説明

無線基地局及び通信制御方法

【課題】トラフィックの増加時において、所定の通信が困難となることを防止する。
【解決手段】LTE基地局10−1は、コアネットワーク30からのETWS情報を移動端末40へ送信した場合、移動端末40との間のトラフィック量が第1の所定値以上となると予測される条件が満たされると判断し、実績空き無線リソース量を補正し、補正後の空き無線リソース量を取得する。更に、LTE基地局10−1は、補正後の空き無線リソース量を含んだリソースステータスレスポンスメッセージを、隣接する他のLTE基地局であるLTE基地局10−2へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の無線基地局との間で無線リソースの空きリソース量を通知し合う無線基地局、及び、当該無線基地局における通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急事態の際に公衆に警報を通知することは、多くの国で法的に義務付けられている。緊急事態の例としては、地震、激しい雷雨、火山の噴火のような自然災害、核施設や化学工場の爆発といった産業の大惨事、あるいはテロ攻撃や戦争がある。
【0003】
従来、緊急事態は、ラジオ放送やテレビ放送によって公衆に通知されている。しかし、放送受信装置は、通常、家庭内に固定された装置や、カーラジオのような半固定の装置である。利用者は、固定又は半固定の装置を常時保持しているわけではないため、緊急情報を直ちに得られない場合がある。
【0004】
このような問題に対し、3GPP(Third Generation Partnership Project)において、現在、規格策定中のLTE(Long Term Evolution)に対応する無線通信システムでは、公衆警報システム(PWS:Public Warning System)の1つである地震津波警報システム(ETWS:Earthquake and Tsunami Warning System)が規定されている。ETWSは、無線通信システムのブロードキャストチャンネルを利用して、地震、津波に関する緊急情報を可及的速やかに移動端末へ送信するシステムである(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.870 V8.7.0 (2009-09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地震や津波等の緊急事態が発生した場合、その直後より安否確認等の通信が急増することが予想され、無線通信システムは、急激なトラフィックの増加に直面する。このため、警察や消防、救急への緊急性を要する通信が困難となる可能性がある。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、トラフィックの増加時において、所定の通信が困難となることを抑制できる無線基地局及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。本発明の第1の特徴は、他の無線基地局(LTE基地局10−2)との間で無線リソースの空きリソース量を通知し合う無線基地局(LTE基地局10−1)であって、移動端末(移動端末40)との間のトラフィック量が第1の所定値以上となることが予測される条件が満たされた場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正する補正部(空き無線リソース補正部162)と、前記補正部による補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の情報を前記他の無線基地局へ送信する送信部(空き無線リソース送信部164)と備えることを要旨とする。
【0009】
このような無線基地局は、移動端末との間のトラフィック量の増加が予測される条件が満たされる場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正し、補正後の空き無線リソース量の情報を他の無線基地局へ送信する。従って、他の無線基地局は、送信元の無線基地局における空き無線リソース量を実際の量よりも小さい値あるいは大きい値であると認識し得る。この場合、他の無線基地局と通信を行っている移動端末が送信元の無線基地局へハンドオフされる確率が変動し、送信元の無線基地局又は送信先の無線基地局は、所定の無線リソースを所定の通信用として確保できる。従って、トラフィックの増加時において、所定の通信が困難となることを抑制できる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、前記補正部は、自無線基地局の空き無線リソース量が少ないほど、補正前の自無線基地局の空き無線リソース量に対する補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の比率が小さくなるように補正することを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の特徴は、前記補正部は、自無線基地局の空き無線リソース量が多いほど、補正前の自無線基地局の空き無線リソース量に対する補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の比率が大きくなるように補正することを要旨とする。
