説明

無線中継装置および無線通信方法

【課題】周囲に存在する他の無線中継装置の送受信タイミングに応じて、自動的に端末側ユニットの送受信タイミングを設定する無線中継装置を提供することである。
【解決手段】本発明に係る無線中継装置は、TDD方式を採用する無線通信システムにおいて、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置であって、無線基地局または他の無線中継装置とデータを送受信する基地局側通信部22と、無線端末または他の無線中継装置とデータを送受信する端末側通信部32と、端末側通信部32から受け取った受信データに基づいて当該無線中継装置の周囲の他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する端末側制御部34とを備え、端末側制御部34は、判定した送受信タイミングに基づいて端末側通信部32の送受信タイミングを設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置および無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線端末が無線基地局と通信するためには、無線基地局からの無線電波が届く範囲(サービスエリア)に無線端末が位置する必要がある。しかし、山岳地帯や高層ビル等が建ち並ぶ市街地には障害物が多いため無線電波が届きにくい領域が存在する。また、屋外に設置された無線基地局からは、電波が届かない領域(例えば、建物の内部や地下)が多く存在する。特に、IEEE標準規格802.16eを基に規格化されたWiMAX(登録商標)(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の高速無線通信方式においては、2.5GHz以上の周波数帯が使用されるが、このような高周波数帯の電波は直進性が強く障害物を回りこむ性質が弱いため、障害物の影響を強く受ける。このような電波が届かない領域をカバーするため、無線基地局と無線端末との間の無線電波を中継する無線中継装置(レピータ)が必要となる。
【0003】
無線中継装置は、サービスエリアを拡充できるという利点がある反面、無線中継装置が発する電波が他の電波との干渉を引き起こすという欠点がある。無線中継装置に起因する干渉の一つには、無線基地局と通信を行う基地局側ユニット(ドナー部)と、無線端末と通信を行う端末側ユニット(サービス部)との間における相互干渉が挙げられる。
【0004】
図6に、TDD(Time Division Duplex)方式を採用する無線通信システムにおいて、無線中継装置が通常の送受信タイミングで動作している場合の、基地局側ユニットと端末側ユニットとの間の相互干渉の様子を示す。TDD方式とは、時間を細かく区分して送信と受信とを高速に切り換える方式である。
【0005】
通常の送受信タイミング(以下、「通常タイミング」と称する)においては、無線基地局がダウンリンク(DL)信号を送信する第1期間において、無線中継装置の基地局側ユニットは無線基地局からダウンリンク信号を受信し、端末側ユニットは無線端末にダウンリンク信号を送信する。また、無線基地局がアップリンク(UL)信号を受信する第2期間において、無線中継装置の基地局側ユニットは無線基地局にアップリンク信号を送信し、端末側ユニットは無線端末からアップリンク信号を受信する。
【0006】
このように、無線中継装置が通常タイミングで動作している場合、第1期間においては、無線基地局からのダウンリンク信号を受信中の基地局側ユニットは、端末側ユニットが無線端末に送信するダウンリンク信号によって干渉を受け、劣化したダウンリンク信号を無線基地局から受信することになってしまう。また、第2期間においては、無線端末からのアップリンク信号を受信中の端末側ユニットは、基地局側ユニットが無線基地局に送信するアップリンク信号によって干渉を受け、劣化したアップリンク信号を無線端末から受信することになってしまう。
【0007】
このような相互干渉を低減するため、従来は、無線中継装置の基地局側ユニットと端末側ユニットとを物理的に離れた位置に設置し、基地局側ユニットと端末側ユニットの間のアイソレーションを向上させる措置などがとられてきた。しかしながら、このような対処法では、無線中継装置を同一筐体に収めて小型化することができない。
【0008】
そこで、無線中継装置を小型化するために、相互干渉を抑制するための方法として図7に示すような無線通信方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該方法は、端末側ユニットの送受信タイミングを通常タイミングの場合の送受信タイミングから反転させた送受信タイミング(以下、「反転タイミング」と称する)とする方法である。すなわち、無線基地局がダウンリンク信号を送信する第1期間において、無線中継装置の基地局側ユニットは無線基地局からダウンリンク信号を受信し、端末側ユニットは無線端末からアップリンク信号を受信する。また、無線基地局がアップリンク信号を受信する第2期間において、無線中継装置の基地局側ユニットは無線基地局へアップリンク信号を送信し、端末側ユニットは無線端末へダウンリンク信号を送信する。
【0009】
