説明

無線タグ処理装置、無線タグ処理システム、無線タグ

【課題】無線タグの記憶情報を常に目視によって確認できるようにし、利用者の利便性を向上する。
【解決手段】カード処理装置100は、無線タグ回路素子Toを配置し可逆性被印字領域Sに印字Rを形成したICカード200の当該印字Rを消去し再印字可能な消去用サーマルヘッド120及び形成用サーマルヘッド121と、所定の情報をIC回路部150に記憶するとともに印字RとIC回路部150の記憶情報との合致性を表すフラグをIC回路部150に記憶した、無線タグ回路素子Toに対し無線通信により情報を送受信するためのループアンテナ130とを有する。そして、IC回路部150から所定の情報及びフラグを読み取って取得したとき、サーマルヘッド120,121が、フラグが1であった場合には可逆性被印字領域Sの印字Rを消去して上記読み取った所定の情報に対応した内容の印字Rを可逆性被印字領域Sに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに対し無線通信により情報を送受信するとともに所定の印字を行う無線タグ処理装置及び無線タグ処理システム、並びに無線タグに関する。ものである。
【背景技術】
【0002】
外部と情報送受信可能な小型の無線タグを対象物に設け、対象物の探索や管理を行うことが広く行われている。無線タグに設けられる無線タグ回路素子は、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えており、無線タグ通信装置と非接触で情報の送受信を行うことができる。
【0003】
このように種々の分野において活用されつつある無線タグの1つとして、可逆性被印字領域を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、配送表に設けた無線タグ(ICタグ)の無線タグ回路素子(ICチップ)に配送情報を書き込むとともに、無線タグの可逆性被印字領域(リライト層)に対応する印字(バーコード)を行い、これら書き込み情報及び印字情報を用いて配送作業が行われる。配送終了後は、配送表から無線タグを分離し、無線タグ回路素子から配送情報を消去するとともに印字を消去する。その後、無線タグ回路素子に対し新たな配送情報を書き込むとともに、可逆性被印字領域に対応する新たな印字を行うことで、再び配送作業に用いられる。このようにして、無線タグの配送作業における再利用を可能としている。
【特許文献1】特開2002−211755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、無線タグを再利用の際、無線タグ回路素子から以前の情報を消去して新たな情報に書き換えるとともに、可逆性被印字領域に対応する新たな印字を行う。したがって、基本的には、無線タグの記憶情報と印字とは内容が合致するようになっている。しかしながら、当初は合致した状態となっていたが、その後何らかの理由でIC回路部内の情報のみが書き換えられ、可逆性被印字領域の印字内容が変更されない可能性もある。このような場合、利用者は、IC回路部内の情報と印字内容とが不合致であることを視覚的に認識できないため、印字内容と同等の情報が無線タグに記憶されているものと誤解する可能性がある。すなわち、無線タグの記憶情報の内容を常に目視で確認することができなくなり、非常に不便なものとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、無線タグの記憶情報を常に目視によって確認でき、利用者の利便性を向上できる無線タグ処理装置、無線タグ処理システム、及び無線タグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを有する無線タグ回路素子を配置するとともに可逆性被印字領域に第1印字を形成した無線タグの前記第1印字を消去し、再印字可能な印字形成手段と、所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに当該所定の情報と前記第1印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶した、前記無線タグの前記無線タグ回路素子に対し、無線通信により情報を送受信するための装置アンテナと、前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記所定の情報を読み取って取得する情報読み取り手段と、前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記識別子を読み取って取得する識別子読み取り手段とを備え、前記印字形成手段は、前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が合致指標値であるか非合致指標値であるかに応じて、前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去し、前記情報読み取り手段で取得した前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の無線タグ処理装置においては、無線タグ回路素子と可逆性被印字領域とを備えた無線タグが処理対象となる。無線タグ回路素子に備えられたIC回路部には、所定の情報が記憶されている。可逆性被印字領域には、第1印字が既に形成されている。
【0008】
無線タグ回路素子のIC回路部にはまた、上記所定の情報と第1印字とが実質的に合致しているかどうかを表す識別子も、併せて記憶されている。この識別子は、装置アンテナを介して識別子読み取り手段で取得される。また上記所定の情報は、装置アンテナを介して情報読み取り手段で取得される。
【0009】
このとき、識別子読み取り手段で読み取られる識別子は、予め、実質的に合致することを表す合致指標値か、実質的に合致しないことを表す不合致指標値かのいずれかとなっている。識別子が合致指標値であった場合は、可逆性被印字領域の第1印字の内容と、無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが、実質的に合致した状態となっている。一方、識別子が不合致指標値であった場合は、可逆性被印字領域の第1印字の内容と、無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが、実質的に合致しない状態となっている。このような状態となっている理由としては、当初は前述の合致した状態となっていたが、その後無線タグ回路素子との通信によってIC回路部内の情報のみ変更され、可逆性被印字領域の印字が変更されなかった場合が考えられる。
【0010】
このような状況に対応して、本願第1発明では、印字形成手段が、識別子が上記合致指標値かあるいは不合致指標値であるかに応じ、可逆性被印字領域の第1印字を消去して(読み取られた所定の情報に対応した)第2印字を形成可能となっている。この結果、識別子が不合致指標値であった場合に、第1印字を消去し第2印字を形成することで、可逆性被印字領域の表示内容をIC回路部の記憶内容に合致させることが可能となる。
【0011】
