説明

無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置

【課題】マルチホップネットワークでの中継路のグループにおいてできる限り接続数を均等にして情報伝達の効率を高めることができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供すること。
【解決手段】マルチホップ通信がなされるマルチホップネットワークの通信方法において、無線通信装置10が自身のグループに所属する全ての無線通信装置10の個数を表す所属個数を保持しており、無線通信装置10iがマルチホップネットワークに新規に接続するためのJoinパケットを配信し、無線通信装置10iから送信されたJoinパケットを受信した無線通信装置10c、10dが所属個数を含むChannelInfoパケットを無線通信装置10iに送信し、無線通信装置10iが、複数のChannelInfoパケットを受信した場合に所属個数が最も少ない無線通信装置10c、10dを自身の上位の無線通信装置10として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置で構成されるマルチホップネットワークの中継路を自律的に構築するための無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線を使用したネットワークの形態として、無線通信端末同士が直接接続してネットワークを構築するアドホックネットワークというものがあり、アドホックネットワークを利用した無線ネットワークシステムが盛んに開発されている。アドホックネットワークには、データが無線通信端末を介在させて転送されるマルチホップネットワークがある。
【0003】
従来のマルチホップネットワークとしては、基地局および無線局によって構成されており、無線局が、基地局から無線局までのホップ数を表すホップ数情報を取得しており、新規に接続する新規無線局がマルチホップネットワークに接続する際に、新規無線局と基地局に直接接続できる場合には、新規無線局が基地局を上位接続先無線局として選定し、基地局に直接接続できない場合には新規無線局と接続可能な無線局の中からホップ数情報により得られるホップ数が最小となる接続可能無線局を上位接続先無線局として選定し、新規無線局が、選定した上位接続先無線局と信号の送受信を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、従来のマルチホップネットワークの構成および上位接続先無線局の選定を示す図である。図11に示したマルチホップネットワークは、ツリー型であり、基地局7および無線局9a〜無線局9hによって構成されおり、中継路について2つのチャネルを有している。なお、括弧内の数値は、基地局7からのホップ数を表している。
【0005】
1つ目のチャネルAは、基地局7から無線局9a〜無線局9cまでの中継路である。もう1つ目のチャネルBは、基地局7から無線局9dを介して無線局9e〜無線局9hまでの中継路である。ここで、新規無線局9iは、図11に示したマルチホップネットワーク接続する際に、無線局9cおよび無線局9dと通信可能な位置にいる。無線局9cが自己のホップ数を3として新規無線局9iに通知し、無線局9dが自己のホップ数を1として新規無線局9iに通知した場合、新規無線局9iは、ホップ数が最小となる無線局9dを上位接続先無線局として選定して無線局9dに接続すると共に、その後無線局9dと通信するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−237764号公報(第9頁、第12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のマルチホップネットワークでは、チャネルAが3つの無線局で使用されるのに対しチャネルBが5つの無線局で使用されるため、チャネルを使用する無線局9の数はチャネルBのほうがチャネルAよりも多く、新規無線局9iが接続する際にチャネルBのほうに接続させると、チャネルBを使用する無線局9の数はさらに増えてしまう。
【0008】
すなわち、マルチホップネットワークでは、各チャネルを使用する無線局の数が均等になっているのが好ましいが、従来のマルチホップネットワークでは、上述したような状況で特定のチャネルに数多くの無線局が偏って接続されてしまい弊害が生じる恐れがあるという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、マルチホップネットワークでの中継路のグループにおいてできる限り接続数を均等にして情報伝達の効率を高めることができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、中継路のグループに所属する複数の無線通信装置によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされ、複数の前記グループを含むマルチホップネットワークに、新規の無線通信装置が接続する際の無線ネットワークシステム通信方法において、前記無線通信装置が自身の前記グループに所属する全ての無線通信装置の個数を表す所属個数を保持する情報保持段階と、前記新規の無線通信装置が前記マルチホップネットワークに接続するための参加パケットを配信する参加パケット配信段階と、前記新規の無線通信装置から送信された参加パケットを受信した前記無線通信装置が前記所属個数を含む参加応答パケットを前記新規の無線通信装置に送信する参加応答パケット送信段階と、前記新規の無線通信装置が、複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択する上位選択段階と、を備えた構成を備えている。
