説明

無炎燃焼加熱器

酸化管路と、燃料管路の外壁に取り付けられる複数のセントラライザを有する燃料管路とを備え、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている無炎燃焼加熱器が記載される。熱を処理管路に提供するための方法であって、酸化管路を設けることと、燃料管路内から酸化管路への流体連通を提供する複数の開口部と、燃料管路に取り付けられる複数のセントラライザとを有する燃料管路を設けて、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしていることと、酸化管路と熱交換関係にある処理管路を設けることと、燃料を燃料管路に導入することと、酸化剤を酸化管路に導入することと、燃料を複数の開口部を通して酸化管路に導入し、無炎燃焼が酸化管路に生じるようにすることとを含む方法についても記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無炎燃焼加熱器および熱を処理に提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無炎燃焼加熱器は、米国特許第7,025,940号明細書に記載されている。米国特許第7,025,940号明細書は、無炎燃焼を利用する処理加熱器について記載し、無炎燃焼は、燃料および燃焼空気を混合物の自動点火温度を超える温度まで予備加熱することによって達成される。燃料は、燃料ガス管路と酸化反応室との間の連通を提供する燃料ガス管路における複数のオリフィスを通じて、時間の経過と共に比較的少量の増分で導入される。米国特許第7,025,940号明細書に記載したように、処理室は、酸化反応室と熱交換関係にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無炎燃焼加熱器は、上述の特許に記載したような従来の火炎加熱器に比べて複数の利点を提供する。しかしながら、無炎燃焼加熱器は、酸化反応室において燃料と酸化剤の混合に関する問題に遭遇する。
【0004】
ピーク温度は、燃料管路における各開口部付近で生じることができ、この非一様な加熱は、燃料管路の非一様な熱膨張を生じる。したがって、燃料管路は、屈曲する傾向があり、屈曲は、酸化反応室の壁に近い燃料管路開口部に位置し、酸化反応室の壁の故障につながる可能性があるホットスポットを結果として生じる可能性がある。
【0005】
さらに、開口部を通過する燃料は、酸化反応室に入るときに、ジェット効果を呈する可能性がある。酸化反応室の壁が開口部に近すぎる場合には、燃料は、壁に直接衝突する。これは、燃料管路の外側と酸化反応室の内側との間の最小距離を維持することを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、酸化管路と、燃料管路の外壁に取り付けられる複数のセントラライザを有する燃料管路とを備え、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている無炎燃焼加熱器を提供する。
【0007】
本発明はまた、熱を処理管路に提供するための方法であって、酸化管路を設けることと、燃料管路内から酸化管路への流体連通を提供する複数の開口部と、燃料管路に取り付けられる複数のセントラライザとを有する燃料管路を設けて、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしていることと、酸化管路と熱交換関係にある処理管路を設けることと、燃料を燃料管路に導入することと、酸化剤を酸化管路に導入することと、燃料を複数の開口部を通して酸化管路に導入し、無炎燃焼が酸化管路に生じるようにすることとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】角度をなすセントラライザを有する2チューブ無炎燃焼加熱器を示す。
【図1B】角度をなすセントラライザを有する燃料管路の外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、燃料の無炎燃焼によって放熱される熱エネルギの直接伝達において用いられる無炎燃焼加熱器を提供する。加熱器には、加熱地下形成および加熱処理ストリームをはじめとする多くの考えられる使用および用途がある。無炎燃焼加熱器は、たとえば、アルキル芳香族化合物の脱水素化およびスチームメタンの改質などの吸熱反応を実行する処理に関連して特に有用である。本発明は、燃料管路の外壁に取り付けられるセントラライザの改善した設計を無炎燃焼加熱器に提供する。セントラライザは、燃料管路と酸化管路との間の接触を防止するために、燃料管路の外壁に取り付けられる突出部である。
