説明

無線テレメータシステム

【課題】センサー装置に内蔵されるROMを消費することなく、センサー装置が計測した計測値から正確な測定データを得ることができる無線テレメータシステムを提供する。
【解決手段】無線テレメータシステムは、センタ側網制御装置11に電話回線13を介して接続された端末側網制御装置に有線接続された又は端末網制御装置を内蔵した無線親機12と、無線親機12と無線接続される複数の無線子機14と、各無線子機14にそれぞれ有線接続される複数のマイコンメータのようなセンサー装置15とを備える。無線子機14は、センサー装置15からの入力をデジタルデータに変換し無線親機12に無線通信する。無線親機は非線形であるデジタルデータを計測値に変換するための変換テーブルを備え、無線親機にてセンサー装置のデータを変換するので、無線子機12のROMを消費することなく正確な計測値を算出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網制御装置によるガスメータ、水道メータ等の無線テレメータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度、湿度、照度等を計測するセンサー部と、計測データを無線送信する無線送信部を一体化した無線センサー装置が知られている。このシステムとして、計測値への変換を変換テーブルではなく、演算により算出することで、ROM容量を少なくする方法が公知である。例えば、特許文献1には、最小二乗近似多項式を用いた演算による無線センサー装置が開示されている。
【0003】
図10は、従来の無線によるセンサーシステムにおける実施形態を示す無線子機のブロック図である。無線子機14は、A/Dコンバータ22と、CPU23と、無線送信部24と、アンテナ25とを備えている。無線子機14においては、センサー装置15からのアナログ出力電圧がA/Dコンバータ22によってデジタルデータに変換される。CPU23は、無線子機14に内蔵されている変換テーブル又は変換式26を用いてデジタルデータを測定値に変換し、そして無線送信部24によってアンテナ25を介して無線親機12へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−83753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている無線センサー装置で用いられている手法においては、計測値を演算によって算出しているため、計測値に多少の誤差が発生してしまう。
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、センサー装置に内蔵されるROMを消費することなく、センサー装置が計測した計測値から正確な測定データを得ることができる無線テレメータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、センタ側網制御装置に電話回線を介して接続された端末側網制御装置と、前記端末側網制御装置に有線接続された又は前記端末網制御装置を内蔵した無線親機と、前記無線親機と無線接続される複数の無線子機と、前記各無線子機にそれぞれ有線接続されるセンサー装置とを備える無線テレメータシステムにおいて、前記複数の無線子機は、前記センサー装置と接続可能なアナログ入力ポートと、前記センサー装置からの入力をデジタルデータに変換し前記無線親機に送信する機能を備え、前記無線親機は、非線形である前記デジタルデータを計測値に変換するための変換テーブルを備え、前記無線親機にて前記センサー装置のデータを変換することを特徴とする無線テレメータシステムである。これにより、前記複数の無線子機のROMを消費することなく正確な計測値を算出することが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記無線親機が、前記センタ側網制御装置からのデータ受信により、前記変換テーブルの変更及び追加登録を行う機能を有する無線テレメータシステムである。これにより、前記変換テーブルは、前記無線親機のみの変更で、全ての前記複数の無線子機に新規のセンサー装置の接続が可能となる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記無線子機が、前記無線親機に登録されている前記変換テーブルと、前記センサー装置の計測値との誤差情報を記録する手段と、前記センサー装置の出力誤差を補正する機能とを有する無線テレメータシステムである。これにより、基準とするセンサー装置の変換テーブルを一度作成するだけで、全てのセンサー装置に対して個別のテーブルを作成しなくても、正確な計測値を得ることが可能となる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記無線親機は、前記変換テーブルが登録されているセンサー装置と前記変換テーブルが登録されていないセンサー装置とを同条件下で計測することで、登録済みであるセンサー装置の前記変換テーブルを利用し、前記変換テーブルが登録されていないセンサー装置の変換テーブルを作成する機能を有する無線テレメータシステムである。これにより、新規のセンサー装置に対する前記変換テーブルを容易に作成することが可能となる。
【0010】
以上の構成により、本発明は、センサー装置を接続した無線子機に内蔵されているROMを消費することなく、正確な計測値を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、各センサー装置側の機器のROMを消費することなく、正確な計測値を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の無線テレメータシステムにおける第一の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の無線テレメータシステムにおける第一の実施形態を示す無線子機のブロック図である。