【0012】
本発明の第4の特徴は、前記補正部は、予め定められた緊急事態に関連する緊急情報(ETWS情報)を受信した場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正することを要旨とする。
【0013】
本発明の第5の特徴は、前記緊急情報は、上位ネットワーク(コアネットワーク30)から送信されることを要旨とする。
【0014】
本発明の第6の特徴は、前記補正部は、前記緊急情報によって示される前記緊急事態の種別及び前記緊急事態の規模の少なくとも何れかに応じて、自無線基地局の空き無線リソース量を補正することを要旨とする。
【0015】
本発明の第7の特徴は、前記補正部は、自無線基地局の配下でアイドル状態にある前記移動端末の数に応じて、自無線基地局の空き無線リソース量を補正することを要旨とする。
【0016】
本発明の第8の特徴は、他の無線基地局との間で空き無線リソース量を通知し合う無線基地局における通信制御方法であって、移動端末との間のトラフィック量が第1の所定値以上となることが予測される条件が満たされた場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正するステップと、補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の情報を前記他の無線基地局へ送信するステップとを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トラフィックの増加時において、所定の通信が困難となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るLTE基地局の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る実績空き無線リソース量と補正後空き無線リソース量との対応を示す関数を表す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る緊急情報用のリソースブロックの確保を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係るLTE基地局の第1の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るLTE基地局の第2の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。具体的には、(1)無線通信システムの概略構成、(2)LTE基地局の構成、(3)LTE基地局の動作、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0020】
(1)無線通信システムの概略構成
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。本実施形態では、無線通信システム1は、LTE技術を用いて構成されている。図1に示す無線通信システム1は、無線基地局であるLTE基地局10−1及びLTE基地局10−2(以下、LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2をまとめて、適宜「LTE基地局10」と称する)と、MME(Mobile Management Entity)20と、上位ネットワークであるコアネットワーク30と、光ファイバ32と、移動端末40と、地震津波警報システム(ETWS:Earthquake and Tsunami Warning System)情報サーバ50と、公衆ネットワーク60と、ETWS発令端末装置70−1及びETWS発令端末装置70−2とを含んで構成される。
【0021】
LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2と、MME20と、ETWS情報サーバ50とは、コアネットワーク30に接続されている。ETWS情報サーバ50と、ETWS発令端末装置70−1及びETWS発令端末装置70−2とは、公衆ネットワーク60に接続されている。LTE基地局10−1とLTE基地局10−2とは、光ファイバ32に接続されている。
【0022】
LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2と、移動端末40とは、無線通信区間を介して無線通信を行う。LTEにおいて、LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2と、移動端末40との間の通信方式は、E−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network)と称される。
【0023】
LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2と、MME20との間には、コアネットワーク30を介して、トランスポート層の論理的な伝送路であるS1インタフェースが確立される。また、LTE基地局10−1とLTE基地局10−2との間には、光ファイバ32を介して、トランスポート層の論理的な伝送路であるX2インタフェースが確立可能である。
【0024】
