説明

無線送信装置及び無線送信方法

【課題】UWB−MIMO伝送方式において、干渉を抑えて受信品質を向上させ、システムのスループットを向上させること。
【解決手段】フレーム構成部301−1、301−2は、タイミング検出用シンボル、パイロットシンボル及びデータシンボルを含むフレームを構成する。変調部302−1、302−2は、フレーム化ディジタルデータに対して変調処理を行う。無線部303−1、303−2は、変調信号を無線送信のために周波数変換し、タイミング設定部304が設定した送信タイミングで送信信号を送信アンテナANT1、ANT2から送信する。タイミング設定部304は、通信相手の無線受信装置で検出された受信タイミングのずれを示すタイミング調整値に基づいて送信信号の送信タイミングを設定し、無線部303−1、303−2に対して、送信タイミングを指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置及び無線送信方法に関し、特に複数のアンテナを用いて変調信号を送信する無線送信装置及び無線送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば非特許文献1に記載されているUWB(Ultra WideBand)と呼ばれる伝送方法のように、数GHz程度の極めて広い周波数帯を利用して高速な無線通信を行う方法が検討されている。
【0003】
このときの送信信号として、通常の無線通信のようにベースバンド信号を用いて搬送波を変調するのではなく、パルス信号を直接送信する方法が提案されている。なお、この場合にも通常の無線通信での搬送波に相当する高周波信号を利用する方式があるが、この高周波信号は連続的に発生させるのではなく、パルス信号が存在するときのみ発生させるということから、上記したように、パルス信号を直接送信する、または、搬送波を用いない、という表現をするのが一般的である。この方法は、低コストで消費電力が少ないという利点がある。
【0004】
以下、このUWB伝送方式について図29を用いて説明する。図29(a)は、時間波形の幅が1ns以下となるパルス信号の例を示す図であり、図29(b)は、対応する電力スペクトルを示す図である。一例として信号周期が1ns(1ns=1.0×10-9s)であり、各パルス信号で1bitの情報が送信されるものとすると、送信速度は、1/(1×10-9) = 1.0×109 = 1Gbpsとなる。この送信信号を受信側で復調することにより、高速な無線通信が可能となる。なお、このとき、電力スペクトルが数GHzに渡り分布する。
【0005】
また、伝送速度を向上させる別の方法として、例えば非特許文献2に記載されているMIMO(Multi-Input Multi-Output)と呼ばれる伝送方法のように、複数アンテナからそれぞれ異なる変調信号を送信し、受信側で各アンテナから同時に送信された変調信号を分離し復調することにより、周波数帯域を拡大することなく伝送速度を向上させる方法が提案されている。
【0006】
以下、このMIMO伝送方式について図面を用いて説明する。図30に示すように、2つの送信アンテナANT1、ANT2からそれぞれ変調信号A、変調信号Bを同時に送信し、2つの受信アンテナANR1、ANR2によって変調信号A、Bを受信する場合を考える。この場合、受信側では4つのチャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)を推定する必要がある。
【0007】
そのため、図30に示すように、変調信号A、Bの中にチャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)を推定するためのパイロットシンボル(電波伝搬環境推定用シンボル)01、02、03、04を配置するようになっている。ここで同時に送信されるパイロットシンボル01、03ではCの既知信号を、パイロットシンボル02では−Cの既知信号を、パイロットシンボル04ではCの既知信号を送る。因みに、*は共役複素数を示す。また、変調信号A、変調信号Bともにパイロットシンボル01、02、03、04以外はデータシンボルが配置される。
【0008】
このように、複数アンテナからそれぞれ異なる変調信号を同時に送信する無線送信装置においては、各アンテナから送信する変調信号にパイロットシンボルを埋め込むことにより、伝搬路上で合成された変調信号を受信側で良好に分離し復調することができるようになっている。以上より、周波数帯域を拡大することなく、伝送速度を向上させることができる。
【0009】
さらに、非特許文献1では、上記UWB伝送方式とMIMO伝送方式を組み合わせたUWB−MIMO伝送方式により伝送速度をさらに向上させる方法が提案されている。非特許文献1における送信方法は、複数のアンテナから異なる信号を「同時に」送信し、受信側でMMSE(Minimum Mean Square Error)検波を施すことで、マルチパスによるシンボル間干渉、チップ間干渉を軽減することができることが示されている。
【非特許文献1】“MMSE Detection for High Date Rate UWB-MIMO Systems”IEEE VTC2004-Fall, pp.1463-1467, 2004年9月
【非特許文献2】“MIMOチャネルにより100Mbit/sを実現する広帯域移動通信用SDM-COFDM方式の提案”電子情報通信学会、信学技報RCS-2001-135、2001年10月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、1シンボル時間(パルス信号1つが占める時間)をnsまたはpsオーダーとして送受信するUWB伝送方式のような、これまでの無線伝送方式(例えばIEEE802.11で規定される無線LAN規格の1シンボル時間は数ms)と比較して短いシンボル時間を使用する無線伝送方式の場合、複数の送信アンテナからの送信信号が1つの受信アンテナに到達するまでの到着時刻の差の影響が相対的に大きくなる。一般に、この到着時刻の差が大きくなり、それに伴い1シンボル時間に占める到着時間の差が大きくなればなるほど、MIMO伝送方式において正確に多重されないことになる。換言すると、一方の信号がもう一方の信号にとっての干渉信号となる。このため、UWB−MIMO伝送方式の受信品質が低下してしまう。
【0011】
