説明

無線フィールド機器、機器管理システム、及び機器管理方法

【課題】設定情報の変更を制限することによって安全性を高めることができる無線フィールド機器、機器管理システム、及び機器管理方法を提供する。
【解決手段】無線フィールド機器1aは、無線ネットワークを介した無線通信を行う無線通信部11と、機器を特定する機器情報、無線ネットワークを介した無線通信を実現するための通信設定情報、及び機器の動作を規定する機器設定情報のうちの少なくとも1つを含む設定情報C1を記憶する記憶部14と、設定情報C1の変更禁止を示す禁止情報が無線通信部11で受信された場合に、設定情報C1の変更を制限する制御を行うロック制御部15bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線フィールド機器並びに当該機器の管理を行う機器管理システム及び機器管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器は、流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器の総称である。従来のフィールド機器は、プラント等に敷設された有線のフィールドバスを介して測定信号や制御信号等の各種信号の送受信を行うものが殆どであったが、近年では、国際計測制御学会(ISA:International Society of Automation)で策定されたインダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠したフィールド機器(無線フィールド機器)が実現されている。
【0003】
上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した通信システムは、大別すると、上記の無線フィールド機器、無線ゲートウェイ、及び機器管理装置から構成される。無線ゲートウェイは、無線フィールド機器との間で無線ネットワークを形成し、無線ネットワークに参入している無線フィールド機器の動作を制御するとともに無線フィールド機器で得られる各種データの収集等を行う。また、機器管理装置は、通信線によって無線ゲートウェイに接続されて、無線ゲートウェイを介して無線フィールド機器の管理を行う装置である。
【0004】
ここで、上記の無線フィールド機器を無線ネットワークに参入させるには、参入する側の無線フィールド機器に対して「プロビジョニング(Provisioning)」と呼ばれる機器情報の設定作業を行うとともに、参入される側の無線ゲートウェイに対して「プロビジョニング」を行った無線フィールド機器を特定する機器情報の登録作業を行う必要がある。無線フィールド機器に対する「プロビジョニング」は、例えば無線フィールド機器との間で赤外線通信が可能なプロビジョニングデバイスと呼ばれる機器を用いて作業者により行われ、無線ゲートウェイに対する登録作業は上記の機器管理装置を用いて管理者により行われる。
【0005】
無線ゲートウェイに登録された機器情報と一致する機器情報が設定された無線フィールド機器は無線ゲートウェイによって無線ネットワークへの参入が許可され、それ以外の機器情報が設定された無線フィールド機器は無線ゲートウェイによって無線ネットワークへの参入が拒否される。尚、技術分野は異なるが、以下の特許文献1には、ハンドセットの再プロビジョニング及び再プログラミングにおけるセキュリティを改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−192158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、無線ゲートウェイとの間の通信経路が確立されて無線ネットワークに参入している状態の無線フィールド機器に対してプロビジョニングが行われ、無線通信を行うために必要な通信設定情報や上述した機器情報等の設定情報が変更されると、無線ゲートウェイとの間の通信経路が切断されてしまう。同様に、無線ネットワークに参入している状態にある無線フィールド機器が存在するときに、無線ゲートウェイに登録された登録情報が変更されると、通信経路が切断される無線フィールド機器が生じてしまう。
【0008】
ここで、無線ゲートウェイに対する登録作業は、上述した通り、通信線によって無線ゲートウェイに接続された機器管理装置を用いて管理者により行われるため、登録情報が誤って変更されることは殆ど無いと考えられれる。しかしながら、無線フィールド機器に対するプロビジョニングはプロビジョニングデバイスを用いて赤外線通信により行われ、しかもプロビジョニングデバイスは熟練の作業者のみならず未熟な作業者にも操作されることがあることから、作業者の誤操作等により無線フィールド機器の設定情報が誤って変更される可能性が考えられる。
【0009】
