説明

無線基地局

【課題】ISDN回線から受信した信号を少ない遅延量で移動局へ無線送信することができる無線基地局を提供する。
【解決手段】フレーマ回路38は、ISDNフレームの先頭位置のタイミングとTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングとの時間差を算出する。スロット選択部36は、時間差およびディジタル回線終端部で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、内部遅延時間が最小となるTDMA/TDDフレームの通話スロットを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局に関し、特にISDN(Integrated Services Digital Network)回線から信号を受信し、移動局へ受信した信号を含むTDMA/TDD(Time Division Multiple Access -Time Division Duplex)フレームを無線送信する無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ISDN回線から信号を受信し、移動局へ受信した信号を含むTDMA/TDDフレームを無線送信する無線基地局が知られている(たとえば、特許文献1(特開平3−283924号公報)を参照)。
【0003】
図8は、従来の無線基地局の構成を表わす図である。
図9は、従来の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
【0004】
ISDN回線では、送受信を圧縮した320kbpsの速度で信号が伝送される。
図9に示すように、1フレームは2.5msecであり、上り伝送と下り伝送が時間軸で分けられている。1バーストが約1.179msecで377ビットを伝送する。伝送されるデータは、2つの通信チャネル(2B)と1つの制御チャネル(D)である。各受信フレームの1つの通信チャネル(1B)の信号は、20バイト長である。図9では、20バイトの通信チャネル(1B)の信号の流れを表わしている。
【0005】
DSU(Digital Service Unit)10は、ISDN回線のU点インタフェースをS/T点インタフェースに変換することによって、上りと下りをそれぞれ別ラインに分離し伸張することで伝送速度も192kbpsの速度に変換される。
【0006】
I′−LSI11は、DSU10のS/T点の信号と装置内部のデータとのインタフェースを行うブロックである。I′−LSI11は、通信チャネル(2B)の信号をTSW19との間でやりとりする。また、I′−LSI11は、網クロック信号を抽出して、網同期回路17へ抽出した8kHzの網クロック信号を送る。
【0007】
網同期回路17は、I′−LSI11がISND回線から抽出した8kHzの網クロック信号を受けて、これに同期した装置内部で必要な様々なクロック信号を生成する。
【0008】
フレーマ回路18は、網同期回路17で生成したクロック信号に基づいて、I′−LSI11、TDMA/TDD部20、TSW19、エコーキャンセラ15、ADPCMトランスコーダ24などの様々なブロックにおいて必要となるフレーム信号を生成する。
【0009】
TSW19は、ハイウェイと呼ばれる時分割多重された通話路を通じて各ブロックと通信する。通話路で伝送されるフレームは、32タイムスロットからなり、周期が125μsecであり、伝送速度は2.048MHzである。TSW19は、あるタイムスロットで受信した信号を別のタイムスロットに入れ替えて送信することによって、ブロック間の交換接続を行う。
【0010】
I′−LSI11とTSW19との間で通話路が接続されて(通話路1i)、I′−LSI11からTSW19に信号が送信される。
【0011】
音声通話では、エコー信号を除去するため、TSW19とエコーキャンセラ15との間で通話路が接続されて(通話路2o,2i)、TSW19とエコーキャンセラ15との間で信号が送受信される。
【0012】
また、音声通話では、I′−LSI11の通信チャネルは、PCM符号の音声信号であるため、ADPCM符号へ変換するため、TSW19とADPCMトランスコーダ24との間で通話路が接続されて(通話路3o,3i)、TSW19とADPCMトランスコーダ24の間で信号が送受信される。
【0013】
その後、TSW19は、無線側のTDMA/TDD部20との間で通話路を接続して(通話路4o)、信号をTDMA/TDD部20へ送信する。
【0014】
TDMA/TDD部20は、1スロットの5msecで40バイト分のデータを伝送するため、40バイトが溜まるのを待ってから送信する。すなわち、1個のISDNフレームのBチャネルの信号は20バイトであるので、TDMA/TDD部20は、ISDNフレーム2つ分のBチャネルの信号を受信してから、TDMA/TDDフレームの予め定められた通信スロット(図9では下りスロット(1))に受信した40バイト分の信号を割当てて、無線モジュール25、アンテナ28を通じて送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−283924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来では、無線基地局では、ISDN回線から受信した信号を移動局へ無線送信するまでに、無線基地局内部で時間軸的に伸張してから様々な処理を行っていた。
