無線受信装置、無線受信装置のキャリブレーション方法、無線受信装置の時系列変化分補正方法及び無線基地局装置
【課題】無線受信装置の受信ダイナミックレンジを拡大する。
【解決手段】アナログ受信回路2で受信された無線周波数信号を周波数変換して得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部3と、信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路6側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器4,5とをそなえる。
【解決手段】アナログ受信回路2で受信された無線周波数信号を周波数変換して得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部3と、信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路6側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器4,5とをそなえる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、無線受信装置、無線受信装置のキャリブレーション方法、無線受信装置の時系列変化分補正方法及び無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話システムなどの無線通信システムにおけるデータ通信の需要が急拡大しており、無線通信システムのトラフィックを分散するために小型の基地局装置の設置需要が増加している。
また、通信速度の高速化やブローバンド化の進展に伴い、各システムで使用される無線通信用周波数が密集しており、複数周波数の無線信号が通信サービスエリアに密集して混在している。
【0003】
このため、無線受信装置においては、自装置宛ての無線信号(所望信号)以外に、所望信号の周波数に近接した周波数の他装置宛ての無線信号(妨害波)が受信される。
無線受信装置は、所望信号を正しく復調するために、復調部入力前において、受信した信号から妨害波を除去する必要がある。
そこで、従来における無線受信装置は、例えば、図1に示す構成をそなえる。
【0004】
図1は、従来における無線受信装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、無線受信装置100は、例示的に、アナログ受信部200と、アナログ/ディジタル変換器(以下、ADCということがある。ADCはAnalog-Digital Converterの略語である。)300と、ディジタル受信部400と、復調部500とをそなえる。
【0005】
アナログ受信部200は、受信信号に対し、所定の受信処理を施す。前記所定の受信処理には、フィルタ処理,信号増幅及び周波数変換などが含まれる。
このため、アナログ受信部200は、例えば図2に示す構成をそなえる。
図2は、図1のアナログ受信部200の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、アナログ受信部200は、例示的に、RF(Radio Frequency)バンドパスフィルタ201と、低雑音増幅器202と、周波数変換器203と、IF(Intermediate Frequency)バンドパスフィルタ204とをそなえる。
【0006】
RFバンドパスフィルタ201は、受信した無線周波数信号(以下RF信号ともいう)に対して無線周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、所望信号の周波数から離れた周波数における妨害波信号を除去する。
低雑音増幅器202は、RFバンドパスフィルタ201によって妨害波信号を除去された受信信号を、所定のレベルまで増幅する。
【0007】
周波数変換器203は、低雑音増幅器202から出力された信号に対し、局部発振周波数の信号をミキシングすることにより、中間周波数へダウンコンバートして出力する。
IFバンドパスフィルタ204は、周波数変換器203から出力された信号に対して中間周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、RFバンドパスフィルタで除去しきれない所望信号の周波数の近傍の周波数における妨害波や、周波数変換器203におけるミキシングにより発生する不要波を除去する。
【0008】
IFバンドパスフィルタ204でフィルタ処理が施された信号は、中間周波信号(以下IF信号ともいう)としてADC300に出力される。
即ち、アナログ受信部200において、RFバンドパスフィルタ201及びIFバンドパスフィルタ204が協働することにより妨害波の除去を行なう。
一方、図1のディジタル受信部400は、入力された信号にディジタル処理を施すものであり、アナログ受信部200で除去しきれない所望信号の周波数に非常に近接した周波数の妨害波を除去する。
【0009】
即ち、所望信号の周波数に対して妨害波の周波数が近いと、RFバンドパスフィルタ201及びIFバンドパスフィルタ204で妨害波を十分に除去しきれない場合があるため、ディジタル受信部400は、ディジタル受信部400がそなえる急峻なフィルタを用いることにより、所望信号の周波数に非常に近接した周波数の妨害波を除去する。
復調部500は、ディジタル受信部400から出力された信号に対し、所定の復調処理を施す。
【0010】
ADC300は、アナログ信号をディジタル信号で再現するため、アナログ受信部200から出力されたアナログ信号を一定間隔の時間でサンプリングし、信号振幅をディジタル値に変換する。
このADC300に入力される信号には、当然、ディジタル受信部400による受信処理が施されていないため、妨害波が十分に除去されていない場合がある。
【0011】
例えば、以下のような場合において、妨害波の影響が深刻となる。
基地局と端末とが通信中であり、端末が基地局から遠く離れている場合、端末から送信された送信信号は、基地局において低いレベルで受信される。
このとき、基地局の近くで他無線システムの無線機が通信しており、更に、該無線機の出力電力が高い場合には、端末から送信された送信信号よりも高いレベルの他無線システムの信号が基地局で受信される。
【0012】
図3及び図4に、ADC300に入力されるIF信号のスペクトラム及び時間軸波形の一例を示す。
図3は、ADC300に入力されるIF信号のスペクトラムの一例を示す図である。
ここでは説明のため、一例として、所望信号の周波数を92.16MHzとし、妨害波の周波数を184.32MHzとする。また、両信号のD/U(Desired-to-Undesired signal ratio)を60dBとする。
【0013】
図3に示す妨害波は、RFバンドパスフィルタ201およびIFバンドパスフィルタ204では除去しきれず、ADC300に入力される。
図4は、ADC300に入力されるIF信号の時間軸波形の一例を示す図である。なお、ADC300の分解能は、一例として12bitとする。
図4に示すグラフの縦軸スケールは、説明のため簡略化しているが、所望信号と妨害波のD/Uは60dBのため、妨害波の振幅は所望信号の振幅の1000倍(20×log(1000/1)=60dB)となる。
【0014】
図4に示す所望信号と妨害波とを足し合わせた信号が、ADC300に入力される。
従って、大きなレベルの妨害波によってADC300の最大入力範囲を超えることがあるため、無線受信装置の受信回路を設計する際には、所望信号の受信レベルだけでなく、妨害波の受信レベルを想定して回路を設計しなければならない。
また、大きなレベルの妨害波が入力された場合、相対的に小さい所望信号をディジタル信号で再現するためには、ADC300の分解能を十分に確保しなければならない(12bitのADCでは、相対的に小さい所望信号をディジタル信号で再現できない場合がある)。
【0015】
このように、大きなレベルの妨害波が入力された場合、ADC300には広いダイナミックレンジが要求される。
また、無線受信装置100のダイナミックレンジは、ADC300のダイナミックレンジによって決定されるため、使用電波環境における十分な妨害波耐力を満たす無線受信装置100を設計するためには、十分ダイナミックレンジの広いADC300を選択しなければならない。
【0016】
しかしながら、ADC300の性能には限界がある。
無線受信装置のダイナミックレンジ不足を解決する手段として、ADCの前段において、入力信号のレベルを判定し、判定した入力信号のレベルに応じて、入力信号を減衰させる減衰器の減衰量を切り替える技術がある(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭52−119162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に記載された技術の適用対象は音声周波数であり、最高周波数を20kHzとしている。
一方、本件の対象としている無線受信装置100は、IF信号の周波数が数百MHzである。
上記特許文献1に記載された技術を、数百MHzの信号を扱う無線受信装置に適用した場合、減衰器における減衰量の誤差が大きくなるため、微弱な所望信号を受信すると、減衰量の誤差によって感度点付近の微弱な所望信号が埋もれてしまい、復調することができなくなる。
【0019】
このため、上記特許文献1に記載された技術を無線受信装置に適用することはできない。
また、上記特許文献1に記載された技術は、入力レベルを判定する回路や減衰器を必要とするため、回路が複雑になり、実装スペースやコストが大幅に増加する。
そこで、本件は、無線受信装置の受信ダイナミックレンジを拡大することを目的の1つとする。
【0020】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)第1の案として、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成された、無線受信装置を用いることができる。
【0022】
(2)また、第2の案として、上記無線受信装置について、キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえた、無線受信装置のキャリブレーション方法を用いることができる。
【0023】
(3)さらに、第3の案として、上記の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえた、無線受信装置の時系列変化分補正方法を用いることができる。
【0024】
(4)また、第4の案として、上記無線受信装置を有する、無線基地局装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
無線受信装置の受信ダイナミックレンジを拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来における無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すアナログ受信部の構成の一例を示す図である。
【図3】IF信号のスペクトラムの一例を示す図である。
【図4】IF信号の時間軸波形の一例を示す図である。
【図5】一実施形態に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示すアナログ受信部の構成の一例を示す図である。
【図7】ディジタル受信部における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
【図8】図5に示す信号分割回路の構成の一例を示す図である。
【図9】(a),(b)は図6に示す信号分割回路から出力される信号の時間軸波形の一例を示す図である。
【図10】図6に示す信号分割回路を用いた場合の、ディジタル受信部における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
【図11】図6に示す信号分割回路用いたことに起因する波形歪によって生じる誤差信号の時間軸波形を示す図である。
【図12】(a)〜(c)は一実施形態に係る波形歪みの補正方法を示す図である。
【図13】図5に示すレベル可変回路の構成の一例を示す図である。
【図14】一実施形態に係るキャリブレーションのフローを示す図である。
【図15】一実施形態に係る無線受信装置の時系列変化分を補正するフローを示す図である。
【図16】図5に示すADCの入力端及び出力端におけるキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【図17】図5に示すディジタル受信部におけるキャリブレーション信号及び参照信号の時間軸波形を示す図である。
【図18】図5に示すディジタル受信部におけるパイロット信号及びキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【図19】図5に示す無線受信装置の運用時において、ADCの入力端における所望信号及びディジタル受信部で観測される各信号のスペクトラムを示す図である。
【図20】図5に示す無線受信装置の運用時において、ディジタル受信部で観測されるパイロット信号の時間軸波形を示す図である。
【図21】第1変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図22】(a),(b)は図21に示すADCから出力されるディジタル信号の時間軸波形を示す図である。
【図23】第2変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図24】第3変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図25】無線基地局装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す各実施形態及び変形例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、各実施形態及び変形例を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔1〕一実施形態
