説明

無線端末

【課題】ネットワーク負荷を増大させること無く、ゲートウェイの負荷分散を考慮した接続経路を選択することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、無線アドホックネットワークを構成する無線端末は、該無線アドホックネットワークを構成する複数のゲートウェイのうち、接続可能なゲートウェイを特定する接続候補特定部と、該接続可能なゲートウェイのうち、ランダムに1つのゲートウェイを選択するゲートウェイ選択部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アドホックネットワークを構築する無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
無線アドホックネットワークを構築する各無線端末は、ゲートウェイへの経路情報を周辺端末から受信することにより、接続するゲートウェイを選択する。ここで無線アドホックネットワークとは、無線端末同士が自動的にネットワーク網を構築し、バケツリレー式にデータを目標まで伝達する無線ネットワークである。またゲートウェイとは、有線網と無線網とのインターフェースとなる装置である。
【0003】
有線網と直接接続するゲートウェイは、有線網の設置された場所に設置範囲が限定されるため、設置の自由度が低い。一方無線端末は設置の自由度が高いため、地理的に偏って配置される可能性がある。ゲートウェイの設置場所に対し、無線端末が偏って配置されている場合、特定のゲートウェイに接続が偏ることにより、ネットワーク負荷が集中する可能性がある。そこで特定のゲートウェイへのネットワーク負荷の偏りをなくすため、負荷分散が必要となる。特許文献1および2には、無線端末からゲートウェイへの接続経路の選択に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4202865号公報
【特許文献2】特開2009−81854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線端末からゲートウェイへの接続経路選択のために、無線端末とゲートウェイとの間でメッセージをやり取りすることは、無線リソースの増大の原因となる。また、ゲートウェイが通知する経路情報パケットである、HELLOパケットの到達範囲(ホップ数)をゲートウェイへの負荷に応じて変えると、無線端末とゲートウェイとの接続が不安定となる。
【0006】
本技術では、ネットワーク負荷を増大させること無く、ゲートウェイの負荷分散を考慮した接続経路を選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、受信したパケットから、複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを検出する制御パケット検出部と、制御パケット検出部により検出された制御パケットの送信元ゲートウェイから接続候補となるゲートウェイを複数特定する接続候補特定部と、接続候補選定部により選定されたゲートウェイのうち、任意に1つのゲートウェイを選択するゲートウェイ選択部を有する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、ネットワーク負荷を増大させること無く、ゲートウェイの負荷分散を考慮した接続経路を選択することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無線アドホックネットワークシステム1のブロック図である。
【図2】無線端末12のハードウェアブロック図である。
【図3】無線端末12の機能ブロック図である。
【図4】HELLOパケット5のデータ構造図である。
【図5】無線端末12の接続先ゲートウェイ11の選択処理フローである。
【図6】経路コストに対するゲートウェイ11の数の分布図である。
【図7】無線端末12aの機能ブロック図である。
【図8】制御部25による統計情報計算処理の詳細フローである。
【図9】ゲートウェイ11への接続経路の絞り込みを説明するイメージ図である。
【図10】ゲートウェイ11への接続経路の絞り込み処理フローである。
【図11】本実施例の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0011】
図1は無線アドホックネットワークシステム1のブロック図である。無線アドホックネットワークシステム1は、有線網10、複数のゲートウェイ(GW)11、複数の無線端末12を有する。有線網10とゲートウェイ11を接続する実線は有線接続を示し、無線端末12間および無線端末12とゲートウェイ11を接続する点線は無線接続を示す。
【0012】