図31は、この課題を説明する図である。図31(a)は、シンボル長Ts_longが伝搬遅延時間と比較して十分長い場合、図31(b)は、シンボル長Ts_shortが伝搬遅延時間とあまり変わらない場合を示す。説明を簡単にするために、Ts_long =1μs、Ts_short =1ns、とし、また送信アンテナ2本(ANT1,ANT2)、受信アンテナ1本(ANR1)の場合で説明する。ANT1、ANT2からANR1への伝搬チャネルをh11、h12とし、遅延時間をそれぞれT11、T12とする。ここで、遅延時間T11、T12は、伝搬チャネルの経路長によって定まる値であるため、送信する変調信号のシンボル長には依存しない。図31(a)のケースでは、T11とT12の差ΔTr1がシンボル長Ts_longと比較して短いため、ΔTr1による受信品質の劣化は小さい。しかし、図31(b)のように、シンボル長Ts_shortがΔTr1と比較してあまり変わらなくなると、ΔTr1による受信品質の劣化が大きくなる。一例として、伝搬チャネルh11とh12の差が1mとすると、{1[m]/(3.0×108 [m/s])}×1.0×10-9[s→ns]=3.3nsとなり、1シンボル長Ts_shortよりも長くなる。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、UWB−MIMO伝送方式において、干渉を抑えて受信品質を向上させ、システムのスループットを向上させることができる無線送信装置及び無線送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、本発明の無線送信装置は、複数のアンテナと、前記各アンテナから送信するデータに、通信相手装置において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボルを挿入してフレームを構成するフレーム構成手段と、前記通信相手装置において検出された受信タイミングのずれに基づいて送信タイミングを設定するタイミング設定手段と、前記タイミング設定手段が設定した送信タイミングで、前記フレーム構成手段がフレーム化したデータを前記各アンテナから送信する送信手段と、具備する構成を採る。
【0014】
また、本発明の無線送信方法は、複数の各アンテナからデータを送信する無線送信方法であって、前記各アンテナから送信するデータに、通信相手装置において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボルを挿入してフレームを構成するフレーム構成工程と、前記通信相手装置において検出された受信タイミングのずれに基づいて送信タイミングを設定するタイミング設定工程と、前記タイミング設定工程で設定した送信タイミングで、前記フレーム構成工程でフレーム化したデータを前記各アンテナから送信する送信工程と、具備する方法を採る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、UWB−MIMO伝送方式において、伝搬遅延時間等に応じて各送信アンテナから送信するパルス信号の送信タイミングを調整することができるので、干渉を抑えて受信品質を向上させ、システムのスループットを向上させることができる。また、複雑なタイミング調整を行うのではなく、単純に受信タイミングの差に応じて、あらかじめ送信側で送信タイミングを変更するので、簡易な構成で受信タイミングを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いるパルス信号とは、無線通信で一般に用いられる技術用語であるが、本実施の形態では、特に言及しない限りパルス信号の形は問わない。よって、パルス信号として、インパルス信号、方形パルス信号、ガウシアンパルス信号、などが利用できる。また、パルス信号に情報を乗せるためにパルス信号に施す操作を変調と呼び、生成される信号を変調信号と呼ぶ。このとき、以下の説明で変調信号と呼ぶ信号には無変調信号であるパルス信号も含める。また、UWB方式には、モノサイクルパルス方式、キャリア付きインパルス方式、OFDM方式を用いた方式等があり、本発明は特定のUWB方式に限定されない。また、前記各方式におけるデータ変調方式(例えばOOK(On-Off Keying)、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)等)にも限定されることなく実施できる。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線送信装置及び無線受信装置の基本構成図である。図1に示すように、無線送信装置100は、フレーム構成部101と、タイミング設定部102と、複数の送信アンテナANT1〜ANTmと、を有する。フレーム構成部101は、複数の送信アンテナANT1〜ANTmを用いて送信するパルス信号(パルス信号1〜パルス信号m)の送信フレームを構成する。タイミング設定部102は、パルス信号(パルス信号1〜パルス信号m)の送信タイミングを設定する。
【0018】
また、無線受信装置150は、複数の受信アンテナANR1〜ANRnと、タイミング検出部151と、を有する。タイミング検出部151は、受信タイミングずれを検出し、検出した値であるタイミング調整値をタイミング設定部102にフィードバックする。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る無線送信装置と無線受信装置との間の無線区間のチャネル変動を説明する図である。図2では、無線送信装置100が、2つの送信アンテナANT1、ANT2からそれぞれ変調信号A、変調信号Bを送信し、無線受信装置150が、2つの受信アンテナANR1、ANR2によって変調信号A、Bが合成された信号を受信し、それらの信号を分離し復調する場合を示す。ここで、図1における変調信号1、2に相当するのが、図2における変調信号A、Bである。
【0020】
この場合、受信側では4つのチャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)を推定して各変調信号を復調する必要がある(tは時刻を示す)。そのため変調信号A、B中に、信号検出、タイミング検出、周波数オフセット推定、送信方法情報、伝搬チャネル推定、等に用いるパイロットシンボルを必要に応じて設ける必要がある。
【0021】
因みに、上記の復調するために必要とするシンボルを総称して、パイロットシンボル、ユニークワード、プリアンブルなどと呼ぶことができるが、本実施の形態では、これらを全てパイロットシンボルと呼ぶ。なお、チャネル変動h11(t)、h12(t)、h21(t)、h22(t)の推定は、パイロットシンボルを用いて行われる。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る無線送信装置の構成を示すブロック図である。なお、図3の無線送信装置300は、図1の無線送信装置100を詳細に記載したものであり、図1のフレーム構成部101は、図3のフレーム構成部301−1、301−2及び変調部302−1、302−2に相当する。また、図1のタイミング設定部102は、図3の無線部303−1、303−2及びタイミング設定部304に相当する。
【0023】
フレーム構成部301−1、301−2は、それぞれ、送信ディジタルデータA、送信ディジタルデータBに、無線受信装置150において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボル、無線受信装置150において同期検波、チャネル推定等に使用されるパイロットシンボル等を挿入してフレームを構成し、フレーム化ディジタルデータを変調部302−1、302−2に出力する。
【0024】
変調部302−1、302−2は、それぞれ、フレーム化ディジタルデータに対して変調処理を行い、変調信号を無線部303−1、303−2に出力する。
【0025】
無線部303−1、303−2は、それぞれ、変調信号を無線送信のために周波数変換し、タイミング設定部304が設定した送信タイミングで送信信号を送信アンテナANT1、ANT2から送信する。ここで、最初の送信時には、送信アンテナANT1、ANT2から送信信号を送信するタイミングは同時とし、無線部303−1、303−2は、タイミング設定部304からの入力を利用しない。