この構成により、接続する無線通信装置が複数の参加応答パケットを受信した場合に所属個数が最も少ない無線通信装置を自身の上位の無線通信装置として選択するため、中継路のグループにおいてできる限り無線通信装置の接続数が均等になり、情報伝達の効率を高めることができる。
【0011】
また、前記新規の無線通信装置は、前記参加パケット配信段階において前記参加パケットを所定回数繰り返して配信し、前記上位選択段階において、前記参加パケット配信段階で所定回数繰り返して配信するまでに複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択する構成を備えている。
この構成により、参加パケットを所定回数繰り返して配信した後に新規の無線通信装置が自身の上位の無線通信装置として選択するため、複数の参加応答パケットを受信する機会を増やすことができ、多くの無線通信装置の候補から上位を選択することができる。
【0012】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、最上位の前記無線通信装置が自身の前記下位の無線通信装置に関する情報を収集して前記所属個数を前記グループ毎に計算する所属個数計算段階と、前記所属個数計算段階において、前記グループの前記所属個数を該当する前記グループに所属する前記無線通信装置に通知する所属個数通知段階と、前記情報保持段階において前記所属個数通知段階で通知された前記所属個数を前記無線通信装置それぞれが保持する段階と、を備えた構成を備えている。
この構成により、簡易に所属個数を無線通信装置それぞれが保持することができる。
【0013】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、前記グループは、前記上位の無線通信装置から前記下位の無線通信装置に対してマルチホップ通信するためのチャネルに対応付いている構成を備えている。
この構成により、マルチホップネットワークの運用に容易なグループを形成することができる。
【0014】
また、本発明の無線ネットワークシステム通信方法は、前記情報保持段階において、前記無線通信装置が前記所属個数に加えて前記最上位の無線通信装置からのホップ数を保持しており、前記参加応答パケット送信段階において、前記新規の無線通信装置から送信された参加パケットを受信した前記無線通信装置が前記所属個数および前記ホップ数を含む参加応答パケットを前記新規の無線通信装置に送信し、前記上位選択段階において、前記新規の無線通信装置が、複数の前記参加応答パケットを受信した場合において、前記参加応答パケットに含まれるホップ数が閾値以下の前記無線通信装置のうち、前記所属個数が最も少ない前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択する構成を備えている。
この構成により、グループの所属個数に加えてホップ数の面からも判断して無線通信装置を自身の上位の無線通信装置として選択するため、マルチホップネットワークの情報伝送にかかる負荷を低減させ、情報伝達の効率を高めることができる。
【0015】
本発明の無線通信装置は、グループに所属する複数の無線局によって上位の該無線局から下位の該無線局に対してマルチホップ通信がなされ、複数の前記グループを含むマルチホップネットワークに新規に接続する無線通信装置において、前記マルチホップネットワークに新規に接続するための参加パケットを配信する参加パケット配信部と、前記参加パケットを受信した前記無線局から、前記無線局が自身の前記グループに所属する全ての無線通信装置の個数を表す所属個数を含む参加応答パケットを受信する参加応答パケット受信部と、前記参加応答パケット受信部によって複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線局を自身の前記上位の無線局として選択する上位選択部と、を備えた構成を備えている。
この構成により、複数の参加応答パケットを受信した場合に所属個数が最も少ない無線通信装置を自身の上位の無線通信装置として選択するため、中継路のグループにおいてできる限り無線通信装置の接続数が均等になり、情報伝達の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、マルチホップネットワークでの中継路のグループにおいてできる限り無線通信装置の接続数を均等にして情報伝達の効率を高めることができる無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るマルチホップネットワークの構成図
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図
【図3】無線通信装置がマルチホップネットワークに新規に接続するときのシーケンス図
【図4】Joinパケットを受信する無線通信装置の動作を表したフローチャート
