説明

無線端末装置、ハンドオーバー制御方法およびハンドオーバー制御プログラム

【課題】無線ネットワークを含む通信システムにおいて、時間や手間を掛けて通信エリアを調整するなどのことなく、ハンドオーバーを適切に行えるようにする。
【解決手段】設定情報メモリ123は、ネットワークの識別情報を含むアクセスポイントへの接続に用いる設定情報をアクセスポイント毎に記憶している。端末状態管理部121が、自機の動作状態を管理する。ハンドオーバー時、無線接続情報管理部122が、設定情報メモリ123に記憶されている設定情報から変更先の候補のアクセスポイントの設定情報を取得し、アクセスポイントを変更する。この場合、端末状態管理部121での自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報にアクセスポイントへの変更だけを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、無線LAN(Local Area Network)が用いられて形成される電話システムで用いられる無線端末装置、ハンドオーバー制御方法およびハンドオーバー制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANシステムを利用して、ユーザが携帯型の無線端末装置を用いて電話通信を行うことができるようにした無線ネットワークシステムが、会社や病院などにおいて、広く構築されるようになってきている。そして、立地的に離れている、例えばA棟とB棟とで別々の無線ネットワークを構築している会社などの場合、社員がA棟、B棟のどちらで仕事をしていてもネットワークに接続できるように、無線端末装置には両方の無線ネットワークのアクセスポイントに接続するための設定情報が設定される。
【0003】
このとき、A棟とB棟は立地的には離れているが、それぞれのネットワークのアクセスポイントからの無線電波が届いている場合、通話しながら移動し、アクセスポイントからの電波状態が悪くなると、より電波状態の良いアクセスポイントへ接続を切り換える。このように、アクセスポイントからの電波の状態に応じて、より電波状態の良いアクセスポイントへ接続先を切り換えることをハンドオーバーと呼んでいる。
【0004】
このとき、A棟の無線ネットワークのアクセスポイントからB棟の無線ネットワークのアクセスポイントへ切り換えると言うように、ハンドオーバー先のアクセスポイントが別ネットワークのものとなる場合、電波状態は良好なのに通話が切れてしまう。これは、構築される無線ネットワーク毎に、アクセスポイントが用いるIPアドレス等の設定情報が異なるために、通話中の無線端末装置が突然に特定できなくなってしまうためである。
【0005】
このような状況を防ぐため、各無線ネットワークのアクセスポイントから送信される電波がかぶるエリア(領域)が生じないように、アクセスポイントから送信される信号(電波)の電波強度を調整することがよく行われている。
【0006】
また、別の方法として、後に記す特許文献1には、別ネットワークにハンドオーバーする場合に、管理サーバ内に通信の再開が可能になるまで無線端末装置宛の通信データを蓄積する発明が開示されている。そして、当該発明は、通信が再開されたら管理サーバ内に蓄積した通信号データをその通信データの送信先の無線端末装置に転送することができるものある。これにより、異なるネットワークへのハンドオーバーが発生した場合であっても、通信データの欠落を発生させることがないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−243693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したアクセスポイントから送信する信号の電波強度を調整する方法の場合、電波強度を弱めると、そのアクセスポイントとの間で通信が可能な範囲が狭くなる。このため、同ネットワーク上でも通信を適切に行うことができなくなってしまう場所が発生してしまうという問題が生じる場合がある。このため、本来は通信可能な場所であるべきなのに、通信ができないといった場所を生じさせないようにするために、アクセスポイントの設置位置の選択やアクセスポイントからの信号の電波強度の調整には、時間と手間がかかる場合が多い。
【0009】
また、上述した特許文献1に開示された発明の場合、管理サーバと無線端末装置とを含むシステム全体に手を加える必要がある。そして、管理サーバが各無線端末装置の動作状況を把握し、ハンドオーバー時には各無線端末装置毎に通信データを蓄積するため、管理サーバ自体に大きな負荷がかかってしまうという問題がある。
【0010】
以上のことに鑑み、この発明は、無線ネットワークを含む通信システムにおいて、時間や手間を掛けて各無線ネットワークの通信エリアを調整したり、また、サーバに大きな負荷を掛けたり、無線ネットワークシステム自体に大きく手を加えるなどのことなく、ハンドオーバーを適切に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の無線端末装置は、
所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される機器に対して1以上の電波中継器が接続されて形成される複数のネットワークに接続可能な無線端末装置であって、
前記電波中継器が属するネットワークの識別情報を含み、前記電波中継器に接続するために前記電波中継器のそれぞれ毎に設けられる設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
自機の動作状態を管理する動作状態管理手段と、
接続中の電波中継器からの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、前記動作状態管理手段での自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、前記設定情報記憶手段に記憶されている前記設定情報から、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報を新たに用いる設定情報として選択する設定情報変更手段と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この請求項1に記載の発明の無線端末装置によれば、設定情報記憶手段には、電波中継器が属するネットワークの識別情報を含み、電波中継器に当該無線端末装置が接続するために電波中継器のそれぞれ毎に設けられる設定情報が記憶されている。また、動作状態管理手段によって、自機の動作状態が管理される。