【0026】
タイミング設定部304は、図4に示す無線受信装置で検出された受信タイミングのずれを示すタイミング調整値に基づいて送信信号の送信タイミングを設定し、無線部303−1、303−2に対して、送信タイミングを指示する。
【0027】
無線部352は、図4に示す無線受信装置から送信され、受信アンテナ351に受信された高周波信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を復調部353に出力する。ここで、回路規模、コスト等の面から受信アンテナ351と送信アンテナANT1、ANT2とを共用することが一般的であるが、別のアンテナとすることもできる。また受信信号は、複数のアンテナから受信することもできる。
【0028】
復調部353は、ベースバンド信号を復調し、タイミング調整値及び受信ディジタルデータをフレーム分離部354に出力する。フレーム分離部354は、タイミング調整値を分離してタイミング設定部304に出力する。
【0029】
図4は、本実施の形態に係る無線受信装置の構成を示すブロック図である。なお、図4の無線受信装置400は、図1の無線受信装置150を詳細に記載したものであり、図1のタイミング検出部151は、図4のタイミング検出部451に相当する。
【0030】
無線部401−1、401−2は、それぞれ、受信アンテナANR1、ANR2に受信された高周波信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号をフレーム分離部402−1、402−2に出力する。
【0031】
フレーム分離部402−1、402−2は、それぞれ、ベースバンド信号からパイロットシンボル、データシンボルを分離し、パイロットシンボルをチャネル推定部403−1〜403−4に出力し、データシンボルを復調部404に出力し、タイミング検出用シンボルをタイミング検出部451に出力する。
【0032】
チャネル推定部403−1〜403−4は、それぞれ、パイロットシンボルを用いてチャネル推定を行い、チャネル推定値を復調部404に出力する。
【0033】
復調部404は、チャネル推定値を用いてデータシンボルを復調し、送信ディジタルデータA、Bに対応する受信ディジタルデータA、Bを出力する。
【0034】
タイミング検出部451は、タイミング検出用シンボルを用いて受信タイミングずれを検出し、検出した値であるタイミング調整値をフレーム構成部452に出力する。
【0035】
フレーム構成部452は、タイミング調整値、送信ディジタルデータを入力とし、無線送信装置300におけるフレーム構成部301−1、301−2と同様に、パイロットシンボルとデータシンボルを含むフレームを構成し、それぞれフレーム化ディジタルデータを変調部453に出力する。
【0036】
変調部453は、フレーム化ディジタルデータに対して変調処理を行い、変調信号を無線部454に出力する。
【0037】
無線部454は、変調信号を無線送信のために周波数変換し、送信信号を送信アンテナ455から無線送信装置300に向けて送信する。ここで、回路規模、コスト等の面から送信アンテナ455と受信アンテナANR1、ANR2とを共用することが一般的であるが、別のアンテナとすることもできる。また、送信信号は、複数のアンテナから送信することもできる。
【0038】
図5は、無線送信装置300から送信する変調信号A、変調信号Bのフレーム構成例を示す図である。図5では、一例として時間軸におけるフレーム構成を示している。図5において、シンボル501、552は、変調信号A、Bのタイミング検出用シンボルであり、シンボル502、551は、変調信号A、Bのヌルシンボル(何も送信しないシンボル)であり、シンボル503、553は、変調信号A、Bのデータシンボルを復調するためのパイロットシンボルであり、シンボル504、554は、変調信号A、Bのデータシンボルである。なお、本実施の形態では、タイミング検出用シンボルを用いて送信タイミングを調整することを説明するため、タイミング検出用シンボルとパイロットシンボルという2つに分けて記載した。また、タイミング検出用シンボル501、ヌルシンボル551の前に信号検出用シンボルを配置する場合もあるが、本実施の形態では省略している。各シンボルの構成の詳細は後述する。
【0039】
図6は、無線受信装置400から送信する変調信号のフレーム構成例を示す図である。図6において、シンボル601は、タイミング調整用シンボルであり、無線受信装置400のタイミング検出部451で出力したタイミング調整値が含まれる。シンボル602は、パイロットシンボルであり、シンボル603はデータシンボルである。
【0040】
図7は、本実施の形態に係る受信アンテナANR1における受信タイミングを揃えるための送信タイミング調整を説明する図である。無線受信装置400からフィードバックされたタイミング調整値ΔTr1に基づき、変調信号Bの送信タイミングをΔTr1早めて送信する。その結果、受信アンテナANR1が受信した信号1は、2つの送信信号が正確に多重された信号となる。
【0041】
次に、図1のフレーム構成部において生成する、送信タイミングを検出するための送信フレーム構成の具体例を説明する。
【0042】
図8は、図5の変調信号A、変調信号Bのタイミング検出用シンボル501、552の構成例を示す図である。図8では、直交する符号を用いた例を示す。
【0043】
図8に示す変調信号は、無変調のパルス信号にBi-phase modulationと呼ばれる変調を施した信号である。Bi-phase modulationは、無変調の(あるいは基準となる)パルス信号p(t)を用いて、以下の式(1)で表現される。
S1=p(t), S2=-p(t) ・・・(1)
【0044】
変調信号Aは、時刻Tt0,Tt1,Tt2,Tt3においてそれぞれ、1,1,1,1,を示すパルスS、S,S,Sを発生する。変調信号Bは、時刻Tt4,Tt5,Tt6,Tt7においてそれぞれ、1,−1,1,−1を示すパルスS,S,S,Sを発生する。また、Tt0、Tt1,・・・、Tt7は等間隔とする。
【0045】
図9は、受信アンテナANR1により受信した受信信号における、直交符号の相関処理に基づくタイミング検出方法を示す図である。変調信号Aのタイミングを算出するために、送信側で用いた符号と同じ、1,1,1,1を乗算することにより、自己相関値を計算する。送信側での時刻Tt0,Tt1,Tt2,Tt3で送信した変調信号Aが受信アンテナANR1に到着した後に上記自己相関値を計算することで、受信側の時刻Tr1Aにおいて、自己相関値が得られる。このとき、変調信号Bのタイミングを算出する場合に対しても同様に、送信側で用いた符号と同じ、1,−1、1,−1を乗算することにより、自己相関値を計算する。ただし、変調信号Bに対する自己相関値計算は、変調信号Aに対する計算と同時刻に開始するものとする。図8では、変調信号Aが変調信号Bよりも先に送信されているため、自己相関値も変調信号Aに対する値が先に求まる。なお、本実施の形態はこの順番には制限されず、変調信号Bを変調信号Aよりも先に、または同時に送信することもできる。
【0046】