【0010】
本発明は、上述の問題に対処する。角度をなすセントラライザの使用は、加熱器内の燃料および空気の混合を改善する結果を生じ、ピーク温度を削減または減少させ、酸化管路の内側における燃料の衝突の防止に役立つ。
【0011】
加熱器における無炎燃焼は、2つのストリームが混合されるときに、混合物の温度が、混合物の自動点火温度を超えるが、混合物の温度が、米国特許第7,025,940号明細書(本明細書に参照により組み込まれる)に記載されたように、混合流量によって制限されることになっている混合時に酸化を結果として生じることになる温度未満であるように、酸化剤ストリームおよび燃料ストリームを十分に予備加熱することによって達成されることができる。混合物の自動点火温度は、燃料および酸化剤のタイプおよび燃料/酸化剤の比に左右される。無炎燃焼加熱器において用いられる混合物の自動点火温度は、850℃から1400℃の範囲にあってもよい。酸化触媒が加熱器において用いられる場合には、この種の触媒は混合物の自動点火温度を効果的に下げるために、自動点火温度は、低下される可能性がある。
【0012】
燃料管路は、所望の放熱を提供するように、酸化管路への燃料導入の制御された流量を提供する。放熱は部分的には、開口部の位置および数によって決定され、各加熱器用途に合わせることができる。放熱は、加熱器の長さにわたって一定であってもよく、または加熱器の長さにわたって減少または増大してもよい。
【0013】
燃料の無炎燃焼に関連する目に見えない炎があるために、無炎燃焼反応は、従来の火炎加熱器において観察される温度より低い温度で生じる。観察されるより低い温度および直接加熱の効率のために、加熱器は、コストのより低い材料を用いて設計されることができ、設備投資を削減する結果を生じる。
【0014】
無炎燃焼加熱器は、2つの主要な要素、すなわち、酸化管路および燃料管路を有する。酸化管路は、酸化剤用の入口と、酸化生成物用の出口と、入口と出口との間の流路とを有するチューブまたはパイプであってもよい。適切な酸化剤としては、空気、酸素および亜酸化窒素が挙げられる。酸化管路に導入される酸化剤は、燃料と混合されるときに、混合物が混合物の自動点火温度を上回る温度であるように予備加熱されてもよい。酸化剤は、無炎燃焼加熱器に対して外側で加熱されてもよい。あるいは、酸化剤は、加熱器の内側のストリームのいずれかと熱交換することによって加熱器の内側で加熱されてもよい。酸化管路は、約2cmから約20cmの内径を有してもよい。しかしながら、酸化剤管路は、加熱器の要件に応じて、この範囲より大きくてもよく、または小さくてもよい。
【0015】
燃料管路は、燃料を加熱器に輸送し、燃料を酸化管路に導入する。燃料管路は、燃料用入口と、燃料管路内から酸化管路への流体連通を提供する複数の開口部とを有するチューブまたはパイプであってもよい。燃料管路は、酸化管路内に位置し、酸化管路によって包囲されてもよい。燃料は、開口部を通って酸化管路に入り、そこで酸化剤と混合されて、無炎燃焼を結果として生じる。燃料管路は、約1cmから約10cmの内径を有してもよく、好ましくは1.5cmから5cmの内径を有する。しかしながら、設計次第では、燃料管路は、10cmを超える直径を有してもよく、または1cm未満の直径を有してもよい。
【0016】
開口部は、燃料管路の壁に穿孔されてもよく、または切り込まれてもよい。燃料管路の壁は通常、約0.25cmから約2.5cmの厚さを有する。開口部は、円形、楕円形、矩形、別の形状またはさらに不規則な形状の断面を有してもよい。開口部は好ましくは、円形の断面を有する。
【0017】
開口部は、約0.001cmから約2cmの断面積を有してもよく、好ましくは約0.03cmから約0.2cmの断面積を有してもよい。開口部のサイズは、酸化管路への燃料導入の所望の流量によって決定されるが、小さすぎる開口部は、閉塞を結果として生じる可能性がある。開口部は、任意の他の開口部から軸方向において、1cmから100cmの距離で燃料管路に沿って位置決めされてもよい。開口部は好ましくは、軸方向において、15cmから50cm離隔される。開口部は、燃料管路の長さに沿って異なる配向でそれぞれの半径方向の平面に位置決めされてもよい。たとえば、開口部の位置は、燃料管路の長さに沿って半径方向の平面において180°交互に位置してもよく、または120°または90°交互に位置してもよい。したがって、燃料管路における開口部の位置は、半径方向の平面におけるそれらの配向が、燃料管路の長さに沿って30°から180°だけ異なる配向で交互に位置するようになっていてもよい。開口部の半径方向の配向に関して、燃料管路の長さに沿って60°から120°で交互に位置することが好ましい。