【図5】本発明の第1の実施の形態においてJoinパケットを送信する無線通信装置の動作を表したフローチャート
【図6】新規の無線通信装置が上位の無線通信装置として選択した後の処理を表すシーケンス図
【図7】PollingReqパケットを送信する無線通信装置の動作を表したフローチャート
【図8】PollingReqパケットを受信する無線通信装置の動作を表したフローチャート
【図9】本発明の第2の実施の形態においてJoinパケットを送信する無線通信装置の動作を表したフローチャート
【図10】新規無線通信装置が上位の無線通信装置の候補をグループが同じ無線通信装置のうちホップ数の少ない無線通信装置を選択した後の処理を表すシーケンス図
【図11】従来のマルチホップネットワークの構成および上位接続先無線局の選定を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(本発明の第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマルチホップネットワークの構成図を示したものである。図1に示したツリー型のマルチホップネットワークは、制御装置6および無線通信装置10a〜無線通信装置10hによって構成されており、例えば、災害時などに緊急情報を所定の地域の住戸に伝達する無線ネットワークシステムとして使われる。制御装置6は、ツリー型のマルチホップネットワークのルートに相当するものである。
【0020】
また、制御装置6は、配下に無線通信装置10と無線で接続されており、例えば、周りに障害物が無いなど無線通信を行う上で好条件の場所に設置されている。無線通信装置10は、例えば、住戸毎や家屋毎に配備されている。本発明の実施の形態では、本発明の無線局を無線通信装置10として例示している。
【0021】
以下の説明においては、無線通信装置10の個々を区別する場合は、無線通信装置10a〜無線通信装置10iと記載する。なお、図1において、無線通信装置10a〜無線通信装置10iが示されているが、本発明に係る無線通信装置の数を限定するものではない。制御装置6は、無線通信装置10と通信する複数のアンテナを有し、複数のアンテナは、本発明の実施の形態では、チャネル毎に対応している。なお、無線通信装置10は複数のアンテナを有していなくてもよく、1本のアンテナで複数のチャネルに対応していてもよい。
【0022】
図1では、チャネルAを使用する無線通信装置10は、無線通信装置10a〜無線通信装置10cであり、チャネルBを使用する無線通信装置10は、無線通信装置10d〜無線通信装置10hである。
【0023】
図1に示したマルチホップネットワークを構成する制御装置6および無線通信装置10は、それぞれ上位下位の関係を有しており、例えば、制御装置6の下位は、無線通信装置10aおよび無線通信装置10dである。無線通信装置10aの下位は、無線通信装置10bであり、無線通信装置10dの下位は、無線通信装置10e〜無線通信装置10hである。無線通信装置10bの下位は、無線通信装置10cである。
【0024】
逆に、無線通信装置10cの上位は、無線通信装置10bであり、無線通信装置10e〜無線通信装置10hの上位は、無線通信装置10dであり、無線通信装置10bの上位は、無線通信装置10aであり、無線通信装置10aおよび無線通信装置10dの上位は、制御装置6である。
【0025】
制御装置6は、例えば緊急事態が発生した場合などに一斉に緊急情報を無線通信装置10に配信する際、チャネルAを用いる下位の無線通信装置10aおよびチャネルBを用いる下位の無線通信装置10dに緊急情報を送信するようになっている。このとき、無線通信装置10aは、受信した緊急情報を下位の無線通信装置10bに送信し、無線通信装置10dは、受信した緊急情報を下位の無線通信装置10e〜無線通信装置10hに同時に送信するようになっている。無線通信装置10bは、受信した緊急情報を下位の無線通信装置10cに送信するようになっている。このように、緊急情報が無線通信装置10に一斉に配信される。括弧内の数値は、制御装置6からのホップ数を表している。
【0026】
また、本発明の実施の形態に係るチャネルは、制御用および通信用の2つの目的で用いられる。本発明の実施の形態において、一定周期の所定時間では制御用のチャネルが使用され、また制御用でない時間では通信用のチャネルが使用され、時分割してチャネルが用いられる。さらに、制御用のチャネルは、マルチホップネットワークで1つとし、通信用のチャネルは、制御装置6のアンテナ毎に対応しており、通信用のチャネルをグループに対応させている。
【0027】
例えば、チャネルAを使用する無線通信装置10によって構成されるグループをグループAとし、チャネルBを使用する無線通信装置10によって構成されるグループをグループBとする。図1では、チャネルAのグループの所属個数は、無線通信装置10a〜無線通信装置10cの3個であり、チャネルBのグループの所属個数は、無線通信装置10d〜無線通信装置10hの5個である。
【0028】
