説明

無線タグ通信システム及び画像形成装置

【課題】カートリッジに収納されているトナーの種類を判別すること。
【解決手段】アンテナ203は無線タグに対して質問信号を出力し、無線タグから出力された応答信号を受信する。強度検出回路206は応答信号の信号強度を検出する。制御部180は検出された信号強度からカートリッジに収納されているトナーの種類、又は認定品であるか否かを判別する。更に制御部180は、無線タグと正常に無線通信が行えるように、質問信号の信号強度を変化させる指示信号を出力設定回路207に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーカートリッジに取り付けられた無線タグと無線通信を行うための無線タグ通信システム及びそのトナーカートリッジを着脱自在に装着できる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トナーとキャリアからなる二成分現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像装置を備えたプリンタやファクシミリ、複写機等の画像形成装置は、装置本体に装着されたカートリッジから供給されるトナーを用いて静電潜像をトナー像化し、このトナー像を用紙等に転写することによって画像形成を行う。そして、カートリッジ内のトナーがなくなると、ユーザによって新しいカートリッジに交換されることにより、画像形成装置内にトナーが補充される。
【0003】
この場合、新しく交換されたカートリッジが画像形成装置のメーカの正規純正品又はメーカに認定された製品(以下、まとめて「認定品」と言う)であれば問題ないが、認定品以外のカートリッジ(非認定品)が使用されるケースが見受けられるようになってきた。認定品以外のカートリッジが使用されると、画像形成装置の性能が十分に発揮されないばかりでなく、画像形成装置の故障の原因にもなり得る。
【0004】
そこで、近年開発された多くの画像形成装置では、特許文献1に記載されているようなRFID(Radio Frequency Identification:無線自動認識)技術等を利用してカートリッジの管理が行われている。具体的には、カートリッジやトナーの情報をタグ情報として記憶した無線タグがカートリッジに取り付けられ、カートリッジ装着後、画像形成装置本体側に配設された通信ユニットがタグ情報を読み取ることによって、装着されたカートリッジが認定品であるかを識別することができる。
【特許文献1】特許第3529012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、認定品のカートリッジの無線タグに記憶されているタグ情報と同じタグ情報を非認定品のカートリッジの無線タグに記憶させてしまうと、装置側に認定品のカートリッジが装着されたと認識させることができる。従って、カートリッジの無線タグに記憶された情報だけでは、カートリッジに実際に収納されているトナーが認定品であるか否かを判別することは難しい。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、カートリッジに収納されているトナーの種類を判別することができる無線タグ通信システム及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明の無線タグ通信システムは、トナー収納体に取り付けられた無線タグと、前記無線タグに対して質問信号を出力し、前記質問信号に応答した応答信号を前記無線タグから受信することで無線通信を行う通信手段と、前記応答信号の信号強度を検出する検出手段と、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記無線タグから出力された応答信号の信号強度から前記トナー収納体に収納されているトナーの種類を判別する判別手段と、を備える。
【0008】
トナー収納体に取り付けられている無線タグは、トナーに含まれる金属(磁性体)の影響を受けやすく、トナー収納体に収納されるトナーの種類が変わると、無線タグが有する共振回路の共振周波数が変化することが一般的に知られている。つまりトナーの影響により無線タグから出力される応答信号の周波数が変化すると、通信手段が受信する応答信号の強度が低下してしまう。この点を利用して、応答信号の信号強度からカートリッジに収納されているトナーの種類を判別することができる。従って、認定品のトナー収納体の無線タグに記憶されたタグ情報を非認定品のトナー収納体の無線タグに記憶させた場合でも、タグ情報によらずにトナーの種類を判別できる。
【0009】