また、無線フィールド機器に設定された設定情報は、作業者の誤操作等により誤って変更されるだけではなく、悪意のある作業者によって意図的に変更される可能性も考えられる。プラント等に設置された無線フィールド機器に対してこのような設定情報の変更がなされると、プラント等の稼働を停止せざるを得ない状況も生じ得るため、安全性の面から問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、設定情報の変更を制限することによって安全性を高めることができる無線フィールド機器、機器管理システム、及び機器管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の無線フィールド機器は、無線ネットワーク(N2)を介した無線通信を行う第1通信部(11)を備える無線フィールド機器(1a、1b)において、機器を特定する機器情報、前記無線ネットワークを介した無線通信を実現するための通信設定情報、及び機器の動作を規定する機器設定情報のうちの少なくとも1つを含む設定情報(C1)を記憶する記憶部(14)と、前記設定情報の変更禁止を示す禁止情報が前記第1通信部で受信された場合に、前記設定情報の変更を制限する制御を行う変更制御部(15b)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、設定情報の変更禁止を示す禁止情報が無線通信部で受信された場合に、設定情報の変更を制限する制御が変更制御部により行われる。
また、本発明の無線フィールド機器は、外部機器(2)と通信を行う第2通信部(12)を備えており、前記変更制御部が、前記設定情報の変更禁止を解除する解除情報が前記第1通信部で受信された場合に、前記第2通信部で受信される変更情報、或いは、前記第1通信部で受信される変更情報に基づいて前記設定情報を変更する制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の無線フィールド機器は、前記第2通信部で受信される前記変更情報に基づいて前記設定情報が変更される場合に、前記設定情報を変更しても良いか否かの確認表示を複数回に亘って表示部(13)に表示させる表示制御部(15d)を備えることを特徴としている。
また、本発明の無線フィールド機器は、前記変更制御部で前記設定情報の変更を制限する制御が行われている場合に、前記第2通信部で前記変更情報が受信されたときには、不正操作を示す警報を、前記第1通信部を介して前記無線ネットワークに送信する報知部(15c)を備えることを特徴としている。
本発明の機器管理システムは、無線フィールド機器の管理を行う機器管理システム(MS)であって、無線ネットワーク(N2)に接続される上記の何れかに記載の無線フィールド機器(1a、1b)と、前記無線フィールド機器に対して前記禁止情報を送信することにより前記無線フィールド機器の管理を行う機器管理装置(4)とを備えることを特徴としている。
本発明の機器管理方法は、無線フィールド機器(1a、1b)の管理を行う機器管理方法であって、無線ネットワーク(N2)に対する参入要求を行った無線フィールド機器を前記無線ネットワークに参入させる第1ステップ(S14)と、前記無線フィールド機器に設定された設定情報の変更禁止を示す禁止情報を、前記無線ネットワークを介して前記無線フィールド機器に送信する第2ステップ(S15)と、前記無線ネットワークを介して送信された前記禁止情報に基づいて、前記設定情報の変更を制限する制御を前記無線フィールド機器で行う第3ステップ(S16)とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設定情報の変更禁止を示す禁止情報が無線通信部で受信された場合に、変更制御部が設定情報の変更を制限する制御を行っているため、無線ネットワークに参入している無線フィールド機器の通信経路が、設定情報の変更によって切断されるといった事態を防止することができ、これにより安全性を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による機器管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による無線フィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による機器管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による無線フィールド機器、機器管理システム、及び機器管理方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による機器管理システムの全体構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の機器管理システムMSは、無線フィールド機器1a,1b、プロビジョニングデバイス2(外部機器)、無線ゲートウェイ3、及び機器管理装置4を備えており、機器管理装置4によって、無線フィールド機器1a,1b及び無線ゲートウェイ3の管理が行われる。尚、図1では2つの無線フィールド機器1a,1bを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0015】
