説明

無線装置及びアンテナ素子故障検出方法

【課題】特定のアンテナ素子の組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子に関する故障を検出できるようにすること。
【解決手段】3以上のアンテナ素子11を備える基地局装置であって、3以上のアンテナ素子11のうちの注目アンテナ素子11により、該注目アンテナ素子11以外の各アンテナ素子11から送信された無線信号を受信する基地局送受信部40と、受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定し、判定結果に応じて、注目アンテナ素子11に関する故障を検出する動作判定部80と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線装置及びアンテナ素子故障検出方法に関し、特に、アンテナ素子に関する故障を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アダプティブアレイアンテナのような複数のアンテナ素子からなるアンテナを有する無線装置がある。このような無線装置では、アンテナ素子間で無線信号を送受信することにより故障検出処理が行われる。
【0003】
例えば特許文献1では、アンテナ素子のうちのひとつから送信し、他のアンテナ素子で受信する。これを、送信アンテナ素子を変えつつ、全ての組み合わせについて行う。その結果、アンテナ素子Aから送信した無線信号を受信した各アンテナ素子の受信電力のうち、その最大値が所定の閾値より低い場合、アンテナ素子Aの送信系が故障していると判定する。また、各アンテナ素子から送信した無線信号をアンテナ素子Bで受信した場合において、各アンテナ素子から送信した無線信号の受信電力の最大値が所定の閾値より低い場合、アンテナ素子Bの受信系が故障していると判定する。
【0004】
このようにすることにより、例えばケーブル切断等の故障が確実に検出される。
【特許文献1】特開2001−53662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、アンテナ素子の組み合わせのうちの1つで受信電力が高くなるような場合、故障として検出されないという問題がある。すなわち、上記特許文献1に記載の技術では、あるアンテナ素子を含む複数の組み合わせのいずれにおいても受信電力が所定の閾値より低いことをもって該アンテナ素子に関する故障を検出しているので、アンテナ素子の組み合わせのうちの1つで受信電力が高くなると、他の組み合わせで受信電力が低いとしても、故障を検出できない。
【0006】
なお、上記特許文献1に記載の技術では受信電力を故障検出の評価基準として用いているが、上記課題は、位相等、他の評価基準を用いる場合についても同様である。すなわち、従来の技術では、特定のアンテナ素子の組み合わせで異常が検出されないことによって、アンテナ素子に関する故障を検出できなくなってしまうという問題があった。
【0007】
従って、本発明の課題の一つは、特定のアンテナ素子の組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子に関する故障を検出できる無線装置及びアンテナ素子故障検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一側面にかかる無線装置は、3以上のアンテナ素子を備える無線装置であって、前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子により、該注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信手段と、前記無線信号受信手段により受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記注目アンテナ素子の故障を検出する故障検出手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これによれば、注目アンテナ素子以外の複数のアンテナ素子のそれぞれから送信することにより、注目アンテナ素子で受信された複数の無線信号のうちいずれかが異常と判断される状態である場合に、注目アンテナ素子に関する故障(注目アンテナ素子を利用したときに発生する故障。)を検出することができる。このため、特定のアンテナ素子の組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子に関する故障を検出できる。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の別の一側面にかかる無線装置は、3以上のアンテナ素子を備える無線装置であって、前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子により、該注目アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信手段と、前記無線信号受信手段により受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記注目アンテナ素子の故障を検出する故障検出手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