【0013】
そして、接続中の電波中継器からの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、動作状態管理手段での自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、設定情報変更手段によって、設定情報記憶手段に記憶されている設定情報から、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報が新たに用いられる設定情報として選択される。
【0014】
これにより、動作状態管理手段での自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、同じ無線ネットワークの電波中継器への接続変更(ハンドオーバー)しかできないようにされる。したがって、時間や手間を掛けて各無線ネットワークの通信エリアを調整したりするなどのことなく、電波中継器の接続変更を適切に行うことができるようにされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、無線ネットワークを含む通信システムにおいて、時間や手間を掛けて各無線ネットワークの通信エリアを調整したり、また、サーバに大きな負荷を掛けたり、無線ネットワークシステム自体に大きく手を加えるなどのことなく、ハンドオーバーを適切に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態の電話システムの構成例を説明するためのブロック図である。
【図2】無線ネットワーク1、2が形成する通信エリアと、この実施の形態の無線端末装置100が行うハンドオーバー処理とを説明するための図である。
【図3】実施の形態の無線端末装置100の構成例を説明するためのブロック図である。
【図4】接続設定メモリ123に予め格納される無線端末装置100が接続可能とされるアクセスポイントについての設定情報の例について説明するための図である。
【図5】実施の形態の無線端末装置100において実行されるハンドオーバー処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、この発明の装置、方法、プログラムの一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、無線LANを用いて形成する電話システムに用いられる無線端末装置に、この発明の装置、方法、プログラムを適用した場合を例にして説明する。また、以下に説明する電話システムにおいて用いられる無線LANは、例えば、IEEE802.11規格に対応するもの、あるいは、その後継規格に対応するものである。
【0018】
[電話システムの概要]
図1は、この実施の形態の電話システムの構成例を説明する説明するためのブロック図である。この実施の形態の電話システムは、図1において点線で示したように、無線ネットワーク1と無線ネットワーク2とからなるものである。無線ネットワーク1は、サーバ10に対してハブHBを介してアクセスポイント(図1ではAPと記載。)11、12が接続されて形成された部分である。また、無線ネットワーク2は、サーバ10に対してハブHBおよびルータ20を介してアクセスポイント(図1ではAPと記載。)21、22が接続されて形成された部分である。
【0019】
サーバ10は、図1には図示しないが、他のIP(Internet Protocol)網に接続されており、無線ネットワーク1のデフォルトゲートウェイとして用いられるものである。デフォルトゲートウェイは、所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される「出入り口」の代表となる機能を実現するものである。すなわち、サーバ10は、無線ネットワーク1から他のネットワークへアクセスする際の出入り口となるものである。
【0020】
ハブHBは、無線ネットワークにおけるいわゆる集線装置である。また、ルータ20は、無線ネットワーク2を流れる信号を他の無線ネットワーク(この実施の形態においては無線ネットワーク1)に中継する機器である。したがって、図1に示した電話システムの場合、ルータ20は、無線ネットワーク2のデフォルトゲートウェイとして機能するものである。
【0021】
また、無線ネットワーク1のアクセスポイント11、12、および、無線ネットワーク2のアクセスポイント21、22のそれぞれは、無線端末装置との間で通信を行うことにより、無線端末装置を各アクセスポイントが属する無線ネットワークに接続するためのものである。すなわち、アクセスポイント11、12、21、22のそれぞれは、自機が属する無線ネットワークと無線端末装置とを接続する電波中継器としての機能を実現するものである。なお、この実施の形態において、無線端末装置は、詳しくは後述もするが、電話通信を可能にするための携帯型の音声端末装置として機能するものである。
【0022】
そして、この実施の形態においては、図1に示すように、サーバ10のIPアドレスは「192.168.1.1」であり、ハブHBを介してサーバ10に接続されるアクセスポイント11、12のIPアドレスは、「192.168.1.XXX」となる。また、アクセスポイント11、12を通じて無線ネットワーク1に接続される無線端末装置100のIPアドレスもまた、「192.168.1.XXX」となる。そして、IPアドレスの「XXX」の部分が、アクセスポイントや無線端末装置によって変えられることになる。
【0023】
また、この実施の形態において、図1に示すように、ルータ20のIPアドレスは「192.168.2.1」であり、ルータ20に接続されるアクセスポイント21、22のIPアドレスは、「192.168.2.XXX」となる。また、アクセスポイント21、22を通じて無線ネットワーク1に接続される無線端末装置100のIPアドレスもまた、「192.168.2.XXX」となる。そして、IPアドレスの「XXX」の部分が、アクセスポイントや無線端末装置によって変えられることになる。
【0024】