ここで、「認定品」とは、メーカの正規純正品又はメーカに認定された製品をいい、認定品以外の製品を「非認定品」という。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線タグ通信システムであって、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記無線タグから出力される応答信号の信号強度をトナーの種類に対応付けて記憶する種類別信号強度記憶手段を更に備え、前記判別手段は、前記種類別信号強度記憶手段に記憶されている応答信号の信号強度のうち、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記検出手段によって検出された応答信号の信号強度と一致する信号強度に対応付けて記憶されているトナーの種類を、前記トナー収納体に収納されているトナーの種類とするものである。
【0011】
この発明によれば、トナーに含まれる磁性体による無線タグの共振回路の特性変化を利用して、応答信号の信号強度からカートリッジに収納されているトナーの種類を判別することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の無線タグ通信システムであって、前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うことができるときの前記応答信号の信号強度を設定強度として記憶する設定強度記憶手段を更に備え、前記判別手段は、前記トナー収納体に収納されているトナーが認定品又は非認定品の何れであるかを判別するものであり、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記検出手段によって検出された応答信号の信号強度が前記設定強度記憶手段に記憶されている設定強度以上のとき、前記トナー収納体に収納されているトナーが認定品であると判別するものである。
【0013】
この発明によれば、トナーに含まれる磁性体による無線タグの共振回路の特性変化を利用して、応答信号の信号強度からカートリッジに収納されているトナーが認定品であるか否かを判別することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の無線タグ通信システムであって、前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うことが可能な前記質問信号の強度を決定して前記質問信号の信号強度を可変する強度可変手段を更に備える。
【0015】
この発明によれば、通信手段が受信する応答信号の信号強度に応じて、質問信号の信号強度を可変することができる。質問信号の信号強度に応じて応答信号の信号強度も変化することから、大きな信号強度の応答信号を得たいときは、相当の信号強度を持つ質問信号を出力すればよい。こうすることにより、安定的に無線通信を行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の無線タグ通信システムであって、前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うことが可能な前記質問信号の周波数を決定して前記質問信号の周波数を可変する周波数可変手段を更に備えるものである。
【0017】
この発明によれば、通信手段が受信する応答信号の周波数に応じて、質問信号の周波数を可変することができる。例えば、トナーの影響を受けて、応答信号の周波数が変化した場合、その変化に応じて質問信号の周波数を可変することにより、無線タグは質問信号を正常に受信することができ、安定的に無線通信を行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の無線タグ通信システムであって、表示手段の表示制御を行う表示制御手段を更に備え、前記表示制御手段は、前記判別手段によって判別されたトナーの種類に応じて、前記表示手段に対してメッセージを表示させるものである。
【0019】
トナーが非認定品である場合、無線タグ通信システムを搭載している装置の性能を悪化させる可能性があるため、保証されている画像品質を維持できない可能性がある。そこで、判別結果に応じて表示手段にメッセージを表示させることによって、その旨ユーザに知らせることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明の画像形成装置は、請求項1〜6の何れか一項に記載の無線タグ通信システムと、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を備えたものである。
【0021】
この発明によれば、請求項1〜6と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、トナーに含まれる磁性体による無線タグの共振回路の特性変化を利用して、応答信号の信号強度からカートリッジに収納されているトナーの種類、又は認定品であるか否かを判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。尚、本実施の形態では画像形成装置としてプリンタを例に説明するが、この他に複写機やファクシミリ等、磁性体を含むトナーを用いて印刷を行う画像形成装置であればよい。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本実施の形態におけるプリンタ1の内部構成を概略的に示す断面図である。プリンタ1は、給紙部8、画像形成部2、転写部9、定着部11、用紙排出トレイ12、表示パネル150等より構成される。