これによれば、注目アンテナ素子から送信することにより、注目アンテナ素子以外の複数のアンテナ素子で受信された複数の無線信号のうちいずれかが異常と判断される状態である場合に、注目アンテナ素子に関する故障(注目アンテナ素子を利用したときに発生する故障。)を検出することができる。このため、特定のアンテナ素子の組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子に関する故障を検出できる。
【0012】
また、上記各無線装置において、前記無線信号は特定の周波数の無線信号であり、当該無線装置は、前記故障検出手段により故障が検出されたアンテナ素子について、前記特定の周波数についての運用を停止する運用停止手段、をさらに含む、こととしてもよい。
【0013】
周波数特性ずれのような故障は特定の周波数でのみ発生する場合が多い。上記無線装置によれば、周波数ごとかつアンテナ素子ごとに運用を停止することができるので、運用を継続しつつ、故障が発生する特定の周波数とアンテナ素子の組み合わせのみを運用しないようにすることができる。
【0014】
また、本発明の一側面にかかるアンテナ素子故障検出方法は、3以上のアンテナ素子を備える無線装置においてアンテナ素子の故障を検出するためのアンテナ素子故障検出方法であって、前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子により、該注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信ステップと、前記無線信号受信ステップにおいて受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいてされた判定の結果に応じて、前記注目アンテナ素子の故障を検出する故障検出ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の別の一側面にかかるアンテナ素子故障検出方法は、3以上のアンテナ素子を備える無線装置においてアンテナ素子の故障を検出するためのアンテナ素子故障検出方法であって、前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子により、該注目アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信ステップと、前記無線信号受信ステップにおいて受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいてされた判定の結果に応じて、前記注目アンテナ素子に関する故障を検出する故障検出ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態にかかる移動体通信システム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、移動体通信システム1は、基地局装置2、移動局装置3、通信ネットワーク4、を含んで構成される。
【0018】
また、図2は基地局装置2のシステム構成を示す図である。同図に示すように、基地局装置2は、制御部20と、無線通信部21と、記憶部22と、ネットワークインターフェイス部23と、を含んで構成される。
【0019】
制御部20は、基地局装置2の各部を制御し、通話やデータ通信に関わる処理を実行する。
【0020】
無線通信部21は、アレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子を備え、移動局装置3からの音声信号や通信用パケット等をそれぞれ受信して復調し、制御部20に出力したり、制御部20の指示に従って、制御部20から入力される音声信号や通信用パケット等を変調してアンテナ素子を介して出力したり、といった処理を行う。また、上記アレイアンテナをアダプティブアレイアンテナとして使用することにより、後述する空間分割多重方式(SDMA:Space Division Multiple Access)にて通信を行う。
【0021】
記憶部22は、制御部20のワークメモリとして動作する。また、この記憶部22は、制御部20によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。
【0022】
ネットワークインターフェイス部23は、通信ネットワーク4と接続されており、通信ネットワーク4からの音声信号や通信用パケット等を受信して制御部20に出力する処理や、制御部20の指示に従って音声信号や通信用パケット等を通信ネットワーク4に対して送信する処理を行う。
【0023】
移動局装置3は、携帯電話端末やPHS端末等の移動体通信システムで使用される端末装置であり、基地局装置2から無線送信される信号を受信し、基地局装置2に対し信号を無線送信することにより、基地局装置2と通信を行う。
【0024】
基地局装置2と移動局装置3との間で行われる通信は、上記空間分割多重方式の他、周波数分割多重方式及び時分割多重方式により多重化される。また、時分割複信方式により、移動局装置3から基地局装置2へ送信される信号(上り信号)と、基地局装置2から移動局装置3へ送信される信号(下り信号)と、を同一の無線周波数帯(キャリア)を使用して通信するようにしている。
【0025】