なお、図1において、点線のブロックで示したように、無線ネットワーク毎にDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバが設けられ、これによって、アクセスポイントや無線端末装置に対してIPアドレス等の情報を付与することもできる。DHCPサーバは、ネットワークに一時的に接続する機器に、IPアドレスなどの必要な情報を自動的に割り当てる機能を有するサーバ装置である。なお、この実施の形態の電話システムにおいては、説明を簡単にするため、DHCPサーバは用いずに、例えば、サーバ10やルータ20によって、予め用意されているIPアドレスがアクセスポイントや無線端末装置に付与されるものとして説明する。
【0025】
そして、この実施の形態の電話システムにおいては、いずれかのアクセスポイントに接続している無線端末装置が、待ち受け状態以外の状態であるときに、アクセスポイントを変更するハンドオーバーを行う場合に制限を設けている。具体的には、無線端末装置が待ち受け状態以外の状態である通話中において、現在接続しているアクセスポイントと同じ無線ネットワークのアクセスポイント以外には、ハンドオーバーすることができないようにしている。
【0026】
例えば、図1のように、無線端末装置100がアクセスポイント11を通じて通話を行っている場合のアクセスポイント12へのハンドオーバーやアクセスポイント12を通じて通話を行っている場合のアクセスポイント11へのハンドオーバーは可能にする。しかし、無線端末装置100がアクセスポイント11または12を通じて通話を行っている場合に、無線ネットワーク2のアクセスポイント21または22へのハンドオーバーは行えないようにする。
【0027】
同様に、図1のように、無線端末装置100がアクセスポイント21を通じて通話を行っている場合のアクセスポイント22へのハンドオーバーやアクセスポイント22を通じて通話を行っている場合のアクセスポイント21へのハンドオーバーは可能にする。しかし、無線端末装置100がアクセスポイント21または22を通じて通話を行っている場合に、無線ネットワーク1のアクセスポイント11または12へのハンドオーバーは行えないようにする。
【0028】
このようにするのは、通話のために接続している無線ネットワークが変わることにより、無線端末装置100のIPアドレス等の設定情報が変わってしまうことによって通話が途切れてしまうことを防止するためである。
【0029】
図2は、無線ネットワーク1、2が形成する通信エリアと、この実施の形態の無線端末装置100が行うハンドオーバー処理とを説明するための図である。図2に示すように、アクセスポイント11との間で通信が可能となるエリアとアクセスポイント12との間で通信が可能となるエリアとによって、無線ネットワーク1の通信エリアが形成される。同様に、アクセスポイント21との間で通信が可能となるエリアとアクセスポイント22との間で通信が可能となるエリアとによって、無線ネットワーク2の通信エリアが形成される。
【0030】
そして、図2に示すように、アクセスポイント11との間で通信が可能なエリアにおいて、無線端末装置100がアクセスポイント11に接続して通話を行っているときに、点線矢印で示したように、携帯電話端末100を持つユーザが移動したとする。この場合、無線端末装置100の移動先が、アクセスポイント12との間で通信が可能となるエリアと、アクセスポイント21との間で通信が可能となるエリアの重複エリアであったとする。
【0031】
したがって、移動先において無線端末装置100は、アクセスポイント12への接続も可能であるし、アクセスポイント21への接続も可能となる。しかし、この場合、無線端末装置100は、自機の状態が通話中であることを考慮し、現在接続中のアクセスポイント11と同じ無線ネットワーク1内のアクセスポイント12へのハンドオーバーを可能にする。そして、図2において×印で示したように、現在接続中のアクセスポイント11とは異なる無線ネットワーク2内のアクセスポイント21へのハンドオーバーは出来ないように制限する。
【0032】
なお、ここでは、無線端末装置100が通話中であるものとして説明したが、これに限るものではない。携帯電話端末100が待ち受け状態以外のとき、例えば、発信中、着信中、保留中など、現在の動作状態(通信回線の接続状態)を維持すべき状態であるときには、異なる無線ネットワークのアクセスポイントへのハンドオーバーは出来ないようにする。
【0033】
このようにすることによって、完全に圏外になってしまった場合は別として、本来であれば、通話中、発信中、着信中、保留中などの動作状態が維持できた状況において、当該動作状態が維持できなくなって、電話が切れる、電話が繋がらないといった不都合を防止することが出来るようにしている。
【0034】
[無線端末装置100の構成例]
次に、この実施の形態の無線端末装置100の構成例について説明する。この実施の形態の無線端末装置100は、この発明の装置、方法、プログラムの一実施の形態が適用されたものである。図3は、この実施の形態の無線端末装置100の構成例を説明するためのブロック図である。
【0035】
図3に示すように、この実施の形態の無線端末装置100は、無線通信処理系として、送受信アンテナ101、無線モジュール102、パケット分解/生成部103、音声データ入出力インターフェース(以下、音声入出力I/Fと略称する。)104を備えている。音声入出力I/F104には、出力音声アンプ105を通じて受話器(スピーカ)106が接続され、また、入力音声アンプ108を通じて送話器(マイクロホン)107が接続されている。
【0036】
また、無線端末装置100は、この実施の形態の無線端末装置100の各部を制御する制御部110を備えている。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)114が、CPUバス115を通じて接続されて形成されたマイクロコンピュータである。
【0037】
ここで、CPU111は、ROM112に記憶されているプログラムを読み出して実行し、各部に供給する制御信号を形成して、これを各部に供給したり、各部から送信されてくるデータを受け付けて、これに応じた処理を実行したりする。ROM112は、CPU111において実行されるプログラムや処理に必要になる種々のデータが予め記録されたものである。
【0038】
また、RAM113は、処理の途中結果を一時記憶するなど、主に作業領域として用いられるものである。また、EEPROM114は、いわゆる不揮発性メモリであり、無線端末装置100の電源を落としても保持しておくべきデータ等が記憶保持される。EEPROM114には、例えば、種々の設定パラメータ、電話帳データ、アプリケーションプログラムや機能アップのための追加プログラムなどが記憶保持される。