図5は、本願の一実施形態に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【0028】
図5に示す無線受信装置1は、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路(この信号分割回路を、信号分岐回路という場合もある)3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7と、メモリ8と、パイロット信号生成部9と、レベル可変回路10と、パイロット信号印加部11とをそなえる。
アナログ受信部は2、受信信号に対し、所定の受信処理を施す。前記所定の受信処理には、フィルタ処理,信号増幅及び周波数変換などが含まれる。
【0029】
このため、アナログ受信部2は、例えば図6に示す構成をそなえる。
図6は、図5のアナログ受信部2の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、アナログ受信部2は、例示的に、RF(Radio Frequency)バンドパスフィルタ2−1と、低雑音増幅器2−2と、周波数変換器2−3と、IF(Intermediate Frequency)バンドパスフィルタ2−4と、局部発信器2−5とをそなえる。
【0030】
RFバンドパスフィルタ2−1は、受信した無線周波数信号(以下RF信号ともいう)に対して無線周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、所望信号の周波数から離れた周波数における妨害波信号を除去する。
低雑音増幅器2−2は、RFバンドパスフィルタ201によって妨害波信号を除去された受信信号を、所定のレベルまで増幅する。
【0031】
周波数変換器2−3は、低雑音増幅器2−2から出力された信号に対し、後述する局部発信器2−5から出力された局部発振周波数の信号をミキシングすることにより、中間周波数へダウンコンバートして出力する。
IFバンドパスフィルタ2−4は、周波数変換器2−3から出力された信号に対して中間周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、RFバンドパスフィルタで除去しきれない所望信号の周波数の近傍の周波数における妨害波や、周波数変換器2−3におけるミキシングにより発生する不要波を除去する。
【0032】
局部発信器205は、局部発振周波数の信号を生成し、周波数変換器2−3へ出力する。
即ち、アナログ受信部2に入力されたRF信号は、中間周波数にダウンコンバートされ、IF信号として出力される。
信号分割回路3は、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、正側の信号と負側の信号とに分割し、分割した各信号をそれぞれパス1(Path1)及びパス2(Path2)へ出力する。即ち、信号分割回路3は、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号をダウンコンバートして得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分(この例では2つの信号部分)に分割して出力する信号分割部の一例として機能するとともに、IF信号を受ける入力部と入力部を通じて入力されたIF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路の一例として機能する。
【0033】
ADC(Analog Digital Converter)4,5は、入力されたアナログ信号をディジタル信号で再現するため、アナログ信号を一定間隔の時間でサンプリングし、信号振幅をディジタル値に変換するものである。即ち、ADC4,5は、信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器の一例として機能する。
【0034】
ADC4は、パス1に設けられたADCであり、信号分割回路3から出力された正側の信号をディジタル信号に変換して出力する。
ADC5は、パス2に設けられたADCであり、信号分割回路3から出力された負側の信号をディジタル信号に変換して出力する。
また、ADC4,5には、同一周波数のクロック信号(CLK)が与えられる。
【0035】
なお、説明のため、ADC4,5の各々の分解能は12bitとする。
ディジタル受信部6は、ADC4,5から出力された各ディジタル信号の合成を行なうとともに、ディジタルフィルタによるフィルタリング処理などの所定のディジタル処理を施す。
ADC5により信号をディジタル化したことで信号処理が容易になるため、ディジタル受信部6は、入力された信号を任意に加工し、復調部7へ出力することができる。
【0036】
復調部7は、ディジタル受信部6から出力された信号に対し、所定の復調処理を施す。
図7は、ディジタル受信部6における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。なお、ディジタル受信部6で扱う信号はディジタル信号であるため、信号波形を示す際には包絡線で示す(以下においても同様である)。
以上の構成によると、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、信号分割回路3が正側の信号と負側の信号に分割して出力し、正側の信号と負側の信号のそれぞれについて12bitの分解能を有するADC4,5でディジタル信号に変換するので、ADC4,5のそれぞれが扱う振幅範囲はアナログ受信部2から出力されたIF信号の半分となる。
【0037】
これにより、無線受信装置1が扱える受信信号の振幅範囲は2倍となり、また、無線受信装置1の分解能は、等価的に、212(12bit)の2倍、即ち、213(13bit)となる。
なお、上述した信号分割回路3は、例えば、プッシュプル回路で構成することができる。
【0038】
図8は、図5に示す信号分割回路3の構成の一例を示す図である。
図8に示す信号分割回路3は、例示的に、トランジスタ21,22と、抵抗23〜28からなるプッシュプル回路によって構成される。
なお、図8における端子a〜eは、図5における端子a〜eにそれぞれ対応している。
トランジスタ21は、PNPトランジスタで構成され、トランジスタ22は、NPNトランジスタで構成される。なお、これらのバイポーラトランジスタをFETなどの他の半導体素子に置き換えることも可能である。
【0039】
図8に示す信号分割回路3は、端子aに信号が入力されると、入力された信号が振幅0を基準として正側の時に、トランジスタ21がON状態になり、トランジスタ22がOFF状態になる。
一方、入力された信号が振幅0を基準として負側の時に、トランジスタ22がON状態になり、トランジスタ21がOFF状態になる。
【0040】
これにより、端子dには端子aに入力された信号の正側の信号のみが出力され、端子eには端子aに入力された信号の負側の信号のみが出力される。
即ち、プッシュプル回路を用いることによって信号分割回路3の機能を実現することができる。
しかしながら、信号分割回路3を図8に示すプッシュプル回路で構成した場合、トランジスタ21,22のベースのON電圧の影響で、出力波形が振幅0付近で歪んでしまう。
【0041】
図9は、プッシュプル回路によって構成された信号分割回路3から出力される信号の時間軸波形を示す図であり、図9(a),(b)は、それぞれ信号分割回路3の端子d,eから出力される信号の時間軸波形を示す図である。
図9(a),(b)のそれぞれで示すように、信号分割回路3の端子d,eから出力される信号の波形(図9(a),(b)中実線で示す)は、振幅0付近で波形が歪むため、信号分割回路3に入力されたIF信号の波形(図9(a),(b)中点線で示し、以下理想波形ともいう)とは異なる波形になる。
【0042】
図10は、プッシュプル回路を用いて信号分割回路3を構成した場合の、ディジタル受信部6における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
このような波形歪を含んだ信号をディジタル受信部6で合成すると、合成後の信号波形は、信号分割回路3に入力されたIF信号の波形とは異なり振幅0付近で不連続部分(以下、信号分割境界部分ともいう)を有する。
【0043】
この信号の不連続部分における波形歪によって、図11に示す誤差信号が生じてしまい、復調部7は受信した信号を正しく復調できなくなる。
そこで、本実施形態では、上記波形歪の発生を防ぐため、ディジタル受信部6は、上述した機能に加えて、信号分割回路3の端子b及びcにそれぞれパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を出力する。これらの各制御電圧により、信号分割回路3におけるトランジスタ21,22のベース電圧が変化し、波形歪みを補正することができる。
【0044】
図12は、波形歪みの補正方法を示す図である。
図12(a)は、信号分割回路3の端子bにパス1用制御電圧を印加したとき端子dから出力される信号の時間軸波形を示す。
ディジタル受信部6は、信号分割回路3の端子bに印加するパス1用制御電圧を調整することによって、トランジスタ21のベース電圧を変更し、端子dから出力される信号のクリップ位置を図12(a)の一点差線で示す位置に調整する。
【0045】
そして、信号分割回路3の端子dから出力された信号は、ADC4においてディジタル信号へ変換された後、ディジタル受信部6へ入力される。
ここで、ディジタル受信部6は、所定のウインドウ(Window)を用いて、ADC4から出力された波形から、波形歪が生じていない位置を切り出すことで、波形歪を含まない正側の信号を抽出することができる(図12(a)の網掛け部分参照)。
【0046】
また、図12(b)は、信号分割回路3の端子cにパス2用制御電圧を印加したとき端子eから出力される信号の時間軸波形を示す。
端子eから出力される信号についても、端子dから出力される信号と同様の処理を施すことにより、波形歪を含まない負側の信号を抽出することができる(図12(b)の網掛け部分参照)。
【0047】
そして、上記の手順で得られた正側及び負側の信号をディジタル受信部6において合成処理することにより、図12(c)のような波形歪を含まない信号を得ることができる。
しかしながら、上述したプッシュプル回路は、図8に示すようにアナログ素子であるトランジスタ21,22によって構成されており、環境温度の変化や経年劣化などによりベースのON電圧が変動する。
【0048】
このため、上記のパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧の最適値も変動する。
そこで、本実施形態では、パイロット信号を用いて、トランジスタ21及び22の特性の変動をモニタリングする。そして、当該モニタリング結果に基づき、パス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を調整する。
パイロット信号生成部9は、クロック信号(CLK)を用いてパイロット信号を生成するものであり、例えば、分周器などによって実現することができる。本実施形態では、パイロット信号生成部9を、クロック信号を4分周する分周器で構成する。
【0049】
レベル可変回路10は、パイロット信号生成部9から出力されたパイロット信号のレベルを調整するものであり、ディジタル受信部6から出力されるパイロット信号レベル制御電圧によって制御される。
なお、レベル可変回路10は、例えば、図13に示す回路によって実現することができる。
【0050】
図13は、図5に示すレベル可変回路の構成の一例を示す図である。
即ち、レベル可変回路10は、ダイオード31〜34と、抵抗35〜40と、コンデンサ41〜45とをそなえる。
また、図13における端子f〜hは、図5における端子f〜hにそれぞれ対応している。
【0051】
図13に示すレベル可変回路10は、端子gへ印加するパイロット信号レベル制御電圧を調整することで、ダイオード31〜34のバイアス電圧を変えてダイオードの抵抗値を調整できるため、端子fと端子hとの間における減衰量を調整することができる。
即ちパイロット信号生成部9及びレベル可変回路10は、IF信号とは周波数の異なるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部の一例として機能する。
【0052】
パイロット信号印加部11は、アナログ受信部2から出力されたIF信号にパイロット信号を加算し、信号分割回路3へ出力する。
以下に、パイロットを用いた無線受信装置1の時系列変化分の補正方法について説明する。なお、本実施形態で示す例はあくまで一例であり、信号周波数や信号レベルなどの条件は、ここで例示するものに限定されない。
【0053】
無線受信装置1の時系列変化分を補正するにあたり、まず、キャリブレーションを実行することにより、パイロット信号の基準レベルを記憶するが、まず、キャリブレーションについて説明する。
図14は、キャリブレーションのフローを示す図である。
まず、キャリブレーション信号として、ダウンコンバート後に92.16MHzとなる正弦波がアナログ受信部2の入力端(以下、単に入力端ともいう)に入力される(図14のステップS11参照)。即ち、キャリブレーション信号は、IF信号と同じ周波数の正弦波信号である。また、入力端におけるキャリブレーション信号のレベルは−110dBmとする。
【0054】
このとき、レベル可変回路10をOFF状態にして(レベル可変回路10の端子gへ印加するパイロット信号レベル制御電圧を0Vにする)、IF信号にはパイロット信号を加算しない。