通信ネットワーク4は移動体通信システム1の交換機ネットワークであってもよいし、該移動体通信システム1がIP電話による通信システムである場合などにはTCP/IP網であってもよい。
【0026】
図3は、本実施の形態にかかる基地局装置2の機能ブロックを示す図である。図3に示すように、基地局装置2は、機能的には、アンテナ部10−x(x=1〜n)と、基地局送受信部40と、キャリブレーション信号生成部70と、動作判定部80と、アラーム発生部81と、を含んで構成されている。なお、nはアンテナ部10−xの数であり、ここでは3以上である。
【0027】
アンテナ部10−xは無線通信部21によって実現され、アンテナ素子11−xと、カプラ(連結器)12−xと、T(Transfer)/R(Receive)スイッチ14−xと、パワーアンプ(電力増幅器)15−xと、T/Rスイッチ16−xと、ローノイズアンプ(低雑音増幅器)17−xと、を含んで構成されている。
【0028】
基地局送受信部40も無線通信部21によって実現され、T/Rスイッチ41−x(x=1〜n)と、周波数変換部42−x(x=1〜n)と、周波数変換部43−x(x=1〜n)と、周波数対応部49−y(y=1〜m)と、キャリブレーション部50と、分配部60と、を含んで構成される。なお、各周波数対応部49−yは、送信部44−yと、受信部45−yと、送信ウエイト生成部46−yと、キャリブレーションウエイト算出部48−yと、を含んで構成されている。また、mは基地局装置2が通信を行う際に使用する無線周波数帯(キャリア)の数である。
【0029】
キャリブレーション信号生成部70、動作判定部80、及びアラーム発生部81は、制御部20によって実現される。
【0030】
以下では、まず、移動局装置3との通信に使用する構成について詳細に説明した後、キャリブレーション処理にかかる構成について説明し、さらに異常アンテナ素子運用停止処理にかかる構成について説明する。
【0031】
まず、移動局装置3との通信に使用する構成について説明する。
【0032】
アンテナ部10−xは、アンテナ素子11−xに到来する電波を取得し、該電波に含まれる信号を基地局送受信部40に出力する信号出力処理と、基地局送受信部40から入力される信号をアンテナ素子11−xから無線区間に送出する信号送出処理と、を行う。
【0033】
また、アンテナ部10−xは、アンテナ素子11−xに到来する電波に含まれる信号の増幅処理及び基地局送受信部40から出力される信号の増幅処理も行う。具体的には、本実施の形態では上述のように時分割複信方式を使用しており、T/Rスイッチ14−x及びT/Rスイッチ16−xにより上り信号と下り信号のタイムスロットに含まれる信号をそれぞれ異なる経路に振り分け、それぞれの経路に設置される増幅器を経由して通信を行う。
【0034】
上り信号については、パワーアンプ15−xにより信号の電力を増幅することで、アンテナ素子11−xから信号を送信する際の送信電力を制御している。また、下り信号については、ローノイズアンプ17−xにより雑音レベルが非常に低い増幅を行い、受信信号の雑音レベルをできるだけ上げることなく、該信号の受信電力を増幅している。カプラ12−xについては、キャリブレーション処理にかかる構成の説明において説明する。
【0035】
基地局送受信部40は、アンテナ部10−xから入力される信号を復調及び復号する復調・復号処理及びアンテナ部10−xへ出力する信号を変調及び符号化する変調・符号化処理を行う。そしてさらに、図示していないが、ネットワークインターフェイス部23との間での信号の送受信も行い、通信ネットワーク4と、移動局装置3との間での通信を中継する。
【0036】
なお、各周波数対応部49−yには互いに異なる無線周波数帯が割り当てられており、それぞれ、割り当てられた無線周波数帯の無線信号についての上記処理を行う。以下、基地局送受信部40の機能について、具体的に説明する。
【0037】
T/Rスイッチ41−xは、アンテナ部10−xから入力される信号を含むタイムスロットと、アンテナ部10−xへ出力する信号を含むタイムスロットと、で経路を切り替えることにより、アンテナ部10−xから出力される信号を周波数変換部43−xに出力し、周波数変換部42−xから出力される信号をアンテナ部10−xに送出する。なお、T/Rスイッチ41−x、周波数変換部42−x、周波数変換部43−xはそれぞれアンテナ部10−xに対応して設けられ、各アンテナ部10−xとの間で信号の入出力を行う。
【0038】
周波数変換部43−xは、アンテナ部10−xから入力される信号の周波数を、無線周波数帯から、ベースバンド周波数帯に変換する。そして、該無線周波数帯を割り当てられている周波数対応部49−yに含まれる受信部45−yに出力する。
【0039】
一方、周波数変換部42−xは、送信部44−yから入力された信号の周波数を、ベースバンド周波数帯から、該送信部44−yを含む周波数対応部49−yに割り当てられている無線周波数帯に変換する。そして、T/Rスイッチ41−xに送出する。
【0040】
受信部45は、各周波数変換部43−xから入力される信号の合成と、検波処理を行う。具体的には、該信号に図示しないバンドパスフィルタによるDFT(Digital Fourier Transpose)処理を施すことにより、特定の周波数帯の成分のみを取り出す。そして、該特定の周波数帯の信号に対し、復調及び復号処理を行い、移動局装置3が送出した信号をビット列として取得する。併せて、各周波数変換部43−xから入力される信号の位相及び振幅を取得し、送信ウエイト生成部46に出力する。
