説明

無線端末、無線端末測定システム、無線端末における無線測定端子の接続方法

【課題】第1の無線機、第2の無線機、および無線特性測定用機器を分配器に一括接続した場合に、第1および第2の無線機の各々の負荷を無線機の状態に関わらず同一とすることにより、分配器の配分誤差を低減する。
【解決手段】第1および第2の無線機の各々は、自己または他方の無線機の無線特性の測定時に、無線特性測定用の所定の信号が入出力される無線測定端子と、受信回路と、送信回路と、受信回路側または送信回路側に切替えられて、切替えられた回路側に無線測定端子を接続する送受信切替回路と、送受信切替回路と送信回路との間に配置され、送信回路から送受信回路へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータとを有し、送受信切替回路は、他方の無線機の無線特性を測定するために自己の無線機が待機中となる場合、送信回路側に切替えられて、無線測定端子をアイソレータに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一筐体に2つの無線機を搭載したPHS(Personal Handyphone System)端末等の無線端末、無線端末測定システム、および無線端末における無線測定端子の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線端末に搭載される無線機の構成の一例を図3に示す。
【0003】
図3に示した無線機は、アンテナ111と、アンテナ111を介して無線信号を受信する受信回路112と、アンテナ111を介して無線信号を送信する送信回路113と、無線特性の測定時に、無線特性測定用の信号が入出力される無線測定端子114と、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるBPF(Band-Pass Filter)115と、受信回路112側または送信回路113側のいずれかに切替えられて、切替えられた回路側に無線測定端子114およびBPF115を接続する送受信切替回路116とを有している。
【0004】
無線測定端子114は、無線機の開発時や工場での大量生産時に、無線機が正常に動作しているかを確認することを目的として、無線特性測定用の信号が入出力される端子である。この無線測定端子114は、無線機の無線特性の測定時には、不図示の無線特性測定用機器にケーブルにより接続されて、無線特性測定用機器からの信号を入力したり、無線特性測定用機器に対して信号を出力したりする。
【0005】
無線特性測定用機器は、無線機の一般的な無線特性(送信特性、受信特性)、例えば、送信パワー、周波数精度、受信感度などを測定するための機器である。例えば、無線特性測定用機器は、無線機の送信パワーの測定時には、無線機にて発生した送信パワー測定用の信号を無線測定端子114を介して入力し、その信号の送信パワーを測定し、また、無線機の受信感度の測定時には、受信感度測定用の信号を発生して無線測定端子114を介して無線機に出力し、その信号の測定を無線機に実行させる。
【0006】
送受信切替回路116は、通常以下の動作を行う。
(1)送信中(自己の無線機の送信特性を測定中)
送信回路113側に切替えられて、無線測定端子114およびBPF115を送信回路113に接続する。このとき、無線測定端子114上の負荷は一定であり、通常、50Ωである。
(2)受信中(自己の無線機の受信特性を測定中)
受信回路112側に切替えられて、無線測定端子114およびBPF115を受信回路112に接続する。このとき、無線測定端子114上の負荷は一定であり、通常、50Ωである。
(3)待機中(隣接する他の無線機の無線特性を測定中で、自己の無線機が待機中)
受信回路112側に切替えられて、無線測定端子114およびBPF115を受信回路112に接続する。
【0007】
例えば、待機中に、故障等により受信回路112がONになり続ける、アンテナがGNDと短絡する(負荷増大)等の条件が重なった場合、無線測定端子114およびBPF115が受信回路112側に接続されていても、受信回路112の入力が低インピーダンスで終端されるだけで特に受信回路112の熱破壊が生じることは無いと考えられる。
【0008】
これに対して、待機中に、故障等により送信回路113がONになり続ける、アンテナがGNDと短絡する(負荷増大)等の条件が重なった場合、無線測定端子114およびBPF115が送信回路113側に接続されていると、送信回路113の出力が低インピーダンスで終端されることになり、送信回路113に過大な電流が流れ、送信回路113の熱破壊や、送信回路113周辺への悪影響が考えられる。
【0009】
このように、待機中には、受信回路112と比較して、送信回路113で熱破壊等が生じる可能性が高いことから、送信回路113を保護するために、無線測定端子114およびBPF115を受信回路112側に接続するのが一般的である。なお、PHS端末などの無線端末においては、小型かつ安価に製造する必要があるために特別な保護回路を設けていないこと、受信回路112は待機中に熱破壊が生じる可能性が低いことなどの理由で、受信回路112については保護回路により保護することはしていない。