キャリブレーション信号は、信号分割回路3によって分割され、ADC4,5によってディジタル信号に変換される。このとき、ADC4,5は、クロック信号の周波数である61.44MHzでサンプリングを行なう。
【0055】
図16は、ADC4,5の入力端及び出力端におけるキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
キャリブレーション信号は、ADC4,5により61.44MHzでサンプリングされるため、ADC4,5から出力されると周波数が30.72MHzとなる。
次に、上記キャリブレーション信号と参照信号とのレベルの比較を行う(図14のステップS12参照)。
【0056】
メモリ8は、基準となる参照信号(この参照信号は参照値情報を有する)を予め保持しており、ディジタル受信部6は、必要に応じてメモリ8から参照信号を読み出す。即ち、メモリ8は、参照値情報を記憶する記憶部の一例として機能する。
参照信号は、例えば、入力端に−110dBmの信号が入力された際にディジタル受信部6で観測されるべき理想的な出力レベルである。
【0057】
なお、参照信号は、例えば、無線受信装置1の設計後に特性試験を行なうことで内部部品の特性を調べ、その特性に基づいて決定することができる。また、参照信号は、無線受信装置1の工場出荷時にメモリ8に記憶することができる。
図17は、図5に示すディジタル受信部6におけるキャリブレーション信号及び参照信号の時間軸波形を示す図である。
【0058】
そして、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号のレベルが参照信号のレベルに一致するようにパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を設定する(図14のステップS13参照)。
キャリブレーション信号の正側の振幅の調整は、パス1用制御電圧を調整し、トランジスタ21のベース電圧を変更することで行なう。
【0059】
また、キャリブレーション信号の負側の振幅の調整は、パス2用制御電圧を調整し、トランジスタ22のベース電圧を変更することで行なう。
図17に示す例では、キャリブレーション信号の正側の振幅が、参照信号のレベルより大きいため、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号の正側の振幅が小さくなるようにパス1用制御電圧を調整する。
【0060】
一方、キャリブレーション信号の負側の振幅が、参照信号のレベルより小さいため、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号の負側の振幅が大きくなるようにパス2用制御電圧を調整する。
また、これに伴い、ディジタル受信部6は、Windowの切り出し位置を決定する。
このようにして決定されたパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧並びにWindowの切り出し位置はメモリ8に保存される。
【0061】
次に、パイロット信号のレベルを決定する(図14のステップS14参照)。
図5のレベル可変回路10をON状態にして(即ち、ディジタル受信部6が、図13に示すレベル可変回路10の端子gに+電圧を印加して)、パイロット信号印加部11にパイロット信号を入力する。
図18は、図5に示すディジタル受信部6におけるパイロット信号及びキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【0062】
パイロット信号生成部9は、61.44MHzのクロック信号を4分周してパイロット信号を生成しているため、パイロット信号の周波数は15.36MHzである。
ディジタル受信部6は、この図18におけるパイロット信号のレベルがキャリブレーション信号と同じレベルになるように、レベル可変回路10に出力するパイロット信号レベル制御電圧を調整する。
【0063】
そして、ディジタル受信部6は、このようにして調整されたパイロット信号レベル制御信号の大きさ、即ち、基準となるパイロット信号のレベルを、参照値として図5のメモリ8に記憶する。即ち、ディジタル受信部6は、参照値情報とパイロット信号とを比較して、信号分割部における信号分割境界部分の時系列変化分を補正する補正部の一例として機能する。
【0064】
以上でキャリブレーションを完了する。
無線受信装置1の運用時において、環境温度の変化や経年劣化などにより、信号分割境界部分に時系列変化を生じるが、この信号分割境界部分の時系列変化分を補正することが行なわれる。
即ち、図15に示すように、まず、無線受信装置1の運用前に上述のキャリブレーション方法で得られた基準となるパイロット信号の信号レベルを参照値として記憶し(図15のステップS1参照)、次いで、無線受信装置1の運用中では、パイロット信号レベルと上記参照値とを比較し、無線受信装置1の時系列変化分を補正する(図15のステップS2参照)。
【0065】
なお、ここでは簡単のため、RF信号として所望信号のみが受信されるものとする。
無線受信装置1の起動時において、パイロット信号がパイロット信号印加部11へ入力される。
この状態で、入力端にRF信号が入力される。なお、RF信号は、ダウンコンバート後に中心周波数が92.16MHzとなる信号であり、帯域幅が20MHzの変調信号とする。
【0066】
このため、信号分割回路3には、中心周波数が92.16MHzで帯域幅が20MHzのIF信号と、15.36MHzのパイロット信号とが入力される。
そして、ADC4,5が、61.44MHzのサンプリング周波数でサンプリングを行なうため、中心周波数が92.16MHzのIF信号は、ADC4,5から出力されると中心周波数が30.72MHzのディジタル信号となる。
【0067】
なお、パイロット信号はADC4,5でサンプリングを行なった後も15.36MHzのままである。
即ち、ディジタル受信部6には、15.36MHzのパイロット信号と、30.72MHzのディジタル信号とが入力される。
図19は、図5に示す無線受信装置1の運用時において、ADC4,5の入力端における所望信号及びディジタル受信部6で観測される各信号のスペクトラムを示す図である。
【0068】
また、図20は、図5に示す無線受信装置1の運用時において、ディジタル受信部6で観測されるパイロット信号の時間軸波形を示す図である。
環境温度の変化などにより、トランジスタ21,22のベース電圧による信号クリップ位置が変動すると、パイロット信号のレベルが変動する。
ディジタル受信部6は、無線受信装置1の運用中、常にパイロット信号をモニタリングしており、パイロット信号のレベルが変動すると、パス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を変化させて、パイロット信号のレベルが参照値と同じようになるように調整する。
【0069】
例えば、図20に示す例では、ADC4から出力されたパイロット信号のレベルが参照値より大きいため、ディジタル受信部6は、ADC4から出力されたパイロット信号のレベルが小さくなるようにパス1用制御電圧を調整する。
一方、ADC5から出力されたパイロット信号のレベルが参照値より小さいため、ディジタル受信部6は、ADC5から出力されたパイロット信号のレベルが大きくなるようにパス2用制御電圧を調整する。
【0070】
このように、パイロット信号のレベルが常に参照値と同じようになるようにパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を調整することで、トランジスタ21,22のベース電圧による信号クリップ位置を常に適正位置に保つことができる。
即ち、無線受信装置1は、例えば運用中に環境温度の変動が生じたとしても、自動的に信号クリップ位置を最適位置に保つことができる。
【0071】
なお、ディジタル受信部6は、帯域幅20MHzのディジタルフィルタを用いてパイロット信号及び妨害波を除去した後に、所望信号のみを復調部7へ出力する。
以上のように、本実施例によれば、信号分割回路3がIF信号を正側の信号と負側の信号に分割し、ADC4,5が正側の信号及び負側の信号のそれぞれについてディジタル信号に変換するので、複雑な回路や高価なADCを用いることなく無線受信装置のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0072】
また、ディジタル受信部6が、信号分割回路3にパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を出力して信号クリップ位置を調整し、Windowを用いて波形歪成分を除去するので、プッシュプル回路を用いて信号分割回路3を構成した場合であっても、波形歪の発生を防ぐことができる。
さらに、パイロット信号を用いて回路特性の変動をモニタリングすることにより、信号分割回路の信号クリップ位置を回路特性の変動にあわせて自動的に調整することができ、安定した受信特性を得ることができる。
【0073】
〔2〕第1変形例
なお、一実施形態に係る信号分割回路3を多段構成にすることにより、より多くのADCをそなえた無線受信装置を実現することができる。
図21は、第1変形例に係る無線受信装置1′の構成の一例を示す図である。
図21に示す無線受信装置1′は、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割部30と、ADC4A,5A,4B,5Bと、ディジタル受信部6と、復調部7と、メモリ8と、パイロット信号生成部9と、レベル可変回路10と、パイロット信号印加部11とをそなえる。なお、図21中、既述の符号を付した各構成については、前述の各構成と同様の機能を具備するので、その詳細な説明は省略する。
【0074】
信号分割部30は、それぞれ同じ構成の3つの信号分割回路30A,30B,30Cをそなえて構成されており、信号上流側の信号分割回路30Aの2つの出力部に、一対の信号分割回路30B,30Cの各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有している。
信号分割回路30Aは、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、振幅0を基準として正側の信号と負側の信号とに分割する。
【0075】
信号分割回路30B及び30Cは、それぞれ信号分割回路30Aの出力端に接続され、信号分割回路30Aから出力された正側の信号及び負側の信号を更に分割する。
図22は、信号分割回路30B及び30Cから出力される信号の時間軸波形を示す図である。
図22は(a)、信号分割回路30Bから出力される信号の時間軸波形を示す。
【0076】
信号分割回路30Bは、信号分割回路30Aから出力された正側の信号を、正側の信号の最大振幅の1/2の値を基準として、第1信号及び第2信号に分割する。
図22は(b)、信号分割回路30Cから出力される信号の時間軸波形を示す。
信号分割回路30Cは、信号分割回路30Aから出力された負側の信号を、負側の信号の最大振幅の1/2の値を基準として、第3信号及び第4信号に分割する。
【0077】
即ち、ADC30A〜30Cが協働することにより、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号をダウンコンバートして得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部の一例として機能し、また、ADC30A〜30Cのそれぞれが、IF信号を受ける入力部と入力部を通じて入力されたIF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路の一例として機能する。
【0078】
上記のようにして得られた第1〜第4信号はそれぞれADC4A,5A,4B,5Bによってディジタル信号に変換される。
以上の構成によると、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、信号分割回路30A〜30Cが第1〜第4信号に分割して出力し、第1〜第4信号のそれぞれについて12bitの分解能を有するADC4A,5A,4B,5Bでディジタル信号に変換するので、ADC4A,5A,4B,5Bのそれぞれが扱う振幅範囲は、アナログ受信部2から出力されたIF信号の1/4となる。
【0079】
これにより、無線受信装置1が扱える振幅範囲は4倍となり、また、無線受信装置1の分解能は、等価的に、212(12bit)の4倍、即ち、214(14bit)となる。
以上のように、本変形例によると、信号分割回路を多段構成にし、より多くのADCを用いることで、無線受信装置の分解能を更に向上することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態と同様、信号分割回路30A〜30Cは、それぞれ図8に示すプッシュプル回路で構成することができる。
この場合、ディジタル受信部6が、信号分割回路30A〜30Cに制御電圧を印加することにより、上述した実施形態と同様、波形歪の発生を防ぐことができる。
また、パイロット信号を用いて、信号分割回路30A〜30C内のそれぞれがそなえるトランジスタの特性変化をモニタリングすることにより、信号分割回路30A〜30Cに印加する制御電圧を常に最適な状態に保つことができる。
【0081】
〔3〕第2変形例
上述した一実施形態及び第1変形例において、無線受信装置1,1′の動作環境が安定している場合、回路構成をより簡単化することができる。
ここでは、一実施形態と同様、1つの信号分割回路及び2つのADCをそなえて構成された例について説明するが、第1変形例のように3つの信号分割回路及び4つのADCをそなえて構成された場合や、更に多くの信号分割回路及びADCをそなえて構成された場合についても同様に実施可能である。
【0082】
図23は、第2変形例に係る無線受信装置1Aの構成の一例を示す図である。