無線フィールド機器1a,1bは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線フィールド機器1a,1bの動作は、無線ゲートウェイ3から送信されてくる制御データ、或いは、機器管理装置4から無線ゲートウェイ3を介して送信されてくる制御データに基づいて制御される。また、無線フィールド機器1a,1bで得られた測定データは無線ゲートウェイ3に収集される。
【0016】
また、無線フィールド機器1a,1bは、赤外線通信機能を有しており、外部の赤外線通信機器との間で各種情報の送受信が可能である。具体的に、無線フィールド機器1a,1bは、プロビジョニングデバイス2との間で赤外線通信を行って、各種の設定情報(例えば、無線ゲートウェイ3によって形成される無線ネットワークN2に参入するために必要な情報)を取得する。これら無線フィールド機器1a,1bには、プロビジョニングを行う作業者に対する各種メッセージや機器の状態が表示される液晶表示装置等の表示装置Dが設けられている。尚、無線フィールド機器1a,1bの内部構成の詳細については後述する。
【0017】
プロビジョニングデバイス2は、無線フィールド機器1a,1bとの間で赤外線通信が可能な端末装置であり、無線フィールド機器1a,1bの設置やメンテナンスを行う作業者によって操作され、無線フィールド機器1a,1bに対する各種情報の設定や変更を行う。ここで、プロビジョニングデバイス2を用いて無線フィールド機器1a,1bに設定される設定情報としては、無線フィールド機器1a,1bを特定する機器情報、無線ネットワークN2を介した無線通信を実現するための通信設定情報、無線フィールド機器1a,1bの動作を規定する機器設定情報等がある。
【0018】
具体的に、上記の機器情報は無線フィールド機器1a,1bの名称や型名等を示す情報であり、上記の通信設定情報は無線ゲートウェイ3のアドレス等を示す情報であり、上記の機器設定情報は測定レンジや無線フィールド機器1a,1bの機能等を示す情報である。これらの情報は、作業者の操作によってプロビジョニングデバイス2に入力され、プロビジョニングデバイス2と無線フィールド機器1a,1bとの間で赤外線通信が行われることによって無線フィールド機器1a,1bに設定される。
【0019】
無線ゲートウェイ3は、機器管理装置4が接続される有線ネットワークN1と、無線フィールド機器1a,1bが接続される無線ネットワークN2とを接続し、無線フィールド機器1a,1bと機器管理装置4との間で送受信される各種データの中継を行うとともに、機器管理装置4の管理の下で無線フィールド機器1a,1bを制御する。尚、無線ゲートウェイ3も上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0020】
具体的に、無線ゲートウェイ3は、機器管理装置4の管理の下で、無線ネットワークN2に参入している無線フィールド機器1a,1bの制御(例えば、弁の開閉等の制御)、及び無線ネットワークN2に参入している無線フィールド機器1a,1bで測定される測定データの収集等を行う。また、無線ゲートウェイ3には、無線ネットワークN2への参入が許可される無線フィールド機器を示す機器情報が登録されており、この機器情報を用いて新たな無線フィールド機器を無線ネットワークN2に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0021】
機器管理装置4は、有線ネットワークN1に接続されており、機器管理システムMSの管理者によって操作される装置であり、例えばデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ等で実現される。この機器管理装置4は、無線ゲートウェイ3との間で各種情報の授受を行い、或いは無線ゲートウェイ3を介して無線フィールド機器1a,1bに各種制御データを送信して、無線ゲートウェイ3及び無線フィールド機器1a,1bの管理を行う。
【0022】
例えば、機器管理装置4は、無線フィールド機器1a,1bに対し、無線フィールド機器1a,1bに設定された設定情報の変更を禁止する旨を示すロック信号(禁止情報)や、その禁止を解除する旨を示すロック解除信号(解除情報)を送信して無線フィールド機器1a,1bの管理を行う。このような管理を行うのは、無線フィールド機器1a,1bの設定情報が、作業者の誤操作等により誤って変更され、或いは、悪意のある作業者によって意図的に変更されるのを防止して安全性を高めるためである。
【0023】