【0017】
まず、DSU10がISDN回線のU点インタフェースをS/T点インタフェースに変換することによって、伝送速度が192kbpsに速度変換される。その結果、受信フレームの末尾のデータは、受信フレームの先頭から2.5msec遅れて、I′−LSI11へ届くことになる。
【0018】
次に、I′−LSI11、エコーキャンセラ15、ADPCMトランスコーダ24、TDMA/TDD部の間の通信は、通話ハイウェイと呼ばれる時分割多重化された通話路を管理するTSW19で中継されるため、伝搬遅延が発生する。
【0019】
さらに、TDMA/TDD部20は、予め定められた通話スロットに受信した通話チャネル(Bチャネル)の信号を割当てる。したがって、TDMA/TDD部20が通話チャネル(Bチャネル)の信号を受取ったタイミングと、予め定められた通話スロットのタイミングとが離れている場合に、TDMA/TDD部20から信号が出力されるまでに遅延が生じる。
【0020】
以上の結果、ISDN回線から信号を受信してから、移動局へ無線送信するまでの時間が長くなる。
【0021】
それゆえに、本発明の目的は、ISDN回線から受信した信号を少ない遅延量で移動局へ無線送信することができる無線基地局を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明は、ISDN回線から信号を受信し、移動局へ受信した信号を含むTDMA/TDDフレームを無線送信するスレーブの無線基地局であって、ISDN回線のU点インターフェースを終端制御するディジタル回線終端部と、ISDN回線からISDNフレームを受信し、ISDNフレームに含まれるBチャネルの信号を出力する回線インタフェースと、受信したISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出する第1のフレーム検出部と、送信するTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを検出する第2のフレーム検出部と、ISDNフレームの先頭位置のタイミングとTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングとの時間差を算出するフレーマ回路と、時間差およびディジタル回線終端部で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、内部遅延時間が最小となるTDMA/TDDフレームの通話スロットを選択する選択部と、連続する2つのISDNフレームのBチャネルの信号をTDMA/TDDフレームの選択した通話スロットに割当てる無線インタフェースと、TDMA/TDDフレームの信号を無線信号に変換する無線モジュールとを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無線基地局によれば、ISDN回線から受信した信号を少ない遅延量で移動局へ無線送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【図2】スロット選択のためのテーブルを表わす図である。
【図3】第1の実施形態の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
【図4】第1の実施形態の無線基地局の動作手順を表わすフローチャートである。
【図5】第2の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【図6】第2の実施形態の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
【図7】第2の実施形態の無線基地局の動作手順を表わすフローチャートである。
【図8】従来の無線基地局の構成を表わす図である。
【図9】従来の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【0026】
この無線基地局は、マスター基地局から送信されるフレームに同期して、自身のフレームの送信タイミングの同期をとるスレーブ基地局がある。
【0027】
図1を参照して、この無線基地局91は、DSU30と、I′−LSI31と、CPU(Central Processing Unit)35と、網同期回路(PLL)37と、フレーマ回路38と、DSP(Digital Signal Processor)39と、TDMA/TDD部42と、無線モジュール46と、アンテナ48とを備える。
【0028】
DSU30は、ISDN回線のU点インタフェースを終端制御するディジタル回線終端部である。
【0029】