図23に示す無線受信装置1Aは、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7とをそなえる。
即ち、第2実施形態に係る無線受信装置は、図5に示す無線受信装置1におけるメモリ8,パイロット信号生成部9,レベル可変回路10及びパイロット信号印加部を省略して構成することができる。
【0083】
以上のように本変形例によると、無線受信装置の回路構成が簡略化されるため、無線受信装置の低消費電力化、省スペース化,低コスト化などのメリットが得られる。
〔4〕第3変形例
また、第2変形例において、信号分割回路3を理想的な半端整流回路などで構成し、波形歪み成分の発生を抑えることができた場合、回路構成を更に簡単化することができる。
【0084】
ここでは、一実施形態と同様、1つの信号分割回路及び2つのADCをそなえて構成された例について説明するが、第1変形例のように3つの信号分割回路及び4つのADCをそなえて構成された場合や、更に多くの信号分割回路及びADCをそなえて構成された場合についても同様に実施可能である。
図24は、第3変形例に係る無線受信装置1Bの構成の一例を示す図である。
【0085】
図24に示す無線受信装置1Bは、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7とをそなえる。
ここで、第3実施形態に係る無線受信装置におけるディジタル受信部6は、ADC4,5から出力された信号を合成する機能及びディジタルフィルタによるフィルタリングなどの所定のディジタル処理を施す機能のみを有する。
【0086】
即ち、信号分割回路3において生じる波形歪を補正するための、信号分割回路3への制御電圧を出力する機能や、ADC4,5から出力された信号からウインドウを用いて波形歪を切り出す機能を省略することができる。
以上のように、本変形例によると、無線受信装置の処理負荷を軽減することができる。
〔5〕その他
なお、上述した実施形態及び各変形例において、アナログ受信部2、信号分割回路3,30A〜30C、パイロット信号生成部9、レベル可変回路10及びパイロット信号印加部11は、各種のアナログ回路を適宜組み合わせて実現される(アナログ部)。また、ディジタル受信部6,復調部7はDSPやCPUなどを用いて実現される(ディジタル部)。
【0087】
また、上述した無線受信装置1,1′,1A,1Bの各構成,各手段及び各機能は、必要に応じて取捨選択されてもよいし、適宜組み合わせられてもよい。即ち、上述した本発明の機能を発揮できるように、上記の各構成及び各機能は取捨選択されたり、適宜組み合わせて用いられたりしてもよい。
さらに、上述した無線受信装置1,1′,1A,1Bの各構成,各手段及び各機能を、適宜用いて、無線基地局装置(例えば、フェムトセルに用いられる小型基地局装置)を構成することができる。
【0088】
図25は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bを適用した無線基地局装置の構成を示す図である。
図25に示す無線基地局装置50は、例示的に、有線インタフェース(IF;Interface)51と、有線受信処理部52と、有線送信処理部53と、無線送信処理部54と、無線受信処理部55と、無線インタフェース56と、K(Kは1以上の自然数)本のアンテナ57−1〜57−Kと、CPU58と、論理回路59と、メモリ60とをそなえる。なお、以下では、アンテナ57−1〜57−Kを区別しない場合、単にアンテナ57と表記する。
【0089】
有線インタフェース51は、無線基地局装置50と、外部ネットワークもしくは上位装置との通信を制御する。
有線受信処理部52は、有線インタフェース51から入力された信号に復調処理や復号処理など所定の信号処理を施す。
有線送信処理部53は、外部ネットワークもしくは上位装置へ送信する信号に符号化処理や変調処理など所定の信号処理を施す。
【0090】
無線送信処理部54は、移動局へ送信する信号に符号化処理、変調処理などの所定の信号処理を施し、アンテナ130へ出力する。
無線受信処理部55は、移動局から送信された無線信号に復調処理、復号処理など所定の信号処理を施すもので、無線インタフェース56は、アップコンバートやダウンコンバートなどの周波数変換処理などを施すことにより、後述するアンテナ57で送受信を行なう無線信号と、無線基地局装置50で扱う信号とを相互に変換するものである。
【0091】
これらの、無線受信処理部55や無線インタフェース56が、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bを構成する。
例えば、無線受信処理部55は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bにおける信号分割回路3,30A〜30C,ADC4,5,4A,5A,4B,5B,ディジタル受信部6,復調部7,メモリ8,パイロット信号生成部9,レベル可変回路10,パイロット信号印加部11によって構成することができ、無線インタフェース56は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bにおけるアナログ受信部2によって構成することができる。
【0092】
アンテナ57は、それぞれ、基地局へ無線信号を送信する送信アンテナ及び移動局から無線信号を受信する受信アンテナとして機能する。なお、アンテナ57−1〜57−Kのうちの一部が送信アンテナとして機能し、残りが受信アンテナとして機能しても良いし、アンテナ57−1〜57−Kのそれぞれが送受信アンテナとして機能しても良い。
CPU58は、バスによって相互接続された論理回路59及びメモリ60と協働することにより、有線受信処理部52,有線送信処理部53,無線送信処理部54及び無線受信処理部55を制御する。
【0093】
以上のようにして、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bは無線基地局装置50に適用することができる。
また、上述した実施形態及び各変形例において、パイロット信号生成部9は、クロック信号を4分周する分周器で構成したが、パイロット信号の周波数は、パイロット信号がIF信号に干渉しない範囲で任意に決定することができる。
【0094】
さらに、上述した各変形例において、信号分割回路30Aの後段に信号分割回路30B,30Cが接続される2段接続とし、4つのADCを用いる例を示したが、同様の要領で信号分割回路を多段接続することにより、更に多くのADCを用いた受信処理を行なうことができる。
例えば、信号分割回路をN(Nは2以上の自然数)段接続することにより、2N倍個のADCを使用した受信処理を行なうことができ、各ADCの分解能の2N倍の分解能を有する受信回路1′を実現することができる。
【0095】
また、上述した実施形態及び各変形例において、複数のADCには、同一の分解能を有するADCを用いたが、こうすることで、部品の調達を低コストで行なうことができ、また、部品管理も容易である。ただし、分解能の異なるADCを用いた場合であっても、同様に実施可能である。
以上の実施形態及び各変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0096】
〔6〕付記
(付記1)
アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、
該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成されたことを特徴とする、無線受信装置。
【0097】
(付記2)
該信号分割部が、該IF信号を受ける入力部と該入力部を通じて入力された該IF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路を少なくとも1つそなえていることを特徴とする、付記1記載の無線受信装置。
(付記3)
該信号分割部が、
該信号分割回路を複数そなえ、
該複数の信号分割回路が、信号上流側の信号分割回路の2つの出力部に一対の信号分割回路の各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有していることを特徴とする、付記2記載の無線受信装置。
【0098】
(付記4)
該信号分割部が信号分割境界部分に信号不連続部分を生成する回路として構成され、
該信号分割部で生成される該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去部が設けられたことを特徴とする、付記1ないし付記3のいずれかに記載の無線受信装置。
(付記5)
該信号分割回路が、
一対のプッシュプル接続された各トランジスタからの出力を出力信号とし、各出力信号の信号分割境界部分に信号不連続部分が生成される回路として構成され、
該信号分割回路における各トランジスタの信号クリップ位置を調整して該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去回路が設けられたことを特徴とする、付記2または付記3に記載の無線受信装置。
【0099】
(付記6)
参照値情報を記憶する記憶部と、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部と、
該参照値情報と該パイロット信号とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正する補正部とが設けられたことを特徴とする、付記1ないし付記5のいずれかに記載の無線受信装置。
【0100】
(付記7)
付記1ないし付記6のいずれかに記載の無線受信装置について、
キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、
該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置のキャリブレーション方法。
【0101】
(付記8)
該キャリブレーション信号が該IF信号と同じ周波数の正弦波信号であることを特徴とする、付記7記載の無線受信装置のキャリブレーション方法。
(付記9)
付記7または付記8に記載の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、
入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置の時系列変化分補正方法。
【0102】
(付記10)
付記1ないし付記6のいずれかに記載の無線受信装置を有することを特徴とする、無線基地局装置。
【符号の説明】
【0103】
100 無線受信装置
200 アナログ受信部
201 RFバンドパスフィルタ
202 低雑音増幅器
203 周波数変換器
204 IFバンドパスフィルタ
300 ADC
400 ディジタル受信部
500 復調部
1,1′,1A,1B 無線受信装置
2 アナログ受信部
2−1 RFバンドパスフィルタ
2−2 低雑音増幅器
2−3 周波数変換器
2−4 IFバンドパスフィルタ
2−5 局部発信器
3,30A〜30C 信号分割回路
30 信号分割部
4,5,4A,5A,4B,5B ADC
6 ディジタル受信部
7 復調部
8 メモリ
9 パイロット信号生成部
10 レベル可変回路
11 パイロット信号印加部
21,22 トランジスタ
23〜28,35〜40 抵抗
31〜34 ダイオード
41〜45 コンデンサ
50 無線基地局装置
51 有線インタフェース
52 有線受信処理部
53 有線送信処理部
54 無線送信処理部
55 無線受信処理部
56 無線インタフェース
57−1〜57−K アンテナ
58 CPU
59 論理回路
60 メモリ
【技術分野】
【0001】
本件は、無線受信装置、無線受信装置のキャリブレーション方法、無線受信装置の時系列変化分補正方法及び無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話システムなどの無線通信システムにおけるデータ通信の需要が急拡大しており、無線通信システムのトラフィックを分散するために小型の基地局装置の設置需要が増加している。
また、通信速度の高速化やブローバンド化の進展に伴い、各システムで使用される無線通信用周波数が密集しており、複数周波数の無線信号が通信サービスエリアに密集して混在している。
【0003】
このため、無線受信装置においては、自装置宛ての無線信号(所望信号)以外に、所望信号の周波数に近接した周波数の他装置宛ての無線信号(妨害波)が受信される。
無線受信装置は、所望信号を正しく復調するために、復調部入力前において、受信した信号から妨害波を除去する必要がある。
そこで、従来における無線受信装置は、例えば、図1に示す構成をそなえる。
【0004】
図1は、従来における無線受信装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、無線受信装置100は、例示的に、アナログ受信部200と、アナログ/ディジタル変換器(以下、ADCということがある。ADCはAnalog-Digital Converterの略語である。)300と、ディジタル受信部400と、復調部500とをそなえる。
【0005】
アナログ受信部200は、受信信号に対し、所定の受信処理を施す。前記所定の受信処理には、フィルタ処理,信号増幅及び周波数変換などが含まれる。
このため、アナログ受信部200は、例えば図2に示す構成をそなえる。
図2は、図1のアナログ受信部200の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、アナログ受信部200は、例示的に、RF(Radio Frequency)バンドパスフィルタ201と、低雑音増幅器202と、周波数変換器203と、IF(Intermediate Frequency)バンドパスフィルタ204とをそなえる。
【0006】