【0039】
さらに、無線端末装置100は、ハンドオーバー制御を適切に行うようにする部分として、端末状態管理部121と、無線接続情報管理部122と、接続設定メモリ123とを備えている。ここで、端末状態管理部121は、制御部110の状態を監視することによって、自機が待ち受け状態にあるのか、通話状態にあるのか、発信状態にあるのか、着信状態にあるのか、保留中の状態にあるのか等を細かく管理することが出来るものである。すなわち、端末状態管理部121は動作状態管理手段としての機能を実現するものである。
【0040】
無線接続情報管理部122は、詳しくは後述もするが、無線端末装置100が接続可能なアクセスポイント毎の接続のための設定情報が記憶保持された接続設定メモリ123の情報に基づいて、ハンドオーバーを適切に行うことができるようにするものである。具体的に、無線接続情報管理部122は、制御部110等と協働し、接続中のアクセスポイントからの信号の受信感度が既定値以下になるなど、通信状態が悪化した場合に、接続設定メモリ123の設定情報に基づいて、新たに接続先となるアクセスポイントを指示するようにするものである。すなわち、無線接続情報管理部122は設定情報変更手段としての機能を実現するものであり、接続情報メモリ123が、設定情報記憶手段としての機能を実現している。
【0041】
また、無線端末装置100は、ユーザインターフェースを構成する部分として、キー操作部131、LCD(Liquid Crystal Display)制御部132及び表示部としてのLCD133、音声処理部134及びスピーカ135を備えている。
【0042】
そして、自機宛の着信メッセージ(着信パケットデータ)は、送受信アンテナ101及び無線モジュール102を通じて受信され、通信モジュール102において自機おいて処理可能な形式のデータに変換されて制御部110に供給される。制御部110は、無線モジュール102からの着信メッセージをパケット分解/生成部103に供給する。
【0043】
パケット分解/生成部103は、当該着信メッセージをパケット分解して、ヘッダ部やデータ部などを分離し、これを制御部110に供給する。制御部110は、パケット分解された自機宛ての着信メッセージを受け取るとこれを解析し、自機宛ての着信メッセージであることを認識する。この場合、制御部110は、LCD制御部132を制御して、当該着信メッセージに含まれる発信元に関する情報をLCDに表示する。また、制御部110は、音声処理部134を制御して、スピーカ135から着信音を放音する。
【0044】
これにより、無線端末装置100のユーザが着信に気付き、キー操作部131を通じて、着信に応答する操作(オフフック操作)を行うと、通話回線を接続するための応答メッセージを形成し、これをパケット分解/生成部103に供給する。パケット分解/生成部103は、これに供給された応答メッセージをパケット化して送信パケットを形成し、これを制御部110を通じて無線モジュール102に供給する。無線モジュール102はパケット化された応答メッセージを増幅するなどの所定の処理を行って、送受信アンテナ101を通じて発呼元に送信する。これにより、通話回線が接続するようにされる。
【0045】
そして、相手先からのパケット化された音声データは、送受信アンテナ101及び無線モジュール102を通じて受信され、制御部110を経由してパケット分解/生成部103に供給される。そして、パケット分解/生成部103ではパケット化された音声データをパケット分解し、ヘッダ部やデジタル音声データが格納されたデータ部を分離する。このようにして、パケット分解/生成部103においてパケット分解されたデジタル音声データは、制御部110を通じて音声データ入出力I/F104に供給される。
【0046】
音声データ入出力I/F104は、制御部110からのデジタル音声データをD/A(Digital/Analog)変換して、アナログ音声信号を形成し、これを出力音声アンプ105を通じてスピーカ106に供給する。これにより、相手先から送信されてきた音声データに応じた音声が、スピーカ106から放音され、無線端末装置100のユーザに聴取される。
【0047】
一方、無線端末装置100のユーザの発する音声は、マイクロホン107により集音され、入力音声アンプ108で増幅されて音声データ入出力I/F104に供給される。音声データ入出力I/F104は、入力音声アンプからの音声信号をA/D(Analog/Digital)変換してデジタル音声データを形成し、これを制御部110を通じてパケット分解/生成部103に供給する。
【0048】
パケット分解/生成部103は、供給されたデジタル音声データをパケット化して、送信用のパケットデータを生成し、これを制御部110を通じて無線モジュール102に供給する。無線モジュール102は、制御部110を通じて供給される送信用のパケットデータを増幅処理するなどの所定の処理を行って、これを送受信アンテナ101を通じて相手先に送信するようにする。
【0049】
このようにして、相手先からの音声データを受信してスピーカ106を通じて再生して聴取し、自己の音声をマイクロホン107で集音し、これをパケット化して相手先に送信すると言う処理を繰り返すことにより、通話を行うことができるようにされる。
【0050】
また、自機から電話を掛ける場合には、キー操作部131を通じて、電話番号を入力し、オフフック操作して発信するようにすると、制御部110が発信メッセージを形成して、パケット分解/生成部103に供給する。パケット分解/生成部103は、当該発信メッセージをパケット化して送信用のパケットデータを形成し、これを制御部110を通じて無線モジュール102に供給する。
【0051】
無線モジュール102はパケット化された発信メッセージの供給を受けて、これを増幅処理するなどの所定の処理を行い、送受信アンテナ101を通じて相手先に送信するようにする。これにより、相手先から応答メッセージが帰ってきたら通話回線を接続し、上述したようにして通話を行うことができるようにされる。
【0052】
そして、この実施の形態の無線端末装置100の無線モジュール102は、受信するアクセスポイントからの信号の受信レベル(受信電界強度)を検出して、これを制御部110に通知することが出来るものある。制御部110は、接続中のアクセスポイントからの信号の受信レベルが既定値以下になり、アクセスポイントとの間の通信状態が悪くなったことを認識すると、無線接続情報管理部122と協働し、ハンドオーバー処理を行う。