通信用のチャネルは、例えば、上述したように緊急情報を一斉に配信するなどの用途や、制御装置6が各無線通信装置10に関する情報を収集するなどの用途で用いられる。制御用のチャネルは、例えば、新規に無線通信装置10が接続する際の無線信号の送受信や、各無線通信装置10が自身のホップ数を知るための無線信号の送受信の用途で用いられる。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態に係る無線通信装置のブロック図を示したものである。図2に示すように、無線通信装置10は、アンテナ20と、アンテナ20を介して高周波信号を送受信するRF(Radio Frequency)部21と、高周波信号と中間周波数信号とを相互に周波数変換する周波数変換部22と、中間周波数信号を処理して無線通信装置10の各部を後述するように機能させる信号処理部23と、信号処理部23によってデータが読み書きされるメモリ24と、災害を報知する外部装置、災害検知センサ、入力機器等の少なくとも1つと無線または有線で通信するための通信インターフェイス(IF)25と、情報を表示する表示部26とを備えている。本発明の実施の形態では、本発明の参加パケット配信部、参加応答パケット受信部、および上位選択部を、信号処理部23として例示している。
【0030】
無線通信装置10のメモリ24には、上位下位の関係の下位の無線通信装置10の識別情報(ID)が、以下に説明される方法によって既に登録されている。例えば、無線通信装置10bのメモリ24には、下位の無線通信装置10として無線通信装置10cのIDが登録され、上位の無線通信装置10として無線通信装置10aのIDが登録されている。
【0031】
また、メモリ24には、無線通信装置10自身のID、制御装置6からのホップ数、1つのグループ内に所属する全ての無線通信装置10の所属個数、および使用チャネルの周波数などを含む個別装置情報が登録されている。
【0032】
所属個数は次のように登録される。図1に示すように、制御装置6が、通信用のチャネルを介して自身の下位の無線通信装置10から所属個数をグループ毎に収集しており、最上位の無線通信装置10が、例えば、グループAに所属する全ての無線通信装置10に関する情報を収集し、収集したそれぞれの情報からグループAの所属個数を求め、グループAに所属する各無線通信装置10にブロードキャストなどを用いて通知する。無線通信装置10は、通知された所属個数をメモリ24に登録する。なお、所属個数は、無線通信装置10の通信IF25に接続された入力機器からメモリ24に登録されてもよい。
【0033】
以下、図1に示したマルチホップネットワークにおいて、無線通信装置10iが新規に接続するときの動作について説明する。図3は、無線通信装置10iが図1に示したマルチホップネットワークに新規に接続するときのシーケンス図である。
【0034】
まず、無線通信装置10iがマルチホップネットワークに接続する際に、無線通信装置10iは、新規に接続するためのJoinパケットをブロードキャストする。Joinパケットは、制御用チャネルで用いられる無線信号である。図3に記載のChannelInfoパケットもまた、制御用チャネルで用いられる無線信号である。本発明の実施の形態では、本発明の参加パケットをJoinパケットとして例示し、本発明の参加応答パケットをChannelInfoパケットとして例示している。
【0035】
また、無線通信装置10iは、送信時間間隔でかつ所定回数繰り返してJoinパケットを送信する。図3では、送信時間間隔を2.2秒とし、所定回数を15回としているが、図3で示している値には本発明において限定されることはない。
【0036】
ここで、Joinパケットを受信することが可能な無線通信装置10は、無線通信装置10iとの距離などから、無線通信装置10cや無線通信装置10dであるとする。ただし、Joinパケットの受信可能な無線通信装置10は、無線通信装置10iとの距離だけの条件に限らず、距離が近くても無線通信装置10iとの間に障害物などが存在してパケットが受信できない場合もあるため、無線通信装置10iが送信するパケットを受信できる無線通信装置10が対象となる。
【0037】
無線通信装置10cや無線通信装置10dは、一定期間に制御用チャネルで用いられる無線信号を受信している。制御用チャネルで用いられる無線信号を受信するときの一定期間(以下、受信時間という)は、周期的に生じる時間である。受信時間でない期間は、緊急情報などの情報を通信用チャネルで送受信する時間になる。図3では、制御用チャネルで用いられる無線信号の受信時間を3秒としている。
【0038】
図3に示したように、無線通信装置10cが最初にJoinパケットを受信し、受信したJoinパケットの応答であるChannelInfoパケットを送信すると共に無線通信装置10iのIDを下位の無線通信装置10として自身のメモリ24に記憶させる。
【0039】
次に、無線通信装置10iは、無線通信装置10cから送信されたChannelInfoパケットを受信する。ChannelInfoパケットには、個別装置情報が含まれている。なお、図1では、チャネルAのグループAの無線通信装置10の所属個数は3、チャネルBのグループBの無線通信装置10の所属個数は5である。
【0040】
同様に、無線通信装置10dがJoinパケットを受信し、受信したJoinパケットの応答であるChannelInfoパケットを送信すると共に無線通信装置10iのIDを下位の無線通信装置10として自身のメモリ24に記憶させる。次に、無線通信装置10iは、無線通信装置10dから送信されたChannelInfoパケットを受信する。
【0041】