まず、図8のタイミング検出用シンボル501が受信側に到着した際の自己相関値について説明する。変調信号Aに対する自己相関値は、1×1+1×1+1×1+1×1=4となり、変調信号Bに対する自己相関値は、1×1+1×(−1)+1×1+1×(−1)=0となる。なお、ここでは、伝搬チャネル変動による変調信号の歪み、回路内部の雑音などの誤差要因は存在しないものとする。
【0047】
次に、図8のタイミング検出用シンボル552が受信側に到着した際の自己相関値について説明する。送信側での時刻Tt4,Tt5,Tt6,Tt7で送信した変調信号Bが受信アンテナANR1に到着した後に上記自己相関値を計算することで、受信側の時刻Tr1Bにおいて、自己相関値が得られる。変調信号Aに対する自己相関値は、1×1+(−1)×1+1×1+(−1)×1=0となり、変調信号Bに対する自己相関値は、1×1+(−1)×(−1)+1×1+(−1)×(−1)=4となる。
【0048】
以上、相関処理から求めた到着時刻差(Tr1B−Tr1A)、送信側での送信時刻差(Tt4−Tt0)から、タイミング調整値ΔTr1は、以下の式(2)により求めることができる。
ΔTr1=T12−T11=(Tr1B−Tr1A)−(Tt4−Tt0)
・・・(2)
【0049】
このΔTr1を送信側にフィードバックし、送信タイミングを調整することで、受信側において高精度にMIMO多重された受信信号を得ることができる。
【0050】
また、このように、直交符号を用いることで、変調信号の到着タイミングを求めることができ、求めた変調信号が送信されたアンテナを識別することができる。
【0051】
図8、図9を用いて説明した受信アンテナANR1におけるタイミング検出は、他の受信アンテナについても同様に実現することができる。
【0052】
また、図5、図6に示したデータシンボル504、554、603の長さの最小単位は0である。換言すると、タイミング設定期間においてデータシンボルを送信しない構成を採ることも可能である。これにより、有効でないデータシンボルを送信しない効率的なタイミング設定が可能となる。
【0053】
図10は、本実施の形態に係る受信アンテナANR2における受信タイミングを揃えるための送信タイミング調整を説明する図である。無線受信装置400からフィードバックされたタイミング調整値ΔTr2に基づき、変調信号Bの送信タイミングをΔTr2早めて送信する。その結果、受信アンテナANR2で受信した受信信号2は、2つの送信信号が正確に多重された信号とすることができる。
【0054】
図11は、受信アンテナANR2における、直交符号の相関処理に基づくタイミング検出方法を示す図である。
【0055】
受信アンテナANR2で受信した信号に対して、変調信号Aのタイミングを算出する場合においては、送信側で用いた符号と同じ、1,1,1,1を乗算することにより、自己相関値を計算する。送信側での時刻Tt0,Tt1,Tt2,Tt3で送信した変調信号Aが受信アンテナANR2に到着した後に上記自己相関値を計算することで、受信側の時刻Tr2Aにおいて、自己相関値が得られる。このとき、変調信号Bのタイミングを算出する場合においても同様に、送信側で用いた符号と同じ、1,−1,1,−1を乗算することにより、自己相関値を計算する。ただし、変調信号Bに対する自己相関値計算は、変調信号Aに対する計算と同時刻に開始するものとする。図8では、変調信号Aが変調信号Bよりも先に送信されているため、自己相関値も変調信号Aに対する値が先に求まる。
【0056】
まず、図8のタイミング検出用シンボル501が受信側に到着した際の自己相関値について説明する。変調信号Aに対する自己相関値は、1×1+1×1+1×1+1×1=4となり、変調信号Bに対する自己相関値は、1×1+1×(−1)+1×1+1×(−1)=0となる。なお、ここでは、伝搬チャネル変動による変調信号の歪み、回路内部の雑音などの誤差要因は存在しないものとしている。
【0057】
次に、図8のタイミング検出用シンボル552が受信側に到着した際の自己相関値について説明する。送信側での時刻Tt4,Tt5,Tt6,Tt7で送信した変調信号Bが受信アンテナANR2に到着した後に上記自己相関値を計算することで、受信側の時刻Tr2Bにいて、自己相関値が得られる。変調信号Aに対する自己相関値は、1×1+(−1)×1+1×1+(−1)×x1=0となり、変調信号Bに対する自己相関値は、1×1+(−1)×(−1)+1×1+(−1)×(−1)=4となる。
【0058】
以上、相関処理から求めた到着時刻差(Tr2B−Tr2A)、送信側での送信時刻差(Tt4−Tt0)から、タイミング調整値ΔTr2は、以下の式(3)により求めることができる。
ΔTr2=T22−T21=(Tr2B−Tr2A)−(Tt4−Tt0)
・・・(3)
【0059】
このTr2を送信側にフィードバックし、送信タイミングを調整することで、受信側で高精度に多重された受信信号を得ることができる。
【0060】
図12は、本実施の形態に係る複数の受信アンテナにおける受信タイミングを調整する方法を示す図である。受信信号1、受信信号2に対して求められたタイミング調整値ΔTr1、ΔTr2について、以下の式(4)の関数f(x,y)を定義する。
f(ΔTr1,ΔTr2) ・・・(4)
ただし、f(x,y)はx,yの値により定まる値
【0061】
送信側では、f(ΔTr1,ΔTr2)だけ送信アンテナANT2の送信タイミングを調整(送信アンテナANT1に対し、先行または遅延)する。図12は、一例として、上記式(4)を具体的に以下の式(5)の場合を示す。
f(ΔTr1,ΔTr2)=(ΔTr1 + ΔTr2)/2 = ΔTr_ave
・・・(5)
【0062】
一般に、送信アンテナANT1、ANT2間の距離、受信アンテナANR1、ANR2間の距離と比較して、送受信アンテナ間の距離(例えば送信アンテナANT1と受信アンテナANR1)が長い場合には、ΔTr1とΔTr2の差は小さくなることから、ΔTr_ave<ΔTr1,ΔTr_ave<ΔTr2となり、ΔTr_aveだけ送信タイミングを調整することにより、調整前と比較して高精度な多重を実現できる。要は、送信タイミング調整前と比較して、受信側でより正確な多重を実現できるように、ΔTr1、ΔTr2を用いて送信タイミングを調整することが重要である。なお、送信装置あるいは受信装置に具備される全てのアンテナのうち、その一部を用いない場合については、実施の形態2で説明する。
【0063】
ここで、上記の説明では、送信アンテナANT1を基準として送信アンテナANT2のタイミングを調整するとしたが、調整するアンテナについては、送信アンテナANT2を基準として、送信アンテナANT1の送信タイミングを調整する構成としても同様の効果を得ることができる。また、送信アンテナANT1、ANT2の双方の送信タイミングを調整する構成としても同様の効果が得られる。
【0064】
図13は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図13に示す変調信号は、タイミング検出用シンボル501、552が、他のパルス幅503、504、553、554よりも狭い場合の構成例である。
【0065】
一般に、パルス幅が狭いほど、より正確に送信タイミングを検出できる。したがって、より正確に送信タイミングを調整することができ、受信側でのより正確なMIMO多重を実現することができる。
