説明

無線アクセスシステム

【課題】複数の無線制御局と、無線端末装置との間の多重無線通信において、1以上の無線制御局からの無線信号間の干渉を防止し、無線端末装置内で干渉波除去処理を不要とする無線アクセスシステムを提供すること。
【解決手段】WUSBホスト3a〜3cと、WUSBホスト3a〜3cとデータを送受信するWUSBデバイス2とを備え、各WUSBホスト3a〜3cは、データを送信する送信期間を他のWUSBホストの送信期間と重ならないように他のWUSBホストと調停して予約し、予約した送信期間にデータを送信し、WUSBデバイス2は、SDMA通信で1以上の無線制御局にデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重無線通信として空間分割多重アクセス通信を使用した無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線制御局と、この無線制御局とデータを送受信する1以上の無線端末装置とを備え、無線制御局が、空間分割多重アクセス通信で1以上の無線端末装置にそれぞれに対応したデータを送信する一方、空間分割多重アクセス通信制御において分割された各指向空間に配置された無線端末装置にデータの送信を択一的に許可していき、無線端末装置が、無線制御局によってデータの送信が許可されている間に、時分割で無線制御局にデータを送信する無線アクセスシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成により、従来の無線アクセスシステムは、下りの伝送時には空間分割多重アクセス通信で無線制御局から無線端末装置にデータを送信し、上りの伝送時には時分割多重アクセス通信で無線端末装置から無線制御局にデータを送信するため、無線制御局と、無線端末装置との間の多重無線通信において、上りの伝送時に無線端末装置の無線送信信号間の干渉を防止し、無線制御局内での干渉波除去処理を不要としていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術は、無線制御局と、1以上の無線端末装置との間の多重無線通信において、上りの伝送時に無線端末装置の無線送信信号間の干渉を防止し、無線制御局内での干渉波除去処理を不要とすることができるものの、複数の無線制御局と、無線端末装置との間の多重無線通信については、考慮されていなかった。
【0005】
特に、複数の無線制御局間で1台の無線端末装置を共有し、アクセス制御するための実現可能な技術については、提示されていなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、複数の無線制御局と無線端末装置との間の多重無線通信において、無線端末からの送信時は、空間分割多重アクセス通信により通信容量を大幅に向上する一方、無線制御局による送信時は、無線制御局からの無線送信信号間の干渉を防止し、無線端末装置内で干渉波除去処理を不要とすることができる無線アクセスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線アクセスシステムは、複数の無線制御局と、前記複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置とを備え、前記無線制御局は、データを送信する送信期間を他の無線制御局の送信期間と重ならないように前記他の無線制御局と調停して予約し、予約した送信期間にデータを送信し、前記無線端末装置は、空間分割多重アクセス通信で前記1以上の無線制御局にデータを送信するように構成されている。
【0008】
この構成により、本発明の無線アクセスシステムは、上りの伝送時には空間分割多重アクセス通信で無線端末装置から複数の無線制御局にそれぞれに対するデータを同時に送信し、下りの伝送時には時分割多重アクセス通信で無線制御局から無線端末装置にデータを時分割で送信するため、複数の無線制御局と無線端末装置との間の多重無線通信において、無線制御局からの無線信号間の干渉を防止し、無線端末装置内での干渉波除去処理を不要としている。
【0009】
なお、前記無線端末装置は、データを送信する送信期間を前記複数の無線制御局の送信期間と重ならないように前記複数の無線制御局と調停して予約し、予約した送信期間にデータを送信するようにしてもよい。
【0010】
この構成により、本発明の無線アクセスシステムは、上りの伝送と下りの伝送とに同一周波数の搬送波を使用することができるため、占有する無線周波数帯域を抑制することができる。
【0011】
また、前記無線端末装置は、空間分割多重通信を行う時間帯域を1以上の無線制御局の送信期間と重ならないよう事前に予約してこれを各無線制御局に通知する一方、前記各無線制御局は、前記無線制御局の予約時間帯域とは別の無線端末装置から通知された時間帯域に収まるよう、自局の制御下の無線端末装置に対するデータおよび応答信号の送信要求を行い、前記無線端末装置は、前記無線制御局からの送信要求に従いデータおよび応答信号を送信するようにしてもよい。
【0012】
また、前記無線端末装置は、前記無線制御局から受信されるデータと異なる周波数の搬送波で前記無線制御局にデータを送信するようにしてもよい。
【0013】
この構成により、本発明の無線アクセスシステムは、上りの伝送と下りの伝送とに異なる周波数の搬送波を使用することができるため、上りの伝送と下りの伝送とを非同期に実行することができる。
【0014】