RFバンドパスフィルタ201は、受信した無線周波数信号(以下RF信号ともいう)に対して無線周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、所望信号の周波数から離れた周波数における妨害波信号を除去する。
低雑音増幅器202は、RFバンドパスフィルタ201によって妨害波信号を除去された受信信号を、所定のレベルまで増幅する。
【0007】
周波数変換器203は、低雑音増幅器202から出力された信号に対し、局部発振周波数の信号をミキシングすることにより、中間周波数へダウンコンバートして出力する。
IFバンドパスフィルタ204は、周波数変換器203から出力された信号に対して中間周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、RFバンドパスフィルタで除去しきれない所望信号の周波数の近傍の周波数における妨害波や、周波数変換器203におけるミキシングにより発生する不要波を除去する。
【0008】
IFバンドパスフィルタ204でフィルタ処理が施された信号は、中間周波信号(以下IF信号ともいう)としてADC300に出力される。
即ち、アナログ受信部200において、RFバンドパスフィルタ201及びIFバンドパスフィルタ204が協働することにより妨害波の除去を行なう。
一方、図1のディジタル受信部400は、入力された信号にディジタル処理を施すものであり、アナログ受信部200で除去しきれない所望信号の周波数に非常に近接した周波数の妨害波を除去する。
【0009】
即ち、所望信号の周波数に対して妨害波の周波数が近いと、RFバンドパスフィルタ201及びIFバンドパスフィルタ204で妨害波を十分に除去しきれない場合があるため、ディジタル受信部400は、ディジタル受信部400がそなえる急峻なフィルタを用いることにより、所望信号の周波数に非常に近接した周波数の妨害波を除去する。
復調部500は、ディジタル受信部400から出力された信号に対し、所定の復調処理を施す。
【0010】
ADC300は、アナログ信号をディジタル信号で再現するため、アナログ受信部200から出力されたアナログ信号を一定間隔の時間でサンプリングし、信号振幅をディジタル値に変換する。
このADC300に入力される信号には、当然、ディジタル受信部400による受信処理が施されていないため、妨害波が十分に除去されていない場合がある。
【0011】
例えば、以下のような場合において、妨害波の影響が深刻となる。
基地局と端末とが通信中であり、端末が基地局から遠く離れている場合、端末から送信された送信信号は、基地局において低いレベルで受信される。
このとき、基地局の近くで他無線システムの無線機が通信しており、更に、該無線機の出力電力が高い場合には、端末から送信された送信信号よりも高いレベルの他無線システムの信号が基地局で受信される。
【0012】
図3及び図4に、ADC300に入力されるIF信号のスペクトラム及び時間軸波形の一例を示す。
図3は、ADC300に入力されるIF信号のスペクトラムの一例を示す図である。
ここでは説明のため、一例として、所望信号の周波数を92.16MHzとし、妨害波の周波数を184.32MHzとする。また、両信号のD/U(Desired-to-Undesired signal ratio)を60dBとする。
【0013】
図3に示す妨害波は、RFバンドパスフィルタ201およびIFバンドパスフィルタ204では除去しきれず、ADC300に入力される。
図4は、ADC300に入力されるIF信号の時間軸波形の一例を示す図である。なお、ADC300の分解能は、一例として12bitとする。
図4に示すグラフの縦軸スケールは、説明のため簡略化しているが、所望信号と妨害波のD/Uは60dBのため、妨害波の振幅は所望信号の振幅の1000倍(20×log(1000/1)=60dB)となる。
【0014】
図4に示す所望信号と妨害波とを足し合わせた信号が、ADC300に入力される。
従って、大きなレベルの妨害波によってADC300の最大入力範囲を超えることがあるため、無線受信装置の受信回路を設計する際には、所望信号の受信レベルだけでなく、妨害波の受信レベルを想定して回路を設計しなければならない。
また、大きなレベルの妨害波が入力された場合、相対的に小さい所望信号をディジタル信号で再現するためには、ADC300の分解能を十分に確保しなければならない(12bitのADCでは、相対的に小さい所望信号をディジタル信号で再現できない場合がある)。
【0015】
このように、大きなレベルの妨害波が入力された場合、ADC300には広いダイナミックレンジが要求される。
また、無線受信装置100のダイナミックレンジは、ADC300のダイナミックレンジによって決定されるため、使用電波環境における十分な妨害波耐力を満たす無線受信装置100を設計するためには、十分ダイナミックレンジの広いADC300を選択しなければならない。
【0016】
しかしながら、ADC300の性能には限界がある。
無線受信装置のダイナミックレンジ不足を解決する手段として、ADCの前段において、入力信号のレベルを判定し、判定した入力信号のレベルに応じて、入力信号を減衰させる減衰器の減衰量を切り替える技術がある(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭52−119162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に記載された技術の適用対象は音声周波数であり、最高周波数を20kHzとしている。
一方、本件の対象としている無線受信装置100は、IF信号の周波数が数百MHzである。
上記特許文献1に記載された技術を、数百MHzの信号を扱う無線受信装置に適用した場合、減衰器における減衰量の誤差が大きくなるため、微弱な所望信号を受信すると、減衰量の誤差によって感度点付近の微弱な所望信号が埋もれてしまい、復調することができなくなる。
【0019】
このため、上記特許文献1に記載された技術を無線受信装置に適用することはできない。
また、上記特許文献1に記載された技術は、入力レベルを判定する回路や減衰器を必要とするため、回路が複雑になり、実装スペースやコストが大幅に増加する。
そこで、本件は、無線受信装置の受信ダイナミックレンジを拡大することを目的の1つとする。
【0020】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)第1の案として、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成された、無線受信装置を用いることができる。
【0022】
(2)また、第2の案として、上記無線受信装置について、キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえた、無線受信装置のキャリブレーション方法を用いることができる。
【0023】
(3)さらに、第3の案として、上記の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえた、無線受信装置の時系列変化分補正方法を用いることができる。
【0024】
(4)また、第4の案として、上記無線受信装置を有する、無線基地局装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
無線受信装置の受信ダイナミックレンジを拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来における無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すアナログ受信部の構成の一例を示す図である。
【図3】IF信号のスペクトラムの一例を示す図である。
【図4】IF信号の時間軸波形の一例を示す図である。
【図5】一実施形態に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示すアナログ受信部の構成の一例を示す図である。
【図7】ディジタル受信部における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
【図8】図5に示す信号分割回路の構成の一例を示す図である。
【図9】(a),(b)は図6に示す信号分割回路から出力される信号の時間軸波形の一例を示す図である。
【図10】図6に示す信号分割回路を用いた場合の、ディジタル受信部における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
【図11】図6に示す信号分割回路用いたことに起因する波形歪によって生じる誤差信号の時間軸波形を示す図である。
【図12】(a)〜(c)は一実施形態に係る波形歪みの補正方法を示す図である。
【図13】図5に示すレベル可変回路の構成の一例を示す図である。
【図14】一実施形態に係るキャリブレーションのフローを示す図である。
【図15】一実施形態に係る無線受信装置の時系列変化分を補正するフローを示す図である。
【図16】図5に示すADCの入力端及び出力端におけるキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【図17】図5に示すディジタル受信部におけるキャリブレーション信号及び参照信号の時間軸波形を示す図である。
【図18】図5に示すディジタル受信部におけるパイロット信号及びキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【図19】図5に示す無線受信装置の運用時において、ADCの入力端における所望信号及びディジタル受信部で観測される各信号のスペクトラムを示す図である。
【図20】図5に示す無線受信装置の運用時において、ディジタル受信部で観測されるパイロット信号の時間軸波形を示す図である。
【図21】第1変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図22】(a),(b)は図21に示すADCから出力されるディジタル信号の時間軸波形を示す図である。
【図23】第2変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図24】第3変形例に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【図25】無線基地局装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す各実施形態及び変形例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、各実施形態及び変形例を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔1〕一実施形態
図5は、本願の一実施形態に係る無線受信装置の構成の一例を示す図である。
【0028】
図5に示す無線受信装置1は、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路(この信号分割回路を、信号分岐回路という場合もある)3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7と、メモリ8と、パイロット信号生成部9と、レベル可変回路10と、パイロット信号印加部11とをそなえる。
アナログ受信部は2、受信信号に対し、所定の受信処理を施す。前記所定の受信処理には、フィルタ処理,信号増幅及び周波数変換などが含まれる。
【0029】
このため、アナログ受信部2は、例えば図6に示す構成をそなえる。
図6は、図5のアナログ受信部2の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、アナログ受信部2は、例示的に、RF(Radio Frequency)バンドパスフィルタ2−1と、低雑音増幅器2−2と、周波数変換器2−3と、IF(Intermediate Frequency)バンドパスフィルタ2−4と、局部発信器2−5とをそなえる。
【0030】
RFバンドパスフィルタ2−1は、受信した無線周波数信号(以下RF信号ともいう)に対して無線周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、所望信号の周波数から離れた周波数における妨害波信号を除去する。
低雑音増幅器2−2は、RFバンドパスフィルタ201によって妨害波信号を除去された受信信号を、所定のレベルまで増幅する。
【0031】
周波数変換器2−3は、低雑音増幅器2−2から出力された信号に対し、後述する局部発信器2−5から出力された局部発振周波数の信号をミキシングすることにより、中間周波数へダウンコンバートして出力する。
IFバンドパスフィルタ2−4は、周波数変換器2−3から出力された信号に対して中間周波数帯におけるフィルタ処理を施すことにより、RFバンドパスフィルタで除去しきれない所望信号の周波数の近傍の周波数における妨害波や、周波数変換器2−3におけるミキシングにより発生する不要波を除去する。
【0032】
局部発信器205は、局部発振周波数の信号を生成し、周波数変換器2−3へ出力する。
即ち、アナログ受信部2に入力されたRF信号は、中間周波数にダウンコンバートされ、IF信号として出力される。
信号分割回路3は、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、正側の信号と負側の信号とに分割し、分割した各信号をそれぞれパス1(Path1)及びパス2(Path2)へ出力する。即ち、信号分割回路3は、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号をダウンコンバートして得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分(この例では2つの信号部分)に分割して出力する信号分割部の一例として機能するとともに、IF信号を受ける入力部と入力部を通じて入力されたIF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路の一例として機能する。