【0025】
画像形成部2は、感光体ドラム3、帯電部4、露光部5、現像部6、クリーニング部7等を備える。感光体ドラム3は、トナー像が形成される像担持体である。帯電部4は、感光体ドラム3上に均一に帯電をさせる。露光部5は、均一に帯電がされた感光体ドラム3の周面に露光をして、静電潜像を形成させる。現像部6は、形成された静電潜像を顕画化させて、トナー像を作る。このようにして作られたトナー像が転写部9により、記録紙に転写される。クリーニング部7は、転写が完了した後に、感光体ドラム3の表面に残留しているトナーを除去する。
【0026】
転写部9は、転写ローラ91を備え、転写ローラ91を感光体ドラム3に押し付けた状態で、感光体ドラム3上に形成されたトナー像を、搬送路83から搬送されてくる記録紙へと転写させる。給紙部8は、給紙カセット81、ピックアップローラ82、搬送路83、搬送ローラ84等を備え、給紙カセット81に積載された記録紙を、画像形成部2及び転写部9の側(下流側)へと給紙する。
【0027】
定着部11は、画像形成部2と転写部9との下流側に設けられ、ヒートローラ11a及び圧ローラ11bを有している。定着部11は、記録紙に転写されたトナー像の定着処理を行う。定着部11のさらに下流側には、搬送ローラ86と、排出ローラ87と、搬送路85等が設けられ、定着部11で定着処理がされた記録紙は、これらのローラによって搬送路85をさらに下流側へと搬送されて、プリンタ1上部の用紙排出トレイ12へと排出される。表示パネル150は、後述する表示制御部180による制御に応じて種々のメッセージや画像を表示する。
【0028】
図2は、現像部6の詳細な構成を示す断面図である。現像部6は、トナー(現像剤)を収納するカートリッジ61、及び現像ローラ621等を備えた現像ユニット62から構成されており、汲み上げローラ622や供給ローラ623の回転駆動によりカートリッジ61のトナーを攪拌部へ供給し、攪拌ローラ611(攪拌スクリュウ)の回転駆動によってトナーを現像ローラ621へ供給する。現像ローラ621の外周部には現像スリーブ6211が設けられており、この現像スリーブ6211には現像バイアスが印加されており、攪拌部でプラスに帯電されたトナーを、感光体ドラム3表面の露光部分(露光により静電気が除去されてなる静電潜像の部分)に吸着させる。現像部6は、カートリッジ61が現像ユニット62に対して着脱自在に装着できるように構成されている。
【0029】
図3は、図2における現像部6の符号Aで示す範囲の部分拡大図である。装着されたカートリッジ61の下部の構成を詳細に示してある。カートリッジ61の一側壁部には無線タグ101が、現像ユニット62の一側壁部には通信ユニット102が、それぞれ取り付けられている。カートリッジ61が装着されると、これら無線タグ101と通信ユニット102とは所定の距離(例えば約5mm)を隔てて対向する。
【0030】
無線タグ101は、通信ユニット102との無線通信を行う。無線タグ101は電磁波を使ってデータを送受信することが可能な半導体チップ(無線ICチップ)を備え、通信ユニット102からの電磁波によって起電力を発生し(電磁誘導の原理に基づく)、この電力によって回路を駆動させて通信ユニット102から出力された質問信号に対する応答信号を出力する。
【0031】
通信ユニット102は、所定の信号強度で、所定の通信周波数(例えば、13.56[MHz])の質問信号を出力して無線タグ101と無線通信を行う。尚、本実施の形態では、無線タグ101と通信ユニット102は、13.56[MHz]の周波数帯を利用するものとして説明する。
【0032】
図4は、本実施の形態におけるプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ1は、制御部180、記憶部110、通信ユニット102、画像メモリ120、画像処理部130、画像形成部2、入力操作部140、表示パネル150及びネットワークI/F部160を備えて構成されている。尚、図1を用いて説明した構成要素と同じものには同符号を付して、説明を省略する。
【0033】
制御部180は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等によって構成され、記憶部110に記憶されたプログラムを読み出して処理を実行し、各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行ってプリンタ1を統括的に制御するものである。制御部180は、信号強度決定部181、トナー種類判別部182及び表示制御部183を有する。各部の詳しい説明は、図5を用いて後述する。