有線網10は有線接続により構成されるネットワーク通信網である。複数の無線端末12は、無線アドホックネットワークを構築する機能を有する。ゲートウェイ11は有線網10と無線アドホックネットワークとの接続を中継するインターフェースとして機能する。
【0013】
無線アドホックネットワークを構築する複数の無線端末12は、それぞれ自律的にネットワークを構築する。各無線端末12は、ゲートウェイ11との接続経路における経路コストに基づいて、接続可能な複数のゲートウェイ11のうち、1つのゲートウェイ11をランダムに選択する。本実施例において経路コストとは、無線端末12からゲートウェイ11までの経路の長さ、または無線端末12からゲートウェイ11までのホップ数などにより決定する値である。また経路コストは、受信電力の累積値、データの誤り率、HELLOパケットの受信タイミングのずれなどをパラメータとして算出する値としてもよい。
【0014】
各無線端末12はゲートウェイ11までの経路構築のためのメッセージとして、経路情報パケットであるHELLOパケットを報知する。HELLOパケットを受信した他の無線端末12は、無線端末12からゲートウェイ11までの経路コストを計算する。無線端末12は計算した経路コストをHELLOパケットとして報知する。各無線端末12は、HELLOパケットの受信および報知を繰り返しながら自律的に無線アドホックネットワークを構築する。無線端末12および無線アドホックネットワークの構築についての詳細は後述する。
【0015】
以上の通り無線アドホックネットワークを構築する無線端末12は、複数のゲートウェイ11のうちいずれかを介して有線網10に接続することが出来る。
【0016】
図2は無線端末12のハードウェアブロック図である。無線端末12はアンテナ20、RF(Radio Frequency)処理部21、A/D(Analog/Digital)変換部22、D/A(Digital/Analog)変換部23、ベースバンド処理部24、制御部25、記憶部26、ユーザデータ処理部27を有する。
【0017】
アンテナ20は無線端末12と他の装置との無線通信に用いられる。RF処理部21は、D/A変換部23から出力されたアナログ信号を通信方式に応じて選択された周波数で変調処理する。D/A変換部23はベースバンド処理部24から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、RF処理部21へ出力する。A/D変換部22はRF処理部21から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、ベースバンド処理部24へ出力する。
【0018】
ベースバンド処理部24は送信データを通信方式に応じてデジタル処理し、D/A変換部23へ出力する。制御部25は記憶部26に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、様々な機能を実現する。制御部25は例えばCPU(Central Processing Unit)である。記憶部26はデータおよびプログラムを記憶する。記憶部26は例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)である。記憶部26に記憶されたデータおよびプログラムについての詳細は後述する。ユーザデータ処理部27は無線端末12のユーザに対する種々の機能を提供する。
【0019】
記憶部26は経路コストデータ28、接続GW(ゲートウェイ)データ29、HELLO検出プログラム30、経路コスト計算プログラム31、統計情報計算プログラム32、経路コスト順位付与プログラム33、ゲートウェイ選択プログラム34、パケット生成プログラム35、乱数発生プログラム36を有する。
【0020】
経路コストデータ28は、無線端末12と接続可能な各ゲートウェイ11との間で通信する場合の、通信経路の経路コストを記録したデータである。接続GWデータ29は無線端末12と接続するゲートウェイ11の情報を記録したデータである。
【0021】
HELLO検出プログラム30は、制御部25に対し、ベースバンド処理部24から出力された受信データからHELLOパケットを検出する処理を実行させるプログラムである。経路コスト計算プログラム31は、制御部25に対し、受信したHELLOパケットから抽出した経路コスト情報に基づいて、接続可能なゲートウェイ11へのそれぞれのトータルの経路コストを計算させるプログラムである。
【0022】
統計情報計算プログラム32は、制御部25に対し、接続可能な各ゲートウェイ11に接続する場合の経路コストの分布を統計処理させるプログラムである。経路コスト順位付与プログラム33は、制御部25に対し、経路コストの統計処理結果に基づいて、選択可能なゲートウェイ11までの経路コスト順に順位を付与させるプログラムである。ゲートウェイ選択プログラム34は、制御部25に対し、後述する乱数発生プログラムにより生成される乱数に基づいて、順位付与したゲートウェイ11から、1つのゲートウェイ11をランダムに選択させるプログラムである。