これにより、無線タグの可逆性被印字領域には、IC回路部の記憶情報に対応した印字が常時表示されることになる。したがって、利用者は、無線タグの記憶情報を常に目視によって確認することができるので、利便性を向上することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記合致指標値であった場合には、前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に保持し、前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記非合致指標値であった場合には、前記搬送手段で受け入れた前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去するとともに、前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成するように、前記印字形成手段を制御する、印字制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
識別子が合致指標値であった場合には、可逆性被印字領域の表示内容とIC回路部の記憶内容とが合致している(可逆性被印字領域の表示内容を代える必要がない)。したがって、このような場合には、第1印字をそのまま保持する。これにより、無線タグの可逆性被印字領域に、IC回路部の記憶情報に対応した印字を確実に常時表示させることができる。
【0014】
第3発明は、上記第2発明において、前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記非合致指標値であった場合には、前記印字形成手段で前記第1印字を消去させる前記印字制御手段の制御に連動し、前記装置アンテナを介し前記IC回路部に前記合致指標値の前記識別子を書き込む識別子書き込み手段を有する
ことを特徴とする。
【0015】
識別子が不合致指標値であったことに基づき、印字制御手段が印字形成手段を制御することで、可逆性被印字領域の印字表示内容が第2印字に変わり、IC回路部の記憶内容に合致するようになる。したがって、これに応じて識別子書き込み手段により識別子の値を合致指標値とすることで、これ以降、無線タグの可逆性被印字領域の印字内容がIC回路部の記憶情報と合致していることを確実に示すことができる。
【0016】
第4発明は、上記第3発明において、前記無線タグを受け入れて搬送する搬送手段を備え、前記装置アンテナは、前記搬送手段の搬送方向に沿って、前記印字形成手段より上流側に設けられていることを特徴とする。
【0017】
これにより、無線タグを受け入れる搬送手段の搬送に伴って処理を行っていくとき、識別子読み取り手段の識別子の取得を、印字形成手段の消去・印字形成動作よりも先に行うことができる。したがって、識別子読み取り手段で取得した識別子の値に基づき印字形成手段の動作を確実に制御することができる。
【0018】
第5発明は、上記第4発明において、前記無線タグ回路素子が前記装置アンテナの近傍に位置するような上流側搬送位置に前記無線タグを搬送し、前記識別子の取得、前記所定の情報の取得、及び前記合致指標値の書き込みを行った後、さらに前記無線タグを搬送方向下流側に搬送して、前記第1印字の消去及び前記第2印字の形成を行うように、前記搬送手段、前記識別子読み取り手段、前記情報読み取り手段、前記識別子書き込み手段、及び前記印字形成手段を連携して制御する連携制御手段を有することを特徴とする。
【0019】
本願第5発明においては、連携制御手段の制御により、まず上流側搬送位置において、装置アンテナを介し識別子読み取り手段での識別子の取得と情報読み取り手段での所定の情報の取得とを行い、さらに識別子書き込み手段で装置アンテナを介し合致指標値の識別子を書き込む(=印字形成手段の動作に先んじる形で連動)。その後無線タグを搬送手段で下流側に搬送し、印字形成手段で第1印字の消去と第2印字の形成とを行う。このように、搬送方向に沿った一連の流れで円滑に各処理を行うことができる。
【0020】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記印字形成手段は、前記無線タグに前記可逆性被印字領域として備えられた可逆性感熱記録部に対し、前記第1印字の消去及び前記第2印字の形成が可能な、少なくとも1つのサーマルヘッドであることを特徴とする。
【0021】
サーマルヘッドで可逆性感熱記録部に対し加熱することにより、感熱粒子の配列を一様にして第1印字を消去することができ、また所望の態様に感熱粒子を配列することで第2印字の形成を行うことができる。
【0022】
第7発明は、上記第6発明において、前記印字形成手段は、前記第1印字の消去と前記第2印字の形成との両方を行う消去・形成用サーマルヘッドであることを特徴とする。
【0023】
1つのサーマルヘッドが消去機能を印字形成機能とを兼ねることで、消去用と印字形成用に合計2つのヘッドを設ける場合よりも省スペース化及びコスト低減を図ることができる。
【0024】
第8発明は、上記第6発明において、前記印字形成手段は、前記第1印字の消去を行う消去用サーマルヘッドと、前記第2印字の形成を行う形成用サーマルヘッドとを備えることを特徴とする。
【0025】
1つのサーマルヘッドで消去機能と印字形成機能とを兼ねず、消去用と印字形成用に特化した専用ヘッドをそれぞれ設けることにより、消去性能と印字形成性能をそれぞれ向上することができる。
【0026】
上記目的を達成するために、第9発明は、無線タグに対し通信を行う無線タグ通信装置と、無線タグに対し印字を行う無線タグ印字装置とを有する無線タグ処理システムであって、前記無線タグ通信装置は、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを有する無線タグ回路素子を配置するとともに可逆性被印字領域に第1印字を形成した前記無線タグを、受け入れて搬送する第1搬送手段と、所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに当該所定の情報と前記第1印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶した、前記無線タグの前記無線タグ回路素子に対し、無線通信により情報を送受信するための装置アンテナと、前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記識別子を読み取って取得する識別子読み取り手段と、記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記所定の情報を読み取って取得する情報読み取り手段とを有し、前記無線タグ印字装置は、前記無線タグ通信装置から搬出された前記無線タグを受け入れて搬送する第2搬送手段と、前記無線タグ通信装置の前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が合致指標値であるか非合致指標値であるかに応じて、前記第2搬送手段で受け入れた前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去し、前記情報読み取り手段で取得した前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成可能な印字形成手段とを有することを特徴とする。
【0027】