【0034】
記憶部110は、プリンタ1の備える種々の機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶する。本実施の形態では記憶部110はトナー種類別信号強度記憶部111及び設定強度記憶部112として機能する。トナー種類別信号強度記憶部111は、通信ユニット102から予め定められた周波数の質問信号が出力されたときに無線タグ101から出力される応答信号の信号強度を非認定品のトナーの種類(例えば、非認定品のトナーのメーカ別)に対応付けて記憶する。このトナー種類別信号強度記憶部111に記憶されるデータは、工場出荷前等に各メーカのトナーカートリッジをプリンタ1に装着し、そのときの応答信号の信号強度を測定して予め記憶したものである。
【0035】
設定強度記憶部112は、通信ユニット102に含まれるアンテナから出力される質問信号の信号強度について、予め定められた強度(設定強度)を記憶する。設定強度の詳細については後述する。
【0036】
画像メモリ120は、ネットワークI/F部160を介して外部装置から送信された画像データを一時的に記憶する。画像処理部130は、画像メモリ120に記憶されている画像データに対して画像補正や拡大・縮小等の画像処理を施す。画像形成部2は、画像メモリ120から出力された画像データに基づいてトナー像を形成する。入力操作部140は、プリンタ1の電源のオン/オフ操作を行う電源キー、印刷ジョブをリセットするリセットキー等を備える。ネットワークI/F部160は、LANボード等の通信モジュールから構成され、ネットワークI/F部160と接続されたネットワーク(不図示)を介して外部装置と種々のデータの送受信を行う。
【0037】
図5は、通信ユニット102の電気的構成を示すブロック図である。通信ユニット102は、変調回路202、アンテナ203、検波回路204、復調回路205、強度検出回路206及び出力設定回路207等を有し、制御部180の制御によって動作する。
【0038】
変調回路202は、制御部180から出力される無線タグ101に対するコマンド情報に応じて搬送波を変調する。アンテナ203は変調波を質問信号として送信し、無線タグ101から送信された応答信号を受信する。アンテナ203は受信した応答信号を電気信号に変換して検波回路204へ出力する。検波回路204は、変調されていない電気信号を復調して情報を抽出し、抽出した情報を制御部180へ出力する。復調回路205は変調された電気信号を復調して情報を抽出し、抽出した情報を制御部180へ出力する。
【0039】
強度検出回路206は、応答信号の信号強度を検出し、検出結果を制御部180へ出力する。図6及び7は、応答信号の周波数と信号強度との関係を示すグラフである。ここで、カートリッジ61には、十分な量のトナー(例えば、工場出荷時の量)を収納されていることとし、無線タグ101とアンテナ203の位置関係は、無線通信が正常に行われる距離にあることとする。
【0040】
図6のグラフG1は、カートリッジ61に収納されているトナーが認定品である場合のグラフであり、応答信号は13.56[MHz]をピーク値とした信号となっている。図7のグラフG2は、カートリッジ61に収納されているトナーが非認定品である場合のグラフであり、応答信号は13.2[MHz]をピーク値とした信号となっている。
【0041】
トナーから近い位置に配置されている無線タグ101は、トナーに含まれる金属(磁性体)の影響を受けやすく、カートリッジ61に収納されるトナーの種類が変わると、無線タグ101が有する共振回路の特性(共振周波数等)が変化することが一般的に知られている。つまり、カートリッジ61に収納されているトナーが認定品である場合と非認定品である場合とでは、応答信号の周波数のピーク値が異なってくる。
【0042】
このことから次のことが言える。通信ユニット102側においては、アンテナ203の共振周波数は13.56[MHz]であり、この共振周波数からはずれるに従って、アンテナ203によって受信される信号の強度は弱くなる。一方、無線タグ101側においては、カートリッジ61に認定品のトナーが収納されている場合、無線タグ101は13.56[MHz]の応答信号を出力する。従って、アンテナ203は、信号強度が100%の応答信号を受信することができる。
【0043】
しかし、カートリッジ61に非認定品のトナーが収納されている場合、無線タグ101の共振回路に対する影響が変化し、図7に示すように、無線タグ101は13.2[MHz]の応答信号を出力する。この場合、アンテナ203の共振周波数からはずれるため、図6に示すように、アンテナ203は、13.56[MHz]の応答信号を受信したときに比べて、88%の信号強度の応答信号しか受信できない。アンテナ203が受信する応答信号の信号強度が十分でないと、無線通信が正常に行われず、タグ情報が正確に読み取れない等の通信エラーが発生する。また、非認定品のトナーが使用されると、記録紙に形成される画像品質を悪化させる場合があり、プリンタとしての性能を低下させる原因となっていた。