【0053】
すなわち、無線接続情報管理部122は、制御部110から接続中のアクセスポイントとの通信状態が悪化したことの通知を受けると、接続設定メモリ123に格納されている設定情報の中から、変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を取得する。すなわち、無線接続情報管理部122は、次の接続先となる可能性のあるアクセスポイントについての設定情報を接続設定メモリ123に格納されている各アクセスポイントについての設定情報の中から取得する。
【0054】
[接続設定メモリ123の設定情報の具体例]
図4は、接続設定メモリ123に予め格納される無線端末装置100が接続可能とされるアクセスポイントについての設定情報(接続設定情報)の例について説明するための図である。図4に示すように、接続設定メモリ123には、無線端末装置100が接続可能な全てのアクセスポイントについての設置情報が保持されている。この例の場合、図4に示すように、各アクセスポイントについての設定情報は、SSID、セキュリティ、自己のIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイのIPアドレスからなっている。
【0055】
SSID(Service Set Identifier)は、無線LANにおけるアクセスポイントの識別子である。したがって、図4に示したように、各アクセスポイントのSSIDは、SSID−AP11、SSID−AP12、SSID−AP21、SSID−AP22と言うように、各アクセスポイントを識別可能なものとなっている。
【0056】
セキュリティは、各アクセスポイントで用いられる暗号化の方式を示すものである。図4に示したように、アクセスポイント11とアクセスポイント21では、暗号化方式としてWEP128bit(Wired Equivalent Privacy 128bit)が用いるようにされている。また、アクセスポイント12とアクセスポイント22では、WPA−PSK(Wi-Fi Protected Access Pre-Shared Key)が用いるようにされている。
【0057】
また、IPアドレスは各アクセスポイントに割り当てられたIPアドレスである。そして、図4に示したように、アクセスポイント11とアクセスポイント12とのIPアドレスは、「192,168.1.10」とされ、アクセスポイント21とアクセスポイント22とのIPアドレスは、「192,168.2.10」とされている。
【0058】
また、サブネットマスクは、IPアドレスのうちネットワークアドレスとホストアドレスを識別するための数値である。図4に示した例の設定情報においては、いずれのアクセスポイントのサブネットマスクも、「255.255.255.0」である。これは、IPアドレスの内、前方24ビットをネットワークアドレスとして認識し、後方8ビットをホストアドレスとして認識するようにするものである。したがって、アクセスポイント11のIPアドレスである「192.168.1.10」の内、前方24ビットの「192.168.1」部分までがネットワークアドレスであり、後方8ビットの「10」部分がホストアドレスとして認識されることになる。
【0059】
また、デフォルトゲートウェイのIPアドレスは、各アクセスポイントが属する無線ネットワークのデフォルトゲートウェイに割り当てられたIPアドレスである。したがって、アクセスポイント11とアクセスポイント12のデフォルトゲートウェイのIPアドレスは、サーバ10のIPアドレスである「192.168.1.1」が設定されている。また、アクセスポイント21とアクセスポイント22のデフォルトゲートウェイのIPアドレスは、ルータ20のIPアドレスである「192.168.2.1」が設定されている。
【0060】
そして、図4において最下段に示したネットワークエリアが、各アクセスポイントが属する無線ネットワークを識別するために新たに付加するようにされたものである。そして、図1に示したように、アクセスポイント11とアクセスポイント12とは、サーバ10に接続され、無線ネットワーク1を形成するものであるので、ネットワークエリアの欄には、ずれも無線ネットワークの識別情報として値「1」がセットされている。また、アクセスポイント21とアクセスポイント22とは、ルータ20に接続され、無線ネットワーク2を形成するものであるので、ネットワークエリアの欄には、ずれも無線ネットワークの識別情報として値「2」がセットされている。
【0061】
そして、無線接続情報管理部122は、図4に示したように接続設定メモリ123に格納されている各アクセスポイントについての設定情報の中から、変更先の候補となるアクセスポイントについての設定情報を取得する。そして、無線接続情報管理部122は、端末状態管理部121が管理している自機の動作状態をも考慮して、取得した設定情報を用いて接続先のアクセスポイントを変更するか否かを判別する。
【0062】
すなわち、無線接続情報管理部122は、端末状態管理部121の管理状態が待ち受け状態にあることを示しているときには、取得した設定情報を用いて接続先のアクセスポイントを変更するようにする。しかし、端末状態管理部121の管理状態が待ち受け状態以外にあることを示しているときには、取得した設定情報のネットワークエリアの情報に応じて、無線接続情報管理部122が行う処理内容が異なる。
【0063】
すなわち、待ち受け状態以外のときに、取得した設定情報が、現在接続中のアクセスポイントと同じ無線ネットワークに属するアクセスポイントについてのものである場合には、取得した設定情報を用いて接続先のアクセスポイントを変更するようにする。しかし、待ち受け状態以外のときに、取得した設定情報が、現在接続中のアクセスポイントとは異なる無線ネットワークに属するアクセスポイントについてのものである場合には、取得した設定情報を用いないようにする。そして、再度、他の変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を取得するようにする。
【0064】
このように、無線接続情報管理部122は、制御部110及び端末状態管理部121と協働して、ハンドオーバー処理を行う。この場合、無線接続情報管理部122は、自機が待ち受け状態以外のときに接続中のアクセスポイントとの通信状態が悪化した場合には、現在接続中のアクセスポイントが属する無線ネットワークに属するアクセスポイントへの変更のみを可能にするようにしている。
【0065】