本願第9発明の無線タグ処理システムは、無線タグ通信装置と無線タグ印字装置とから構成される。無線タグ通信装置には、無線タグ回路素子と可逆性被印字領域とを備えた無線タグが受け入れられ、第1搬送手段で搬送される。無線タグ回路素子に備えられたIC回路部には、所定の情報が記憶されている。可逆性被印字領域には、第1印字が既に形成されている。無線タグ回路素子のIC回路部にはまた、上記所定の情報と第1印字とが実質的に合致しているかどうかを表す識別子も、併せて記憶されている。この識別子は、装置アンテナを介して識別子読み取り手段で取得される。また上記所定の情報は、装置アンテナを介して情報読み取り手段で取得される。
【0028】
このとき、識別子読み取り手段で読み取られる識別子は、予め、実質的に合致することを表す合致指標値か、実質的に合致しないことを表す不合致指標値かのいずれかとなっている。識別子が合致指標値であった場合は、可逆性被印字領域の第1印字の内容と、無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが、実質的に合致した状態となっている。一方、識別子が不合致指標値であった場合は、可逆性被印字領域の第1印字の内容と、無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが、実質的に合致しない状態となっている。このような状態となっている理由としては、当初は前述の合致した状態となっていたが、その後無線タグ回路素子との通信によってIC回路部内の情報のみ変更され、可逆性被印字領域の印字が変更されなかった場合が考えられる。
【0029】
このような状況に対応して、本願第1発明では、無線タグ印字装置に印字形成手段が備えられている。無線タグ通信装置から搬出された無線タグを第2搬送手段で受け入れると、その受け入れた無線タグに対し、印字形成手段が、識別子が上記合致指標値かあるいは不合致指標値であるかに応じ、可逆性被印字領域の第1印字を消去して(読み取られた所定の情報に対応した)第2印字を形成可能となっている。この結果、識別子が不合致指標値であった場合に、第1印字を消去し第2印字を形成することで、可逆性被印字領域の表示内容をIC回路部の記憶内容に合致させることが可能となる。
【0030】
これにより、無線タグの可逆性被印字領域には、IC回路部の記憶情報に対応した印字が常時表示されることになる。したがって、利用者は、無線タグの記憶情報を常に目視によって確認することができるので、利便性を向上することができる。
【0031】
上記目的を達成するために、第10発明は、シート状又はカード状に構成されたタグ媒体と、前記タグ媒体に配置され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグ回路素子と、前記タグ媒体の一方側の面に設けられ、繰り返し上書き印刷可能な可逆性被印字領域とを有する無線タグであって、所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに、当該所定の情報と前記可逆性被印字領域に形成した前記所定の印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶したことを特徴とする。
【0032】
本願第10発明の無線タグのタグ媒体には、無線タグ回路素子と可逆性被印字領域とが備えられている。無線タグ回路素子のIC回路部には情報を記憶可能であり、可逆性被印字領域に対しては上書き印刷を繰り返し行うことができる。このような場合、可逆性被印字領域の印字の内容と無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが実質的に合致していれば、利用者が無線タグの記憶情報を常に目視によって確認することができ便利である。しかしながら、IC回路部への情報の書き込みと可逆性被印字領域への印字形成をそれぞれ別個に行えるため、何らかの理由により、可逆性被印字領域の印字の内容と無線タグ回路素子のIC回路部に記憶された内容とが実質的に合致しなくなる可能性もある。その理由とは、無線タグ回路素子との通信によってIC回路部内の情報のみ変更されて可逆性被印字領域の印字が変更されなかった場合が考えられる。
【0033】
このような状況に対応して、本願第10発明では、IC回路部に、IC回路部の記憶情報と、可逆性被印字領域に形成した印字との、実質的な合致性に関する識別子を記憶している。これにより、無線タグに対し無線通信を行い、この識別子を読み取ることで、IC回路部の記憶情報と、可逆性被印字領域に形成した印字とが実質的に合致しているかどうかを容易に検出することが可能となる。この結果、それらが不合致であった場合には、適宜の印字形成手段で可逆性被印字領域の印字を消去し、(例えば別途読み取りを行って取得した)IC回路部の記憶情報に対応した印字を新たに形成することで、可逆性被印字領域の表示内容をIC回路部の記憶内容に合致させることができる。
【0034】
これにより、無線タグの可逆性被印字領域には、IC回路部の記憶情報に対応した印字が常時表示されることになる。したがって、利用者は、無線タグの記憶情報を常に目視によって確認することができるので、利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、無線タグの記憶情報を常に目視によって確認でき、利用者の利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明の無線タグ処理装置を、ICカードに対し情報書き込み及び印字するためのカード処理装置に適用したものである。
【0037】
図1に、本実施形態のカード処理装置の全体構造を示す。
【0038】
カード処理装置(無線タグ処理装置)100は、図示しない入力端末から入力したデータをICカード200(無線タグ)に対し無線通信(電磁誘導等の非接触による信号送受信を含む。以下同様)により書き込むとともに、書き込まれた情報に対応する印字(印刷)の形成を行う機能を有するものである。
【0039】
このカード処理装置100は、その前面に形成されたICカード200を挿入するための挿入口101と、後面に形成されたICカード200を排出するための排出口103(図2参照)と、挿入口101の上方に設けられ、液晶パネル等により構成される表示部102とを備えている。表示部102は、ICカードに記憶された各種情報等の各種表示を行うようになっている。
【0040】
ICカード200は、情報を記憶するためのIC回路部150と情報の送受信を行うための(この例ではループコイル形状に構成された)タグアンテナ151とを備えた無線タグ回路素子Toを内部に有しており、上述した入力データは上記IC回路部150に記憶される。また、ICカード200は、サーマルヘッド(後述するサーマルヘッド120,121)により印字の形成・消去が可能な可逆性被印字領域Sを有しており、カード処理装置100に挿入された際にはこの可逆性被印字領域Sに対し印字Rの形成が行われるようになっている。
【0041】
なお、ICカード200は、上記可逆性被印字領域Sと無線タグ回路素子Toの配置領域とが、カード厚み方向において重ならないように構成されている。これにより、無線タグ回路素子Toをサーマルヘッド(後述するサーマルヘッド120,121)による熱から保護できるようになっている。
【0042】
図2に、カード処理装置100の機能的構成を示す。なお、図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0043】