このように、無線中継装置の基地局側ユニットと端末側ユニットとが同じタイミングで送信し、また同じタイミングで受信するようにすることにより、通常タイミングのように片方のユニットが受信中に他方のユニットの送信信号からの干渉を受けるということがなくなるため、上述のような基地局側ユニットと端末側ユニットとの間の相互干渉を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−56711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、無線中継装置を単体で考えると、反転タイミングで動作する無線中継装置(以下、「反転タイミング型無線中継装置」と称する)は、基地局側ユニットと端末側ユニットとの間の相互干渉を避けることができる。しかしながら、反転タイミング型無線中継装置と通常タイミングで動作する無線中継装置(以下、「通常タイミング型無線中継装置」と称する)とが近い距離に共存すると、反転タイミング型無線中継装置と通常タイミング型無線中継装置同士がお互いに妨害を与え合い、それぞれの無線中継装置が受信する信号が干渉を受けて劣化する。
【0012】
例えば、第1期間において、反転タイミング型無線中継装置は、基地局側ユニットが無線基地局からのダウンリンク信号を受信し、端末側ユニットが無線端末からのアップリンク信号を受信するが、このときに、近くに通常タイミング型無線中継装置が存在すると、当該通常タイミング型無線中継装置の端末側ユニットが送信するダウンリンク信号によって干渉を受ける。また、第2期間において、通常タイミング型無線中継装置は、端末側ユニットが無線端末からのアップリンク信号を受信するが、このときに、近くに反転タイミング型無線中継装置が存在すると、当該反転タイミング型無線中継装置の基地局側ユニットが送信するアップリンク信号および端末側ユニットが送信するダウンリンク信号によって干渉を受ける。
【0013】
これを避けるため、従来は、無線中継装置を増設する場合は、当該設置場所において人が電波測定を実施し、周囲に存在する無線中継装置の送受信タイミングが通常タイミングと反転タイミングのどちらであるかを確認した上で、当該設置場所に設置する無線中継装置を通常タイミング型無線中継装置と反転タイミング型無線中継装置のどちらかにするかを決定する必要があった。このように、無線中継装置の設置には多くの工数が必要となるという問題があった。
【0014】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、周囲に存在する他の無線中継装置の送受信タイミングに応じて、自動的に端末側ユニットの送受信タイミングを設定する無線中継装置および無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する第1の観点に係る無線中継装置の発明は、
TDD方式を採用する無線通信システムにおいて、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置であって、
前記無線基地局または他の無線中継装置とデータを送受信する基地局側通信部と、
前記無線端末または他の無線中継装置とデータを送受信する端末側通信部と、
前記端末側通信部から受け取った受信データに基づいて当該無線中継装置の周囲の他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する端末側制御部と
を備え、
前記端末側制御部は、判定した前記送受信タイミングに基づいて前記端末側通信部の送受信タイミングを設定することを特徴とする。
【0016】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る無線中継装置であって、前記端末側制御部は、判定した前記送受信タイミングに基づいて、判定した当該送受信タイミングと同一の送受信タイミングである第1送受信タイミングまたは当該第1送受信タイミングと異なる送受信タイミングである第2送受信タイミングのいずれかに前記端末側通信部の送受信タイミングを設定することを特徴とする。
【0017】
第3の観点に係る発明は、第2の観点に係る無線中継装置であって、前記第2送受信タイミングは、前記第1送受信タイミングを反転させた送受信タイミングであることを特徴とする。
【0018】
第4の観点に係る発明は、第2または第3の観点に係る無線中継装置であって、
前記端末側制御部は、
判定した前記送受信タイミングが前記第1送受信タイミングの場合は、前記端末側通信部の送受信タイミングを前記第1送受信タイミングに設定し、
判定した前記送受信タイミングが前記第2送受信タイミングの場合は、前記端末側通信部の送受信タイミングを前記第2送受信タイミングに設定することを特徴とする。
【0019】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0020】
例えば、本発明を方法として実現させた第5の観点に係る無線通信方法の発明は、
TDD方式を採用する無線通信システムにおいて、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置の無線通信方法であって、当該無線中継装置が、
受信データに基づいて当該無線中継装置の周囲の他の無線中継装置の送受信タイミングを判定するステップと、
判定した前記送受信タイミングに基づいて当該無線中継装置の送受信タイミングを設定するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周囲に存在する他の無線中継装置の送受信タイミングに応じて、自動的に端末側ユニットの送受信タイミングを設定する無線中継装置および無線通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの起動モード時における概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る無線中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無線中継装置の起動モード時の第1の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る無線中継装置の起動モード時の第2の処理を示すフローチャートである。