【0010】
また、待機中の電源は、受信回路112および送信回路113ともにOFFとするため、電源OFFの受信回路112に接続されている無線測定端子114上の負荷は不定となる。
【0011】
図3に示すような無線機を同一筐体に2つ隣接して搭載した無線端末が、例えば、特許文献1に開示されている。このような無線端末の無線特性を測定する無線端末測定システムの構成の一例を図4および図5に示す。なお、図4と図5とでは、システム構成自体は同一であるが、図4には、一方の無線機を送信中として送信特性を測定し、他方の無線機を待機中としている状態の構成が示されており、図5には、一方の無線機を受信中として受信特性を測定し、他方の無線機を待機中としている状態の構成が示されている。
【0012】
図4および図5を参照すると、本従来例の無線端末測定システムは、図3と同様の構成である第1の無線機1101および第2の無線機1102を搭載した無線端末120と、第1の無線機1101または第2の無線機1102の無線特性の測定時に、無線特性測定用の信号が入出力される無線特性測定用機器130と、第1の無線機1101、第2の無線機1102、および無線特性測定用機器130を一括して接続する高周波の分配器140とを有している。
【0013】
なお、図4および図5において、アンテナ1111,1112、受信回路1121,1122、送信回路1131,1132、無線測定端子1141,1142、BPF1151,1152、送受信切替回路1161,1162は、それぞれ、図3における、アンテナ111、受信回路112、送信回路113、無線測定端子114、BPF115、送受信切替回路116と対応しているものとする。
【0014】
また、無線特性測定用機器130の分配器140側の端子の負荷は常に一定で、50Ωであるものとする。
【0015】
また、図4および図5には図示されていないが、本従来例の無線端末測定システムには、無線特性測定用機器130とGPIB(General Purpose Interface Bus)インターフェース等により接続されて、無線特性測定用機器130を制御するとともに、第1の無線機1101および第2の無線機1102の各々とシリアルインターフェース等により接続されて、第1の無線機1101および第2の無線機1102を制御する制御装置が設けられているものとする。
【0016】
以下、図4および図5に示した無線端末測定システムの動作について説明する。
【0017】
最初に、第1の無線機1101を無線信号の送信中として送信特性を測定し、第2の無線機1102を待機中とする場合の動作について、図4を参照して説明する。ここでは、第1の無線機1101の送信特性として送信パワーを測定するものとして説明する。
【0018】
第1の無線機1101においては、不図示の制御装置からの指示に基づき不図示の信号発生回路にて送信パワー測定用の信号を発生し、その信号を分配器140に送信する。このとき、送受信切替回路1161は、送信回路1131側に切替えられて、無線測定端子1141およびBPF1151を送信回路1131に接続している。そのため、無線測定端子1141上の負荷は一定で、50Ωである。
【0019】
分配器140においては、第1の無線機1101から送信されてきた信号を、無線特性測定用機器130および第2の無線機1102に分配出力し、無線特性測定用機器130においては、分配器140にて分配出力された信号の送信パワーを測定する。この送信パワーの測定値は、制御装置にて取得され管理される。
【0020】
待機中の第2の無線機1102においては、分配器140にて分配出力された信号が受信される。このとき、送受信切替回路1162は、受信回路1121側に切替えられて、無線測定端子1142およびBPF1152を受信回路1122に接続している。この状態では受信回路1122の電源がOFFとなっているため、無線測定端子1142の負荷は不定となる。
【0021】
分配器140が第1の無線機1101からの信号を均等に分配するためには、待機中の第2の無線機1102の負荷が、常に一定の50Ωとなる無線特性測定用機器130と同様に、50Ωで終端されている必要がある。
【0022】
しかし、上述のように、待機中の第2の無線機1102では無線測定端子1142の負荷が不定となるため、無線測定端子1142の負荷が無線特性測定用機器130の負荷とは同一とはならず、分配器140に配分誤差が生じてしまう。
【0023】
次に、第1の無線機1101を無線信号の受信中として受信特性を測定し、第2の無線機1102を待機中とする場合の動作について、図5を参照して説明する。ここでは、第1の無線機1101の受信特性として受信感度を測定するものとして説明する。
【0024】
無線特性測定用機器130においては、不図示の制御装置からの指示に基づき受信感度測定用の信号を発生し、その信号を分配器140に送信する。分配器140においては、無線特性測定用機器130から送信されてきた信号を、第1の無線機1101および第2の無線機1102に分配出力する。
