照のこと)。マウス隔離集団である菌株M2は、配列決定しなかった。
【0198】
B.毒素中和応答
培養の真核細胞に対する精製されたPE64及びPE64pilのタンパク質合成の抑制作用を、Ogata et al., J. Biol. Chem. 265(33), 20678-85(1990)に記載のとおり測定した。細胞障害活性を不活化するために、PE64pilタンパク質を、抗PE64Δ553pil抗体を含むウサギ血清と一緒に22℃で30分間インキュベートし、その後それらを24ウェル組織培養皿内のL929又はA549細胞に添加した。
【0199】
ウサギ抗血清を、毒素中和活性について評価した。全4羽の免疫されたウサギの1:20希釈の血清は、1.0 μg/mlの毒素を完全に中和した(図8)。これらの結果から、PE-ピリン・ワクチンが、2つの反応性の抗体:接着を妨げるものと外毒素を中和するものを産生することができるとの結論を出した。
【0200】
本発明は、無毒性シュードモナス属外毒素A及びIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質に関する新規物質及び方法を提供する。具体的な実施例を提供した一方で、前述の記述は説明的のものであり、制限的なものではない。先に記載した実施例の特徴のいずれか1以上は、本発明のいずれかの他の実施例の1以上の特徴と、あらゆるやり方で組み合わせることができる。さらに、本発明の多くの変異型が、本明細書の再検討により当業者に明白になる。従って、本発明の範囲は、前述の記述に関して決定されるべきではなく、それよりむしろ添付の請求項とともにそれらの同等物の全容に関して決定されるべきである。
【0201】
当該出願に引用された全ての刊行物及び特許文献を、同一範囲のあらゆる目的のために、まるで各々の別個の刊行物又は特許文献が別個に示されたように、それらの全体を本明細書中に援用する。当該明細書における様々な参照の彼らの引用により、出願人は、あらゆる特定の参照が彼らの発明に対する「先行技術」であるとは認めない。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1A】ドメインIbのピリンのC末端ループによる置き換えを漫画形式で説明する。ピリン挿入断片は、P.アエルギノーザのPAK株に関して報告されたピリンの配列に相当する。
【図1B】Allured et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:1320-1324(1986)からのPEのドメイン構造を漫画形式で説明する。PE64は、ドメインIbのループ部位を欠いている。PE64pilは、P.アエルギノーザのPAK株のピリン・ループ(129〜142残基)の挿入を含む。第553グルタミン酸の欠失(点によって示された)は、活性部位残基を除去し(Lukacほかが感染する)、そしてADP-リボシル化活性をもたないPE64Δ553及びPE64Δ553pilタンパク質を産生する。Ibループを薄い陰影で示し、そしてピリン・ループをより暗い陰影で示す。
【図2】PEタンパク質とピリンのSDS PAGE(パネルA及びC)、及びウエスタンブロット解析(パネルB)を説明する。A.レーン1〜4は、MonoQクロマトグラフィー後の、実質的に純粋なPEタンパク質を示す(レーンあたり4〜5 μgのタンパク質を添加した)。左から右に添加したタンパク質は:PE64、PE64pil、PE64Δ553、及びPE64Δ553pilである。精製されたPAKピリンを、レーン5に加えた。B.レーン6〜10は、Aと同じタンパク質を示すが、ピリン・ループに対しモノクローナル抗体でプローブした。レーン11は、ゲル濾過クロマトグラフィー後のPE64Δ553pilである。標準タンパク質及びそれらの分子をkDaで示す。
【図3】PE64と比較したPE64pilの毒性を説明する。第三者のループをPEに導入する効果を評価するために、我々は、PE64(黒塗り四角)の毒性をPE64pil(黒塗り三角)と比較した。各々のタンパク質の高めた濃度をL929細胞に加えて、そして一晩インキュベーション後に、タンパク質合成の抑制作用を測定した。結果を、毒素を受けていない細胞と比較したパーセント対照として表す。エラー・バーは、三つ組のウェルからの平均からなる1つのSDを表す。
【図4A】PE64pil及びPE64Δ553pilと固定化されたasialo-GM1との相互作用を説明する。様々な濃度のPE64pil又はPE64を、asialo-GM1でコートしたプレートに加え、そしてウサギ抗PE、続くペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いた反応性によって結合を測定した。450nmでの吸光度を結合の観察に使用した。
【図4B】PE64pil及びPE64Δ553pilと固定化されたasialo-GM1との相互作用を説明する。ガングリオシド特異性を調査するために、2 μg/mlの可溶性asialo-GM1又はmonosialo-GM1をPE64pil(B)又はPE64Δ553pil(C)と一緒にプレインキュベートし、そして残余結合パーセントをパネル(A)に記載のように測定することによる競合検定を考案した。(B)及び(C)について、グラフは、代表的な三つ組の実験の平均を示す。エラー・バーは、1つのSDを表す。N.A.=競合物の付加なし。
【図4C】PE64pil及びPE64Δ553pilと固定化されたasialo-GM1との相互作用を説明する。ガングリオシド特異性を調査するために、2 μg/mlの可溶性asialo-GM1又はmonosialo-GM1をPE64pil(B)又はPE64Δ553pil(C)と一緒にプレインキュベートし、そして残余結合パーセントをパネル(A)に記載のように測定することによる競合検定を考案した。(B)及び(C)について、グラフは、代表的な三つ組の実験の平均を示す。エラー・バーは、1つのSDを表す。N.A.=競合物の付加なし。
【図5】A549細胞へのPs.アエルギノーザ(PAK株)の接着を説明する。細菌を、阻害薬の存在又は不存在下、100のMOIで細胞に加えた。ペプチドを40 μMの終濃度まで加え、一方タンパク質を2 μMの濃度まで加えた。グラフは、阻害薬なしでのサンプルと比べた細胞に結合した細菌のパーセンテージを示す。エラー・バーは、3つの独立した実験の平均からの1つの標準偏差を表す。
【図6】アジュバントあり又ははなしのPE64pilでの免疫処置後の抗体力価を説明する。血清を4羽のウサギ(87〜90と番号を付けた)の各々から様々な時点で採取し、1:100に希釈し、そしてビオチン化ピリン・ペプチドを添加したストレプトアビジン・コート・プレートに加えた。ペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギ抗体の添加によってウサギIgGを検出した。87及び88番のウサギがアジュバントを受け、89及び90番が受けなかった。
【図7A】抗体を介したA549細胞への接着の妨害を説明する。Ps.アエルギノーザのPAK株を、87番のウサギからの血液を抜き取る前又は免疫された(抗原の4回の注射後に採取される)血清の1:20〜1:100希釈物と一緒にインキュベートした。次に、細菌を細胞に加え、培地のみでインキュベートした細菌と比較してパーセント接着を決定した。各々のパネルについて、棒は、100個のA549細胞を実験することによって測定された細胞1つあたりの細菌の数を表している。エラー・バーは、3つの独立した実験の平均からの1つの標準偏差を表す。
【図7B】抗体を介したA549細胞への接着の妨害を説明する。各々のウサギからの血液を抜き取る前又は免疫された血清の1:20の希釈物を、抗体を介した妨害について試験した。各々のパネルについて、棒は、100個のA549細胞を実験することによって測定された細胞1つあたりの細菌の数を表している。エラー・バーは、3つの独立した実験の平均からの1つの標準偏差を表す。
【図7C】抗体を介したA549細胞への接着の妨害を説明する。様々な種類のPs.アエルギノーザを、抗原を単独で受けたウサギの一方(90番のウサギ)及び抗原とアジュバントを受けたもの(88番のウサギ)からの免疫された血清(1:20)と一緒にインキュベートした。各々のパネルについて、棒は、100個のA549細胞を実験することによって測定された細胞1つあたりの細菌の数を表している。エラー・バーは、3つの独立した実験の平均からの1つの標準偏差を表す。