DSU30とI′−LSI31とのインタフェースはU点と同じ320kbpsでの通信を行う。DSU30は、ISDN回線のU点インタフェースをS/T点インタフェースに変換することなく、I′−LSI30と通信する。
【0030】
I′−LSI31は、ISDNユーザ・網インターフェース制御を行うLSIであって、網クロック抽出部32と、フレーム検出部33と、回線I/F34とを含む。
【0031】
網クロック抽出部32は、DSU30から送られる信号から網クロック信号を抽出して、抽出した網クロック信号を網同期回路37へ送る。
【0032】
フレーム検出部33は、ISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出して、先頭位置のタイミングを表わすクロック信号CLK1を出力する。ISDNフレームは、2.5ms周期で送信されるので、先頭位置を表わすクロック信号CLK1の周波数は400Hzとなる。
【0033】
回線I/F34は、ISDN回線に接続し呼制御情報および通信(通話)情報を送受信する。回線I/F34は、ISDN回線からISDNフレームを受信し、ISDNフレームに含まれるBチャネルの信号を出力する。
【0034】
網同期回路37は、網クロック抽出部32が回線から抽出した8kHzの網クロック信号を受けて、これに同期した装置内部で必要な様々なクロック信号を生成する。
【0035】
DSP39は、音声通話で必要なエコーキャンセラ40と、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)トランスコーダ41を備える。
【0036】
DSP39と回線I/Fとの間は、通話路1o、1iで接続される。DSP39と、無線I/F45との間は、通話路4i、4oで接続される。通話路1o、1i、通話路4i、4oでの伝送は、時分割多重されない通話路である。
【0037】
DSP39は、通話路1oを介してI′−LSI31からBチャネルの信号を受信する。DSP39は、通話路4iを介してTDMA/TDD部42へBチャネルの信号を送信する。
【0038】
エコーキャンセラ40は、通話路1iを通じて受けた音声信号からエコーを除去する。
ADPCMトランスコーダ41は、エコーが除去された音声信号をADPCM方式でディジタル信号に変換する。
【0039】
TDMA/TDD部42は、無線送受信制御部43と、フレーム検出/制御部44と、無線I/Fと45とを含む。
【0040】
無線送受信制御部43は、無線信号の送受信を制御する。
フレーム検出/制御部44は、TDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを検出する。フレーム検出/制御部44は、無線送受信制御部43にフレームの受信タイミングを変化させながら受信動作をさせる。フレーム検出/制御部44は、受信エラーが最小となるときの受信タイミングを特定することによって、TDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを検出して、先頭位置を表わすクロック信号CLK2を出力する。TDMA/TDDフレームは、5ms周期で送信されるので、先頭位置を表わすクロック信号CLK2の周波数は200Hzとなる。
【0041】
無線I/F45は、回線I/F34から送られた信号、または回線I/F34からDSP39を経由して送られた信号を無線モジュール46へ出力する。無線I/F45は、連続する2つのISDNフレームのBチャネルの信号をTDMA/TDDフレームの、スロット選択部36で選択された通話スロットに割当てる。
【0042】
無線モジュール46は、無線I/F45から出力されるTDMA/TDDフレームの信号を増幅、変調、周波数変換して無線信号を生成してアンテナ48へ出力する。
【0043】
フレーマ回路38は、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2とに基づいて、ISDNフレームの先頭位置のタイミングとTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングとの時間差を算出して、内部のレジスタに時間差を表わす情報を格納する。
【0044】
CPU35は、スロット選択部36として機能する。スロット選択部36は、フレーマ回路38のレジスタからフレームの先頭位置の時間差を表わす情報を読出し、この時間差およびDSU30で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、内部遅延時間が最小となるTDMA/TDDフレームの通話スロットを選択する。処理遅延時間の合計は、予め算出されて、図示しないメモリに記憶されている。内部遅延時間は、連続する2つのISDNフレームのうちの先頭のISDNフレームの受信フレームの先頭を受信してから、連続する2つのISDNフレームのBチャネルのデータを送信するまでの時間である。
【0045】