【0066】
ここで、タイミング検出用シンボル501、552として、(a)無線送信装置300が装置として発生できる最も狭いパルス信号、(b)無線送信装置300が準拠する無線規格の中で最も狭いパルス信号、(c)上記(a)、(b)のパルス信号を含めた異なるパルス幅の信号、等を利用することができる。ここで、(a)、(b)については、既に説明したので、以下では、(c)の一例の説明を行う。
【0067】
異なるパルス幅の信号として、(c−1)タイミング検出用シンボル以外の部分(例えばデータ部504、554)と同じパルス幅の信号、(c−2)タイミング検出用シンボル以外の部分(例えばデータ部504、554)よりも狭く、(a)または(b)よりも広いパルス幅の信号、(c−3)(a)または(b)の信号、を考える。
【0068】
送信開始時には(c−1)を用いる。これは、タイミング検出用シンボル以外の部分と同じパルス幅の信号を用いることで、無線送信装置におけるパルス幅変更に起因する負荷が掛からないという利点がある。(c−1)のパルス信号により受信側で検出された送信タイミング調整値が、MIMO多重を実現するのに十分である場合には(c−2)への切り替えは行わず、(c−1)のみでタイミング調整を完了とする。(c−1)のみでは十分なタイミング調整が行えない場合、(c−2)の信号を用いてタイミング調整値を求める。以下、(c−1)の場合と同様に、(c−2)のパルス信号により受信側で検出された送信タイミング調整値が、MIMO多重を実現するのに十分である場合には(c−3)への切り替えは行わず、(c−2)でタイミング調整を完了とする。(c−2)を用いてもまだ十分なタイミング調整を行えない場合、(c−3)の信号を用いてタイミング調整値を求める。以上説明したように、タイミング検出用シンボルに用いるパルス幅を可変とすることで、不必要なパルス幅変更を避け、同時にタイミング調整をより高精度に行うことができる。
【0069】
このとき、タイミング調整が十分であるかの判断は、送信側、受信側のどちらでも実施することができる。受信側で実施する場合には、ΔTr1、ΔTr2に加えて、またはΔTr1、ΔTr2の代わりに、判断結果をフィードバックする構成となる。
【0070】
また、図14は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図14では、図8のように直交符号を掛けずに、Bi-phaseのphaseを、タイミング検出用シンボル501では0[rad](相関処理では1として用いる)、タイミング検出用シンボル552ではπ[rad](相関処理では−1として用いる)に統一している。受信側では、このphase値に基づき相関処理を実施することで、直交符号を用いた場合と比較して、簡単な構成、処理で、変調信号の到着タイミングを求めることができ、求めた変調信号が送信されたアンテナを識別することができる。
【0071】
また、図15は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図15では、変調方式として、Pulse Position Modulation(PPM)を用いている。この変調方式は、パルス周期(例えばTt1−Tt0)内におけるパルス位置(ここでの位置とは、時間軸上における位置)で変調を行う。図15では、送信ディジタル信号が1の場合(相関処理で1として用いる)は、パルス周期の先頭位置で送信し、送信ディジタル信号が0の場合(相関処理では−1として用いる)は、パルス周期の先頭位置からT_PPMだけ遅れた位置でパルスを送信する。PPMは、単一のパルス幅、パルス形状で変調を実現することができることから、簡易な送信信号にすることができる。
【0072】
図16は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図16では、変調方式としてOOKを用いている。この変調方式は、送信ディジタル信号が1の場合(相関処理では1として用いる)は、パルスを発生させ、送信ディジタル信号が0の場合(相関処理では0として用いる)は、パルスを発生させない。OOKは、単一のパルス幅、パルス形状で変調を実現することができ、さらに送信ディジタル信号が0の場合にはパルス信号を発生させないことから、低消費電力で送信することができる。
【0073】
図17は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図17では、変調方式としてOrthogonal Pulse Modulation(OPM)を用いている。この変調方式は、送信ディジタル信号が1、0の時に合わせて、関数として直交関係にあるパルス信号を発生する。OPMは、多元接続を行う場合に、適した変調方式である。
【0074】
図18は、図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図である。図18では、変調信号として、Pulse Wide Modulation(PWM)を用いている。このため、パルス幅が狭い場合は「1」となり、パルス幅が広い場合は「−1」となる。PWMは、スイッチング式電源の出力電圧を安定化させるための制御方式として知られており、スイッチング・トランジスタのON時間とOFF時間の割合を変えて、出力電圧を制御できる。例えば、出力電圧が低下するとON時間を長くし、上昇すると短くすることによって、常に一定の電圧を保つことができる。
【0075】
このように、本実施の形態によれば、複数のアンテナから同時に変調信号を送信する方式において、受信側で検出した送信タイミング調整値に基づき送信タイミングを調整することにより、より精度の高い多重通信を実現することができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、タイミング検出用シンボルの構成を、図8、図13、図14,図15,図16、図17及び図18に示すようにした場合について述べたが、タイミング検出用シンボルの構成はこれに限らない。例えば、タイミング検出用シンボルを時間軸上で巡回シフト(巡回遅延)させたシンボルを他のアンテナから出力する構成とすることもできる。
【0077】
また、上記の説明では、タイミング設定部304で設定したタイミング設定値に基づき、無線部303−1、303−2で送信タイミングを変更する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、変調部302−1、302−2で送信タイミングを変更してもよい。図19はこの場合の無線送信装置の構成を示すブロック図であり、図19の無線送信装置1900は、図3の無線送信装置300と比較して、タイミング設定部304で設定したタイミング設定値が変調部302−1、302−2に入力されている点が異なる。図13を用いて説明した、パルス幅を適応的に変更するような適応送信タイミング調整の場合、図19に示す構成となる。
【0078】
また、上記の説明では、タイミング調整値を受信側で計算する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、送信側でタイミング調整値を計算してもよい。例えば、受信側ではΔTr1、ΔTr2の計算のみを実施し、送信側にフィードバックする。送信側ではΔTr1、ΔTr2を用いてタイミング設定部102が送信タイミング設定値を決定する。この一例は、図12を用いて説明したTr_aveである。この場合、受信側の負荷が軽減される。このように、本発明では、各受信アンテナにおける受信タイミング誤差に基づき、送信タイミングを設定することができればよい。