【0033】
ADC(Analog Digital Converter)4,5は、入力されたアナログ信号をディジタル信号で再現するため、アナログ信号を一定間隔の時間でサンプリングし、信号振幅をディジタル値に変換するものである。即ち、ADC4,5は、信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器の一例として機能する。
【0034】
ADC4は、パス1に設けられたADCであり、信号分割回路3から出力された正側の信号をディジタル信号に変換して出力する。
ADC5は、パス2に設けられたADCであり、信号分割回路3から出力された負側の信号をディジタル信号に変換して出力する。
また、ADC4,5には、同一周波数のクロック信号(CLK)が与えられる。
【0035】
なお、説明のため、ADC4,5の各々の分解能は12bitとする。
ディジタル受信部6は、ADC4,5から出力された各ディジタル信号の合成を行なうとともに、ディジタルフィルタによるフィルタリング処理などの所定のディジタル処理を施す。
ADC5により信号をディジタル化したことで信号処理が容易になるため、ディジタル受信部6は、入力された信号を任意に加工し、復調部7へ出力することができる。
【0036】
復調部7は、ディジタル受信部6から出力された信号に対し、所定の復調処理を施す。
図7は、ディジタル受信部6における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。なお、ディジタル受信部6で扱う信号はディジタル信号であるため、信号波形を示す際には包絡線で示す(以下においても同様である)。
以上の構成によると、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、信号分割回路3が正側の信号と負側の信号に分割して出力し、正側の信号と負側の信号のそれぞれについて12bitの分解能を有するADC4,5でディジタル信号に変換するので、ADC4,5のそれぞれが扱う振幅範囲はアナログ受信部2から出力されたIF信号の半分となる。
【0037】
これにより、無線受信装置1が扱える受信信号の振幅範囲は2倍となり、また、無線受信装置1の分解能は、等価的に、212(12bit)の2倍、即ち、213(13bit)となる。
なお、上述した信号分割回路3は、例えば、プッシュプル回路で構成することができる。
【0038】
図8は、図5に示す信号分割回路3の構成の一例を示す図である。
図8に示す信号分割回路3は、例示的に、トランジスタ21,22と、抵抗23〜28からなるプッシュプル回路によって構成される。
なお、図8における端子a〜eは、図5における端子a〜eにそれぞれ対応している。
トランジスタ21は、PNPトランジスタで構成され、トランジスタ22は、NPNトランジスタで構成される。なお、これらのバイポーラトランジスタをFETなどの他の半導体素子に置き換えることも可能である。
【0039】
図8に示す信号分割回路3は、端子aに信号が入力されると、入力された信号が振幅0を基準として正側の時に、トランジスタ21がON状態になり、トランジスタ22がOFF状態になる。
一方、入力された信号が振幅0を基準として負側の時に、トランジスタ22がON状態になり、トランジスタ21がOFF状態になる。
【0040】
これにより、端子dには端子aに入力された信号の正側の信号のみが出力され、端子eには端子aに入力された信号の負側の信号のみが出力される。
即ち、プッシュプル回路を用いることによって信号分割回路3の機能を実現することができる。
しかしながら、信号分割回路3を図8に示すプッシュプル回路で構成した場合、トランジスタ21,22のベースのON電圧の影響で、出力波形が振幅0付近で歪んでしまう。
【0041】
図9は、プッシュプル回路によって構成された信号分割回路3から出力される信号の時間軸波形を示す図であり、図9(a),(b)は、それぞれ信号分割回路3の端子d,eから出力される信号の時間軸波形を示す図である。
図9(a),(b)のそれぞれで示すように、信号分割回路3の端子d,eから出力される信号の波形(図9(a),(b)中実線で示す)は、振幅0付近で波形が歪むため、信号分割回路3に入力されたIF信号の波形(図9(a),(b)中点線で示し、以下理想波形ともいう)とは異なる波形になる。
【0042】
図10は、プッシュプル回路を用いて信号分割回路3を構成した場合の、ディジタル受信部6における合成後の信号の時間軸波形を示す図である。
このような波形歪を含んだ信号をディジタル受信部6で合成すると、合成後の信号波形は、信号分割回路3に入力されたIF信号の波形とは異なり振幅0付近で不連続部分(以下、信号分割境界部分ともいう)を有する。
【0043】
この信号の不連続部分における波形歪によって、図11に示す誤差信号が生じてしまい、復調部7は受信した信号を正しく復調できなくなる。
そこで、本実施形態では、上記波形歪の発生を防ぐため、ディジタル受信部6は、上述した機能に加えて、信号分割回路3の端子b及びcにそれぞれパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を出力する。これらの各制御電圧により、信号分割回路3におけるトランジスタ21,22のベース電圧が変化し、波形歪みを補正することができる。
【0044】
図12は、波形歪みの補正方法を示す図である。
図12(a)は、信号分割回路3の端子bにパス1用制御電圧を印加したとき端子dから出力される信号の時間軸波形を示す。
ディジタル受信部6は、信号分割回路3の端子bに印加するパス1用制御電圧を調整することによって、トランジスタ21のベース電圧を変更し、端子dから出力される信号のクリップ位置を図12(a)の一点差線で示す位置に調整する。
【0045】
そして、信号分割回路3の端子dから出力された信号は、ADC4においてディジタル信号へ変換された後、ディジタル受信部6へ入力される。
ここで、ディジタル受信部6は、所定のウインドウ(Window)を用いて、ADC4から出力された波形から、波形歪が生じていない位置を切り出すことで、波形歪を含まない正側の信号を抽出することができる(図12(a)の網掛け部分参照)。
【0046】
また、図12(b)は、信号分割回路3の端子cにパス2用制御電圧を印加したとき端子eから出力される信号の時間軸波形を示す。
端子eから出力される信号についても、端子dから出力される信号と同様の処理を施すことにより、波形歪を含まない負側の信号を抽出することができる(図12(b)の網掛け部分参照)。
【0047】
そして、上記の手順で得られた正側及び負側の信号をディジタル受信部6において合成処理することにより、図12(c)のような波形歪を含まない信号を得ることができる。
しかしながら、上述したプッシュプル回路は、図8に示すようにアナログ素子であるトランジスタ21,22によって構成されており、環境温度の変化や経年劣化などによりベースのON電圧が変動する。
【0048】
このため、上記のパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧の最適値も変動する。
そこで、本実施形態では、パイロット信号を用いて、トランジスタ21及び22の特性の変動をモニタリングする。そして、当該モニタリング結果に基づき、パス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を調整する。
パイロット信号生成部9は、クロック信号(CLK)を用いてパイロット信号を生成するものであり、例えば、分周器などによって実現することができる。本実施形態では、パイロット信号生成部9を、クロック信号を4分周する分周器で構成する。
【0049】
レベル可変回路10は、パイロット信号生成部9から出力されたパイロット信号のレベルを調整するものであり、ディジタル受信部6から出力されるパイロット信号レベル制御電圧によって制御される。
なお、レベル可変回路10は、例えば、図13に示す回路によって実現することができる。
【0050】
図13は、図5に示すレベル可変回路の構成の一例を示す図である。
即ち、レベル可変回路10は、ダイオード31〜34と、抵抗35〜40と、コンデンサ41〜45とをそなえる。
また、図13における端子f〜hは、図5における端子f〜hにそれぞれ対応している。
【0051】
図13に示すレベル可変回路10は、端子gへ印加するパイロット信号レベル制御電圧を調整することで、ダイオード31〜34のバイアス電圧を変えてダイオードの抵抗値を調整できるため、端子fと端子hとの間における減衰量を調整することができる。
即ちパイロット信号生成部9及びレベル可変回路10は、IF信号とは周波数の異なるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部の一例として機能する。
【0052】
パイロット信号印加部11は、アナログ受信部2から出力されたIF信号にパイロット信号を加算し、信号分割回路3へ出力する。
以下に、パイロットを用いた無線受信装置1の時系列変化分の補正方法について説明する。なお、本実施形態で示す例はあくまで一例であり、信号周波数や信号レベルなどの条件は、ここで例示するものに限定されない。
【0053】
無線受信装置1の時系列変化分を補正するにあたり、まず、キャリブレーションを実行することにより、パイロット信号の基準レベルを記憶するが、まず、キャリブレーションについて説明する。
図14は、キャリブレーションのフローを示す図である。
まず、キャリブレーション信号として、ダウンコンバート後に92.16MHzとなる正弦波がアナログ受信部2の入力端(以下、単に入力端ともいう)に入力される(図14のステップS11参照)。即ち、キャリブレーション信号は、IF信号と同じ周波数の正弦波信号である。また、入力端におけるキャリブレーション信号のレベルは−110dBmとする。
【0054】
このとき、レベル可変回路10をOFF状態にして(レベル可変回路10の端子gへ印加するパイロット信号レベル制御電圧を0Vにする)、IF信号にはパイロット信号を加算しない。
キャリブレーション信号は、信号分割回路3によって分割され、ADC4,5によってディジタル信号に変換される。このとき、ADC4,5は、クロック信号の周波数である61.44MHzでサンプリングを行なう。
【0055】
図16は、ADC4,5の入力端及び出力端におけるキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
キャリブレーション信号は、ADC4,5により61.44MHzでサンプリングされるため、ADC4,5から出力されると周波数が30.72MHzとなる。
次に、上記キャリブレーション信号と参照信号とのレベルの比較を行う(図14のステップS12参照)。
【0056】
メモリ8は、基準となる参照信号(この参照信号は参照値情報を有する)を予め保持しており、ディジタル受信部6は、必要に応じてメモリ8から参照信号を読み出す。即ち、メモリ8は、参照値情報を記憶する記憶部の一例として機能する。
参照信号は、例えば、入力端に−110dBmの信号が入力された際にディジタル受信部6で観測されるべき理想的な出力レベルである。
【0057】
なお、参照信号は、例えば、無線受信装置1の設計後に特性試験を行なうことで内部部品の特性を調べ、その特性に基づいて決定することができる。また、参照信号は、無線受信装置1の工場出荷時にメモリ8に記憶することができる。
図17は、図5に示すディジタル受信部6におけるキャリブレーション信号及び参照信号の時間軸波形を示す図である。
【0058】
そして、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号のレベルが参照信号のレベルに一致するようにパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を設定する(図14のステップS13参照)。
キャリブレーション信号の正側の振幅の調整は、パス1用制御電圧を調整し、トランジスタ21のベース電圧を変更することで行なう。
【0059】
また、キャリブレーション信号の負側の振幅の調整は、パス2用制御電圧を調整し、トランジスタ22のベース電圧を変更することで行なう。
図17に示す例では、キャリブレーション信号の正側の振幅が、参照信号のレベルより大きいため、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号の正側の振幅が小さくなるようにパス1用制御電圧を調整する。
【0060】
一方、キャリブレーション信号の負側の振幅が、参照信号のレベルより小さいため、ディジタル受信部6は、キャリブレーション信号の負側の振幅が大きくなるようにパス2用制御電圧を調整する。
また、これに伴い、ディジタル受信部6は、Windowの切り出し位置を決定する。
このようにして決定されたパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧並びにWindowの切り出し位置はメモリ8に保存される。
【0061】
次に、パイロット信号のレベルを決定する(図14のステップS14参照)。
図5のレベル可変回路10をON状態にして(即ち、ディジタル受信部6が、図13に示すレベル可変回路10の端子gに+電圧を印加して)、パイロット信号印加部11にパイロット信号を入力する。
図18は、図5に示すディジタル受信部6におけるパイロット信号及びキャリブレーション信号のスペクトラムを示す図である。
【0062】
パイロット信号生成部9は、61.44MHzのクロック信号を4分周してパイロット信号を生成しているため、パイロット信号の周波数は15.36MHzである。
ディジタル受信部6は、この図18におけるパイロット信号のレベルがキャリブレーション信号と同じレベルになるように、レベル可変回路10に出力するパイロット信号レベル制御電圧を調整する。
