説明

無線基地局装置および無線移動局装置

【課題】小規模な同期回路を採用したOFDM方式の基地局装置と移動局装置を提供する。
【解決手段】基地局装置は、送信する同期信号を、FFTサイズをN分割したSYNC’の繰り返しパターンとし、さらにSYNC’の繰り返しパターンを符号発生回路から出力される符号にしたがって、SYNC’毎に極性反転した信号とする。また、CP長はFFTサイズのM/Nとし、同期信号のシンボルの分割数(M+N)をBarker符号の符号長Lと一致させる。移動局装置は、(FFTサイズ/N)段のタップ数を備え、FFTサイズをN分割したSYNC’のパターンをタップ係数とした第1のマッチドフィルタと、(M+N)段のタップ数を備え、Barker符号をタップ係数とした第2のマッチドフィルタを用いて同期信号を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を送受信する基地局装置と移動局装置に係り、特に同期部の回路規模を削減する無線基地局装置および無線移動局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式は、直交する複数の搬送波をデジタル変調し多重化して通信を行う方式である。OFDM方式の特徴の1つとして、直交する複数の搬送波をデジタル変調して多重化した信号に、CP(Cyclic Prefix)と呼ばれるガードインターバルを付加することにより、マルチパスの影響を大幅に軽減する点がある。OFDM方式は、マルチパス伝播路の環境においても高速デジタル伝送を可能とする方式であり、地上波デジタルテレビ放送、無線LAN等で既に実用化され注目を浴びている。
【0003】
図1を用いてOFDM方式の特徴であるCP付加によるマルチパスの影響の軽減について説明する。ここで、図1はスロットとシンボルの構成を説明する図である。図1(a)において、1スロットは5シンボルで構成されている。図1(b)において、送信信号(受信信号)であるシンボルは、長さ1/f0のDATAと、DATA後端の長さTgのデータをDATA先端にコピーしたCPとから構成される。
【0004】
図1(c)において、FFT窓位置タイミングパルスが、CPの範囲であれば、図1(d)に示すようにFFT窓位置タイミングパルスの立ち上がりからの長さ1/f0をFFT窓とすれば、搬送波間の直交性は維持できる。白抜き矢印で示すFFT窓前後の合わせてTgの幅は、マルチパスに対するガードインターバルとなっている。
【0005】
OFDMにおいて、直交する複数の搬送波はサブキャリアと呼ばれる。そのサブキャリア間の周波数間隔は、サブキャリア間隔f0と呼ばれる。サブキャリア間隔から求まる(1/f0)長さの時間軸上のデータにおいて、データ後端のTg長の信号を前端に付加することにより、(Tg+1/f0)長のシンボルが構成される。
【0006】
シンボルの構成から明らかなように、ガードインターバルの部分は連続的に続く信号の部分とみなされるため、個々のサブキャリア単位で考えると、すべてのサブキャリアは(Tg+1/f0)の期間で連続した正弦波になる。FFTを行う範囲(1/f0)、すなわちFFT窓が、この(Tg+1/f0)区間に含まれており、隣のシンボルを跨っていなければサブキャリア間の直交性は保たれる。
【0007】
したがって、CP長Tgがマルチパスによる遅延波の遅延時間より長ければ、FFTを行う際に希望のシンボルからの信号のみを抽出し、前後のシンボルからの干渉を一切受けない。
【0008】
優れた特徴を持つOFDM方式の無線システムにおいても、CDMA方式やTDMA方式と同様に通信を開始する前には同期捕捉(あるいは同期検出)と呼ばれる処理が必要である。同期捕捉は、基地局装置から送信される送信信号から、移動局装置側でシンボルタイミングおよびフレームタイミングを検出する処理を意味する。
【0009】
同期捕捉処理は、基地局装置から送られてくる送信信号にあらかじめ同期信号と呼ばれる(ユニークワード、トレーニングシンボルとも呼ばれる)既知の信号を挿入しておき、移動局装置側で送信信号に含まれる同期信号を検出することにより、シンボルタイミングおよびフレームタイミングを抽出する。
【0010】
OFDM方式において、検出されたシンボルタイミング(FFT窓位置タイミング)は、移動局装置でFFTを行なう際のFFT窓位置のタイミング情報として使用される。