【0025】
第1の無線機1101においては、分配器140にて分配出力された信号が受信され、不図示の受信感度測定回路にて受信感度が測定される。このとき、送受信切替回路1161は、受信回路1121側に切替えられて、無線測定端子1141およびBPF1151を受信回路1121に接続している。そのため、無線測定端子1141上の負荷は一定で、50Ωである。なお、受信感度の測定値は、制御装置にて取得され管理される。
【0026】
一方、待機中の第2の無線機1102においても、分配器140にて分配出力された信号が受信される。このとき、送受信切替回路1162は、受信回路1121側に切替えられて、無線測定端子1142およびBPF1152を受信回路1122に接続している。この状態では受信回路1122の電源がOFFとなっているため、無線測定端子1142の負荷は不定となる。
【0027】
分配器140が無線特性測定用機器130からの信号を均等に分配するためには、待機中の第2の無線機1102の負荷が、第1の無線機1101と同様に、一定の50Ωで終端されている必要がある。
【0028】
しかし、上述のように、待機中の第2の無線機1102では無線測定端子1142の負荷が不定となるため、無線測定端子1141の負荷と無線測定端子1142の負荷とが同一とはならず、分配器140に配分誤差が生じてしまう。
【0029】
図4および図5を用いて説明したように、第1の無線機1101および第2の無線機1102の各々の負荷は無線機の状態に応じて異なるため、分配器140には配分誤差が生じてしまう。その結果、例えば、第1の無線機1101と第2の無線機1102とで交互に電波を出力し、各々の出力値を測定すると、本来は同じ値になるにも関わらず出力値が異なってしまう。
【特許文献1】特開2004−179975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
上述したように、従来技術においては、第1の無線機、第2の無線機、および無線特性測定用機器を分配器に一括接続した場合、第1および第2の無線機の各々の負荷が無線機の状態に応じて異なるために分配器に配分誤差が生じてしまうという課題があった。
【0031】
本発明の目的は、第1の無線機、第2の無線機、および無線特性測定用機器を分配器に一括接続した場合に、第1および第2の無線機の各々の負荷を無線機の状態に関わらず同一とすることにより、分配器の配分誤差を低減することができる無線端末、無線端末測定システムおよび無線端末における無線測定端子の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために本発明は、
同種類の第1および第2の無線機を搭載する無線端末において、
前記第1および第2の無線機の各々は、
自己または他方の無線機の無線特性の測定時に、無線特性測定用の所定の信号が入出力される無線測定端子と、
受信回路と、
送信回路と、
前記受信回路側または前記送信回路側に切替えられて、切替えられた回路側に前記無線測定端子を接続する送受信切替回路と、
前記送受信切替回路と前記送信回路との間に配置され、前記送信回路から前記送受信回路へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータとを有し、
前記送受信切替回路は、他方の無線機の無線特性を測定するために自己の無線機が待機中となる場合、前記送信回路側に切替えられて、前記無線測定端子を前記アイソレータに接続することを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、第1および第2の無線機の各々においては、待機中である場合、送受信切替回路が送信回路側に切替えられて、電源のON/OFFに関係なく負荷が一定であるアイソレータに無線測定端子を接続しているため、無線測定端子の待機中の負荷を、送信中、受信中と同じにすることができる。
【0034】
また、第1および第2の無線機の各々においては、待機中である場合、無線測定端子をアイソレータを介して送信回路と接続しているため、他方の無線機からの信号が送信回路に送信されて、送信回路に熱破壊や三次元歪みが生じることを防止でき、送信回路の負荷を安定にすることができるため、送信回路を保護することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明においては、第1および第2の無線機の各々において、待機中である場合、送受信切替回路が送信回路側に切替えられて、電源のON/OFFに関係なく負荷が一定であるアイソレータに無線測定端子を接続しているため、無線測定端子の待機中の負荷は、送信中、受信中と同じになる。
【0036】
そのため、分配器に、第1の無線機、第2の無線機、および無線特性測定用機器を一括接続しても、分配器から見て、第1の無線機側の負荷、第2の無線機側の負荷、および無線特性測定用機器側の負荷が常に同一になるため、分配器の配分誤差が生じるのを抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0038】