次に、無線フィールド機器1a,1bの内部構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による無線フィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、無線フィールド機器1a,1bは同様の構成であるため、以下では無線フィールド機器1aのみについて説明し、無線フィールド機器1bについての説明は省略する。また、図2では、無線フィールド機器1aに設けられた構成のうち、本発明の説明を行う上で必要な構成のみを図示している。
【0024】
図2に示す通り、無線フィールド機器1aは、無線通信部11(第1通信部)、赤外線通信部12(第2通信部)、表示部13、記憶部14、及び制御部15を備える。無線通信部11は、制御部15の制御の下で、無線ネットワークN2を介した無線ゲートウェイ3との無線通信を行う。尚、無線通信部11で行われる無線通信は、無線通信規格ISA100.11aに準拠したものである。赤外線通信部12は、プロビジョニングデバイス2との間で赤外線通信を行って各種の設定情報を取得する。表示部13は、図1に示した表示装置Dを備えており、制御部15の制御の下でプロビジョニングを行う作業者に対する各種メッセージや機器の状態等を表示装置Dに表示する。
【0025】
記憶部14は、例えば不揮発性の半導体メモリを備えており、設定情報C1及びロック情報C2を記憶する。ここで、設定情報C1は、上述した機器情報、通信設定情報、及び機器設定情報等の情報である。また、ロック情報C2は、設定情報C1の変更を禁止する旨を示す情報である。このロック情報C2は、機器管理装置4からロック信号が送信された場合に制御部15によって記憶部14に記憶され、機器管理装置4からロック解除信号が送信された場合に制御部15によって記憶部14から消去される情報である。
【0026】
制御部15は、通信状態判定部15a、ロック制御部15b(変更制御部)、アラーム発行部15c(報知部)、及び表示制御部15dを備えており、無線フィールド機器1aの動作を統括して制御する。通信状態判定部15aは、無線通信部11により無線ネットワークN2を介した無線通信が可能であるか否かを判定する。具体的に、通信状態判定部15aは、無線ゲートウェイ3との間で通信セッションが確立されているか否かを判定する。
【0027】
ロック制御部15bは、記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を制限する制御(ロック制御)を行う。具体的に、ロック制御部15bは、通信状態判定部15aで無線ネットワークN2を介した無線通信が可能であると判定され、且つ、機器管理装置4からのロック信号が無線通信部11で受信されて制御部15によってロック情報C2が記憶部14に記憶された場合に設定情報C1の変更を制限する制御を行う。
【0028】
以上のロック制御が行われている間は、記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を指示する制御データ(変更情報)が無線通信部11及び赤外線通信部12の何れで受信されても、設定情報C1は変更されることはない。このような制御を行うのは、通信状態にある無線フィールド機器1aに記憶されている設定情報C1が、作業者の誤操作等により誤って変更され、或いは、悪意のある作業者によって意図的に変更されるのを防止して安全性を高めるためである。
【0029】
また、ロック制御部15bは、機器管理装置4からのロック解除信号が無線通信部11で受信され、制御部15によってロック情報C2が記憶部14から消去された場合に、無線通信部11又は赤外線通信部12で受信される制御データ(記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を指示する制御データ:変更情報)に基づいて、記憶部14に記憶された設定情報C1を変更する制御を行う。つまり、無線フィールド機器1aを管理する機器管理装置4からロック解除信号が送信された場合には、ロック制御を解除して設定情報C1の変更を可能とする制御を行う。
【0030】
アラーム発行部15cは、ロック制御部15bによってロック制御が行われている場合に、赤外線通信部12で上記の制御データが受信されたときには、不正操作がなされた旨を示す警報信号を、無線通信部11を介して機器管理装置4に送信する。前述した通り、記憶部14に記憶された設定情報C1は、作業者の誤操作によって変更される場合ばかりでなく、悪意のある作業者によって意図的に変更される場合もある。このため、ロック制御が行われている無線フィールド機器1aに対してなされた変更指示を不正操作とみなし、機器管理装置4に即座に通知することで安全性の向上を図ることとしている。
【0031】
表示制御部15dは、表示部13に対する表示制御を行う。具体的には、無線フィールド機器1aでロック制御が解除されている場合において、無線通信部11又は赤外線通信部12で受信される制御データに基づいて記憶部14に記憶された設定情報C1が変更されるときに、設定情報C1を変更しても良いか否かの確認メッセージを複数回に亘って表示部13に表示させる表示制御を行う。このような表示制御を行うのは、作業者に注意を促して作業者の誤操作等による誤った設定情報C1の変更を防止するためである。尚、作業者に対して注意を促す観点からは、同じ確認メッセージを複数回に亘って表示するのではなく、表示させる確認メッセージを表示の度に異ならせるのが望ましい。