なお、OFDM方式では、基地局装置から送られてくる送信信号に同期信号とは異なるPILOT信号(既知の信号)を挿入し、FFT窓位置のタイミング抽出および伝播路推定に使用される場合もある。一般に同期捕捉はMF(Matched Filter)回路を用いる方法と、自己相関を用いる方法、およびそれらを併用した方法が知られている。OFDM方式におけるシンボルタイミング検出において、MF回路を用いる方法(自己相関を用いる方法との併用を含む)については、特許文献1、特許文献2がある。
【0011】
図2を参照して、一般的なMF回路の構成を説明する。ここで、図2はMF回路のブロック図である。図2において、MF回路100は、(k−1)個のフリップフロップで構成されるシフトレジスタ110、k個の乗算器115、加算器120から構成される。
【0012】
MF回路100に入力された受信信号1004は、乗算器115−1および(k−1)個のフリップフロップから構成されるシフトレジスタ110に入力される。k個の乗算器115は、受信信号1004および(k−1)個のフリップフロップの出力信号と、k個のタップ係数TAPとを乗算する。ここで、k個のタップ係数は基地局1から送られてくる送信信号に含まれる同期信号と同じ系列を設定する。
【0013】
k個の乗算器115の出力は、加算器120に入力される。加算器120は、k個の乗算器115からの出力の総和を演算する。加算器120からの相関出力1005は、基地局の送信信号に含まれる同期信号が入力されたときに図3に示すような高い相関出力のピーク信号が得られ、それ以外の信号が入力されたときは“0”に近い値となる。ここで、図3はピーク信号の相関出力を説明する図である。図3において、横軸は時間、縦軸は相関出力であり、同期信号が入力されたとき、ピーク値を示す。同期捕捉は、図3に示す相関出力を閾値判定(無線LAN)あるいは全探索(無線電話)により検出し、フレームタイミング抽出およびシンボルタイミング抽出を行う。
【0014】
図4を参照して、IFFT処理を説明する。ここで、図4はIFFTの入力信号と出力信号を説明する図である。図4において、IFFT回路316には、多重回路からFFTサイズと一致するサブキャリア信号sc0〜sc2047から成る多重データ134が入力される(ここではFFTサイズを2048とする)。サブキャリア信号sc0〜sc2047から成る多重データ134は、IFFT回路316により逆フーリエ変換が施され、1回の逆フーリエ変換ごとにTfftサンプルすなわちFFTサイズと一致する2048サンプルのIFFTデータ135が出力される。
【0015】
【特許文献1】特開2005−244593号公報
【特許文献2】特開2005−318512号公報
【特許文献3】特開2006−237964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
OFDM方式が更なる高速伝送に向けて信号帯域の広帯域化を図っていく際に、MF回路を用いる同期回路では信号帯域の広帯域化がMF回路のタップ数増加を招き、同期回路規模の増大に繋がる。さらには、同期信号が2値信号ではなく多値信号を用いる場合、タップ数の増加は乗算器の回路規模の増大を招き、同期回路規模が膨大となる。本発明は、小規模な同期回路を採用できる無線基地局装置および無線移動局装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題は、送信データに誤り訂正符号化を施す符号化部と、符号化データを変調する変調部と、同期データを生成する同期信号生成部と、変調データと同期データを多重する多重部と、多重データを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、逆フーリエ信号にガードインターバルを付加するCP付加部とを備え、さらに、CP付加データに極性判定を施す極性反転部を備え、逆フーリエ変換された同期データは、FFTサイズをN分割したSYNC’の繰り返しであり、CP付加部は、SYNC’の繰り返しを1単位として、M単位をガードインターバルを付加し、極性反転部は、分割されたSYNC’の繰り返しを単位として、極性反転を施す無線基地局装置により、解決できる。
【0018】