【0044】
そこで、本発明では、アンテナ203が受信した応答信号の信号強度から、トナーの種類を判別、又は認定品か非認定品であるかを判別する方法を提案する。具体的には、強度検出回路206がアンテナ203の受信した応答信号の信号強度を検出し、制御部180のトナー種類判別部182が、検出された応答信号の信号強度とトナー種類別記憶部111に記憶されている信号強度を比較して、一致する信号強度に対応付けて記憶されているトナーの種類を抽出し、抽出されたトナーの種類がカートリッジ61に収納されているトナーであると判断する。又は、トナー種類判別部182が、応答信号の信号強度と設定強度記憶部112に記憶されている設定強度を比較し、応答信号の信号強度が設定強度以上であるとき、カートリッジ61に収納されているトナーが認定品であると判別する。
【0045】
以下、トナー種類判別部182がカートリッジ61に収納されているトナーが認定品か非認定品であるかを判別する場合について説明する。例えば、無線タグ101から13.2[MHz]の応答信号が出力されたとする。そして、設定強度記憶部112に記憶されている設定強度が90%であるとする。このとき、図6に示すグラフによると、アンテナ203によって受信される応答信号は、13.56[MHz]の応答信号を受信したときと比較して信号強度が88%低下することになり、従って、強度検出回路206の検出結果は88%となる。つまり、応答信号の信号強度が設定強度の90%より小さいため、トナー種類判別部182はカートリッジ61に収納されているトナーは非認定品であると判断する。尚、設定強度記憶部112に記憶される設定強度は、タグ情報を正確に読み出すことができる程度の応答信号の信号強度をもって設定される。
【0046】
トナー種類判別部182によってトナーが非認定品であると判別されたとき、表示制御部183は表示パネル150にトナーが非認定品であり、保証されている品質で画像形成が行えない場合がある旨を示すメッセージを表示させる。これにより、ユーザは、プリンタ1に装着したカートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であること、又は他社のプリンタ向けのカートリッジを誤装着したことに気付くことができる。
【0047】
また、トナーが非認定品であると判別されたとき、信号強度決定部181は、アンテナ203から出力される質問信号の信号強度を無線通信が正常に行われる強度に設定し、設定した信号強度を出力設定回路207に対して出力する。例えば、カートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であり、無線タグ101から13.2[MHz]の応答信号が出力されたとする。このとき、強度検出回路206による応答信号の信号強度の検出結果は、上述したように88%である。そこで、信号強度決定部181は、100%の信号強度の応答信号を得るには12%以上大きくする必要があると判断する。従って、信号強度決定部181は信号強度を12%大きくする指示を出力設定回路207に出す。出力設定回路207は信号強度決定部181から出力された指示に応じて質問信号の信号強度を変化させ、これによりアンテナ203から信号強度の変化した質問信号が出力される。
【0048】
尚、信号強度決定部181は、応答信号の信号強度が設定強度になるように質問信号の信号強度を決定してもよい。つまり、上記の例の場合、応答信号の信号強度は88%、設定強度は90%であるため、信号強度決定部181は信号強度を2%大きくする指示を出力設定回路207に出力する。
【0049】
無線タグ101は質問信号の信号強度に応じて応答信号の信号強度を変化させて出力する。つまり、アンテナ203が信号強度の大きい質問信号を出力すると、同様に無線タグ101も信号強度の大きい応答信号を出力する。こうして無線タグ101から出力される応答信号の強度を設定強度より大きくした後、制御部180は検波回路204又は復調回路205によって読み出されたタグ情報を入力する。
【0050】
図8は、本実施の形態における制御部180及び通信ユニット101の動作の流れを示したフローチャートである。まず、信号強度決定部181は、質問信号の強度を予め設定された通常の信号強度(デフォルトの信号強度)に決定し、指示信号を出力設定回路207に出力する(ステップS11)。「通常の信号強度」とは、無線タグ101から13.56[MHz]の応答信号が出力されることを前提に設定された信号強度のことをいう。これにより、アンテナ203から通常の信号強度を持った質問信号が出力される(ステップS12)。
【0051】