【0032】
ここで、上述した制御部15の機能(通信状態判定部15a〜表示制御部15d)はハードウェアにより実現することもできるが、ソフトウェアにより実現することもできる。つまり、通信状態判定部15a〜表示制御部15dの機能を実現するプログラムをコンピュータに実行させることにより実現しても良い。例えば、通信状態判定部15a〜表示制御部15dの機能を実現するプログラムを記録媒体に記録しておき、記録媒体に記録されたデータの読み出しが可能なドライブ装置を用いて記録媒体に記録されたプログムをコンピュータにインストールすることにより、通信状態判定部15a〜表示制御部15dの機能をソフトウェアにより実現することが可能である。
【0033】
或いは、インターネット等のネットワークにコンピュータを接続し、記録媒体に記録されたプログラムと同様のプログラムをネットワークからコンピュータにダウンロード可能にしても良い。コンピュータにダウンロードされたプログラムは、上記のドライブ装置を用いてコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取る場合と同様にコンピュータにインストールすることができる。
【0034】
次に、上記構成における機器管理システムで行われる動作について説明する。尚、以下では、説明を簡単にするために、図1に示す機器管理システムMSの無線ネットワークN2に無線フィールド機器1bが既に参入しており、この無線ネットワークN2に対して無線フィールド機器1aを新たに参入させる場合に行われる動作を例に挙げて説明する。図3は、本発明の一実施形態による機器管理方法を示すフローチャートである。
【0035】
機器管理システムMSの無線ネットワークN2に対して新たに無線フィールド機器1aを参入させる場合には、まず作業者が無線フィールド機器1aに設定すべき情報をプロビジョニングデバイス2に入力する。具体的には、無線ネットワークN2のID(識別子)、ジョインキー、無線ゲートウェイ3のアドレス情報、無線フィールド機器1aの名称や型名を示す情報等を入力する。
【0036】
以上の入力作業が終了し、作業者がプロビジョニングデバイス2を操作して無線フィールド機器1aとの間で赤外線通信を行わせると、プロビジョニングデバイス2に入力された情報が無線フィールド機器1aに送信される。プロビジョニングデバイス2から送信された情報は、無線フィールド機器1aの赤外線通信部12で受信されて制御部15によって設定情報C1として記憶部14に記憶される。
【0037】
また、以上の作業とともに、機器管理システムMSの管理者が機器管理装置4を操作して、上記のプロビジョニングが行われた無線フィールド機器1a(無線ネットワークN2に参入させようとしている無線フィールド機器1a)の機器情報を無線ゲートウェイ3に登録する作業を行う。尚、この作業は、無線フィールド機器1aに対するプロビジョニングが実施される前に行っても良く、プロビジョニングと並行して行っても良い。
【0038】
無線フィールド機器1aに対するプロビジョニングが終了すると、作業者によって無線フィールド機器1aを現場に設置する作業が行われ、設置作業完了後に無線フィールド機器1aの電源が投入される。無線フィールド機器1aの電源が投入されると、無線フィールド機器1aと無線ゲートウェイ3との間の無線通信が開始され、無線フィールド機器1aから無線ゲートウェイ3(プロビジョニングによりアドレス情報が設定された無線ゲートウェイ3)に向けてジョイン要求が送信される(ステップS11)。
【0039】
無線フィールド機器1aから送信されたジョイン要求は無線ゲートウェイ3で受信され、ジョイン要求を行った無線フィールド機器1aの機器情報が登録されているか否かが無線ゲートウェイ3で判断される(ステップS12)。無線フィールド機器1aの機器情報が登録されてないと判断された場合(判断結果が「NO」の場合)には、無線ゲートウェイ3から無線フィールド機器1aに対してジョインを拒否する旨の信号が送信され、これにより無線ネットワークN2への無線フィールド機器1aの参入が拒否される(ステップS13)。
【0040】
これに対し、無線フィールド機器1aの機器情報が登録されていると判断された場合(判断結果が「YES」の場合)には、無線ゲートウェイ3から無線フィールド機器1aに対してジョインを許可する旨の信号が送信され、これにより無線ネットワークN2への無線フィールド機器1aの参入が許可される(ステップS14:第1ステップ)。無線フィールド機器1aのジョインが許可されると、無線フィールド機器1aと無線ゲートウェイ3との間に通信セッションが確立され、無線フィールド機器1aは無線ネットワークN2を介した無線通信が可能な状態になる。すると、無線フィールド機器1aの制御部15に設けられた通信状態判定部15aでは、無線ネットワークN2を介した無線通信が可能であると判定される。