【図6】通常タイミング型無線中継装置の送受信タイミングを示す図である。
【図7】反転タイミング型無線中継装置の送受信タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略図である。無線通信システムは、無線基地局と無線端末と無線中継装置10とから構成されている。無線中継装置10は、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの起動モード時における概略図である。ここで起動モードとは、電源投入時などにおいて無線中継装置10が通常とは異なる動作を一時的にしている状態である。起動モードとは、無線中継装置10が、端末側ユニット30の送受信タイミングを通常タイミングと反転タイミングのいずれにするかを決定し設定するモードである。起動モード時においては、端末側ユニット30は、通常動作時のように無線端末とデータを送受信するのではなく、周囲の無線基地局または他の無線中継装置からのデータを受信する。
【0026】
端末側ユニット30は、起動モード時においては、無線端末ではなく周囲の無線基地局または他の無線中継装置から受信データを受け取り、当該受信データを送信した装置が無線基地局と他の無線中継装置のいずれであるかを判定する。また、端末側ユニット30は、当該受信データを送信した装置が他の無線中継装置であった場合は、当該他の無線中継装置の送受信タイミングが通常タイミングと反転タイミングのいずれであるかを判定する。端末側ユニット30の機能については、後に詳述する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。無線中継装置10は、基地局側ユニット20と端末側ユニット30とを備える。
【0028】
まず、基地局側ユニット20の機能ブロックについて説明する。基地局側ユニット20は、基地局側通信部22と基地局側制御部24とを備える。
【0029】
基地局側通信部22は、アンテナを介して無線基地局とデータを送受信する。基地局側通信部22は、第1期間に無線基地局からダウンリンクデータを受信し、第2期間に無線基地局へアップリンクデータを送信する。第1期間と第2期間とは交互に繰り返され、それに伴い基地局側通信部22は無線基地局との間でダウンリンクデータの受信とアップリンクデータの送信を繰り返し実行する。
【0030】
また、基地局側通信部22は、アンテナを介して他の無線中継装置とデータを送受信することも可能である。この場合、基地局側通信部22は、他の無線中継装置の端末側ユニットの送受信タイミングが、通常タイミングである場合は、第1期間に他の無線中継装置からダウンリンクデータを受信し、第2期間に他の無線中継装置へアップリンクデータを送信する。一方、基地局側通信部22は、他の無線中継装置の端末側ユニットの送受信タイミングが、反転タイミングである場合は、第1期間に他の無線中継装置へアップリンクデータを送信し、第2期間に他の無線中継装置からダウンリンクデータを受信する。いずれの送受信タイミングであっても、第1期間と第2期間とは交互に繰り返され、それに伴い基地局側通信部22は他の無線中継装置との間でダウンリンクデータの受信とアップリンクデータの送信を繰り返し実行する。
【0031】
基地局側制御部24は、基地局側通信部22をはじめとして基地局側ユニット20の全体を制御する。基地局側制御部24は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0032】
基地局側制御部24は、通信を確立している無線基地局または他の無線中継装置の送信タイミングを基地局側通信部22を介して受け取る受信データから抽出し、当該送信タイミングを端末側制御部34に提供する。
【0033】
続いて、端末側ユニット30の機能ブロックについて説明する。端末側ユニット30は、端末側通信部32と端末側制御部34とを備える。
【0034】
端末側通信部32は、アンテナを介して無線端末または他の無線中継装置とデータを送受信する。端末側通信部32は、通常タイミングと反転タイミングの2通りのいずれか設定された送受信タイミングで無線端末または他の無線中継装置とデータを送受信し得る。
【0035】
端末側通信部32は、通常タイミングで動作する場合は、第1期間に無線端末または他の無線中継装置へダウンリンクデータを送信し、第2期間に無線端末または他の無線中継装置からアップリンクデータを受信する。第1期間と第2期間とは交互に繰り返され、それに伴い端末側通信部32は無線端末または他の無線中継装置との間でダウンリンクデータの送信とアップリンクデータの受信を繰り返し実行する。
【0036】
端末側通信部32は、反転タイミングで動作する場合は、第1期間に無線端末または他の無線中継装置からアップリンクデータを受信し、第2期間に無線端末または他の無線中継装置へダウンリンクデータを送信する。第1期間と第2期間とは交互に繰り返され、それに伴い端末側通信部32は無線端末または他の無線中継装置との間でアップリンクデータの受信とダウンリンクデータの送信を繰り返し実行する。