無線通信装置10iは、上位の無線通信装置10として候補に挙がった無線通信装置10cおよび無線通信装置10dそれぞれから受信したChannelInfoパケットに含まれている個別装置情報を自身のメモリ24に記憶させる。ここで、無線通信装置10iは、それぞれの個別装置情報の無線通信装置10の所属個数を比較してグループの所属個数が最も少ない無線通信装置10を選択するため、無線通信装置10cを上位の無線通信装置10として選択する。
【0042】
図4は、Joinパケットを受信する無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。なお、本フローチャートは、無線通信装置10が制御用チャネルで情報を送受信するため通信用チャネルから制御用チャネルに切り替えた状態での動作を表している。
【0043】
信号処理部23は、Joinパケットを受信したか否かを判定し(S1)、Joinパケットを受信した場合、Joinパケットを送信した無線通信装置10を下位の無線通信装置10としてそのIDを記憶する(S2)。次に、信号処理部23は、Joinパケットを送信した無線通信装置10に、自身が管理する個別装置情報を含むChannelInfoパケットを送信する(S3)。
【0044】
図5は、Joinパケットを送信する無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。なお、本フローチャートは、無線通信装置10が制御用チャネルで情報を送受信するため通信用チャネルから制御用チャネルに切り替えた状態での動作を表している。
【0045】
図5に示すように、新規の無線通信装置10の信号処理部23は、Joinパケットを送信する(S11)。Joinパケットを送信した後、信号処理部23は、送信時間間隔の間、待ち合わせ、その間にChannelInfoパケットを受信したか否かを判定する(S12)。ChannelInfoパケットを受信しなかった場合、過去にChannelInfoパケットを受信したか否かを判定する(S13)。過去にもChannelInfoパケットを一度も受信していない場合、信号処理部23は、送信時間間隔に従って引き続きJoinパケットを送信する(S11)。
【0046】
送信時間間隔の間にChannelInfoパケットを受信した場合(S12)、信号処理部23は、ChannelInfoパケットに含まれている個別装置情報をメモリ24に記憶させる(S14)。
【0047】
例えば、ChannelInfoパケットの個別装置情報にある無線通信装置10のIDでそのIDが制御装置6か否かがわかるようになっており、信号処理部23は、ChannelInfoパケットを送信した装置が制御装置6であるか否かを判定する(S15)。
【0048】
ChannelInfoパケットを送信した装置が制御装置6である場合、信号処理部23は、制御装置6を上位として選択する(S16)。制御装置6は通常、周りに障害物が無いなど無線通信を行う上で好条件の場所に設置されているため、制御装置6から送信された無線信号の感度がほとんど良好であり、さらに、制御装置6と接続できれば制御装置6から送信される緊急情報が直に受信できる。従って、信号処理部23は、制御装置6を上位として選択する。
【0049】
ステップS15で、ChannelInfoパケットを送信した装置が制御装置6でない場合、または、ステップS13で、過去にChannelInfoパケットを受信していた場合、信号処理部23は、Joinパケットの送信を所定回数繰り返したか否かを判定し(S17)、所定回数繰り返していない場合、ステップS13で、ChannelInfoパケットを受信したか否かを判定する。
【0050】
Joinパケットの送信を所定回数繰り返した場合において、信号処理部23は、複数の無線通信装置10からChannelInfoパケットを受信しているとき、それぞれのChannelInfoパケットに含まれている個別装置情報に基づいて、グループ内に所属する無線通信装置10の所属個数が最も少ない無線通信装置10を上位として選択する(S18)。なお、ChannelInfoパケットを受信した無線通信装置10が1台だけだった場合、信号処理部23は、この無線通信装置10を上位として選択する。
【0051】
図6は、新規の無線通信装置10iが上位の無線通信装置10として選択した後の処理を表すシーケンス図である。図6は、図3で説明したように新規の無線通信装置10iが互いにチャネルの異なる無線通信装置10c、無線通信装置10dのうち無線通信装置10cを上位の無線通信装置10として選択した後の処理を表すシーケンス図である。
【0052】
例えば、制御装置6が各無線通信装置10に関する情報を定期的に収集するときに送信されるPollingReqパケットが、順次、下位の無線通信装置10で受信され、無線通信装置10cは、上位の無線通信装置10bからPollingReqパケットを受信したとき、図6に示すように、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10iにPollingReqパケットを送信する。
【0053】
次に、無線通信装置10iは、上位の無線通信装置10cから送信されたPollingReqパケットを受信したため、自身の無線通信装置10iに関する情報を含めたPollingReqAckパケットを無線通信装置10cに返信する。なお、本発明の実施の形態では、本発明の監視パケットをPollingReqパケットとして例示し、本発明の監視応答パケットをPollingReqAckパケットとして例示している。
