説明

無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法

本発明は、無線タグRFIDシステムにおいてリーダー機間の衝突を防止する方法を開示する。
本発明の方法は、各無線タグリーダー機が所定のチャンネルをモニタリングして送信するチャンネルを選択する第1段階;上記選択された送信チャンネルを通じて送信する第2段階;上記選択された送信チャンネルと同一周波数のチャンネルを受信する第3段階;上記受信チャンネルの状態を分析してリーダー機間の衝突有無を判断する第4段階;上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出されると、所定の式に従ってランダム時間を遅延した後、上記第1段階ないし上記第4段階を繰り返しリトライする第5段階;及び上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出されなければ、該当無線タグと通信する段階で構成される。
よって、本発明はリーダー機間の衝突を解決して移動型リーダー機の認識能力を向上させることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ(RFID)関連技術に関するもので、詳しくは無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線タグ(RFID:Radio Frequency Identification)技術は、RF信号を使用して物体を識別する非接触式識別技術の一つで、商品の製造過程から流通、物流、金融サービスにいたるまで社会全般で広範囲に使用できるユビキタスの核心インフラ技術に属する。
【0003】
上記の無線タグ(RFID)技術は、デバイス層、センサーネットワーク層、ソフトウェアプラットホーム層、アプリケーション層の構造で構成される。デバイス層は一般的にタグ(Tag)と言われる固有情報を貯蔵したトランスポンダ(Transponder)と、無線を通じてタグの情報を読み取り及び解読するリーダー機からなる。
【0004】
RFID技術における解決すべき問題は、タグ間の衝突によりタグの認識効率が落ちるということで、これを解決するために利用周波数範囲を拡大してデータの伝送速度を速めるかデータ衝突を最小化して認識率を高めるなど、様々な方法が提示された。
【0005】
一方、通常のリーダー機は信号の送信のためにLBT(Listen Before Talk)アルゴリズムを適用して遊休チャンネル(Silence channel)を確保することによって通信の安全性を確保する。
【0006】
しかし、このLBTアルゴリズムは、実際信号の送信時点で発生しえる外部の信号干渉に対して認識方法がないという問題がある。即ち、リーダー機Aとリーダー機Bの2つのリーダー機がLBTアルゴリズムで確保したチャンネルが偶然一致した場合、この二つのリーダー機でほぼ同時にタグに信号を送信でき、この際、タグは正確な信号を受信できなくなる。よって、雑音を受信したタグは応答できない状態になるので、該当リーダー機は実際タグが存在するにも関わらず、タグの無応答状態によりタグが存在しないものとみなすという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために提案されたもので、リーダー機間に衝突が発生した場合、リトライ時点の確保のために乱数で時間帯を調整して再衝突を回避できる無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法を提供することをその目的とする。
【0008】
つまり、LBTアルゴリズムが周波数ドメインにおいて安定的なチャンネルを確保することに重点を置く反面、本発明はリーダー機間の衝突発生の際にリトライ時点の確保のために乱数で時間帯を調節し、これをLDT(Listen During Talk)という。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の方法は、各無線タグリーダー機が所定のチャンネルをモニタリングして送信するチャンネルを選択する第1段階;上記選択された送信チャンネルを通じて送信する第2段階;上記選択された送信チャンネルと同一周波数のチャンネルを受信する第3段階;上記送信するチャンネルを通じて受信される信号の状態を分析してリーダー機間の衝突有無を判断する第4段階;上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出されると、所定式に従ってランダム時間を遅延した後、上記第1段階ないし上記第4段階を繰り返しリトライする第5段階;及び、上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出されなければ、該当無線タグと通信する段階を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、上記第4段階は、上記受信チャンネルの状態が雑音である場合はリーダー機間の衝突であると判断するか、上記第2段階ではデータを送信し、上記第3段階ではデータを受信し、上記第4段階では送信データと受信データを比較して一致しなければ衝突であると判断されうる。