また、受信データからフレームタイミングとシンボルタイミングとを抽出する同期部と、このシンボルタイミングに基づいて、受信データをフーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換信号を復調する復調部と、復調信号を復号する復号部とを備え、同期部は、(FFTサイズ/N)段のタップ数を持ち、FFTサイズをN分割したSYNC’のパターンをタップ係数とする第1のマッチドフィルタと、(M+N)段のタップ数を持ち、符号長(M+N)のBarker符号をタップ係数とする第2のマッチドフィルタとを具備し、第1のマッチドフィルタの出力を第2のマッチドフィルタに入力する無線移動局装置により、達成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、広帯域のOFDM方式の無線システムにおいて課題となる同期回路の回路規模を、大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。また、実施例としてOFDM無線システムを用いるが、本発明は、無線LANにも適用できる。移動局装置は、移動可能な装置であり、PC(Personal Computer)を含む。
【0021】
図5を用いて、OFDM無線システムを説明する。ここで、図5はOFDM無線システムのブロック図である。図5において、OFDM無線システムは、基地局装置1、移動局装置2、移動局装置2が在圏するセル3−1、セル3−1に隣接するセル3−2およびセル3−3、ネットワーク6から構成される。
【0022】
基地局装置1は、各セル3に配置される。各基地局装置1は、ネットワーク6にて接続されている。また、移動局装置2は、自動車または電車に搭載された無線機2Aあるいは歩行者が携帯している携帯電話2Bを指す。
【0023】
移動局装置2が基地局装置1と通信を行う際に、移動局装置2は、まず、在圏するセル3を識別する必要がある。移動局装置2は、在圏するセル3を識別するために、基地局装置1から送信される下り回線信号を受信し、位置登録等の処理を行なってからデータ通信を開始する。
なお、移動局装置2がセル3を跨って移動する場合、通信が途切れぬようにネットワーク6に接続された2つの基地局装置1間で、ハンドオーバ制御を行なう。
【0024】
ここで、移動局装置2が在圏するセル3を識別するための位置登録を行う際に必要となる同期捕捉処理を説明する。同期捕捉は、基地局装置1から送信される下り回線信号のフレーム先頭タイミングおよびシンボルタイミングを、移動局装置2が検出する処理である。
【0025】
基地局装置1は、送信信号にあらかじめ同期信号(SYNC信号あるいはプリアンブル)と呼ばれる既知の信号を挿入する。移動局装置2は、送信信号に含まれる同期信号をサーチすることにより、フレームタイミングおよびシンボルタイミングを抽出する。
【0026】
図6を参照して、OFDM無線システムにおける基地局装置および移動局装置の構成を説明する。ここで、図6は基地局装置の処理ブロック図である。図6において、基地局装置1は、アンテナ10、RF(Radio Frequency)部20、BB(Base Band)部30、制御部40から構成される。なお、移動局装置2の構成も基地局装置1と同じである。しかし、以下では基地局装置として説明する。
【0027】
上位レイヤから送られてくる情報データ14は、制御部40に入力される。ここで上位レイヤとは、基地局装置であればネットワークレイヤ、移動局2であればアプリケーションレイヤに相当する。制御部40に入力された情報データ14は、通信に必要なヘッダ、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号等が付加され、ある所定のフォーマットに従ったフレームを構成した送信データ13となる。
【0028】
制御部40から出力された送信データ13は、BB部30の送信系310に入力される。BB部30の送信系310に入力された送信データ13は、符号化、変調、IFFT等のベースバンド信号処理が施され、ベースバンドデジタル送信信号12となる。
【0029】
BB部30の送信系310から出力されたベースバンドデジタル送信信号12は、RF部20に入力される。RF部20は、デュプレクサ、LNA(Low Noise Amplifier)、バンドパスフィルタ、ミキサ、IQ復調器、HPA(High Power Amplifier)、AGC(Auto Gain Control)、AD/DA変換器等から構成される。
【0030】
RF部20に入力されたベースバンドデジタル送信信号12は、D/A変換、IQ直交変調、周波数アップコンバート、帯域制限、電力増幅の処理が施され、アンテナ10から無線信号11として送出される。
【0031】
一方、アンテナ10から入力された無線信号11は、RF部20に入力される。アンテナ10から出力された無線信号11は、RF部20により、TX/RX分離、低ノイズ増幅、帯域制限、周波数ダウンコンバート、利得調整、IQ直交復調、A/D変換の処理が施され、ベースバンドデジタル受信信号15となる。
【0032】