また、前記無線端末装置は、複数の指向空間にそれぞれ異なる変調信号を送出する空間分割多重アクセス送信部と、単一の変調信号のみを受信する時分割多重アクセス受信部と、を有するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の無線端末装置は、複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置であって、複数の指向空間にそれぞれ異なる変調信号を送出する空間分割多重アクセス送信部と、単一の変調信号のみを受信する時分割多重アクセス受信部と、を備えた構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の無線端末装置は、上りの伝送時は空間分割多重アクセス通信で無線制御局にデータを送信し、下りの伝送時は時分割多重アクセス通信で無線制御局からデータを受信するため、複数の無線制御局との間の多重無線通信において、無線制御局からの無線信号間の干渉を防止し、無線端末装置内での干渉波除去処理を不要としている。
【0017】
また、本発明の無線アクセス方法は、複数の無線制御局と、前記複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置とを用いた無線アクセス方法において、前記無線制御局が、データを送信する送信期間を他の無線制御局の送信期間と重ならないように前記他の無線制御局と調停して予約するステップと、前記無線制御局が、予約した送信期間にデータを送信するステップと、前記無線端末装置が、空間分割多重アクセス通信で前記1以上の無線制御局にデータを送信するステップと、を有する。
【0018】
したがって、本発明の無線アクセス方法は、上りの伝送時は空間分割多重アクセス通信で無線端末装置から無線制御局にデータを送信させ、下りの伝送時は時分割多重アクセス通信で無線制御局から無線端末装置にデータを送信させるため、複数の無線制御局と無線端末装置との間の多重無線通信において、無線制御局からの無線信号間の干渉を防止し、無線端末装置内での干渉波除去処理を不要としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数の無線制御局と無線端末装置との間の多重無線通信において、無線端末装置内で干渉波除去処理を必要とせずに無線制御局間における無線信号の干渉を防止することができる無線アクセスシステムを提供することができる。
【0020】
また、従来のWUSB(Wireless Universal Serial Bus)規格(非特許文献1参照)では、WUSBデバイス(無線端末装置)に新たなWUSBホスト(無線制御局)を接続する場合には、このWUSBデバイスに既に接続しているWUSBホストをWUSBデバイスから切断した後に、このWUSBデバイスに新たなWUSBホストを接続し直すしかなく、複数のWUSBホストとWUSBデバイスとを同時に接続することができなかった。
【0021】
本発明の無線アクセスシステムは、複数の無線制御局間で1台の無線端末装置を時分割で共有制御するため、従来のWUSB規格では困難であった複数のWUSBホストによるWUSBデバイスの共同利用を可能としている。これにより、プリンタ、複合機、プロジェクタ等のWUSBデバイスをパーソナルコンピュータ等の複数のWUSBホストで同時に接続して共同利用させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステムを構成するWUSBデバイスのブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステムを構成するWUSBホストのブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステムの第1の動作例を示すタイミング図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステムの第2の動作例を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る無線アクセスシステム1は、WUSBデバイス2と、複数のWUSBホスト3a〜3cとを備えている。なお、図1において、3つのWUSBホスト3a〜3cが示されているが、無線アクセスシステム1を構成するWUSBホストの数を限定するものではない。
【0025】
WUSBデバイス2は、本発明における無線端末装置を構成し、例えば、複合機、プリンタ、プロジェクタ等の周辺機器によって構成される。各WUSBホスト3a〜3cは、本発明における無線制御局を構成し、例えば、WUSBによる通信が可能な汎用的なパーソナルコンピュータによって構成される。
【0026】
図2に示すように、WUSBデバイス2は、複合機、プリンタ、プロジェクタ等の周辺機器の本体を制御するための本体システム部10と、各WUSBホスト3a〜3cとデータを送受信するためのWUSB Device通信部11と、を備えている。
【0027】
WUSB Device通信部11は、本体システム部10とデータを入出力するシステムIF部12と、空間分割多重アクセス(Space Division Multiple Access、SDMA)通信で各WUSBホスト3a〜3cにデータを送信するSDMA送信部13と、時分割多重アクセス(Time Division Multiple Access、TDMA)通信で各WUSBホスト3a〜3cから送信されたデータを受信するTDMA受信部14と、を有している。