【0011】
なお、上記第5段階の遅延時間は乱数(n)にタグ応答時間(tresponse)をかけた時間(T=n×tresponse)であり、上記第1段階はLBTアルゴリズムによってチャンネルを選択する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、リーダー機間に衝突が発生する場合、ランダム時間の遅延後に送信をリトライさせてリーダー機間の衝突を回避して無線タグが存在するにも関わらず認識できないという問題点を解決できる。特に、最近にはリーダー機が移動型であるためリーダー機間の衝突が頻繁に発生するが、本発明はリーダー機間の衝突を解決して移動型リーダー機の認識能力を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の適用に適合する無線タグシステムの全体構成を示した概略図である。図1を参照すると、RFIDシステムは固有情報を貯蔵している多数の無線タグ110と、無線タグ110と無線信号を送受信して無線タグに貯蔵された情報を読み取り及び解釈してネットワークを通じてサーバー側へ伝送するための多数のリーダー機120−1、120−2、ネットワーク130を通じて多数のリーダー機120−1、120−2からデータを受けて多様なサービスを提供するサーバーシステム140で構成され、サーバーシステム140はミドルウェア142と応用サービス144を備える。
【0015】
無線タグ110は、タグが付着される物体のIDコード及び物体の情報をリーダー機120−1、120−2へ伝送するためにリーダー機120−1、120−2と通信し、受動型と能動型に区分される。リーダー機120−1、120−2はネットワーク130を通じるか直接ミドルウェア142と通信しながらミドルウェア142によってコントロールされ無線タグ110からタグID及び関連情報を読み取りミドルウェア142へ提供する。ミドルウェア142はリーダー機120−1、120−2から継続的に発生するIDコード及びデータを収集、制御、管理する機能をする。このミドルウェア142は、全ての構成要素に連結され階層的に組織化及び分散化された構造のミドルウェアネットワークを構成でき、上位の応用サービス144と通信して多様なサービスが提供できる。更に、ミドルウェア142は多様な形態のリーダー機インターフェース、多様なコード及びネットワーク相互作用、様々な応用プラットホームに対しても相互運用性が確保しなければならない。
【0016】
図2は図1に図示された無線タグリーダー機の構成例であり、図3は図1に図示された無線タグの構成例である。
【0017】
無線タグ110は、電源供給方式により、バッテリーが付着されず相対的に認識距離が短い受動型と、バッテリーが付着され認識距離が長い能動型に区分される。通常433MH帯域は能動型を使用し、900MHz帯域は受動型を使用する。受動型無線タグは、図3に示されたように、アンテナ111と整流器112、タグチップ113で構成され、多様な形態と大きさにできる。タグチップ113は内部にメモリを備え識別コードを貯蔵しており、整流器112はリーダー機からアンテナ111を通じて伝送されたエネルギーを利用してタグチップ113で必要とする電源を提供する。
【0018】
無線タグリーダー機120は、図2に示したように、操作のための入力部121、CPU122、RF部123、アンテナ124、ネットワーク接続部125、SRAM126、フラッシュメモリ127、表示部128で構成される。
【0019】
入力部121は、使用者の操作のためのキーで構成され、フラッシュメモリ127にはリーダー機を動作させるためのソフトウェアとデータが貯蔵されており、表示部128はLEDやLCDなどで構成され動作状態を表示する。
【0020】
RF部123は、送信部と受信部に区分されており、CPU122の制御により送信データを高周波無線信号に変調してアンテナ124を通じて送信し、アンテナ124を通じて受信された信号を復号して受信データをCPU122へ提供する。アンテナ124は一つのアンテナを送受信に使用するか送信アンテナと受信アンテナを別々に使用することもできる。
【0021】
ネットワーク接続部125は、リーダー機をミドルウェア側へ連結するための部分で、有線ネットワーク接続の場合にはRS−232Cなどのような直列インターフェースやイーサネット(登録商標)などで実行され、無線ネットワーク接続の場合は無線ランチップ、CDMAチップ、無線モデムなどで実行できる。
【0022】
CPU122はフラッシュメモリ127に貯蔵されたソフトウェアをSRAM126にローディングしてから、ソフトウェアによりリーダー機の全体動作を制御する。即ち、ネットワーク接続部125を通じてミドルウェア142と通信し、RF部123を通じて無線タグ110側へデータを送信し、無線タグ110から受信されたデータを復号してミドルウェア142へ伝送する。又、CPU122は多重タグ認識のための衝突防止アルゴリズムと、保安、個人情報保護のための暗号化アルゴリズム、エラー訂正アルゴリズムなどと通信プロトコル、本発明によるリーダー機間の衝突防止過程などを行なう。
【0023】
続いて、上記のように構成される無線タグシステムにおいて、本発明によるリーダー機間の衝突を防止する方法を説明する。
【0024】