【0079】
また、上記の説明では、2つの送信アンテナANT1、ANT2が設けられた無線送信装置において、送信タイミングをANT1、ANT2において変更できるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られず、送信アンテナ数mでm系統の変調信号を送信するものに広く適用することができる。また、送信アンテナ数と送信する変調信号の数は一致する必要がなく、送信アンテナ数を、送信変調信号の数より多くし、送信アンテナを選択し、選択した送信アンテナから変調信号を送信してもよい。この内容の詳細については、実施の形態2で説明する。また、アンテナは複数のアンテナで一つのアンテナ部を形成していてもよい。
【0080】
また、上記の説明では、パルス信号を変調して送信する無線送信装置を例に説明したが、本発明はこれに限られず、OFDM変調を用いてもよい。この場合、図20の無線送信装置、図21の無線受信装置における拡散部をIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部、逆拡散部をFFT部に置き換える構成となる。一般に、OFDM変調を用いる場合には、ガードインターバルを挿入することによって遅延波によるシンボル間干渉の影響を除去する構成を採るが、この場合においても、シンボル時間長と複数アンテナからの送信信号の到着時間差との関係により、送信タイミングを調整することで、より高精度な(シンボル間干渉の小さい)MIMO多重を実現できる。
【0081】
また、本発明は、スペクトル拡散通信方式を用いることもできる。UWB伝送方式では、1つのパルス信号をスペクトル拡散通信方式の1チップと見立て、複数パルスにより1シンボルの信号に置き換える場合をスペクトル拡散通信と呼ぶ。図20はこの場合の無線送信装置の構成を示すブロック図であり、図20の無線送信装置2000は、図3の無線送信装置300と比較して、拡散部2001−1、2001−2、逆拡散部2002を付加した構成となる。また、図21はこの場合の無線受信装置の構成を示すブロック図であり、図21の無線受信装置2100は、図4の無線受信装置400に対し、逆拡散部2101−1、2101−2、拡散部2102を付加した構成となる。拡散部2001−1、2001−2は、それぞれ、変調部302−1、302−2から出力された1シンボルの信号を複数のパルス信号に置き換え、この複数のパルス信号を時間軸方向に並べる。逆拡散部2101−1、2101−2は、複数のパルス信号を足し合わせることにより1ビットのシンボルを取り出す。
【0082】
また、本発明は、時空間符号化、時空間ブロック符号、時空間トレリス符号を適用しても同様な効果を得ることができる。時空間符号化、時空間ブロック符号、時空間トレリス符号では、信号を送信するアンテナ数m(m>=2)に対し、受信するアンテナ数nはm>=nとする場合でも、原理上良好な受信品質(理論的に最大限の利得)を得ることができるため、本実施の形態の方法と組み合わせによる効果が大きい。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した方法において、複数の送受信アンテナを用いる場合のアンテナ選択方法について説明する。
【0084】
図22は、本実施の形態に係る無線送信装置2200の構成を示すブロック図であり、図3と同様に動作する箇所については、同一の番号を付し、説明を省略する。
【0085】
フレーム構成部2201−1、2201−2は、それぞれ、送信ディジタルデータC、送信ディジタルデータDに、無線受信装置2300において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボル、無線受信装置2300において同期検波、チャネル推定等に使用されるパイロットシンボル等を挿入してフレームを構成し、フレーム化ディジタルデータを変調部2202−1、2202−2に出力する。
【0086】
変調部2202−1、2202−2は、それぞれ、フレーム化ディジタルデータに対して変調処理を行い、変調信号を無線部2203−1、2203−2に出力する。
【0087】
無線部2203−1、2203−2は、それぞれ、変調信号を無線送信のために周波数変換し、タイミング設定部304が設定した送信タイミングで送信信号を送信アンテナANT3、ANT4から送信する。ここで、最初の送信時には、送信アンテナANT1、ANT2、ANT3、ANT4から送信信号を送信するタイミングは同時とし、無線部303−1、303−2、2203−1、2203−2は、タイミング設定部304からの入力を利用しない。
【0088】
図23は、本実施の形態に係る無線受信装置2300の構成を示すブロック図であり、図4と同様に動作する箇所については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
無線部2301−1、2301−2は、それぞれ、受信アンテナANR3、ANR4に受信された高周波信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号をフレーム分離部2302−1、2302−2に出力する。
【0090】
フレーム分離部2302−1、2302−2は、それぞれ、ベースバンド信号からパイロットシンボル、データシンボルを分離し、パイロットシンボルをチャネル推定部2303−1〜2303−4に出力し、データシンボルを復調部404に出力し、タイミング検出用シンボルをタイミング検出部451に出力する。
【0091】
チャネル推定部2303−1〜2303−4は、それぞれ、パイロットシンボルを用いてチャネル推定を行い、チャネル推定値を復調部404に出力する。
【0092】
図24は、無線送信装置2200から送信する変調信号Aから変調信号Dのフレーム構成例を示す図であり、図5と同様に動作する箇所については、説明を省略する。図24では、一例として時間軸におけるフレーム構成を示している。シンボル2401、2451はそれぞれ、変調信号C、Dのヌルシンボルである。シンボル2402、2452はそれぞれ、変調信号C、Dのデータシンボルである。シンボル2403、2453はそれぞれ、変調信号C、Dのパイロットシンボルである。シンボル2404、2454はそれぞれ、変調信号C、Dのデータシンボルである。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に信号検出用シンボルを省略している。
【0093】
図25は、図24に示したフレームを送信した場合の受信アンテナANR1〜ANR4における受信信号の例として、Case1〜Case4の4通りを示す図である。ここで、Case1が発生する場合としてANR1を用いているが、同時に他のアンテナANR2〜ANR4の一部または全部でもCase1が発生する場合がある。これは、Case2〜Case4についても同様である。
【0094】
Case1(ANR1)