【0054】
例えば、無線通信装置10dは、制御装置6からPollingReqパケットを受信したとき、図6に示すように、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10iにPollingReqパケットを送信する。次に、無線通信装置10iは、無線通信装置10dから送信されたPollingReqパケットを、自身のチャネルと異なるPollingReqパケットであるために受信できないか、受信したとしても応答しない。
【0055】
無線通信装置10dは、無線通信装置10iにPollingReqパケットを送信したが、所定時間経過しても応答がないため、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10iのIDをメモリ24から消去する。すなわち、下位の無線通信装置10として登録していた無線通信装置10iのIDを解除する。
【0056】
図7は、PollingReqパケットを送信する無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。なお、本フローチャートでは、無線通信装置10が通信用チャネルで情報を送受信するため制御用チャネルから通信用チャネルに切り替えた状態での動作を表している。
【0057】
無線通信装置10の信号処理部23は、通信用チャネルで上位の無線通信装置10からPollingReqパケットを受信した後、図6に示すように、下位の無線通信装置10にPollingReqパケットを送信する(S21)。
【0058】
信号処理部23は、PollingReqパケットを送信した無線通信装置10からパケットを受信したか否かを判定し(S22)、パケットを受信した場合、そのパケットがPollingReqAckパケットであるか否かを判定する(S23)。
【0059】
受信したパケットがPollingReqAckパケットである場合、信号処理部23は、PollingReqAckパケットの情報に基づいて上位の無線通信装置10にPollingReqAckパケットを送信するなどして処理が終了となり、受信したパケットが、PollingReqAckパケットでないPollingReqNackパケット(PollingReqNackパケットについては後述する)などである場合、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10のIDをメモリ24から消去する(S25)。
【0060】
また、ステップS22で、パケットが受信されなかった場合、信号処理部23は、PollingReqパケットを送信してから所定時間が経過したか否かを判定し(S24)、所定時間が経過した場合、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10のIDをメモリ24から消去する(S25)。
【0061】
図8は、PollingReqパケットを受信する無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。なお、本フローチャートでは、無線通信装置10が通信用チャネルで情報を送受信するため制御用チャネルから通信用チャネルに切り替えた状態での動作を表している。
【0062】
無線通信装置10の信号処理部23は、PollingReqパケットを受信したとき(S31)、例えば、受信したPollingReqパケットに設定されている無線通信装置10のIDと上位として記憶している無線通信装置10のIDとを比較することで、受信したPollingReqパケットが上位として選択した無線通信装置10からのパケットか否かを判定する(S32)。
【0063】
受信したPollingReqパケットが上位として選択した無線通信装置10からのパケットである場合、信号処理部23は、PollingReqAckパケットを返信し(S33)、上位として選択した無線通信装置10からのパケットでない場合、PollingReqNackパケットを返信する(S34)。なお、PollingReqNackパケットについては後述する。
【0064】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置は、新規に接続する無線通信装置10iが複数のChannelInfoパケットを受信した場合に所属個数が最も少ない無線通信装置10を自身の上位の無線通信装置10として選択するため、中継路のグループにおいてできる限り無線通信装置10の接続数が均等になり、情報伝達の効率を高めることができる。
【0065】
(本発明の第2の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、上位の無線通信装置10の候補を無線通信装置10cおよび無線通信装置10dとして実施例について説明していたが、本発明の第2の実施の形態ではこれに限定せず、マルチホップネットワークに新規に接続するときの動作を行って上位の無線通信装置10として複数の無線通信装置10が候補に挙がった場合の実施例について説明する。
【0066】