RF部20から出力されたベースバンドデジタル受信信号15は、BB部30の受信系320に入力される。BB部30の受信系320に入力されたベースバンドデジタル受信信号15は、FFT、伝播路推定、復調、誤り訂正復号等のベースバンド信号処理が施され、受信データ16となる。
【0033】
BB部30の受信系320から出力された受信データ16は、制御部40に入力される。制御部40に入力された受信データ16は、プロトコル制御が施され、情報データ14となり、上位レイヤに送られる。
【0034】
次に、BB部の送信系の構成について、図7を参照して説明する。図7はBB部送信系のブロック図である。図7において、基地局装置1におけるBB部30の送信系310は、符号化回路311、変調回路312、多重回路313、PILOTデータ発生器314、SYNCデータ発生器315、IFFT回路316、CP付加回路317、極性反転回路318、符号発生回路319から構成される。
【0035】
制御部40から出力される送信データ13は、BB部送信系310の符号化回路311に入力される。符号化回路311に入力された送信データ13は、ターボ符号による誤り訂正符号化が施され、符号化データ130となる。符号化回路311から出力された符号化データ130は、変調回路312に入力され、16QAM変調が施されて、変調データ131となる。
【0036】
変調回路312から出力された変調データ131は、多重回路313に入力され、PILOTデータ発生器314から出力された周波数軸上のPILOTデータ132、SYNCデータ発生器315から出力された周波数軸上のSYNCデータ133と多重され、下り回線信号フォーマットを構築し、多重データ134となる。
【0037】
多重回路313から出力された多重データ134は、IFFT回路316に入力され、逆フーリエ変換が施され、IFFTデータ135となる。IFFT回路316から出力されたIFFTデータ135は、CP付加回路317に入力され、干渉を防ぐガードインターバルとしてCPが付加され、CP付加データ136となる。
【0038】
CP付加回路317から出力されたCP付加データ136は、極性反転回路318に入力され、符号発生器319から出力される2値符号137により極性反転が施され、ベースバンドデジタル送信信号12となる。
なお、ターボ符号は、ビタビ符号等の他の誤り訂正符号であってもよい。16QAM変調は、QPSK変調等の他の変調であってもよい。
【0039】
図8を参照して、ベースバンドデジタル送信信号のフレーム構成を説明する。ここで、図8はベースバンド送信信号のフレーム構成を説明する図である。図8(a)において、ベースバンドデジタル送信信号12は、周期性を持ったフレームで構成される。図8(b)において、Tfrサンプルの長さを持つフレームは、Nsl個のスロットから構成される。
【0040】
Tslサンプルの長さを持つスロットは、Nsymbol個(ここでは5個)のシンボルから構成される。Tsymbolサンプルの長さを持つシンボルは、Tcpサンプルの長さを持つCPと、Tfftサンプルの長さを持つFFTデータから構成され、Tfftのサンプル数はFFTサイズと一致する。
【0041】
スロットは、プリアンブルと呼ばれる先頭スロットとそれ以外のスロットでスロットのデータ内容が異なる。図8(c)において、プリアンブルは、PILOTシンボル以外にSYNCシンボルと呼ばれる既知の固定パターンと制御信号となるCONTシンボルを挿入し、同期、AFC(Auto Frequency Control)、レイヤ2またはレイヤ3制御といった目的で使用される。図8(d)において、先頭スロット以外のスロットは、PILOTシンボルとDATAシンボルから構成され、ユーザデータやレイヤ3情報の通信に使用される。
【0042】
ここでプリアンブルに挿入されるSYNCシンボルの生成方法を、図9と図10を参照詳しく説明する。ここで、図9はSYNCシンボルの構成を説明する図である。また、図10はSYNCシンボルの生成方法を説明する図である。
【0043】
図9において、Tsymbolの長さを持つSYNCシンボルは、Tcpの長さを持つCPと、Tfftの長さを持つSYNCデータから構成される。SYNCシンボルのTfftサンプルの長さを持つSYNCデータは、Tfftの長さを4分割したSYNC’の繰り返しパターンとする。なお、分割数は4に限らず、N分割(N;正整数)でもよい。
【0044】