【0041】
送信ウエイト生成部46は、受信部45から出力される信号の位相及び振幅に基づいて、受信される信号の位相及び振幅のアンテナ部10−x間における相違量を示す受信ウエイトを算出する。受信ウエイトは相対的なものであり、1の周波数変換部43−xから出力される信号の位相及び振幅を基準として、該基準となる位相及び振幅と、他の周波数変換部43−xから出力される信号の位相及び振幅と、の差異をアンテナ部10−xにおける受信ウエイトとして用いることができる。送信ウエイト生成部46は、該受信ウエイトと、後述するキャリブレーション処理により算出されるキャリブレーションウエイトと、に基づいて送信ウエイトを生成する。
【0042】
送信部44は、ネットワークインターフェイス部23から出力される信号であるビット列について、符号化及び変調処理を行い、周波数変換部42−xに出力する。この出力を行う際、送信部44は、送信ウエイト生成部46において生成される送信ウエイトに基づいて周波数変換部42−xへの出力ごとに重み付けを行う。より具体的には、変調処理された信号に、送信ウエイト生成部46において生成される該信号の位相及び振幅の各アンテナ部10−x間における相違量を示す送信ウエイトを乗算することにより、各アンテナ部10−xにおいて該信号が無線区間に送出される際の位相及び振幅を、アンテナ部10−xごとに決定する。こうすることにより、アンテナ素子11−xによるアダプティブビームフォーミング及びアダプティブヌルステアリング、すなわち空間分割多重方式が実現される。
【0043】
次に、キャリブレーション処理にかかる構成について説明する。
【0044】
図4は、本キャリブレーション処理における無線信号の送受信についての説明図である。同図に例示するように、キャリブレーション部50は、3以上あるアンテナ素子11−xのうちの1つから無線信号を送信する。他のアンテナ素子11−xはこれを受信し、基地局送受信部40に出力する。基地局送受信部40は、こうして入力される無線信号に基づき、キャリブレーションウエイトを算出する。以下、具体的に説明する。
【0045】
キャリブレーション信号生成部70はキャリブレーション信号を生成する。このキャリブレーション信号としては、一定周波数の信号の一種であるトーン信号(正弦波)や周波数が信号内容に応じて変更されるバースト信号を使用することができる。以下ではトーン信号であるとして説明を続ける。キャリブレーション信号生成部70は、生成したキャリブレーション信号をキャリブレーション部50に対して出力する。
【0046】
キャリブレーション部50は、周波数変換部51と、送信部52と、を含んで構成されている。
【0047】
送信部52は、キャリブレーション信号生成部70からキャリブレーション部50に対して入力されるキャリブレーション信号を取得する。そして、キャリブレーション信号の種類に応じた符号化・変調処理を行い、周波数変換部51に出力する。
【0048】
周波数変換部51は、キャリブレーション信号の周波数を、ベースバンド周波数から、後述する動作判定部80により指示された無線周波数に変換する。そして、分配部60に出力する。
【0049】
分配部60は、キャリブレーション部50から入力されるキャリブレーション信号を、後述する動作判定部80により指示されたアンテナ部10−xのカプラ12−xに対して分配して送信する。
【0050】
カプラ12−xは、T/Rスイッチ14−xとアンテナ素子11−xとの間に設置される通信線と、当該カプラ12−xと分配部60の間に設置されるケーブルと、を電気的に連結する。カプラ12−xにより、分配部60が送信した信号は、アンテナ素子11−xを介して無線区間に送出される。なお、キャリブレーション部50は、時分割複信方式の下り信号に使用されるタイムスロットに入るように送信時刻を調節して、キャリブレーション信号を送信する。この送信時刻の調節は、図示しないクロックにより実現される。すなわち、図示しないクロックにより、基地局装置2の各部は同期している。
【0051】
基地局装置2は、こうして無線区間に送出されたキャリブレーション信号を、送信に使用したアンテナ素子11−x以外のアンテナ素子11−xで受信する。受信した信号は、上述した処理により、受信部45−yにおいて検波される。すなわち、受信部45−yは、周波数変換部43−xから出力される信号にDFT処理を施すことにより、元のトーン信号を取得する。
【0052】
キャリブレーションウエイト算出部48−yは、受信部45−yに入力されたキャリブレーション信号(送信に使用したアンテナ素子11−x以外のアンテナ素子11−xで受信されたキャリブレーション信号)に基づいて、キャリブレーションウエイトを算出する。具体的には、受信部45−yに入力されたキャリブレーション信号の位相及び振幅に基づいて算出する。
【0053】
なお、キャリブレーションウエイト算出部48−yは、アンテナ素子11−xごとにキャリブレーションウエイトを算出する。このために、キャリブレーションウエイト算出部48−yは、各アンテナ素子11−xで受信されるキャリブレーション信号の望ましい位相及び振幅を記憶している。そして、実際に受信されたキャリブレーション信号の位相及び振幅と記憶している位相及び振幅とを比較し、その差異をキャリブレーションウエイトとしている。