フレームの先頭位置のタイミングの時間差t2(msec)を0〜2.5msecとし、処理遅延時間の合計t1(msec)を0〜2.5msecであるとしたときに、スロット選択部36は、以下の式(A1)を用いて、y(msec)を計算する。
【0046】
y=t1+2.5/2−t2 ・・・(A1)
スロット選択部36は、図2に示すテーブルに従って、スロットを選択する。
【0047】
スロット選択部36は、yの値に基づいて、内部遅延時間t3が最小となるように、下りスロットを選択する。図2のテーブルは、yの値に対して、内部遅延時間t3が最小となる下りスロットを定めたものである。
【0048】
スロット選択部36は、yの値が0.625msec未満であれば下りスロット(2)を選択する。スロット選択部36は、yの値が0.625msec以上かつ1.25msec未満であれば下りスロット(3)を選択する。スロット選択部36は、yの値が1.25msec以上かつ1.875msec未満であれば下りスロット(4)を選択する。スロット選択部36は、yの値が1.875msec以上かつ2.5msec未満であれば下りスロット(1)を選択する。
【0049】
図3は、第1の実施形態の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
スロット選択部36は、t1およびt2を用いて、式(A1)に基づいて、yの値を算出し、図2に示すテーブルに従って、下りスロットを選択する。ここでは、yの値が1.25msec以上かつ1.875msec未満であるとする。その結果、図3では下りスロット(4)が選択されて、下りスロット(4)で信号が伝送されている。
【0050】
本実施の形態では、従来のようにU点をS/T点に変換しないので、DSU30とI′−LSI31との間で遅延が生じない。
【0051】
従来は、無線の電波状況に応じて選択されたスロットで送信されていたため、そのようにして選択されたスロットがどこにあるかによって、内部遅延時間t3が長時間となる場合もあったが、本実施の形態では、前述のように、式(A1)のyに基づいて、内部遅延時間t3が最小となるような下りスロット(4)が選択される。
【0052】
さらに、従来では、TSW19によって多重化された信号が高速でなかったたため、遅延量が大きくなっていたが、本実施の形態では、回線I/F34とDSP39の間、およびDSP30と無線I/F45の間は、TSWを使用せずに、多重化しない通信路で信号が送受信されるので、遅延量が少ない。
【0053】
図4は、第1の実施形態の無線基地局の動作手順を表わすフローチャートである。
まず、DSU30が、ISDNフレームを受信する(ステップS101)。
【0054】
次に、網クロック抽出部32および網同期回路37がクロックを生成して、他のブロックへ供給する(ステップS102)。
【0055】
次に、フレーム検出部33は、連続する2つのISDNフレームのうちの先頭のISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出する(ステップS103)。
【0056】
次に、フレーム検出/制御部44は、TDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを検出する(ステップS104)。
【0057】
次に、フレーマ回路38は、ISDNフレームの先頭位置のタイミングとTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングとの時間差を算出する(ステップS105)。
【0058】
次に、スロット選択部36は、フレーマ回路38で算出された時間差と、DSU30で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、内部遅延時間が最小となるTDMA/TDDフレームの通話スロットを選択する(ステップS106)。
【0059】
次に、回線I/F34は、ISDNフレームを受信し、通話路1iを介して、ISDNフレームに含まれるBチャネルの信号をDSP39へ出力する(ステップS107)。
【0060】
次に、DSP39内のエコーキャンセラ40は、Bチャネルの信号(音声信号)のエコー信号を除去する(ステップS108)。
【0061】
次に、DSP39内のADPCMトランスコーダ41は、エコー信号が除去された信号をADPCM方式でディジタル信号(ADPCM信号)に変換する(ステップS109)。
【0062】
次に、DSP39は、通話路4oを介して、Bチャネルの信号(ADPCM信号)を無線I/F45へ出力する(ステップS110)。
【0063】
無線I/F45は、DSP45から、連続する2つのISDNフレームのBチャネルの信号(ADPCM信号)を受取った場合に(ステップS111でYES)、これらの2つのISDNフレームのBチャネルの信号をTDMA/TDDフレーム内のステップS106で選択された通話スロットに割当てる(ステップS113)。
【0064】
次に、無線モジュール46は、無線I/F45から出力されるTDMA/TDDフレームの信号を増幅、変調、周波数変換して無線信号を生成してアンテナ48へ出力する(ステップS114)。