ETWS発令端末装置70−1及びETWS発令端末装置70−2は、予め定められた緊急事態に関連する緊急情報である地震津波警報(ETWS)情報を通知する権限を有する政府、警察、消防等の機関に設置されている。
【0025】
ETWS情報は、以下のような手順を経て、ETWS発令端末装置70−1及びETWS発令端末装置70−2から移動端末40へ通知される。
【0026】
ETWS発令端末装置70−1及びETWS発令端末装置70−2は、ETWS情報を、公衆ネットワーク60を介して、ETWS情報サーバ50へ送信する。
【0027】
ETWS情報サーバ50は、公衆ネットワーク60からのETWS情報を受信する。更に、ETWS情報サーバ50は、ETWS情報を、コアネットワーク30を介して、MME20へ送信する。
【0028】
MME20は、コアネットワーク30からのETWS情報を受信する。更に、MME20は、ETWS情報を、コアネットワーク30を介して、LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2へ送信する。
【0029】
LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2は、コアネットワーク30からのETWS情報を受信する。更に、LTE基地局10−1及びLTE基地局10−2は、移動端末40に対し、ブロードキャスト又はマルチキャストにより、ETWS情報を送信する。移動端末40は、ETWS情報を受信すると、当該ETWS情報に対応する緊急サービス(例えば、所定の警報音の鳴動)を実行し、ユーザに地震や津波に対する注意を促す。
【0030】
無線通信システム1では、LTE基地局10の間の負荷分散のために、各LTE基地局10が、自LTE基地局における負荷量を示す情報である、空き無線リソース量(未使用の無線リソース量)を示す情報(リソースステータス)を他のLTE基地局10へ通知する。LTE基地局10は、自LTE基地局における空き無線リソース量が、他のLTE基地局10における空き無線リソース量より小さく、且つ、自LTE基地局における空き無線リソース量が閾値を超えるような場合に、自LTE基地局と通信中の移動端末40を他のLTE基地局10へハンドオフさせる等、負荷分散のための制御を行う。
【0031】
(2)LTE基地局の構成
図2は、LTE基地局10−1の構成を示す図である。図2に示すLTE基地局10−1は、制御部102、記憶部103、I/F部104、無線通信部106、アンテナ108及び加速度センサ110を含む。なお、LTE基地局10−2も、LTE基地局10−1と同様の構成を有する。また、以下においては、移動端末40は、LTE基地局10−1によって形成されるセル内に存在するものとする。
【0032】
制御部102は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成され、LTE基地局10−1が具備する各種機能を制御する。記憶部103は、例えばメモリによって構成され、LTE基地局10−1における制御などに用いられる各種情報を記憶する。
【0033】
I/F部104は、コアネットワーク30及び光ファイバ32に接続されている。無線通信部106は、RF回路、ベースバンド回路等を含み、変調及び復調、符号化及び復号等を行い、アンテナ108を介して、移動端末40との間で、無線信号の送信及び受信を行う。加速度センサ110は、LTE基地局10−1に生じる振動を検知する。
【0034】
制御部102は、ETWS通信部152、タイマ154、トラフィック量検知部156、無線リソース確保部158、無線リソース解放部160、空き無線リソース補正部162及び空き無線リソース送信部164を含む。
【0035】
ETWS通信部152は、コアネットワーク30からのETWS情報を、I/F部104を介して受信する。ETWS通信部152は、移動端末40への報知ベアラ(ブロードキャストベアラ又はマルチキャストベアラ)を確立し、無線通信部106及びアンテナ108を介して、移動端末40へETWS情報を送信する。
【0036】
また、ETWS通信部152は、ETWS情報を解析し、当該ETWS情報に対応する緊急事態の種別を判定する。ETWS情報には、緊急事態の種別を示す情報が含まれている。ここでは、緊急事態の種別は「地震」又は「津波」である。
【0037】
空き無線リソース補正部162は、空き無線リソース量を取得する。ここで、空き無線リソース量とは、上りの空き無線リソース量である上り空きリソースブロック量と、下りの空き無線リソース量である下り空きリソースブロック量との双方でもよく、何れか一方でもよい。
【0038】
また、空き無線リソース補正部162は、ETWS通信部152によってETWS情報が送信されたことにより、その直後より安否確認等の通信が急増し、LTE基地局10−1によって形成されるセル内の全ての移動端末40との間のトラフィック量の合計値(合計トラフィック量)が第1の所定値以上となることを予測する。
【0039】
隣接する他のLTE基地局であるLTE基地局10−2は、LTE基地局10−1における空き無線リソース量(リソースステータス)を取得するために、LTE基地局10−1に対して、リソースステータスリクエストメッセージを送信する。リソースステータスリクエストメッセージは、光ファイバ32に確立されたX2インタフェースや、コアネットワーク30に確立されたS1インタフェースを介して、LTE基地局10−1へ送られる。