【0063】
そして、ディジタル受信部6は、このようにして調整されたパイロット信号レベル制御信号の大きさ、即ち、基準となるパイロット信号のレベルを、参照値として図5のメモリ8に記憶する。即ち、ディジタル受信部6は、参照値情報とパイロット信号とを比較して、信号分割部における信号分割境界部分の時系列変化分を補正する補正部の一例として機能する。
【0064】
以上でキャリブレーションを完了する。
無線受信装置1の運用時において、環境温度の変化や経年劣化などにより、信号分割境界部分に時系列変化を生じるが、この信号分割境界部分の時系列変化分を補正することが行なわれる。
即ち、図15に示すように、まず、無線受信装置1の運用前に上述のキャリブレーション方法で得られた基準となるパイロット信号の信号レベルを参照値として記憶し(図15のステップS1参照)、次いで、無線受信装置1の運用中では、パイロット信号レベルと上記参照値とを比較し、無線受信装置1の時系列変化分を補正する(図15のステップS2参照)。
【0065】
なお、ここでは簡単のため、RF信号として所望信号のみが受信されるものとする。
無線受信装置1の起動時において、パイロット信号がパイロット信号印加部11へ入力される。
この状態で、入力端にRF信号が入力される。なお、RF信号は、ダウンコンバート後に中心周波数が92.16MHzとなる信号であり、帯域幅が20MHzの変調信号とする。
【0066】
このため、信号分割回路3には、中心周波数が92.16MHzで帯域幅が20MHzのIF信号と、15.36MHzのパイロット信号とが入力される。
そして、ADC4,5が、61.44MHzのサンプリング周波数でサンプリングを行なうため、中心周波数が92.16MHzのIF信号は、ADC4,5から出力されると中心周波数が30.72MHzのディジタル信号となる。
【0067】
なお、パイロット信号はADC4,5でサンプリングを行なった後も15.36MHzのままである。
即ち、ディジタル受信部6には、15.36MHzのパイロット信号と、30.72MHzのディジタル信号とが入力される。
図19は、図5に示す無線受信装置1の運用時において、ADC4,5の入力端における所望信号及びディジタル受信部6で観測される各信号のスペクトラムを示す図である。
【0068】
また、図20は、図5に示す無線受信装置1の運用時において、ディジタル受信部6で観測されるパイロット信号の時間軸波形を示す図である。
環境温度の変化などにより、トランジスタ21,22のベース電圧による信号クリップ位置が変動すると、パイロット信号のレベルが変動する。
ディジタル受信部6は、無線受信装置1の運用中、常にパイロット信号をモニタリングしており、パイロット信号のレベルが変動すると、パス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を変化させて、パイロット信号のレベルが参照値と同じようになるように調整する。
【0069】
例えば、図20に示す例では、ADC4から出力されたパイロット信号のレベルが参照値より大きいため、ディジタル受信部6は、ADC4から出力されたパイロット信号のレベルが小さくなるようにパス1用制御電圧を調整する。
一方、ADC5から出力されたパイロット信号のレベルが参照値より小さいため、ディジタル受信部6は、ADC5から出力されたパイロット信号のレベルが大きくなるようにパス2用制御電圧を調整する。
【0070】
このように、パイロット信号のレベルが常に参照値と同じようになるようにパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を調整することで、トランジスタ21,22のベース電圧による信号クリップ位置を常に適正位置に保つことができる。
即ち、無線受信装置1は、例えば運用中に環境温度の変動が生じたとしても、自動的に信号クリップ位置を最適位置に保つことができる。
【0071】
なお、ディジタル受信部6は、帯域幅20MHzのディジタルフィルタを用いてパイロット信号及び妨害波を除去した後に、所望信号のみを復調部7へ出力する。
以上のように、本実施例によれば、信号分割回路3がIF信号を正側の信号と負側の信号に分割し、ADC4,5が正側の信号及び負側の信号のそれぞれについてディジタル信号に変換するので、複雑な回路や高価なADCを用いることなく無線受信装置のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0072】
また、ディジタル受信部6が、信号分割回路3にパス1用制御電圧及びパス2用制御電圧を出力して信号クリップ位置を調整し、Windowを用いて波形歪成分を除去するので、プッシュプル回路を用いて信号分割回路3を構成した場合であっても、波形歪の発生を防ぐことができる。
さらに、パイロット信号を用いて回路特性の変動をモニタリングすることにより、信号分割回路の信号クリップ位置を回路特性の変動にあわせて自動的に調整することができ、安定した受信特性を得ることができる。
【0073】
〔2〕第1変形例
なお、一実施形態に係る信号分割回路3を多段構成にすることにより、より多くのADCをそなえた無線受信装置を実現することができる。
図21は、第1変形例に係る無線受信装置1′の構成の一例を示す図である。
図21に示す無線受信装置1′は、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割部30と、ADC4A,5A,4B,5Bと、ディジタル受信部6と、復調部7と、メモリ8と、パイロット信号生成部9と、レベル可変回路10と、パイロット信号印加部11とをそなえる。なお、図21中、既述の符号を付した各構成については、前述の各構成と同様の機能を具備するので、その詳細な説明は省略する。
【0074】
信号分割部30は、それぞれ同じ構成の3つの信号分割回路30A,30B,30Cをそなえて構成されており、信号上流側の信号分割回路30Aの2つの出力部に、一対の信号分割回路30B,30Cの各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有している。
信号分割回路30Aは、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、振幅0を基準として正側の信号と負側の信号とに分割する。
【0075】
信号分割回路30B及び30Cは、それぞれ信号分割回路30Aの出力端に接続され、信号分割回路30Aから出力された正側の信号及び負側の信号を更に分割する。
図22は、信号分割回路30B及び30Cから出力される信号の時間軸波形を示す図である。
図22は(a)、信号分割回路30Bから出力される信号の時間軸波形を示す。
【0076】
信号分割回路30Bは、信号分割回路30Aから出力された正側の信号を、正側の信号の最大振幅の1/2の値を基準として、第1信号及び第2信号に分割する。
図22は(b)、信号分割回路30Cから出力される信号の時間軸波形を示す。
信号分割回路30Cは、信号分割回路30Aから出力された負側の信号を、負側の信号の最大振幅の1/2の値を基準として、第3信号及び第4信号に分割する。
【0077】
即ち、ADC30A〜30Cが協働することにより、アナログ受信回路で受信された無線周波数信号をダウンコンバートして得られる中間周波信号を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部の一例として機能し、また、ADC30A〜30Cのそれぞれが、IF信号を受ける入力部と入力部を通じて入力されたIF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路の一例として機能する。
【0078】
上記のようにして得られた第1〜第4信号はそれぞれADC4A,5A,4B,5Bによってディジタル信号に変換される。
以上の構成によると、アナログ受信部2から出力されたIF信号を、信号分割回路30A〜30Cが第1〜第4信号に分割して出力し、第1〜第4信号のそれぞれについて12bitの分解能を有するADC4A,5A,4B,5Bでディジタル信号に変換するので、ADC4A,5A,4B,5Bのそれぞれが扱う振幅範囲は、アナログ受信部2から出力されたIF信号の1/4となる。
【0079】
これにより、無線受信装置1が扱える振幅範囲は4倍となり、また、無線受信装置1の分解能は、等価的に、212(12bit)の4倍、即ち、214(14bit)となる。
以上のように、本変形例によると、信号分割回路を多段構成にし、より多くのADCを用いることで、無線受信装置の分解能を更に向上することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態と同様、信号分割回路30A〜30Cは、それぞれ図8に示すプッシュプル回路で構成することができる。
この場合、ディジタル受信部6が、信号分割回路30A〜30Cに制御電圧を印加することにより、上述した実施形態と同様、波形歪の発生を防ぐことができる。
また、パイロット信号を用いて、信号分割回路30A〜30C内のそれぞれがそなえるトランジスタの特性変化をモニタリングすることにより、信号分割回路30A〜30Cに印加する制御電圧を常に最適な状態に保つことができる。
【0081】
〔3〕第2変形例
上述した一実施形態及び第1変形例において、無線受信装置1,1′の動作環境が安定している場合、回路構成をより簡単化することができる。
ここでは、一実施形態と同様、1つの信号分割回路及び2つのADCをそなえて構成された例について説明するが、第1変形例のように3つの信号分割回路及び4つのADCをそなえて構成された場合や、更に多くの信号分割回路及びADCをそなえて構成された場合についても同様に実施可能である。
【0082】
図23は、第2変形例に係る無線受信装置1Aの構成の一例を示す図である。
図23に示す無線受信装置1Aは、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7とをそなえる。
即ち、第2実施形態に係る無線受信装置は、図5に示す無線受信装置1におけるメモリ8,パイロット信号生成部9,レベル可変回路10及びパイロット信号印加部を省略して構成することができる。
【0083】
以上のように本変形例によると、無線受信装置の回路構成が簡略化されるため、無線受信装置の低消費電力化、省スペース化,低コスト化などのメリットが得られる。
〔4〕第3変形例
また、第2変形例において、信号分割回路3を理想的な半端整流回路などで構成し、波形歪み成分の発生を抑えることができた場合、回路構成を更に簡単化することができる。
【0084】
ここでは、一実施形態と同様、1つの信号分割回路及び2つのADCをそなえて構成された例について説明するが、第1変形例のように3つの信号分割回路及び4つのADCをそなえて構成された場合や、更に多くの信号分割回路及びADCをそなえて構成された場合についても同様に実施可能である。
図24は、第3変形例に係る無線受信装置1Bの構成の一例を示す図である。
【0085】
図24に示す無線受信装置1Bは、例示的に、アナログ受信部2と、信号分割回路3と、ADC4,5と、ディジタル受信部6と、復調部7とをそなえる。
ここで、第3実施形態に係る無線受信装置におけるディジタル受信部6は、ADC4,5から出力された信号を合成する機能及びディジタルフィルタによるフィルタリングなどの所定のディジタル処理を施す機能のみを有する。
【0086】
即ち、信号分割回路3において生じる波形歪を補正するための、信号分割回路3への制御電圧を出力する機能や、ADC4,5から出力された信号からウインドウを用いて波形歪を切り出す機能を省略することができる。
以上のように、本変形例によると、無線受信装置の処理負荷を軽減することができる。
〔5〕その他
なお、上述した実施形態及び各変形例において、アナログ受信部2、信号分割回路3,30A〜30C、パイロット信号生成部9、レベル可変回路10及びパイロット信号印加部11は、各種のアナログ回路を適宜組み合わせて実現される(アナログ部)。また、ディジタル受信部6,復調部7はDSPやCPUなどを用いて実現される(ディジタル部)。
【0087】
また、上述した無線受信装置1,1′,1A,1Bの各構成,各手段及び各機能は、必要に応じて取捨選択されてもよいし、適宜組み合わせられてもよい。即ち、上述した本発明の機能を発揮できるように、上記の各構成及び各機能は取捨選択されたり、適宜組み合わせて用いられたりしてもよい。
さらに、上述した無線受信装置1,1′,1A,1Bの各構成,各手段及び各機能を、適宜用いて、無線基地局装置(例えば、フェムトセルに用いられる小型基地局装置)を構成することができる。
【0088】
図25は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bを適用した無線基地局装置の構成を示す図である。
図25に示す無線基地局装置50は、例示的に、有線インタフェース(IF;Interface)51と、有線受信処理部52と、有線送信処理部53と、無線送信処理部54と、無線受信処理部55と、無線インタフェース56と、K(Kは1以上の自然数)本のアンテナ57−1〜57−Kと、CPU58と、論理回路59と、メモリ60とをそなえる。なお、以下では、アンテナ57−1〜57−Kを区別しない場合、単にアンテナ57と表記する。
【0089】
有線インタフェース51は、無線基地局装置50と、外部ネットワークもしくは上位装置との通信を制御する。
有線受信処理部52は、有線インタフェース51から入力された信号に復調処理や復号処理など所定の信号処理を施す。
有線送信処理部53は、外部ネットワークもしくは上位装置へ送信する信号に符号化処理や変調処理など所定の信号処理を施す。
【0090】
無線送信処理部54は、移動局へ送信する信号に符号化処理、変調処理などの所定の信号処理を施し、アンテナ130へ出力する。