カード処理装置100は、挿入口101から搬入されたICカード200を挿入方向(図2中左方向)に搬送可能な複数の搬送ローラ110(搬送手段)と、これら複数の搬送ローラ110を駆動する搬送用モータ(例えばパルスモータ)111と、この搬送用モータ111の駆動を制御するモータ駆動回路112と、ICカード200の搬送方向と直角方向(ICカード200の幅方向)に沿うように設けられ、ICカード200における可逆性被印字領域Sに形成された印字Rの実質的な消去を行う消去用サーマルヘッド120(印字形成手段)及び可逆性被印字領域Sに所定の印字Rの形成を行う形成用サーマルヘッド121(印字形成手段)と、これらのサーマルヘッド120,121への通電を制御する印刷駆動回路122と、ICカード200に備えられる無線タグ回路素子Toとの間でHF帯等の無線通信により情報の送受信を行うループアンテナ130(装置アンテナ)と、このループアンテナ130を介し上記無線タグ回路素子Toへアクセスする(読み取り又は書き込みを行う)ための送信回路131及び受信回路132と、上記モータ駆動回路112、印刷駆動回路122、送信回路131、及び受信回路132等の制御を行う制御回路140と、ICカード200が挿入口101に挿入されたことを光学的に検出し、検出信号を上記制御回路140に出力する挿入センサ150と、前述した各種表示を行うための表示部102とを有している。制御回路140は、いわゆるマイクロコンピュータであり、図示しない入出力インターフェースを介し前述した入力端末に接続されている。
【0044】
なお、上記消去用サーマルヘッド120によって行われる印字Rの実質的な消去とは、消去用サーマルヘッド120や可逆性感熱記録層204(後述)の機能上の制約等により印字Rを完全には消去できないがICカード200の利用上問題ない程度に消去することを含むものである。さらに、消去後に形成用サーマルヘッド121で印字Rを形成した際に、当該形成された印字Rと消去前の印字Rとで重複する領域が存在するような場合をも含むものである。
【0045】
上記送信回路131は、上記ループアンテナ130を介して無線タグ回路素子Toにアクセスする(読み取り/書き込みを行う)ための搬送波を発生させるとともに、上記制御回路140から入力される制御信号に基づいて上記搬送波を変調して質問波を出力する。また、上記受信回路132は、無線タグ回路素子Toから上記ループアンテナ130を介して受信された応答波(応答信号)の復調を行い、上記制御回路140に出力する。これら送受信回路131,132と上記ループアンテナ130とは、アンテナ共用器133を介して接続されている。
【0046】
上記ループアンテナ130は、搬送ローラ110によるICカード200の搬送方向上流側(言い換えれば挿入口101側。図2中右側寄り)に配置されている。消去用サーマルヘッド120と形成用サーマルヘッド121とは、上記ICカード200の搬送方向下流側(言い換えれば排出口103側。図2中左側寄り)にこの順序で互いに近接して配置されている。ループアンテナ130の配置位置は、情報の送受信が行われるいわゆるアクセス位置で、情報の送受信時、ICカード200はアクセス位置において、無線タグ回路素子Toがループアンテナ130と略正対するように位置される。
【0047】
なお、上記ではアンテナ共用器133を用いて1つのループアンテナで情報の送受信を行うようにしたが、これに限られず、送信回路131と受信回路132とに対応してループアンテナを2つ設けるようにしてもよい。また、上記挿入センサ150としては、光学センサ以外にも、例えばメカニカルスイッチ等の機械的検出を行うものや、磁気的検出を行うセンサ等を用いてもよい。
【0048】
図3に、ICカード200の全体構造を示し、図4に、図3中IV−IV′断面による側断面を概念的に示す。なお、図4はICカード200の層構成を表すための概念的な断面図であるため、厚み方向の寸法を拡大して図示している。
【0049】
これら図3及び図4において、ICカード200は5層構造となっており、裏面側(図4中下側)より表面側(図4中上側)へ向かって、適宜の基材よりなりカード状に構成されたカード基材層201(タグ媒体)、適宜の粘着剤より構成された粘着層202、適宜の基材よりなりカード状に構成されたカード基材層203、加熱により印字Rを可逆的に形成・消去可能な可逆性感熱記録層204(可逆性感熱記録部)、この可逆性感熱記録層204を保護するとともにICカード200の表面を構成する保護層205を有している。そして、無線タグ回路素子Toは、カード基材層201及び粘着層202内に備えられるとともに、可逆性感熱記録層204に無線タグ回路素子Toの記憶情報に対応した印字R(この例では「ABCD」の文字)が形成されている。
【0050】
上記可逆性感熱記録層204は、消去用サーマルヘッド120で所定の温度に加熱されることにより、感熱粒子の配列が一様となって印字Rを消去することができる。また、形成用サーマルヘッド121で所定の配列部分が所定の温度に加熱されることにより、所望の態様に感熱粒子が配列されて印字Rの形成を行うことができるようになっている。
【0051】
なお、上記可逆性感熱記録層204はICカード200の全面に亘って設けられている。しかし、前述したように無線タグ回路素子Toの配置領域との重なりを回避するためと、サーマルヘッド120,121の設置位置との関係から、この例では、ICカード200の表面における長手方向中央部分のみが上記可逆性被印字領域Sとなっている。
【0052】
図5に、上記無線タグ回路素子Toの機能的構成を示す。なお、図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0053】
この図5において、無線タグ回路素子Toは、カード処理装置100側のループアンテナ130と非接触で信号の送受信を行う上記タグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0054】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグアンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための上記制御部157とを備えている。
【0055】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信された上記カード処理装置100のループアンテナ130からの質問波の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波として送信する。
【0056】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出して、クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0057】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0058】
上記ICカード200は、上述したように、通常は、IC回路部150に記憶している情報と印字Rとが対応しており、内容的に合致しているものである。本実施形態のカード処理装置100の特徴は、この合致性が何らかの事情により損なわれた場合に、印字Rの内容をIC回路部150の記憶内容に合わせて変化させることで、当該合致性を確保することにある。以下、その内容を順次説明する。