変調信号A〜変調信号Dが、時間軸で重なることなく受信されている。この場合、無線送信装置2200のタイミング設定部304が、実施の形態1で説明した方法を用いて送信タイミングを調整することにより、変調信号A〜変調信号Dを全て多重(4多重)することが可能となる。
【0095】
Case2(ANR2)
変調信号Aと変調信号Bが、時間軸で重なって受信されている。この場合、無線送信装置2200のタイミング設定部304が、(1)変調信号A、変調信号Bの一方または双方の送信タイミングを調整する、(2)変調信号A、変調信号Bのいずれか一方の送信を止め、変調信号C、変調信号Dとの3多重にする、のいずれかを選択する。
【0096】
Case3(ANR3)
変調信号A〜変調信号Dが、時間軸で全て重なって受信されている。2本以上の受信アンテナでCase3のように受信されている場合には、最大4多重することが可能である。しかし、Case3と同時にCase1が発生するような場合、送信タイミングを調整するのは非常に困難になり、一般に多重された信号の受信品質が劣化する。この場合、無線送信装置2200は、多重自体行わないとする。
【0097】
Case4(ANR4)
変調信号Cが受信されていないが、その他の変調信号A、B、Dは時間軸で重ならずに受信されており、無線送信装置2200のタイミング設定部304が、この3つの変調信号の送信タイミングを調整することにより、最大3多重通信が可能となる。
【0098】
以上示したように、受信側での観測結果(時間軸・周波数軸上での受信タイミング、波形の相関など)に基づき、多重送信に使用するアンテナを、送受信それぞれに具備する全てのアンテナから適宜選定することで、受信効率、受信品質などを考慮した多重通信を実施することができる。
【0099】
なお、図25で選定した結果を無線送信装置にフィードバックする方法については、実施の形態1で図6を用いて説明したので省略する。
【0100】
図26は、図24とは異なる無線送信装置2200から送信する変調信号Aから変調信号Dのフレーム構成例を示す図であり、図5と同様に動作する箇所については、説明を省略する。
【0101】
図26では、ヌルシンボルを配置しない構成としている。この場合、実施の形態1で図9等を用いて説明した直交パルス等を用いることにより、受信タイミングずれを測定し、送信タイミングを調整する。図26の図24に対する利点は、受信タイミングずれの測定に要する時間を短縮できることである。
【0102】
図27は、図25で説明したアンテナ選定方法の他の一例を示す図であり、ここでは、送信アンテナ3、受信アンテナ2の場合で説明を行うが、各本数はこれに限ったものではない。
【0103】
ANR1における受信信号において、変調信号Aと変調信号Bの到着時間差をΔT1−AB、変調信号Bと変調信号Cの到着時間差をΔT1−BC、変調信号Aと変調信号Cの到着時間差をΔT1−ACとする。ここで、変調信号Aから変調信号C自身のシンボル時間Ts_shortと送信タイミング差を考慮すると、以下の式(6)から式(8)の3つのタイミング差のうち最も差の小さいものを選べばよい。ANR2における受信信号においても、ANR1と同様に実施すればよい。
(ΔT1−AB)−(Ts_short) ・・・・(6)
(ΔT1−BC)−(Ts_short) ・・・・(7)
(ΔT1−AC)−(Ts_short)−(Ts_short) ・・(8)
【0104】
ここで、ANR1とANR2で選定結果が異なった場合には、より小さな時間差の方を選択する、あるいは、平均化する、などの方法を用いることでアンテナを最終決定することができる。重要な点は、受信側での複数シンボルの到着時間差を小さくし、高精度なMIMO多重通信を実現することである。
【0105】
また、ここまでは、受信側で測定した遅延時間に基づき送信タイミングを変更することで受信タイミングを調整し、高精度なMIMO多重通信を実現することについて説明したが、送信タイミングを変更することで、より大きな送信ダイバーシチ効果を得る送信方法に切り替えることもできる。例えば、2本の送信アンテナから同一のパルス信号を送信することで、受信側では、異なる伝送路を経由した信号を合成し、受信品質を向上させ、スループットを向上させることができる。また、前記2つの信号のうち、1本のアンテナからの信号が瞬時的に遮断されたような場合においても、もう一方のアンテナからの信号を利用してデータ復調に必要な受信品質を確保できる。
【0106】
なお、本実施の形態で記載した方法は、他の実施の形態、例えば実施の形態3で説明するフレーム構成と、組み合わせて実施することが可能である。
【0107】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1、2で説明した複数アンテナからの送信タイミング調整に用いるフレーム構成について詳細に説明する。
【0108】
図28は、図5のフレーム構成と対比して記載したフレーム構成例を示す図であり、点線で示した部分が対比する部分である。
【0109】
図28の特徴は、アンテナ間時間差推定シンボル2802、2852と、シンボル間干渉を避けるためのガードシンボル2803、2805、2853、2855の挿入である。これにより、複数の送信アンテナからの送信信号の受信タイミングずれが大きい場合においても、ガードシンボルの存在により高精度なアンテナ間時間差推定と、推定結果に基づく多重伝送が可能となる。
【0110】
図28は、信号同期用シンボル2801、2851、アンテナ間時間差推定用シンボル2802、2852、ガードシンボル2803、2853、チャネル推定用シンボル2804、2854、ガードシンボル2805、2855、通信情報シンボル2806、2856、データシンボル2807、2857から構成される。
【0111】
信号同期用シンボル2801、2851は、信号の同期を取るためのシンボルである。
【0112】
アンテナ間時間差推定2802、2852は、複数のパルス信号(変調信号A、変調信号B)のアンテナ間の到達時間差を推定するためのシンボルであり、例えば、実施の形態1で説明したような自己相関、相互相関特性に優れた系列が用いられる。
【0113】
ガードシンボル2803、2853は、アンテナ間時間差推定2802、2852と、チャネル推定用シンボル2804、2854がシンボル間干渉を生じないようにするために挿入するシンボルであり、例えばヌルシンボルが用いられる。
【0114】
チャネル推定用シンボル2804、2854は、受信側で等化処理、振幅・位相情報に基づく合成処理等をする場合に必要なシンボルである。
【0115】
ガードシンボル2805、2855は、チャネル推定用シンボル2804、2854と、通信情報シンボル2806、2856がシンボル間干渉を生じないようにするために挿入するシンボルであり、例えばヌルシンボルが用いられる。
【0116】
通信情報シンボル2806、2856は、送信方法情報(例えば、畳み込み符号、ターボ符号、LDPC(Low Density Parity Check)符号等の誤り訂正符号の種類や、送信多重ストリーム数など)や、受信方法情報(例えば、推奨するスムージング(平滑化)方法、検波方法等)を含むシンボルである。
【0117】
データシンボル2807、2857は、変調信号A、変調信号Bで送信するデータ本体であり、例えば、MAC(Media Access Control)層等の通常物理層より上位の層から送られてきたデータである。