【0037】
端末側制御部34は、端末側通信部32をはじめとして端末側ユニット30の全体を制御する。端末側制御部34は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。なお、本実施形態においては、基地局側ユニット20が基地局側制御部24を備え、端末側ユニット30が端末側制御部34を備えるというように、各ユニットが各々の制御部を備える構成として説明したが、本発明は、この構成に限定されるわけではない。例えば、基地局側ユニット20と端末側ユニット30とを1つの制御部で制御する構成とすることもできる。
【0038】
無線中継装置10の電源投入時などのような起動モード時における端末側制御部34の動作について詳述する。端末側制御部34は、端末側通信部32を介して受け取った受信データに含まれる基地局IDを解析して、受け取った受信データが無線基地局によって送信されたものか、周囲に存在する他の無線中継装置によって送信されたものかを判定する。無線基地局と無線中継装置とは異なる値の範囲の基地局IDを割り振られる運用がされているため、端末側制御部34は、基地局IDによって無線基地局と無線中継装置のどちらにより送信されたデータかを判定することができる。
【0039】
端末側制御部34は、起動モード時に受信したデータが周囲の他の無線中継装置が送信したものと判定した場合、当該他の無線中継装置からの受信データのタイミングと、通信を確立している無線基地局から基地局側制御部24が受け取った当該無線基地局の送信タイミングとを比較して、周囲の他の無線中継装置が通常タイミングと反転タイミングのいずれのタイミングで動作しているかを判定する。
【0040】
端末側制御部34は、周囲の他の無線中継装置と無線中継装置10とが相互干渉することを避けるため、他の無線中継装置の送受信タイミングが通常タイミングである場合は、端末側通信部32の送受信タイミングを通常タイミングに設定し、他の無線中継装置の送受信タイミングが反転タイミングである場合は、端末側通信部32の送受信タイミングを反転タイミングに設定する。
【0041】
図4のフローチャートを参照しながら、起動モード時に無線中継装置10が送受信タイミングを通常タイミングと反転タイミングのいずれかのタイミングに設定する第1の処理を説明する。図4に示すフローチャートによる第1の処理は、通常、電源投入時などに実行される。なお、図4に示すフローチャートによる第1の処理では、基地局側ユニット20は、無線基地局との間で通信を確立するものとする。
【0042】
基地局側ユニット20は、無線基地局をスキャンし最適な無線基地局との間で通信を確立する(ステップS101)。基地局側制御部24は、通信を確立している無線基地局から基地局側通信部22を介して受け取った受信データから当該無線基地局の送信タイミングを抽出し、抽出した当該送信タイミングを端末側制御部34に提供する(ステップS102)。
【0043】
端末側通信部32は、周囲の無線基地局および周囲の他の無線中継装置が送信するデータを受信する(ステップS103)。端末側制御部34は、端末側通信部32から周囲の無線基地局および周囲の他の無線中継装置が送信するデータを受け取り、受け取ったデータから基地局IDが検出できるか否かを判定する(ステップS104)。
【0044】
ステップS104において基地局IDが検出できなかった場合、端末側制御部34は、周囲の無線基地局および他の無線中継装置が干渉による影響を受ける範囲には存在しないものと判定する。この場合は、端末側通信部32の送受信タイミングを通常タイミングと反転タイミングのいずれにしても干渉による影響を受けないため、端末側制御部34は、端末側通信部32の送受信タイミングを通常タイミングか反転タイミングかいずれかのタイミングに設定する(ステップS105)。この場合にいずれのタイミングに設定するかは、例えば、初期設定で反転タイミングを設定するようにしておくことなどにより決めておくことができる。
【0045】
ステップS104において基地局IDを検出できると判定した場合、端末側制御部34は検出した基地局IDを解析する(ステップS106)。続いて、端末側制御部34は基地局IDが他の無線中継装置を示すものであるか否かを判定する(ステップS107)。
【0046】
ステップS107の結果、基地局IDが無線中継装置ではなく無線基地局を示すものであった場合は、端末側制御部34は、端末側通信部32の送受信タイミングを通常タイミングか反転タイミングかいずれかのタイミングに設定する(ステップS105)。ステップS107の結果、基地局IDが他の無線中継装置を示すものであった場合は、さらに、当該他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する(ステップS108)。
【0047】
ステップS108の判定の結果、他の無線中継装置の送受信タイミングが反転タイミングであった場合は、端末側制御部34は、端末側通信部32の送受信タイミングを反転タイミングに設定する(ステップS109)。他の無線中継装置の送受信タイミングが通常タイミングであった場合は、端末側制御部34は、端末側通信部32の送受信タイミングを通常タイミングに設定する(ステップS110)。
【0048】
図5のフローチャートを参照しながら、起動モード時に無線中継装置10が送受信タイミングを通常タイミングと反転タイミングのいずれかのタイミングに設定する第2の処理を説明する。図5に示すフローチャートによる第2の処理は、通常、電源投入時などに実行される。なお、図5に示すフローチャートによる第2の処理における、ステップS101〜S110は、上述の第1の処理と同様であるため、その説明は省略する。