次に図10を参照して、Tfftサンプルの長さを4分割した繰り返しパターンとするIFFT回路を説明する。図10において、サブキャリア信号sc0〜sc2047から成る多重データ134について、多重回路313は、SYNCデータ発生器315から出力される周波数軸上のSYNCデータを4つおきに有効なサブキャリア信号を挿入し、それ以外は“0”とする。この結果IFFT回路316から出力されたIFFTデータ135は、Tfftサンプルの長さを4分割した1/4Tfftサンプルの長さを持つSYNC’の4回繰り返しパターンとなる。
【0045】
次にTfftの長さを4分割したSYNC’の繰り返しパターンとして生成されたSYNCデータに、CP付加回路317によってCPが付加された状態を図11を参照して説明する。ここで、図11はCPを付加されたSYNCシンボルを説明する図である。図11において、Tfftサンプルの長さを4分割したSYNC’の繰り返しパターンとして生成されたSYNCデータは、CP付加回路317によってSYNCデータの最終SYNC’がSYNCデータの先頭にCPとしてコピーされ、SYNCシンボルとなる。
【0046】
ここでCPの長さTcpサンプルは、FFTサイズのM/N(MとNは正整数、かつM<N)とする。これによって、CPの長さTcpサンプルをFFTサイズのM/Nとすることにより、N分割された繰り返しパターンの最終パターンM個分がそのまま先頭にコピーされCPとなる。
【0047】
上述の説明において、図11ではM=1、N=4である。図11において、4分割された繰り返しパターンの最終パターン1個分がそのまま先頭にコピーされCPとなり、Tsymbol=5/4Tfftの関係となっている。すなわち、Tsymbol=(M+N)/N×Tfftの関係となる。
【0048】
次にCPが付加されたSYNCデータ、すなわちSYNCシンボルは、繰り返し周期(FFTサイズ/N)毎に極性反転回路318と符号発生回路319から出力される2値符号137を用いて極性反転が行われる。
【0049】
図12を参照して、SYNCデータの極性反転について詳しく説明する。ここで、図12は極性反転回路に入力されるSYNCシンボルと符号発生回路の出力である2値符号、極性反転回路から出力されるSYNCシンボルを説明する図である。
【0050】
図12(a)において、SYNC’が繰り返されたSYNCシンボルが極性反転回路318に入力される。図12(b)において、符号発生回路319から出力される符号長5(M+N)の2値Barker符号を用いて極性反転を行なう。ここで、符号長5の2値Barker符号は、+++−+である。図12(c)において、極性反転回路318の出力すなわちベースバンドデジタル送信信号12は、先頭から4番目が−SYNC’となる。ここで極性反転とは、正のある値Aを負の値−Aとすることを意味する。
【0051】
なお、符号発生回路から出力される2値符号は相関特性に優れたBarker符号等を用いて、シンボルの分割数(M+N)をBarker符号の符号長Lと一致させる。しかし、符号はBarker符号に限らず、他の拡散符号でもよい。
【0052】
なお、極性反転回路318において極性反転を実施するのは、SYNCシンボルのみであり、SYNCシンボル以外のシンボルについては、符号発生回路319の出力を非反転信号“0”とする。または、極性反転回路318において極性反転を止める。
【0053】
極性反転回路318から出力されたベースバンドデジタル送信信号12は、RF部20に入力され、D/A変換、IQ直交変調、周波数アップコンバート、帯域制限、電力増幅の処理が施され、アンテナ10から無線信号11として送出される。
【0054】
次に基地局装置から送信されたSYNCシンボルを検出する移動局装置のBB部受信系の構成について、図13を参照して説明する。ここで、図13は移動局装置のBB部受信系のブロック図である。
【0055】
図13において、BB部受信系320は、同期回路321、FFT回路322、伝搬路推定回路323、復調回路324、復号回路325から構成される。RF部20から出力されたベースバンドデジタル受信信号15は、同期回路321とFFT回路322にそれぞれ入力される。
【0056】
同期回路321に入力されたベースバンドデジタル受信信号15は、MF回路により同期信号の抽出が行なわれる。同期回路321は、フレームタイミング抽出、シンボルタイミング抽出を実施する。同期回路321は、FFT窓位置となるシンボルタイミング信号150をFFT回路322に送信する。
【0057】