【図8】PE毒性の抗体を介した中和を説明する。免疫された血清(黒塗り三角)又は血液を抜き取る前の血清(黒塗り四角)を1:20に希釈し、そして1.0 μg/mlのPE64と混合した。次に、サンプルを示した濃度に希釈し、L929細胞に加え一晩インキュベーションした。結果を、毒素を受けていない細胞と比較したタンパク質合成のパーセント対照として表した。エラー・バーは、三つ組から成るウェルからの平均の1つのSDを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A配列内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで、上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質。
【請求項2】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することもできる、請求項1に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項3】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項1に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項4】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項3に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項5】
前記IV型ピリン・ループ配列が、移行ドメインと小胞体保持ドメインの間に配置されている、請求項4に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項6】
前記IV型ピリン・ループ配列が、上記IV型ピリン・ループ配列のN-及びC-末端の両方にシステイン残基を含む、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項7】
前記IV型ピリン・ループ配列が、細菌又は酵母に由来する、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項8】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザ、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラ、パスツレラ・マルトサイダム又はカンジダ菌に由来する、請求項7に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項9】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項8に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項10】
前記IV型ピリン・ループ配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号:7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10から成る群から選ばれる、請求項9に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項11】
前記移行ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインの第280〜第364アミノ酸を含む、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項12】
前記移行ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインである、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項13】
前記小胞体保持ドメインが、553位のアミノ酸Gluが欠失していることを除きシュードモナス属外毒素Aの第IIIドメインである、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項14】
前記キメラ・タンパク質が、2以上のIV型ピリン・ループ配列を含む、請求項1に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項15】
前記細胞認識ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第Iaドメインである、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項16】
前記細胞認識ドメインが、α2-マクログロブリン・レセプター、上皮成長因子レセプター、トランスフェリン・レセプター、インターロイキン-2レセプター、インターロイキン-6レセプター、インターロイキン-8レセプター、Fcレセプター、ポリIgGレセプター、アシアログリコプロテイン・レセプター、CD3、CD4、CD8、ケモカイン・レセプター、CD25、CD11B、CD11C、CD80、CD86、TNFアルファ・レセプター、TOLLレセプター、M-CSFレセプター、GM-CSFレセプター、スカベンジャー・レセプター、VEGFレセプター、又はサイトカイン・レセプターに結合する、請求項5に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項17】
以下の:
(a)第Iaドメイン、第IIドメイン、及び第IIIドメインを含む、無毒性シュードモナス属外毒素A配列;並びに
(b)IV型ピリン・ループ配列、
を含むキメラ・タンパク質であって、上記IV型ピリン・ループ配列が、無毒性シュードモナス属外毒素A配列の第IIドメインと第IIIドメインの間に配置されている上記キメラ・タンパク質。
【請求項18】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、ΔE553を伴う配列番号2のアミノ酸配列をもつ、請求項17に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項19】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザ、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラ、パスツレラ・マルトサイダム又はカンジダ菌に由来する、請求項17に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項20】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項17に記載のキメラ・タンパク質。
【請求項21】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A配列内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで、上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着の減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することもできる、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項23に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記IV型ピリン・ループ配列が、移行ドメインと小胞体保持ドメインの間に配置されている、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記IV型ピリン・ループ配列が、上記IV型ピリン・ループ配列のN-及びC-末端の両方にシステイン残基を含む、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記IV型ピリン・ループ配列が、細菌又は酵母に由来する、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザ、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラ、パスツレラ・マルトサイダム又はカンジダ菌に由来する、請求項27に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記IV型ピリン・ループ配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号:7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10から成る群から選ばれる、請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記移行ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインの第280〜第364アミノ酸を含む、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記移行ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第IIドメインである、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