図9は、Joinパケットを送信する無線通信装置10の動作を表したフローチャートである。なお、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置を構成する部材のうち、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置を構成する部材と同じものには、同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。
【0067】
また、図9に示しているステップS11〜ステップS17までの動作は、図5で説明したときの動作と同様であるため、それぞれの説明を省略する。
【0068】
ステップS17の後、Joinパケットの送信を所定回数繰り返した場合、信号処理部23は、ChannelInfoパケットを送信した複数の無線通信装置10のうち、制御装置6からのホップ数が閾値以下の無線通信装置10があるか否かを判定する(S41)。
【0069】
ステップS41において、ChannelInfoパケットを送信した複数の無線通信装置10のうちホップ数が閾値以下の無線通信装置10がある場合、信号処理部23は、ホップ数が閾値以下の無線通信装置10の中から、グループ内に所属する無線通信装置10の所属個数が最も少ない無線通信装置10を上位として選択する(S18)。例えば、ホップ数は小さい値を想定しており、ステップS18は、例えば、特定の地域に無線通信装置10が密集しており、それぞれの無線通信装置10のホップ数が小さい場合などに処理されることを想定している。
【0070】
ステップS41において、ChannelInfoパケットを送信した複数の無線通信装置10のうちホップ数が閾値以下の無線通信装置10がない場合、信号処理部23は、ホップ数が最も少ない無線通信装置10を上位として選択する(S42)。ステップS42は、例えば、特定の地域に無線通信装置10が閑散しており、それぞれの無線通信装置10のホップ数が大きい場合などに処理されることを想定している。
【0071】
なお、ステップS18において、複数の無線通信装置10の所属個数が同じであった場合、信号処理部23は、ホップ数の最も少ない無線通信装置10を上位として選択するようにしてもよい。さらに、複数の無線通信装置10の所属個数およびホップ数がそれぞれ同じである場合、信号処理部23は、無線通信装置10のIDの大小など無線通信装置10のIDに基づいて上位を選択するようにしてもよい。
【0072】
次に説明する例では、ステップS18において、複数の無線通信装置10の所属個数が同じであった場合、新規の無線通信装置10が、ホップ数の最も少ない無線通信装置10を上位として選択した後の動作について説明している。
【0073】
図10は、図1で説明した新規の無線通信装置10iが、上位の無線通信装置10の候補をグループが同じ無線通信装置10d、無線通信装置10hとした場合、ホップ数の少ない無線通信装置10dを選択した後の処理を表すシーケンス図である。
【0074】
例えば、無線通信装置10dは、制御装置6からPollingReqパケットを受信したとき、図10に示すように、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10iにPollingReqパケットを送信する。
【0075】
次に、無線通信装置10iは、上位の無線通信装置10dから送信されたPollingReqパケットを受信したとき、無線通信装置10hを上位の無線通信装置10として選択したため、自身の無線通信装置10iに関する情報を含めたPollingReqAckパケットを無線通信装置10dに返信する。
【0076】
また、無線通信装置10hは、無線通信装置10dからPollingReqパケットを受信したとき、図10に示すように、下位の無線通信装置10として記憶した無線通信装置10iにPollingReqパケットを送信する。次に、無線通信装置10iは、無線通信装置10hから送信されたPollingReqパケットを受信したとき、無線通信装置10hを上位の無線通信装置10として選択しなかったため、自身の上位の無線通信装置10でないことを通知するためのPollingReqNackパケットを無線通信装置10hに返信する。
【0077】
無線通信装置10hは、PollingReqNackパケットを受信し、下位の無線通信装置10として登録していた無線通信装置10iのIDを解除する。なお、本発明の実施の形態では、本発明の監視否定応答パケットをPollingReqNackパケットとして例示している。
【0078】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る無線ネットワークシステム通信方法および無線通信装置は、グループの所属個数に加えてホップ数の面からも判断して無線通信装置を自身の上位の無線通信装置10として選択するため、マルチホップネットワークの情報伝送にかかる負荷を低減させ、情報伝達の効率を高めることができる。
【0079】
また、新規に接続する無線通信装置10iが、監視パケットを受信した場合においてPollingReqパケットを送信した無線通信装置10が上位の無線通信装置10として選択したときのものでないときに、PollingReqパケットを送信した無線通信装置10にPollingReqNackパケットを送信するため、PollingReqNackパケットを受信した無線通信装置10は、無線通信装置10iが自身の下位でないことを把握でき、PollingReqNackパケットの通知がない場合と比較して下位の無線通信装置10か否かを把握する時間を減少させることができる。