FFT回路322に入力されたベースバンドデジタル受信信号15は、同期回路から送られてくるシンボルタイミング信号150を用いて、フーリエ変換が施され、FFTデータ151となる。FFT回路322から出力されたFFTデータ151は、伝搬路推定回路323に入力され、PILOT信号を用いて伝搬路推定(伝送路による誤差補正)が施され、伝搬路推定データ152となる。
【0058】
伝搬路推定回路323から出力された伝搬路推定データ152は、復調回路324に入力され、MMSE(Minimum Mean Square Error)復調またはMLD(Maximum Likelihood detection)復調といった復調が施され、復調データ153となる。
【0059】
復調回路324から出力された復調データ153は、復号回路325に入力され、基地局の符号化回路311に見合ったビタビ復号またはターボ復号の誤り訂正処理が施され、受信データ16となる。
【0060】
次に図14を参照して、同期回路の構成を詳しく説明する。ここで、図14は同期回路のブロック図である。図14において、同期回路321は、512段のタップ数を持つ第1のMF回路3210、5段のタップ数を持つ第2のMF回路3220、ピーク検出回路3230から構成される。
【0061】
RF部20から出力されたベースバンドデジタル受信信号15は、同期回路321に入力され、ベースバンドデジタル受信信号15のI相成分が第1のMF回路3210に入力される。
【0062】
図15を参照して、図14の第1のMF回路構成を説明する。ここで、図15は第1のMF回路のブロック図である。図15において、第1のMF回路3210は、シフトレジスタ3211、512個の乗算器3212、加算器3213から構成される。
【0063】
第1のMF回路3210に入力されたベースバンドデジタル受信信号15は、511個のフリップフロップから構成されるシフトレジスタ3211と乗算器3212−1に入力される。各乗算器3212は、ベースバンドデジタル受信信号15と、各フリップフロップから出力される511本の信号とについて、512個のタップ係数TAP1〜TAP512と、各々乗算する。その際、512個のタップ係数は、図11に示すSYNC’のI相成分と同じ系列を設定する。各乗算器3212の出力は、加算器3213に入力され、全ての乗算器3212からの出力の総和を演算し、第1のMF回路3210の相関出力1501となる。
【0064】
第1のMF回路3210の相関出力1501は、基地局装置1の送信信号に含まれるSYNCシンボル(図12の出力)が入力されたときに高い相関出力が得られ、それ以外の信号が入力されたときは“0”に近い値となる。
【0065】
図16を参照して、SYNCシンボルが入力されたときの第1の相関出力を説明する。ここで、図16はSYNCシンボルが入力されたときの第1の相関出力を説明する図である。図16において。横軸は時間、縦軸は相関出力値を示す。なお、縦軸は相関出力値の最大値で正規化した値である。図16において。第1のMF回路3210にSYNCシンボルが入力されたとき、第1のMF回路3210は、Tfftサンプルの間隔で5(=M+N)個のピーク信号が出力される。各ピーク信号の高さは、絶対値1であるが、4番目のピーク値はー1である。他のピーク値は+1である。
【0066】
次に第1のMF回路3210から出力された第1の相関出力1501は、第2のMF回路3220に入力される。図17を参照して、第2のMF回路の構成を説明する。ここで、図17は第2のMF回路のブロック図である。図17において、第2のMF回路3220は、4台のシフトレジスタ3221、5個の乗算器3222、加算器3223から構成される。なお、シフトレジスタ3221は、乗算器間すなわちタップ間に512個のフリップフロップ群を配置する構成である。
【0067】
第2のMF回路3220に入力された第1の相関出力1501は、512個のフリップフロップから構成されるシフトレジスタ3221−1と乗算器3222−1に入力される。各乗算器3222は、第1の相関出力1501と、各シフトレジスタ3221の出力である4本の信号とについて、5個のタップ係数TAP1〜TAP5と各々乗算する。その際、5個のタップ係数は、図12(b)に示す2値Barker符号を設定する。
【0068】
各乗算器3222の出力は、加算器3223に入力される。加算器3223は、全ての乗算器3222からの出力の総和を演算する。演算結果は、第2のMF回路3220の相関出力1502となる。
【0069】
第2のMF回路3220の相関出力1502は、基地局装置1の送信信号に含まれるSYNCシンボルが入力されたときに高い相関出力が得られ、それ以外の信号が入力されたときは“0”に近い値となる。
【0070】