【0023】
パケット生成プログラム35は、制御部25に対し、選択したゲートウェイ11へ接続通知をするためのパケットを生成させるプログラムである。乱数発生プログラム36は前述の通り、制御部25に対し、乱数を発生させるプログラムである。
【0024】
以上の通り無線端末12は、記憶部26に記憶されたプログラムを制御部25に対して実行させることにより、特定のゲートウェイ11に接続負荷が偏ることを防止することが出来る。
【0025】
図3は無線端末12の機能ブロック図である。各機能ブロックは、制御部25が記憶部26から読み出したプログラムを実行することにより実現する。無線端末12はアンテナ20、RF処理部21、A/D変換部22、D/A変換部23、ベースバンド処理部24、HELLO検出部40、経路コスト計算部41、接続候補特定部90、ゲートウェイ選択部44、パケット生成部45、乱数発生部46、記憶部26、ユーザデータ処理部27を有する。接続候補特定部90は計算した該経路コストに基づいて接続候補のゲートウェイを絞り込む。接続候補特定部90は統計情報計算部42、経路コスト順位付与部43を有する。記憶部26は経路コストデータ28、接続GWデータ29を記憶する。
【0026】
図3の無線端末12について、図2の無線端末12と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。図3において、HELLO検出部40は、記憶部26に記憶されたHELLO検出プログラム30を制御部25で実行することにより実現される。経路コスト計算部41は、記憶部26に記憶された経路コスト計算プログラム31を制御部25で実行することにより実現される。統計情報計算部42は、記憶部26に記憶された統計情報計算プログラム32を制御部25で実行することにより実現される。経路コスト順位付与部43は、記憶部26に記憶された経路コスト順位付与プログラム33を制御部25で実行することにより実現される。ゲートウェイ選択部44は、記憶部26に記憶されたゲートウェイ選択プログラム34を制御部25で実行することにより実現される。パケット生成部45は、記憶部26に記憶されたパケット生成プログラム35を制御部25で実行することにより実現される。乱数発生部46は、記憶部26に記憶された乱数発生プログラム36を制御部25で実行することにより実現される。
【0027】
以上の通り図2の無線端末12は、図3の通り機能ブロックで表現することが出来る。なお本実施例において各機能ブロックは、記憶部26に記憶されたプログラムを制御部25が実行することにより実現しているが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いて、デジタル回路で実現しても良い。
【0028】
図4はHELLOパケット5のデータ構造図である。HELLOパケット5はパケット送信元の無線端末12から各ゲートウェイ11への経路情報を含むパケットデータである。HELLOパケット5は各無線端末12から発信される。1つの無線端末12は、他の無線端末12から受信したHELLOパケット5を解析することにより、接続先のゲートウェイ11を決定することが出来る。
【0029】
HELLOパケット5はヘッダ55、複数の宛先経路情報56を有する。ヘッダ55はHELLOパケット5の送信元無線端末12を示すデータである。ヘッダ55は、ブロードキャストアドレス50、送信元アドレス51を有する。ブロードキャストアドレス50は、そのHELLOパケットがブロードキャストである事を示すアドレスである。ブロードキャストであるとは、そのHELLOパケットが受信先を特定せずに送信されたことを示す。送信元アドレス51は送信元である無線端末12に割り当てられた固有アドレスである。固有アドレスは、例えばMAC(Media Access Control)アドレスである。
【0030】
宛先経路情報56は、HELLOパケット5の送信元である無線端末12と無線接続可能なゲートウェイ11までの、接続経路に関する情報である。宛先経路情報56は、パケット送信元の無線端末12と接続可能なゲートウェイ11ごとに存在する。宛先経路情報56は、接続可能ノードID52、経路コスト53、ホップ数54を有する。接続可能ノードID52は、HELLOパケット5の送信元である無線端末12と接続可能なゲートウェイ11の識別番号である。各ゲートウェイ11にはそれぞれ固有の識別番号が割り当てられている。経路コスト53はHELLOパケット5の発信元無線端末12から接続可能ノードIDに示すゲートウェイ11までの接続経路により決定する経路コストの情報である。ホップ数54は、HELLOパケット5の発信元無線端末12から接続可能ノードIDに示すゲートウェイ11までに経由する無線端末12の数である。