【0065】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【0066】
この無線基地局は、GPS衛星からの基準時刻信号に同期して、送受信するTDMA/TDDフレームの位置を決定するマスター基地局である。
【0067】
図5を参照して、この無線基地局92が図1の無線基地局91と相違する点は、アンテナ49と、GPSモジュール47と、スロット選択部146である。
【0068】
アンテナ49およびGPSモジュール47は、GPS衛星からの軌道情報を受信する。GPSモジュール47は、軌道情報から基準時刻信号BCLK、すなわち1PPSの信号(1秒周期の信号)を生成する。
【0069】
スロット選択部146は、ISDNフレームの先頭位置およびDSU30で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、基準時刻信号BCLKに同期し、かつ内部遅延時間が最小となるようなタイミングで、選択したまたは予め定められた下りスロットの信号が送信されるようにタイミングを決定する。
【0070】
空きスロットで受信したBチャネルの信号を送信するような場合には、選択した下りスロットのタイミングで信号が送信されるようにタイミングが決定される。
【0071】
スロットに空きに関係なく、下りスロット(1)〜(4)の中で予め定められた下りスロット(本実施の形態では、一例として下りスロット(1)とする)でBチャネルの信号を送信するような場合には、予め定められた下りスロットで信号が送信されるようにタイミングが決定される。
【0072】
図6は、第2の実施形態の無線基地局内の信号のタイミングチャートである。
図6に示すように、内部遅延時間t3(msec)は、7.5+t1+αで表わされる。ここでは、予め定められた下りスロット(1)でBチャネルの信号を送信されるとする。αの値が小さいほど、内部遅延時間が小さくなる。基準時刻信号BLKに同期して、かつ内部遅延時間t3が最小のタイミング(つまりαの値が小さいタイミング)が下りスロット(1)となるように、タイミングが決定される。ここでは、α=0が基準時刻信号BLKに同期するタイミングであるとする。その結果、内部遅延時間t3が7.5+t1の時点で下りスロット(1)の信号が送信されるようにタイミングが決定される。
【0073】
図7は、第2の実施形態の無線基地局の動作手順を表わすフローチャートである。
まず、DSU30が、ISDNフレームを受信する(ステップS101)。
【0074】
次に、網クロック抽出部32および網同期回路37がクロックを生成して、他のブロックへ供給する(ステップS102)。
【0075】
次に、フレーム検出部33は、連続する2つのISDNフレームのうちの先頭のISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出する(ステップS103)。
【0076】
次に、GPSモジュール47は、GPS衛星からの軌道情報を受信し、軌道情報から基準時刻信号BCLKを生成する(ステップS204)。
【0077】
次に、スロット選択部136は、ISDNフレームの先頭位置のタイミングと、DSU30で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、基準時刻信号BCLKに同期し、かつ内部遅延時間が最小となるようなタイミングで、選択したまたは予め定められた下りスロットの信号が送信されるようにタイミングを決定する(ステップS206)。
【0078】
次に、回線I/F34は、ISDNフレームを受信し、通話路1iを介してISDNフレームに含まれるBチャネルの信号を出力する(ステップS107)。
【0079】
次に、DSP39内のエコーキャンセラ40は、Bチャネルの信号(音声信号)のエコー信号を除去する(ステップS108)。
【0080】
次に、DSP39内のADPCMトランスコーダ41は、エコー信号が除去された信号をADPCM方式でディジタル信号(ADPCM信号)に変換する(ステップS109)。
【0081】
次に、DSP39は、通話路4oを介して、ADPCM信号を無線I/F45へ出力する(ステップS110)。
【0082】
無線I/F45は、DSP45から、連続する2つのISDNフレームのBチャネルの信号(ADPCM信号)を受取った場合に(ステップS111でYES)、これらの2つのISDNフレームのBチャネルの信号をTDMA/TDDフレーム内のステップS106で選択された通話スロットに割当てる(ステップS112)。
【0083】
次に、無線モジュール46は、無線I/F45から出力されるTDMA/TDDフレームの信号を増幅、変調、周波数変換して無線信号を生成してアンテナ48へ出力する(ステップS113)。
【0084】