【0028】
SDMA送信部13は、複数のMAC(Media Access Control)送信部20a〜20dと、BB(Baseband)送信部21a〜21dと、SDMA送信処理部22と、アンテナ素子23a〜23dと、を有している。
【0029】
なお、図2において、それぞれ4つのMAC送信部20a〜20dと、BB送信部21a〜21dと、アンテナ素子23a〜23dと、が示されているが、SDMA送信部13を構成するMAC送信部、BB送信部およびアンテナ素子の数を限定するものではない。
【0030】
MAC送信部20a〜20dは、システムIF部12を介して本体システム部10から入力されたデータに対してMACレイヤに関する送信処理を施してBB送信部21a〜21dにそれぞれ出力するようになっている。
【0031】
BB送信部21a〜21dは、MAC送信部20a〜20dから入力されたデータをBB信号にそれぞれ変調するようになっている。SDMA送信処理部22は、各BB信号に対し送信アンテナ素子の数だけ複製し、これに送信時の合成信号を送信対象のWUSBホスト3a〜3cの方位に向けるための振幅および位相に関する調整係数を掛けた後に、高周波(Radio Frequency、RF)信号にアップコンバートし、アンテナ素子23a〜23dを介してRF信号を電波としてそれぞれ送出するようになっている。
【0032】
図1においては、振幅および位相のみ異なる同一信号が4つのアンテナ素子から送出され、WUSBホスト3aの方位を向いた指向性信号が空間で合成される。WUSBホスト3b、3cに対しても、振幅および位相に関する調整係数を変えることで、同様に指向性信号が合成される。
【0033】
このように、各アンテナ素子23a〜23dによって送出された電波は、空間で合成され、図1に示すように、各指向空間4a〜4cに送出される。ここで、各指向空間4a〜4cの何れかには、各WUSBホスト3a〜3cが配置されているものとする。
【0034】
図2において、TDMA受信部14は、アンテナ30と、アンテナ30を介して受信されたRF信号をBB信号にダウンコンバートするRF受信部31と、RF受信部31によってダウンコンバートされたBB信号を復調するBB受信部32と、BB受信部32によって復調されたデータに対してMACレイヤに関する受信処理を施し、システムIF部12を介して本体システム部10に出力するMAC受信部33と、を有している。なお、TDMA受信部14は、アンテナ30を有するのに代えて、アンテナ素子23a〜23dをSDMA送信部13と時分割で共用するようにしてもよい。
【0035】
一方、各WUSBホスト3a〜3c(以下、総称して「WUSBホスト3」と記載する)は、図3に示すように、MACレイヤより上位のレイヤに関する処理を施す本体システム部40と、WUSBデバイス2とデータを送受信するためのWUSB Host通信部41と、アンテナ42と、を備えている。
【0036】
WUSB Host通信部41は、本体システム部40とデータを入出力するシステムIF部43と、TDMA通信でWUSBデバイス2にデータを送信する送信部44と、TDMA通信でWUSBデバイス2から送信された自局宛の指向空間信号を受信する受信部45と、を有している。
【0037】
送信部44は、MAC送信部50と、BB送信部51と、RF送信部52と、を有している。MAC送信部50は、システムIF部43を介して本体システム部40から入力されたデータに対してMACレイヤに関する送信処理を施してBB送信部51に出力するようになっている。
【0038】
BB送信部51は、MAC送信部50から入力されたデータをBB信号に変調するようになっている。RF送信部52は、BB信号をRF信号にアップコンバートし、アンテナ42を介してRF信号を電波として送出するようになっている。
【0039】
受信部45は、アンテナ42を介して受信されたRF信号をBB信号にダウンコンバートするRF受信部61と、RF受信部61によってダウンコンバートされたBB信号を復調するBB受信部62と、BB受信部62によって復調されたデータに対してMACレイヤに関する受信処理を施し、システムIF部43を介して本体システム部40に出力するMAC受信部63と、を有している。
【0040】
アンテナ42で受信される信号は、このWUSBホスト3が配置された指向空間に対する指向性を持つようにWUSBデバイス2によって送信されているため、干渉信号となる他の指向空間に向けて送信された信号のレベルは、自局宛の信号のレベルよりかなり低くなる。このため、WUSBホスト3の受信側においても干渉波除去処理が不要である。
【0041】
次に、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dおよびMAC受信部33と、各WUSBホスト3a〜3cのMAC送信部50およびMAC受信部63とについて、具体的に説明する。
【0042】
本実施の形態において、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dおよびMAC受信部33と、WUSBホスト3a〜3cのMAC送信部50およびMAC受信部63とは、WiMedia規格(非特許文献2参照)を適用したWUSB規格に実質的に準拠したMACレイヤに関する送受信処理を実行するようになっている。
【0043】