図18を参照して、SYNCシンボルが入力されたときの第2の相関出力を説明する。ここで、図18はSYNCシンボルが入力されたときの第2の相関出力である。図18において、横軸は時間、縦軸は相関出力値である。なお、縦軸は相関出力値の最大値で正規化した値である。
【0071】
図18において、同期回路321にSYNCシンボルが入力されたとき、第2の相関出力として、中心で最大ピーク信号、Tfftサンプルの1/2倍の間隔で、最大ピーク信号の1/5の大きさを持つBarker符号特有のサイドローブが出力される。
【0072】
次に第2のMF回路3220から出力された第2の相関出力1502は、ピーク検出回路3230に入力される。ピーク検出回路3230に入力された第2の相関出力1502は、必要に応じて平均化された後、閾値判定あるいは全探索によりピーク信号、すなわちSYNCシンボルが検出される。検出されたSYNCシンボルのタイミングをもとにシンボルタイミング信号150が生成され、FFT回路322へ出力される。
【0073】
なお、第2のMF回路3220における乗算器3222は、加減算器に置き換えることも可能である。タップ係数が+1、あるいは−1の2値符号であるため、タップ係数が+1の場合は加算、−1の場合は減算といった簡単な加減算回路の小規模回路で実現可能である。
【0074】
なお、本実施例では、符号発生回路319から出力される2値符号をBarker符号を用いて説明を行ったが、他の符号を用いても構わない。さらには、符号発生回路319から出力される2値符号を多値符号とすることも可能である。その場合は、第2のMF回路3220の乗算器を加減算器に置き換えるのではなく、そのまま乗算器を用いることになる。また、本実施例では、説明を分かりやすくするために第1のMF回路は、I相成分の相関出力のみを出力する構成をとっている。しかし、第1のMF回路をQ相成分用も備えてQ相成分の相関出力を出力し、I相成分とQ相成分の相関出力の2乗和を求めてから第2のMF回路3220に入力する構成も容易に考えられる。
【0075】
また、本実施例では、説明を分かりやすくするためにRF部20から出力されるベースバンドデジタル受信信号15は同期検波された信号とし、周波数オフセットおよび位相ずれがないものとしている。しかし、周波数オフセットおよび位相ずれが残る場合には、第1のMF回路3210を4回路、第2のMF回路を2回路備えて複素乗算を行う構成も容易に考えられる。
【0076】
複素乗算の構成としては第1のMF回路を4回路、第2のMF回路を2回路備えて、ベースバンドデジタル受信信号15のI相成分をRXi、Q相成分をRXq、SYNC’のI相成分と同じ系列をタップ係数とする第1のMF回路をMFi、SYNC’のQ相成分と同じ系列をタップ係数とする第1のMF回路をMFqとした場合、RXi×MFi+RXq×MFqをI相成分の第1の相関出力、RXq×MFi−RXi×MFqをQ相成分の第1の相関出力として求める。次にI相成分の第1の相関出力をI相成分用の第2のMF回路、Q相成分の第1の相関出力をQ相成分用の第2のMF回路に入力し、第2のMF回路のI相成分の相関出力とQ相成分の相関出力の2乗和を求めてからピーク検出回路3230へ入力する構成が考えられる。
また、本実施例では、下り回線の同期捕捉について説明を行ったが、上り回線の同期捕捉に適用しても構わない。
【0077】
本実施例に拠れば、FFTサイズをK、FFTサイズの分割数をN、CP長をM/Nとした場合、従来、MF回路のタップ数はKタップ必要だったものが、本実施例によれば、第1のマッチドフィルタと第2のマッチドフィルタを合わせても、K/N+(M+N)に削減可能となる。具体的には、K=2048、N=4、M=1とした場合、従来では2048タップ、本実施例では517タップとなる。
【0078】
なお、基地局装置におけるBB部送信系は、簡単な極性反転回路と符号発生回路の追加のみでよく、他は既存の回路で構わない。また、本実施例によれば受信感度が劣化する、あるいは同期捕捉時間が長くなるといった欠点はない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】スロットとシンボルの構成を説明する図である。
【図2】MF回路のブロック図である。
【図3】ピーク信号の相関出力を説明する図である。
【図4】IFFTの入力信号と出力信号を説明する図である。
【図5】OFDM無線システムのブロック図である。
【図6】基地局装置の処理ブロック図である。
【図7】BB部送信系のブロック図である。
【図8】ベースバンド送信信号のフレーム構成を説明する図である。