無線タグ101は、質問信号に応答してタグ情報を乗せた応答信号を出力し、アンテナ203が受信する(ステップS13)。そして強度検出回路206が応答信号の信号強度を検出し(ステップS14)、トナー種類判別部182が検出された信号強度と設定強度記憶部112に記憶された設定強度を比較する(ステップS15)。
【0052】
信号強度が設定強度より小さい場合(ステップS15;YES)、トナー種類判別部182は、検出された応答信号の信号強度とトナー種類別記憶部111に記憶されている信号強度を比較して、一致する信号強度に対応付けて記憶されているトナーの種類を抽出し、抽出されたトナーの種類がカートリッジ61に収納されているトナーであると判断する。又は、トナー種類判別部182はカートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であると判断する(ステップS19)。そして、表示制御部183は表示パネル150に非認定品のトナーが収納されたカートリッジ61が装着されたことを示すメッセージを表示させる(ステップS16)。
【0053】
そして、信号強度決定部181は、質問信号の信号強度を無線通信が正常に行われる強度に設定し、設定した信号強度を出力設定回路207に出力する(ステップS17)。ステップS12に処理が移行し、出力設定回路207は、信号強度決定部181の指示に応じて、変調回路202から出力される変調波の信号強度を変化させ、信号強度が変化した変調波がアンテナ203から質問信号として出力される(ステップS12)。
【0054】
応答信号の信号強度が設定強度以上のとき(ステップS15;NO)、制御部180は検波回路204又は復調回路205によって応答信号から読み出されたタグ情報を入力し(ステップS18)、無線通信処理を終了する。
【0055】
以上、説明したように、トナーに含まれる磁性体による無線タグ101の共振回路の特性変化を利用して、カートリッジ61に収納されているトナーの種類を判別する、又は認定品であるか否かを判別することができる。そしてトナーが非認定品である場合、保証されている画像品質を維持できない可能性があるため、プリンタ1の表示パネルにメッセージを表示させることによって、その旨ユーザに知らせることができ、装置の利便性を向上させることができる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
第1の実施の形態では、信号強度が設定強度以下の応答信号を受信した場合、正常な無線通信ができるように質問信号の信号強度を可変する通信ユニット102を備えたプリンタ1について説明した。第2の実施の形態では、正常な無線通信ができるように質問信号の周波数を可変することとした通信ユニットを備えたプリンタについて説明する。尚、本実施の形態におけるプリンタの概略断面図は、第1の実施の形態において図1〜3にて示した図と同じであるため、説明を省略する。
【0057】
図9は、本実施の形態におけるプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。尚、第1の実施の形態において図4を用いて説明したブロック図と異なる点のみ説明する。制御部180は、周波数決定部281、トナー種類判別部182及び表示制御部183を有する。周波数決定部281は、アンテナ203から出力される質問信号の周波数を決定する。
【0058】
図10は、本実施の形態における通信ユニット102の電気的構成を示すブロック図である。尚、第1の実施の形態において図5を用いて説明したブロック図と異なる点のみ説明する。周波数設定回路217は、制御部180の周波数決定部181から出力される指示に応じて、通信ユニット102のアンテナ203から出力される質問信号の周波数を変化させる。
【0059】
図11は、本実施の形態における制御部180及び通信ユニット101の動作の流れを示したフローチャートである。まず、周波数強度決定部281は、質問信号の周波数を予め設定された通常の強度(例えば、13.56[MHz])に決定し、指示信号を周波数設定回路217に出力する(ステップS21)。これにより、変調回路202からは通常の周波数の変調波が出力され、アンテナ203から質問信号が出力される(ステップS22)。
【0060】
無線タグ101は、質問信号に応答してタグ情報を乗せた応答信号を出力し、この応答信号をアンテナ203が受信する(ステップS23)。そして強度検出回路206が応答信号の信号強度を検出し(ステップS24)、トナー種類判別部182が検出された信号強度と設定強度記憶部112に記憶された設定強度を比較する(ステップS25)。
【0061】