【0040】
空き無線リソース補正部162は、LTE基地局10−2からのリソースステータスリクエストメッセージを、I/F部104を介して受信する。
【0041】
ETWS通信部152によってETWS情報が送信され、且つ、LTE基地局10−2からのリソースステータスリクエストメッセージが受信された場合、空き無線リソース補正部162は、取得した空き無線リソース量(実績空き無線リソース量)を補正する。実績空き無線リソース量は、補正前の空き無線リソース量に対応する。
【0042】
具体的には、空き無線リソース補正部162は、実績空き無線リソース量が少ないほど、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率が小さくなるように補正する。また、空き無線リソース補正部162は、実績空き無線リソース量が多いほど、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率が大きくなるように補正する。
【0043】
図3は、実績空き無線リソース量と補正後空き無線リソース量との対応を示す関数を表す図である。図3に示す関数α及び関数βは、例えば、いわゆるロードバランシングアルゴリズムに基づいて得られる。
【0044】
関数αは、実績空き無線リソース量が所定値よりも小さい場合には、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも小さくなり、実績空き無線リソース量が所定値よりも大きい場合には、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも大きくなる関数である。関数βは、実績空き無線リソース量に関わらず、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも小さくなる関数である。
【0045】
空き無線リソース補正部162は、図3の関数αや関数βを用いて、実績空き無線リソース量を補正し、補正後の空き無線リソース量を取得できる。
【0046】
空き無線リソース送信部164は、リソースステータスリクエストメッセージに対する応答として、補正後の空き無線リソース量を含んだリソースステータスレスポンスメッセージを生成する。空き無線リソース送信部164は、リソースステータスレスポンスメッセージを、I/F部104を介してLTE基地局10−2へ送信する。リソースステータレスポンスメッセージは、光ファイバ32に確立されたX2インタフェースや、コアネットワーク30に確立されたS1インタフェースを介して、LTE基地局10−2へ送られる。これにより、LTE基地局10−2は、LTE基地局10−1の空き無線リソース量を実績とは異なる値として認識する。
【0047】
なお、空き無線リソース補正部162は、ETWS情報によって示される緊急事態の種別、及び、緊急事態の規模の少なくとも何れかに応じて、実績空き無線リソース量を補正してもよい。
【0048】
具体的には、空き無線リソース補正部162は、ETWS情報によって示される緊急事態の種別が「地震」である場合、加速度センサ110によって検知される振動の規模を判定する。ここで、振動の規模は、所定範囲に対応する中規模、所定範囲よりも大きい大規模、所定範囲よりも小さい小規模の3段階に分類される。ここで、小規模とは、ETWS情報が誤報であったために、加速度センサ110によって振動が検知されなかった場合をも含む。
【0049】
振動の規模が大規模である場合、空き無線リソース補正部162は、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率が基準値(ここでは、図3の関数α又は関数βで示される値)よりも小さくなるように補正する。
【0050】
振動の規模が中規模である場合には、空き無線リソース補正部162は、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率を基準値に補正する。
【0051】
振動の規模が小規模である場合には、空き無線リソース補正部162は、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率が基準値よりも大きくなるように補正する。
【0052】
また、空き無線リソース補正部162は、LTE基地局10−1の配下において、アイドル状態にある移動端末40の数が多いほど、実績空き無線リソース量に対する補正後の空き無線リソース量の比率が小さくなるように補正してもよい。ここで、LTE基地局10−1の配下において、アイドル状態にある移動端末40とは、LTE基地局10−1によって形成されるセル内に存在する移動端末40のうち、待ち受け状態にある移動端末40を意味する。
【0053】
タイマ154は、空き無線リソース送信部164によってリソースステータスレスポンスメッセージが送信された後、起動する。タイマ154の満了時間はT1である。ここで、満了時間T1は、ETWS情報に対応する緊急事態の種別によって変更されてもよい。この場合、ETWS通信部152は、緊急事態の種別が「地震」である場合には、タイマ154の満了時間T1を短くし、緊急事態の種別が「津波」である場合には、タイマ154の満了時間を長くする。
【0054】
タイマ154の起動後、空き無線リソース補正部162は、加速度センサ110によって検知される振動の規模を判定する。