【0054】
キャリブレーションウエイト算出部48−yは、算出したキャリブレーションウエイトを、アンテナ素子11−xを識別するためのアンテナ素子識別情報と対応付けて記憶部22に記憶させる。
【0055】
次に、異常アンテナ素子運用停止処理にかかる構成について説明する。
【0056】
動作判定部80は、周波数変換部51及び分配部60を制御し、周波数ごとに、送信アンテナを変えつつ、キャリブレーション処理を行わせる。そして、その結果に基づき、異常のあるアンテナ素子の運用を周波数ごとに停止する処理を行う。以下では、動作判定部80の処理について、処理フローを参照しながら、詳細に説明する。
【0057】
図5乃至図7は、動作判定部80の処理フローを示す図である。図5に示すように、動作判定部80は、周波数fを1からmまで変えつつ、異常アンテナ素子運用停止処理を行う(S1及びS8)。すなわち、基地局装置2が通信を行う際に使用する無線周波数帯ごとに、異常アンテナ素子運用停止処理を行う。
【0058】
なお、動作判定部80は、ある無線周波数帯についての異常アンテナ素子運用停止処理を行うとき、周波数変換部51に対して、該無線周波数帯に含まれる周波数に変換するよう指示する。
【0059】
動作判定部80は、3以上あるアンテナ素子11−xのそれぞれに、順に注目する。そして、注目アンテナ素子11−xからキャリブレーション信号を送信し、他のアンテナ素子11−xで受信したときに発生する異常(送信異常)と、他のアンテナ素子11−xからキャリブレーション信号を送信し、注目アンテナ素子11−xで受信したときに発生する異常(受信異常)と、を検出する処理を行う(S2乃至S5)。
【0060】
なお、動作判定部80は、あるアンテナ素子11−xからキャリブレーション信号の送信を行うとき、分配部60に対して、該アンテナ素子11−xのカプラ12−xに対してキャリブレーション信号を出力するよう指示する。
【0061】
以下、送信異常を検出する処理と、受信異常を検出する処理のそれぞれについて説明する。
【0062】
図6は送信異常を検出する処理の処理フローを示す図である。同図に示すように、動作判定部80は、注目アンテナ素子11−xから周波数fのキャリブレーション信号を一定電力かつ一定位相で送信し(S31)、注目アンテナ素子11−x以外の各アンテナ素子11−xで受信する(S32乃至S34)。
【0063】
基地局送受信部40は、注目アンテナ素子11−x以外の各アンテナ素子11−xで受信されたキャリブレーション信号の振幅及び位相に基づいてキャリブレーションウエイトを算出し、アンテナ素子識別情報と対応付けて記憶部22に記憶させる。
【0064】
動作判定部80は、こうして記憶部22に記憶されたキャリブレーションウエイトに基づき、受信された複数のキャリブレーション信号のそれぞれについて、受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があるか否か判定する(S35)。そして、判定結果に応じて、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出する。すなわち、S35で異常があると判定した場合、動作判定部80は、S36乃至S39の処理を行い、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出する。一方、S35で異常がないと判定した場合には、動作判定部80は、送信異常を検出する処理を終了する。
【0065】
S36乃至S39の処理について説明する。動作判定部80は、全受信アンテナ素子11−xについて受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があれば(S36の肯定判定)、送信部52から注目アンテナ素子11−xに至る区間のどこかで故障が発生していると判定し、アラーム発生部81において、注目アンテナ素子11−xと周波数fの組み合わせについての送信異常アラームを発生させる(S37)。この場合、注目アンテナ素子11−xの運用を停止する(S38)。
【0066】
一方、全受信アンテナ素子11−xについて受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があるわけではない場合には(S36の否定判定)、キャリブレーション部50から注目アンテナ素子11−xを介し、異常のある受信アンテナ素子11−xを経て受信部45に至る区間のどこかで故障が発生していると判定する。この場合、動作判定部80は、異常のある受信アンテナ素子11−xと注目アンテナ素子11−xの組み合わせと、さらに周波数fと、の組み合わせについての送信異常アラームを発生させる(S39)。
【0067】
図7は受信異常を検出する処理の処理フローを示す図である。同図に示すように、動作判定部80は、注目アンテナ以外のアンテナ素子11−xから順に周波数fのキャリブレーション信号を一定電力かつ一定位相で送信し、注目アンテナ素子11−xで受信する(S41乃至S44)。
【0068】
基地局送受信部40は、この受信により上述のようにしてキャリブレーションウエイトを算出し、アンテナ素子識別情報と対応付けて記憶部22に記憶させる。
【0069】