【図9】SYNCシンボルの構成を説明する図である。
【図10】SYNCシンボルの生成方法を説明する図である。
【図11】CPを付加されたSYNCシンボルを説明する図である。
【図12】極性反転回路に入力されるSYNCシンボル、符号発生回路から出力される2値符号、極性反転回路から出力されるSYNCシンボルを示す図である。
【図13】移動局装置のBB部受信系のブロック図である。
【図14】同期回路のブロック図である。
【図15】第1のMF回路のブロック図である。
【図16】SYNCシンボルが入力されたときの第1の相関出力を説明する図である。
【図17】第2のMF回路のブロック図である。
【図18】SYNCシンボルが入力されたときの第2の相関出力である。
【符号の説明】
【0080】
1…基地局装置、2…移動局装置、3…セル、6…ネットワーク、10…アンテナ、11…無線信号、12…ベースバンドデジタル送信信号、13…送信データ、14…情報データ、15…ベースバンドデジタル受信信号、16…受信データ、20…RF部、30…BB部、40…制御部、100…MF回路、110…シフトレジスタ、115…乗算器、120…加算器、310…BB部送信系、311…符号化回路、312…変調回路、313…多重回路、314…PILOTデータ発生器、315…SYNCデータ発生器、316…IFFT回路、317…CP付加回路、318…極性反転回路、319…符号発生器、320…BB部受信系、321…同期回路、322…FFT回路、323…伝搬路推定回路、324…復調回路、325…復号回路、3210…第1のMF回路、3211…シフトレジスタ、3212…乗算器、3213…加算器、3220…第2のMF回路、3221…シフトレジスタ、3222…乗算器、3223…加算器、3230…ピーク検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データに誤り訂正符号化を施す符号化部と、符号化データを変調する変調部と、同期データを生成する同期信号生成部と、変調データと前記同期データを多重する多重部と、多重データを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、逆フーリエ信号にガードインターバルを付加するCP付加部とを備えた無線基地局装置において、
さらに、CP付加データの一部に極性反転を施す極性反転部を備え、
逆フーリエ変換された前記同期データは、FFTサイズをN分割したSYNC’の繰り返しであり、
前記CP付加部は、前記SYNC’の繰り返しを1単位として、M単位を前記ガードインターバルとして付加し、
前記極性反転部は、分割された前記SYNC’の繰り返しを単位として、極性反転を施すことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線基地局装置であって、
前記極性反転部は、符号長(N+M)のBarker符号に基づいて、極性反転することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線基地局装置であって、
前記同期データ生成部は、N個おきに有効なサブキャリア信号と、(N−1)個の0とを生成することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項4】
受信データからフレームタイミングとシンボルタイミングとを抽出する同期部と、このシンボルタイミングに基づいて、前記受信データをフーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換信号を復調する復調部と、復調信号を復号する復号部とを備えた無線移動局装置において、
前記同期部は、(FFTサイズ/N)段のタップ数を持ち、FFTサイズをN分割したSYNC’のパターンをタップ係数とする第1のマッチドフィルタと、(M+N)段のタップ数を持ち、符号長(M+N)のBarker符号をタップ係数とする第2のマッチドフィルタとを具備し、
前記第1のマッチドフィルタの出力を前記第2のマッチドフィルタに入力することを特徴とする無線移動局装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−62648(P2010−62648A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223648(P2008−223648)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】