【図3】本発明の無線テレメータシステムにおける第一の実施形態をメモリ構成図である。
【図4】本発明の無線テレメータシステムにおける第一の実施形態を示す変換テーブル構成図である。
【図5】本発明の無線テレメータシステムにおける第一の実施形態を示すフロー図である。
【図6】本発明の無線テレメータシステムにおける第二の実施形態を示すフロー図である。
【図7】本発明の無線テレメータシステムにおける第三の実施形態を示すセンサー装置の入出力を示すグラフである。
【図8】本発明の無線テレメータシステムにおける第四の実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明の無線テレメータシステムにおける第四の実施形態を示すセンサー装置の入出力関係図である。
【図10】従来の無線によるセンサーシステムにおける実施形態を示す無線子機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による無線テレメータリングシステムを利用したセンサー装置によるセンシングシステムを網制御装置による緊急地震速報通知システムに適用した実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての再度の詳細な説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による無線テレメータシステムについての、第一の実施形態を示すブロック図である。本発明による無線テレメータシステムは、センタ側網制御装置11と、端末網制御装置の機能を有した無線親機12と、無線子機14と、例えば温度センサーの様なセンサー装置15とで構成されている。センタ側網制御装置11と無線親機12とは電話回線13を介して、無線親機12と無線子機14とは特定小電力無線等の無線通信を介して、無線子機14とセンサー装置15は有線にてそれぞれ接続されている。
【0015】
図2は、図1に示した無線テレメータシステムに用いられている無線子機のブロック図である。無線子機14は、アナログポート21と、A/Dコンバータ22と、CPU23と、無線送信部24と、アンテナ25とを備えている。無線子機14は、アナログポート21に入力されるセンサー装置15の出力電圧をデジタルデータに変換して、無線親機12へ送信する機能を備えている。
【0016】
無線親機12のメモリ内には、図3に示すように、各無線子機14に対し割り当てられたメモリ空間31に対して、各無線子機14に接続されているセンサー装置15のセンサー装置情報32を記憶する機能を備えている。
【0017】
また、無線親機12のメモリ内には、図4に示すような変換テーブル41を備えている。変換テーブル41は、温度センサーa、温度センサーb及び温度センサーcとして示しているように、各センサー装置15に対して割り当てられたメモリ空間42で構成されている。それぞれのメモリ空間42は、出力電圧(E)43と、その出力電圧(E)43に対する計測値44(例えば温度(T)、照度など)とで構成されている。
【0018】
上記の構成によって、無線親機12は、記憶領域のうちセンサー装置情報32に記憶されたセンサー装置の種類と、無線子機14から受信し、当該種類のセンサー装置に対応して変換テーブル41のメモリ空間42に記憶されているデジタルデータ(電圧値)とから、当該デジタルデータ(電圧値)を対応する計測値に変換する機能と、変換した当該計測値をセンタ側網制御装置11へ送信する機能を備えている。
【0019】
図5は、本発明による無線テレメータシステムにおける、第一の実施形態を示す無線親機12の動作フロー図である。まず、無線親機12は、無線子機14からセンサー装置15の出力電圧のデータを受信すると(ステップ51;「S51」と略す。以下同じ)、センサー装置情報32から当該無線子機14に対応するセンサー装置15の種類を取得する(S52)。次に、変換テーブル41から、取得したセンサー装置15の種類に対応するアドレス42の中から、当該無線子機14から受信したデータ(出力電圧43のデータ)を、そのデータに対応する計測値44に変換し(S53)、変換した計測値44をセンタ側網制御装置へ送信する(S54)。
【0020】
図6は、本発明による無線テレメータシステムにおける、第二の実施形態を示す無線親機12の動作フロー図である。まず、無線親機12は、センタ側網制御装置11から、登録する変換テーブルデータと登録を行うテーブルエリア情報とを含んだデータを受信したか否かを判定する(S61)。当該データを受信した場合には、登録を行うエリアの変換テーブルを初期化する(S62)。次に、受信した変換テーブルデータを、クリアされた変換テーブルにおける該当エリアに登録する(63)。
【0021】
図7は、本発明による無線テレメータシステムにおける、第三の実施形態を示すセンサー装置の入出力を示すグラフである。図7において、E0は温度T1の時の標準となる出力電圧であり、親機内の変換テーブルに記憶されている値に等しい。また、E1は温度T1の時の子機に接続されたセンサー装置の出力電圧である。