動作判定部80は、こうして記憶部22に記憶されたキャリブレーションウエイトに基づき、受信された複数のキャリブレーション信号のそれぞれについて、受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があるか否か判定する(S45)。そして、判定結果に応じて、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出する。すなわち、S45で異常があると判定した場合、動作判定部80は、S46乃至S49の処理を行い、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出する。一方、S45で異常がないと判定した場合には、動作判定部80は、受信異常を検出する処理を終了する。
【0070】
S46乃至S49の処理について説明する。動作判定部80は、全送信アンテナ素子11−xについて受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があれば(S46の肯定判定)、注目アンテナ素子11−xから受信部45に至る区間のどこかで故障が発生していると判定し、アラーム発生部81において、注目アンテナ素子11−xと周波数fの組み合わせについての受信異常アラームを発生させる(S47)。この場合、注目アンテナ素子11−xの運用を停止する(S48)。
【0071】
一方、全送信アンテナ素子11−xについて受信電力又は受信位相の少なくとも一方に異常があるわけではない場合には(S46の否定判定)、キャリブレーション部50から異常のある送信アンテナ素子11−xを介し、注目アンテナ素子11−xを経て受信部45に至る区間のどこかで故障が発生していると判定する。この場合、動作判定部80は、異常のある送信アンテナ素子11−xと注目アンテナ素子11−xの組み合わせと、さらに周波数fと、の組み合わせについての受信異常アラームを発生させる(S49)。
【0072】
全てのアンテナ素子11−xに関して以上の処理が終了すると、動作判定部80は、周波数fについていずれかのアンテナ素子11−xに関する故障が検出されたか否かを判定する。そして、送信異常アラームが発生しているアンテナ素子11−xについて、周波数fの送信運用を停止する(S6)。すなわち、アレイアンテナで周波数fの信号を送信する場合、注目アンテナ素子11−xは使用しないこととする。また、受信異常アラームが発生しているアンテナ素子11−xについて、周波数fの受信運用を停止する(S7)。すなわち、アレイアンテナで周波数fの信号を受信する場合、注目アンテナ素子11−xは使用しないこととする。
【0073】
動作判定部80は、以上のようにして異常アンテナ素子運用停止処理を行う。
【0074】
以上説明したように、基地局装置2によれば、注目アンテナ素子11−x以外の複数のアンテナ素子11−xのそれぞれから送信することにより、注目アンテナ素子11−xで受信された複数の無線信号のうちいずれかが異常と判断される状態である場合に、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出することができる。このため、特定のアンテナ素子11−xの組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子11−xに関する故障を検出できる。
【0075】
また、注目アンテナ素子11−xから送信することにより、注目アンテナ素子11−x以外の複数のアンテナ素子11−xで受信された複数の無線信号のうちいずれかが異常と判断される状態である場合に、注目アンテナ素子11−xに関する故障を検出することができる。このため、特定のアンテナ素子11−xの組み合わせで異常が検出されないとしても、アンテナ素子11−xに関する故障を検出できる。
【0076】
さらに、周波数ごとかつアンテナ素子ごとに運用を停止することができるので、運用を継続しつつ、故障が発生する特定の周波数とアンテナ素子の組み合わせのみを運用しないようにすることができる。
【0077】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、実際に受信されたキャリブレーション信号の位相及び振幅と記憶している位相及び振幅とを比較しているが、キャリブレーション信号を複数のアンテナ素子11−xから送信するようにし、注目アンテナ素子11−xで受信された複数のキャリブレーション信号のうちの1つの位相及び振幅を基準として、基準との比較結果をキャリブレーションウエイトとして利用することとしてもよい。こうすれば、比較のために望ましい位相及び振幅を記憶しておく必要がなくなるので、メモリ領域を節約することができる。
【0078】