【0041】
また、無線フィールド機器1aのジョインが許可されると、無線ネットワークN2に新たに無線フィールド機器1aが参入した旨を示す信号が無線ゲートウェイ3から機器管理装置4に送信される。この信号が機器管理装置4に受信されると、機器管理装置4からジョインが許可された無線フィールド機器1aに対し、無線フィールド機器1aの記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を禁止する旨を示すロック信号が送信される(ステップS15:第2ステップ)。
【0042】
機器管理装置4から送信されたロック信号が無線フィールド機器1aの無線通信部11で受信されると、制御部15によってロック情報C2が記憶部14に記憶される。すると、通信状態判定部15aでは無線通信可能であると判定されているため、制御部15に設けられたロック制御部15bによって、記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を制限する制御(ロック制御)が行われる(ステップS16:第3ステップ)。
【0043】
ロック制御部15bによるロック制御が開始されると、制御部15に設けられたアラーム発行部15cによって、記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を指示する制御データが赤外線受信部12で受信されたか否かが判断される(ステップS17)。この制御データが赤外線受信部12で受信されない場合には、アラーム発行部15cの判断結果が「NO」になり、機器管理装置4からのロック解除信号が無線通信部11で受信されたか否かがロック制御部15bで判断される(ステップS18)。ロック解除信号が受信されない場合には、ロック制御部15bの判断結果が「NO」になり、ステップS16に戻ってロック制御が継続される。
【0044】
他方、設定情報C1の変更を指示する制御データが赤外線受信部12で受信されたと判断した場合(ステップS17の判断結果が「YES」の場合)には、アラーム発行部15cによって不正な操作がなされた旨を示す警報信号が機器管理装置4に送信される(ステップS19)。ここで、例えば機器管理装置4に送信された警報信号を参照した管理者が現場の作業員に指示することにより、不正操作がなされたフィールド機器1aの点検等を迅速に行うことが可能になる。尚、警報信号が送信された後は無線フィールド機器1aではロック制御が継続される(ステップS16)。
【0045】
また、ロック制御部15bによってロック制御が行われている最中に、機器管理装置4からのロック解除信号が無線通信部11で受信された場合には、ステップS18の判断結果が「YES」になり、記憶部14に記憶されたロック情報C2が制御部15によって消去される。すると、ロック制御部15bは、ロック制御を解除して、無線通信部11又は赤外線通信部12で受信される制御データ(記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を指示する制御データ)に基づいて、記憶部14に記憶された設定情報C1を変更する制御を行う(ステップS20)。
【0046】
ここで、無線フィールド機器1aの無線通信部11又は赤外線通信部12で受信される制御データは、必ずしも正しいものであるとは限らない。例えば、作業者によってプロビジョニングデバイス2に対する誤操作がなされた場合には、誤った制御データが赤外線通信部12に受信されることがある。このような誤った制御データに基づいて設定情報C1が変更されると、無線フィールド機器1aの意図しない動作が行われることがある。このため、ロック制御部15bによって記憶部14に記憶された設定情報C1の変更が行われる場合には、設定情報C1の変更を実行するか否かを作業者に確認する確認メッセージを表示部13に表示する制御が表示制御部15dによって行われる。
【0047】
本実施形態では、異なる確認メッセージを複数回に亘って表示部13に表示させる制御が表示制御部15dによって行われる。例えば、以下の1回目〜3回目に示す通り、3通りの異なる確認メッセージが表示部13に表示される。
1回目:「現在通信中です、設定を変更しますか?」
2回目:「設定変更すると、通信が切断される可能性があります。実行しますか?」
3回目:「本当に実行しますか?」
このような確認メッセージが複数回に亘って表示部13に表示されることにより、作業者に注意を促すことができ、作業者の誤操作を低減することができる。
【0048】
或いは、確認メッセージの表示回数は1回であるものの、その内容を表示の度に変える制御が表示制御部15dによって行われる。例えば、以下の表示例1,2に示す確認メッセージがランダムに表示部13に表示される。
表示例1:
「現在通信中です!