前記小胞体保持ドメインが、553位のアミノ酸Gluが欠失していることを除きシュードモナス属外毒素Aの第IIIドメインである、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記細胞認識ドメインが、シュードモナス属外毒素Aの第Iaドメインである、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記細胞認識ドメインが、α2-マクログロブリン・レセプター、上皮成長因子レセプター、トランスフェリン・レセプター、Fcレセプター、ポリIgGレセプター、アシアログリコプロテイン・レセプター、CD3、CD4、CD8、ケモカイン・レセプター、CD25、CD11B、CD11C、CD80、CD86、TNFアルファ・レセプター、TOLLレセプター、M-CSFレセプター、GM-CSFレセプター、スカベンジャ・レセプター、VEGFレセプター、又はサイトカイン・レセプターに結合する、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
以下の:
(a)第Iaドメイン、第IIドメイン、及び第IIIドメインを含む、無毒性シュードモナス属外毒素A配列;並びに
(b)IV型ピリン・ループ配列、
を含むキメラ・タンパク質であって、上記IV型ピリン・ループ配列が、無毒性シュードモナス属外毒素A配列の第IIドメインと第IIIドメインの間に配置されている上記キメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、ΔE553を伴う配列番号2のアミノ酸配列をもつ、請求項36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザ、ナイセリア・メニンギチジス、ナイセリア・ゴノロエエ、ビブリオ・コレラ、パスツレラ・マルトサイダム又はカンジダ菌に由来する、請求項36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
請求項21に記載のポリヌクレオチドを含む発現カセット。
【請求項41】
請求項40に記載の発現カセットを含む細胞。
【請求項42】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A配列内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで、上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質を含む組成物。
【請求項43】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することもできる、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記組成物が、医薬として許容される担体をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記組成物が、経鼻又は経口スプレーとして処方される、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A配列内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで、上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質を含む組成物の免疫学的な有効量を宿主に投与するステップを含む、宿主の免疫応答の誘発方法。
【請求項50】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することができる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記宿主がヒトである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで、上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットの免疫学的な有効量を宿主に投与するステップを含む、宿主の免疫応答の誘発方法。
【請求項56】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することができる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記宿主がヒトである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
以下の:無毒性シュードモナス属外毒素A配列、及び無毒性シュードモナス属外毒素A内に配置されたIV型ピリン・ループ配列を含むキメラ・タンパク質であって、ここで上記キメラ・タンパク質は、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を減少させることができ、さらにここで、宿主内に導入されるとき、上記IV型ピリン・ループ配列を発現する微生物の上皮細胞への接着を妨げるポリクローナル抗血清を産生することができる上記キメラ・タンパク質を含む組成物を宿主内に導入することを含む、IV型ピリン・ループ配列に特異的な抗体の産生方法。
【請求項62】
前記キメラ・タンパク質が、宿主内に導入されるとき、シュードモナス属外毒素Aの細胞毒性を中和するポリクローナル抗血清を産生することができる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記宿主がヒトである、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記無毒性シュードモナス属外毒素A配列が、以下の:
(a)前記キメラ・タンパク質を細胞サイトゾルに移行させるために十分な移行ドメイン;及び
(b)前記キメラ・タンパク質をエンドソームから小胞体まで移動させるように働く小胞体保持ドメイン、
を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記キメラ・タンパク質が、細胞表面レセプタのためのリガンドとして機能し、かつ、上記キメラ・タンパク質の細胞への結合を仲介する細胞認識ドメインをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記IV型ピリン・ループ配列が、シュードモナス・アエルギノーザに由来する、請求項65に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−237227(P2008−237227A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147377(P2008−147377)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【分割の表示】特願2002−561503(P2002−561503)の分割
【原出願日】平成13年12月20日(2001.12.20)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】