信号強度が設定強度より小さいとき(ステップS25)、トナー種類判別部182は、検出された応答信号の信号強度とトナー種類別記憶部111に記憶されている信号強度を比較して、一致する信号強度に対応付けて記憶されているトナーの種類を抽出し、抽出されたトナーの種類がカートリッジ61に収納されているトナーであると判断する。又は、トナー種類判別部182はカートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であると判断する(ステップS29)。そして、表示制御部183は表示パネル150に非認定品のトナーが収納されたカートリッジ61が装着されたことを示すメッセージを表示させる(ステップS26)。
【0062】
例えば、カートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であり、この非認定品のトナーに含まれる磁性体の影響により、無線タグ101の共振回路の共振周波数が13.2[MHz]に変化したとする。この場合、無線タグ101からは13.2[MHz]の応答信号が出力される。そして、設定強度記憶部112に記憶されている設定強度が90%とする。このとき、アンテナ203が受信する応答信号の強度は、図6に示すグラフによると88%となる。応答信号の信号強度が設定強度の90%より小さいため、トナー種類判別部182はカートリッジ61に収納されているトナーは非認定品であると判断する。
【0063】
そして、周波数強度決定部281は、アンテナ203から出力される質問信号の周波数を無線通信が正常に行われる周波数に決定し、決定した周波数を含む指示信号を周波数設定回路217に出力すると共に、アンテナ203の共振周波数を決定した周波数に変更させる制御を行う(ステップS27)。
【0064】
例えば、無線タグ101から13.2[MHz]の応答信号が出力されたとする。周波数決定部281は、図6に示すグラフ又は予め記憶されている計算式等と、強度検出回路206によって検出された応答信号の信号強度から、応答信号の周波数が13.2[MHz]であることを導出する。そして、周波数設定回路217に対して質問信号の周波数を360[kHz]小さくするための指示信号を出力する。尚、周波数決定部281が応答信号の周波数を導出する際に、図6に示すグラフや計算式を利用する場合、記憶部110は図6に示すグラフや計算式を予め記憶する。
【0065】
周波数設定回路217は、周波数決定部281から出力された指示信号に応じて質問信号の周波数を13.2[MHz]に変化させ、これによりアンテナ203から周波数の変化した質問信号が出力される。一方で、周波数決定部281はアンテナ203の共振周波数も360[MHz]小さくするための制御を行う。この制御によりアンテナ203の共振周波数が無線タグ101から出力される応答信号の周波数にチューニングされる。
【0066】
応答信号の信号強度が設定強度以上のとき(ステップS25;NO)、制御部180は検波回路204又は復調回路205によって応答信号から読み出されたタグ情報を入力し(ステップS28)、無線通信処理を終了する。
【0067】
以上、説明したように、トナーに含まれる磁性体による無線タグ101の共振回路の特性変化を利用して、カートリッジ61に収納されているトナーの種類を判別する、又はトナーが認定品であるか否かを判別することができる。そしてトナーが非認定品である場合、保証されている画像品質を維持できない可能性があるため、プリンタ1の表示パネルにメッセージを表示させることによって、その旨ユーザに知らせることができ、装置の利便性を向上させることができる。
【0068】
尚、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず適宜変形可能である。例えば、本実施の形態では、トナー種類判別部182は、検出された信号強度が設定強度記憶部112に記憶された設定強度以下である場合に、カートリッジ61に収納されているトナーは非認定品であると判断することとした。この方法以外に、周波数決定部281は、検出された応答信号の信号強度から応答信号の周波数を導出するが、このとき導出された周波数と通常の周波数との差が所定値以上のとき、トナーは非認定品であると判断してもよい。つまり、例えば、所定値を300[kHz]とし、通常の周波数が13.56[MHz]、導出された周波数が13.2[MHz]である場合、その差は360[MHz]となる。差が所定値以上であるため、トナー種類判別部182は、カートリッジ61に収納されているトナーが非認定品であると判断する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】プリンタの概略断面図。
【図2】現像部の詳細な構成を示す断面図。
【図3】現像部の符号Aで示す範囲の部分拡大図。
【図4】第1の実施の形態におけるプリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図5】第1の実施の形態における通信ユニットの電気的構成を示すブロック図。
【図6】応答信号の周波数と強度との関係を示すグラフ。
【図7】応答信号の周波数と強度との関係を示すグラフ。
【図8】第1の実施の形態における通信ユニットの動作を示すフローチャート。