WiMedia規格においては、256μsの期間を有する256個のメディア・アクセス・スロット(Medium Access Slot、MAS)からなる65,536μs周期のスーパーフレーム毎に、フレーム先頭のビーコン期間に各ステーション(本実施の形態におけるWUSBデバイス2およびWUSBホスト3a〜3c)が互いにビーコンを送受信してシステムの時間同期を取る。各ステーションは、ビーコンを用いてMASを調停して予約し、予約したMASの期間を用いて各ステーションが、他のステーションと時分割でデータを送受信する。
【0044】
MASを予約するプロトコルは、DRP(Distributed Reservation Protocol)と呼ばれる。ビーコン信号には、MASの予約要求および応答情報(DRP IE)と、現在の予約状況情報(DRP Availability IE)と、が含まれる。これにより、各ステーションは、受信したビーコン信号に含まれるこれらの情報を解釈することによって、256個のMASの予約状況を常に把握することができる。
【0045】
一方、WUSB規格において、WUSBホストは、MMC(Micro-scheduled Management Command)と呼ばれる管理フレームを制御対象のWUSBデバイスに送信し、各WUSBデバイスは、WUSBホストから送信されたMMCに指定された時間にWUSBホストとデータや通信応答パケットの送受信を行う。
【0046】
したがって、WiMedia規格を適用したWUSB規格においては、WUSBホストが、データを送信する送信期間とするMASと、制御対象のWUSBデバイスにデータを送信させる送信期間とするMASとをDRPにしたがって予約し、予約したMASでデータの送受信を行う。
【0047】
本実施の形態において、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dは、SDMA通信で同じ期間にデータを送信するため、各WUSBホスト3a〜3cのMAC送信部50と同様に、データを送信する送信期間とするMASをDRPにしたがって予約し、予約したMASでデータの送信を行うようになっている。
【0048】
また、各WUSBホスト3a〜3cのMAC受信部63は、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dによって予約されたMASのデータを監視し、自己に宛てたデータを検出したときには、このデータに対してMACレイヤに関する受信処理を施すようになっている。
【0049】
以上のように構成された無線アクセスシステム1の動作例について、図4、図5を参照しながら説明する。
【0050】
図4は、まず、WUSBホスト3aがデータを送出し、次に、WUSBホスト3bがデータを送出し、これらデータを受信したWUSBデバイス2がSDMA通信で応答信号(ACK)を返す例を示している。
【0051】
図4において、WiMedia規格における1つのスーパーフレームのなかで、WUSBホスト3aのMAC送信部50によって予約された少なくとも1つのMASはDRP−A、WUSBホスト3bのMAC送信部50によって予約された少なくとも1つのMASはDRP−B、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dによって予約された少なくとも1つのMASはDRP−Devとしてそれぞれ示されている。
【0052】
まず、DRP−Aにおいて、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、データの送信時刻と、このデータに対するACKの送信要求時刻と、次回のMMCの送信時刻と、を含むMMC(図中「MMC−A」)を送信し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS1)。ここで、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、ACKの送信要求時刻として、DRP−Dev内の時刻を指定する。
【0053】
このMMCによって指定されたデータの送信時刻になると、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、データ(図中「Data Out−A」)の送信を開始し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS2)。
【0054】
次に、DRP−Bにおいて、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、データの送信時刻と、このデータに対するACKの送信要求時刻と、次回のMMCの送信時刻と、を含むMMC(図中「MMC−B」)を送信し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS3)。ここで、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、ACKの送信要求時刻として、DRP−Dev内の時刻を指定する。
【0055】
このMMCによって指定されたデータの送信時刻になると、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、データ(図中「Data Out−B」)の送信を開始し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS4)。
【0056】