これにより、待ち受け状態以外の状態である、通話中、着信中、発信中、保留中など、その動作状態(通信状態)を維持すべき状態にあるときに、他の無線ネットワークのアクセスポイントにハンドオーバーすることにより、その動作状態が維持できなくなることを防止している。
【0066】
なお、図3において、二重線のブロックで示した端末状態管理部121や無線接続情報管理部122の機能は、制御部110のCPU111によって実行されるソフトウェアによって実現することもできる。すなわち、端末状態管理部121や無線接続情報管理部122の機能は、ソフトウェアによって、制御部110の機能として実現することもできる。
【0067】
[無線端末装置100のハンドオーバー時の動作]
次に、この実施の形態の無線端末装置100において行われるハンドオーバー処理について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。図5は、この実施の形態の無線端末装置100において実行されるハンドオーバー処理について説明するためのフローチャートである。
【0068】
この図5に示すフローチャートの処理は、無線モジュール102において検出されるアクセスポイントからの信号(電波)の受信感度が既定値以下になったことを制御部110が認識した場合に、主に無線接続情報管理部122によって実行される処理である。この場合、無線接続情報管理部122は、制御部110、端末状態管理部121と協働して、図5に示す処理を実行する。
【0069】
すなわち、無線接続情報管理部122は、制御部110から現在接続中のアクセスポイントからの信号の受信感度が既定値以下に低下したことの通知を受けた場合に、図5に示す処理を実行する。この場合、無線接続情報管理部122は、まず、参照した設定情報の数を把握するための変数iに値「1」を設定する(ステップS1)。
【0070】
そして、無線接続情報管理部122は、接続設定メモリ123に登録されている図4に示した各アクセスポイントについての設定情報を順次に参照するようにして、変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を取得する(ステップS2)。この場合、無線接続情報管理部122は、予め決められた順番で順次に、接続設定メモリ123に格納されている設定情報を取得する。
【0071】
例えば、現在接続中のアクセスポイントがアクセスポイント12であったする。この場合、無線接続情報管理部122は、例えば、アクセスポイント21→アクセスポイント22→アクセスポイント11→アクセスポイント12と言う順番で、変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を取得する。もちろん、この順番は一例であり、上述の例と逆となる順番で設定情報を取得するようにするなど、種々の順番を用いることが可能である。このように、予め決められた順番で、設定情報を取得するようにするのは、同じ設定情報を重複して取得することがないようにするためである。
【0072】
次に、無線接続情報管理部122は、端末状態管理部121が管理している現在の無線端末装置100の動作状態は待ち受け状態か否かを判別する(ステップS3)。待ち受け状態であれば、現在接続しているアクセスポイントが属する無線ネットワークとは異なる他の無線ネットワークのアクセスポイントにハンドオーバーしても、回線が切断されるなどの問題を生じない。このため、ステップS3において、無条件にハンドオーバー可能か否かを判別しているのである。
【0073】
ステップS3の判別処理において、現在の無線端末装置100の動作状態は待ち受け状態ではないと判断したとする。この場合、無線接続情報管理部122は、ステップS2で取得した変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報のネットワークエリアの欄に設定されているネットワークの識別情報を確認する。そして、当該変更先の候補となるアクセスポイントは、現在接続しているアクセスポイントと同一の無線ネットワークに属するものか否かを判別する(ステップS4)。
【0074】
なお、ステップS4において比較の対象となる現在接続しているアクセスポイントの設定情報は、制御部110のRAM113あるいはEEPROM114に格納され、無線モジュール102を通じてのアクセスポイントとの接続に用いられている。また、ステップS4の判別処理を行うのは、同一の無線ネットワーク内でのハンドオーバーであれば、回線が切断されるなどの問題を生じないため、自機が待ち受け状態以外のときにおいてハンドオーバー可能な場合に該当するか否かを判別しているのである。
【0075】
ステップS4の判別処理において、当該変更先の候補となるアクセスポイントは、現在接続しているアクセスポイントと同一の無線ネットワークに属するものではないと判別したときには、無線接続情報管理部122は、「変数i=接続設定数」となったか否かを判別する(ステップS5)。
【0076】
ここで、「接続設定数」は、接続設定メモリ123に登録されているアクセスポイント単位の設定情報の数を意味する。すなわち、この実施の形態の無線端末装置100において、接続設定メモリ123に登録されているアクセスポイント単位の設定情報の数は、接続可能なアクセスポイント数に対応して4つである。このため、この実施の形態において、「接続設定数」は「4」となる。このように、設定情報の数分のループ処理を限度とするのは、無駄に処理を繰り返さないようにするためである。
【0077】
そして、ステップS5の判断処理において、「変数i=接続設定数」となっていないと判別したときには、無線接続情報管理部122は、変数iに1を加算し(ステップS6)、ステップS2からの処理を繰り返すようにする。これにより、次の変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報について、上述したように、新たな接続先のクセスポイントの設定情報として用いることができるか否かを判別する対象とすることができるようにされる。
【0078】
そして、上述したステップS3の判別処理において、現在の無線端末装置100の動作状態は待ち受け状態であると判断したとする。この場合には、変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を用いて接続するアクセスポイントを変更するように制御部110に通知する(ステップS7)。上述したように、待ち受け状態であれば、どのアクセスポイントにハンドオーバーしても、回線が切断されるなどの問題を生じないためである。