図7に示すように、温度に対する出力電圧の変化は一般には非線形である。センサー装置15は、同じシリーズ(種類)の装置であっても装置内部の抵抗のばらつき等に起因して出力電圧に誤差が生じる。無線子機14はこの誤差を記憶する機能と、センサー装置15の出力電圧を補正する機能を備えている。例えばセンサー装置15が温度センサーである場合、無線親機12に登録されている変換テーブルの出力電圧71に対し、接続されている温度センサーの出力電圧72は、温度T1の時、[E1−E0]の誤差が発生するとする。生産時など、温度T1の時のセンサー装置15からの出力電圧E1を計測し、[E1−E0]の誤差を無線子機14で記憶する。これにより、温度T1以外の温度でも実際の計測時には、計測した出力電圧から[E1−E0]の誤差分をマイナスすることで補正がされた出力電圧E0を得て、親機においてその補正がされた出力電圧に対応して変換されたより正確な温度を得ることができる。
【0022】
図8は、本発明による無線テレメータシステムにおける第四の実施形態を示すブロック図である。第一の実施形態において、センサー装置15−aとセンサー装置15−bが、両方のセンサー装置にとって内部環境を均一に保てるBOX装置81内に設置されている。これにより、センサー装置15−aとセンサー装置15−bは、同一の環境下で計測を行うことができる。また、ここで例えばセンサー装置15−aは標準となるセンサー装置とすると、無線親機12は、センサー装置15−aに対応する変換テーブルを有しているが、センサー装置15−bに対応する変換テーブルを有していない。
【0023】
無線親機は、無線子機14−aと無線子機14−bを介し、同タイミングにおけるセンサー装置15−aとセンサー装置15−bの出力を連続的に取得することにより、センサー装置15−bに対する変換テーブルを容易に作成することができる。例えば、センサー装置15−a及びセンサー装置15−bが温度センサーである場合、同一タイミングで計測した時のセンサー装置15−aの出力電圧とセンサー装置15−bの出力電圧は同じ温度を示しているはずである。従って、例えば図9に示すように、センサー装置15−bの出力電圧92がE23である場合、これに対応する温度は、センサー装置15−aの出力電圧91がE13であるときに対応する温度T3になる。これにより、無線親機12はセンサー装置15−bの出力電圧がE23の時の温度はT3であると結び付けることができる。このようにして、各温度においてセンサー装置15−a及びセンサー装置15−bの出力電圧をサンプリングすることにより、センサー装置15−bの変換テーブルを無線親機12内で自動的に作成することができる。
【符号の説明】
【0024】
11 センタ側網制御装置 12 無線親機
13 電話回線 14 無線子機
15 センサー装置
21 アナログポート 22 A/Dコンバータ
23 CPU 24 無線送信部
25 アンテナ 31 各無線子機に対し割り当てられたメモリ空間
32 センサー装置情報
41 変換テーブル 42 各センサー装置に対し割り当てられたメモリ空間
43 センサー装置の出力電圧 44 センサー装置の出力電圧に対応する計測値
71 変換テーブル上の入力−出力電圧の関係を示すグラフ
72 センサー装置の入力−出力電圧の関係を示すグラフ
81 BOX装置
91 既登録温度センサーの各温度(T)に対する出力電圧(E)
92 未登録温度センサーの各温度(T)に対する出力電圧(E)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ側網制御装置に電話回線を介して接続された無線親機と、前記無線親機と無線接続される複数の無線子機と、前記各無線子機にそれぞれ接続されるセンサー装置とを備える無線テレメータシステムにおいて、
前記複数の無線子機は、前記センサー装置と接続可能なアナログ入力ポートと、前記センサー装置からの入力をデジタルデータに変換し前記無線親機に送信する機能を備え、
前記無線親機は、受信した前記デジタルデータを計測値に変換するための変換テーブルを備えていることを特徴とする無線テレメータシステム。
【請求項2】
前記無線親機は、前記センタ側網制御装置からのデータ受信により、前記変換テーブルの変更及び追加登録を行う機能を有することを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。
【請求項3】
前記無線子機は、前記センサー装置の計測値の誤差情報を記憶する手段と、前記センサー装置の出力誤差を補正する機能とを有することを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。
【請求項4】
前記無線親機は、同一環境条件下における、前記変換テーブルが登録されている前記センサー装置からのデジタルデータと前記変換テーブルが登録されていないセンサー装置からのデジタルデータとを取得することにより、登録済みである前記センサー装置の前記変換テーブルを利用し、前記変換テーブルが登録されていない前記センサー装置の変換テーブルを作成する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。
【請求項5】
前記無線親機は、前記無線子機と当該無線子機に接続されているセンサー装置の情報とを対応付けて記憶しており、また、前記変換テーブルは、前記センサー装置毎に割り当てられており、前記センサー装置の出力電圧と測定値とを対応付けて記憶されたメモリ空間として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−154515(P2011−154515A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15302(P2010−15302)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】