【0018】
一実施形態において、焼成プレートが燃料管路から酸化領域までの流体連通を提供するために、開口部に加えて用いられてもよく、焼成プレートにおける開口部は、10から100ミクロン程度の直径を有してもよい。
【0019】
加熱器の長さに沿った異なる開口部は通常、同一の断面積を有する。別法において、開口部の断面積は、所望の放熱を提供するために異なっていてもよい。さらに、燃料管路に沿った開口部間の間隔は、所望の放熱を提供するために異なっていてもよい。開口部は通常、同一の形状を有する。別法において、開口部は、異なる形状であってもよい。
【0020】
セントラライザの配向は、加熱器の設計および動作にとって重要であり、セントラライザは、異なる温度分布を形成し、加熱器システムの流体および混合動力学のために生じる問題を克服するために角度をなしていてもよい。各セントラライザは、近接端部、すなわち、燃料入口に最も近い端部と、遠方端部、すなわち、燃料入口から最も遠い端部とを有する。
【0021】
セントラライザは、三角形、矩形、半円形または任意の他の形状であってもよい。燃料管路の取り付けまたは取り外しの際に、セントラライザが酸化管路を損傷しないようにするために、セントラライザは、酸化管路のために用いられる材料より柔らかい材料から構成されるか、または被覆されてもよい。たとえば、セントラライザは、より柔らかい金属またはセラミックから構成されてもよい。
【0022】
燃料管路は、管路の断面の中心をつなぐ線によって画定される長手軸を有する。セントラライザの少なくとも1つは、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている。セントラライザは、燃料管路の長手軸に平行ではなく、かつ燃料管路の長手軸に対して垂直でもない任意の角度にあってもよい。燃料管路の長手軸に平行ではなく、燃料管路の長手軸に対して垂直でもないセントラライザは、以下では角度をなすセントラライザと呼ばれる。
【0023】
角度をなすセントラライザは、セントラライザと燃料管路の長手軸との間に形成される角度が、90°未満であるような角度をなしてもよい。角度をなすセントラライザは、セントラライザと燃料管路の長手軸との間に形成される角度が、60°未満であるような角度をなしてもよく、または好ましくは45°未満であるような角度をなしてもよい。
【0024】
燃料管路開口部の上流(酸化剤入口により近い方)に角度をなすセントラライザを位置決めすることにより、酸化剤が燃料管路開口部を通過するときに、酸化剤を部分的に接線方向に流れさせる。この接線方向の流れ成分は、ジェット効果を低減し、管路間に必要な最小距離を最小限に抑える。部分的な接線方向の流れはまた、混合を改善し、半径方向の温度分布をさらに一様にすることに寄与する。熱は、燃料管路の外周にわたってさらに一様に分散される。
【0025】
角度をなすセントラライザは、酸化剤管路における酸化剤の所望の流動特性を提供するために、まっすぐであってもよく、または湾曲していてもよい。まっすぐなセントラライザは、セントラライザが1つの幾何平面に位置しているセントラライザである。他方、湾曲したセントラライザは、少なくとも2つの平行でない幾何平面にある部分を有する。セントラライザが湾曲している場合には、セントラライザの一部は、燃料管路の長手軸に平行であってもよい。
【0026】
図1Aおよび図1Bは、上述したように、角度をなすセントラライザ(16)を有する無炎燃焼加熱器(10)を示している。加熱器(10)は、燃料管路(12)および酸化管路(14)を有する。この種の加熱器は、2チューブ加熱器と呼ばれる。燃料管路(12)は、燃料用の入口(24)および複数の開口部(20)を有する円筒形パイプである。酸化管路(14)は、予備加熱される酸化剤用の入口(26)および燃焼生成物用の出口(30)を有する円筒形パイプである。別法において、酸化剤は、(30)で入ってもよく、燃焼生成物は、(26)で出てもよい。動作中、燃料は、入口(24)を介して燃料管路(12)に入り、次に、開口部(20)を通過した後で、酸化管路(14)において酸化剤と混合される。好ましくは、角度をなすセントラライザ(16)は、各開口部(20)の上流(酸化剤入口に近い方)に位置決めされる。