【0079】
これにより、制御部110は、ステップS7で通知された設定情報を用いて、接続先のアクセスポイントを変更するようにし、その変更後のアクセスポイントとの間で無線接続を開始する(ステップS8)。そして、この図5に示した処理を終了する。
【0080】
同様に、上述したステップS4の判別処理において、当該変更先の候補となるアクセスポイントは、現在接続しているアクセスポイントと同一の無線ネットワークに属するものであると判別したときにも、ステップS7からの処理を行う。上述もしたように、同一の無線ネットワーク内であれば、ハンドオーバーしても通信回線が切断されるなどの問題を生じさせないためである。
【0081】
これにより、この場合にも、変更先の候補となるアクセスポイントの設定情報を用いて接続先のアクセスポイントを変更するように制御部110に通知する(ステップS7)。これにより、制御部110は、ステップS7で通知された設定情報を用いて、接続先のアクセスポイントを変更するようにし、その変更後のアクセスポイントとの間で無線接続を開始する(ステップS8)。そして、この図5に示した処理を終了する。
【0082】
また、ステップS5の判断処理において、「変数i=接続設定数」となったと判別したときには、無線接続情報管理部122は、ステップS8からの処理を行う。すなわち、この場合には、接続先のアクセスポイントを変更することなく、現在接続中のアクセスポイントとの間で通信を維持するようにし(ステップS8)、この図5に示す処理を終了する。この場合には、無線ネットワークに1つしかアクセスポイントが存在しない場合において、無理に他の無線ネットワークのアクセスポイントに接続先を変更することがないようにすることが出来る。
【0083】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の無線端末装置100は、自機の動作状態を常時適正に管理している。そして、ハンドオーバーすると都合の悪い状態、例えば、通話中、発信中、着信中、保留中などの場合には、現在接続しているアクセスポイントとは異なる無線ネットワークのアクセスポイントにはハンドオーバーしないようにすることが出来る。
【0084】
すなわち、無線端末装置100が、待ち受け状態以外の状態にあるときに、接続中のアクセスポイントの圏外になってしまうなどの状態が発生した場合に、他の無線ネットワークのアクセスポイントからの信号の電波状態が良くても、当該他の無線ネットワークのアクセスポイントにハンドオーバーしないようにすることができる。
【0085】
また、上述したように、システム全体を変更することなく、無線端末装置100のハンドオーバー処理を上述したようにするだけで、通話中に通信路が切断されるなどの不都合を防止することが出来る。すなわち、ハンドオーバーを行うことによって、維持しておくべき動作状態(通信状態)が維持できなくなると言う不都合を防止することが出来る。
【0086】
また、アクセスポイントの設置位置を精密に設定したり、アクセスポイントから送信する電波の電波強度を非常に細かく調整したりするなどといった手間や時間のかかる処理を行う必要もないようにすることが出来る。そして、アクセスポイントを増やしたり、あるいは、アクセスポイントから送信する電波の電波強度を若干強くしたりしておくことによって、アクセスポイントとの接続が困難なエリアを極力少なくすることが出来る。これに加えて、上述したように、ハンドオーバー時に発生する不都合を発生させないようにすることが出来る。
【0087】
したがって、従来にもまして柔軟に、良好に通信が可能なエリアを安定して確保することが可能な信頼性の高い無線ネットワークシステムを構築することが出来る。
【0088】
[この発明の方法、プログラム]
そして、上述した実施形態からも分かるように、主に無線接続情報管理部122が行う処理が、この発明による方法、プログラムに対応するものである。具体的には、図5に示したフローチャートを用いて説明した処理方法が、この発明の方法、プログラムの一実施形態に対応するものである。
【0089】
なお、図5に示したフローチャートの処理は、あくまでも、この発明の方法、プログラムの一実施形態である。要は、接続中のアクセスポイントからの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、接続設定メモリ123から現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報を新たに用いる設定情報として選択する種々の方法、プログラムがこの発明に該当する。
【0090】
[その他]
なお、上述した実施の形態においては、無線端末装置として電話通信を行うための携帯型の音声端末装置であるものとして説明したが、これに限るものではない。この発明は、上述したように、電話通信を行う音声端末装置に適用して好適なものである。しかし、この発明は、音声通信は行わないPDA(Personal Digital Assistants)などと呼ばれる個人用情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ、電子ブックリーダー装置など、無線LANに接続可能な種々の無線端末装置に適用することができる。この場合、データのダウロード中やアップロード中に移動しても、不必要に通信回線が切断され、データの送受が中断されることを防止することが出来る。
【0091】
また、上述もしたように、接続設定メモリ123が設定情報記憶手段としての機能を実現し、端末状態管理部121が動作状態管理手段としての機能を実現し、主に無線接続情報管理部122が、設定情報変更手段としての機能を実現している。
【0092】
そして、制御部110が、無線接続情報管理部122からの制御に応じて、無線モジュール102を制御し、通信路の接続や情報の送受信の制御を行う無線制御部としての機能をも実現している。
【0093】
また、上述した実施の形態においては、無線端末装置100において、受話器用のスピーカ106と、着信音や警告音を放音するためのスピーカ135とを設けるようにしたが、これに限るものではない。受話器用のスピーカ106を着信音や警告音を放音するスピーカとして兼用するように構成することもできる。この場合には、音声データ入出力I/F104、出力音声アンプ105、スピーカ106を通じて着信音や警告音を放音するようにすればよい。
【0094】