図4は、本発明による無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止過程を図示したフローチャートである。
【0025】
通常的な全二重方式(Full Duplex)の無線通信(Air−communication)システムは、送信時点で受信アンテナを通じて大気空間(Air)上の信号を受信できる。本発明によるLDTの核心概念は、このメカニズムに基づいて送信中に送信チャンネルと同一周波数のチャンネルを受信した後、受信状態を判別して該当チャンネルでリーダー機間の衝突が発生されたかを判断する。この際、リーダー機間の衝突発生有無は多様な方式で判断できるが本発明の図4に図示された実施例では雑音有無で判断し、図5に図示された他の実施例では送信データと受信データを比較して判断する。
【0026】
図4を参照すると、無線タグリーダー機120−1、120−2は無線タグ110を識別するために送信するチャンネルを選択する(S11)。即ち、無線タグ110と無線タグリーダー機120−1、120−2の間には予め割り当てられた周波数帯域の通信チャンネルが定義されているが、ミドルウェア142の命令やイベントが発生され送信する必要がある場合、割り当てられた多数のチャンネルのうち使用しない遊休チャンネルを選択する。この時、遊休チャンネルを選択するアルゴリズムとしてはLBT(Listen Before Talk)アルゴリズムを使用することができる。
【0027】
その後、無線タグリーダー機120−1、120−2は選択されたチャンネルを通じて無線信号を送信すると共に送信チャンネルと同一周波数の受信チャンネルを通じて無線信号を受信した後、該当受信チャンネルの状態を分析して衝突有無を判断する(S12、S13)。つまり、無線タグリーダー機120−1、120−2のRF部の無線信号を、送信アンテナを通じて空中へ伝送してから、受信アンテナとRF部を通じて同一周波数のチャンネルを受信して雑音だけであれば衝突であると判断する。
【0028】
判断結果、リーダー機間の衝突が検出されると、下記の式(1)に従ってランダム時間を遅延してから上記過程を繰り返してリトライし、リーダー機間の衝突が検出されなければ、該当無線タグ110と通信する(S14、S15)。
【0029】
つまり、LBTの結果で選択したチャンネルが本発明のLDTにより雑音を感知すると、この場合はまた別のリーダー機が接近しているものとみなす。この際、リーダー機A120−1と別のリーダー機B120−2は失敗した送信に対してリトライをしなければならないが、万が一、二つのリーダー機120−1、120−2が同時にリトライをすれば、このリトライは無限に繰り返される。このような衝突を防止するためには本発明によって各リーダー機120−1、120−2は乱数を発生して送信リトライ時点を決定するが、発生された乱数は下記の式(1)のように送信リトライ時点を決定する。
【0030】
T=n×tresponse (1)
上記式(1)において、‘T’はリトライのためにリーダー機が遅延する時間を意味し、‘n’は乱数、tresponseは通常のタグの応答時間を表す。
【0031】
上記した本発明の過程を通じてリーダー機間に周波数ドメインと時間ドメインにおいて通信の安定的な空間が確保できる。
【0032】
図5は、本発明による無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止過程の他の実施例を図示したフローチャートである。図5を参照すると、無線タグリーダー機120−1、120−2は無線タグ110を識別するために送信するチャンネルを選択する(S21)。即ち、無線タグ110と無線タグリーダー機120−1、120−2の間は予め割り当てられた周波数帯域の通信チャンネルが定義されているが、ミドルウェア142の命令やイベントが発生して送信する必要がある場合、割り当てられた多数のチャンネルのうち使用しない遊休チャンネルを選択する。この際、遊休チャンネルを選択するアルゴリズムとしてはLBTアルゴリズムを使用することができる。
【0033】
続いて無線タグリーダー機120−1、120−2は選択されたチャンネルを通じて予め定義された送信データをRF部123から無線信号に変調して送信すると共に送信チャンネルと同一周波数の受信チャンネルを通じて無線信号を受信した後、復調して受信データを抽出する(S22〜S24)。
【0034】
送信データと受信データを比較して一致しなければ該当チャンネルでリーダー機間の衝突が発生されたものと判断して上記の式(1)のようにランダム時間の遅延後に送信をリトライし、一致すれば衝突が発生しなかったものと判断して該当無線タグ110と通信する(S25〜S28)。
【0035】
上記の本発明の他の実施例では、リーダー機120−1、120−2が送信時点で受信された情報が送信した情報と一致するかを比較してリーダー機120−1、120−2の間に周波数ドメインと時間ドメインにおける通信の安定的な空間が確保できる。
【0036】
図6は本発明によるリーダー機間の衝突防止過程を説明するためのタイミングチャートであり、図7は本発明より衝突が回避されたチャンネル使用を説明するための図である。
【0037】