【0049】
ステップS107の結果、基地局IDが他の無線中継装置を示すものであった場合は、端末側制御部34は、さらに、他の無線中継装置を示す基地局IDが複数あるか否かを判定する(ステップS201)。
【0050】
ステップS201の結果、他の無線中継装置を示す基地局IDが1つであった場合は、ステップS108に移行し、端末側制御部34は、他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する。一方、ステップS201の結果、他の無線中継装置を示す基地局IDが複数あった場合は、端末制御部34は、ステップS103でデータを受信したときの各他の無線中継装置における受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))を算出し、算出した各受信品質から、干渉の影響を受ける可能性が最も高い、つまり、受信品質が最もよい他の無線中継装置を選択する(ステップS202)。そして、ステップS108に移行し、端末側制御部34は、ステップS202で選択した他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する。
【0051】
なお、上述の図4,5に示すフローチャートによる第1,第2の処理では、基地局側ユニット20は、無線基地局との間で通信を確立した。しかしながら、基地局側ユニット20は、他の無線中継装置との間で通信を確立する場合もある。この場合、端末側制御部34は、基地局側制御部24から通信を確立している他の無線中継装置の基地局IDを取得し、当該基地局IDである他の無線中継装置を除く、周囲の他の無線中継装置を対象として、図4におけるステップS104〜S108の処理、図5におけるステップS104〜S108、S201〜S202の処理を実行する。
【0052】
このように、本実施形態によれば、周囲に存在する他の無線中継装置の送受信タイミングに応じて、自動的に端末側通信部32の送受信タイミングを他の無線中継装置との相互干渉が起こらない送受信タイミングに設定することができる。
【0053】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 無線中継装置
20 基地局側ユニット
22 基地局側通信部
24 基地局側制御部
30 端末側ユニット
32 端末側通信部
34 端末側制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD方式を採用する無線通信システムにおいて、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置であって、
前記無線基地局または他の無線中継装置とデータを送受信する基地局側通信部と、
前記無線端末または他の無線中継装置とデータを送受信する端末側通信部と、
前記端末側通信部から受け取った受信データに基づいて当該無線中継装置の周囲の他の無線中継装置の送受信タイミングを判定する端末側制御部と
を備え、
前記端末側制御部は、判定した前記送受信タイミングに基づいて前記端末側通信部の送受信タイミングを設定する
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線中継装置であって、前記端末側制御部は、判定した前記送受信タイミングに基づいて、判定した当該送受信タイミングと同一の送受信タイミングである第1送受信タイミングまたは当該第1送受信タイミングと異なる送受信タイミングである第2送受信タイミングのいずれかに前記端末側通信部の送受信タイミングを設定することを特徴とする無線中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線中継装置であって、前記第2送受信タイミングは、前記第1送受信タイミングを反転させた送受信タイミングであることを特徴とする無線中継装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の無線中継装置であって、
前記端末側制御部は、
判定した前記送受信タイミングが前記第1送受信タイミングの場合は、前記端末側通信部の送受信タイミングを前記第1送受信タイミングに設定し、
判定した前記送受信タイミングが前記第2送受信タイミングの場合は、前記端末側通信部の送受信タイミングを前記第2送受信タイミングに設定する
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項5】
TDD方式を採用する無線通信システムにおいて、無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置の無線通信方法であって、当該無線中継装置が、
受信データに基づいて当該無線中継装置の周囲の他の無線中継装置の送受信タイミングを判定するステップと、
判定した前記送受信タイミングに基づいて当該無線中継装置の送受信タイミングを設定するステップと
を含むことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−30935(P2013−30935A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164750(P2011−164750)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】