本発明の一実施形態の無線端末測定システムの構成を図1および図2に示す。なお、図1と図2とでは、システム構成自体は同一であるが、図1には、一方の無線機を送信中として送信特性を測定し、他方の無線機を待機中としている状態の構成が示されており、図2には、一方の無線機を受信中として受信特性を測定し、他方の無線機を待機中としている状態の構成が示されている。
【0039】
図1および図2を参照すると、本実施形態の無線端末測定システムは、第1の無線機101および第2の無線機102を搭載した無線端末20と、第1の無線機101または第2の無線機102の無線特性の測定時に、無線特性測定用の信号が入出力される無線特性測定用機器30と、第1の無線機101、第2の無線機102、および無線特性測定用機器30を一括して接続する高周波の分配器40とを有している。
【0040】
本実施形態においては、第1の無線機101において、送信回路131と送受信切替回路161との間に配置され、送信回路131から送受信切替回路161へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータ171を設け、また、第2の無線機102において、送信回路132と送受信切替回路162との間に配置され、送信回路132から送受信切替回路162へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータ172を設けた点が、図3に示した従来構成と比較して異なっている。
【0041】
なお、図1および図2において、アンテナ111,112、受信回路121,122、送信回路131,132、無線測定端子141,142、BPF151,152、送受信切替回路161,162は、それぞれ、図3における、アンテナ11、受信回路12、送信回路13、無線測定端子14、BPF15、送受信切替回路16と対応しているものとする。
【0042】
また、無線特性測定用機器30の分配器40側の端子の負荷は常に一定で、50Ωであるものとする。
【0043】
また、図1および図2には図示されていないが、本実施形態の無線端末測定システムには、無線特性測定用機器30とGPIBインターフェース等により接続されて、無線特性測定用機器30を制御するとともに、第1の無線機101および第2の無線機102の各々とシリアルインターフェース等により接続されて、第1の無線機101および第2の無線機102を制御する制御装置が設けられているものとする。
【0044】
上記のように構成される本実施形態においては、例えば、第1の無線機101の無線特性を測定するために第2の無線機102が待機中となる場合、送受信切替回路162は送信回路132側に切替えられて、無線測定端子142およびBPF152をアイソレータ172に接続し、無線測定端子142上の負荷を一定(50Ω)にする。その結果、待機中でも、無線測定端子142上の負荷は、送信中、受信中と同じになる。第1の無線機101が待機中である場合も同様である。
【0045】
これにより、分配器40における第1の無線機101側の端子および第2の無線機102側の端子の負荷が常に同一となるため、分配量の誤差を抑えることができる。
【0046】
なお、アイソレータ171,172には周波数特性があるため、第1の無線機101および第2の無線機102は、同一の周波数帯を使用する同種類の無線機(例えば、PHS用無線機)とする必要がある。異なる周波数帯の別種類の無線機を組み合わせた場合(例えば、PHS用無線機と無線LAN(Local Area Network)用無線機との組み合わせ)、自己の無線機(例えば、PHS用無線機)の無線特性を測定中、分配器20を通して見える他方の無線機(例えば、無線LAN用無線機)は50Ωで終端されないとことがあると考えられる。
【0047】
また、第1の無線機101および第2の無線機102を同種類のPHS用無線機とし、双方の無線機をともにデータ通信用として使用する場合には、通常は一方の無線機のみを動作させて通信を行うが、状況に応じて他方の無線機も動作させて、より多くの通信回線を使用することにより通信速度を向上させることが可能となる。
【0048】
以下、図1および図2に示した無線端末測定システムの動作について説明する。
【0049】
最初に、第1の無線機101を無線信号の送信中として送信特性を測定し、第2の無線機102を待機中とする場合の動作について、図1を参照して説明する。ここでは、第1の無線機101の送信特性として送信パワーを測定するものとして説明する。
【0050】
第1の無線機101においては、不図示の制御装置からの指示に基づき不図示の信号発生回路にて送信パワー測定用の信号を発生し、その信号を分配器40に送信する。このとき、送受信切替回路161は、送信回路131側に切替えられて、BPF151をアイソレータ171に接続している。そのため、無線測定端子1141上の負荷は一定で、50Ωである。
【0051】