【0059】
図6(a)及び図6(b)に、上記ICカード200の印字Rと、IC回路部150の記憶内容とを、対比させて概念的に示す。
【0060】
図6(a)は、例えばICカード200の作成当初の状態を示している。無線タグ回路素子ToのIC回路部150には、タグIDのほかに、所定の情報「abcd」が記憶されている。そして、可逆性被印字領域Sには、IC回路部150の上記記憶情報「abcd」に実質的に対応した内容の、印字R「ABCD」が形成されている。
【0061】
一方、図6(b)には、別の状態を示している。すなわち、IC回路部150にはタグIDのほかに情報「klmn」が記憶されているのに対し、可逆性被印字領域SにはIC回路部150の情報「klmn」と合致しない印字R「ABCD」が形成されている。この図6(b)の状態は、ICカード200の作成後、何らかの理由で、無線タグ回路素子Toとの通信によってIC回路部150内の情報のみ変更され、可逆性被印字領域Sの印字Rが変更されなかった場合に生じうる。このように、可逆性被印字領域Sの印字Rが無線タグ回路素子Toの記憶情報と合致しない状態が発生することがある場合には、利用者が印字Rの表示を見ても、表示からは必ずしも無線タグ回路素子Toの記憶情報の確認には繋がらず、ICカード200の利便性が低下する。
【0062】
そこで、本実施形態では、図7(a)及び図7(b)に示すように、ICカード200の無線タグ回路素子ToのIC回路部150に記憶された情報と、可逆性被印字領域Sに形成された印字R(第1印字)とが合致しているかどうかを表すフラグF(識別子)をIC回路部150に格納するようにする。このフラグの値は、この例では、IC回路部150の記憶情報と可逆性被印字領域Sの印字Rとが実質的に対応した内容である場合を図7(a)に示すようにF=0(合致指標値)とし、対応しない内容である場合は図7(b)に示すようにF=1(非合致指標値)とする。
【0063】
以上のようにして、本実施形態では、印字内容と記憶内容との合致性をフラグの値で表す。そして、カード処理装置100で無線タグ回路素子ToのIC回路部150に情報読み取りを行ったとき、フラグがF=1であった場合には(図8(a))、可逆性被印字領域Sの印字R(第1印字)を(実質的に)消去し、IC回路部150の記憶情報に対応した印字R(第2印字)を形成する(図8(b))。なお、このときフラグにはF=0を書き込む。この結果、常に可逆性被印字領域Sの表示内容をIC回路部150の記憶内容に合致させることが可能となる。
【0064】
図9に、上記の手法を実現するためにカード処理装置100の制御回路140によって実行される制御内容を示す。
【0065】
まずステップS5で、制御回路140は、ICカード200が挿入口101から挿入されたか否かを、挿入センサ150からの検出信号に基づき判定する。ICカード200が挿入されるまで本ステップを繰り返し、挿入されるとステップS10に移る。
【0066】
ステップS10では、制御回路140は、モータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を駆動させて複数の搬送ローラ110を正転駆動させる。これにより、ICカード200が順方向(カード挿入方向。図2中左方向)に搬送される。そして、ICカード200が前述したアクセス位置まで所定距離搬送されると、制御回路140はモータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を停止させて複数の搬送ローラ110を停止させる。これにより、ICカード200の無線タグ回路素子Toは、カード処理装置100側のループアンテナ130と略正対する。
【0067】
そして、ステップS15に移り、制御回路140は、送信回路131に制御信号を出力し、無線タグ回路素子To(詳細にはIC回路部150のメモリ部155。以下同様)に記憶された情報を取得するための問い合わせ信号として、所定の変調を行った質問波をループアンテナ130を介して無線タグ回路素子Toに送信する。そして、上記問い合わせ信号に対応して無線タグ回路素子Toから返信された応答信号をループアンテナ130を介して受信し、受信回路132を介し取り込む。そして、この受信した応答信号に基づき、当該無線タグ回路素子Toに記憶された所定の情報を、タグID及びフラグFの値とともに取得する(情報読み取り手段、識別子読み取り手段)。
【0068】
ステップS20では、制御回路140は、上記ステップS15で無線タグ回路素子Toから読み取った情報中のフラグF=1であるか否かを判定する。IC回路部150に記憶された情報の内容とICカード200の可逆性被印字領域Sに形成された第1印字Rの内容とが実質的に合致している場合、後述のようにフラグF=0であることから判定が満たされず、(可逆性被印字領域Sの印字Rを書き換えず)そのまま本ルーチンを終了する。
【0069】
一方、IC回路部150に記憶された情報の内容とICカード200の可逆性被印字領域Sに形成された第1印字Rの内容とが実質的に合致していない場合、後述のようにフラグF=1であることから判定が満たされ、ステップS25に移る。
【0070】
ステップS25では、制御回路140は、送信回路131に制御信号を出力し、ステップS15で読み取ったタグIDを指定して、所定の変調を行った質問波をループアンテナ130を介して無線タグ回路素子Toに送信し、IC回路部150に記憶されたフラグに「0」を代入する(識別子書き込み手段)。これにより、IC回路部150にフラグ=0を書き込む処理が終了し、ステップS30に移行する。
【0071】
ステップS30では、制御回路140はモータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を駆動して複数の搬送ローラ110を回転駆動し、ICカード200の搬送を再開する。
【0072】
ステップS35では、制御回路140は、印刷駆動回路122に制御信号を出力し、消去用サーマルヘッド120及び形成用サーマルヘッド121を用いて印字消去・形成処理を行う。すなわち、消去用サーマルヘッド120でICカード200の可逆性被印字領域Sに形成されている印字RをICカード200の搬送方向前端から後方側へと順次消去していき、次いで消去が完了した部分に対し、形成用サーマルヘッド121で上記ステップS15で読み込んだ所定情報に対応した印字R(第2印字)を順次形成していく。そしてこの印字消去・形成処理が終了すると本フローが終了する、
【0073】
上記において、ステップS20及びステップS35が、各請求項記載の印字制御手段を構成する。また、それらステップS20及びステップS35を含む、ステップS10、ステップS15、ステップS20、ステップS25、ステップS30、ステップS35は、各請求項記載の連携制御手段を構成する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態においては、無線タグ回路素子ToのIC回路部150に記憶された情報と印字Rとが実質的に合致しているかどうかを表すフラグをIC回路部150に記憶させている。無線タグ回路素子Toに対し読み取りを行った際にフラグF=1であった場合(可逆性被印字領域Sの印字Rの内容とIC回路部150に記憶された内容とが実質的に合致しない場合)は、サーマルヘッド120で可逆性被印字領域Sの印字Rを消去し、上記読み取りによって取得した情報に対応した印字Rをサーマルヘッド121で形成する。