【0118】
なお、チャネル推定を実施する必要のないシステムにおいては、チャネル推定用シンボル2804、2854とガードシンボル2805、2855を削除したフレーム構成となる。
【0119】
また、図28では、一般にFCS(Frame Check Sequence)と呼ばれるシンボルであって、変調信号A、変調信号Bのフレームエラーを検出するシンボルは省略している。
【0120】
以上示したように、送信フレーム構成においてガードシンボルを適宜挿入することにより、高精度なアンテナ間時間差推定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、複数のアンテナを用いて変調信号を送信する方式において、受信信号の受信タイミングに高い精度が要求される無線通信システムに適用して好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線送信装置及び無線受信装置の基本構成図
【図2】上記実施の形態に係る無線送信装置と無線受信装置との間の無線区間のチャネル変動を説明する図
【図3】上記実施の形態に係る無線送信装置の構成を示すブロック図
【図4】上記実施の形態に係る無線受信装置の構成を示すブロック図
【図5】上記実施の形態に係る無線送信装置から送信する変調信号のフレーム構成例を示す図
【図6】上記実施の形態に係る無線受信装置から送信する変調信号のフレーム構成例を示す図
【図7】上記実施の形態の受信アンテナANR1における受信タイミングを揃えるための送信タイミング調整を説明する図
【図8】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの構成例を示す図
【図9】受信アンテナANR1における、直交符号の相関処理に基づくタイミング検出方法を示す図
【図10】上記実施の形態の受信アンテナANR2における受信タイミングを揃えるための送信タイミング調整を説明する図
【図11】受信アンテナANR2における、直交符号の相関処理に基づくタイミング検出方法を示す図
【図12】上記実施の形態に係る複数の受信アンテナにおける受信タイミングを調整する方法を示す図
【図13】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図14】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図15】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図16】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図17】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図18】図5の変調信号のタイミング検出用シンボルの他の構成例を示す図
【図19】上記実施の形態に係る無線送信装置の他の構成を示すブロック図
【図20】上記実施の形態に係る無線送信装置の他の構成を示すブロック図
【図21】上記実施の形態に係る無線受信装置の他の構成を示すブロック図
【図22】本発明の実施の形態2に係る無線送信装置の構成を示すブロック図
【図23】上記実施の形態に係る無線受信装置の構成を示すブロック図
【図24】上記実施の形態に係る無線送信装置から送信する変調信号のフレーム構成例を示す図
【図25】図24に示したフレームを送信した場合の受信アンテナにおける受信信号の例を示す図
【図26】上記実施の形態に係る無線送信装置から送信する変調信号のフレーム構成例を示す図
【図27】図25で説明したアンテナ選定方法の他の一例を示す図
【図28】図5のフレーム構成と対比して記載したフレーム構成例を示す図
【図29】UWB伝送方式を説明する図
【図30】MIMO伝送方式を説明する図
【図31】従来の課題を説明する図
【符号の説明】
【0123】
100、300、1900、2000、2200 無線送信装置
101 フレーム構成部
102 タイミング設定部
150、400、2100、2300 無線受信装置
151 タイミング検出部
301−1、301−2、2201−1、2201−2 フレーム構成部
302−1、302−2、2202−1、2202−2 変調部
303−1、303−2、2203−1、2203−2 無線部
304 タイミング設定部
401−1、401−2、2301−1、2301−2 無線部
402−1、402−2、2302−1、2302−2 フレーム分離部
403−1、403−2、403−3、403−4、2303−1、2303−2、2303−3、2303−4 チャネル推定部
404 復調部
451 タイミング検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記各アンテナから送信するデータに、通信相手装置において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボルを挿入してフレームを構成するフレーム構成手段と、
前記通信相手装置において検出された受信タイミングのずれに基づいて送信タイミングを設定するタイミング設定手段と、
前記タイミング設定手段が設定した送信タイミングで、前記フレーム構成手段がフレーム化したデータを前記各アンテナから送信する送信手段と、具備する無線送信装置。
【請求項2】
前記フレーム構成手段は、各アンテナ間で異なる符号化を施したパルス信号をタイミング検出用シンボルとして挿入する請求項1記載の無線送信装置。
【請求項3】
前記フレーム構成手段は、各アンテナ間で異なるパルス幅を持つパルス信号をタイミング検出用シンボルとして挿入する請求項1記載の無線送信装置。
【請求項4】
前記フレーム構成手段は、各アンテナ間で異なるパルス位置を持つパルス信号をタイミング検出用シンボルとして挿入する請求項1記載の無線送信装置。
【請求項5】
前記フレーム構成手段は、タイミング検出用シンボルとして挿入するパルス信号のパルス幅を、前記他のシンボルのパルス幅よりも短くする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線送信装置。
【請求項6】
複数の各アンテナからデータを送信する無線送信方法であって、
前記各アンテナから送信するデータに、通信相手装置において受信タイミングの検出に使用されるタイミング検出用シンボルを挿入してフレームを構成するフレーム構成工程と、
前記通信相手装置において検出された受信タイミングのずれに基づいて送信タイミングを設定するタイミング設定工程と、
前記タイミング設定工程で設定した送信タイミングで、前記フレーム構成工程でフレーム化したデータを前記各アンテナから送信する送信工程と、具備する無線送信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−124632(P2007−124632A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261208(P2006−261208)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】