【0031】
以上の通り無線端末12は、他の無線端末12から受信したHELLOパケット5を解析することにより、接続可能なゲートウェイ11および接続可能なゲートウェイ11までの経路コストの情報をそれぞれ取得することが出来る。
【0032】
図5は無線端末12の接続先ゲートウェイ11の選択処理フローである。図5の処理は無線端末12の制御部25により実行される。
【0033】
制御部25はHELLO検出プログラム30を実行することにより、受信したパケットデータに対してHELLOパケット5の検出処理を実行する(S10)。制御部25はHELLOパケット5を検出した場合(S10:YES)、ステップS11へ処理を進める。制御部25はHELLOパケット5を検出できなかった場合(S10:NO)、接続先ゲートウェイ11の選択処理を終了する。
【0034】
制御部25は検出したHELLOパケット5を送信した他の無線端末12を特定する。制御部25はHELLOパケット5から宛先経路情報56を読み出す。制御部25は経路コスト計算プログラム31を実行することにより、他の無線端末12から接続可能なゲートウェイ11までの経路コストに対し、自身の無線端末12から他の無線端末12までの経路コストを加算する(S11)。これにより制御部25は、自身の無線端末12から接続可能なゲートウェイ11までの経路コストを計算する。制御部25は計算した経路コストを経路コストデータ28として記憶部26へ書き込む(S12)。
【0035】
制御部25は記憶部26へ書き込んだ経路コストデータ28に対応するゲートウェイ11の数が、あらかじめ設定したトリガの数を超えた場合(S13:YES)、ステップS14の処理に移行する。制御部25はゲートウェイ11の数がトリガの数以下の場合(S13:NO)、ステップS10からステップS12までの処理を繰り返す。
【0036】
制御部25は統計情報計算プログラム32を実行することにより、自身の無線端末12から各ゲートウェイ11までの経路コストの平均値および分散値を経路コストの統計情報として計算する(S14)。制御部25は平均値を超える経路コストを有するゲートウェイ11を接続候補ゲートウェイ11として抽出する(S15)。経路情報の計算および接続候補ゲートウェイ11の抽出についての詳細は後述する。
【0037】
制御部25は経路コスト順位付与プログラム33を実行することにより、抽出した接続候補ゲートウェイ11に対し、経路コストの低い順に番号を付ける(S16)。制御部25は乱数発生プログラム36を実行することにより、抽出した接続ゲートウェイ11の数の範囲で乱数を生成する(S17)。制御部25はゲートウェイ選択プログラム34を実行することにより、接続候補ゲートウェイ11に付与した番号のうち、生成した乱数に一致する番号を付与したゲートウェイ11を選択する(S18)。制御部25は選択したゲートウェイ11の情報を接続GWデータ29として記憶部26に書き込む。
【0038】
制御部25はパケット生成プログラム35を実行することにより、記憶部26に書き込んだ接続GWデータ29に基づいて、選択したゲートウェイ11に接続通知をするためのパケットデータを生成する。制御部25は生成したパケットデータをゲートウェイ11に送信することにより、接続通知を行う(S19)。
【0039】
以上の通り無線端末12は、ネットワーク負荷を増大させること無く、ゲートウェイ11の負荷分散を考慮した接続経路を選択することが出来る。
【0040】
図6は経路コストに対するゲートウェイ11の数の分布図である。経路コストに対するゲートウェイ11の数は、一般的に図6の通り分布する。制御部25は統計情報計算プログラム32を実行することにより、自身の無線端末12から接続可能なゲートウェイ11までの全経路コストの平均値、およびそれぞれのゲートウェイ11への経路コストの分散値を計算する。
【0041】
制御部25は経路コストの平均値よりも大きい経路コストとなるゲートウェイ11を接続候補ゲートウェイ11とする。接続候補ゲートウェイ11は、図6のグラフにおける斜線部分に該当する。
【0042】
以上の通り制御部25は、選択可能なゲートウェイ11を経路コストに基づいて複数設定することにより、特定のゲートウェイ11への接続負荷の集中を防止することが出来る。
【0043】
図7は無線端末12aの機能ブロック図である。無線端末12に対し無線端末12aは、統計情報に基づく接続候補ゲートウェイ11の絞込み機能を有する。
【0044】
無線端末12aにおいて各機能ブロックは、制御部25が記憶部26から読み出したプログラムを実行することにより実現する。無線端末12aはアンテナ20、RF処理部21、A/D変換部22、D/A変換部23、ベースバンド処理部24、HELLO検出部40、経路コスト計算部41、接続候補特定部90a、ゲートウェイ選択部44、パケット生成部45、乱数発生部46、記憶部26、ユーザデータ処理部27を有する。接続候補特定部90aは計算した該経路コストに基づいて接続候補のゲートウェイを絞り込む。接続候補特定部90aは経路情報計算部42、候補GW絞込み部80、経路コスト順位付与部43を有する。記憶部26は経路コストデータ28、所定値データ81、接続GWデータ29を記憶する。