【0055】
振動の規模が大規模である場合、空き無線リソース補正部162は、タイマ154をリセット(停止)させる。この場合、その後、空き無線リソース送信部164は、リソースステータスレスポンスメッセージをLTE基地局10−2へ送信する場合、補正後の空き無線リソース量を含んだリソースステータスレスポンスメッセージの送信を継続する。
【0056】
振動の規模が中規模である場合には、タイマ154が満了した後、空き無線リソース補正部162は、補正後の空き無線リソース量を実績空き無線リソース量に戻す補正を行う。補正には、例えば、いわゆるロードバランシングアルゴリズムが用いられる。
【0057】
振動の規模が小規模である場合には、空き無線リソース補正部162は、タイマ154をリセット(停止)させる。空き無線リソース補正部162は、いわゆるロードバランシングアルゴリズムに基づいて、補正後の空き無線リソース量を実績空き無線リソース量に戻す補正を行う。
【0058】
トラフィック量検知部156は、移動端末40毎に、当該移動端末40の上りのトラフィック量及び下りのトラフィック量を検知する。
【0059】
無線リソース確保部158は、ETWS通信部152によってETWS情報が送信されたことにより、その直後より安否確認等の通信が急増し、LTE基地局10−1によって形成されるセル内の全ての移動端末40との間のトラフィック量の合計値(合計トラフィック量)が第1の所定値以上となることを予測する。
【0060】
この場合、無線リソース確保部158は、上りのスケジューリング(移動端末40からLTE基地局10−1に向かう方向における無線リソースの割り当て)において、警察や消防、救急等への緊急性を要する通信(緊急通信)用の上りリソースブロックを確保する。また、無線リソース確保部158は、下りのスケジューリングにおいて、緊急通信用の下りリソースブロックを確保する。
【0061】
具体的には、無線リソース確保部158は、移動端末40の上りのデータ伝送速度及び下りのデータ伝送速度を取得する。
【0062】
無線リソース確保部158は、上りのデータ伝送速度第3の所定値としての第1上り閾値以上である移動端末40に割り当てられている上りリソースブロックを所定の割合だけ減らし、下りのデータ伝送速度が第3の所定値としての第1下り閾値以上である移動端末40に割り当てられている上りリソースブロックを所定の割合だけ減らし、得られた空き上りリソースブロック及び空き下りリソースブロックを緊急通信用の上りリソースブロック及び緊急通信用の下りリソースブロックとして確保する。
【0063】
ここで、移動端末40に割り当てられているリソースブロックの数が当該移動端末40のデータ伝送速度に応じて決定される場合、例えば、移動端末40のデータ伝送速度が大きいほど、当該移動端末40に割り当てられるリソースブロックの数が多くなる場合には、無線リソース確保部158は、割り当てられているリソースブロックの数が多い移動端末40ほど、換言すれば、データ伝送速度が大きい移動端末40ほど、リソースブロックの減少の割合を大きくしてもよい。
【0064】
図4は、緊急情報用のリソースブロックの確保を説明する図である。ここで、緊急通信用には10個のリソースブロックが必要であるものとする。また、図4(a)に示すように、当初、移動端末UE#1には10個のリソースブロック、移動端末UE#2には6個のリソースブロック、移動端末#3には4個のリソースブロックが割り当てられているものとする。
【0065】
移動端末#UE1、移動端末#UE2及び移動端末#UE3のデータ伝送速度が何れも第3の所定値以上である場合、無線リソース確保部158は、移動端末#UE1、移動端末#UE2及び移動端末#UE3に割り当てられているリソースブロックを所定の割合だけ減らす。この際、無線リソース確保部158は、図4(b)に示すように、移動端末#UE1に対しては、割り当てるリソースブロックを10個から4個に減らし、移動端末#UE2に対しては、割り当てるリソースブロックを6個から3個に減らし、移動端末#UE3に対しては、割り当てるリソースブロックを4個から3個に減らす。これにより、10個のリソースブロックが緊急通信用として確保される。
【0066】
あるいは、無線リソース確保部158は、上りのデータ伝送速度が第3の所定値としての第1上り閾値以上である移動端末40に割り当てられている上りリソースブロックを所定の数だけ減らし、下りのデータ伝送速度が第3の所定値としての第1下り閾値以上である移動端末40に割り当てられている上りリソースブロックを所定の数だけ減らし、得られた空き上りリソースブロック及び空き下りリソースブロックを緊急通信用の上りリソースブロック及び緊急通信用の下りリソースブロックとして確保する。
【0067】
この際、上述と同様に、移動端末40に割り当てられているリソースブロックの数が当該移動端末40のデータ伝送速度に応じて決定される場合には、無線リソース確保部158は、割り当てられているリソースブロックの数が多い移動端末40ほど、換言すれば、データ伝送速度が大きい移動端末40ほど、リソースブロックの減少数を大きくしてもよい。
【0068】
無線リソース解放部160は、LTE基地局10−1によって形成されるセル内の全ての移動端末40との間のトラフィック量の合計値(合計トラフィック量)が第2の所定値以下となることを予測した場合、上りのスケジューリングにおいて、緊急通信用の上りリソースブロックを解放し、下りのスケジューリングにおいて、緊急通信用の下りリソースブロックを解放する。