【符号の説明】
【0080】
6 制御装置
7 基地局
9 無線局
10 無線通信装置
20 アンテナ
21 RF部
22 周波数変換部
23 信号処理部
24 メモリ
25 通信インターフェイス
26 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継路のグループに所属する複数の無線通信装置(10)によって上位の該無線通信装置から下位の該無線通信装置に対してマルチホップ通信がなされ、複数の前記グループを含むマルチホップネットワークに、新規の無線通信装置(10i)が接続する際の無線ネットワークシステム通信方法において、
前記無線通信装置が自身の前記グループに所属する全ての無線通信装置の個数を表す所属個数を保持する情報保持段階と、
前記新規の無線通信装置が前記マルチホップネットワークに接続するための参加パケット(Joinパケット)を配信する参加パケット配信段階と、
前記新規の無線通信装置から送信された参加パケットを受信した前記無線通信装置が前記所属個数を含む参加応答パケット(ChannelInfoパケット)を前記新規の無線通信装置に送信する参加応答パケット送信段階と、
前記新規の無線通信装置が、複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択する上位選択段階と、
を備えたことを特徴とする無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項2】
前記新規の無線通信装置は、前記参加パケット配信段階において前記参加パケットを所定回数繰り返して配信し、
前記上位選択段階において、前記参加パケット配信段階で所定回数繰り返して配信するまでに複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択することを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項3】
最上位の前記無線通信装置が自身の前記下位の無線通信装置に関する情報を収集して前記所属個数を前記グループ毎に計算する所属個数計算段階と、
前記所属個数計算段階において、前記グループの前記所属個数を該当する前記グループに所属する前記無線通信装置に通知する所属個数通知段階と、
前記情報保持段階において前記所属個数通知段階で通知された前記所属個数を前記無線通信装置それぞれが保持する段階と、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項4】
前記グループは、前記上位の無線通信装置から前記下位の無線通信装置に対してマルチホップ通信するためのチャネルに対応付いていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項5】
前記情報保持段階において、前記無線通信装置が前記所属個数に加えて前記最上位の無線通信装置からのホップ数を保持しており、
前記参加応答パケット送信段階において、前記新規の無線通信装置から送信された参加パケットを受信した前記無線通信装置が前記所属個数および前記ホップ数を含む参加応答パケットを前記新規の無線通信装置に送信し、
前記上位選択段階において、前記新規の無線通信装置が、複数の前記参加応答パケットを受信した場合において、前記参加応答パケットに含まれるホップ数が閾値以下の前記無線通信装置のうち、前記所属個数が最も少ない前記無線通信装置を自身の前記上位の無線通信装置として選択することを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の無線ネットワークシステム通信方法。
【請求項6】
グループに所属する複数の無線局によって上位の該無線局から下位の該無線局に対してマルチホップ通信がなされ、複数の前記グループを含むマルチホップネットワークに新規に接続する無線通信装置において、
前記マルチホップネットワークに新規に接続するための参加パケットを配信する参加パケット配信部と、
前記参加パケットを受信した前記無線局から、前記無線局が自身の前記グループに所属する全ての無線通信装置の個数を表す所属個数を含む参加応答パケットを受信する参加応答パケット受信部と、
前記参加応答パケット受信部によって複数の前記参加応答パケットを受信した場合に、最も少ない前記所属個数を含む前記参加応答パケットを送信した前記無線局を自身の前記上位の無線局として選択する上位選択部と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−226325(P2010−226325A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70275(P2009−70275)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(307030588)アンリツネットワークス株式会社 (8)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】