【0045】
図7の無線端末12aについて、図3の無線端末12と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。図3の無線端末12に対し、図7の無線端末12aは候補GW絞込み部80、所定値データ81をさらに有する。
【0046】
無線端末12aにおいて制御部25は、記憶部26に記憶された候補GW絞込みプログラムを実行することにより、候補GW絞込み部80として機能する。候補GW絞込み部80は、統計情報計算部42により計算された統計情報と記憶部26に記憶された所定値データ81との比較結果に基づいて、無線端末12aからの接続候補となるゲートウェイ11の絞り込み処理を実行する。所定値データ81は接続候補となるゲートウェイ11の絞り込みを行うか否かの判定基準となる閾値を記憶する。候補GW絞込み部80の動作についての詳細は後述する。
【0047】
以上の通り無線端末12aは、候補GW絞込み部80および所定値データ81を有することにより、選択候補となるゲートウェイ11の絞り込みを実行することが出来る。
【0048】
図8は制御部25による統計情報計算処理の詳細フローである。接続可能なゲートウェイ11の数が十分多い場合、経路コストの平均値より低い経路を有するゲートウェイ11の数も十分多くなる。この結果、平均値より低い経路コストで接続可能なゲートウェイ11に絞り込んだ中からランダムに接続先を選択することにより、ゲートウェイ11の選択処理負荷を軽減することが出来る。
【0049】
一方、接続可能なゲートウェイ11の数が少ない場合、経路コストの平均値より低いゲートウェイ11の数は数個となる場合がある。選択可能なゲートウェイ11の数が数個の場合、その中からランダムに1つのゲートウェイ11を選択しても、接続負荷の集中が生じる可能性が高い。そこで、経路コストの平均値による絞り込みを行わず、接続可能なゲートウェイ11から1つのゲートウェイ11を選択する。以上の通り選択可能なゲートウェイ11の数に応じて絞込み処理を省略することにより、接続負荷の集中を防止することが出来る。
【0050】
制御部25は統計情報計算プログラム31の実行により計算したコスト分散値と所定値データ81として記憶部26に記憶した所定分散値とを比較する(S30)。コスト分散値が所定分散値よりも大きい場合(S30:YES)、制御部25は経路コストの平均値よりも経路コストの低いゲートウェイ11を接続候補ゲートウェイ11として選択する(S31)。一方、コスト分散値が所定分散値以下の場合(S30:NO)、制御部25は全てのゲートウェイ11を接続候補ゲートウェイ11として選択する(S32)。
【0051】
制御部25は絞込み後の選択候補ゲートウェイ11の数と所定値データ81として記憶部26に記憶した所定候補数とを比較する(S33)。絞込み後の選択ゲートウェイの数が所定候補数よりも小さい場合(S33:YES)、制御部25は全てのゲートウェイ11を接続候補ゲートウェイ11に再設定する(S34)。一方、絞込み後の選択ゲートウェイの数が所定候補数以上の場合(S33:NO)、制御部25は接続候補の絞込み処理を終了する。
【0052】
以上の通り制御部25は、経路コストの統計値とあらかじめ設定した所定値とを比較することにより、統計値に応じて最適なゲートウェイ11の接続候補選択処理を実行することが出来る。
【0053】
図9はゲートウェイ11への接続経路の絞り込みを説明する接続経路図である。図9の接続経路図において、符号121、122、123、124、125はそれぞれ別個の無線端末12を示す。符号111、112はそれぞれ別個のゲートウェイ11を示す。符号126はゲートウェイ111のセル範囲、符号127はゲートウェイ112のセル範囲を示す。
【0054】
図9の接続経路図の通り、無線端末121からゲートウェイ112に接続する場合に、無線端末122を経由する経路と、無線端末124を経由する経路が選択可能であるとする。一般に経由する無線端末12の数すなわちホップ数が大きいほど、経路コストは大きくなる。よって図9の接続経路の場合、無線端末124を経由する経路よりも、無線端末122を経由する経路の方が経路コストは小さくなる。
【0055】
一方、無線端末122はゲートウェイ111のセル範囲126の中にある。よって無線端末122から無線送信される信号とゲートウェイ111から無線送信される信号とは干渉する。無線信号の干渉により、信号品質が下がり、結果として無線端末122を経由する経路の経路コストは高くなる。
【0056】