【0069】
(3)LTE基地局の動作
図5及び図6は、LTE基地局10−1の動作を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS101において、LTE基地局10−1は、コアネットワーク30からのETWS情報を受信する。
【0071】
ステップS102において、LTE基地局10−1は、移動端末40への報知ベアラを確立し、当該移動端末40へETWS情報を送信する。
【0072】
ステップS103において、LTE基地局10−1は、隣接する他のLTE基地局であるLTE基地局10−2からのリソースステータスリクエストメッセージを受信する。
【0073】
ステップS104において、LTE基地局10−1は、実績空き無線リソース量を補正し、補正後の空き無線リソース量を取得する。
【0074】
ステップS104において、LTE基地局10−1は、補正後の空き無線リソース量を含んだリソースステータスレスポンスメッセージを生成し、隣接する他のLTE基地局であるLTE基地局10−2へ送信する。
【0075】
その後、図6に示す動作に移行し、ステップS201において、LTE基地局10−1は、当該LTE基地局10−1内のタイマ154を起動する。
【0076】
ステップS202において、LTE基地局10−1は、当該LTE基地局10−1内の加速度センサ110によって検知される振動の規模を判定する。
【0077】
振動の規模が大規模である場合、ステップS203において、LTE基地局10−1は、タイマ154をリセット(停止)させる。
【0078】
振動の規模が中規模である場合、ステップS205において、LTE基地局10−1は、タイマ154が満了したか否かを判定する。タイマ154が満了した場合、ステップS206において、LTE基地局10−1は、補正後の空き無線リソース量を実績空き無線リソース量に戻す補正を行う。
【0079】
振動の規模が小規模である場合には、ステップS204において、LTE基地局10−1は、タイマ154をリセット(停止)させる。ステップS206において、LTE基地局10−1は、補正後の空き無線リソース量を実績空き無線リソース量に戻す補正を行う。
【0080】
(4)作用・効果
本発明の実施形態に係る無線通信システム1では、LTE基地局10−1は、コアネットワーク30からのETWS情報を移動端末40へ送信した場合、移動端末40との間のトラフィック量が第1の所定値以上となると予測される条件が満たされると判断し、実績空き無線リソース量を補正し、補正後の空き無線リソース量を取得する。更に、LTE基地局10−1は、補正後の空き無線リソース量を含んだリソースステータスレスポンスメッセージを、隣接する他のLTE基地局であるLTE基地局10−2へ送信する。
【0081】
ここで、LTE基地局10−1は、実績空き無線リソース量が所定値よりも小さい場合には、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも小さくなり、実績空き無線リソース量が所定値よりも大きい場合には、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも大きくなるように補正する。
【0082】
LTE基地局10−1における実績空き無線リソース量が所定値よりも小さい場合には、LTE基地局10−1において緊急通信用のリソースブロックの確保しやすくすることが望ましい。
【0083】
このため、上述したように、LTE基地局10−1における実績空き無線リソース量が所定値よりも小さい場合には、実績空き無線リソース量よりも小さい補正後の空き無線リソース量がLTE基地局10−2へ通知されることで、実績空き無線リソース量がそのまま通知される場合と比較して、LTE基地局10−2からLTE基地局10−1へハンドオフされる確率が減少し、LTE基地局10−1において緊急通信用のリソースブロックの確保が容易になる。
【0084】
また、LTE基地局10−1における実績空き無線リソース量が所定値よりも大きい場合には、LTE基地局10−1において緊急通信用のリソースブロックの確保は容易である。このため、LTE基地局10−2からLTE基地局10−1へハンドオフされる確率を増加させ、LTE基地局10−2において緊急通信用のリソースブロックを確保しやすくすることが望ましい。
【0085】
このため、上述したように、LTE基地局10−1における実績空き無線リソース量が所定値よりも大きい場合には、実績空き無線リソース量よりも大きい補正後の空き無線リソース量がLTE基地局10−2へ通知されることで、実績空き無線リソース量がそのまま通知される場合と比較して、LTE基地局10−2からLTE基地局10−1へハンドオフされる確率が増加し、LTE基地局10−2において緊急通信用のリソースブロックの確保が容易になる。
【0086】
また、LTE基地局10−1は、実績空き無線リソース量に関わらず、補正後の空き無線リソース量が実績空き無線リソース量よりも小さくなるように補正することもできる。
【0087】
この場合には、実績空き無線リソース量がLTE基地局10−2へそのまま通知される場合と比較して、LTE基地局10−2からLTE基地局10−1へハンドオフされる確率が減少し、LTE基地局10−1において緊急通信用のリソースブロックの確保が容易になる。