分配器40においては、第1の無線機101から送信されてきた信号を、無線特性測定用機器30および第2の無線機102に分配出力し、無線特性測定用機器30においては、分配器40にて分配出力された信号の送信パワーを測定する。この送信パワーの測定値は、制御装置にて取得され管理される。
【0052】
待機中の第2の無線機102においては、分配器40にて分配出力された信号が受信される。このとき、送受信切替回路1162は、送信回路132側に切替えられて、BPF152をアイソレータ172に接続している。
【0053】
ここで、送受信切替回路162は、接続先の切替のみを行う回路であるため、BPF152の負荷へ影響を与えることは無い。そのため、BPF152の送信回路132側の端子の負荷は、アイソレータ172に直接接続された場合の負荷と等価となる。
【0054】
また、アイソレータ172は、電源のON/OFFに関係なく負荷が一定である。そのため、第2の無線機102の状態が待機中であってもBPF152の送信回路132側の端子の負荷は一定で50Ωとなる。
【0055】
このように、BPF152の送信回路132側の端子の負荷が一定になるため、最終的に無線測定端子142の負荷は一定で50Ωとなる。
【0056】
したがって、第1の無線機101が送信中で、第2の無線機102が待機中である場合にも、待機中の無線測定端子142の負荷が、無線特性測定用機器130の負荷と同様に、一定で50Ωになるため、分配器140の配分誤差が低減される。
【0057】
次に、第1の無線機101を無線信号の受信中として受信特性を測定し、第2の無線機102を待機中とする場合の動作について、図2を参照して説明する。ここでは、第1の無線機101の受信特性として受信感度を測定するものとして説明する。
【0058】
無線特性測定用機器30においては、不図示の制御装置からの指示に基づき受信感度測定用の信号を発生し、その信号を分配器40に送信する。分配器40においては、無線特性測定用機器30から送信されてきた信号を、第1の無線機101および第2の無線機102に分配出力する。
【0059】
第1の無線機101においては、分配器40にて分配出力された信号が受信され、不図示の受信感度測定回路にて受信感度が測定される。このとき、送受信切替回路1161は、受信回路1121側に切替えられて、BPF1151をアイソレータ171に接続している。そのため、無線測定端子1141上の負荷は一定で、50Ωである。なお、受信感度の測定値は、制御装置にて取得され管理される。
【0060】
一方、待機中の第2の無線機102においても、分配器40にて分配出力された信号が受信される。このとき、送受信切替回路1162は、送信回路132側に切替えられて、BPF152をアイソレータ172に接続している。そのため、図1の場合と同様の理由で、最終的に無線測定端子142の負荷は一定で50Ωとなる。
【0061】
したがって、第1の無線機101が受信中で、第2の無線機102が待機中である場合にも、待機中の無線測定端子142の負荷は、受信中の第1の無線機101の負荷と同様に、一定で50Ωになるため、分配器140の配分誤差が低減される。
【0062】
上述したように本実施形態においては、第2の無線機102が待機中である場合、送受信切替回路162が送信回路132側に切替えられて、電源のON/OFFに関係なく負荷が一定であるアイソレータ172に無線測定端子142およびBPF152を接続している。このため、無線測定端子142上の待機中の負荷は、送信中、受信中と同じになる。また、第1の無線機101が待機中である場合も同様に、無線測定端子141上の待機中の負荷は、送信中、受信中と同じになる。これにより、分配器40から見て、第1の無線機101および第2の無線機102の状態に関わらず、第1の無線機101側の負荷、第2の無線機102側の負荷、および無線特性測定用機器30側の負荷が常に同一になるため、分配器40の配分誤差が生じるのを抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、待機中である第2の無線機102では、無線測定端子142およびBPF152を、信号を一方向にのみ通過させるアイソレータ172を介して送信回路132と接続している。これにより、第1の無線機101からの信号が送信回路132に送信されて、送信回路132に熱破壊や三次元歪みが生じることを防止でき、送信回路132の負荷を安定にすることができるため、従来は待機中に送受信切替回路162を受信回路122側に接続することで行っていた送信回路132の保護を実現することができる。また、第1の無線機101が待機中である場合も同様に、送信回路131を保護することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、無線特性の測定時には、余計な輻射を抑えるために、無線測定端子141,142からアンテナ111,112を切り離すことが望ましい。そのための構成としては、例えば、無線測定端子141,142の構成を、分配器40からのケーブルが挿入されると、自動的にアンテナ111,112側への接続が切れる構成とすることが考えられる。なお、この構成の場合、測定終了後、アンテナ111,112をジャンパー線等で無線測定端子141,142に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態の無線端末測定システムの構成の一例として、一方の無線機を送信中とし、他方の無線機を待機中としている状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の無線端末測定システムの構成の一例として、一方の無線機を受信中とし、他方の無線機を待機中としている状態を示す図である。