設定変更すると、通信が切断される可能性があります。実行しますか?」
表示例2:
「現在通信中です!
設定変更により、通信が切断される可能性がありますので実行しません
いいえを選択すると実行されます。」
上記の表示例1が表示部13に表示された場合と、上記の表示例2が表示部13に表示された場合とでは、作業者が「はい」を回答するのか、「いいえ」を回答するのかが変わるため、作業者に注意を促すことができ、作業者の誤操作を低減することができる。
【0049】
次に、機器管理装置4からのロック信号が無線通信部11で受信されたか否かがロック制御部15bで判断される(ステップS21)。ここで、機器管理装置4からのロック信号は、作業者が機器管理システムMSの管理者に対し、無線フィールド機器1aに設定された設定情報C1を変更する作業が終了した旨の連絡(例えば、電話連絡)を行うことにより送信される。ロック信号が受信されない場合には、ロック制御部15bの判断結果が「NO」になり、ステップS20に戻って設定情報C1の変更が継続される。
【0050】
これに対し、機器管理装置4からのロック信号が無線フィールド機器1aの無線通信部11で受信されると、制御部15によってロック情報C2が記憶部14に記憶される。すると、ステップS21の判断結果が「YES」になり、通信状態判定部15aの判定結果が参照された上で、ロック制御部15bによってロック制御が行われる(ステップS16)。尚、通信状態判定部15aによって通信不可能と判定されている場合には、ロック制御部15bによるロック制御は行われない。
【0051】
以上の通り、本実施形態では、無線フィールド機器1aについて、無線ネットワークN2を介した無線通信が可能であると通信状態判定部15aで判定され、且つ、機器管理装置4からのロック情報が受信された場合に、ロック制御部15bが記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を制限するロック制御を行うようにしている。かかるロック制御を行うことで、設定情報C1が作業者の誤操作等により誤って変更され、或いは、悪意のある作業者によって意図的に変更されるのを防止することができるため、安全性を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態では、以上のロック制御が行われている場合に、記憶部14に記憶された設定情報C1の変更を指示する制御データが無線通信部11又は赤外線通信部12で受信されたときには、不正操作がなされた旨を示す警報信号を、無線通信部11を介して機器管理装置4に送信している。これにより、不正操作がなされたフィールド機器の点検等を迅速に行うことが可能になり、これによっても安全性を高めることができる。更に、以上のロック制御が解除されている場合に設定情報C1の変更が行われるときには、表示部13に対して複数回に亘る異なる確認メッセージの表示等を行っているため、作業者に注意を促すことができ、作業者の誤操作を低減することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態による無線フィールド機器、機器管理システム、及び機器管理方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、機器情報、通信設定情報、及び機器設定情報が設定情報C1に含まれており、設定情報C1に対するロック制御を行うことで、これら機器情報、通信設定情報、機器設定情報の変更を一括して制限する例について説明した。しかしながら、これら機器情報、通信設定情報、機器設定情報の各々について個別にロック制御を行っても良い。更には、情報の種類や性質等に応じて設定情報C1をグループ化し、グループ毎に内容の変更を制限しても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、無線フィールド機器1a,1b内の記憶部14にロック情報C2が記憶される例について説明した。しかしながら、機器管理装置4が無線フィールド機器1a,1bのロック情報C2を一括して管理するようにしても良い。ロック情報C2が機器管理装置4で一括管理される場合には、無線フィールド機器1a,1bが機器管理装置4に対してロック情報の有無を問い合わせ、その問い合わせ結果に応じてロック制御を実施する。
【0055】