また、受話器用のスピーカ106と、着信音や警告音を放音するためのスピーカ135とを設けるが、音声処理部134は設けずに、音声データ入出力I/F104と出力音声アンプ105とを、スピーカ106とスピーカ135とで共用するように構成することも可能である。この場合、通話時か着信などの報知時かに応じて、音声を放音するスピーカを制御部110が切り換えることができるようにしておけばよい。
【符号の説明】
【0095】
1、2…無線ネットワーク、10…サーバ、HB…ハブ、11、12…アクセスポイント、20…ルータ、21、22…アクセスポイント、100…無線端末装置、101…送受信アンテナ、102…無線モジュール、103…パケット分解/生成部、104…音声入出力I/F、105…出力音声アンプ、106…受話器(スピーカ)、107…送話器(マイクロホン)、108…入力音声アンプ、110…制御部、111…CPU、112…ROM、113…RAM、114…EEPROM、115…CPUバス、121…端末状態管理部、122…無線接続情報管理部、123…接続設定メモリ、131…キー操作部、132…LCD制御部、133…LCD、134…音声処理部、135…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される機器に対して1以上の電波中継器が接続されて形成される複数のネットワークに接続可能な無線端末装置であって、
前記電波中継器が属するネットワークの識別情報を含み、前記電波中継器に接続するために前記電波中継器のそれぞれ毎に設けられる設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
自機の動作状態を管理する動作状態管理手段と、
接続中の電波中継器からの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、前記動作状態管理手段での自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、前記設定情報記憶手段に記憶されている前記設定情報から、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報を新たに用いる設定情報として選択する設定情報変更手段と
を備えることを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線端末装置であって、
前記設定情報変更手段は、前記動作状態管理手段での自機の動作状態が待ち受け状態である場合には、最初に取得した変更先の候補となる設定情報を新たに用いる設定情報として選択することを特徴とする無線端末装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線端末装置であって、
前記動作状態管理手段で管理される前記待ち受け状態以外の動作状態は、通話中、発信中、着信中、保留中などの現在の動作状態を維持すべき状態であることを特徴とする無線端末装置。
【請求項4】
所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される機器に対して1以上の電波中継器が接続されて形成される複数のネットワークに接続可能な無線端末装置において自機が接続する電波中継機を切り換える場合のハンドオーバー制御方法であって、
前記電波中継器が属するネットワークの識別情報を含み、前記電波中継器に接続するために前記電波中継器のそれぞれ毎に設けられる設定情報を記憶する設定情報記憶手段を備えており、
自機の動作状態を、動作状態管理手段を通じて管理する動作状態管理工程と、
接続中の電波中継器からの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、前記動作状態管理工程においての自機の動作状態が待ち受け状態以外の場合には、設定情報変更手段が、前記設定情報記憶手段に記憶されている前記設定情報から、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有する設定情報を新たに用いる設定情報として選択する設定情報変更工程と
を有することを特徴とするハンドオーバー制御方法。
【請求項5】
所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される機器に対して1以上の電波中継器が接続されて形成される複数のネットワークに接続可能な無線端末装置に搭載されたコンピュータが、自機が接続する電波中継機を切り換える場合に実行するハンドオーバー制御プログラムであって、
前記電波中継器が属するネットワークの識別情報を含み、前記電波中継器に接続するために前記電波中継器のそれぞれ毎に設けられる設定情報を記憶する設定情報記憶手段を備えており、
接続中の電波中継器からの信号の受信レベルが既定値以下になった場合に、
前記設定情報記憶手段に記憶されている複数の前記設定情報を順次に参照するようにして、次に用いる設定情報の候補を取得する第1のステップと、
自己の動作状態を判別する第2にステップと、
前記第2のステップの判別結果が、待ち受け状態以外の場合には、前記第1のステップで取得した前記設定情報の候補が、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有するものか否かを判別する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて、前記第1のステップで取得した前記設定情報の候補が、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有するものであると判別したときに、当該設定情報の候補を新たな設定情報として設定する第4のステップと
を実行し、
前記第3のステップにおいて、前記第1のステップで取得した前記設定情報の候補が、現在用いている設定情報と同じネットワークの識別情報を有するものではないと判別したときには、前記第1のステップからの処理を繰り返すようにしたことを特徴とするハンドオーバー制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70296(P2012−70296A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214673(P2010−214673)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】