【0075】
これにより、可逆性被印字領域Sの表示内容をIC回路部150の記憶内容に合致させることができる。これにより、ICカード200の可逆性被印字領域Sには、IC回路部150の記憶情報に対応した印字Rが常時表示されることになる。したがって、利用者は、ICカード200の印字Rにより記憶情報を常に目視によって確認することができるので、利便性を向上することができる。
【0076】
また、本実施形態では特に、上記のようにして可逆性被印字領域Sの印字表示内容を(IC回路部150の記憶情報の内容に合致させた)印字Rに変えた後は、フラグF=0とすることで、これ以降、ICカード200の可逆性被印字領域Sの印字内容がIC回路部150の記憶情報と合致していることを確実に示すことができる。
【0077】
また、本実施形態では特に、ICカード200の可逆性被印字領域Sに対し、サーマルヘッド120で印字Rの消去を行い、サーマルヘッド121で印字Rの形成を行う。すなわち、サーマルヘッド120を消去用に特化した専用ヘッド、サーマルヘッド121を印字形成用に特化した専用ヘッドとすることができるので、1つのサーマルヘッドで消去機能と印字形成機能とを兼ねたのとは違って、消去性能と印字形成性能をそれぞれ向上することができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0079】
(1)印字消去・形成が可能な1つのサーマルヘッドを有する場合
上記実施形態では、カード処理装置100が、消去用サーマルヘッド120及び形成用サーマルヘッド121の2つのサーマルヘッドを有する構成としたが、これに限られず、印字の消去と印字の形成との両方を行う1つのサーマルヘッドを設けてもよい。
【0080】
図10に、本変形例のカード処理装置100Aの機能的構成を示す。なお、図2と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。なお、図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0081】
カード処理装置100Aは、ICカード200の搬送方向と直角方向(ICカード200の幅方向)に沿うように設けられ、ICカード200における可逆性被印字領域Sに形成された印字Rの実質的な消去及び所定の印字Rの形成の両方を行う消去・形成用サーマルヘッド123(印字形成手段)と、この消去・形成用サーマルヘッド123による印字消去・形成や搬送ローラ110等の制御(後述の図11参照)を行う制御回路140Aとを有している。上記消去・形成用サーマルヘッド123は、前述の実施形態と同様に印刷駆動回路122によって通電を制御される。
【0082】
上記消去・形成用サーマルヘッド123は、挿入口101側(言い換えれば、後述する順方向→逆方向の一連の搬送方向に沿った上流側)に配置され、その消去・形成用サーマルヘッド123より反挿入口101側(言い換えれば、後述する順方向→逆方向の一連の搬送方向に沿った下流側)に、前述のループアンテナ130(装置アンテナ)が配置されている。
【0083】
上記ループアンテナ130の配置位置は、情報の送受信時、ICカード200の無線タグ回路素子Toが略正対されるアクセス位置である。カード挿入口101はICカード200の排出口を兼ねており、カード挿入口101から挿入されたICカード200に対し、カード挿入方向(順方向)とカード挿入方向とは反対方向(逆方向)の往復の搬送が2回行われ、カード200がカード挿入口101から排出される。そして、このICカード200の往復の搬送における上記搬送方向に沿った上流側でループアンテナ130を介した無線通信によりタグ読み取り処理をし、ICカード200の上記搬送方向に沿った下流側で消去・形成用サーマルヘッド123により印字消去及び印字形成を行うようになっている。
【0084】
すなわち、本変形例では、IC回路部150の記憶情報の内容と可逆性被印字領域Sの印字R(第1印字)の内容が不合致だった場合には、ICカード200を上記逆方向に搬送しながら、消去・形成用サーマルヘッド123で印字R(第1印字)の搬送方向前端から後方側へと順次消去を行っていく。こうして印字Rが搬送方向後端まで消去し終わったら、(この時点で消去・形成用サーマルヘッド123が可逆性被印字領域Sの搬送方向後方側に位置しているから)新たにIC回路部150の記憶情報に対応した印字R(第2印字)を可逆性被印字領域Sの搬送方向前方側から印字するために、ICカード200を上記順方向に所定距離だけ搬送する。これにより、可逆性被印字領域Sのうち印字の搬送方向前端に相当する部分(印字開始部分)に、消去・形成用サーマルヘッド123を対向させ、その後ICカード200を再び上記逆方向に搬送し、消去・形成用サーマルヘッド123で印字R(第2印字)を搬送方向前端から後方側へと順次形成していく。
【0085】
図11に、上記の挙動を実現するために本変形例の制御回路140Aによって行われる制御内容を示す。
【0086】
図11において、ステップS105、ステップS110、ステップS115(情報読み取り手段、識別子読み取り手段)、ステップS120、及びステップS125(識別子書き込み手段)は、前述の図7のステップS5、ステップS10、ステップS15、ステップS20、及びステップS25とほぼ同様である。すなわち、制御回路140Aは、ICカード200が挿入されると搬送ローラ110を正転駆動させてICカード200をアクセス位置まで搬送し、無線タグ回路素子Toに対し情報の読み取りを行う。そして、読み取った情報中のフラグの判定を行う(フラグF=1であった場合にはその後フラグをF=0に書き換える)。
【0087】
そして、ステップS125の後のステップS130では、制御回路140は、モータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を駆動させて複数の搬送ローラ110を逆転駆動させる。これにより、ICカード200を排出方向(図10中右方向)へ搬送する逆方向搬送が開始される。
【0088】
その後、ステップS135で、制御回路140Aは、印刷駆動回路122に制御信号を出力し、消去・形成用サーマルヘッド123を用いて印字R(第1印字)の消去を行う。
【0089】
そして、ステップS140に移り、制御回路140Aは、モータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を駆動させて複数の搬送ローラ110を正転駆動させる。これにより、ICカード200が再度順方向(カード挿入方向。図10中左方向)に搬送される。このような搬送方向切り替えが必要であるのは、1つのサーマルヘッド123で同一の可逆性被印字領域Sに対し印字R(第1印字)の消去と印字R(第2印字)の形成とを行うからである。そして、所定距離(消去・形成用サーマルヘッド123が少なくともICカード200の可逆性被印字領域Sの印字開始位置(図10中右端)に到達するまでの距離)搬送されると、制御回路140Aはモータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を停止させて複数の搬送ローラ110を停止させる。