また、上記実施形態では、ロック情報C2が無線フィールド機器1a,1b毎に設定される例について説明した。しかしながら、機器管理システムMS全体について共通したロック情報(システムロック情報)を設定し、システムロック情報のみに基づいて全ての無線フィールド機器1a,1bに対するロック制御を可能としてもよい。このようなシステムロック情報を用いることで、全ての無線フィールド機器1a,1bでロック制御が行われる状況を瞬時に実現することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、プロビジョニングデバイス2との間で赤外線通信を行って各種の設定情報を取得する無線フィールド機器1a,1bを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、プロビジョニングデバイス等の外部機器との間で、Bluetooth(登録商標)やIEEE802.11a/b/g等の無線通信規格によって無線通信を行って各種の設定情報を取得する無線フィールド機器、或いは、RS−232C等の有線通信規格によって有線通信を行って各種の設定情報を取得する無線フィールド機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b 無線フィールド機器
2 プロビジョニングデバイス
4 機器管理装置
11 無線通信部
12 赤外線通信部
13 表示部
14 記憶部
15b ロック制御部
15c アラーム発行部
15d 表示制御部
C1 設定情報
MS 機器管理システム
N2 無線ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを介した無線通信を行う第1通信部を備える無線フィールド機器において、
機器を特定する機器情報、前記無線ネットワークを介した無線通信を実現するための通信設定情報、及び機器の動作を規定する機器設定情報のうちの少なくとも1つを含む設定情報を記憶する記憶部と、
前記設定情報の変更禁止を示す禁止情報が前記第1通信部で受信された場合に、前記設定情報の変更を制限する制御を行う変更制御部と
を備えることを特徴とする無線フィールド機器。
【請求項2】
外部機器と通信を行う第2通信部を備えており、
前記変更制御部は、前記設定情報の変更禁止を解除する解除情報が前記第1通信部で受信された場合に、前記第2通信部で受信される変更情報、或いは、前記第1通信部で受信される変更情報に基づいて前記設定情報を変更する制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の無線フィールド機器。
【請求項3】
前記第2通信部で受信される前記変更情報に基づいて前記設定情報が変更される場合に、前記設定情報を変更しても良いか否かの確認表示を複数回に亘って表示部に表示させる表示制御部を備えることを特徴とする請求項2記載の無線フィールド機器。
【請求項4】
前記変更制御部で前記設定情報の変更を制限する制御が行われている場合に、前記第2通信部で前記変更情報が受信されたときには、不正操作を示す警報を、前記第1通信部を介して前記無線ネットワークに送信する報知部を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の無線フィールド機器。
【請求項5】
無線フィールド機器の管理を行う機器管理システムであって、
無線ネットワークに接続される請求項1から請求項4の何れか一項に記載の無線フィールド機器と、
前記無線フィールド機器に対して前記禁止情報を送信することにより前記無線フィールド機器の管理を行う機器管理装置と
を備えることを特徴とする機器管理システム。
【請求項6】
無線フィールド機器の管理を行う機器管理方法であって、
無線ネットワークに対する参入要求を行った無線フィールド機器を前記無線ネットワークに参入させる第1ステップと、
前記無線フィールド機器に設定された設定情報の変更禁止を示す禁止情報を、前記無線ネットワークを介して前記無線フィールド機器に送信する第2ステップと、
前記無線ネットワークを介して送信された前記禁止情報に基づいて、前記設定情報の変更を制限する制御を前記無線フィールド機器で行う第3ステップと
を含むことを特徴とする機器管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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