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、内部遅延時間を少なくすることができる。また、第2の実施形態によれば、TDMA/TDDフレームの位置を自局で決められるので、第1の実施形態よりもさらに内部遅延時間を少なくできる場合がある。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10,30 DSU、11,31 I′−LSI、32 網クロック抽出部、33 フレーム検出部、34 回線I/F、15,35 CPU、36,136 スロット選択部、17,37 網同期回路、19 TSW、38 フレーマ回路、39 DSP、15,40 エコーキャンセラ、24,41 ADPCMトランスコーダ、20,42 TDMA/TDD部、43 無線送受信制御部、44 フレーム制御/検出部、45 無線I/F、25,46 無線モジュール、47 GPSモジュール、28,48,49 アンテナ、91,92,93 無線基地局。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISDN回線から信号を受信し、移動局へ前記受信した信号を含むTDMA/TDDフレームを無線送信するスレーブの無線基地局であって、
前記ISDN回線のU点インターフェースを終端制御するディジタル回線終端部と、
前記ISDN回線からISDNフレームを受信し、前記ISDNフレームに含まれるBチャネルの信号を出力する回線インタフェースと、
受信したISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出する第1のフレーム検出部と、
送信するTDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを検出する第2のフレーム検出部と、
前記ISDNフレームの先頭位置のタイミングと前記TDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングとの時間差を算出するフレーマ回路と、
前記時間差および前記ディジタル回線終端部で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、内部遅延時間が最小となる前記TDMA/TDDフレームの通話スロットを選択する選択部と、
連続する2つの前記ISDNフレームのBチャネルの信号を前記TDMA/TDDフレームの前記選択した通話スロットに割り当てる無線インタフェースと、
前記TDMA/TDDフレームの信号を無線信号に変換する無線モジュールとを備えた、無線基地局。
【請求項2】
ISDN回線から信号を受信し、移動局へ前記受信した信号を含むTDMA/TDDフレームを無線送信するマスターの無線基地局であって、
前記ISDN回線のU点インターフェースを終端制御するディジタル回線終端部と、
前記ISDN回線からISDNフレームを受信し、前記ISDNフレームに含まれるBチャネルの信号を出力する回線インタフェースと、
受信したISDNフレームの先頭位置のタイミングを検出する第1のフレーム検出部と、
GPS衛星から軌道情報を受信して、一定の周期の基準時刻信号を出力するGPSモジュールと、
前記ISDNフレームの先頭位置のタイミング、および前記ディジタル回線終端部で受信した信号を処理するための処理遅延時間の合計に基づいて、前記基準時刻信号に同期し、かつ内部遅延時間が最小となるタイミングで、選択したまたは予め定められた通話スロットの信号が送信されるように前記TDMA/TDDフレームの先頭位置のタイミングを選択する選択部と、
連続する2つの前記ISDNフレームのBチャネルの信号を前記TDMA/TDDフレームの前記通話スロットに割り当てる無線インタフェースと、
前記TDMA/TDDフレームの信号を無線信号に変換する無線モジュールとを備えた、無線基地局。
【請求項3】
前記ディジタル回線終端部は、前記ISDN回線のU点インターフェースをS/T点インターフェースに変換しない、請求項1または2記載の無線基地局。
【請求項4】
前記無線基地局は、さらに
受信した音声信号に対して、エコーキャンセル処理とADPCMトランスデコード処理をするディジタル・シグナル・プロセッサを備え、
前記処理遅延時間は、前記回線インタフェースから前記ディジタル・シグナル・プロセッサへ信号を伝送する時間と、前記ディジタル・シグナル・プロセッサで処理する時間と、前記ディジタル・シグナル・プロセッサから前記無線インタフェースへ信号を伝送する時間とを含む、請求項1または2記載の無線基地局。
【請求項5】
前記回線インタフェースは、時分割多重されない通話路で、前記ディジタル・シグナル・プロセッサへ信号を伝送し、
前記ディジタル・シグナル・プロセッサは、時分割多重されない通話路で、前記無線インタフェースへ信号を伝送する、請求項1または2記載の無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74520(P2013−74520A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213023(P2011−213023)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】