【図9】第2の実施の形態におけるプリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図10】第2の実施の形態における通信ユニットの電気的構成を示すブロック図。
【図11】第2の実施の形態における通信ユニットの動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンタ(画像形成装置)
2 画像形成部(画像形成手段)
6 現像部
61 カートリッジ(トナー収納体)
101 無線タグ
110 記憶部
111 トナー種類別信号強度記憶部(種類別信号強度記憶手段)
112 設定強度記憶部(設定強度記憶手段)
102 通信ユニット(通信手段)
202 変調回路
203 アンテナ
204 検波回路
205 復調回路
206 強度検出回路(強度検出手段)
207 出力設定回路(強度可変手段)
217 周波数設定回路(周波数可変手段)
120 画像メモリ
130 画像処理部
140 入力操作部
150 表示パネル(表示手段)
160 ネットワークI/F部
180 制御部
181 信号強度決定部(強度可変手段)
182 トナー種類判別部(判別手段)
183 表示制御部(表示制御手段)
282 周波数決定部(周波数可変手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー収納体に取り付けられた無線タグと、
前記無線タグに対して質問信号を出力し、前記質問信号に応答した応答信号を前記無線タグから受信することで無線通信を行う通信手段と、
前記応答信号の信号強度を検出する検出手段と、
前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記無線タグから出力された応答信号の信号強度から前記トナー収納体に収納されているトナーの種類を判別する判別手段と、
を備える無線タグ通信システム。
【請求項2】
前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記無線タグから出力される応答信号の信号強度をトナーの種類に対応付けて記憶する種類別信号強度記憶手段を更に備え、
前記判別手段は、前記種類別信号強度記憶手段に記憶されている応答信号の信号強度のうち、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記検出手段によって検出された応答信号の信号強度と一致する信号強度に対応付けて記憶されているトナーの種類を、前記トナー収納体に収納されているトナーの種類とするものである請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項3】
前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うことができるときの前記応答信号の信号強度を設定強度として記憶する設定強度記憶手段を更に備え、
前記判別手段は、前記トナー収納体に収納されているトナーが認定品又は非認定品の何れであるかを判別するものであり、前記通信手段から予め定められた通常の信号強度で前記質問信号が出力されたときに前記検出手段によって検出された応答信号の信号強度が前記設定強度記憶手段に記憶されている設定強度以上のとき、前記トナー収納体に収納されているトナーが認定品であると判別するものである請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項4】
前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うことが可能な前記質問信号の強度を決定して前記質問信号の信号強度を可変する強度可変手段を更に備える請求項1〜3の何れか一項に記載の無線タグ通信システム。
【請求項5】
前記無線タグと前記通信手段が正常に無線通信を行うこと可能な前記質問信号の周波数を決定して前記質問信号の周波数を可変する周波数可変手段を更に備える請求項1〜3の何れか一項に記載の無線タグ通信システム。
【請求項6】
表示手段の表示制御を行う表示制御手段を更に備え、
前記表示制御手段は、前記判別手段の判別結果に応じて、前記表示手段に対してメッセージを表示させるものである請求項1〜5の何れか一項に記載の無線タグ通信システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の無線タグ通信システムと、
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−113258(P2010−113258A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287342(P2008−287342)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】