【0090】
次のステップS145では、制御回路140Aは、上記ステップS130と同様にして、モータ駆動回路112に制御信号を出力し、搬送用モータ111を駆動させて複数の搬送ローラ110を逆転駆動させる。これにより、ICカード200の排出方向(図10中右方向)への逆方向搬送が再度開始される。
【0091】
次のステップS150では、制御回路140Aは、印刷駆動回路122に制御信号を出力し、消去・形成用サーマルヘッド123を用いて上記ステップS115で読み取った所定情報に対応した印字R(第2印字)を形成する。これにより、本フローを終了する。
【0092】
上記において、ステップS120、ステップS135、ステップS150は、各請求項記載の印字制御手段を構成する。また、それらステップS120、ステップS135、ステップS150を含む、ステップS110、ステップS115、ステップS120、ステップS125、ステップS130、ステップS135、ステップS140、ステップS145、ステップS150は、各請求項記載の連携制御手段を構成する。
【0093】
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は変更等をしてもよい。
【0094】
以上説明した変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。またこれに加え、1つのサーマルヘッド123が消去機能と印字形成機能とを兼ねることで、上記実施形態のように消去用と印字形成用に合計2つのヘッドを設ける場合よりも省スペース化及びコスト低減を図ることができる。
【0095】
(2)その他
以上では、カード処理装置100が搬送ローラ110を備え、挿入されたICカード200を(挿入方向及び排出方向に)搬送する構成としたが、カードの搬送を必ずしも行う必要はない。すなわち、カード処理装置100において、利用者が挿入口101にICカード200を差し込むと、無線タグ回路素子Toとループアンテナ130が略正対する位置となり、情報の送受信が行われ、また消去・形成用サーマルヘッド123によりICカード200が停止した状態で可逆性被印字領域Sの印字消去・形成が行われる(搬送手段のない)構成としてもよい。そして、処理終了後に利用者がICカード200を引き抜くようにすればよい。このような構成とすることで、カード処理装置100に搬送ローラ110や搬送駆動制御が不要となり、構成及び制御を簡素化することができる。
【0096】
また以上では、無線タグ回路素子Toを配置するタグ媒体としてカードを例にとって説明したが、これに限られず、ラベル状又はシート状のタグ媒体を用いてもよい。
【0097】
なお、本発明の無線タグ通信装置を適用したカード処理装置は、ICカード200に対し通信を行う機能(無線タグ通信装置としての機能)と、ICカード200に対し印字を行う機能(無線タグ印字装置としての機能)とを併せて持っていたが、本発明は、これに限られない。すなわち、上記機能ごとに別個の装置として備える(無線タグ通信装置と無線タグ印字装置とを備える)、カード処理システム(無線タグ処理システム)としてシステム化することもできる。
【0098】
この場合、図示は省略するが、上記無線タグ通信装置は、情報を記憶するIC回路部150と情報の送受信を行うタグアンテナ151とを有する無線タグ回路素子Toを配置するとともに可逆性被印字領域Sに第1印字Rを形成したICカード200を、受け入れて搬送する第1搬送手段と、所定の情報をIC回路部150に記憶するとともに当該所定の情報と第1印字Rとの実質的な合致性に関するフラグをIC回路部150に記憶した、ICカード200の無線タグ回路素子Toに対し、無線通信により情報を送受信するための装置アンテナと、該装置アンテナを介し、IC回路部150からフラグを読み取って取得する識別子読み取り手段と、装置アンテナを介し、IC回路部150から前記所定の情報を読み取って取得する情報読み取り手段とを有する構成となる。
【0099】
また、上記無線タグ印字装置は、上記無線タグ通信装置から搬出されたICカード200を受け入れて搬送する第2搬送手段と、無線タグ通信装置の前記識別子読み取り手段で取得したフラグが合致指標値(「0」)であるか非合致指標値(「1」)であるかに応じて、第2搬送手段で受け入れたICカード200の可逆性被印字領域Sの第1印字Rを実質的に消去し、前記情報読み取り手段で取得した前記所定の情報に対応した内容の第2印字を可逆性被印字領域Sに形成可能な印字形成手段とを有する構成となる。
【0100】
このようなカード処理システムによっても、上記実施形態のカード処理装置と同様な作用効果を奏する。すなわち、ICカード200の可逆性被印字領域Sに、IC回路部150の記憶情報に対応した印字Rが常時表示されるようにすることによって、利用者は、ICカード200の記憶情報を常に目視によって確認することができるので、利便性を向上することができる。
【0101】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0102】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の一実施形態のカード処理装置の全体構造を表す斜視図である。
【図2】カード処理装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】ICカードの全体構造を表す平面図である。
【図4】図3中IV−IV′断面による側断面図である。
【図5】無線タグ回路素子の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図6】ICカードの印字とIC回路部の記憶内容とを対比させて概念的に示す説明図である。
【図7】ICカードの印字とIC回路部の記憶内容とを対比させて概念的に示す説明図である。
【図8】ICカードの印字とIC回路部の記憶内容とが合致してない場合の処理を概念的に示す説明図である。
【図9】制御回路によって行われる制御内容を表すフローチャートである。
【図10】1つのサーマルヘッドを用いる変形例におけるカード処理装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図11】制御回路によって行われる制御内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
100 カード処理装置(無線タグ処理装置)
100A カード処理装置(無線タグ処理装置)
110 搬送ローラ(搬送手段)
120 消去用サーマルヘッド(印字形成手段)
121 形成用サーマルヘッド(印字形成手段)
123 消去・形成用サーマルヘッド(印字形成手段)
130 ループアンテナ(装置アンテナ)
150 IC回路部
151 タグアンテナ
200 ICカード(無線タグ)
201 カード基材層(タグ媒体)
204 可逆性感熱記録層(可逆性感熱記録部)
F 識別子
S 可逆性被印字領域
To 無線タグ回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを有する無線タグ回路素子を配置するとともに可逆性被印字領域に第1印字を形成した無線タグの前記第1印字を消去し、再印字可能な印字形成手段と、