次に、DRP−Devにおいて、各MMCによって指定されたACKの送信要求時刻になると、WUSBホスト3aおよびWUSBホスト3bが位置する指向空間4a、4bに対応するWUSBデバイス2のMAC送信部20a、20bは、各データの受信結果に対するACKまたはNACK(図中「ACK−A」および「ACK−B」)の送信を開始し、WUSBホスト3a、3bは自分宛のACKを受信する(ステップS5)。
【0057】
このように、WUSBデバイス2のMAC送信部20a、20bによって送信されたACKを表す各信号は、アンテナ素子23a〜23cを介してSDMA送信処理部22によって各指向空間4a、4bに送出される。
【0058】
図5は、まず、WUSBホスト3bがデータを要求し、次に、WUSBホスト3aがデータを要求し、要求されたデータをWUSBデバイス2がSDMA通信で送信し、WUSBホスト3bおよび3aが受信したデータに対してACKを返す例を示している。
【0059】
図5において、WiMedia規格における1つのスーパーフレームのなかで、WUSBホスト3aのMAC送信部50によって予約された少なくとも1つのMASはDRP−A、WUSBホスト3bのMAC送信部50によって予約された少なくとも1つのMASはDRP−B、WUSBデバイス2のMAC送信部20a〜20dによって予約された少なくとも1つのMASはDRP−Devとしてそれぞれ示されている。
【0060】
まず、DRP−Bにおいて、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、データの送信要求時刻と、このデータに対するACKを含む次回のMMCの送信時刻と、を含むMMC(図中「MMC−B」)を送信し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS11)。ここで、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、データの送信要求時刻として、DRP−Dev内の時刻を指定する。
【0061】
次に、DRP−Aにおいて、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、データの送信要求時刻と、このデータに対するACKを含む次回のMMCの送信時刻と、を含むMMC(図中「MMC−A」)を送信し、WUSBデバイス2はこれを受信する(ステップS12)。ここで、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、データの送信要求時刻として、DRP−Dev内の時刻を指定する。
【0062】
次に、DRP−Devにおいて、各MMCによって指定されたデータの送信要求時刻になると、WUSBホスト3aおよびWUSBホスト3bが位置する指向空間4a、4bに対応するWUSBデバイス2のMAC送信部20a、20bは、各データ(図中「Data In−A」および「Data In−B」)の送信を開始し、WUSBホスト3aと3bは自分宛のデータを受信する(ステップS13)。
【0063】
このように、WUSBデバイス2のMAC送信部20a、20bによって送信されたデータを表す各信号は、アンテナ素子23a〜23cを介してSDMA送信処理部22によって各指向空間4a、4bに送出される。
【0064】
次に、DRP−Bにおいて、WUSBホスト3bのMAC送信部50は、MMC−Bによって指定された次回のMMCの送信時刻になると、WUSBデバイスからのデータ受信結果を示すACKまたはNACK応答を含んだMMC(図中「MMC−B(ACK)」)を送信する(ステップS14)。
【0065】
次に、DRP−Aにおいて、WUSBホスト3aのMAC送信部50は、MMC−Aによって指定された次回のMMCの送信時刻になると、WUSBデバイスからのデータ受信結果を示すACKまたはNACK応答を含んだMMC(図中「MMC−A(ACK)」)を送信する(ステップS15)。
【0066】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態としての無線アクセスシステム1は、上りの伝送時にはSDMA通信でWUSBデバイス2からWUSBホスト3a〜3cにデータを送信し、下りの伝送時にはTDMA通信でWUSBホスト3a〜3cからWUSBデバイス2にデータを送信するため、複数のWUSBホスト3a〜3cとWUSBデバイス2との間の多重無線通信において、WUSBホスト3a〜3cからの無線信号間の干渉を防止し、WUSBデバイス2内で干渉波除去処理を不要にすることができる。
【0067】
また、本発明の一実施の形態としての無線アクセスシステム1は、複数のWUSBホスト3a〜3c間で1台のWUSBデバイス2を時分割で共有制御するため、従来のWUSB規格では困難であった複数のWUSBホストによるWUSBデバイスの共同利用を可能としている。
【0068】
これにより、本発明の一実施の形態としての無線アクセスシステム1は、プリンタ、複合機、プロジェクタ等のWUSBデバイス2をパーソナルコンピュータ等の複数のWUSBホスト3a〜3cで同時接続して共同利用させることができる。
【0069】
なお、本実施の形態において、無線アクセスシステム1がWiMedia規格に準拠して、WUSBデバイス2とWUSBホスト3a〜3cとの間の通信を時分割複信で行う例について説明したが、本発明における無線アクセスシステムは、WLAN(Wireless Local Area Network)のPCF(Point Coordination Function)制御を用いることにより、WUSBデバイス2とWUSBホスト3a〜3cとの間の通信を時分割複信で行うようにしてもよい。