図1のように、リーダー機A120−1とリーダー機B120−2が接近して位置する場合、LBTにより同一チャンネルを同時に使用すると、リーダー機A120−1のセル領域(cell 1)とリーダー機B120−2のセル領域(cell 2)が重なった地域に位置した無線タグ110はリーダー機間の衝突により雑音信号を受信する。よって、雑音のみ受信した無線タグ110は応答できない状態になるので、該当リーダー機は実際にタグが存在するにも関わらずタグの無応答状態によりタグが存在しないものとみなす。
【0038】
図6を参照すると、本発明では、リーダー機A120−1とリーダー機B120−2が衝突する場合、上記説明した式によりリーダー機A120−1はt1ランダム時間の遅延後に再送信をトライし、リーダー機B120−2はt2ランダム時間の遅延後に再送信をトライする。ここで、t1=n1×trespose時間に決まり、t2=n2×trespose時間に決まるが、n1とn2は乱数であるため異なり、別の時間にリトライが行なわれるため衝突が回避される。
【0039】
本発明の衝突回避アルゴリズムにより、図7のように、次の送信トライにあたりリーダー機A120−1は2trにch6を使用し、リーダー機B120−2は7trにch2を使用することによって、相互衝突を防止することができる。図7の縦軸はリーダー機とタグ間に割り当てられたチャンネルCh1〜Ch6を示し、横軸はリトライ時間帯tr〜8trを示すが、チャンネルの選択はLBTによって決まり、再送信のトライの時間はLDTにより決まる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の適用に適合する無線タグシステムの全体構成を図示した概略図である。
【図2】図1に示した無線タグリーダー機の構成ブロック図である。
【図3】図1に示した無線タグの構成ブロック図である。
【図4】本発明による無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止過程を図示したフローチャートである。
【図5】本発明による無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止過程の他の実施例を図示したフローチャートである。
【図6】本発明によるリーダー機間の衝突防止過程を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明によりリーダー機が衝突を回避した例を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各無線タグリーダー機が所定のチャンネルをモニタリングして送信するチャンネルを選択する第1段階;
上記選択された送信チャンネルを通じて送信する第2段階;
上記選択された送信チャンネルと同一周波数のチャンネルを受信する第3段階;
上記送信するチャンネルを通じて受信される信号の状態を分析してリーダー機間の衝突有無を判断する第4段階;
上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出された場合、所定式に従ってランダム時間を遅延した後、上記第1段階ないし上記第4段階を繰り返しリトライする第5段階;
上記第4段階の判断結果、リーダー機間の衝突が検出されなければ、該当無線タグと通信する段階を備えることを特徴とする無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法。
【請求項2】
上記第4段階は、
上記受信チャンネルの状態が雑音である場合、リーダー機間の衝突であると判断することを特徴とする請求項1に記載の無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法。
【請求項3】
上記第2段階ではデータを送信し、上記第3段階ではデータを受信し、上記第4段階では送信データと受信データを比較して一致しなければ衝突であると判別することを特徴とする請求項1に記載の無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法。
【請求項4】
上記第5段階の遅延時間は、乱数(n)にタグ応答時間(tresponse)をかけた時間(T=n×tresponse)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線タグシステムにおけるリーダー機間の衝突防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−523351(P2009−523351A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550217(P2008−550217)
【出願日】平成19年1月7日(2007.1.7)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000093
【国際公開番号】WO2007/081119
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(508036411)ディーアンドエス テクノロジー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】