【図3】従来の無線端末に搭載される無線機の構成の一例を示す図である。
【図4】従来の無線端末の無線端末測定システムの構成の一例として、一方の無線機を送信中とし、他方の無線機を待機中としている状態を示す図である。
【図5】従来の無線端末測定システムの構成の一例として、一方の無線機を受信中とし、他方の無線機を待機中としている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
101 第1の無線機
102 第2の無線機
111,112 アンテナ
121,122 受信回路
131,132 送信回路
141,142 無線測定端子
151,152 BPF
161,162 送受信切替回路
171,172 アイソレータ
20 無線端末
30 無線特性測定用機器
40 分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種類の第1および第2の無線機を搭載する無線端末において、
前記第1および第2の無線機の各々は、
自己または他方の無線機の無線特性の測定時に、無線特性測定用の所定の信号が入出力される無線測定端子と、
受信回路と、
送信回路と、
前記受信回路側または前記送信回路側に切替えられて、切替えられた回路側に前記無線測定端子を接続する送受信切替回路と、
前記送受信切替回路と前記送信回路との間に配置され、前記送信回路から前記送受信回路へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータとを有し、
前記送受信切替回路は、他方の無線機の無線特性を測定するために自己の無線機が待機中となる場合、前記送信回路側に切替えられて、前記無線測定端子を前記アイソレータに接続する、無線端末。
【請求項2】
前記第1および第2の無線機はPHS用無線機である、請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
同種類の第1および第2の無線機を搭載した無線端末と、前記第1または第2の無線機の無線特性の測定時に、無線特性測定用の所定の信号が入出力される無線特性測定用機器と、前記第1の無線機、前記第2の無線機、および前記無線特性測定用機器を接続する分配器とを有してなる無線端末測定システムにおいて、
前記第1および第2の無線機の各々は、
前記分配器に接続され、自己または他方の無線機の無線特性の測定時に、前記分配器を介して前記所定の信号が入出力される無線測定端子と、
受信回路と、
送信回路と、
前記受信回路側または前記送信回路側に切替えられて、切替えられた回路側に前記無線測定端子を接続する送受信切替回路と、
前記送受信切替回路と前記送信回路との間に配置され、前記送信回路から前記送受信回路へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータとを有し、
前記送受信切替回路は、他方の無線機の無線特性を測定するために自己の無線機が待機中となる場合、前記送信回路側に切替えられて、前記無線測定端子を前記アイソレータに接続する、無線端末測定システム。
【請求項4】
前記第1および第2の無線機はPHS用無線機である、請求項3に記載の無線端末測定システム。
【請求項5】
無線特性の測定時に無線特性測定用の所定の信号が入出力される無線測定端子と、受信回路と、送信回路と、前記受信回路側または前記送信回路側に切替えられて、切替えられた回路側に前記無線測定端子を接続する送受信切替回路と、前記送受信切替回路と前記送信回路との間に配置され、前記送信回路から前記送受信回路へ向かう方向にのみ信号を通過させるアイソレータとを各々が有し、同種の第1および第2の無線機を搭載した無線端末における無線測定端子の接続方法であって、
前記第1および第2の無線機の各々では、他方の無線機の無線特性を測定するために自己の無線機が待機中となる場合、前記送受信切替回路が、前記送信回路側に切替えられて、前記無線測定端子を前記アイソレータに接続する、無線測定端子の接続方法。
【請求項6】
前記第1および第2の無線機はPHS用無線機である、請求項5に記載の無線測定端子の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−148653(P2006−148653A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337315(P2004−337315)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】