また、上記実施の形態では送信部52からキャリブレーション信号を送信し、受信部45で受信することによりキャリブレーションを行ったが、送信部44からキャリブレーション信号を送信し、キャリブレーション部50の受信部(不図示)で受信することによりキャリブレーションを行うこととしてもよい。特に、送信異常検出処理においてこのようにすれば、注目アンテナ素子11−xに関し、送信部44から注目アンテナ素子11−xに至る区間で発生する故障を検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態にかかる移動体通信システムのシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる基地局装置のシステム構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の機能ブロックを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるキャリブレーション処理における無線信号の送受信についての説明図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる異常アンテナ素子運用停止処理の処理フローを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる送信異常検出処理の処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる受信異常検出処理の処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 移動体通信システム、2 基地局装置、3 移動局装置、4 通信ネットワーク、10 アンテナ部、11 アンテナ素子、12 カプラ、14 T/Rスイッチ、15 パワーアンプ、16 T/Rスイッチ、17 ローノイズアンプ、20 制御部、21 無線通信部、22 記憶部、23 ネットワークインターフェイス部、40 基地局送受信部、41 T/Rスイッチ、42 周波数変換部、43 周波数変換部、44 送信部、45 受信部、46 送信ウエイト生成部、48 キャリブレーションウエイト算出部、49 周波数対応部、50 キャリブレーション部、51 周波数変換部、52 送信部、60 分配部、70 キャリブレーション信号生成部、80 動作判定部、81 アラーム発生部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上のアンテナ素子を備える無線装置であって、
前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子により、該注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信手段と、
前記無線信号受信手段により受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記注目アンテナ素子に関する故障を検出する故障検出手段と、
を含むことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
3以上のアンテナ素子を備える無線装置であって、
前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子により、該注目アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信手段と、
前記無線信号受信手段により受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記注目アンテナ素子に関する故障を検出する故障検出手段と、
を含むことを特徴とする無線装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線装置において、
前記無線信号は特定の周波数の無線信号であり、
当該無線装置は、
前記故障検出手段により故障が検出されたアンテナ素子について、前記特定の周波数についての運用を停止する運用停止手段、
をさらに含む、
ことを特徴とする無線装置。
【請求項4】
3以上のアンテナ素子を備える無線装置においてアンテナ素子の故障を検出するためのアンテナ素子故障検出方法であって、
前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子により、該注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信ステップと、
前記無線信号受信ステップにおいて受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいてされた判定の結果に応じて、前記注目アンテナ素子に関する故障を検出する故障検出ステップと、
を含むことを特徴とするアンテナ素子故障検出方法。
【請求項5】
3以上のアンテナ素子を備える無線装置においてアンテナ素子の故障を検出するためのアンテナ素子故障検出方法であって、
前記3以上のアンテナ素子のうちの注目アンテナ素子以外の前記各アンテナ素子により、該注目アンテナ素子から送信された無線信号を受信する無線信号受信ステップと、
前記無線信号受信ステップにおいて受信された複数の無線信号のそれぞれについて、異常の有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいてされた判定の結果に応じて、前記注目アンテナ素子に関する故障を検出する故障検出ステップと、
を含むことを特徴とするアンテナ素子故障検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−274130(P2007−274130A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94748(P2006−94748)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】