よって無線端末121からゲートウェイ112への接続経路における無線端末12が、無線端末122のように接続先のゲートウェイ11以外のゲートウェイ11のエリア内にある場合、無線端末121は無線端末124の経路を優先的に選択する。以上の通り他のゲートウェイ11と干渉する無線端末12を避けて経路選択することにより、無線端末121は無駄な無線信号間の干渉発生を回避することが出来る。
【0057】
図10はゲートウェイ112への接続経路の絞り込み処理フローである。図10の絞込み処理フローでは、図9における無線端末121の動作を例に説明する。なお無線端末121の処理は、無線端末121の制御部25により実行される。
【0058】
無線端末121はステップS20からステップS28までの処理をゲートウェイ11の数だけ繰り返す。無線端末121は1つのゲートウェイ11を選択する(S21)。図9の場合、選択するゲートウェイ11はゲートウェイ112となる。
【0059】
無線端末121はステップS22からステップS27までの処理を隣接する無線端末12の数だけ繰り返す。無線端末121は隣接する無線端末12のうち、ステップS21において選択したゲートウェイ11に接続可能な無線端末12のいずれか1つを選択する(S23)。図9の場合、無線端末121に隣接する無線端末12のうち、ゲートウェイ112への接続経路となる無線端末12は、無線端末122、124となる。
【0060】
無線端末121は、隣接する無線端末12が、選択したゲートウェイ11以外の他のゲートウェイ11から1ホップ範囲か否かを判定する(S24)。ゲートウェイ11から1ホップ範囲に無線端末12があるとは、ゲートウェイ11のセル範囲内に無線端末12がある、ということである。
【0061】
隣接する無線端末12が、他のゲートウェイ11から1ホップ範囲にある場合(S24:YES)、無線端末121は隣接する無線端末12を経由する経路の経路コストを最悪値に設定する。経路コストを最悪値に設定することにより、無線端末121は、ゲートウェイ112までの接続経路から、隣接する無線端末12を経由する経路を除外することができる。図9の場合、隣接する無線端末122を経由する経路の経路コストは最大値となる。
【0062】
一方、隣接する無線端末12が他のゲートウェイ11から1ホップ範囲にない場合(S24:NO)、無線端末121は隣接する無線端末12を経由する経路の経路コストを通常通りコスト関数から計算する。図9の場合、隣接する124を経由する経路の経路コストはコスト関数に基づいて算出される。
【0063】
ここでコスト関数とは、経路コストを算出するための関数である。コスト関数は無線端末12からゲートウェイ11までの各ノード間の距離、または無線端末12からゲートウェイ11までのホップ数をパラメータに有する。コスト関数の値は、無線端末12からゲートウェイ11までの各ノード間の距離が長い程、またはホップ数が多いほど大きくなる。
【0064】
以上の通り無線端末121から接続可能なゲートウェイ11について、全ての選択可能な経路について隣接ゲートウェイ11の有無を検証することにより、無線端末121はゲートウェイ11の不要な干渉を避けて接続経路を確立することが出来る。
【0065】
図11は本実施例の効果を示すグラフである。図11における従来技術とは、無線端末からブロードキャストされたアドホック接続要求メッセージを受信したゲートウェイが帯域関連メッセージを送信し、ゲートウェイから無線端末までの中継端末が周辺帯域情報を帯域関連メッセージに追記して無線端末に中継するというものである。
【0066】
図11において、グラフ130は無線端末12からゲートウェイ11までの平均ホップ数が1の場合の、従来技術に対する本実施例の効果を示すグラフである。グラフ131は無線端末12からゲートウェイ11までの平均ホップ数が2の場合の、従来技術に対する本実施例の効果を示すグラフである。グラフ132は無線端末12からゲートウェイ11までの平均ホップ数が3の場合の、従来技術に対する本実施例の効果を示すグラフである。グラフ133は無線端末12からゲートウェイ11までの平均ホップ数が4の場合の、従来技術に対する本実施例の効果を示すグラフである。グラフ134は無線端末12からゲートウェイ11までの平均ホップ数が5の場合の、従来技術に対する本実施例の効果を示すグラフである。
【0067】
本実施例における無線端末12は、隣接する無線端末12から受信したHELLOパケットに基づいて自律的にゲートウェイ11を選択するため、従来技術のように無線端末12とゲートウェイ11との間で応答メッセージが往復することが無い。図11のグラフ130の通り、平均ホップ数が1の場合は従来技術と本実施例との効果の差は見られないが、グラフ131〜134の通り、平均ホップ数が多くなるほど、本実施例の効果が大きくなる。例えば平均ホップ数が2の場合、グラフ131より、従来技術に対する本実施例の効果は、隣接ノード数10において約2.5倍となる。