無線受信処理部55は、移動局から送信された無線信号に復調処理、復号処理など所定の信号処理を施すもので、無線インタフェース56は、アップコンバートやダウンコンバートなどの周波数変換処理などを施すことにより、後述するアンテナ57で送受信を行なう無線信号と、無線基地局装置50で扱う信号とを相互に変換するものである。
【0091】
これらの、無線受信処理部55や無線インタフェース56が、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bを構成する。
例えば、無線受信処理部55は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bにおける信号分割回路3,30A〜30C,ADC4,5,4A,5A,4B,5B,ディジタル受信部6,復調部7,メモリ8,パイロット信号生成部9,レベル可変回路10,パイロット信号印加部11によって構成することができ、無線インタフェース56は、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bにおけるアナログ受信部2によって構成することができる。
【0092】
アンテナ57は、それぞれ、基地局へ無線信号を送信する送信アンテナ及び移動局から無線信号を受信する受信アンテナとして機能する。なお、アンテナ57−1〜57−Kのうちの一部が送信アンテナとして機能し、残りが受信アンテナとして機能しても良いし、アンテナ57−1〜57−Kのそれぞれが送受信アンテナとして機能しても良い。
CPU58は、バスによって相互接続された論理回路59及びメモリ60と協働することにより、有線受信処理部52,有線送信処理部53,無線送信処理部54及び無線受信処理部55を制御する。
【0093】
以上のようにして、上述した実施形態及び各変形例に係る無線受信装置1,1′,1A,1Bは無線基地局装置50に適用することができる。
また、上述した実施形態及び各変形例において、パイロット信号生成部9は、クロック信号を4分周する分周器で構成したが、パイロット信号の周波数は、パイロット信号がIF信号に干渉しない範囲で任意に決定することができる。
【0094】
さらに、上述した各変形例において、信号分割回路30Aの後段に信号分割回路30B,30Cが接続される2段接続とし、4つのADCを用いる例を示したが、同様の要領で信号分割回路を多段接続することにより、更に多くのADCを用いた受信処理を行なうことができる。
例えば、信号分割回路をN(Nは2以上の自然数)段接続することにより、2N倍個のADCを使用した受信処理を行なうことができ、各ADCの分解能の2N倍の分解能を有する受信回路1′を実現することができる。
【0095】
また、上述した実施形態及び各変形例において、複数のADCには、同一の分解能を有するADCを用いたが、こうすることで、部品の調達を低コストで行なうことができ、また、部品管理も容易である。ただし、分解能の異なるADCを用いた場合であっても、同様に実施可能である。
以上の実施形態及び各変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0096】
〔6〕付記
(付記1)
アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、
該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成されたことを特徴とする、無線受信装置。
【0097】
(付記2)
該信号分割部が、該IF信号を受ける入力部と該入力部を通じて入力された該IF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路を少なくとも1つそなえていることを特徴とする、付記1記載の無線受信装置。
(付記3)
該信号分割部が、
該信号分割回路を複数そなえ、
該複数の信号分割回路が、信号上流側の信号分割回路の2つの出力部に一対の信号分割回路の各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有していることを特徴とする、付記2記載の無線受信装置。
【0098】
(付記4)
該信号分割部が信号分割境界部分に信号不連続部分を生成する回路として構成され、
該信号分割部で生成される該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去部が設けられたことを特徴とする、付記1ないし付記3のいずれかに記載の無線受信装置。
(付記5)
該信号分割回路が、
一対のプッシュプル接続された各トランジスタからの出力を出力信号とし、各出力信号の信号分割境界部分に信号不連続部分が生成される回路として構成され、
該信号分割回路における各トランジスタの信号クリップ位置を調整して該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去回路が設けられたことを特徴とする、付記2または付記3に記載の無線受信装置。
【0099】
(付記6)
参照値情報を記憶する記憶部と、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部と、
該参照値情報と該パイロット信号とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正する補正部とが設けられたことを特徴とする、付記1ないし付記5のいずれかに記載の無線受信装置。
【0100】
(付記7)
付記1ないし付記6のいずれかに記載の無線受信装置について、
キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、
該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置のキャリブレーション方法。
【0101】
(付記8)
該キャリブレーション信号が該IF信号と同じ周波数の正弦波信号であることを特徴とする、付記7記載の無線受信装置のキャリブレーション方法。
(付記9)
付記7または付記8に記載の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、
入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置の時系列変化分補正方法。
【0102】
(付記10)
付記1ないし付記6のいずれかに記載の無線受信装置を有することを特徴とする、無線基地局装置。
【符号の説明】
【0103】
100 無線受信装置
200 アナログ受信部
201 RFバンドパスフィルタ
202 低雑音増幅器
203 周波数変換器
204 IFバンドパスフィルタ
300 ADC
400 ディジタル受信部
500 復調部
1,1′,1A,1B 無線受信装置
2 アナログ受信部
2−1 RFバンドパスフィルタ
2−2 低雑音増幅器
2−3 周波数変換器
2−4 IFバンドパスフィルタ
2−5 局部発信器
3,30A〜30C 信号分割回路
30 信号分割部
4,5,4A,5A,4B,5B ADC
6 ディジタル受信部
7 復調部
8 メモリ
9 パイロット信号生成部
10 レベル可変回路
11 パイロット信号印加部
21,22 トランジスタ
23〜28,35〜40 抵抗
31〜34 ダイオード
41〜45 コンデンサ
50 無線基地局装置
51 有線インタフェース
52 有線受信処理部
53 有線送信処理部
54 無線送信処理部
55 無線受信処理部
56 無線インタフェース
57−1〜57−K アンテナ
58 CPU
59 論理回路
60 メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、
該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成されたことを特徴とする、無線受信装置。
【請求項2】
該信号分割部が、該IF信号を受ける入力部と該入力部を通じて入力された該IF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路を少なくとも1つそなえていることを特徴とする、請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
該信号分割部が、
該信号分割回路を複数そなえ、
該複数の信号分割回路が、信号上流側の信号分割回路の2つの出力部に一対の信号分割回路の各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有していることを特徴とする、請求項2記載の無線受信装置。
【請求項4】
該信号分割部が信号分割境界部分に信号不連続部分を生成する回路として構成され、
該信号分割部で生成される該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去部が設けられたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無線受信装置。
【請求項5】
該信号分割回路が、
一対のプッシュプル接続された各トランジスタからの出力を出力信号とし、各出力信号の信号分割境界部分に信号不連続部分が生成される回路として構成され、
該信号分割回路における各トランジスタの信号クリップ位置を調整して該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去回路が設けられたことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線受信装置について、
キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、
該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置のキャリブレーション方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、
入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置の時系列変化分補正方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線受信装置を有することを特徴とする、無線基地局装置。
【請求項1】
アナログ受信回路で受信された無線周波数信号(以下RF信号という)を周波数変換して得られる中間周波信号(以下IF信号という)を振幅に関し複数の信号部分に分割して出力する信号分割部と、
該信号分割部で分割された複数の信号部分のそれぞれについてアナログ/ディジタル変換してディジタル受信回路側へ出力する複数のアナログ/ディジタル変換器とをそなえて構成されたことを特徴とする、無線受信装置。
【請求項2】
該信号分割部が、該IF信号を受ける入力部と該入力部を通じて入力された該IF信号を振幅に関し2つの信号部分に分割して出力する2つの出力部とを有する信号分割回路を少なくとも1つそなえていることを特徴とする、請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
該信号分割部が、
該信号分割回路を複数そなえ、
該複数の信号分割回路が、信号上流側の信号分割回路の2つの出力部に一対の信号分割回路の各入力部が接続された信号分割回路ユニット構成を有していることを特徴とする、請求項2記載の無線受信装置。
【請求項4】
該信号分割部が信号分割境界部分に信号不連続部分を生成する回路として構成され、
該信号分割部で生成される該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去部が設けられたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無線受信装置。
【請求項5】
該信号分割回路が、
一対のプッシュプル接続された各トランジスタからの出力を出力信号とし、各出力信号の信号分割境界部分に信号不連続部分が生成される回路として構成され、
該信号分割回路における各トランジスタの信号クリップ位置を調整して該信号不連続部分の影響を除去する信号不連続部分除去回路が設けられたことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線受信装置について、
キャリブレーション信号を該信号分割部の入力側から入力するステップと、
該キャリブレーション信号と参照信号と比較して、該キャリブレーション信号が該参照信号と一致するように調整するステップと、
該IF信号とは周波数の異なるパイロット信号が該調整されたキャリブレーション信号と一致するように該パイロット信号の信号レベルを決定するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置のキャリブレーション方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線受信装置のキャリブレーション方法で得られた該パイロット信号の信号レベルを参照値情報として記憶するステップと、
入力されたパイロット信号と該参照値情報とを比較して、該信号分割部における該信号分割境界部分の時系列変化分を補正するステップとをそなえたことを特徴とする、無線受信装置の時系列変化分補正方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無線受信装置を有することを特徴とする、無線基地局装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−249189(P2012−249189A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120914(P2011−120914)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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