【0027】
無炎燃焼加熱器は、加熱器の特定の構造および加熱器の用途に応じて、種々の状態で動作されてもよい。種々の実施例および状態は、米国特許第5,255,742号明細書および米国特許第7,025,940号明細書に記載されており、これらの特許は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0028】
無炎燃焼加熱器は、エチルベンゼン脱水素化ユニットにおいて用いられてもよい。スチームおよびエチルベンゼンを含む処理原料は、脱水素化反応炉に供給される。脱水素化反応炉は、鉄酸化物系の触媒であってもよい適切な脱水素化触媒を含み、脱水素化触媒と処理原料を接触するための手段を提供する。脱水素化反応炉廃水は、脱水素化反応炉から排出され、無炎燃焼加熱器に導入される。脱水素化反応は吸熱反応であるため、脱水素化反応炉廃水は、脱水素化反応炉への処理原料の温度より低い温度を有する。無炎燃焼加熱器は、第2の段階の脱水素化反応炉に導入される前に、脱水素化反応炉廃水を加熱するために用いられる。脱水素化反応炉廃水は、第2の段階の反応炉から排出される。脱水素化処理は、無炎燃焼加熱器がさらなる各反応路の前に配置されてもよい場合には、3つ以上の反応炉を用いて実行されてもよい。
【0029】
本明細書に記載される無炎燃焼加熱器は、セントラライザ配向の記載された詳細の任意の変形を有する任意の用途に用いられることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化管路と、燃料管路の外壁に取り付けられる複数のセントラライザを有する燃料管路とを備え、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている、無炎燃焼加熱器。
【請求項2】
少なくとも1つのセントラライザが、燃料管路の長手軸に対して90°未満の角度をなしている、請求項1に記載の加熱器。
【請求項3】
少なくとも1つのセントラライザが、湾曲しており、セントラライザの少なくとも一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている、請求項1に記載の加熱器。
【請求項4】
セントラライザのすべてまたはすべてのうちの大部分が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしている、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱器。
【請求項5】
セントラライザが、酸化管路の壁の材料とは異なる材料から構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱器。
【請求項6】
セントラライザが、酸化管路の壁の材料とは異なる材料で被覆される、請求項1から5のいずれか一項に記載の加熱器。
【請求項7】
セントラライザが、三角形の形状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の加熱器。
【請求項8】
熱を処理管路に提供するための方法であって、
酸化管路を設けることと、
燃料管路内から酸化管路への流体連通を提供する複数の開口部と、燃料管路に取り付けられる複数のセントラライザとを有する燃料管路を設けて、少なくとも1つのセントラライザまたはセントラライザの一部が、燃料管路の長手軸に対して角度をなしていることと、
酸化管路と熱交換関係にある処理管路を設けることと、
燃料を燃料管路に導入することと、
酸化剤を酸化管路に導入することと、
燃料を複数の開口部を通して酸化管路に導入し、無炎燃焼が酸化管路に生じるようにすることとを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2010−534312(P2010−534312A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517154(P2010−517154)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/070281
【国際公開番号】WO2009/014979
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】