【0068】
以上の通り無線端末12は、ゲートウェイ11との無線アドホック接続を自律的に実行することにより、無線アドホック接続確率までの無線リソース消費を減らすことが出来る。
【符号の説明】
【0069】
1 無線アドホックネットワークシステム
5 HELLOパケット
10 有線網
11 ゲートウェイ
12、12a 無線端末
20 アンテナ
21 RF処理部
22 A/D変換部
23 D/A変換部
24 ベースバンド処理部
25 制御部
26 記憶部
27 ユーザデータ処理部
28 経路コストデータ
29 接続GWデータ
30 HELLO検出プログラム
31 経路コスト計算プログラム
32 統計情報計算プログラム
33 経路コスト順位付与プログラム
34 ゲートウェイ選択プログラム
35 パケット生成プログラム
36 乱数発生プログラム
40 HELLO検出部
41 経路コスト計算部
42 統計情報計算部
43 経路コスト順位付与部
44 ゲートウェイ選択部
45 パケット生成部
46 乱数発生部
50 ブロードキャストアドレス
51 送信元アドレス
52 接続可能ノードID
53 経路コスト
54 ホップ数
55 ヘッダ
56 宛先経路情報
80 候補GW絞込み部
81 所定値データ
111、112 ゲートウェイ
121、122、123、124、125 無線端末
126、127 セル範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを基に接続を行うゲートウェイを選択する無線端末であって、
前記複数のゲートウェイからのパケットを受信する受信部と、
前記受信部が受信したパケットから、前記複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを検出する制御パケット検出部と、
前記制御パケット検出部により検出された制御パケットの送信元ゲートウェイから接続候補となるゲートウェイを複数特定する接続候補特定部と、
前記接続候補選定部により選定されたゲートウェイのうち、任意に1つのゲートウェイを選択するゲートウェイ選択部と
を有する無線端末。
【請求項2】
該接続候補特定部は、該接続可能なゲートウェイとの接続経路の無線信号の品質に基づいて経路コストを計算し、計算した該経路コストに基づいて接続候補のゲートウェイを特定する、請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
該接続候補特定部は、該ゲートウェイごとの該経路コストの統計情報とあらかじめ設定した閾値との比較結果に基づいて、該接続候補のゲートウェイを特定する、請求項2に記載の無線端末。
【請求項4】
該接続候補特定部は、該接続経路を形成する他の無線端末が、接続先として選択したゲートウェイ以外のゲートウェイの通信エリアにある場合に、該接続経路の経路コストの値を最大値に設定する、請求項2または3に記載の無線端末。
【請求項5】
該ゲートウェイ選定部は、ランダムに1つのゲートウェイを選択する、請求項1から請求項4に記載の無線端末
【請求項6】
複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを基に接続を行うゲートウェイを選択する無線端末が行うゲートウェイ選択方法であって、
前記無線端末が、
前記複数のゲートウェイから受信したパケットから、前記複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを検出し、
前記制御パケット検出部により検出された制御パケットの送信元ゲートウェイから接続候補となるゲートウェイを複数特定し、
前記接続候補選定部により選定されたゲートウェイのうち、任意に1つのゲートウェイを選択する
ゲートウェイ選択方法。
【請求項7】
複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを基に接続を行うゲートウェイを選択する無線端末に、
前記複数のゲートウェイから受信したパケットから、前記複数のゲートウェイからブロードキャスト送信された制御パケットを検出させ、
前記制御パケット検出部により検出された制御パケットの送信元ゲートウェイから接続候補となるゲートウェイを複数特定させ、
前記接続候補選定部により選定されたゲートウェイのうち、任意に1つのゲートウェイを選択させる
ゲートウェイ選択プログラム。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−70310(P2013−70310A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208627(P2011−208627)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】