所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに当該所定の情報と前記第1印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶した、前記無線タグの前記無線タグ回路素子に対し、無線通信により情報を送受信するための装置アンテナと、
前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記所定の情報を読み取って取得する情報読み取り手段と、
前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記識別子を読み取って取得する識別子読み取り手段とを備え、
前記印字形成手段は、
前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が合致指標値であるか非合致指標値であるかに応じて、前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去し、前記情報読み取り手段で取得した前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成する
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ処理装置において、
前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記合致指標値であった場合には、前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に保持し、前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記非合致指標値であった場合には、前記搬送手段で受け入れた前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去するとともに、前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成するように、前記印字形成手段を制御する、印字制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の無線タグ処理装置において、
前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が前記非合致指標値であった場合には、前記印字形成手段で前記第1印字を消去させる前記印字制御手段の制御に連動し、前記装置アンテナを介し前記IC回路部に前記合致指標値の前記識別子を書き込む識別子書き込み手段を有する
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の無線タグ処理装置において、
前記無線タグを受け入れて搬送する搬送手段を備え、
前記装置アンテナは、前記搬送手段の搬送方向に沿って、前記印字形成手段より上流側に設けられている
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線タグ処理装置において、
前記無線タグ回路素子が前記装置アンテナの近傍に位置するような上流側搬送位置に前記無線タグを搬送し、前記識別子の取得、前記所定の情報の取得、及び前記合致指標値の書き込みを行った後、さらに前記無線タグを搬送方向下流側に搬送して、前記第1印字の消去及び前記第2印字の形成を行うように、前記搬送手段、前記識別子読み取り手段、前記情報読み取り手段、前記識別子書き込み手段、及び前記印字形成手段を連携して制御する連携制御手段を有する
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の無線タグ処理装置において、
前記印字形成手段は、
前記無線タグに前記可逆性被印字領域として備えられた可逆性感熱記録部に対し、前記第1印字の消去及び前記第2印字の形成が可能な、少なくとも1つのサーマルヘッドである
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の無線タグ処理装置において、
前記印字形成手段は、
前記第1印字の消去と前記第2印字の形成との両方を行う消去・形成用サーマルヘッドである
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項8】
請求項6記載の無線タグ処理装置において、
前記印字形成手段は、
前記第1印字の消去を行う消去用サーマルヘッドと、
前記第2印字の形成を行う形成用サーマルヘッドとを備える
ことを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項9】
無線タグに対し通信を行う無線タグ通信装置と、無線タグに対し印字を行う無線タグ印字装置とを有する無線タグ処理システムであって、
前記無線タグ通信装置は、
情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを有する無線タグ回路素子を配置するとともに可逆性被印字領域に第1印字を形成した前記無線タグを、受け入れて搬送する第1搬送手段と、
所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに当該所定の情報と前記第1印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶した、前記無線タグの前記無線タグ回路素子に対し、無線通信により情報を送受信するための装置アンテナと、
前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記識別子を読み取って取得する識別子読み取り手段と、
前記装置アンテナを介し、前記IC回路部から前記所定の情報を読み取って取得する情報読み取り手段と
を有し、
前記無線タグ印字装置は、
前記無線タグ通信装置から搬出された前記無線タグを受け入れて搬送する第2搬送手段と、
前記無線タグ通信装置の前記識別子読み取り手段で取得した前記識別子が合致指標値であるか非合致指標値であるかに応じて、前記第2搬送手段で受け入れた前記無線タグの前記可逆性被印字領域の前記第1印字を実質的に消去し、前記情報読み取り手段で取得した前記所定の情報に対応した内容の第2印字を前記可逆性被印字領域に形成可能な印字形成手段とを有する
ことを特徴とする無線タグ処理システム。
【請求項10】
シート状又はカード状に構成されたタグ媒体と、
前記タグ媒体に配置され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグ回路素子と、
前記タグ媒体の一方側の面に設けられ、繰り返し上書き印刷可能な可逆性被印字領域と
を有する無線タグであって、
所定の情報を前記IC回路部に記憶するとともに、当該所定の情報と前記可逆性被印字領域に形成した前記所定の印字との実質的な合致性に関する識別子を前記IC回路部に記憶した
ことを特徴とする無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−237693(P2009−237693A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80286(P2008−80286)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】