【0088】
(5)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0089】
上述した実施形態では、LTE基地局10−1がコアネットワーク30からのETWS情報を移動端末40へ送信する場合について説明したが、LTE基地局10−1が、ETWS以外のPWSにおいて、予め定められた緊急事態に関連する緊急情報を、コアネットワーク30から受信し、移動端末40へ送信する場合についても、同様に本発明を適用できる。
【0090】
上述した実施形態では、ETWS情報が送信されたことにより、合計トラフィック量が第1の所定値以上となることと予測されるものとし、実績空き無線リソース量を補正したが、年明け直後等のトラフィック量の増大が予測される時間帯や、トラフィック量の増大が予測される特定のイベントが開催される場合等において、合計トラフィック量が第1の所定値以上となることと予測されるものとし、実績空き無線リソース量を補正してもよい。
【0091】
上述した実施形態では、LTEの無線通信システム1について説明したが、緊急通信用等の所定の通信用の無線リソースを確保する無線通信システムであれば、同様に本発明を適用することができる。
【0092】
上述した実施形態では、加速度センサ110が、緊急事態である地震を検知するものとして用いられているが、緊急事態の種別に応じて、他の検知部が用いられてもよい。例えば、緊急事態の種別が津波である場合には、検潮計が用いられる。
【0093】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…無線通信システム、10−1、10−2…LTE基地局、20…MME、30…コアネットワーク、32…光ファイバ、40…移動端末、50…ETWS情報サーバ、60…公衆ネットワーク、70−1、70−2…ETWS発令端末装置、102…制御部、103…記憶部、104…I/F部、106…無線通信部、108…アンテナ、152…ETWS通信部、154…タイマ、156…トラフィック量検知部、158…無線リソース確保部、160…無線リソース解放部、162…空き無線リソース補正部、164…空き無線リソース送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線基地局との間で無線リソースの空きリソース量を通知し合う無線基地局であって、
移動端末との間のトラフィック量が第1の所定値以上となることが予測される条件が満たされた場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正する補正部と、
前記補正部による補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の情報を前記他の無線基地局へ送信する送信部と
を備える無線基地局。
【請求項2】
前記補正部は、自無線基地局の空き無線リソース量が少ないほど、補正前の自無線基地局の空き無線リソース量に対する補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の比率が小さくなるように補正する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記補正部は、自無線基地局の空き無線リソース量が多いほど、補正前の自無線基地局の空き無線リソース量に対する補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の比率が大きくなるように補正する請求項1又は2に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記補正部は、予め定められた緊急事態に関連する緊急情報を受信した場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正する請求項1乃至3の何れかに記載の無線基地局。
【請求項5】
前記緊急情報は、上位ネットワークから送信される請求項4に記載の無線基地局。
【請求項6】
前記補正部は、前記緊急情報によって示される前記緊急事態の種別及び前記緊急事態の規模の少なくとも何れかに応じて、自無線基地局の空き無線リソース量を補正する請求項4又は5に記載の無線基地局。
【請求項7】
前記補正部は、自無線基地局の配下でアイドル状態にある前記移動端末の数に応じて、自無線基地局の空き無線リソース量を補正する請求項4乃至6の何れかに記載の無線基地局。
【請求項8】
他の無線基地局との間で空き無線リソース量を通知し合う無線基地局における通信制御方法であって、
移動端末との間のトラフィック量が第1の所定値以上となることが予測される条件が満たされた場合に、自無線基地局の空き無線リソース量を補正するステップと、
補正後の自無線基地局の空き無線リソース量の情報を前記他の無線基地局へ送信するステップと
を有する通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−233989(P2011−233989A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100399(P2010−100399)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】