【0070】
また、本実施の形態において、WUSBデバイス2とWUSBホスト3a〜3cとの間の通信を時分割複信で行う例について説明したが、本発明における無線アクセスシステムは、WUSBデバイス2とWUSBホスト3a〜3cとの間の通信を周波数分割複信で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 無線アクセスシステム
2 WUSBデバイス
3、3a〜3c WUSBホスト
4a〜4c 指向空間
10、40 本体システム部
11 WUSB Device通信部
12、43 システムIF部
13 SDMA送信部(空間分割多重アクセス送信部)
14 TDMA受信部(時分割多重アクセス送信部)
20a〜20d、50 MAC送信部
21a〜21d、51 BB送信部
22 SDMA送信処理部
23a〜23d アンテナ素子
30、42 アンテナ
31、61 RF受信部
32、62 BB受信部
33、63 MAC受信部
41 WUSB Host通信部
44 送信部
45 受信部
52 RF送信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特許第3926669号公報
【非特許文献】
【0073】
【非特許文献1】"Wireless Universal Serial Bus Specification Revision 1.0"、[online]、May 12,2005、[平成22年6月23日検索]、インターネット<URL:http://www.usb.org/developers/wusb/wusb_2007_0214.zip>
【非特許文献2】WiMedia Alliance、"MAC Specification: RELEASE 1.5"、[online]、December 1,2009、[平成22年6月23日検索]、インターネット<URL:http://www.wimedia.org/imwp/download.asp?ContentID=16552>

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線制御局と、前記複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置とを備え、
前記無線制御局は、データを送信する送信期間を他の無線制御局の送信期間と重ならないように前記他の無線制御局と調停して予約し、予約した送信期間にデータを送信し、
前記無線端末装置は、空間分割多重アクセス通信で前記1以上の無線制御局にデータを送信する無線アクセスシステム。
【請求項2】
前記無線端末装置は、データを送信する送信期間を前記複数の無線制御局の送信期間と重ならないように前記複数の無線制御局と調停して予約し、予約した送信期間にデータを送信することを特徴とする請求項1に記載の無線アクセスシステム。
【請求項3】
前記無線端末装置は、空間分割多重通信を行う時間帯域を1以上の無線制御局の送信期間と重ならないよう事前に予約してこれを各無線制御局に通知する一方、
前記各無線制御局は、前記無線制御局の予約時間帯域とは別の無線端末装置から通知された時間帯域に収まるよう、自局の制御下の無線端末装置に対するデータおよび応答信号の送信要求を行い、
前記無線端末装置は、前記無線制御局からの送信要求に従いデータおよび応答信号を送信することを特徴とする請求項2に記載の無線アクセスシステム。
【請求項4】
前記無線端末装置は、前記無線制御局から受信されるデータと異なる周波数の搬送波で前記無線制御局にデータを送信することを特徴とする請求項1に記載の無線アクセスシステム。
【請求項5】
前記無線端末装置は、複数の指向空間にそれぞれ異なる変調信号を送出する空間分割多重アクセス送信部と、単一の変調信号のみを受信する時分割多重アクセス受信部と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の無線アクセスシステム。
【請求項6】
複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置であって、
複数の指向空間にそれぞれ異なる変調信号を送出する空間分割多重アクセス送信部と、
単一の変調信号のみを受信する時分割多重アクセス受信部と、を備えた無線端末装置。
【請求項7】
複数の無線制御局と、前記複数の無線制御局とデータを送受信する無線端末装置とを用いた無線アクセス方法において、
前記無線制御局が、データを送信する送信期間を他の無線制御局の送信期間と重ならないように前記他の無線制御局と調停して予約するステップと、
前記無線制御局が、予約した送信期間にデータを送信するステップと、
前記無線端末装置が、空間分割多重アクセス通信で前記1以上の無線制御局にデータを送信するステップと、を有する無線アクセス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−23426(P2012−23426A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157591(P2010−157591)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】